特許第6100715号(P6100715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6100715-白色繊維基板及び半導体装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6100715
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】白色繊維基板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20170313BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20170313BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170313BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170313BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B32B5/26
   B32B5/28 A
   C08J5/24CFH
   H05K1/03 610H
   H05K1/03 610R
   H05K1/03 610T
   H01L23/14 R
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-37182(P2014-37182)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160376(P2015-160376A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】浜本 佳英
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 紗以子
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−127074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/04−5/10
C08J 5/24
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
H01L 23/14
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理繊維フィルムを1枚、もしくは複数枚積層させたものからなる繊維フィルム基材を含む白色繊維基板であって、
JIS R 3420に記載の方法で測定した前記表面処理繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して3倍から100倍であり、前記白色繊維基板が白色顔料を含むものであり、
前記表面処理繊維フィルムが、有機ケイ素化合物により表面処理されたガラスクロスであり、
前記表面処理繊維フィルムが、有機ケイ素化合物成分としては、アルコキシシラン、ポリシラザン、これらの部分加水分解縮合物、及びシリコーン変性ワニスから選ばれる1種以上からなるものだけを含むものであることを特徴とする白色繊維基板。
【請求項2】
前記白色繊維基板が、さらに基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸・乾燥させた未硬化状態のプリプレグを1枚以上積層させたものからなるプリプレグ基材を前記繊維フィルム基材に重ね合わせたものであり、前記表面処理繊維フィルムと前記プリプレグのいずれか1つ以上が白色顔料を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の白色繊維基板。
【請求項3】
前記繊維フィルム基材と前記プリプレグ基材とを交互に重ね合わせたものであることを特徴とする請求項に記載の白色繊維基板。
【請求項4】
前記繊維フィルム基材と前記プリプレグ基材とを各2枚以上積層したものであることを特徴とする請求項又は請求項に記載の白色繊維基板。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性シリコーン樹脂組成物であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の白色繊維基板。
【請求項6】
90°以上に屈曲可能なものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の白色繊維基板。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の白色繊維基板を用いたものであることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された繊維フィルムを含む白色繊維基板及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の目覚しい発展に伴い、パソコン、携帯電話に代表される電子機器の軽薄短小化、高機能化が要求されており、例えば、これらの電子機器の代表部品であるプリント基板に対して、上述の高密度実装、軽薄短小化に対応するために、プリント基板の構成部品であるガラス繊維フィルムに対する特性向上の強い要求がある。また、コンピュータ、モバイル、通信インフラ等の高速化・高周波化が進み、これに伴い、プリント配線基板に対して伝送損失を改善する低誘電材料であることが求められている。また、低熱膨張特性や及び高引張剛性特性を持つガラス繊維フィルムの要求もある。さらに、より薄いガラス繊維フィルムを開発することへの要請の声も高い。
【0003】
また、近年のモバイル用途半導体パッケージに代表されるように、半導体パッケージの高密度実装、軽薄短小化及び高機能化に伴い、使用されるプリント配線基板への要求が高まっている。例えば、実装後のパッケージの反りを防止するために、より低線膨張の基板材料が求められており、これを実現するために、無機充填剤を高充填した有機樹脂組成物をガラス繊維に含浸した積層基板が採用されている。しかし、樹脂組成物が高粘度のためガラス繊維の目開きや縒れを引き起こし、その結果基板の均一性が損なわれるとともに、内在する応力によってパッケージの反りを引き起こすといった問題があった。
【0004】
