(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定試料を収容する測定セルが光路上に位置する測定位置と、前記測定セルが前記光路上から退避した退避位置とを切り替えるものであり、前記測定位置から前記退避位置への第1移動速度と、前記退避位置から前記測定位置への第2移動速度とが異なるように構成されたセル切り替え機構と、
前記第1移動速度と前記第2移動速度とに関連する速度情報を前記測定試料の測定に用いられる光を用いて検出し、前記測定位置及び前記退避位置を判別する判別機構とを具備する分析装置。
測定試料を収容する測定セルが光路上に位置する測定位置と、前記測定セルが前記光路上から退避した退避位置とを切り替えるものであり、前記測定位置から前記退避位置への第1移動速度と、前記退避位置から前記測定位置への第2移動速度とが異なるように構成されたセル切り替え機構と、
前記第1移動速度と前記第2移動速度とに関連する速度情報を光を用いて検出し、前記測定位置及び前記退避位置を判別する判別機構とを具備する分析装置。
【背景技術】
【0002】
従来の分析装置としては、例えば特許文献1に示すように、半導体洗浄装置等の半導体製造装置に用いられる薬液の濃度を測定する分光分析装置がある。この分光分析装置は、薬液を収容する測定セルと、当該測定セルに測定光を照射する光照射部と、前記測定セルを通過した透過光を検出する光検出部と、当該光検出部により得られた光強度信号に基づいて、前記薬液の濃度を算出する演算装置とを備えている。そして、この分光分析装置は、光照射部及び光検出部の間に形成される光路と測定セルとを相対移動させることにより、光路上に測定セルが位置する測定位置と、前記光路上に測定セルが位置しない退避位置とを定期的に切り替えることによって、光照射部や光検出部等の校正を行うように構成されている。
【0003】
このため前記分光分析装置は、前記測定セルを測定位置と退避位置とに切り替えるための切り替え機構を備えている。また、この切り替え機構による前記測定セルの位置検出のために、磁気又は光等を用いた電気部品である位置センサが設けられている。
【0004】
しかしながら、前記測定セルが例えば半導体製造装置の内部に配置される場合、その内部環境が薬液雰囲気であり、薬液の種類によっては引火性を有するものがある。このように、前記測定セルが引火性を有するガス雰囲気下に配置される場合、電気部品を極力使用しないことが一般的である。このため、測定セルの位置検出のために電気部品である位置センサを用いたものでは、引火性を有するガス雰囲気下では使用できない等といったように、使用環境が制限されてしまう。
【0005】
一方、前記位置センサを設けない場合には、前記切り替え機構の制御において測定セルの位置検出ができなくなり、切り替え機構による測定セルに切り替え動作が正常に行われているかを装置側で判別することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、電気部品である位置センサを用いることなく、測定セルの位置を判別することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る分析装置は、測定試料を収容する測定セルが光路上に位置する測定位置と、前記測定セルが前記光路上から退避した退避位置とを切り替えるものであり、前記測定位置から前記退避位置への第1移動速度と、前記退避位置から前記測定位置への第2移動速度とが異なるように構成されたセル切り替え機構と、前記第1移動速度と前記第2移動速度とに関連する速度情報を前記測定試料の測定に用いられる光を用いて検出し、前記測定位置及び前記退避位置を判別する判別機構とを具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、測定位置から退避位置への第1移動速度と、退避位置から測定位置への第2移動速度とを異ならせており、その移動速度に関連する速度情報を光を用いて検出して測定セルの位置を判別しているので、電気部品である位置センサを不要にできる。これにより、測定セル及びセル切り替え機構を引火性を有するガス雰囲気下に配置しても安全に使用できる。また、前記判別機構が、前記速度情報を測定試料の測定に用いられる光を用いて検出するので、速度情報を検出するための別の検出光学系を準備する必要が無く、測定に用いられる測定光学系を用いて、前記測定位置及び前記退避位置を判別できる。これにより、分析装置の構成を簡単化及び小型化できる。
