(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付加硬化型シリコーン組成物は、硬化して25℃における波長300〜800nmの光透過率が、厚さ2mmの層状態で80%以上の硬化物を与えるものであることを特徴とする請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
前記付加硬化型シリコーン組成物は、硬化して可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.40以下の硬化物を与えるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、従来低屈折率化された付加硬化型シリコーン樹脂組成物では、オルガノハイドロジェンポリシロキサンがデバイスの製造工程中に揮発してしまい硬化後タックが残る等、製品の信頼性に重大な欠陥が発生してしまうという問題点があった。また、用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンによっては、相溶性が低下し、また高屈折率化してしまうという問題点があった。
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、フッ素置換炭化水素基を有し、かつD単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることで、光学性能に優れ信頼性の高い硬化物を与える組成物が得られることを見出した。
【0020】
具体的には、珪素原子結合脂肪族不飽和基と珪素原子結合CF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基を有するオルガノポリシロキサンとして直鎖状のものと分岐状のものを併用し、かつ下記一般式(1)
【化2】
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることで、付加硬化型シリコーン組成物の硬化物を低屈折率化させることが可能であり、25℃における波長300〜800nmの光透過率が向上すること、特に25℃における波長400nmの光透過率が向上することを見出し、かつ高透明でゴム的性質、強度特性が良好な硬化物が得られ、また硬化時にオルガノハイドロジェンポリシロキサンが揮発しないため硬化後タックが残らないことを見出して本発明に到達した。
【0021】
即ち、本発明は、付加硬化型シリコーン組成物であって、
(A)一分子中に、2個以上の珪素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上の珪素原子結合CF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基を有する直鎖状であるオルガノポリシロキサン(ただし、yは0以上の整数、zは1以上の整数である):100質量部、
(B)一分子中に、2個以上の珪素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上の珪素原子結合CF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基を有し、かつSiO
4/2及びRSiO
3/2で示されるシロキサン単位のいずれか又は両方の分岐構造を有するオルガノポリシロキサン(ただし、yは0以上の整数、zは1以上の整数であり、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基である):1〜100質量部、
(C)下記一般式(1)
【化3】
(式中、R
1は水素原子、又は置換もしくは非置換で同一もしくは異なってもよい炭素数1〜10の1価の有機基であり、xは0以上の整数、wは1≦w≦2、pは0<p≦3、qは0≦q<3、かつ2≦p+q≦3を満たし、w+p+q=4を満たす数、nは1以上の整数、ただしR
1のうち2つ以上は水素原子である)で表される有機珪素化合物:前記(A)、前記(B)成分の合計脂肪族不飽和基と(C)成分のSiH基とのモル比が、0.2≦SiH基/脂肪族不飽和基≦5.0となる量、及び
(D)白金族金属系触媒:有効量、
を含む付加硬化型シリコーン組成物である。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
<(A)成分>
(A)成分は、一分子中に、2個以上の珪素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上の珪素原子結合CF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基を有する直鎖状であるオルガノポリシロキサン(ただし、yは0以上の整数、zは1以上の整数である)であり、ベースポリマーである。
【0024】
このような(A)成分としては、例えば下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【化4】
(式中、R
11は脂肪族不飽和基、R
12は同一でも異なっていてもよい脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基、Rf
1はCF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基(y及びzは上記と同様)であり、aは1〜3の整数、e、f、gは、それぞれe≧0、f≧1、g≧0の整数である。)
【0025】
上記一般式(2)において、R
11の脂肪族不飽和基としてはアルケニル基、アルキニル基が好ましく、ビニル基、アリル基、エチニル基等の炭素数2〜10、特に2〜6のアルケニル基、アルキニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0026】
R
12の脂肪族不飽和基以外の炭素数1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、クロロメチル基、クロロプロピル基、クロロシクロヘキシル基等のハロゲン化炭化水素基等が例示される。好ましくは、非置換の炭素数1〜6の一価炭化水素基であり、特に好ましいのはメチル基である。