尚、本発明に関する従来技術としては、例えば、下記の特許文献に記載されているものが挙げられる。ガラス繊維を用いたプリント配線板には、高い耐熱性・耐光性・耐衝撃性に加え、近年のハイパワーモジュールの使用に伴い熱伝導性なども求められるようになってきた。実際、熱可塑性樹脂もしくはエポキシ樹脂と、充填剤とを含む、低線膨張率を有する白色フィルム及び金属積層体が示されている(特許文献1〜4)。また、金属塩を含浸、乾燥させ、その後にシリコーンカップリング剤を含浸、乾燥することにより、白色度が高いガラスクロス及びそれを用いた積層板の製造方法が示されている(特許文献5)。さらに、アクリル系共重合体と充填剤からなる白色フィルムの片面に紫外線吸収剤もしくは光安定化剤を含有する白色基板が示されている(特許文献6)。しかし、エポキシ樹脂や熱可塑性樹脂は、耐熱変色性などが低いために、白色基板及び積層板として使用することができず、良好な耐熱性を有するような高機能性プリント基板の材料としてはセラミックス基板などしかなかった。しかし、セラミック基板も加工性や強度、耐変色性などで問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5306226号公報
【特許文献2】特開2011−005714号公報
【特許文献3】特許5230532号公報
【特許文献4】特許5262715号公報
【特許文献5】特開平11−222768号公報
【特許文献6】特開2012−177877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高反射率を有し、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性に加えて、さらに、屈曲性、フレキシブル性に優れた白色繊維基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明は、
表面処理繊維フィルムを1枚、もしくは複数枚積層させたものからなる繊維フィルム基材を含む白色繊維基板であって、
JIS R 3420に記載の方法で測定した前記表面処理繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して3倍から100倍であり、前記白色繊維基板が白色顔料を含む白色繊維基板を提供する。
【0008】
このような白色繊維基板であれば、高反射率を有し、耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性に加えて、さらに、屈曲性、フレキシブル性に優れた白色繊維基板とすることができる。
【0009】
このうち、前記表面処理繊維フィルムが、有機ケイ素化合物により表面処理されたガラスクロスであることが好ましい。
【0010】
このような表面処理繊維フィルムを用いれば、より高強度で繊維が固定化され、また、有機ケイ素化合物により表面処理を行ったフィルムであるため、より優れた耐熱性、耐変色性、及び電気絶縁性を有する白色繊維基板とすることができる。
【0011】
また、前記白色繊維基板が、さらに基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸・乾燥させた未硬化状態のプリプレグを1枚以上積層させたものからなるプリプレグ基材を前記繊維フィルム基材に重ね合わせたものであり、前記表面処理繊維フィルムと前記プリプレグのいずれか1つ以上が白色顔料を含むものであることが好ましい。
【0012】
この場合、前記繊維フィルム基材と前記プリプレグ基材とを交互に重ね合わせたものであることが好ましい。
【0013】
また、前記繊維フィルム基材と前記プリプレグ基材とを各2枚以上積層したものであることが好ましい。
【0014】
このような白色繊維基板であれば、寸法安定性、耐衝撃性により優れたものを得ることができる。
【0015】
さらに、前記熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性シリコーン樹脂組成物であることが好ましい。
【0016】
このような熱硬化性樹脂組成物を用いれば、耐熱性、耐変色性、電気絶縁性により優れた白色繊維基板を得ることができる。
【0017】
さらに、前記白色繊維基板が90°以上に屈曲可能なものであることが好ましい。
【0018】
このような白色繊維基板であれば、高度な屈曲性、フレキシブル性が要求されるフレキシブル基板として好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明は、
前記白色繊維基板を用いた半導体装置を提供する。
【0020】
このような半導体装置であれば、用いる白色繊維基板が耐熱性、寸法安定性、耐衝撃性、耐変色性、電気絶縁性、屈曲性、フレキシブル性に優れているため、高品質なものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の白色繊維基板は、高反射率を有し、耐熱性、電気絶縁性、耐変色性、寸法安定性、耐衝撃性、フレキシブル性に優れており、これらの特性から、平均線膨張係数が低く、高温時の貯蔵剛性率が高く、かつ、表面均一性に優れたものを得ることができる。このような白色繊維基板を用いた半導体装置は、高品質なものとなり、高密度実装、軽薄短小化及び高機能化の要求されるようなデバイスの材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】各実施例及び比較例における柔軟性試験の際に用いた半円筒状の筐体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来の白色のフレキシブル基板では、用いる繊維フィルムに「機械的強度が弱いため、重い部品を載置するには別に支えが必要になる。熱特性が悪い。」などの欠点があり、問題となっていた。本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の慣用曲げ剛性を有する表面処理を施した繊維フィルムと白色顔料を含む白色繊維基板であれば、電気絶縁性、耐熱性、耐変色性、寸法安定性、耐衝撃性、フレキシブル性などに優れていることを見出し、このフィルムを白色繊維基板の材料とすることで上記の問題が解消されることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、
表面処理繊維フィルムを1枚、もしくは複数枚積層させたものからなる繊維フィルム基材を含む白色繊維基板であって、
JIS R 3420に記載の方法で測定した前記表面処理繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値が、未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して3倍から100倍であり、前記白色繊維基板が白色顔料を含む白色繊維基板である。
