【実施例】
【0041】
本発明に係るセパレータについて実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、各物性値は以下のようにして測定した。
【0042】
<ポリビニルアルコール系繊維の熱水溶解温度℃>
試験長5cmのポリビニルアルコール系繊維のトウに荷重0.9gf/500dtexの錘を取り付けたものを試料とし、該試料を500ccの水(20℃)中で吊るし、昇温速度1℃/分で昇温して、繊維が溶断したときの温度を熱水溶解温度とした。
【0043】
<叩解度>[(濾水度) CSF ml]
JIS P 8121「パルプの濾水度試験方法」に準じてカナダ標準濾水度を測定した。
【0044】
<平均繊維径 μm>
走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−510」)により倍率5000倍で撮影したガラス繊維の拡大写真から、無作為に20本の繊維を選び、それらの繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
【0045】
<最大繊維径 μm>
走査型電子顕微鏡(日立製作所社製「S−510」)により倍率5000倍でガラス繊維を10箇所撮影し、撮影した10箇所中で最大径となるガラス繊維を最大繊維径とした。
【0046】
<目付>
試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の質量を測定し、1m
2当りに換算して求めた。
【0047】
<厚さ mm、密度 g/cm
3>
JIS P 8118「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に準じて測定した。
【0048】
<引張強力>
JIS P8113「紙及び板紙の引張強さ試験方法」に準じて、繊維シートの縦方向の引張強力を測定した。
【0049】
<突刺強力>
KES−G5ハンディ圧縮試験機(カトーテック(株)製)を使用して測定を行った。サンプルをφ10mm径の円形に固定し、径1mm、R0.5mmの針を使って貫通試験を行い、その時の圧力の強さ(g)を測定した。
【0050】
<通気度 cc/cm
2/s>
JIS L 1096 6.27「一般織物試験方法 通気性」に準じ、フラジール形試験機にて測定した。
【0051】
<インピーダンス(抵抗値)>
試料を、1モル%の四フッ化ホウ素リチウム液[キシダ化学(株)、1mol/L LiBF
4/EC(エチルカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート(3:7v/v%)]に20℃、30
分浸漬し、保液十分な状態(30秒液切りした状態)で、測定雰囲気(20℃×65%)にてインピーダンス測定器[国洋電気工業(株)製:KC−547 LCR METER)で測定した。
【0052】
<電解液含浸保管後強力>
幅15mm×長さ170mmにカットした試料を、LIB用電解液[キシダ化学(株)製、電解質:LiBF
6 1mol/L、溶媒:EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチレンメチルカーボネート)とを、3:7(V/V%)に配合した混合溶媒]に、グローボックス内で浸漬して、密封容器に入れ、60℃に設定された乾燥機内で3ケ月保管し、保管後の引張強力を求めた。
【0053】
(実施例1)
熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2
mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB101」)(構成繊維2)、1.7dtex、繊維長3mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製、商品名「テンセル」)をパルパーとファイバライザにて叩解し、CSF10mlのフィブリル化したもの(構成繊維3)を調整し、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%、構成繊維3を35%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100Kgf/cmで処理して、目付10.3g/m
2、厚さ13μm、密度0.79g/m
3のシートを作製した。
【0054】
(実施例2)
構成繊維3の叩解度を実施例1の10mlから50mlに変えるほかは、実施例1と同様の構成繊維1および構成繊維2を用いて、構成繊維1を40%、構成繊維2を15%および構成繊維3を45%の配合率で混合してスラリーを調整し、実施例1と同様にして抄紙、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付9.8g/m
2、厚さ12μm、密度0.82g/m
3のシートを作製した。
【0055】
(実施例3)
実施例1と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%および構成繊維3を35%の配合率で混合してスラリーを調整し、実施例1と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付10.1g/m
2、厚さ25μm、密度0.40g/m
3のシートを作製した。なお、厚さの調整は熱プレス機のクリアランスを調整して行った。
【0056】
(実施例4)
実施例1と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%および構成繊維3を35%の配合率で混合して、スラリーを調整し、実施例1と同様に抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付7.1g/m
2、厚さ9μm、密度0.79g/m
3のシートを作製した。
【0057】
(比較例1)
実施例1〜4のシートの代わりに、ポリエチレンフィルム(目付9g/m
2、厚さ20μm、密度0.45g/cm
3)を用いた。
【0058】
(比較例2)
繊度1.1