【0027】
Rf
1はCF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−(y及びzは上記と同様である)で定義され、yは好ましくは0≦y≦9を満たす整数であり、zは好ましくは1≦z≦10を満たす整数である。Rf
1は、複数ある場合(一般式(2)中のfが2以上の場合)には、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。
本発明として合成面から特に好ましいのは、CF
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
3−(CH
2)
2−、CF
3−(CF
2)
5−(CH
2)
2−基である。
【0028】
また、上記一般式(2)において、eは0以上の整数であり、好ましくは0〜50の整数である。fは1以上の整数であり、好ましくは2〜5,000、より好ましくは5〜1,000の整数である。gは0以上の整数であり、好ましくは0〜10,000、より好ましくは0〜5,000の整数である。e+f+gは、好ましくは5〜10,000、より好ましくは10〜3,000、特に好ましくは20〜500である。また、f/(e+f+g)の値は好ましくは1/50〜1/1、より好ましくは1/10〜1/1、特に好ましくは1/5〜1/1の範囲であることが好適である。
【0029】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が100〜10,000,000mPa・s、特に200〜500,000mPa・sの範囲にあるものが好適であり、これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。なお、粘度は回転粘度計にて測定する粘度である。
【0030】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、公知の方法で製造することができる。例えば、下記一般式(i)で表されるシクロトリシロキサンと下記一般式(ii)で表されるシクロトリシロキサンと下記一般式(iii)で表されるオルガノシロキサン、及び必要により下記一般式(iv)で表されるシクロトリシロキサンとを、アルカリ又は酸触媒存在下で共重合させることによって得ることができる。
【化5】
(式中、R
11、R
12、Rf
1、aは上記と同様である。)
【0031】
<(B)成分>
(B)成分は、一分子中に、2個以上の珪素原子結合脂肪族不飽和基及び1個以上の珪素原子結合CF
3−(CF
2)
y−(CH
2)
z−基を有し、かつSiO
4/2及びRSiO
3/2で示されるシロキサン単位のいずれか又は両方の分岐構造を有するオルガノポリシロキサン(ただし、yは0以上の整数、zは1以上の整数であり、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基で、上記したR
11及びR
12が例示される)である。Rを有するシロキサン単位が複数ある場合には、Rはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。
【0032】
珪素原子結合脂肪族不飽和基としては、(A)成分で記載したものと同様のものが例示される。
【0033】
(B)成分のオルガノポリシロキサンは、分岐構造を有するものであり、SiO
4/2単位及び/又はRSiO
3/2単位からなる分岐構造を必須とするが、さらにメチルビニルシロキシ単位、ジメチルシロキシ単位等のR
2SiO
2/2、ジメチルビニルシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位等のR
3SiO
1/2単位を含んでもよい(Rは上記と同様である)。
SiO
4/2単位及び/又はRSiO
3/2単位の含有量は、好ましくは(B)成分のオルガノポリシロキサン中の全シロキサン単位の5モル%以上、より好ましくは10モル〜95モル%、特に好ましくは25〜80モル%である。
【0034】
またこのオルガノポリシロキサンは、単離の面から重量平均分子量が500〜100,000の範囲であるものが好適である。
【0035】
(B)成分の合成は、公知の方法で行うことができ、例えばそれぞれの単位源となる化合物を生成単位が所要の割合となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で(共)加水分解を行うことによって容易に合成することができる。
【0036】
この(B)成分の分岐構造を有するオルガノポリシロキサンを併用することで、得られる硬化物の硬度や機械的強度を優れたものとすることができる。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し1〜100質量部であり、好ましくは2〜50質量部である。(B)成分の配合量が1質量部未満であると硬化物の硬度や強度が不十分となり、100質量部を超えると硬化物が脆くなり、封止性能が低下する。
【0037】
<(C)成分>
(C)成分は、下記一般式(1)で表される有機珪素化合物であり、(A)、(B)成分とヒドロシリル化反応する架橋剤として作用する。(C)成分は、硬化物の低屈折率化、及び(A)、(B)成分との相溶性、透明性、架橋反応率の向上のためにフッ素変性されたSiH基含有有機珪素化合物(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)であり、脂肪族不飽和基を有さないものであることが好ましい。さらにD単位を有することによって高分子量化され、光デバイスの製造時における高温下においても揮発することなく、製品の信頼性をより向上させることが可能となる。また、(C)成分は分岐構造のものが好ましい。なお、(C)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【化6】
(式中、R
1は水素原子、又は置換もしくは非置換で同一もしくは異なってもよい炭素数1〜10の1価の有機基であり、xは0以上の整数、wは1≦w≦2、pは0<p≦3、qは0≦q<3、かつ2≦p+q≦3を満たし、w+p+q=4を満たす数、nは1以上の整数、ただしR