【0025】
(1)表面処理繊維フィルム
本発明の白色繊維基板を構成する表面処理繊維フィルムとしては、ガラスクロスをケイ素原子を含む有機化合物(以下、有機ケイ素化合物と書く)で処理したフィルム状の基材を好適に用いることができる。具体的には、ガラスクロス中のガラス繊維の一部又は全部が有機ケイ素化合物の硬化物により結束され表面処理されたものが好ましい。このような表面処理繊維フィルムであれば、有機ケイ素化合物による表面処理により、ガラスクロスを構成する繊維(フィラメント)の一部又は全部が結束されているため、白色繊維基板用の材料として用いた際に、よじれや目開きを生じることもなく、均一性・均質性及び自立性に優れ、高温時の応力集中がなく、平均線膨張係数も低いものとなり、高温下でも寸法安定性に優れたものを得ることができる。
【0026】
この表面処理繊維フィルムは、JIS R 3420で規定された方法で測定したクロスの慣用曲げ剛性が、未処理の繊維フィルムの慣用曲げ剛性の値に対して、3倍から100倍の範囲内にあるものであり、このような表面処理繊維フィルムを用いることによって本発明の目的が達成される。
【0027】
この倍数は、繊維フィルムを表面処理することによって、いわゆる「織布」状態から「フィルム」状態に変化する程度を示す指標として用いるものであり、好ましくは5倍から60倍であり、さらに好ましくは10倍から50倍である。
【0028】
上記の値が、3倍未満では本発明が目的とする寸法安定性やガラス繊維の固定化すなわち目開きや捩れの防止効果がほとんど得られない。また、100倍を超えると上記表面処理繊維フィルムの曲げ剛性が固くなりすぎて、フレキシブル基板としての柔軟性が損なわれ、クラック等が発生する。
【0029】
表面処理に有機ケイ素化合物を用いた場合、上記特性を満足するために、表面処理繊維フィルムへの有機ケイ素化合物の付着量は、処理後の繊維フィルムの質量100質量%に対して、2質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上60質量%以下である。
【0030】
2質量%以上の付着量であれば、上記特性を満たすことができ、その結果、電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、自立性などの特性が良好となるため好ましい。また、90質量%以下の付着量であれば、耐熱性が低下したり、柔軟性が損なわれたりすることなく、電気絶縁性、寸法安定性などが得られるので好ましい。
【0031】
本発明において表面処理繊維フィルムの作製にガラスクロスを用いる場合、柱状流或いは高周波振動法による水流で開繊加工することも可能である。さらに、これに適応するガラス繊維としては、Eガラス、Aガラス、Dガラス、Sガラス等のいずれのガラス繊維でも使用できる。コスト及び入手のしやすさから一般用のEガラスが好ましいが、より高度な特性を要求される場合(例えば、低誘電率、高耐熱性、低不純物など)には石英ガラスが好ましい。
【0032】
このようなガラスクロスとしては、繊維の織り密度は10〜200本/25mmが好ましく、より好ましくは15〜100本/25mmであり、質量は5〜400g/mが好ましく、より好ましくは10〜300g/mである。この範囲であれば、表面処理による結束が効果的に行われ、電気絶縁性、耐熱性、寸法安定性、自立性などの特性を容易に得ることができる。
【0033】
このようなガラスクロスの織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等特に制限なく使用できる。また、双方又は一方がテクスチャード加工を施されたガラス繊維で製織されたガラスクロスであっても良い。さらに三軸組布されたガラスクロスはより強度が強く、信頼性の高い表面処理繊維フィルムとなる。また、不織布や長繊維を一定方向に配列させた織物も使用可能である。加えて、ガラスクロスに集束剤が塗布されている場合、有機ケイ素化合物による処理が阻害される場合があるので、予め除去しておくことが望ましい。
【0034】
尚、ガラスクロスの代わりに、炭素繊維、セラミック系などの無機繊維、ホウ素繊維、スチールファイバー、タングステン繊維などの金属繊維、アラミド、フェノール系などの新耐熱繊維などの繊維を用いた織布なども本発明の技術が適応できる。
【0035】
本発明の表面処理繊維フィルムを得るために、有機ケイ素化合物を用いてガラスクロスに表面処理する場合、有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン、ポリシラザン、及びこれらの部分加水分解縮合物、あるいはシリコーン変性ワニスからなる群から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
【0036】
例えば、アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどのアルキルアルコキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシランなどのアリールアルコキシシラン、ヒドロキシトリメトキシシラン、ヒドロキシトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルケニルアルコキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有アルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩などのアミノ基含有アルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアネートアルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリスエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のアルコキシシラン化合物が挙げられ、これらのアルコキシシランは1種あるいは2種以上混合して使用しても良い。また、これらに限定するものではない。
【0037】
ポリシラザンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザンなどの化合物が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0038】