dtex、繊維長3mmのアセテート繊維(構成繊維1)と、実施例1におけると同じ構成繊維2および構成繊維3を用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%および構成繊維3を35%の配合率で配合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙した。抄紙後ドライヤーで乾燥し、ついで熱プレス機で処理して、目付8g/m
2、厚さ20μm、密度0.40g/m
3のシートを作製した。
【0059】
(比較例3)
熱水溶解温度100℃以上、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール繊維(FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN30200」)(構成繊維I)と、実施例1において用いたと同じ構成繊維2および構成繊維3とを用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%、構成繊維3を35%の配合率で混合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付10.2g/m
2、厚さ15μm、密度0.68g/m
3のシートを作製した。
【0060】
(比較例4)
構成繊維3の叩解度を実施例1の10mlから50mlに変えるほかは、実施例1で用いたのと同じ構成繊維1および構成繊維2を用い、構成繊維1を20%、構成繊維2を15%、構成繊維3を65%の配合率で配合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付10.3g/m
2、厚さ13μm、密度0.79g/m
3のシートを作製した。
【0061】
(比較例5)
実施例1で用いた構成繊維2と、叩解度を50mlとした構成繊維3とを用いて、構成繊維2を15%、構成繊維3を85%の配合率で配合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥し、ついで熱プレス機で処理して、目付10.3g/m
2、厚さ13μm、密度0.79g/m
3のシートを作製した。
【0062】
(比較例6)
熱水溶解度80℃、繊度0.4dtex、繊維長4mmのポリビニルアルコール系繊維(未FA化繊維)(構成繊維1)と、実施例1におけると同じ構成繊維2および構成繊維3を用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を15%および構成繊維3を35%の配合率で配合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥したが、構成繊維1および構成繊維2のポリビニルアルコールの溶解によりシートを形成することができなかった。
【0063】
実施例1〜4および比較例1〜6のシートについて、シートを構成している構
成繊維の仕様を表1に、シートの性能(引張強力、突刺強力、通気度、抵抗値、引張強力/厚さ比)を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
(1)熱水溶解温度95℃のポリビニルアルコール系繊維(構成繊維1)(配合量:50%)に、セルロース繊維(構成繊維3)とポリビニルアルコール・バインダー繊維(構成繊維2)を配合して形成したシートでは、厚さ当たりの強度的性質に優れるとともに、通気度に優れたシート(セパレータ)が得られた(実施例1)。
(2)セルロース繊維の叩解度を高くし(10→50ml)かつ配合率を35→45%と高くし、構成繊維1の配合率を50%から40%に低くしても、本発明の特徴(厚さあたりの強度的性質および通気度に優れている)を保持している(実施例2)。
(3)実施例1と同様にシートを形成し、嵩高く形成したシートでは、強度/厚さ比は低下するが、強度そのものは維持され、通気度が増す(実施例3)。
(4)実施例1と同様の構成繊維を用いて、厚みを薄くして形成したシートでは、強度的性質を維持しながら、通気度の高いシートが得られた(実施例4)。
(5)ポリエチレンフィルムをセパレータに使用すると、強度的性質は優れているが、通気度が非常に低い点が欠点となる(比較例1)。
(6)アセテート繊維を50%配合した繊維シートでは、繊維間の接着が弱く、強度/厚さ比が0.014であり、実用レベルに達していないと判断される(比較例2)
(7)熱水溶解度100℃以上のポリビニルアルコール系繊維(FA化繊維)を配合して形成したシートでは、通気度は得られているが、強度的性質、強度/厚さ比において見劣りがする。(比較例3)。
(8)熱水溶解度95℃のポリビニルアルコール系繊維(未FA化繊維)を20%配合し、セルロース繊維の叩解度を高めた(50ml)場合には、通気度の点で見劣りがするとともに実施例1に比べてポリビニルアルコールの配合量が少ないためか、電解液含浸前の強力に対して電解液含浸保管後強力の低下度合いが大きい結果を示した(比較例4)。
(9)セルロース繊維(叩解度10ml)をポリビニルアルコール・バインダー繊維で接着させることにより形成されたシートでは、強度的性質が低く、通気度も低い結果であった(比較例5)。
(10)熱水溶解度80℃以下のポリビニルアルコール系繊維が65%を占めると、シート形成時の水分を含んだ状態での加熱処理に耐えることができなく、安定したシートの形成が困難となる(比較例6)。
【0068】
(実施例5)
熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105−1」)(構成繊維2)と、ガラス繊維(製品名「B−00−F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション、粉砕方法:アトライターMA1SC型(三井三池製作所製)にφ5mmのセラミックボール充填してガラス繊維1wt%スラリーを2時間処理し最大繊維径6μmとしたものを使用)(構成繊維3)を、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して、目付10.3g/m
