(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプの前記第1運転は、ポンプの流量と揚程の関係を示す第1揚程曲線に沿って、前記ポンプの前記第2運転は、ポンプの流量と揚程の関係を示す第2揚程曲線に沿ってそれぞれ制御される運転であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の給水装置。
前記ポンプの前記第1運転は、ポンプの流量と揚程の関係を示す第1揚程曲線に沿って、前記ポンプの前記第2運転は、ポンプの流量と揚程の関係を示す第2揚程曲線に沿って制御される運転であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の給水方法。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどに設置され、各給水端へ水を供給する装置として給水装置がある。
図1は、このような給水装置の典型例を示すもので、給水装置は、モータMをそれぞれ有し水を加圧して送水する2台のポンプ1と、各ポンプ1を駆動するためのモータMに電力を供給するインバータ(周波数変換器)2を備えている。給水装置は、ポンプ1の吐出側に、圧力タンク3と吐出側圧力センサ4を備え、夫々のポンプ1毎にフロースイッチ(流量検出手段)6と逆止弁7を備えている。ポンプ1の吸込側配管8は、水道本管9に接続され、この吸込側配管8に吸込側圧力センサ10と逆流防止装置11とが設けられている。更に、水道本管9の圧力のみで給水を行うためのバイパス管12がポンプ1の吸込側配管8と吐出側配管13との間に設けられている。そして、バイパス管12の途中には逆止弁14が設けられている。ポンプ1の制御を行う制御部15は、これらのセンサ類からの信号に基づき、状況に応じたポンプ1の回転速度制御及び台数制御を行う。
【0003】
なお、ポンプの吸込側配管が水道本管に接続された直結式給水装置ではなく、受水槽式の給水装置であれば、ポンプの吸込側配管は受水槽に接続され、受水槽に備えられた水位検知器が制御部に接続される。この受水槽式の給水装置の場合、逆流防止装置、吸込側圧力センサ、及びバイパス管は備えられない。
【0004】
図2は、給水装置における、使用流量と該流量に必要な揚程(ヘッド)との関係を示す必要揚程曲線Aと、この必要揚程曲線Aを基に設定した(標準)制御用揚程曲線Bとを、ポンプのH−Q曲線(回転速度N
1,N
2及びN
3)と共に示す。
図2において、横軸は流量Qを示し、縦軸は揚程(ヘッド)Hを示す。
【0005】
必要揚程曲線Aは、例えば建物の揚程(最上階の高さ)H
1、水道器具に必要な圧力(水道器具の圧損)H
2、及び流量に依存する配管損失H
3の合計(H
1+H
2+H
3)から求められる。この例では、必要揚程曲線Aは、使用流量が“0”の時の揚程PB
0と、使用流量が最終点Q
0の時の揚程PA
0とを滑らかに結ぶ曲線として示されている。
【0006】
この必要揚程曲線Aは、あくまでも理想の揚程と使用流量との関係を求めたものであり、実際の設計に際しては、必要揚程曲線Aに対し、例えば十数%程度の余裕を持たせた(標準)制御用揚程曲線Bを設定し、この制御用揚程曲線Bに基づいてポンプの回転速度を制御することが広く行われている。この(標準)制御用揚程曲線Bは、使用流量が“0”の時の前記揚程PB
0に十数%程度の余裕を持たせた揚程(最低必要圧力)PB
1と、使用流量が最終点Q
0の時の前記揚程PA
0に十数%程度の余裕を持たせた揚程(最大必要圧力)PA
1とを滑らかに結ぶ曲線として示されている。
【0007】
この制御用揚程曲線Bは、揚程と回転速度の関数として、
図1に示す給水装置の制御部15の記憶部に記憶されており、この制御用揚程曲線Bに基づいて、つまり、例えば、
図2に示すように、使用流量がQ
1の時、この流量Q
1と制御用揚程曲線Bとの交点U
3がポンプ1の運転ポイント(回転速度N
1)になるように、ポンプ1の回転速度が制御される。
【0008】
図3は、
図2に示す給水装置の運転サイクルの一例を示す。
図3において、横軸は時間を示し、縦軸はポンプの回転周波数を示している。ポンプ1の回転周波数は、インバータ2により可変速制御される。
【0009】
図3に示すように、ポンプ1が駆動を停止し(時間:t
1)、しかる後、吐出側圧力センサ4で測定される吐出し圧力DPが設定した圧力(設定圧)SPより低く(DP<SP)なると、水が使用されていると判断して、ポンプ1は、回転を開始し(時間:t
2)、給水を行う。給水中は、設定圧SPと吐出側圧力センサ4で測定される現在の吐出し圧力DPにてPI演算を行い、PI演算結果をポンプ1の回転周波数に反映させることにより、ポンプ1の可変速制御を行う。
【0010】
そして、ポンプ1による給水中に吐出し圧力DPが充分高くなり、かつフロースイッチ6の「閉」により、使用水量が少なくなったことが検出された時(時間:t
3)に、ポンプ1は、圧力タンク
3に蓄圧する加圧運転を開始し、次の少量使用時は圧力タンク
3内の水を使用できるようにする小水量停止動作を行わせてから、ポンプ1の駆動を停止する(時間:t
4)。フロースイッチ6の「閉」を検知する時間は、例えば1秒である。
【0011】
そして、吐出側圧力センサ4で測定される吐出し圧力DPが設定した設定圧SPより低く(DP<SP)なると、水が使用されていると判断して、ポンプ1は、再び回転を開始し(時間:t
5)、給水を行う。
【0012】
ここで、ポンプ1が駆動を停止している時間(t
1〜t
2)を「ポンプ停止時間」とし、ポンプ1が駆動を開始してからフロースイッチ6の「閉」を検知するまでの時間(t
2〜t
3)を「ポンプ直前駆動時間」とする。このことは、以下同様である。ポンプ1が駆動を停止した後、ポンプ1が駆動を開始して給水を行い、ポンプ1が再び停止するまでの時間(t
1〜t
4)が給水装置の運転の1サイクルである。水の使用頻度により、給水時間、ポンプ直前駆動時間及びポンプ停止時間が変わり、水の使用水量によりポンプ1の回転周波数が変わる。
【0013】
即ち、水が継続的に使用される時間帯では、ポンプを連続して駆動する「ポンプ直前駆動時間」が長くなり、水があまり使用されない時間帯では、ポンプの駆動を停止する「ポンプ停止時間」が長くなる。また、水が大量に使用されると、ポンプの回転速度が上昇し、水が少量しか使用されないと、ポンプの回転速度が低下する。
【0014】
上記のように、必要揚程曲線Aに対し、例えば十数%程度の余裕を持たせた(標準)制御用揚程曲線Bを設定し、この制御用揚程曲線Bに基づいてポンプの回転速度を制御することで、例えば配管に腐食が発生して配管損失が設計当初に比べて大きくなった場合に、給水装置がその使用性能を出せなくなってしまうことを防止したり、また使用者サイドで何らかの理由により、もう少し流量が出したいとの要求があった場合に、この要求に応えたりすることができる。
【0015】
なお、配管抵抗とポンプ性能曲線とから求められる流量をインプットし、目的とする流量が得られるようにポンプの回転速度を自動的に合わせてゆく方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、最初に流量を測定した地点で、流量が多ければポンプの回転速度を自動的に下げ、ポンプの回転速度を下げても更に流量が多ければ、更にポンプの回転速度を流量に合うように自動的に下げ、順次目標とする流量になるまでポンプの回転速度を自動的に調整してゆくようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
使用者から要求される使用流量−揚程に対して、例えば十数%程度の余裕をもった(標準)制御用揚程曲線を設定し、この制御用揚程曲線に基づいてポンプの回転速度を制御する場合、制御が一義的に定まり、例えば諸般の事情に合わせて、省エネルギー化を図ろうとしても、これに柔軟に対応することができなかった。例えば、
図2に示すように、制御用揚程曲線Bに基づいて、使用者の使用流量がQ
1となるように、ポンプの回転速度を制御しようとすると、
図2の流量Q
1と制御用揚程曲線Bとの交点U
3が運転ポイント(回転速度N