シリコーン変性ワニスとしては、アルキッド変性ワニスやポリエステル変性ワニス、エポキシ変性ワニス、アクリル変性ワニスなど多様なシリコーン変性ワニスが使用されるが、最終用途、目的により選択すればよい。
【0039】
好ましい有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン及びその部分加水分解縮合物が挙げられる。中でも好ましいアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシランや官能基を有するアルコキシシランで一般にシランカップリング剤と称されるタイプから選択される。例えば、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が例示される。
【0040】
また、アルコキシシランの部分加水分解縮合物も好ましい有機ケイ素化合物である。特に上記シランカップリング剤を部分加水分解縮合した官能基とアルコキシシリル基を併せ持つアルコキシシランオリゴマーは、好ましい有機ケイ素化合物である。
【0041】
また、市販されているものを用いても良く、例えば、エポキシ基含有アルコキシシランオリゴマーX−41−1059A(信越化学工業(株)製)、アミノ基含有アルコキシシランオリゴマーX−40−2651(信越化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0042】
上記表面処理繊維フィルムには、必要に応じて充填剤を含有することができる。充填剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。充填剤は、線膨張率を下げ、かつ該白色繊維基板の熱伝導率や強度を向上させることを目的として、添加することができる。充填剤としては、公知の充填剤であればいずれのものであってもよく、例えば、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、ヒュームド二酸化チタン、酸化亜鉛、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0043】
表面処理に有機ケイ素化合物を用いる場合における充填剤の配合量は、得られる白色繊維基板の線膨張率及び強度の観点から、有機ケイ素化合物100質量部当り900質量部以下(0〜900質量部)の範囲が好ましく、600質量部以下(0〜600質量部)の範囲であることがより好ましく、10〜600質量部、特には50〜500質量部の範囲であることが好ましい。
【0044】
本発明の白色繊維基板は、光反射率を上げることを目的として、白色顔料を含むものである。これにより、白色繊維基板の光反射率が全可視光領域にわたって80%以上(即ち、80〜100%)であることが要求されるデバイスに好適に用いることができる。
尚、白色顔料は、表面処理繊維フィルムと、後述のプリプレグのいずれか1つ以上に配合される。本発明の白色繊維基板において、後述のプリプレグを用いない構成、又は、後述のプリプレグが白色顔料を配合しない構成である場合は、表面処理繊維フィルムに白色顔料を配合する。
【0045】
本発明で用いる白色顔料は、従来から一般的に使用されている公知の白色顔料であれば制限なく使用できるが、好適には二酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記白色顔料のうち、二酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウムがより好ましく、二酸化チタンがさらにより好ましい。二酸化チタンの結晶形はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。
【0046】
白色顔料の平均粒径及び形状は特に限定されないが、平均粒径が、0.05〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0μm、さらに好ましくは0.1〜1.0μmである。尚、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。白色顔料成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用するこができる。
【0047】
白色顔料の配合量は、表面処理繊維フィルムを作製する際に用いる有機ケイ素化合物の配合量の合計量100質量部当り1〜300質量部であることが好ましく、3〜200質量部であることがより好ましく、10〜150質量部であることが特に好ましい。該配合量が1質量部以上の場合、得られる表面処理繊維フィルムの白色度が十分となるため好ましい。該配合量が300質量部以下の場合、本発明の白色繊維基板の線膨張率を下げ且つ該基板の機械的強度を向上させることを目的として添加される無機充填剤の全充填剤に占める割合が低くなることがないため好ましい。
【0048】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムのX−Y方向の線膨張係数は、20ppm/℃以下が好ましく、より好ましくは15ppm/℃以下である。X−Y方向の線膨張係数の測定方法としては、幅3mm、長さ25mm、厚み50〜300mmにサンプルを切り出し、熱機械的分析(TMA)装置にて100mNの荷重を加えながら5℃/minの昇温速度で−60℃から200℃の温度範囲で引張り試験による測定方法を例示できる。線膨張係数が20ppm/℃以下、即ち、低線膨張係数であることにより、プリント基板に対する高密度実装、軽薄短小化への要求に対応可能となる。また、過酷な条件で使用される宇宙用途や輸送機分野向けの電気絶縁性、耐熱性フィルムとして使用可能である。
尚、一般的な高耐熱エンプラフィルムであるポリエーテルイミドフィルムの線膨張係数は、50ppm/℃程度である。これに対して、本発明の表面処理ガラス繊維フィルムが上述の線膨張係数であれば、優れた耐熱性とともに、低線膨張係数を兼ね備えたフィルムを提供することができる。
【0049】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムは、少なくとも250℃以下にガラス転移点を有さないことが好ましく、300℃以下にガラス転移点を有さないことが特に好ましい。250℃以下にガラス転移点を有さないものであれば、耐熱性に優れ、熱時の反りが抑制された基板が得られるため、白色プリント基板とした際に高密度実装、軽薄短小化への要求に対応可能となるような耐熱性、電気絶縁性に優れたガラス繊維フィルムを提供できる。