【0010】
ここで、第1移動速度及び第2移動速度が互いに異なることには、等速移動などにおける移動速度の大きさが互いに異なることだけでなく、移動速度の時間変化、つまり横軸を時間軸、縦軸を速度軸とした場合に描かれる波形が互いに異なることを含む。
【0011】
また、前記退避位置において、前記測定セルとは別の測定セル、校正用のリファレンスセル又は校正用の例えば光学フィルタ等の光学素子が、前記光路上に位置するように構成しても良い。
これならば、電気部品である位置センサを用いることなく、光路上に位置する測定セル、リファレンスセル又は光学素子を判別することができる。
【0012】
例えばセル切り替え機構が、エアシリンダ等の空気式アクチュエータを用いたものの場合には、当該空気式アクチュエータへの供給空気圧によって第1移動速度及び第2速度が変動してしまう。
このため、前記判別機構が、前記第1移動速度に関連する速度情報及び前記第2移動速度に関連する速度情報の比を検出して、前記測定位置及び前記退避位置を判別することが望ましい。
これならば、速度情報の比を検出しているので、供給空気圧の変動に伴う移動速度の変化に関わらず、前記測定位置及び前記退避位置を正確に判別できる。
【0013】
前記セル切り替え機構による前記測定位置及び前記退避位置の間の移動に伴って前記光路を遮断する光路遮断部材が設けられており、前記判別機構が、前記光路遮断部材により前記光路が遮断された時間を前記速度情報として検出して、前記測定位置及び前記退避位置を判別することが望ましい。
これならば、光路遮断部材により光が遮られた状態を検出するので、速度情報を正確に検出することができ、その結果、前記測定位置及び前記退避位置をより一層正確に判別できる。
【0014】
前記セル切り替え機構が、前記測定セルを前記測定位置から前記退避位置に移動させるために空気が供給される第1供給ポート及び前記測定セルを前記退避位置から前記測定位置に移動させるために空気が供給される第2供給ポートを有するエアシリンダと、前記第1供給ポート若しくは前記第1供給ポートに接続される第1供給管、又は前記第2供給ポート若しくは前記第2供給ポートに接続される第2供給管に設けられ、前記第1供給ポートから供給される空気流量と前記第2供給ポートから供給される空気流量とを異ならせる流路抵抗と、を備えることが望ましい。
これならば、セル切り替え機構による第1移動速度及び第2移動速度を物理的な構成要素により決めることができる。また、第1供給ポート及び第2供給ポートへの第1供給管及び第2供給管の接続を間違った場合には、検出される第1移動速度及び第2移動速度に関連する速度情報が、正常に接続された場合の第1移動速度及び第2移動速度に関連する速度情報とは逆に検出されるので、接続の間違いを装置が自動で判断することができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、測定位置から退避位置への第1移動速度と、退避位置から測定位置への第2移動速度とを異ならせており、その移動速度に関連する速度情報を測定試料の測定に用いられる光を用いて検出して測定セルの位置を判別しているので、電気部品である位置センサを用いることなく、測定セルの位置を判別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る分析装置について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の分析装置100は、例えば半導体製造ラインに組み込まれて使用されるものであり、例えば半導体製造における洗浄工程に用いられる薬液の濃度を測定する分光吸光光度計である。なお、薬液としては、SC−1(アンモニア過酸化水素水溶液)、SC−2(塩酸過酸化水素水溶液)、SPM(硫酸過酸化水素水溶液)、FPM(フッ酸過酸化水素水溶液)、BHF(バッファードフッ酸溶液)等である。
【0019】
具体的に分析装置100は、
図1に示すように、例えば薬液などの液体試料が収容される測定セル2と、前記測定セル2に光を照射するための例えばハロゲンランプなどの光源3と、前記測定セル2を通過した光を検出するための光検出部4と、光源3からの光を前記測定セル2に導くとともに、前記測定セル2を通過した光を光検出部4に導く光伝達手段5とを備えている。