1)となるようにポンプの運転が制御され、この運転ポイントを必要に応じて変更させることができない。
【0018】
しかしながら、使用者の使用流量Q
1が確保されていれば、
図2に示す、流量Q
1と必要揚程曲線Aとの交点(回転速度N
3)U
1よりも揚程が高く、上記交点U
3よりも揚程が低い、ポイントU
2が運転ポイント(回転速度N
2)となるようにポンプの運転を制御してもよい場合がある。このような場合に、揚程の高い交点U
3でポンプを駆動(運転)すると、揚程が低いポイントU
2でポンプを駆動(運転)する時に比べて、ポンプの回転速度は大きくなり、それだけ多くの電力を消費することになる。このことは、省エネルギー設計を厳しく求められる昨今のニーズに反する。
【0019】
また、使用者では、十分な余裕を持った制御用揚程曲線に基づいてポンプの回転速度を制御する必要がない場合がある。このような場合には、必要最低限の余裕を持った制御用揚程曲線に基づいてポンプの回転速度を制御することで、省エネルギー化に貢献することができる。
【0020】
ここで、例えば、集合住宅では、朝や夕方など、多くのユーザーが水を頻繁に使う時間帯が存在し、水使用量が急に増える時間帯などに、例えばポンプの回転速度を下げて、省エネルギー化に貢献しようとすると、各家庭に均一圧力で給水できなくなるおそれがある。このため、一定圧給水を確保するためには、水が多量に使われる時間帯を避け、水があまり使われない時間帯に、例えばポンプの回転速度を下げて、省エネルギー化に貢献することが望ましい。
【0021】
なお、特許文献1に記載の発明は、使用者が必要とする流量に合わせて、回転速度が低くなるようにポンプの運転を制御するようにしたものではない。
【0022】
本発明は上記事情に鑑みてされたもので、水が多量に使われる時間帯を避け、水があまり使われない時間帯に、例えば回転速度が低くなるようにポンプの回転速度を制御して、省エネルギー化の要請に応えることができるようにした給水装置及び給水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備えている。前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断
し、前記制御部は、前記ポンプが駆動していない時にポンプ停止時間が所定時間より長い場合に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いと判断する。
本発明の他の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記制御部は、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第1運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第1閾値を下回った時に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いと判断する。
【0024】
このように、ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から該第1運転より消費電力が少ない第2運転(エコ運転)に移行して良いか否かを判断することで、水が多量に使われていたり、水使用量が急に増えたりする時間帯を避け、水があまり使われない時間帯に、ポンプの運転を、第1運転(通常運転)から該第1運転より消費電力が少ない第2運転(エコ運転)に移行させて、省エネルギー化の要請に応えることができる。
【0025】
本発明の
更に他の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備えている。前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断
し、前記制御部は、前記第2運転にて前記ポンプが連続して駆動している時にポンプ直前駆動時間が所定時間よりも長い場合に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いと判断する。
本発明の更に他の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記制御部は、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第2運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第2閾値を上回った時に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いと判断する。
【0026】
このように、ポンプの運転を第1運転(通常運転)より消費電力が少ない第2運転(エコ運転)から第1運転に移行して良いか否かを、ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断することで、例えば水使用量が急に増える時間帯に、第2運転から第1運転に移行させて、各家庭等への給水が不足してしまうことを防止することができる。
【0027】
本発明の更に他の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備えている。前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いか否か、並びに前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断
し、前記制御部は、前記ポンプが駆動していない時にポンプ停止時間が所定時間より長い場合に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いと判断し、前記第2運転にて前記ポンプが連続して駆動している時にポンプ直前駆動時間が所定時間よりも長い場合に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いと判断する。
本発明の更に他の給水装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器と、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように前記周波数変換器に運転信号を送る制御部とを備え、前記制御部は、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いか否か、並びに前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記制御部は、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第1運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第1閾値を下回った時に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行して良いと判断し、前記積算値が、前記第2運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第2閾値を上回った時に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行して良いと判断する。
【0028】
本発明の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断し、
前記ポンプが駆動していない時にポンプ停止時間が所定時間より長い場合に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行する。
【0029】
本発明の他の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転より消費電力が少ない第2運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断し、