【0050】
本発明で用いる表面処理繊維フィルムの製造方法は、一般的なガラス繊維の処理方法が適用される。例えば、一般的なガラス繊維の塗布方法(コーティング方式)が適用される。代表的なコーティング方式としては、ダイレクトグラビアコーター、チャンバードクターコーター、オフセットグラビアコーター、一本ロールキスコーター、リバースキスコーター、バーコーター、リバースロールコーター、スロッタダイ、エアードクターコーター、正回転ロールコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、含浸コーター、MBコーター、MBリバースコーターなどがある。中でもダイレクトグラビアコーター、オフセットコーター、含浸コーター塗布方式が本発明で用いる表面処理繊維フィルムの製造には好ましい。
【0051】
使用する有機ケイ素化合物により条件は異なるが、塗布後、乾燥、硬化目的で室温から300℃で1分から24時間加熱する。生産性やコスト、作業性を考慮して好ましくは100℃から250℃で3分から4時間、より好ましくは150℃から230℃で5分から1時間の加熱処理で本発明で用いる表面処理繊維フィルムを製造することができる。
【0052】
上記塗布方法で用いる塗布液は、前述の有機ケイ素化合物を溶媒で希釈したものである。溶媒の例としては、水あるいは有機溶剤をそれぞれ単独あるいは2種以上混合して用いることができる。有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。この希釈液に、さらにギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、などの有機酸やアンモニア水などのpH調整剤、顔料、充填剤、界面活性剤、増粘剤などを添加することもできる。
【0053】
また、アルコキシ基の縮合触媒を添加してもよく、例えば有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ビスマス化合物のような有機金属化合物系、アミン系化合物などが挙げられる。
【0054】
有機金属化合物系の縮合触媒として、具体的には、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジブチルスズビス(ベンジルマレート)、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジラウレート、スズジオクテート、及びスズジラウレート等の有機スズ化合物、並びに、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラノルマルプロピルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、ジイソプロピルジターシャリーブチルチタネート、ジメトキシチタンビスアセチルアセトナート、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート、ジターシャーリーブトキシチタンビスエチルアセトアセテート、及びジターシャリーブトキシチタンビスメチルアセトアセテート等の有機チタン化合物、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)又はビスマストリス(ネオデカノエート)等の有機ビスマス化合物などの金属ルイス酸等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
アミン系化合物の例として、具体的には、ヘキシルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。
これら縮合触媒の中では、有機チタン化合物が特に好ましい。
【0056】
塗布液は、塗布環境への影響を考慮して、水系の塗布液が好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤(商品例:KBM−903(信越化学工業(株)製))は水系での安定性に優れ、溶解性もよいことから好ましい有機ケイ素化合物である。
【0057】
このような表面処理繊維フィルムは、有機ケイ素化合物等で繊維の表面のコート及び繊維内部への含浸がされており、耐熱性、寸法安定性、耐光性、耐候性などに優れている。また、未処理の繊維フィルムが有していなかった自立性が付与されており、繊維が固定化されていることから、繊維のよれや目開きなどの問題が発生しない、均一及び均質なフィルムとなる。
【0058】
本発明の白色繊維基板は、上述の表面処理繊維フィルム1枚、もしくは複数枚積層させたものからなる繊維フィルム基材を含むものであればよいが、下記に示すプリプレグを1枚以上積層させたものからなるプリプレグ基材を繊維フィルム基材に重ね合わせても良い。
【0059】
(2)プリプレグ
本発明の白色繊維基板の材料の一つとなるプリプレグとしては、基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸・乾燥させた未硬化状態のプリプレグが適している。
【0060】
プリプレグを構成する基材としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック系などの無機繊維、ホウ素繊維、スチールファイバー、タングステン繊維などの金属繊維、アラミド、フェノール系などの新耐熱繊維などの繊維を用いた織布もしくは不織布などが挙げられ、好ましくはガラス繊維の織布(ガラスクロス)などが用いられ、特に好ましくはガラスクロスが用いられる。
【0061】
また、プリプレグを構成する熱硬化性樹脂組成物としては、特に制限はないが、BT樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂、シアネートエステル樹脂等の組成物が挙げられる。中でも熱硬化性シリコーン樹脂組成物が、前述の表面処理繊維フィルムとの接着性に優れ、耐熱性などにも優れるため好ましい。
【0062】
このような熱硬化性シリコーン樹脂組成物としては、特に下記(A)〜(D)成分からなるものを例示でき、このようなものであれば、室温(15〜30℃)において、未硬化状態でも固体又は半固体であるため、取扱いが容易なのでさらに好ましい。
(A)RSiO1.5単位、RSiO単位及びRSiO(4−a−b)/2単位からなり上記RSiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含む樹脂構造のオルガノポリシロキサン、
