(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の追尾式レーザー干渉計では、移動体の再帰反射体が、レーザー光の射出方向から僅かにずれた場合、渦状にレーザー光を走査させることで、効率よく再帰反射体を探索することができる。
しかしながら、移動体の再帰反射体が、レーザー光の射出方向から大きく離れた場合、レーザー光を渦状に走査させたとしても、再帰反射体を見つけることができない場合がある。渦径を広げることで、再帰反射体を探索することも可能であるが、この場合、レーザー光の射出方向と再帰反射体との距離によっては、探索に非常に長い時間を要してしまうという課題があり、時間短縮のために渦間隔を広げると、探索精度が低下し、再帰反射体を探索できない場合もある。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みて、短時間で、かつ高精度にレーザー光の射出方向を追尾対象に向かう方向に修正可能な追尾式レーザー装置、及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の追尾式レーザー装置は、レーザー光源から射出されるレーザー光を、追尾対象に対して追尾させる追尾式レーザー装置であって、
所定の撮像方向を中心とした所定の画角範囲を撮像する撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された前記追尾式レーザー装置の周囲が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、前記撮像画像に基づいて、前記レーザー光が射出されるレーザー射出方向、及び前記追尾式レーザー装置から前記追尾対象に向かう追尾対象方向の相対位置を検出する位置検出手段と、前記レーザー射出方向を変更する方向変更手段と、前記相対位置に基づいて前記方向変更手段を制御し、前記レーザー射出方向を前記追尾対象方向に修正する方向制御手段と、
を備え、前記撮像手段は複数設けられ、それぞれ異なる撮像方向を有し、前記位置検出手段は、複数の前記撮像手段により撮像された各撮像画像を、前記撮像手段の並びに応じて繋ぎ合せた画像を生成し、当該繋ぎ合せた画像における前記相対位置を検出することを特徴とする。
また、本発明の追尾式レーザー装置として、所定の撮像方向を中心とした所定の画角範囲を撮像する撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された前記追尾式レーザー装置の周囲が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、前記撮像画像に基づいて、前記レーザー光が射出されるレーザー射出方向、及び前記追尾式レーザー装置から前記追尾対象に向かう追尾対象方向の相対位置を検出する位置検出手段と、前記レーザー射出方向を変更する方向変更手段と、前記相対位置に基づいて前記方向変更手段を制御し、前記レーザー射出方向を前記追尾対象方向に修正する方向制御手段と、を備え、前記撮像手段は複数設けられ、それぞれ異なる撮像方向を有し、前記位置検出手段は、複数の前記撮像手段により撮像された各撮像画像を、前記撮像手段の並びに応じて配置し、かつ、隣り合う前記撮像手段の前記画角範囲の間の撮像不可能領域の寸法に対応した仮領域を前記各撮像画像の間に配置して繋ぎ合せた画像を生成し、当該繋ぎ合せた画像における前記相対位置を検出する構成としてもよい。
さらに、本発明の追尾式レーザー装置として、所定の撮像方向を中心とした所定の画角範囲を撮像する撮像手段と、前記複数の撮像手段により撮像された前記追尾式レーザー装置の周囲が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、前記撮像画像に基づいて、前記レーザー光が射出されるレーザー射出方向、及び前記追尾式レーザー装置から前記追尾対象に向かう追尾対象方向の相対位置を検出する位置検出手段と、前記レーザー射出方向を変更する方向変更手段と、前記相対位置に基づいて前記方向変更手段を制御し、前記レーザー射出方向を前記追尾対象方向に修正する方向制御手段と、を備え、前記撮像手段は複数設けられ、それぞれ異なる撮像方向を有し、複数の前記撮像手段のうちの1つは、前記撮像方向が、前記レーザー射出方向と一致する第一撮像手段であり、前記位置検出手段は、複数の前記撮像手段により撮像された各撮像画像のうちから前記追尾対象が撮像された撮像画像を検出し、前記方向制御手段は、前記レーザー射出方向を、前記追尾対象が撮像された撮像画像に対応する前記撮像手段の前記撮像方向に移動させ、前記位置検出手段は、前記方向制御手段により前記レーザー射出方向が前記追尾対象が撮像された撮像画像に対応する前記撮像手段の前記撮像方向に移動された後に、前記第一撮像手段により撮像された前記撮像画像の前記レーザー射出方向と前記追尾対象との前記相対位置を検出し、前記方向制御手段は、前記検出された前記相対位置に基づいて、前記レーザー射出方向を前記追尾対象方向に修正する構成としてもよい。
【0008】
本発明では、追尾式レーザー装置の周囲の撮像画像に基づいて、追尾式レーザー光から射出されるレーザー光のレーザー射出方向と、追尾式レーザー装置から追尾対象に向かう追尾対象方向との相対位置を検出し、その相対位置に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向に合わせる。