前記第2運転にて前記ポンプが連続して駆動している時にポンプ直前駆動時間が所定時間よりも長い場合に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する。
【0030】
本発明の更に他の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断し
、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第1運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第1閾値を下回った時に、前記ポンプの運転を前記第
1運転から前記第
2運転に移行する。
本発明の更に他の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転より消費電力が少ない第2運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第2運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第2閾値を上回った時に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する。
本発明の更に他の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記ポンプが駆動していない時にポンプ停止時間が所定時間より長い場合に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行し、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記第2運転にて前記ポンプが連続して駆動している時にポンプ直前駆動時間が所定時間よりも長い場合に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する。
本発明の更に他の給水方法は、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水し、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第1運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第1閾値を下回った時に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行し、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記積算値が、前記第2運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第2閾値を上回った時に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する。
【0031】
本発明の給水装置の制御プログラムは、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器とを有する給水装置を制御するためのプログラムである。この制御プログラムは、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させ、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断し、
前記ポンプが駆動していない時にポンプ停止時間が所定時間より長い場合に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行する演算処理を実行させ、該ポンプを第2運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させ、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて判断し、
前記第2運転にて前記ポンプが連続して駆動している時にポンプ直前駆動時間が所定時間よりも長い場合に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する演算処理を実行させ、該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させる。
本発明の給水装置の他の制御プログラムは、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器とを有する給水装置を制御するためのプログラムである。この制御プログラムは、周波数変換器からポンプに電力を供給して該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させ、前記ポンプの運転を前記第1運転から該第1運転より消費電力が少ない第2運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、使用水量に応じた任意の係数の積算値が、前記第1運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第1閾値を下回った時に、前記ポンプの運転を前記第1運転から前記第2運転に移行する演算処理を実行させ、該ポンプを第2運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させ、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行させて良いか否かを、前記ポンプの運転状況に基づいて判断し、前記積算値が、前記第2運転にて前記ポンプが駆動している時のポンプ運転時間、ポンプ停止時間及び使用水量を基に設定した第2閾値を上回った時に、前記ポンプの運転を前記第2運転から前記第1運転に移行する演算処理を実行させ、該ポンプを第1運転で運転して水を加圧送水する演算処理を実行させる。
【0032】
本発明の給水装置の制御装置は、水を加圧して送水するポンプと、前記ポンプに電力を供給して該ポンプを変速運転する周波数変換器とを有する給水装置を制御する。この制御装置は、ヒューマンインターフェースとしての設定部と、
上記制御プログラムを格納し前記設定部から入力されるデータを記憶する記憶部と、給水装置に備えられているセンサ類からの信号を受けて下記の演算部に送るとともに、第1運転と該第1運転より消費電力が少ない第2運転のいずれかで前記ポンプを運転するように、演算部からの運転信号を前記周波数変換器に送るI/O部と、前記記憶部に記憶されているデータ及び前記I/O部から送られる信号を基に、前記制御プログラムを実行させる演算部とを備えている。
【発明の効果】
【0033】
本発明の給水装置及び給水方法によれば、第1運転(通常運転)より消費電力の少ない第2運転(エコ運転)でポンプを運転することができ、これによって、給水時の使用電力を抑えて省エネルギー化を図り、CO
2の削減に繋げることができる。しかも、第1運転と第2運転の切換えを自動で判断することで、水が多量に使われる時間帯に第2運転に切換えてしまって揚程が足りなくなったり、逆に水をあまり使わない時間帯に第1運転で必要以上の回転速度でポンプを回転させたりすることがなくなる。これによって、使用者への給水を確保しつつ、省エネルギー運転が可能な時だけ省エネルギー運転をすることができる。特に、学校など、季節変動によって給水量が大きく異なる場合や、建設後年数が経過したマンションで、空き住居数が増加した場合等に、最適な制御用揚程曲線を選んだり、省エネ制御を選んだりすることで、ユーザーに不快感を与えることなく、かつ、消費電力を抑える効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、
図1乃至
図25において、同一または相当する要素には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図4は、本発明の実施形態の給水装置の構成例を示す図である。
図4に示すように、給水装置の制御部(制御装置)15は、設定部16、記憶部17、演算部18、表示部19及びI/O部20を備えている。設定部16及び表示部19は、給水装置の運転パネル21に備えられている。なお、制御部15以外の構成は、