(式中、R、R及びRは独立に水酸基、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基及びフェニル基のいずれかを示し、Rは独立にビニル基又はアリル基を示し、aは0,1又は2で、bは1又は2で、かつa+bは2又は3である。)
(B)RSiO1.5単位、RSiO単位及びRSiO(4−c−d)/2単位からなり上記RSiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含む樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のビニル基及びアリル基の合計に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜4.0となる量、
(式中、R、R及びRは独立に上記の通りであり、cは0,1又は2で、dは1又は2で、かつc+dは2又は3である。)
(C)白金族金属系触媒:有効量、及び
(D)充填剤:(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して900質量部以下。
【0063】
このうちの白金属金属系触媒としては、例えば塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、キレート構造を有する白金錯体等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0064】
また、充填剤としては無機充填剤が好ましく、具体的には、溶融シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミノシリケート、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機充填材の平均粒径や形状は特に限定されない。
【0065】
さらに、上記熱硬化性樹脂組成物は、充填剤として白色顔料を配合することができる。このような白色顔料としては、前述の表面処理繊維フィルムに配合されるものと同様のものを例示できる。
【0066】
この白色顔料の配合量としては、プリプレグを作製する際に用いる熱硬化性樹脂の配合量の合計100質量部当り1〜300質量部であることが好ましく、3〜200質量部であることがより好ましく、10〜150質量部であることが特に好ましい。該配合量が1質量部以上であれば、得られるプリプレグの白色度が十分となるため好ましい。該配合量が300質量部以下であれば、本発明の白色繊維基板の線膨張率を下げ、かつ、該基板の機械的強度を向上させることを目的として添加される無機充填剤の全充填剤に占める割合が低くなることがないため好ましい。
【0067】
本発明のプリプレグは、上記のような熱硬化性樹脂組成物を溶剤に溶解・分散された状態で基材に含浸させ、次に、この基材を乾燥して、前記溶剤を蒸発させて除去し得ることができる。
【0068】
(3)白色繊維基板
本発明の白色繊維基板は、上述の繊維フィルム基材、又は繊維フィルム基材と上述のプリプレグ基材とを重ね合わせたものを含むものである。この白色繊維基板は、表面処理繊維フィルムのみ(繊維フィルム基材のみ)を積層する、表面処理繊維フィルム1枚(繊維フィルム基材)とプリプレグ1枚(プリプレグ基材)を交互に重ね合わせる、表面処理繊維フィルムを2枚以上積層させたもの(繊維フィルム基材)とプリプレグを2枚以上積層させたもの(プリプレグ基材)を各1層以上積層する、といった方法で製造することができる。また、繊維フィルム基材同士、繊維フィルム基材とプリプレグ基材の間には、接着性を向上させるため接着層を有してもよいし、プリプレグ基材そのものに接着層としての機能を付与してもよい。例えば表面処理繊維フィルム2枚の間の面に接着層もしくはプリプレグを介する熱融着方法として、加熱、加圧による方法であれば公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、熱プレス法や熱ラミネートロール法、又はこれらを組み合わせた方法を好適に採用することができる。
【0069】
接着層としては熱や光に対し変色性の少ないものが好ましいが、例えば、上述のプリプレグやシリコーン系接着剤などを挙げることができる。
【0070】
上述のような方法によって製造された白色繊維基板は、屈曲性(フレキシブル性)に優れたものとすることができる。具体的には図1に示すような半径75mmの筐体に該白色繊維基板を沿わせて屈曲した場合、好ましくは90°以上、より好ましくは120°以上180°以下、さらに好ましくは150°以上180°以下に屈曲することができることが望ましい。
【0071】
このような白色繊維基板は、用いている表面処理繊維フィルム(繊維フィルム基材)の耐熱性、寸法安定性、耐光性、耐候性などに優れており、自立性を有し、繊維のよれや目開きがないことから、耐熱性、電気絶縁性、熱伝導性、耐変色性、寸法安定性、耐衝撃性、フレキシブル性に優れたものとなる。このような白色繊維基板は、繊維フィルム基材及び/又はプリプレグ基材に白色顔料を含むことから高反射率を有し、繊維フィルム基材の良好な特性から、平均線膨張係数が低く、高温時の貯蔵剛性率が高く、表面均一性に優れ、かつ軽薄化の容易なものとすることができる。
【0072】
このような白色繊維基板は、耐熱性、耐変色性、寸法安定性、耐衝撃性等の特性に優れており、さらに高反射率、屈曲性、フレキシブル性を有しているため、高密度実装、軽薄短小化及び高機能化の要求されるような半導体装置、特に高反射率が求められる光半導体装置の材料として好適に用いることができる。また、この白色繊維基板は、上記の特性から、テレビやタブレット、スマートフォンなどのディスプレイ用高反射フィルム及び基板として用いられたり、太陽電池用高反射フィルム及び基板として用いられたり、と多種多様な分野で用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、製造例、比較製造例、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
[表面処理繊維フィルムの製造]
[製造例1]
有機ケイ素化合物として、メチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−13、信越化学工業製)100部、白色顔料としてルチル型酸化チタン(石原産業(株)製 タイペークCR−95 平均粒径0.28μm)30部を用いて、ガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して白色の表面処理繊維フィルムを作製した。有機ケイ素化合物の付着量を表1に示す。