【0020】
測定セル2は、例えば半導体洗浄装置の薬液槽に接続された薬液配管により形成される循環経路に設けられたフローセルである。なお、測定セル2は、半導体洗浄装置内の配管に直接組み込みインラインフローセルであっても良い。
【0021】
光検出部4は、測定セル2を通過した光を分光して、その分光スペクトル(波長毎の光量)を検出する分光器である。この分光器4により得られた分光スペクトルデータは、図示しない演算装置に出力されて、当該演算装置により、分光器4により得られた分光スペクトルと、吸光度既知の校正液により得られた分光スペクトルとから、薬液の吸光度スペクトルを算出し、この吸光度スペクトルを用いて液体試料に含まれる成分の濃度が算出される。
【0022】
光伝達手段5は、光源3及び測定セル2の間に設けられ、光源3の光を測定セル2に導く第1光ファイバ51と、測定セル2及び光検出部4の間に設けられ、測定セル2を通過した光を光検出部4に導く第2光ファイバ52と、第1光ファイバ51及び測定セル2の間に設けられた反射ミラー等の第1反射部材53と、測定セル2及び第2光ファイバ52の間に設けられた反射ミラー等の第2反射部材54とを備えている。
【0023】
また、第1光ファイバ51の光導入端面と光源3との間には、光源3の光を前記光導入端面に集光するための集光レンズ55が設けられている。第1光ファイバ51の光導出端面と第1反射部材53との間には、前記光導出端面から出た光を測定セル2に集光するための集光レンズ56が設けられている。
【0024】
さらに、第2光ファイバ52の光導入端面及び第2反射部材54の間には、第2反射部材54からの光を前記光導入端面に集光するための集光レンズ57が設けられている。第2光ファイバ52の光導出端面及び光検出部4の間には、前記光導出端面から出た光を分光器4の入射スリットに集光するための集光レンズ58が設けられている。
【0025】
本実施形態では、光源3を収容する光源収容筐体C1と、測定セル2を収容する測定セル収容筐体C2とが、第1光ファイバ51によって接続され、前記測定セル収容筐体C2と、光検出部4を収容する光検出部収容筐体C3とが第2光ファイバ52によって接続されている。ここで、第1光ファイバ51の光導入端部(光導入端面を有する部分)は光源収容筐体C1の側壁に固定されており、第1光ファイバ51の光導出端部(光導出端面を有する部分)は測定セル収容筐体C2の側壁に固定されており、第1光ファイバ51全体が固定されている。また、第2光ファイバ52の光導入端部(光導入端面を有する部分)は測定セル収容筐体C2の側壁に固定されており、第2光ファイバ52の光導出端部(光導入端面を有する部分)は光検出部収容筐体C3に固定されており、第2光ファイバ52全体が固定されている。なお、本実施形態では、第1光ファイバ51の光導出端部及び第2光ファイバ52の光導入端部は、測定セル収容筐体C2における同一の側壁に固定されている。これにより測定セル収容筐体C2のメンテナンスを行い易くしている。さらに、光源収容筐体C1内には、集光レンズ55が収容されている。測定セル収容筐体C2には、第1反射部材53、第2反射部材54、集光レンズ56、57が収容されている。光検出部収容筐体C3には、集光レンズ58が収容されている。なお、光源収容筐体C1及び光検出部収容筐体C3をさらに単一の筐体C4に収容しているが、光源収容筐体C1及び光検出部収容筐体C3を単一の筐体としても良い。また、前記各筐体C1〜C4は、全面を覆い外部空間と隔離されたものの他、一部(例えば一面)が開口したものであっても良い。
【0026】
しかして本実施形態の分析装置100は、
図2に示すように、測定試料を収容する測定セル2が光路L上に位置する測定位置P((1)参照)と、前記測定セル2が前記光路L上から退避した退避位置Q((2)参照)とを切り替えるセル切り替え機構6と、前記測定セル2が測定位置Pにあるか退避位置Qにあるかを判別する判別機構7とを備えている。
【0027】
ここで、測定位置Pは、光伝達手段5により形成される光路Lが測定セル2を通過する位置である。また、退避位置Qは、光伝達手段5により形成される光路Lが測定セル2とは異なる領域を通過する位置である。なお、本実施形態の退避位置Qにおいては、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路Lが校正用フィルタ8を通過する構成としている。