図1に示す従来の給水装置の構成とほぼ同様である。
【0037】
運転パネル21は、設定部16と表示部19を有し、例えばスイッチ、入力確認用ブザー及び入力確認用表示を有し、ヒューマンインターフェースとして機能する。設定部16には、外部操作により、流量と揚程の異なる関係を示す複数の制御用揚程曲線等を作成する各種設定値、例えば使用流量が“0”の時の前記揚程(最低必要圧力)PB
1、使用流量が最終点Q
0の時の前記揚程(最大必要圧力)PA
1等を入力する。また、設定部16には、制御用揚程曲線の切換えをしてもよいか否かを判断するための各種設定値として、例えば、後述のポンプ駆動時間やポンプ停止時間についての所定時間(a及びb)、後述の積算係数と運転周波数の関係式を作成するための各種設定値、後述の第n閾値を算出するための各種設定値を入力する。設定部16は、下記のエコモードであるか否かを選択する、ON/OFFを設定する機能を有している。設定部16に入力されたデータは、記憶部17に記憶される。
【0038】
表示部19は、ヒューマンインターフェースとして機能し、記憶部17に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプの運転状況(運転状態)、例えばポンプの運転または停止、運転周波数、電流、吐出し圧力、流入圧力(直結給水の場合)、受水槽水位等を表示する。
【0039】
記憶部17としては、RAM等のメモリを使用し、記憶部17には、後述の制御フローチャート等で示す制御プログラムや各種データ、例えば演算部18における演算結果のデータ(駆動時間、停止時間、積算値)、圧力値(流入圧力、吐出し圧力)、設定部16により入力されたデータ、I/O部20により入力される、またはI/O部20から出力されるデータ等が格納される。
【0040】
I/O部20としては、ポート等を使用し、I/O部20は、吐出側圧力センサ4の出力やフロースイッチ6の信号などの給水装置内に設置された各種センサからの信号を受け入れて演算部18に送る。I/O部20は、通信における信号の入出力も行う。
【0041】
演算部18としては、CPUを使用し、演算部18は、記憶部17に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部20から入力される信号に基づいて、時間の計測(直前駆動時間、停止時間)、積算の演算(積算値)、通信データの処理、目標圧力の演算、周波数指令値の演算等を行う。そして、演算部18からの出力は、I/O部20に入力される。
【0042】
また、I/O部20と各インバータ2は、RS485等の通信手段により互いに接続され、I/O部20からインバータ2へは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(起動・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ2からI/O部20へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。
【0043】
なお、I/O部20と各インバータ2との間の制御信号の送受信としては、周波数等はアナログ信号を、運転停止指令等はデジタル信号をそれぞれ用いることもできる。
【0044】
図5は、設定部16を介して設定されて記憶部17に記憶されている複数の制御用揚程曲線を示す。
図5は、第1運転より消費電力が少ない第2運転用の制御用揚程曲線として、第1運転(通常運転)用の制御用揚程曲線(以下、標準制御用揚程曲線という)に対して、全流領域または一部の流量域において揚程を低く設定した省エネ型制御用揚程曲線を示している。この例では、例えば建物の揚程(最上階の高さ)H
1、水道器具に必要な圧力(水道器具の圧損)H
2、及び流量に依存する配管損失H
3の合計(H
1+H
2+H
3)から求められる必要揚程曲線Aに対し、例えば十数%程度の余裕を持たせた、第1運転(通常運転)用の標準制御用揚程曲線Bの他に、第1運転より消費電力が少ない第2運転(エコ運転)用の3つの省エネ型制御用揚程曲線C
1,C
2,C
3の合計4つの制御用揚程曲線が使用されている。
ここで、第1運転及び第2運転とは、それぞれの運転においてポンプが駆動して送水が行われている状態を含むものとして以下で説明する。
【0045】
省エネ型制御用揚程曲線C
1,C
2,C
3は、標準制御用揚程曲線Bに対して略並行に、全流量域に亘って揚程が低く設定されている。そして、省エネ型制御用揚程曲線C
1,C
2,C
3の順に、揚程が順に低くなるように設定されている。そして、この4つの制御用揚程曲線B,C
1,C
2,C
3の内の一つが択一的に選択され、この選択された制御用揚程曲線B,C
1,C
2またはC
3に基づいてポンプ1の回転速度が制御される。
【0046】
図6は、給水装置に備えられている運転パネル21の平面図を示す。
図6に示すように、運転パネル21には、記憶部17に記憶されている、この例では合計4つの制御用揚程曲線B,C
1,C
2,C
3を順次切換える切換ボタン22と、ポンプ1の回転速度の制御に使用される制御用揚程曲線に対応した省エネルギーの程度を示す省エネ表示部23とが備えられている。
【0047】
ここで、省エネ表示部23のランプが点灯していない運転状態(運転モード)を標準モード、省エネ表示部23のランプ(のいずれか)が点灯している状態をエコモードという。
【0048】
切換ボタン22を押さない場合は、省エネ表示部23のランプが点灯することなく、標準制御用揚程曲線Bがポンプ1の回転速度の制御に使用される。そして、切換ボタン22を1回押すと、省エネ表示部23の“L”に対応するランプが点灯し、標準制御用揚程曲線Bが省エネ制御用揚程曲線C
1に自動的に切換えられて、省エネ制御用揚程曲線C
1がポンプ1の回転速度の制御に使用される。切換ボタン22を2回押すと、省エネ表示部23の“M”に対応するランプが点灯し、標準制御用揚程曲線Bが省エネ制御用揚程曲線C
2に自動的に切換えられて、省エネ制御用揚程曲線C
2がポンプ1の回転速度の制御に使用される。更に、切換ボタン22を3回押すと、省エネ表示部23の“H”に対応するランプが点灯し、標準制御用揚程曲線Bが省エネ制御用揚程曲線C
3に自動的に切換えられて、省エネ制御用揚程曲線C
3がポンプ1の回転速度の制御に使用される。切換ボタン22を4回押すとエコモードから基の標準モードに復帰する。
【0049】
すなわち、標準モードでは、ポンプ1の回転速度の制御に標準制御用揚程曲線(B)が使用され、エコモードでは、ポンプ1の回転速度の制御に使用する制御用揚程曲線を、ポンプ1の運転状況(運転履歴)に基づいて、標準制御用揚程曲線(B)から省エネ型制御用揚程曲線(C
1,C
2またはC
3)に自動的に切換えて、ポンプ1の回転速度を制御する。
【0050】
以上のように、ポンプ1の運転状態(運転モード)が標準モードであるかエコモードであるかを使用者が切換ボタン22を使用して手動で簡便に行い、エコモードであれば、3段階の内のどの段階かを省エネ表示部23で確認することができる。
【0051】
次に、この給水装置によって、使用者の使用流量がQ
1となるように、ポンプの回転速度を制御する場合について、
図5を参照して説明する。先ず、切換ボタン22を押さない場合、標準制御用揚程曲線Bに基づいて、ポンプ1の回転速度が制御され、標準制御用揚程曲線Bと流量がQ
1との交点U
3がポンプ1の運転ポイントとなる。この時、省エネ表示部23のランプは点灯されない。
【0052】
以下、流量Q
1で給水する場合を例に説明する。
使用者が切換ボタン22を1回押すとエコモードとなり、省エネ表示部23の“L”に対応するランプが点灯し、ポンプの運転状況(運転履歴)に応じて、標準制御用揚程曲線Bが省エネ型制御用揚程曲線C
1に自動的に切換えられて、ポンプ1の回転速度は省エネ型制御用揚程曲線C
1で制御される。この場合には、省エネ型制御用揚程曲線C
1と流量がQ
1との交点U
4がポンプ1の運転ポイントとなる。また、切換ボタン22を2回押すと、省エネ表示部23の“M”に対応するランプが点灯し、ポンプの運転状況(運転履歴)に応じて、標準制御用揚程曲線Bが省エネ型制御用揚程曲線C