また、作製した表面処理繊維フィルムに対し、以下の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0075】
・機械的特性
得られた表面処理繊維フィルムについて以下の機械的特性を測定した。
慣用曲げ剛性
JIS R 3420(ガラス繊維一般試験方法)に記載の方法で測定を行い、縦糸方向での測定値を用いた。結果を表1に示す。
【0076】
・光学特性
得られた表面処理繊維フィルムについて以下の光反射率を測定した。
光反射率
エス・ティー・ジー(株)社製 X−rite8200を用いて、表面処理繊維フィルムの光反射率を400−800nmの範囲で測定し、450nmでの反射率を確認した。
【0077】
[製造例2]
有機ケイ素化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)を用いた以外、製造例1と同様の操作を行い、白色の表面処理繊維フィルムを作製し、製造例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[製造例3]
有機ケイ素化合物として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−903、信越化学工業製)を用いた以外、製造例1と同様の操作を行い、白色の表面処理繊維フィルムを作製し、製造例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
[製造例4]
有機ケイ素化合物として、メチルトリメトキシシラン(商品名:KBM−13、信越化学工業製)を用いて、ガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。その後100℃×1時間及び200℃×1時間加熱処理して、乳白色半透明の表面処理繊維フィルムを作製した。
【0080】
[製造例5]
有機ケイ素化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)10部に対し、トルエン90部を加えトルエン溶液とした以外、製造例1と同様の操作を行い、白色の表面処理繊維フィルムを製造例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0081】
[製造例6]
有機ケイ素化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)、白色顔料としてルチル型酸化チタン(石原産業(株)製 タイペークCR−95 平均粒径0.28μm)30部を用いて、ガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。この操作を4回繰り返した後、100℃×1時間および200℃×1時間加熱処理して、白色表面処理繊維フィルムを作製した。
【0082】
[比較製造例1]
ポリエーテルエーテルケトン樹脂 PEEK450G(VICTREX社製)60質量部と、非晶性ポリエーテルイミド樹脂 Ultem 1000(GE社製)40質量部に対して、色顔料としてルチル型酸化チタン(石原産業(株)製 タイペークCR−95 平均粒径0.28μm)30質量部、合成マイカ(平均粒径5μm、平均アスペクト比50)を21質量部混合して得られた熱可塑性樹脂組成物を溶融混練し、Tダイを備えた押出機を用いて設定温度380℃で押出成型し、厚さ100μmの白色のフィルムを作製した。
【0083】
[比較製造例2]
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(NKエステル A−DCP、新中村化学工業社製)60質量部に、酸化チタン(石原産業(株)製 タイペークCR−90−2 平均粒径0.25μm)40質量部、光重合開始剤としてBASFジャパン製のイルガキュア907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン)1質量部を加えて溶液を調整した。その溶液にガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、10分放置し、その含浸させたガラスクロスに厚さ100μmのPETフィルムを重ねて、ラミネーターを用いて厚みを均一にした。
そのPETフィルム側とガラス側の両側に、高圧水銀灯にて2000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化性組成物を得た。さらに、PETフィルムからシートを剥離し、230℃で30分加熱し、厚さ100μmの白色の繊維フィルムを得た。
【0084】
[比較製造例3]
有機ケイ素化合物として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業製)、白色顔料としてルチル型酸化チタン(石原産業(株)製 タイペークCR−95 平均粒径0.28μm)10部を用いて、ガラスクロス(使用糸:E250、密度:タテ糸59本/25mm、ヨコ糸57本/25mm、厚さ:87μm、質量:95g/m)に含浸させ、100℃×10分で加熱乾燥させた。100℃×1時間および200℃×1時間加熱処理して、白色表面処理繊維フィルムを作製した。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の結果から、製造例1〜6で製造された繊維フィルムは慣用曲げ剛性の倍率が3倍から100倍の範囲内であることがわかった。これに対して、比較製造例1は繊維を用いていないため慣用曲げ剛性の倍率を測定できず、比較製造例2及び3で製造された繊維フィルムは慣用曲げ剛性の倍率が範囲外であることがわかった。
【0087】
[プリプレグの調製]
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A1)−
PhSiClで示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1モル%)、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:529g(3.2モル%)、MeViSiCl:84.6g(9.7モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、さらに水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ビニル基含有樹脂(A1)を合成した。この樹脂は、重量平均分子量62,000、融点60℃の固体であった。このもののビニル基含有量は、0.05モル/100gである。