1のうち2つ以上は水素原子である。)
【0038】
上記一般式(1)中、R
1は、水素原子、又は置換もしくは非置換で同一もしくは異なってもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜8の1価の有機基である。
ただし、R
1のうち2つ以上は水素原子であり、この珪素原子結合水素原子(SiH基)が(A)、(B)成分の珪素原子結合脂肪族不飽和基とヒドロシリル化反応して組成物が硬化する。
【0039】
上記有機基は炭化水素基であることが好ましく、炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3〜10、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜6のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10、好ましくは6〜9、より好ましくは6〜8のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の炭素数7〜10、好ましくは7〜9、より好ましくは7〜8のアラルキル基;又はこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、エポキシ基含有基(例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等で置換した基、例えば、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、2−(ノナフルオロブチル)エチル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、本発明の有機珪素化合物の合成のし易さ、及び(A)、(B)成分との相溶性の観点より、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−(ノナフルオロブチル)エチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基が好ましく、特にメチル基、エチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0041】
また、炭化水素基が置換基としてエポキシ基含有基及び/又はアルコキシ基を有する場合、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物に接着性を付与することができる。
【0042】
また、上記一般式(1)中、xは0以上の整数であり、0〜9の整数であることが好ましい。
wは1≦w≦2、pは0<p≦3、qは0≦q<3、かつ2≦p+q≦3を満たし、w+p+q=4を満たす数であり、w=1、p+q=3の分岐構造であることが好ましい。
nは1以上の整数であり、1又は2が好ましい。
【0043】
上記一般式(1)で表される有機珪素化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【化7】
【0044】
(C)成分の合成は、公知の方法で行うことができ、例えばそれぞれの単位源となる化合物を生成単位が所要の割合となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で(共)加水分解を行うことによって容易に合成することができる。
また、得られた有機珪素化合物は、水洗、蒸留、濃縮等の公知の方法により精製することができる。
【0045】
(C)成分の配合量は、(A)、(B)成分中の脂肪族不飽和基に対する(C)成分中のSiH基のモル比が0.2≦SiH基/脂肪族不飽和基≦5.0、好ましくは0.5≦SiH基/脂肪族不飽和基≦2.0となる量である。SiH基/脂肪族不飽和基の値が0.2未満又は5.0を超える場合、組成物の硬化性が悪化する。
【0046】
<(D)成分>
(D)成分は、(A)、(B)成分と(C)成分とのヒドロシリル化付加反応を促進する、白金族金属系触媒である。
(D)成分の白金族金属系触媒としては、(A)、(B)成分中の珪素原子結合脂肪族不飽和基と(C)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであれば、いかなる触媒を使用してもよい。(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0047】
(D)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0048】
(D)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)、(B)、及び(C)成分の合計質量に対して白金族金属元素の質量換算で0.1〜1,000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0049】
<その他の成分>
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、上述の(A)〜(D)成分以外にも、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。なお、これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0050】
≪(A)、(B)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物≫
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、(A)、(B)成分以外にも、(C)成分と付加反応する脂肪族不飽和基含有化合物を配合してもよい。(A)、(B)成分以外のこのような脂肪族不飽和基含有化合物としては、硬化物の形成に関与するものが好ましく、それ故、一分子あたり2個以上の脂肪族不飽和基を有することが好ましい。(A)、(B)成分以外のこのようなオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば環状構造が挙げられる。