【0028】
セル切り替え機構6は、測定セル2及び校正用フィルタ8が搭載された搭載台61を移動させることによって、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路L上に測定セル2が位置する測定位置Pと、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路L上から測定セル2が退避して、当該光路L上に校正用フィルタ8が位置する退避位置Qを切り替えるものである。
【0029】
また、セル切り替え機構6は、測定セル2を測定位置Pから退避位置Qに移動させる第1移動速度v1と、測定セル2を退避位置Qから測定位置Pに移動させる第2移動速度v2とが異なるように構成されている。つまり、測定セル2が測定位置Pから退避位置Qに移動する第1移動時間と、測定セル2が退避位置Qから測定位置Pに移動する第2移動時間とが異なるように構成されている。
【0030】
セル切り替え機構6の具体的構成としては、
図1及び
図2に示すように、測定セル収容筐体C2内に設けられており、測定セル2及び校正用フィルタ8が搭載される搭載台61と、当該搭載台61を直線往復移動させる移動機構62とを有する。
【0031】
移動機構62は、空気式アクチュエータであるエアシリンダを用いたものであり、特に
図3に示すように、前記搭載台61が接続されるピストン621と、当該ピストン621を往復移動可能に収容するシリンダ室を有するシリンダ622と、前記シリンダ622に設けられて、前記ピストン621により区画された一方の空間S1内に圧縮空気を供給するための第1供給ポート623と、前記シリンダ622に設けられて、前記ピストン621により区画された他方の空間S2内に圧縮空気を第2供給ポート624とを備えている。
【0032】
そして、前記第1供給ポート623には、圧縮空気を供給するための第1供給管625が接続され、測定セル2を測定位置Pから退避位置Qに移動させるための圧縮空気が供給される。また、前記第2供給ポート624には、圧縮空気を供給するための第2供給管626が接続され、測定セル2を退避位置Qから測定位置Pに移動させるための圧縮空気が供給される。さらに、第1供給管625及び第2供給管626は、バルブ機構627を介して圧縮空気源628に接続される(
図1参照)。
【0033】
ここで、バルブ機構627は、
図3に示すように、電磁5方弁により構成されており、第1ポートP1が前記圧縮空気源628に接続され、第2ポートP2が前記第1供給管625に接続され、第3ポートP3が前記第2供給管626に接続され、第4ポートP4及び第5ポートP5が大気開放されている。これにより単一の圧縮空気源628から第1供給ポート623及び第2供給ポート624に圧縮空気が供給される構成としている。このバルブ機構627は、後述する判別機構7により制御される。なお、判別機構7とは別に専用の制御部を設けても良い。
【0034】
そして、弁体を移動させて、第1ポートP1及び第2ポートP2が連通した状態で、第4ポートP4が閉塞されるとともに、第3ポートP3及び第5ポートP5が連通する。これにより、第1供給ポート623から一方の空間S1に圧縮空気が供給されてピストン621が測定位置P側から退避位置Q側に移動する。また、弁体を移動させて、第1ポートP1及び第3ポートP3が連通した状態で、第5ポートP5が閉塞されるとともに、第2ポートP2及び第4ポートP4が連通する。これにより、第2供給ポート624から他方の空間S2に圧縮空気が供給されてピストン621が退避位置Q側から測定位置P側に移動する。なお、バルブ機構627は、5方弁を用いた構成に限られず、電磁2方弁又は電磁3方弁を用いて構成することもできる。
【0035】
そして、本実施形態の移動機構62において、第1供給ポート623には、第1流路抵抗R1が設けられており、第2供給ポート624には、前記第1流路抵抗R1とは抵抗値の異なる第2流路抵抗R2が設けられている。つまり、第1供給ポート623から前記一方の空間S1に供給される圧縮空気の流量と、第2供給ポート624から前記他方の空間S2に供給される圧縮空気の流量とが互いに異なるように構成されている。これにより、移動機構62が、測定セル2を測定位置Pから退避位置Qに移動させる第1移動速度v1と、測定セル2を退避位置Qから測定位置Pに移動させる第2移動速度v2とが異なるように構成されている。なお、第1流路抵抗R1及び第2流路抵抗R2をそれぞれ、第1供給管625及び第2供給管626に設けても良いし、それらの何れか一方に設けても良い。