このような構成では、レーザー射出方向が追尾対象方向から離れ、追尾対象を見失った場合でも、撮像画像の画素位置から、迅速にレーザー射出方向と追尾対象方向との相対位置を検出することができる。したがって、撮像画像を参照しながら、レーザー射出方向を追尾対象方向に向かって修正することで、例えば上述したように、レーザー光を渦状に走査させて追尾対象を探索する場合等に比べて、迅速に、かつ精度よくレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせることができる。
【0009】
本発明の追尾式レーザー装置では、所定の撮像方向を中心とした所定の画角範囲を撮像する撮像手段を備え、前記撮像画像取得手段は、前記撮像手段により撮像された撮像画像を取得することが好ましい。
本発明では、撮像画像を撮像する撮像手段を備える。撮像画像としては、例えば、追尾式レーザー装置とは離れた位置に設けられた撮像カメラ等により、追尾式レーザー装置と追尾対象との位置関係を撮像してもよいが、この場合、撮像カメラの設置位置と追尾式レーザー装置との位置関係を予め追尾式レーザー装置に入力する等の処理が必要となる。これに対して、追尾式レーザー装置に撮像手段が設けられる構成とすることで、レーザー射出方向に対する撮像方向の位置関係が容易に検出できるようになり、レーザー射出方向を追尾対象方向に合わせるための処理も容易となる。
【0010】
本発明の追尾式レーザー装置では、前記撮像手段の前記撮像方向は、前記レーザー射出方向であることが好ましい。
本発明では、レーザー射出方向と撮像方向が一致している。つまり、撮像画像における中心画素がレーザー射出方向となる。この場合、レーザー射出方向(撮像画像の中心画素)を中心とする追尾対象の探索可能範囲に偏りが生じないので、追尾対象がどの方向に移動した場合でも、迅速かつ精度よくレーザー射出方向を修正することができる。
【0011】
本発明の追尾式レーザー装置は、前記撮像画像に前記追尾対象が存在するか否かを判定する画像判定手段と、前記画像判定手段に前記追尾対象が存在しないと判定された場合に、前記方向変更手段を制御して、前記撮像方向を変化させる撮像方向制御手段と、を備えることが好ましい。
本発明では、上記のように、撮像手段の撮像方向とレーザー射出方向とが略一致する構成において、撮像画像内に追尾対象が存在しない場合に、方向変更手段を制御して撮像方向を変化させて追尾対象を探索する。
このような構成では、撮像画像内に追尾対象が見つけられなかった場合でも、撮像手段の撮像方向を変化させて撮像範囲を順次変化させることで、例えばレーザー光のみを渦状パターンに沿って走査させる場合等に比べて、効率よく追尾対象を探索することができる。
【0012】
本発明の追尾式レーザー装置では、前記撮像手段は複数設けられ、これらの撮像手段は、それぞれ異なる撮像方向を有し、前記位置検出手段は、これらの複数の撮像手段により撮像された各撮像画像に基づいて前記相対位置を検出することが好ましい。
本発明では、撮像方向が異なる撮像手段が複数設けられている。このため、各撮像手段により撮像される撮像範囲もそれぞれ異なっている。このような構成では、1つの撮像手段に対する撮像画像から追尾対象が外れた場合でも、他の撮像手段の撮像範囲内に追尾対象が移動すれば、その位置を検出することができ、レーザー射出方向を修正することができる。
【0013】
本発明の追尾式レーザー装置では、複数の前記撮像手段は、各撮像手段の撮像範囲により前記追尾式レーザー装置を中心とした周囲全方向が撮像可能となるように、各々配置されていることが好ましい。
本発明は、上述のような複数の撮像手段が、追尾式レーザー装置の全方位に向けて設定されている。このため、追尾対象が、どの位置に移動した場合でも、複数の撮像手段のいずれか1つの撮像画像から、その位置を特定することができ、レーザー射出方向を迅速、かつ精度よく修正することができる。
【0014】
本発明の追尾式レーザー装置では、前記撮像手段は、魚眼レンズを有し、当該魚眼レンズを通した前記画角範囲を撮像することが好ましい。
本発明では、撮像手段には魚眼レンズが搭載されている。このため、撮像可能な画角をより広げることができ、より広い範囲の撮像範囲から追尾対象の移動先を検出することができる。また、上述のように、複数の撮像手段を用いる場合でも、1つの撮像手段により撮像できる範囲が広がるため、撮像手段の数も少なくでき、装置構成の簡略化、低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明の追尾式レーザー装置は、前記撮像手段は、無線信号により前記撮像画像を送信する無線送信手段を備え、前記撮像画像取得手段は、前記無線信号を受信する無線受信手段を備えることが好ましい。
本発明では、無線通信により、撮像画像を撮像画像取得手段に送信する。この場合、撮像手段をケーブル線等の有線による配線接続を実施する必要がなく、レーザー射出方向を制御した際に、配線の絡まり等による動作不良を回避できる。
【0016】
本発明の追尾式レーザー装置において、前記追尾対象は、前記レーザー光を反射させる再帰反射体を備え、当該追尾式レーザー装置は、前記再帰反射体により反射された前記レーザー光である戻り光を受光し、受光量及び前記戻り光のずれ量に応じた受光信号を出力する受光手段を備え、前記方向制御手段は、前記相対位置に基づいて前記レーザー射出方向を修正した後、前記ずれ量が所定範囲内に収まるように前記方向変更手段を制御することが好ましい。