2に自動的に切換えられて、ポンプ1の回転速度は省エネ型制御用揚程曲線C
2で制御される。この場合には、省エネ型制御用揚程曲線C
2と流量がQ
1との交点U
5がポンプ1の運転ポイントとなる。切換ボタン22を3回押すと、省エネ表示部23の“H”に対応するランプが点灯し、ポンプの運転状況(運転履歴)に応じて、標準制御用揚程曲線Bが省エネ型制御用揚程曲線C
3に自動的に切換えられて、ポンプ1の回転速度は省エネ型制御用揚程曲線C
3で制御される。この場合には、省エネ型制御用揚程曲線C
3と流量がQ
1との交点U
6がポンプ1の運転ポイントとなる。
【0053】
このように、同じ使用水量であっても、必要に応じて、回転速度の低い運転ポイントを選んでポンプを運転できるようにすることで、給水時の使用電力を抑えて省エネルギー化を図り、CO
2の削減に繋げることができる。
【0054】
上記の例では、
図7に示すように、標準制御用揚程曲線Bに対して略並行に、全流量域に亘って揚程が低く設定された、省エネ型制御用揚程曲線Cを複数(上記の例では、C
1,C
2及びC
3の3つ)使用して、全流量域において、省エネルギーを図るようにした例を示している。
【0055】
図8に示すように、標準制御用揚程曲線Bに対して中流量域の揚程を低く設定した省エネ型制御用揚程曲線Dを使用し、主に中流量域において省エネルギーを図るようにしてもよい。また、
図9に示すように、標準制御用揚程曲線Bに対して大流量域の揚程を低く設定した省エネ型制御用揚程曲線Eを使用し、主に大流量域において省エネルギーを図るようにしてもよい。更に、
図10に示すように、標準制御用揚程曲線Bに対して小流量域の揚程を低く設定した省エネ型制御用揚程曲線Fを使用し、主に小流量域において省エネルギーを図るようにしてもよい。
【0056】
ここで、例えば
図5に示す第1運転(通常運転)用の標準制御用揚程曲線Bの他に、第1運転より消費電力が少ない第2運転(エコ運転)用の省エネ型制御用揚程曲線C
1を有し、
図6に示す切換ボタン22を1回押すことで、省エネ型制御用揚程曲線C
1を使用した、エコモードのポンプの第2運転(エコ運転)を行おうとした時、水が多量に使われる時間帯では、この切換ボタン22が1回押された直後に、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に移行すると、各家庭に均一圧力で給水できなくなるおそれがある。また、ポンプを第2運転(エコ運転)で運転し続けると、水の使用量が急に増える時間帯などで、水の供給量が不足するおそれがある。
【0057】
図11は、給水装置を1日運転した時における給水量(流量)と時刻との関係の一例を示すグラフである。この
図11から、水が多量に使われる時間帯は、例えば朝の7時から11時ごろ(時間:T
M1)と、夕方の18時から20時ごろ(時間:T
M2)で、朝の8時から9時ごろが最大水量の70L/minの給水量となって、水の使用量が急に増える時間帯は、例えば朝の6時から8時の間であることが判る。一方、深夜の1時から5時ごろ(時間:T
L1)にかけては、最小水量となる。
【0058】
そこで、この例では、ポンプの運転状況(運転履歴)として、給水装置の使用頻度とポンプ直前駆動時間及びポンプ停止時間との関係に着目し、切換ボタン22が押されて、エコモードが設定された(エコモードON)ときに、給水装置の使用頻度が少ないときに、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に移行させ、更にポンプを第2運転(エコ運転)で運転中に、給水装置の使用頻度が上がった時に、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に自動的に移行させるようにしている。
【0059】
なお、ポンプ直前駆動時間及びポンプ停止時間の代わりに、給水装置の使用頻度と関係がある、例えば以下の式1で表されるポンプ駆動率、及び以下の式2で表されるポンプ停止率に基づいて、給水装置の使用頻度が少ないときに、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に移行させ、更にポンプを第2運転(エコ運転)で運転中に、給水装置の使用頻度が上がった時に、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に自動的に移行させるようにしてもよい。これによっても、上記と同様に、使用者への給水を確保しつつ、省エネルギー運転が可能な時だけ省エネルギー運転を行うことができる。
ポンプ駆動率
=ポンプ駆動時間÷(ポンプ駆動時間+ポンプ停止時間) (式1)
ポンプ停止率
=ポンプ停止時間÷(ポンプ駆動時間+ポンプ停止時間) (式2)
【0060】
なお、ポンプ駆動率及びポンプ停止率は、任意の時間当りのポンプ駆動時間及びポンプ停止時間で定義してよく、また、任意のタイミングで(任意の時間毎に)更新してよい。例えば、最新の15分間当りのポンプ駆動時間及びポンプ停止時間で算出し常時更新すればよい。すなわち、ポンプ駆動率及びポンプ停止率の算出は平均値を使用し、常時最新の運転状況(運転履歴)を反映して更新されるポンプ駆動率及びポンプ停止率に基づいて、ポンプの運転を自動的に切換えることが可能となる。特に、比較的短い時間の間にポンプの運転と停止が繰返される場合には、ポンプ直前駆動時間及びポンプ停止時間の代わりに、ポンプ駆動率及びポンプ停止率に基づいて、ポンプの運転を第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)とを自動的に切換えることによって、必要以上に多くの頻度でポンプの運転を切換えることがなくなり、使用者に不快感を与えることなく、かつ、消費電力を抑えた給水を行うことができる。また、ポンプ駆動時間またはポンプ停止時間が長くなると、ポンプの運転頻度が急に変化する場合や急激な流量変動時には、ポンプ駆動率及びポンプ停止率の変化が遅れ、圧力制御に遅れが出てしまう可能性があるので、ポンプ駆動率及びポンプ停止率の定義は、必要以上に長い時間で定義せず、例えば、10分間当たり〜20分間当たりで算出するのがよい。
【0061】
ポンプ駆動率及びポンプ停止率を算出する場合のポンプ駆動時間は、現在のサイクルでの時点t
3におけるポンプ直前駆動時間(t
2〜t
3)、又は後述するように現在のサイクルでの時点t
bにおけるポンプ直前駆動時間(t
2〜t
b)だけではなく、過去のいくつかのサイクルまで遡ってそれらの各サイクルにおけるポンプを駆動している時間も合算した時間としてもよい。また、ポンプ停止時間も現在のサイクルにおける停止時間(t
1〜t
2、又は後述のt
1〜t
a)だけではなく、過去のいくつかのサイクルまで遡ってそれらの各サイクルにおけるポンプの停止時間も合算した時間としてもよい。なお、ポンプ駆動率及びポンプ停止率を算出する場合、ポンプが加圧運転をしている時間(t
3〜t
4)も含めてポンプ駆動時間(t
2〜t
4)と定義してもよい。
【0062】
図12は、例えば
図6に示す切換ボタン22を押すことで、ポンプの運転を、ポンプの運転状況(運転履歴)に基づいて、
図5に示す標準制御用揚程曲線Bを使用した、標準モードの第1運転(通常運転)から、省エネ型制御用揚程曲線C
1を使用したエコモードの第2運転(エコ運転)に移行させる時の制御のフローチャートを示す。
図12は、ポンプの運転の切換えの判断に必要な要素のみを開示している。このことは、以下のフローチャートにあっても同様である。また、以下のフローチャートにおいて、同じステップは同じステップ番号を付して、重複した説明を省略する。
【0063】
先ず、ポンプが第1運転(通常運転)で運転されているか否かを判断し(ステップ1)、ポンプが第1運転(通常運転)で運転されている時に、切換ボタンによるエコモードON操作があるか否かを判断する(ステップ2)。そして、切換ボタンによるエコモードON操作がある場合には、エコモードをONにする(ステップ3)。なお、切換ボタンによるエコモードON操作がない場合には、切換ボタンによるエコモードOFF操作があるか否かを判断し(ステップ4)、切換ボタンによるエコモードOFF操作がある場合には、エコモードをOFFにする(ステップ5)。