【0036】
なお、上記のセル切り替え機構6においては、測定セル2及び校正用フィルタ8が移動可能に構成されており、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52は、測定位置P及び退避位置Qの切り替えにおいて移動しないように固定されている。光伝達手段5を構成するその他の構成要素、つまり集光レンズ55〜58も測定位置P及び退避位置Qの切り替えにおいて移動しないように固定されている。
【0037】
判別機構7は、測定セル2が測定位置Pから退避位置Qに移動する際の第1移動速度v1と、測定セル2が退避位置Qから測定位置Pに移動する際の第2移動速度v2とに関連する速度情報を光を用いて検出して、測定位置P及び退避位置Qを判別するものである。なお、この判別機構7は、例えば、図示しないCPU、メモリ、A/D変換器、D/A変換器、入出力インタフェースなどから構成される専用乃至汎用のコンピュータであり、前記メモリに記憶された所定のプラグラムに従って、CPU及びその周辺機器が協働することにより、測定セル2の位置判別機能を発揮するものである。
【0038】
本実施形態の判別機構7は、測定セル2に収容される測定試料の濃度測定に用いられる測定光を用いて、具体的には、前記光源3及び前記光検出部4を用いて、第1移動速度v1及び第2移動速度v2に関連する速度情報を検出し、測定位置P及び退避位置Qを判別する。つまり、判別機構7は、光源3から照射されて、光検出部4に貼る光を用いて、前記測定位置P及び前記退避位置Qを判別する。本実施形態の判別機構7は、光源3から第1光ファイバ51を通って照射されて、第2光ファイバ52を通って光検出部4に入る光を用いて、前記測定位置P及び前記退避位置Qを判別する。具体的に判別機構7は、測定セル2を移動させたときに前記光検出部4により得られる光量信号を取得して、前記第1移動速度v1及び前記第2移動速度v2の速度情報を算出する。
【0039】
さらに、判別機構7は、第1移動速度v1に関連する速度情報及び第2移動速度v2に関連する速度情報の比を検出して、測定位置P及び退避位置Qを判別する。
【0040】
本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、測定セル2及び校正用フィルタ8の間に、セル切り替え機構6による測定位置P及び退避位置Qの間の移動に伴って光路Lを遮断する光路遮断部材9が設けられており、判別機構7が、光路遮断部材9により光路Lが遮断された時間を速度情報として検出して、測定位置P及び前記退避位置Qを判別する。具体的には、
図4に示すように、測定位置Pから退避位置Qへの第1移動速度v1が、退避位置Qから測定位置Pへの第2移動速度v2よりも速い場合には、測定位置Pから退避位置Qへ移動する際に光路遮断部材9により遮断されて光量がゼロ又は略ゼロとなるゼロ期間T1が、退避位置Qから測定位置Pへ移動する際に光路遮断部材9により遮断されて光量がゼロ又は略ゼロとなる期間T2よりも短くなる。そして、判別機構7は、前記光量信号からゼロ期間T1及びゼロ期間T2を算出し、これらゼロ期間T1、T2の比(=T2/T1(=v2/v1))を算出して、その比によって、移動の結果、測定セル2が測定位置Pにあるか退避位置Qにあるかを判別する。また、本実施形態の判別機構7は、前記光検出部4により得られる光量信号が所定値以上となった場合に、移動が完了して測定可能と判断する。
【0041】
次に、このように構成された分析装置100の初期動作の一例について説明する。
【0042】