【0017】
本発明では、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向に修正した後、追尾対象の再帰反射体からの戻り光の光量に基づいて、さらにレーザー射出方向を修正する。撮像画像の画素位置のみからでは、レーザー射出方向の先に、再帰反射体が適切に位置していない場合があり、また、例えば測長等の各種処理に好適な戻り光の受光量が得られていない場合も有り得る。これに対して、本発明は、上述のような撮像画像に基づいたレーザー射出方向の修正の後、戻り光の受光量に基づいたレーザー射出方向の修正を行う。これにより、レーザー射出方向をより精度よく追尾対象方向に合わせ込むことができる。また、この場合、撮像画像に基づいてレーザー射出方向が、追尾対象の再帰反射体に向けて射出されているので、レーザー射出方向と追尾対象方向とがほぼ一致しており、従来のように、再帰反射体の探索に膨大な時間を要することがなく、迅速にレーザー射出方向を好適な方向に修正することができる。
【0018】
本発明の追尾式レーザー装置は、前記受光量が所定の第一閾値以下であるか否かを判定する第一判定手段と、前記受光量が前記第一閾値以上の所定の第二閾値以下であるか否かを判定する第二判定手段と、を備え、前記方向制御手段は、前記相対位置に基づいて前記レーザー射出方向を修正した後、前記第一判定手段により前記受光量が前記第一閾値以下であると判定された場合、前記方向変更手段を制御して、前記レーザー射出方向を渦状に移動させ、この移動中において、前記第二判定手段により前記受光量が前記第二閾値より大きくなったと判定された場合に、前記ずれ量が所定範囲内に収まるように前記方向変更手段を制御することが好ましい。
本発明では、上記のように、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向に修正した後、レーザー光を渦状パターンに沿って走査させて再帰反射体を探索する。この場合、現在のレーザー射出方向を中心として、当該中心に近い位置から遠い位置までを効率よく走査することができ、迅速な再帰反射体の探索が可能となる。
【0019】
本発明の追尾式レーザー装置は、前記撮像画像に前記追尾対象が存在するか否かを判定する画像判定手段を備え、当該追尾式レーザー装置は、前記追尾対象が発見できない場合にレーザー光源からのレーザー光の射出を停止することが好ましい。
本発明では、上述のように、撮像方向を複数方向に変化させても追尾対象が見つけられなかった場合や、複数の撮像画像を用いても追尾対象を見つけられなかった場合、レーザー光の射出を停止して、レーザー光の追尾を停止する。これにより、省電力化を図ることができる。
【0020】
本発明の測定装置は、上述したような追尾式レーザー装置と、前記レーザー光の一部を参照光として分割する光分割手段と、前記追尾対象に設けられた再帰反射体により反射された前記レーザー光である戻り光と、前記参照光との干渉光を受光し、受光量及び前記再帰反射体の変位量に応じた測長信号を出力する測長用受光手段と、前記測長信号に基づいて、所定の基準点から前記再帰反射体までの距離を算出する測長手段と、を備えることを特徴とする。
本発明では、上述のような追尾式レーザー装置により、レーザー射出方向から追尾対象から離れて追尾不可能となった場合でも、撮像画像に基づいて、迅速にレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせることができる。したがって、追尾対象を見失った後に、追尾対象の探索に係る時間を短縮でき、測定装置における測長処理に係る時間も短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第一実施形態]
次に、本発明に係る第一実施形態の追尾式レーザー干渉測長装置について、図面に基づいて説明する。
〔追尾式レーザー干渉測長装置の構成〕
図1は、本発明に係る第一実施形態の追尾式レーザー干渉測長装置(以降、測長装置と称す場合がある)の概略構成を示すブロック図である。
図1において、測長装置1は、本発明の測定装置及び追尾式レーザー装置を構成する。
この測長装置1は、
図1に示すように、再帰反射体3と、干渉計10と、撮像カメラ20と、回転機構30と、制御装置40とを備える。
そして、この測長装置1は、レーザー光を射出し、当該レーザー光により移動体2の再帰反射体3(本実施形態における追尾対象)を追尾させる。そして、再帰反射体3で反射されたレーザー光 (戻り光)に基づいて、基準点C(後述)から再帰反射体3までの距離を測定する。
【0023】
[再帰反射体の構成]
再帰反射体3は、レトロリフレクタやキャッツアイ等で構成され、入射光を入射方向に沿って反射させる。
より具体的に、再帰反射体3は、入射光と反射光とが平行となるとともに、入射光と反射光とが再帰反射体3の中心に対して点対称となるように入射光を反射させる。したがって、再帰反射体3の中心から離れた位置に光が入射した場合には、入射光と反射光とがずれることとなる。
この再帰反射体3は、
図1に示すように、移動体2に取り付けられる。
【0024】
〔干渉計の構成〕
図2及び