【0064】
次に、エコモードがONであるか否かを判断し(ステップ6)、エコモードがOFFの場合は、ポンプの運転を第1運転(通常運転)としたまま(ステップ7)、ステップ1に戻る。エコモードがONの場合は、ポンプが停止中(ポンプが駆動していない状態)であるか否かを判断する(ステップ8)。
【0065】
ポンプが停止中である場合には、ポンプ停止時間のカウントを行い(ステップ9)、ポンプ直前駆動時間をクリアする(ステップ10)。そして、ポンプ停止時間を計測し(ステップ11)、ポンプ停止時間(例えば、
図3に示す時点t
aにおけるポンプ停止時間は、時間t
1〜t
a)が所定時間b(例えば2分)以上(ポンプ停止時間(t
1〜t
a)≧b)の場合には、あまり水が使われない時間帯と判断して、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に移行し(ステップ12)、ステップ1に戻る。
【0066】
一方、ポンプが停止中でない(駆動している)場合には、ポンプの運転を第1運転(通常運転)のままにしてステップ1に戻る。
【0067】
このように、あまり水が使われない時間帯に、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に移行させることで、必要水量を供給するのに対して余裕度を抑えた低い回転速度でポンプを運転して消費電力を少なくすることができる。ここで、あまり水が使われない時間帯は、例えば
図11に示す例にあっては、夜の22時から6時ごろまでの間(時間:T
L1)、および昼過ぎの12時から16時ごろまでの間(時間:T
L2)である。
【0068】
図13は、
図12のステップ1で、ポンプが
図5に示す省エネ型制御用揚程曲線C
1を使用した第2運転(エコ運転)である(ポンプが第1運転(通常運転)でない)と判断された時に、第2運転(エコ運転)から、標準制御用揚程曲線Bを使用した第1運転(通常運転)に移行させる時のフローチャートを示す。
【0069】
この場合、エコモードがONであるか否かを判断し(ステップ6)、エコモードがOFFの場合は、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に移行させ(ステップ7−1)、ステップ1に戻る。エコモードがONの場合は、ポンプが停止中であるか否かを判断する(ステップ8)。
【0070】
そして、ポンプが停止中である場合に、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)としたままステップ1に戻る。
【0071】
一方、ポンプが停止中でない場合には、ポンプ直前駆動時間のカウントを行い(ステップ13)、ポンプ停止時間をクリアする(ステップ14)。そして、ポンプ直前駆動時間を計測し(ステップ15)、ポンプ直前駆動時間(例えば、
図3に示す時点t
bにおけるポンプ直前駆動時間は、時間t
2〜t
b)が所定時間a(例えば2分)未満(ポンプ直前駆動時間(t
2〜t
b)<a)の場合には、あまり水が使われない時間帯と判断して、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)としたままステップ1に戻る。ポンプ直前駆動時間が所定時間a(例えば2分)以上(ポンプ直前駆動時間(t
2〜t
b)≧a)の場合には、頻繁に水が使用される時間帯と判断して、切換ボタンが押されてエコモードONの状態であっても、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に移行し(ステップ16−1)、ステップ1に戻る。
【0072】
このように、頻繁に水が使用されている時間帯に、切換ボタンが押されてエコモードONの状態であっても、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に強制的に戻すことで、使用者への給水を確保することができる。
【0073】
なお、上記所定時間a,bは任意に設定できる。この例では、ポンプの駆動時間と停止時間を常に監視し、ポンプの運転に反映することができる。しかも、切換ボタンを再度押してエコモードをOFFにした場合は、強制的に第1運転(通常運転)に戻すことで、供給圧に不安があるような場合に、即座に第1運転(通常運転)に戻すことができる。
【0074】
また、急激な圧力変動を避けるため、切換ボタンによるエコモードのON/OFF操作があった場合や、または制御用揚程曲線を自動で切換える場合に、ポンプの運転を急激に切換えることなく、所定の時間をかけて段階的に切換えていくことが好ましい。
【0075】
上記の例では、切換ボタンの操作によって、ポンプの第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)への移行等を行うようにしているが、切換ボタンを操作することなく、エコモードを設定するようにしても良い。例えば工場出荷時に設定部16(
図4参照)をエコモードにすることもできる。予めエコモードに設定しておくことで、ポンプの運転状況(運転履歴)に応じて、第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)を自動的に切換わるようにして、給水装置を制御することができる。
【0076】
図14は、予めエコモードに設定するようにした場合の、
図5に示す標準制御用揚程曲線Bを使用した、標準モードの第1運転(通常運転)から、省エネ型制御用揚程曲線C
1を使用した、エコモードの第2運転(エコ運転)に移行させる時のフローチャートである。
図12に示すフローチャートと異なる点は、以下の通りである。
【0077】
つまり、第1運転(通常運転)であると判断された場合に(ステップ1)、エコモードの設定がONであるか否かを判断し(ステップ2−1)、エコモードの設定がONである場合には、エコモードをONにして(ステップ3)、ステップ8に移る。エコモードの設定がONでない場合には、エコモードをOFFにし(ステップ5)、ポンプの運転を第1運転(通常運転)としたまま(ステップ7)、ステップ1に戻る。
【0078】
図15は、
図14のステップ1で、ポンプが
図5に示す省エネ型制御用揚程曲線C
1を使用した第2運転(エコ運転)である(ポンプが第1運転(通常運転)でない)と判断された時に、第2運転(エコ運転)から、標準制御用揚程曲線Bを使用した第1運転(通常運転)に移行させる時のフローチャートを示す。
図14に示すフローチャートと異なる点は以下の通りである。
【0079】
つまり、第2運転(エコ運転)である(第1運転(通常運転)ではない)と判断された場合に(
図14のステップ1)、エコモードの設定がONであるか否かを判断し(ステップ2−1)、エコモードの設定がONである場合には、エコモードをONにして(ステップ3)、ステップ8に移る。エコモードの設定がONでない場合には、エコモードをOFFにし(ステップ5)、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)に移行させ(ステップ7−1)、ステップ1に戻る。
【0080】
なお、制御用揚程曲線を切換える場合、製品スペックを変えないために、最大流量域については、制御用揚程曲線を変えない方が好ましい。また、一般家庭向けの給水装置では、使用量が多い朝や晩以外は少水量の使用をすることが多い。このため、
図10に曲線Fで示すように、使用頻度が多い小流量域でのみ制御用揚程曲線を省エネ型制御用揚程曲線にすることで、最大流量時の製品スペックを確保しつつ、かつ省エネ効果を高くすることができる。
【0081】
上記の例では、第1運転(通常運転)及び第2運転(エコ運転)の切換え手段として、推定末端圧力一定制御において、制御用揚程曲線を切換えることを例示したが、第1運転(通常運転)及び第2運転(エコ運転)の切換え手段はそれに限らない。例えば、吐出圧力一定制御の場合は、
図5に示すように、設定吐出し圧力が使用流量によらずに一定値PA
1となる標準制御用揚程曲線(直線)を使用して制御する運転を第1運転(通常運転)とし、このPA
1に1未満の一定の比率をかけた吐出し圧力PA