まず、分析装置100が起動されると、判別機構7を構成する制御装置は、セル切り替え機構6を制御して、搭載台61を初期位置(例えば測定位置P)に移動させる。次に、当該初期位置である測定位置Pから退避位置Qに移動させて、そのときのゼロ期間T1を算出するとともに、退避位置Qから測定位置Pに移動させて、そのときのゼロ期間T2を算出する。そして、判別機構7は、このゼロ期間T1及びゼロ期間T2の比を算出して、予め定められた基準値と比較する。その比較の結果、算出したゼロ期間T1、T2の比(T2/T1)と基準値との差が所定範囲内か否かを判断する。この比較の結果、ゼロ期間T1、T2の比(T2/T1)と基準値との差が所定範囲外であれば、セル切り替え機構6の第1供給ポート623及び第2供給ポート624への第1供給管625及び第2供給管626が間違っていると判断して警告をユーザに報知する。一方で、ゼロ期間T1、T2の比(T2/T1)と基準値との差が所定範囲内であれば、上記の処理によって、測定セル2が測定位置Pにあるか、退避位置Qにあるかを判別する。このような初期動作の結果、判別機構7が測定位置Pの結果を判別して、その後の通常の薬液濃度測定が行われる。上記の一連の処理は、初期動作だけでなく、校正処理の前又は後等において、定期的に行っても良いし、通常の薬液濃度測定において、測定セルの位置にエラーが生じた場合に行っても良い。
【0043】
このように構成した本実施形態に係る分析装置100によれば、測定位置Pから退避位置Qへの第1移動速度v1と、退避位置Qから測定位置Pへの第2移動速度v2とを異ならせており、その移動速度に関連する速度情報を光を用いて検出して測定セル2の位置を判別しているので、電気部品である位置センサを不要にできる。これにより、測定セル2及びセル切り替え機構6を引火性を有するガス雰囲気中に配置しても安全に使用できる。
【0044】
また、判別機構7が、速度情報を測定セル2に照射される測定光を用いて検出するので、速度情報を検出するための別の検出光学系を準備する必要が無く、測定に用いられる測定光学系(光源3及び光検出部4)を用いて、前記測定位置P及び前記退避位置Qを判別できる。これにより、分析装置100の構成を簡単化及び小型化できる。
【0045】
さらに、判別機構7が、第1移動速度v1によるゼロ期間T1及び第2移動速度v2によるゼロ期間T2の比(T2/T1)を検出して、定位置及び前記退避位置Qを判別するので、エアシリンダに供給される供給空気圧による移動速度の変動に関わらず、測定位置P及び退避位置Qを正確に判別できる。
【0046】
その上、判別機構7が、測定セル2及び校正用フィルタ8の間の光路遮断部材9により光路Lが遮断された時間T1、T2を速度情報として検出して、測定位置P及び退避位置Qを判別するので、速度情報を正確に検出することができ、その結果、測定位置P及び退避位置Qをより一層正確に判別できる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記セル切り替え機構6が、測定セル2が搭載された搭載台61を移動することによって、測定位置P及び退避位置Qを切り替えるものであったが、
図5に示すように、第1反射部材53及び第2反射部材54を移動することによって、測定位置P及び退避位置Qを切り替えるものであっても良い。つまり、第1反射部材53及び第2反射部材54の移動のみにより、測定位置P及び退避位置Qの切り替えを行う。また、第1反射部材53及び第2反射部材54と測定セル2との両方を相対移動させるようにしても良い。なお、測定セル2に接続される配管が柔軟性を有する管であれば前記実施形態のように構成することが可能であるが、柔軟性を有さない管の場合には、不具合があり、第1反射部材53及び第2反射部材54を移動する構成とすることが望ましい。
【0048】
また、前記実施形態では、雰囲気に薬液ガスが存在するため安全性の観点から、エアシリンダ等の空気式アクチュエータを用いているが、その他の作動流体を用いたアクチュエータや機械式アクチュエータを用いることもできる。
【0049】
また、
図6に示すように、第1反射部材53及び第2反射部材54を介さずに、第1光ファイバ51からの光を測定セル2に照射し、測定セル2を通過した光を第2光ファイバ52に導入するものであっても良い。
図6に示す構成のものにおいて、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52を移動させずに、測定セル2を移動させるように構成しても良いし、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52を移動させるように構成しても良いし、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52と測定セル2との両方を相対移動させるようにしても良い。