図3は、干渉計10の光学系を模式的に示す図であり、
図2は、レーザー射出方向に射出されるレーザー光(測定光)が再帰反射体の中心位置に到達した状態を示す図、
図3は、レーザー光(測定光)が再帰反射体の中心位置からずれた状態を示す図である。
干渉計10は、
図1から
図3に示すように、再帰反射体3までの距離を測定するための測長光学系11と、再帰反射体3を追尾するための追尾光学系12とを備える。
なお、各光学系11,12の構成については、公知であるので簡略に説明する。
【0025】
測長光学系11は、
図2または
図3に示すように、レーザー光源111と、スプリッター112(本発明における光分割手段)と、PD(Photo Detector)を有する第一受光手段113(本発明における測長用受光手段)と、平面鏡114と、を備える。
追尾光学系12は、
図2または
図3に示すように、スプリッター121と、4分割PD(Photo Diode)または二次元PSD(Position Sensitive Detector)を有するずれ量検出手段としての第二受光手段122(本発明における受光手段)とを備える。
【0026】
このような干渉計10では、レーザー光源111から出射されたレーザー光は、スプリッター112にて参照用の参照光と、測定光とに分割される。前記参照光は、平面鏡114にて反射された後、スプリッター112にて第一受光手段113側に反射される。
一方、測定光は、スプリッター121を透過した後、再帰反射体3にて向けて出射され、再帰反射体3にて反射されて戻り光となった後、再度、干渉計10に入射する。この際、再帰反射体3が移動しているために、測定光が再帰反射体3の中心に対してはなれた位置に入射した場合(
図3)には、測定光が入射方向に対してずれて反射されることとなり、測定光と戻り光とがずれることとなる。
【0027】
干渉計10に入射した戻り光は、一部がスプリッター121にて反射され、第二受光手段122に受光される。この際、戻り光は、ずれ量に応じて第二受光手段122(4分割PD)の受光面の中心からずれて入射することとなる。第二受光手段122は、受光面が上下左右に4分割されており、各分割面に入射する戻り光の受光量に応じた4つの受光信号を制御装置40に出力する。すなわち、第二受光手段122は、戻り光のずれ量及び受光量に応じた第二受光信号を出力する。
【0028】
一方、上記ずれ量が所定閾値以内である場合、スプリッター121を透過した残りの戻り光は、スプリッター112を透過した後、前記平面鏡にて反射された前記参照光との干渉光となり、第一受光手段113に受光される。戻り光と参照光との干渉光を受光した第一受光手段113は、干渉計10と再帰反射体3との距離の変位及び受光量に応じた第一受光信号を制御装置40に出力する。
本実施形態の測長装置1では、前記ずれ量を前記閾値以内に抑えるように、レーザー光を再帰反射体3に対して追尾させ、第一受光手段113で干渉光が観察される状態を維持する。
【0029】
[撮像カメラの構成]
撮像カメラ20は、本発明における撮像手段であり、干渉計10に装着され、干渉計10のレーザー光(測定光)の射出方向、つまりレーザー射出方向を撮像する。
具体的には、撮像カメラ20は、撮像レンズ21を含む撮像光学系と、撮像光学系を透過した像を撮像する撮像部22と、信号出力部23と、を備えている。
撮像レンズ21は、光軸を中心軸として、所定の画角範囲内の像を撮像部22に導く。この撮像レンズ21としては、魚眼レンズにより構成されていることが好ましく、これにより、前記画角を180度以上に広げることができ、より広い領域を撮像することができる。
また、撮像レンズ21の光軸は、本発明の撮像方向となり、本実施形態では、撮像方向は、レーザー射出方向と略一致する。
撮像部22は、例えばCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサーにより構成されており撮像光学系により導かれた像を撮像し、撮像画像に基づいた画像信号を出力する。
信号出力部23は、本発明の無線送信手段であり、撮像部22から入力された画像信号を無線信号として制御装置40に送信する。
【0030】
〔回転機構の構成〕
回転機構30は、制御装置40による制御の下、干渉計10からの測定光の出射方向(レーザー射出方向)を変更する機構であり、本発明の方向変更手段を構成する。
この回転機構30は、
図1に示すように、測定光の方位角θaを変更する第一回転機構31と、測定光の仰角θeを変更する第二回転機構32とを備える。
なお、各回転機構31,32の回転軸が交わる点は、回転機構30が駆動された場合でも不動点となり、本発明における基準点C(
図1)となる。
【0031】
〔制御装置の構成〕
制御装置40は、
図1に示すように、無線受信手段である信号受信部41を備えており、撮像カメラ20の信号出力部23から送信された画像信号(無線信号)を受信する。
また、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)等により構成される演算部42や、メモリ等により構成される記憶部43を備え、測長装置1全体を制御する。
そして、この制御装置40の演算部42は、記憶部43に記憶されたプログラムを読み込み、実行することで、
図1に示すように、撮像画像取得手段51、位置検出手段52、距離算出手段53、及び方向制御手段54として機能する。