2になる省エネ型制御用揚程曲線(直線)を使用して制御する運転を第2運転(エコ運転)としてもよい。また、ポンプの回転速度に一定の比率(例えば0.95)をかけて、少ない回転速度で、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)にするようにしてもよい。
【0082】
また、上記の例では、ポンプの第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)の切換えを、ポンプ直前駆動時間やポンプ停止時間で判断しているが、これらの時間といった運転状況(運転履歴)のみではなく、ポンプ直前駆動時間と、ポンプの回転速度、吐出し圧力、最大流量、ポンプ直前駆動時間での平均吐出し流量又はポンプ直前駆動時間での積算吐出し流量等の運転状況(運転履歴)のうちいずれか1つ又は2つ以上を、すなわちポンプ直前駆動時間だけでなく使用水量も加味した判断指標を基に判断するようにしても良い。
【0083】
なお、給水装置として圧力タンクを使用した例を挙げているが、圧力タンクを用いない給水装置や、ポンプの駆動とその停止を繰返す装置として、例えばラインポンプ等のポンプ単体を使用した給水装置においても、上記の判断指標を用いた省エネ制御を適用できる。
【0084】
使用水量に応じた任意の係数を積算し、この積算結果を使って、第2運転(エコ運転)を行うか否かを最適に判断するようにした例を以下に説明する。
ポンプの第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)への切換えをポンプ停止時間のみで判断していると、ポンプ停止中にのみ第2運転(エコ運転)に切換わる。すなわち、使用水量が少ない場合でもポンプ運転時間が長時間ならば第1運転(通常運転)が継続される。しかしながら、使用水量も加味した判断指標を基に判断すれば、ポンプ駆動中でも使用水量が少ないと判断した場合には第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)への切換えを行うことが出来る。つまり、使用水量が少ない場合には、ポンプが駆動していても第2運転(エコ運転)へ切換えてポンプを駆動することができ、これによって、消費電力をより少なくすることができる。
【0085】
ポンプ駆動中の使用水量はポンプの運転周波数に比例するので、ポンプの運転周波数に対応した積算係数αを定義する。この積算係数αは、給水装置が設置された各現場において基準となる水量(例えば、マンションなどの集合住宅ならば、朝晩のピーク時間帯や深夜の殆ど水が使われない時間帯を避けた昼間の使用水量)付近を基準水量とし、積算係数αを0(α=0)とする。基準水量より水量が少ない場合は、積算係数αをマイナス(α<0)、基準水量が多い場合は、積算係数αをプラス(α>0)とする。例えば、
図11に示す時刻と給水量の関係の一例を示すグラフにおいて、
図11に点線で示す範囲内の任意の給水量、つまり約25L/minから約35L/minの範囲内の任意の給水量を基準水量とすることができる。
【0086】
図16に示すように、ポンプの運転周波数が最高周波数の、例えば1/2の時を基準水量として、この時の積算係数αを0(α=0)とし、ポンプの運転周波数が最高周波数の時の積算係数αを100(α=100)とする。そして、ポンプの運転周波数が0の時の積算係数αを−100(α=−100)とした直線を基に、積算係数αを算出する。この場合、例えばポンプを運転周波数A
1で駆動しているとき、積算係数αはB
1(α=B
1)となり、運転周波数A
2で駆動しているとき、積算係数αは−B
2(α=−B
2)となる。
【0087】
なお、
図17に示すように、ポンプの運転周波数が最高周波数の、例えば1/2の時を基準水量として、この時の積算係数αを0(α=0)とし、ポンプの運転周波数が所定の運転周波数A
3を超えた時の積算係数αを一定値の100(α=100)とし、ポンプの運転周波数が所定の運転周波数A
4以下である時の積算係数αを一定の−100(α=−100)としたグラフを基に、積算係数を算出しても良い。
【0088】
また、
図18に示すように、ポンプ運転周波数が最高周波数の、例えば1/2の時を基準水量として、この基準水量を挟んだ所定の運転周波数領域A
5〜A
6を不感帯領域として、この不感帯領域でポンプを駆動している時の積算係数αを0(α=0)とし、不感帯領域を超えた運転周波数でポンプを駆動している時には、積算係数αが100に直線状に増加し、不感帯領域より少ない運転周波数でポンプを駆動している時には、積算係数αが−100に直線状に減少するグラフを基に、積算係数αを算出してもよい。
【0089】
不感帯領域があると、基準水量付近にて積算値が変動しない。そのため基準水量付近でポンプを駆動している時間帯には、第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)への切換えや、第2運転(エコ運転)から第1運転(通常運転)への切換えは行われないため、ポンプの第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)の切換えのハンチングを軽減することができるとともに、第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)との間の切換えは、使用者の使用水量により重きを置いて判断が為されるようにすることができる。また、基準水量付近における圧力センサの誤差やノイズ等の影響を軽減することができる。
【0090】
図19に示すように、不感帯領域を超えた運転周波数でポンプを駆動している時には、運転周波数の増加とともに、積算係数αが2次曲線に沿って100まで増加し、不感帯領域より少ない運転周波数でポンプを駆動している時には、運転周波数の減少とともに、積算係数αが2次曲線に沿って−100まで減少するグラフを基に、積算係数αを算出してもよい。
【0091】
積算係数αが2次曲線となると、積算係数αを直線で定義するのに比べて、大水量域または小水量域において、使用水量の変化に対する積算値の増減がより大きくなる。よって、大水量域または小水量域では、ポンプの第1運転(通常運転)と第2運転(エコ運転)との間の切換えをより早いタイミングで行うことができる。
【0092】
なお、積算係数αは−100<α<100のみではなく、この数値範囲に限らず任意の数値範囲としてよい。ただし、運転中に第1運転(通常運転)から第2運転(エコ運転)に切換えを行いたい場合は、使用水量が少ないとき、積算係数α<0とする。上記の例では、ポンプの運転周波数を基に積算係数を求めるようにしているが、運転周波数の代わりに、モータに供給される電流値を基に積算係数を求めるようにしても良く、推定末端圧力一定制御の場合は、運転周波数の代わりに、目標圧を基に積算係数を求めるようにしてもよい。
【0093】
推定末端圧力一定制御における目標圧は、運転中のポンプの周波数が使用水量に比例することに基づいて算出される。よって、運転周波数の代わりに推定末端圧力一定制御の目標圧を使用すると、特に複数台運転の場合は駆動中の全ポンプの流量の演算を行う必要がなくなる。
【0094】
そして、算出した積算係数を任意のサンプリング間隔毎に積算して、積算値(積分値)を求める。この時、ポンプの駆動時間が長くなると積算値が過小または過大となり、急激な流量変動時には圧力制御に遅れが出てしまう可能性があるので、積算値には上下限を設けても良い。ポンプ運転が長時間継続するときは、例えば1時間に1回など、積算値(積分値)を一定時間にてクリアしてもよい。
【0095】
図20は、
図17に示すグラフを基に積算係数を算出した時の積算係数の積算値と時間との例を示す。この例では、ポンプの駆動を開始した後、時間t
10から時間t
11までは積算係数αがプラス(α>0)となる運転、つまり最高周波数の1/2を超える運転周波数でポンプを駆動し、その後、積算係数αがマイナス(α<0)となる運転、つまり最高周波数の1/2を下回る運転周波数でポンプを駆動して、現時点t
12まで達した時の積算係数の積算値を示している。
【0096】
つまり、時間t
10〜t
11までは積算係数αが正であるため、その積算値はプラスとなり、時間0から時間t