【0050】
さらに、前記実施形態の光伝達手段5は、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52を有するものであったが、何れか一方のみを有するものであっても良いし、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52を有さないものであって良い。なお、測定セル2の周囲近傍は、薬液ガスが存在し、或いは設置スペースが制約される恐れがあり、光源3や光検出部4を配置することが難しい。このため、第1光ファイバ51及び第2光ファイバ52の両方を用いて、測定セル2から離れた位置に光源3及び光検出部4を配置することが望ましい。
【0051】
その上、前記実施形態では、測定セル2が退避位置Qにある状態において、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路L上に校正用フィルタ8が配置される構成としているが、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路L上に何も無い構成として当該光路Lが空気を通過する構成としても良い。また、測定セル2が退避位置Qにある状態において、第1反射部材53及び第2反射部材54の間の光路L上に別のリファレンスセル(例えばブランクセル)や別の測定セル等の光学セルが配置される構成として、当該光路Lが別の光学セルを通過する構成としても良い。
【0052】
加えて、前記実施形態の判別機構7は、移動速度に関連する速度情報として光路遮断部材9によるゼロ期間の比を検出するものであったが、光路遮断部材9によるゼロ期間T1、T2を検出して判別するように構成しても良い。具体的には、ゼロ期間T1と予め定めた第1基準値との比較を行う又はゼロ期間T2と予め定めた第2基準値との比較を行うことによって判別することが考えられる。これならば、セル切り替え機構6を往復動作させること無く、一方向の動作のみで測定位置P及び退避位置Qを判別することができる。また、判別機構7は、光路遮断部材9によって生成されるゼロ又は略ゼロを示す光量信号のサンプリング数を速度情報としても良い。
【0053】
更に加えて、前記実施形態では、光路遮断部材9によるゼロ期間を速度情報として検出するものであったが、その他の光量変動、例えば光量のピーク間の移動時間などを用いて速度情報としても良い。
【0054】
また、前記実施形態では、測定セル2を測定位置Pと退避位置Qとの2つの位置の間で切り替えるものであったが、例えば測定位置Pと退避位置Qとの2つの位置だけでなく、その他の位置に切り替える等、3つ以上の位置で切り替えるようにしても良い。この場合であっても、各位置から別の位置へ移動する際の移動速度をそれぞれ異ならせるように構成することが考えられる。
【0055】
また、前記実施形態では、光源3を光源収容筐体C1に収容し、測定セル2を測定セル収容筐体C2に収容し、光検出部4を光検出部収容筐体C3に収容しているが、測定セル収容筐体C2内に、光源3及び/又は光検出部4を収容しても良い。
【0056】
なお、前記実施形態の判別機構7は、光源3及び光検出部4を有する測定光学系を用いて測定セル2の位置を判別するものであったが、第1移動速度v1と第2移動速度v2とに関連する速度情報を測定光以外の光を用いて検出し、測定位置P及び退避位置Qを判別するものであっても良い。具体的に判別機構7が、前記測定光学系とは別の光学系を用いて測定セルの位置を判別するものであっても良い。例えば、光源3から出る光の一部を、前記第1光ファイバとは異なる光ファイバ等の光伝達要素によって伝達した光を用いても良いし、前記光源3とは異なる光源から出る光を前記光伝達要素によって伝達した光を用いても良い。また、前記光伝達要素により伝達された光を前記光検出部4で検出しても良いし、前記光検出部4とは異なる光検出部により検出しても良い。これならば、測定位置から退避位置への第1移動速度と、退避位置から測定位置への第2移動速度とを異ならせており、その移動速度に関連する速度情報を光を用いて検出して測定セルの位置を判別しているので、測定セルの位置判別を簡便に行うことができる。
【0057】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。