2、厚さ15μm、密度0.69g/m
3のシートを作製した。
【0069】
(実施例6)
構成繊維3の配合量を実施例5の40%から30%に変えるほかは、実施例5と同様の構成繊維1〜3を用いて、構成繊維1を50%、構成繊維2を20%、構成繊維3を30%、の配合率で混合してスラリーを調整し、実施例5と同様にして抄紙、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付9.8g/m
2、厚さ15μm、密度0.65g/m
3のシートを作製した。
【0070】
(実施例7)
構成繊維3をガラス繊維(製品名「B−02−F」(平均繊維径0.46μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)とする以外は実施例5と同様の配合比率で混合してスラリーを調整し、実施例5と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付10.1g/m
2、厚さ15μm、密度0.67g/m
3のシートを作製した。なお、厚さの調整は熱プレス機のクリアランスを調整して行った。
【0071】
(実施例8)
実施例5と同様の構成繊維1、構成繊維2および構成繊維3を用いて、実施例5と同様の配合比率で混合して、スラリーを調整し、実施例5と同様に抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理時の線圧を40kgf/cmに変更して、目付14.9g/m
2、厚さ20μm、密度0.75g/m
3のシートを作製した。
【0072】
(実施例9)
構成繊維3として製品名「B−15−F」(平均繊維径1.4μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)のガラス繊維を用いること以外は、実施例5と同様の配合比率で混合してスラリーを調整し、実施例5と同様にして抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、ついで熱プレス機で処理して、目付9.7g/m
2、厚さ15μm、密度0.65g/m
3のシートを作製した。
【0073】
(実施例10)
構成繊維3の配合量を実施例5の40%から10%に変えるほかは、実施例5と同様の構成繊維1〜3を用いて、構成繊維1を70%および構成繊維2を20%、構成繊維3を10%の配合率で混合してスラリーを調整し、実施例5と同様にして抄紙、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付10.8g/m
2、厚さ15μm、密度0.72g/m
3のシートを作製した。
【0074】
(比較例7)
熱水溶解温度100℃以上、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール繊維(FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN30200」)(構成繊維1)と、実施例5において用いたと同じ構成繊維2および構成繊維3とを用いて、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率で混合して、スラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付10.4g/m
2、厚さ15μm、密度0.69g/m
3のシートを作製した。
【0075】
(比較例8)
構成繊維3の配合量を実施例5の40%から60%に変えるほかは、実施例5と同様の構成繊維1〜3を用いて構成繊維1を20%、構成繊維2を20%、構成繊維3を60%の配合率で混合してスラリーを調整し、実施例5と同様にして抄紙、抄紙後ドライヤーで乾燥、熱プレス機で処理して、目付10.6g/m
2、厚さ15μm、密度0.71g/m
3のシートを作製した。
【0076】
実施例5〜10および比較例7〜8のシートについて、シートを構成している構成繊維の仕様を表4に、シートの性能(引張強力、突刺強力、通気度、抵抗値、引張強力/厚さ比)を表5に示す。実施例5と実施例9のシートについて電解液含浸保管後の強力を測定した結果を表6に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
(1)熱水溶解温度95℃のポリビニルアルコール系繊維(構成繊維1)(配合量:40%)に、ポリビニルアルコール・バインダー繊維(構成繊維2)(配合量:20%)を配合し、さらに平均繊維径0.33μm、最大繊維径6μmのガラス繊維(構成繊維3)(配合量:40%)を加えて形成したシートでは、強度的性質に優れるとともに、通気度に優れたシート(セパレータ)が得られ、また、電解液含浸前の強力に比べて電解液含浸保管後強力の低下程度は、ポリビニルアルコールの配合量が同程度の実施例1と同程度であった(実施例5)。
(2)構成繊維1の配合量を40%から50%に増やし、構成繊維3の配合量を実施例5の40%から30%に低くしても、本発明の特徴(強度的性質および通気度に優れている)を保持している(実施例6)。
(3)構成繊維3の平均繊維径を0.46μmとした以外は実施例5と同様に形成したシートでは、強度および通気度が維持される(実施例7)。
(4)実施例5と同様の構成繊維を用いて、目付、厚みを厚くして形成したシートでは、強度的性質が向上する(実施例8)。
(5)構成繊維3として、平均繊維径が1.4μmのガラス繊維を40%配合した繊維シートでも、好ましいシートが得られる(実施例9)。
(6)構成繊維1の配合量を70%に増やし、構成繊維3の配合量を実施例5の40%から10%に変えることにより形成されたシートでは、通気度が高くなるが、セパレータとして使用可能である(実施例10)。
(7)熱水溶解度100℃以上のポリビニルアルコール系繊維(FA化繊維)を配合して形成したシートでは、通気度は得られているが、強度的性質において見劣りがする(比較例7)。
(8)熱水溶解度95℃のポリビニルアルコール系繊維(未FA化繊維)〔構成繊維I〕を20%配合した場合には、通気度の点で見劣りがする(比較例8)。