10までと、時間t
11〜t
12までは積算係数が負であるため、その積算値はマイナスとなる。このため、時間t
10〜t
11まで積算係数の積算値を表す面積S
1から、時間0から時間t
10までの積算係数の積算値の面積を表す面積S
0と、時間t
11〜t
12まで積算係数の積算値の面積を表す面積S
2とを差し引いた値(S
1−(S
0+S
2))が現時点t
12における積算係数の積算値となる。
【0097】
そして、例えば、第1運転(通常運転)を第2運転(エコ運転)に移行する時に積算係数の積算値と比較する閾値を第1閾値とし、第2運転(エコ運転)を第1運転(通常運転)に移行する時に積算係数の積算値と比較する閾値を第2閾値とする。そして、例えば第1閾値及び第2閾値を第n閾値(n=1または2)として、下記の式3のように定義し、また例えば第1閾値と第2閾値との関係を、例えば下記の式4のように設定する。
第n閾値=m
n×α
max×N×T
n (式3)
第1閾値≦第2閾値 (式4)
ここで、m
n:任意の係数、α
max:最高使用水量時の積算係数、N:1秒当りのサンプリング回数、T
n:任意の時間(単位:秒)を示す。
【0098】
この場合、積算係数の積算値が0(ゼロ)となった時に、第1運転(通常運転)を第2運転(エコ運転)に移行する場合は、式3で示す第n閾値を第1閾値として、係数m
1または時間T
1をゼロ(0)とし、第1閾値をゼロ(0)とすればよい。また、1秒当りのサンプリング回数を10回とし、最高使用水量時の積算係数の2倍の水量を3秒間使用した時に、第2運転(エコ運転)を第1運転(通常運転)に移行する場合は、m
2=2、α
max=100、N=10、T
2=3とすることで、第2閾値が求められる。なお、第1閾値と第2閾値とを等しくしても良い。
【0099】
そして、
図21に示すように、ポンプを第1運転(通常運転)で運転中に、積算係数の積算値が第1閾値を下回った時に、ポンプの運転を第1運転(通常運転)を第2運転(エコ運転)に移行する。一方、ポンプの第2運転(エコ運転)での運転中に、積算係数の積算値が第2閾値を超えた時に、ポンプの運転を第2運転(エコ運転)を第1運転(通常運転)に移行する。
【0100】
図22は、この時のフローチャートの要部(
図12及び
図13におけるステップ8以降)を示す。つまり、ポンプが停止中であるか否かを判断し(ステップ8)、ポンプが停止中である場合には、積算値をクリアし(ステップ20)、ステップ1(
図12及び
図13参照)に戻る。
【0101】
ポンプを第1運転(通常運転)で運転中の場合には、積算係数αを算出し(ステップ21)、積算係数αの積算値を求める(ステップ22)。そして、積算係数の積算値と第1閾値とを比較し(ステップ23)、積算係数の積算値が第1閾値より小さい時(積算係数の積算値<第1閾値(=0))、第1運転(通常運転)を第2運転(エコ運転)に移行し(ステップ24)、ステップ1に戻る。積算係数の積算値が第1閾値以上(積算係数の積算値≧第1閾値(=0))である場合には、積算係数の積算値と第2閾値とを比較し(ステップ25)、積算値が第2閾値より大きい(積算値>第2閾値)場合は、第1運転(通常運転)を継続し(ステップ26)、ステップ1に戻り、積算値が第2閾値以下である(積算値≦第2閾値)場合も、第1運転(通常運転)を継続したままステップ1に戻る。
【0102】
ポンプを第2運転(エコ運転)で運転中の場合には、積算係数αを算出し(ステップ21)、積算係数の積算値を求める(ステップ22)。そして、積算係数の積算値と第1閾値とを比較し(ステップ23)、積算係数の積算値が第1閾値より小さい(積算係数の積算値<第1閾値(=0))場合には、第2運転(エコ運転)を継続して(ステップ24)、ステップ1に戻る。積算係数の積算値が第1閾値以上(積算係数の積算値≧第1閾値(=0))である場合には、積算係数の積算値と第2閾値とを比較し(ステップ25)、積算係数の積算値が第2閾値より大きい時(積算係数の積算値>第2閾値)には、第2運転(エコ運転)を第1運転(通常運転)に移行し(ステップ26)、ステップ1に戻り、積算値が第2閾値以下(積算値≦第2閾値)である場合は、第2運転(エコ運転)を継続して、ステップ1に戻る。
【0103】
以上、ポンプ駆動中の使用水量に応じた任意の係数としての積算係数αを積算し、この積算結果を使って、第2運転(エコ運転)を行うか否かを最適に判断することを説明したが、第2運転(エコ運転)を行うための省エネ型制御用揚程曲線を、積算係数αを積算した積算結果(積算値)に基づいて変化(更新)させて、エコ運転を行ってもよい。
【0104】
例えば
図10に示す、省エネ型制御用揚程曲線Fを使用した推定末端圧力一定制御の場合は、積算係数の積算値が第1閾値と第2閾値との間の値の時に、
図23に示すように、省エネ型制御用揚程曲線Fを、積算係数の積算値(積分値)に比例させた、新たな省エネ型制御用揚程曲線F
1またはF
2等に更新するようにしても良い。
【0105】
この省エネ型制御用揚程曲線F
1またはF
2の最低必要圧力PB(F
1)またはPB(F
2)は、省エネ制御用揚程曲線Fの最低必要圧力PB(F)を第1閾値に、標準制御用揚程曲線Bの最低必要圧力PB
1を第2閾値にそれぞれ対応させた直線と積算係数の積算値との交点から求められる。
【0106】
この場合、
図24に示すように、ポンプを第1運転(通常運転)で運転中の場合であって、積算係数の積算値が第1閾値
以上(積算係数の積算値≧第1閾値(=0))
であり、かつ積算係数の積算値が第2閾値
以下(積算係数の積算値≦第2閾値)
である場合に、ポンプの運転を第1運転(通常運転)から省エネ型制御用揚程曲線F
1またはF
2に基づく第3運転(エコ運転)に移行し(ステップ27)、ステップ1に戻る。
【0107】
また、ポンプを第2運転(エコ運転)で運転している場合であって、積算係数の積算値が第1閾値
以上(積算係数の積算値≧第1閾値(=0))
であり、かつ積算係数の積算値が第2閾値
以下(積算係数の積算値≦第2閾値)
である場合には、ポンプの運転を、省エネ型制御用揚程曲線Fに基づく第2運転(エコ運転)から、省エネ型制御用揚程曲線F
1またはF
2に基づく第3運転(エコ運転)に移行し(ステップ27)、ステップ1に戻る。この例では、積算係数の積算値が、第1閾値と第2閾値の間に便宜上2つ存在し、省エネ型制御用揚程曲線F
1またはF
2に基づく第3運転(エコ運転)に移行するようにした場合について説明したが、1つだけ又は3つ以上の省エネ型制御用揚程曲線に基づく第3運転(エコ運転)に段階的に移行するようにしてもよい。また、積算係数の積算値に基づいて、省エネ型制御用揚程曲線の最低必要圧力PB(F
x)を連続的に常時変化(更新)させることによって、常時更新される省エネ型制御用揚程曲線を適用して、エコ運転に使用してもよい。このことは、以下の
図25に示す例にあっても同様である。
【0108】
また、例えば
図5に示す、省エネ型制御用揚程曲線Gを使用した吐出し圧力一定制御の場合は、積算係数の積算値が第1閾値と第2閾値との間の値の時に、
図25に示すように、省エネ型制御用揚程曲線Gを、積算係数の積算値(積分値)に比例させた、新たな省エネ型制御用揚程曲線G
1またはG
2等に更新するようにしても良い。
【0109】
この省エネ型制御用揚程曲線G
1またはG
2の最大必要圧力(通常目標圧=設定圧力)PA(G
1)またはPA(G
2)は、省エネ制御用揚程曲線Gの最大必要圧力PA(G)を第1閾値に、標準制御用揚程曲線Bの最大必要圧力PA
1を第2閾値にそれぞれ対応させた直線と積算係数の積算値との交点から求められる。この場合の制御例は、前述の
図24に示す例と同様である。
【0110】
上述のように、省エネ型制御用揚程曲線を、積算係数の積算値(積分値)に比例させた、新たな省エネ型制御用揚程曲線に更新する制御は、標準制御用揚程曲線と省エネ型制御用揚程曲線を自動で切換える場合だけでなく、手動で切換える場合であっても、複数の省エネ型制御用揚程曲線から自動的に適切な曲線を選択する場合に適用できる。
【0111】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。