【0051】
(A)、(B)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物の具体例としては、ブタジエン、多官能性アルコールから誘導されたジアクリレート等のモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレン又はスチレンと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、アクリロニトリル又はブタジエン)とのコポリマー等のポリオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸のエステル等の官能性置換有機化合物から誘導されたオリゴマー又はポリマーが挙げられる。(A)、(B)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物は室温で液体であっても固体であってもよい。
【0052】
≪付加反応制御剤≫
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、ポットライフを確保するために付加反応制御剤を配合してもよい。付加反応制御剤は、上記(D)成分のヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、公知のものを用いることができる。その具体例としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体等が挙げられる。
【0053】
付加反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その付加反応制御剤の化学構造によって異なる。よって、使用する付加反応制御剤の各々について、その添加量を最適な量に調整することが好ましい。最適な量の付加反応制御剤を添加することにより、組成物は室温での長期貯蔵安定性及び加熱硬化性に優れたものとなる。
【0054】
≪その他の任意成分≫
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、硬化物の着色、白濁、酸化劣化等の発生を抑えるために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の公知の酸化防止剤を配合してもよい。また、光劣化に対する抵抗性を付与するために、ヒンダードアミン系安定剤等の光安定剤を配合してもよい。さらに、必要に応じて、強度を向上させるためにヒュームドシリカ等の無機質充填剤を配合してもよいし、染料、顔料、難燃剤等を配合してもよい。
【0055】
[硬化物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、公知の硬化方法により公知の硬化条件下で硬化させることができる。具体的には、通常、室温〜200℃、好ましくは80〜160℃で加熱することにより、組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度、特に1分〜3時間程度でよいが、LED封止用等精度が要求される場合は、硬化時間を長めにすることが好ましい。得られる硬化物の形態は特に制限されず、例えば、ゲル硬化物、エラストマー硬化物及び樹脂硬化物のいずれであってもよい。
【0056】
なお、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は、光学素子封止用に用いる場合は、無色透明かつ低屈折率(通常、1.41程度以下)であることが好ましく、25℃における波長300〜800nmの光透過率が、厚さ2mmの層状態で80%以上であることが好ましい。
【0057】
また、本来所望されるLED等の光学素子性能、特に25℃における波長400nmの光透過率を向上させるためには、硬化物の可視光(589nm)における屈折率(25℃)が1.40以下であることが好ましく、1.30〜1.39であることが特に好ましい。
これらの特性を満たすようにするには、光透過性等を低下させるような任意成分の添加を極力排除することが好ましい。
【0058】
また、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は、封止材として用いるのに適したゴム的性質及び強度特性を有するものであることが好ましく、具体的には、JIS−K6249による硬度(Type A)が20〜90、切断時伸びが10〜100%、引っ張り強さが0.1〜5.0MPaのものであることが好ましい。
【0059】
以上説明したように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物は、エラストマー状、ゲル状、あるいは柔軟なゴム状から弾性を有する樹脂状まで得られる。また、高透明、低屈折率で光取出し効率にも優れ、かつゴム的性質、強度特性が良好であり、デバイス製造工程において成分が揮発することがないため、硬化後タックを有しない。また、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物は、通常の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物と同様に耐熱性、耐寒性、電気絶縁性にも優れる。
また、光学素子性能として所望される25℃における波長400nmの光透過率に優れるため、光学用途、中でもLED等の光学素子用封止材に好適に用いることができる。即ち、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を光学素子用封止材として使用することで、光学素子からの発光は、高透明、低屈折率である硬化物表面によって全反射が抑えられることから、特にLEDの輝度を向上させることができる。
【0060】
[光学素子]
また本発明では、例えば、LED、半導体レーザー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、CCD等に、本発明の付加硬化型シリコーン組成物を塗布し、塗布した組成物を公知の硬化方法により公知の硬化条件下で、具体的には上記した通りに硬化させることによって封止された光学素子を提供する。