【0032】
撮像画像取得手段51は、撮像カメラ20を制御し、撮像カメラ20から撮像画像を送信させ、信号受信部41で画像信号(無線信号)を受信させる。すなわち、撮像画像取得手段51は、撮像カメラ20から送信される撮像画像を取得する。
位置検出手段52は、本発明の画像判定手段としても機能し、撮像画像内に移動体2の再帰反射体3が存在するか否かを判定する。また、位置検出手段52は、撮像画像内に再帰反射体3が存在する場合、撮像画像内における再帰反射体3の画素位置を検出する。さらに、位置検出手段52は、撮像画像におけるレーザー射出方向に対応する画素位置(例えば中心画素)と、撮像画像における再帰反射体3の画素位置とに基づいて、レーザー射出方向の修正方向(角度調整方向)を検出する。
距離算出手段53は、第一受光手段113から出力された第一受光信号を用いて、基準点Cから再帰反射体3までの距離を算出する。
【0033】
方向制御手段54は、第一方向制御手段541と、状態判定手段542と、ずれ判定手段543と、第二方向制御手段544と、を備え、本発明における撮像方向制御手段としても機能する。
第一方向制御手段541は、位置検出手段52により算出された角度調整量に基づいて、回転機構30の姿勢を調整する。
【0034】
状態判定手段542は、干渉計10から射出されたレーザー光(測定光)が、再帰反射体3を追尾している追尾状態であるか、再帰反射体3から僅かにずれているが、戻り光に基づいて追尾状態に修正可能な状態(追尾可能状態)であるか、再帰反射体3からの戻り光がなく、追尾が不可能な状態(追尾不可能状態)であるかを判定する。
つまり、状態判定手段542は、戻り光が第二受光手段122により受信されている場合、追尾状態、または追尾可能状態と判定し、戻り光が第二受光手段122により受信されない場合、追尾不可能状態であると判定する。
この状態判定手段542は、例えば、第二受光手段122から出力された第二受光信号に基づいて、各状態を判定する。なお、撮像カメラ20により撮像される撮像画像に基づいて、レーザー射出方向と追尾対象方向とが一致しているか否かに基づき、各状態を判定してもよい。
【0035】
ずれ判定手段543は、各受光手段113,122から出力された各受光信号に基づいて、各受光手段113,122の受光量(つまり、受光信号の信号レベル)が、各受光手段113,122に対してそれぞれ設定された所定の第一閾値(第一レベル)以下であるか否かを判定する。これにより、ずれ判定手段543は、レーザー光が追尾状態であるか追尾不可能状態であるかを判定することができる。
【0036】
第二方向制御手段544は、状態判定手段542により、追尾状態または追尾可能状態と判定され、ずれ判定手段543により、各受光手段113,122の受光量が第一閾値以下であると判定された場合(追尾可能状態と判定された場合)に、当該受光量が第一閾値より大きくなるよう、回転機構30を制御する。具体的には、第二方向制御手段544は、距離算出手段53にて算出された基準点Cから再帰反射体3までの距離と、第二受光手段122からの第二受光信号(戻り光のずれ量)とに基づいて、回転機構30の角度調整量を算出し、回転機構30を制御して、再帰反射体3を追尾させる(再帰反射体3の中心に測定光を出射可能とする状態に干渉計10の姿勢を変更させる)。
【0037】
〔測長装置における再帰反射体追尾方法〕
次に、測長装置1により、基準点Cから再帰反射体3までの距離を測定する際に、再帰反射体3を見失った場合の処理について、以下説明する。
本実施形態の測長装置1では、状態判定手段542により追尾状態、追尾可能状態、及び追尾不可能状態が判定される。
ここで、追尾状態と判定された場合では、第一受光手段113からの第一受信信号に基づいて、距離算出手段53により、基準点Cから再帰反射体3までの距離が算出される。
また、追尾可能状態と判定された場合、戻り光が検出されているが、測定光に対してずれているため、戻り光と参照光との干渉光が得られない状態であり、この場合は、第二方向制御手段54により、測長が可能な追尾状態となるように、レーザー射出方向を調整する。
具体的には、ずれ判定手段543により、第二受光手段122の受光面中心点に対する第二受光信号の信号レベルが所定の第一閾値以上であるか否かを判定する。そして、信号レベルが第一閾値以下であると判定された場合、第二方向制御手段544は、第二受信信号に基づいて、受光面における戻り光が受光された受光点を検出し、受光点の位置に基づいて角度調整量を算出して、その角度調整量に基づいて、回転機構30を制御する。これにより、追尾状態を維持するよう、回転機構30が制御されることになり、距離算出手段53による第一受光信号に基づいた距離算出処理が可能となる。
【0038】
一方、状態判定手段542により、追尾不可能状態であると判定された場合、測長装置1は、以下のような処理を実施する。
図4は、本実施形態において、追尾不可能状態と判定された場合の再帰反射体3の検出、及びレーザー射出方向の修正方法を示すフローチャートである。
状態判定手段542により追尾不可能状態と判定された場合、測長装置1の制御装置40は、撮像カメラ20により撮像画像を撮像させる。これにより、信号出力部23から無線信号として、撮像画像の画像信号が制御部の信号受信部41に送信され、撮像画像取得手段51は、信号受信部41で受信した撮像画像を取得する(ステップS1)。