【0088】
−ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B1)−
PhSiClで示されるオルガノシラン:1142.1g(87.1モル%)、ClMeSiO(MeSiO)33SiMeCl:529g(3.2モル%)、MeHSiCl:69g(9.7モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、さらに水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有樹脂(B1)を合成した。この樹脂は、重量平均分子量58,000、融点58℃の固体であった。このもののヒドロシリル基含有量は、0.05モル/100gである。
【0089】
上記で得られたビニル基含有樹脂(A1):189g、上記で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B1):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸の1質量%オクチルアルコール溶液:0.1gを加え、60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌してベース組成物を得た。このベース組成物に、下記式で表される接着助剤6gと溶剤としてトルエンを400g加え、さらにアルミナ(商品名:アドマファインAO―502、平均粒子径:約0.6μm、(株)アドマテックス製)を473gと酸化チタン(商品名:PF−691、平均粒子径:約0.2μm、石原産業製)47gとを加えて、シリコーン樹脂組成物のトルエン分散液を調製した。
【0090】
接着助剤
【化1】
【0091】
このトルエン分散液に石英ガラスクロス(信越石英製、厚さ:100μm)を含浸させた後、110℃で10分熱風乾燥機によりトルエンを蒸発させ石英ガラスクロスのプリプレグを得た。
【0092】
[白色繊維基板の作製]
[実施例1]
製造例1で得られた白色表面処理繊維フィルムを3枚のそれぞれの間に上記で得られたプリプレグ2枚を接着層として挟み込み、フィルムが最外層になるよう交互に重ね合わせて、温度:200℃、圧力:2MPa、加圧時間:70分でプレスし、白色繊維基板を作製した。作製した白色繊維基板を用いて、下記光学特性及び機械特性の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0093】
・光学特性
得られた白色繊維基板について以下の光反射率を測定した。
光反射率
エス・ティー・ジー(株)社製 X−rite8200を用いて、白色繊維基板の光反射率を400−800nmの範囲で測定し、450nmでの反射率を確認した。
【0094】
耐熱特性
光反射率測定後の基板に、150℃1000hrの耐熱試験を行い、以下の操作は光反射率測定と同様に反射率を測定し、450nmでの反射率を確認した。
【0095】
・機械特性
寸法安定性
プレス成型時の縦糸及び横糸のよれ、目開きの有無を確認した。
柔軟性試験
白色繊維基板を、図1に示すような幅100mm、半径75mmの半円筒状の筐体2の外周部にはめ込み、基板1のわれ、くずれなどを確認した。
【0096】
[実施例2]
製造例2のフィルムを用いた以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0097】
[実施例3]
製造例3のフィルムを用いた以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0098】
[実施例4]
製造例4のフィルムを用いた以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0099】
[実施例5]
実施例1のうち、接着層としてプリプレグを用いないこと以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0100】
[実施例6]
実施例2のうち、接着層としてプリプレグを用いないこと以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0101】
[実施例7]
実施例3のうち、接着層としてプリプレグを用いないこと以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0102】
[実施例8]
製造例5のフィルムを用いた以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0103】
[実施例9]
製造例6のフィルムを用いた以外、実施例1と同様の操作を行い、白色繊維基板を作製した。実施例1と同様の評価を行い、結果を表2に示す。
【0104】
[比較例1]
比較製造例1で得られたフィルムを3枚のそれぞれの間に、接着層としてエポキシ白色プリプレグを2枚挟み込み、交互になるように重ね合わせて、以下の操作を実施例1と同様に行い、白色基板を得た。
【0105】
[比較例2]
比較製造例2のフィルムを用いた以外、以下の操作を実施例1と同様に行い、白色繊維基板を得た。
【0106】
[比較例3]
比較製造例3のフィルムを用いた以外、以下の操作を実施例1と同様に行い、白色繊維基板を得た。
【0107】
【表2】
寸法安定性 ○:よれ、目開き共になし。 ×:よれ又は目開きあり。
基板の柔軟性 ○:割れ、剥離共になし。 ×:割れ又は剥離あり。
【0108】
表2の結果から、慣用曲げ剛性の倍率が3〜100倍の範囲内である繊維フィルム基材を用いた実施例1〜9は、高反射率を有し、耐熱性、耐変色性、寸法安定性、フレキシブル性に優れていることがわかった。繊維フィルムを用いなかった比較例1及び慣用曲げ剛性の倍率が3倍以下である繊維フィルム基材(比較例3)や、100倍以上である繊維フィルム基材(比較例2)を用いると、いずれの特性も実施例よりも劣っていた。
【0109】
上記の結果から、本発明の白色繊維基板は、高反射率を有し、耐熱性、耐変色性、寸法安定性、フレキシブル性に優れたものであることが明らかになった。
【0110】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
1…白色繊維基板、 2…半円筒状筐体。
図1