【0061】
このような本発明の光学素子であれば、上述のような本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物で封止されることで特に信頼性に優れたものとなる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、下記の例で、粘度は回転粘度計を用いて23℃で測定した値である。
屈折率はATAGO製デジタル屈折計RX−5000を用いて589nmの屈折率を25℃で測定し、硬度、切断時伸び、引張り強さはJIS−K6249に準じて2号ダンベルにて測定した。
光透過率は、組成物を厚さ2mmのシート状に成形、硬化させたものについて、波長400nmの光に対する透過率を25℃において分光光度計により測定した。
【0063】
また、下記の例において、平均組成式中の記号はそれぞれ以下の単位を示す。
さらに、各直鎖状又は分岐構造を有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル数は、各成分中に含有されるビニル基又はSiH基の平均モル数を示すものである。
【化8】
【0064】
[合成例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、3,3,3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン71.9g(0.33mol)、1,3,5−トリス[(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチル]シクロトリシロキサン25.5g(0.05mol)、及びテトラメチルジヒドロジシロキサン67.0g(0.5mol)を入れ、5〜15℃まで冷却した。
これに硫酸8.2g(0.08mol)を加えよく混合した後、イオン交換水18.7g(1.05mol)を滴下した。滴下終了後、室温条件下において8時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を15分間静置して、上清を除去した。さらに水を300ml加え15分間撹拌し、15分間静置した後に上清を除去する操作を3回繰り返すことにより生成物に残存する酸を取り除いた。この溶液に芒硝を3g(0.02mol)加えてろ過を行い、混入していた水を取り除いた。
100℃/8mmHg条件下で1時間濃縮を行ってからADVANTEC社製NA−500で濾過することで、平均組成式:T
F1D
F1M
H3で表される目的のオルガノハイドロジェンポリシロキサン67.4gを得た(単収率:41%)。以下にその構造を示す。
【化9】
上記化合物は、水素ガス発生量136ml/g(理論量:133ml/g)により同定した。
【0065】
[合成例2]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)トリクロロシラン240.8g(0.5mol)、1,3,5−トリス[(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチル]シクロトリシロキサン33.8g(0.08mol)、及びテトラメチルジヒドロジシロキサン110.6g(0.825mol)を入れ、5〜15℃まで冷却した。
これに硫酸18.9g(0.19mol)を加えよく混合した後、イオン交換水29.7g(1.65mol)を滴下した。滴下終了後、室温条件下において8時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を15分間静置して、上清を除去した。さらに水を300ml加え15分間撹拌し、15分間静置した後に上清を除去する操作を繰り返すことにより生成物に残存する酸を取り除いた。この溶液に芒硝3g(0.02mol)を加えてろ過を行い、混入していた水を取り除いた。
130℃/8mmHg条件下で1時間濃縮を行ってからNA−500で濾過することで、平均組成式:T
F13D
F11.5M
H3で表される目的のオルガノハイドロジェンポリシロキサン80.1gを得た(単収率:20.8%)。以下にその構造を示す。
【化10】
上記化合物は、水素ガス発生量83.7ml/g(理論量:84.8ml/g)により同定した。
【0066】
[合成例3]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート、及び温度計を備えた500mlの4つ口フラスコに、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−トリス(ジメチルシロキシ)シラン120.0g(0.2mol)を入れ、5〜15℃まで冷却した。これにトリフルオロメタンスルホン酸0.16g(0.0011mol)を入れ、テトラメチルシクロテトラシロキサン36.0g(0.15mol)を滴下した。滴下終了後、室温条件下において8時間撹拌した。撹拌終了後、キョーワード500SH(協和化学工業製)0.96gを入れ、室温条件下において2時間撹拌し、NA−500で濾過することで酸を取り除いた。
120℃/8mmHg条件下で1時間濃縮を行ってからNA−500で濾過することで、平均組成式:T
F13D
HM
H3で表される目的のオルガノハイドロジェンポリシロキサン113.0gを得た(単収率:72.4%)。以下にその構造を示す。
【化11】
上記化合物は、水素ガス発生量130ml/g(理論量:136ml/g)により同定した。
【0067】
[合成例4]
撹拌装置、蛇管冷却器、滴下ロート、及び温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン66.3g(0.50mol)、濃塩酸13.4g、水9.8gを入れ、撹拌しながら水浴を用いて10〜15℃となるように調整した。温度調整後、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランを64.9g(0.30mol)、15℃以下になるように調整しながら滴下した。滴下終了後、10〜15℃で1時間撹拌を行った後、廃酸分離を行い中和するまで水洗を繰り返し、減圧蒸留(主留分:58−63℃/8mmHg)を行うことで、目的の3,3,3−トリフルオロプロピル−トリス(ジメチルシロキシ)シラン82.9gを得た(単収率:79%)。