【0039】
次に、位置検出手段52は、取得した撮像画像を解析し、撮像画像内に再帰反射体3があるか否かを判定する(ステップS2)。つまり、位置検出手段52は、再帰反射体3が撮像された撮像画像を取得できたか否かを判定する。
【0040】
ステップS2において、撮像画像内に、再帰反射体3がないと判定された場合、第一方向制御手段541は、撮像方向を変化させて再帰反射体3を探索する処理を実施する(ステップS3)。
図5は、撮像カメラ20の撮像範囲内に再帰反射体3が存在しない場合の、測長装置1及び再帰反射体3の位置関係の一例を示す図である。
図6は、回転機構30を制御して再帰反射体3が探索された状態を示す図である。
撮像カメラ20は、撮像方向を中心とした所定画角θgの範囲を撮像画像として取得する。したがって、
図5のように、この画角θgの範囲内に再帰反射体3がない場合、撮像画像内に再帰反射体3が映り込まない。
ステップS3では、第一方向制御手段541は、第一回転機構31を制御して測定光の方位角θaを例えば360度回転させ、この間に位置検出手段52により、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されたか否かを判定する。ここで、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されなかった場合は、第一方向制御手段541は、さらに、第二回転機構32を制御して、測定光の仰角θeを所定量(例えば、撮像カメラ20の画角の半分程度)変化させ、再び、測定光の方位角θaを例えば360度回転させ、この間に位置検出手段52により再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されたか否かを判定する。
このようにして、測長装置1の周囲全方向に対して撮像方向を順次変化させていき、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されたか否かを判定する。
そして、位置検出手段52により、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されたと判定されると、その状態で回転機構30の駆動を停止する。これにより、
図6に示すように、撮像カメラ20の撮像範囲内に再帰反射体3が位置する状態に、当該撮像カメラ20の姿勢が変更される。
【0041】
次に、位置検出手段52は、ステップS3において、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されたか否か、つまり再帰反射体3の探索に成功したか否かを判定する(ステップS4)。このステップS4において、再帰反射体3が撮像された撮像画像が得られなかった場合(再帰反射体3の探索に失敗した場合)、エラー信号を出力するとともに、測長装置1における測長処理を中止する。
一方、ステップS4において撮像カメラ20の姿勢が、
図6に示すように変更され、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得された場合、及びステップS2において「Yes」と判定された場合、位置検出手段52は、取得した撮像画像に基づいて、追尾対象方向を検出する(ステップS5)。
【0042】
図7は、再帰反射体3が撮像された撮像画像の一例を示す図である。
図8は、レーザー射出方向と追尾対象方向とが一致した状態での撮像画像を示す図である。
本実施形態では、撮像方向はレーザー射出方向と略一致しており、撮像方向を中心とした所定画角θgの範囲の像が撮像画像をして撮像される。したがって、撮像画像の中心画素Oは、レーザー射出方向と略一致する。また、撮像画像内の再帰反射体3の画素Pは、測長装置1から移動体2に向かう方向を示すものとなり、本発明における追尾対象方向となる。すなわち、このステップS5では、位置検出手段52は、撮像画像を解析し、再帰反射体3の画素Pを追尾対象方向として検出する。
【0043】
次に、位置検出手段52は、レーザー射出方向を追尾対象方向に合わせるための角度調整方向を求める(ステップS6)。
上述したように、撮像画像内において、再帰反射体3の画素Pを検出すると、画素Oから画素Pに向かう方向(矢印Y1)が、レーザー射出方向を追尾対象方向に修正するための角度調整方向となる。
この後、第一方向制御手段541は、回転機構30を制御し、ステップS6により求められた角度調整方向にレーザー射出方向を移動させる(ステップS7)。
この後、状態判定手段542は、第二受光手段122の第二受光信号に基づいて、追尾不可能状態から追尾可能状態または追尾状態に変化したか否かを判定する(ステップS8)。
【0044】
ステップS8において、状態変化がない場合(Noと判定された場合)は、レーザー照射方向と追尾対象方向とがずれていることが考えられるため、再びステップS1に戻る。すなわち、撮像画像を参照しながら、レーザー射出方向の調整を継続する。
一方、ステップS8において、状態判定手段542により、追尾状態または追尾可能状態に切り替わったと判定されると(Yesと判定された場合)、
図8に示すような撮像画像が撮像されることになり、レーザー射出方向と追尾対象方向とが一致する。この場合、方向制御手段54は、第一方向制御手段541による回転機構30の制御を終了させ、以降は、追尾状態や追尾可能状態における、上述したような第二方向制御手段544による追尾処理が実施される。そして、再び状態判定手段542により、追尾不可能状態になったと判定されると、上記各ステップS1〜S8の処理が実施される。
【0045】
[第一実施形態の作用効果]
本実施形態では、撮像画像取得手段51により、測長装置1の周囲の撮像画像を取得し、位置検出手段52は、当該撮像画像内の再帰反射体3の画素Pと、干渉計10から射出される測定光のレーザー射出方向に対応する画素Oとから、レーザー射出方向と追尾対象方向との相対位置、角度調整方向を検出する。そして、第一方向制御手段541は、画素Pが画素Oに一致するように、角度調整方向にレーザー射出方向を移動させる。
このため、本実施形態では、測定者が干渉計10の姿勢を手動で調整する必要がなく、容易にレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせることができる。また、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を調整するための角度調整方向が検出できるので、例えば、レーザー射出方向を渦状に移動させる構成等に比べて、迅速、かつ精度よくレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせることができる。
【0046】
本実施形態では、測長装置1に撮像カメラ20が設けられている。
測長装置1の周囲の撮像画像を撮像する撮像手段を別途設ける構成とした場合、撮像手段により撮像された撮像画像において現在のレーザー射出方向を別途検出するための構成等が必要となり、撮像手段の撮像方向と測長装置1との位置関係を予め制御装置40に入力する等の処理も必要となる。これに対して、本実施形態では、上記のように測長装置1の所定位置に撮像カメラ20が設けられているため、撮像画像におけるレーザー射出方向を容易に検出でき、構成も簡素にできる。
【0047】
本実施形態では、レーザー射出方向と撮像方向とが略一致している。したがって、撮像画像内の所定の画素(中心画素O)をレーザー射出方向とすることで、角度調整方向を容易に検出することができる。
また、レーザー射出方向が撮像画像における中心画素Oとなる場合、再帰反射体3の探索可能範囲に偏りが生じず、再帰反射体3がどの方向に移動した場合でも、迅速かつ精度よくレーザー射出方向を修正することができる。
【0048】
本実施形態では、撮像画像内に再帰反射体3が存在しない場合、第一方向制御手段541は、回転機構30を制御して、撮像カメラ20の撮像方向(レーザー射出方向と略一致)を走査し、再帰反射体3を探索する。
このため、撮像カメラ20の画角内に再帰反射体3がない場合でも、再帰反射体3を探索することができる。この場合でも、撮像カメラ20は、所定の画角θgの範囲を撮像領域とした撮像画像を取得できるので、例えば直線状のレーザー光(測定光)を渦状パターンに沿って走査させて再帰反射体3を探索させる構成等に比べて、効率よく再帰反射体3を探索することができる。
【0049】
本実施形態の撮像カメラ20は、撮像レンズ21として、魚眼レンズを用いることが好ましい。この場合、魚眼レンズを介して、より広い画角を撮像範囲に設定することができ、移動体2が大きく移動した場合でも、効率よく再帰反射体3を見つけることができる。
【0050】
本実施形態の測長装置1は、撮像カメラ20の信号出力部23から、制御装置40の信号受信部41に対して、無線信号として撮像画像に基づいた画像信号を送信する。
したがって、撮像カメラ20の周囲に撮像画像を送信するための配線が不要となり、回転機構30を駆動させて干渉計10及び撮像カメラ20を回転させた場合でも、配線の絡まり等の不都合がなく、これによる動作不良も回避できる。
【0051】
本実施形態では、ステップS3において撮像カメラ20の撮像方向を変化させた際に、再帰反射体3が探索できなかった場合に、測長処理を終了させる。つまり、レーザー光の出力を停止する。これにより、無駄な測長処理を避け、省電力化を図ることができる。
【0052】
本実施形態では、ステップS1〜ステップS8の処理により、撮像画像に基づいてレーザー射出方向を修正することで、追尾状態又は追尾可能状態となる。ここで、追尾可能状態である場合は、さらに、第二方向制御手段544により、第二受光手段122から出力される第二受光信号に基づいて戻り光のずれ量を検出し、ずれ量が所定範囲内となるように、レーザー光射出方向を修正する。これにより、追尾可能状態から追尾状態となり、戻り光と参照光との干渉光に基づいて、適切に基準点Cから再帰反射体3までの距離を算出することができる。
【0053】
[第二実施形態]
上記第一実施形態では、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向に合わせ、追尾不可能状態から追尾可能状態または追尾状態に状態を変化させる例を示した。これに対して、第二実施形態では、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向の近傍まで移動させ、その後、レーザー射出方向を所定パターンで移動させて再帰反射体を探索する処理を行う点で、上記第一実施形態と相違する。
【0054】