上記化合物は、水素ガス発生量200ml/g(理論量:192ml/g)により同定した。
【0068】
[実施例1]
(A)平均組成式:M
Vi2D
F127.3で表される直鎖状オルガノポリシロキサン75.0g(0.017mol)、(B)平均組成式:D
Vi1.5D
F90.5T
F18で表される分岐構造のオルガノ
ポリシロキサン25.0g(0.017mol)、(C)合成例1で合成した平均組成式:T
F1D
F1M
H3で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン15.5g(0.03mol)の混合物を、(D)触媒0.15gと混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0069】
[実施例2]
(A)平均組成式:M
Vi2D
F134D
F112で表される直鎖状オルガノ
ポリシロキサン50.0g(0.016mol)、(B)平均組成式:D
Vi2T
9T
F136で表される分岐構造のオルガノ
ポリシロキサン50.0g(0.014mol)、(C)合成例2で合成した平均組成式:T
F13D
F11.5M
H3で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン15.8g(0.019mol)の混合物を、(D)触媒0.15gと混合してシリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0070】
[実施例3]
実施例2において、(C)成分を合成例3で合成した平均組成式:T
F13D
HM
H3で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン10.1g(0.015mol)とする以外は実施例2と同様に操作を行い、シリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0071】
[比較例1]
実施例1において、(C)成分の代わりに下記式(v)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン9.63g(0.027mol)を用いる以外は実施例1と同様に操作を行い、シリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【化12】
【0072】
[比較例2]
実施例1において、(C)成分の代わりに酸平衡で調製した平均組成式:M
2D
H4D
F16で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン25.9g(0.019mol)を用いる以外は実施例1と同様に操作を行い、シリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0073】
[比較例3]
実施例1において、(A)成分の代わりに平均組成式:M
Vi2D
146で表される直鎖状オルガノポリシロキサン100.0g(0.019mol)を用い、(B)成分は用いず、付加反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.075gを用いる以外は実施例1と同様に操作を行い、シリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0074】
[比較例4]
実施例1において、(C)成分の代わりに合成例4で合成した3,3,3−トリフルオロプロピル−トリス(ジメチルシロキシ)シラン9.5g(0.027mol)を用いる以外は実施例1と同様に操作を行い、シリコーン組成物を得た。この組成物を150℃で2時間加熱して硬化させ、得られたエラストマーの物性を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示されるように、本発明の(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用した実施例1、2、3は、(C)成分と(A)、(B)成分との相溶性が良好で、得られる硬化物の透明性及び光透過率が高かった。加えて、硬化物の硬さや、切断時伸び、引っ張り強さが強く、エラストマーとしての強度特性が良好であった。さらに、実施例1、2、3は硬化中において成分が揮発することがなく、硬化後の表面タックがないことから、製品信頼性に優れていることがわかる。
【0077】
一方、比較例1ではオルガノハイドロジェンポリシロキサンにフッ素を含まないため(A)、(B)成分との相溶性が悪く、得られる硬化物の屈折率が高くなり、光透過率も実施例に劣っていた。比較例2ではオルガノハイドロジェンポリシロキサンにフッ素を含むため相溶性は高いものの、ケイ素原子にフッ素置換炭化水素基とシロキサン鎖のみが結合する構造を有さないため組成物の機械特性が優れるものではなかった。比較例3では直鎖状オルガノポリシロキサンにフッ素を含まず、また分岐状オルガノポリシロキサンを含まないため(C)成分との相溶性が悪く、光透過率や機械特性が大幅に低下した。比較例4ではオルガノハイドロジェンポリシロキサンにD単位を含まないため、硬化中においてオルガノハイドロジェンポリシロキサンが揮発してしまい、硬化後の表面タックが発生した。このことから、製品信頼性が低いことが示されている。
【0078】
以上のことから、本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、低屈折率で、高い透明性を有し、光取出し効率にも優れ、かつゴム的性質及び強度特性が良好で、硬化後タックを有せず、特に25℃における波長400nmの光透過率が良好な硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物となることが明らかとなった。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。