図9は、第二実施形態における測長装置1Aの概略構成を示すブロック図である。なお、以降の実施形態の説明に当たり、すでに説明した構成については同符号を付し、その説明を省略、又は簡略化する。
図9に示すように、本実施形態の測長装置1Aの制御装置40は、方向制御手段54として、さらに、パターン生成手段545、パターン走査制御手段546、及び受光量判定手段547を備える。
【0055】
パターン生成手段545は、第一方向制御手段541により、レーザー射出方向が、追尾対象方向の近傍まで移動された後、ずれ判定手段543により各受光手段113,122の受光量のうち少なくとも一方が第一閾値以下であると判定された場合に、測定光の射出予定軌跡として渦状のパターンを生成する。
【0056】
図10は、パターン生成手段545により生成されるパターンの例を示す図である。
パターン生成手段545は、ずれ判定手段543により各受光手段113,122の受光量のうち少なくとも一方が第一閾値以下であると判定された場合、まず、レーザー射出方向(方位角θa及び仰角θe)上において、所定の距離R(例えば、ずれ判定手段543により受光量が第一閾値以下であると判定される直前で距離算出手段53により算出された再帰反射体3までの距離)だけ、基準点Cから離れた位置に点Qを設定する。
【0057】
そして、パターン生成手段545は、仰角θeを変更するための第二回転機構32の回転軸と平行となり、かつ、点Qを通るようにX軸をとり、レーザー射出方向の方位角θaを変更するための第一回転機構31の回転軸と平行となり、かつ、前記点Qを通るようにY軸をとることで、XY平面を設定する。
【0058】
次に、パターン生成手段545は、
図10に示すように、XY平面上において、測定光のスポット座標S(x,y)を 、(x(t),y(t))=(r(t)cosθ(t), r(t)sinθ(t))と定める。すなわち、パターン生成手段545は、点Sの軌跡により表され、曲線よりなるとともに各周間の幅fが一定となるアルキメデスの渦のパターンを測定光の射出予定軌跡として生成する。なお、r(t)は、点Qから点Sまでの距離を表し、θ(t)は、線分PQとX軸とが成す角を表す。r(t) 及びθ(t)は、どちらも時間に対して単調に増加する関数である。
【0059】
なお、パターン生成手段545により生成されるパターンとしては、
図10に示すような曲線により形成される渦形状に限られず、例えば、
図11に示されるような直線により形成される渦形状であってもよい。
【0060】
パターン走査制御手段546は、回転機構30を制御し、上記のように生成されたパターンに沿って測定光を走査させながら、再帰反射体3を探索する。
受光量判定手段547は、パターン走査制御手段546により回転機構30が制御され、測定光が渦状のパターンに沿って射出されている間、各受光手段113,122の受光量が、各受光手段113,122に対してそれぞれ設定された所定の第二閾値以上であるか否かを判定する。なお、第二閾値は、第一閾値と等しい値に設定されていてもよく、第一閾値よりも大きい値に設定されていてもよい。
【0061】
[第二実施形態の測長装置における再帰反射体追尾方法]
本実施形態の測長装置1Aでは、第一実施形態における再帰反射体追尾方法のステップS7において、第一方向制御手段541は、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向を追尾対象方向の近傍位置まで移動させる。つまり、第一方向制御手段541は、撮像画像を参照し、撮像画像におけるレーザー射出方向を示す画素Oと、再帰反射体3の位置を示す画素Pとの距離が、所定の画素数以下となるように、回転機構30を駆動させる。
この後、パターン生成手段545により、パターンを生成し、パターン走査制御手段546は、生成されたパターンに基づいて、回転機構30を制御する。
そして、パターン走査制御手段546によるパターン走査が実施されている間、受光量判定手段547は、各受光手段113,123の受光量を監視し、受光量が所定の第二閾値以上となった時点で、パターン走査制御手段546によるパターン走査を停止させる。
【0062】
[第二実施形態の作用効果]
本実施形態では、方向制御手段54は、第一方向制御手段541によりレーザー射出方向を追尾対象方向の近傍まで移動させた後、パターン生成手段545により生成されるパターンに従って、パターン走査制御手段546によりレーザー射出方向を変位させ、受光量判定手段547により受光量が第二閾値以上であると判定された際に、レーザー射出方向の移動を停止させる。
上述した第一実施形態では、撮像画像に基づいてレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせ込むが、撮像光学系のレンズ収差等の影響により、レーザー照射方向と中心画素Oとが一致していない場合もある。ここで、レーザー照射方向に再帰反射体3があり、戻り光が検出できれば、戻り光のずれ量に基づいて、レーザー照射方向を修正することができる。しかしながら、戻り光が検出できない場合では、測長処理が実施できない。これに対して、本実施形態は上記のように、撮像画像に基づいたレーザー射出方向の修正の後、渦状のパターンに基づいて、測定光の射出位置を精度よく再帰反射体3の中心位置に合わせることができる。これにより、より精度良くレーザー照射方向の修正を行うことができ、測定光を再帰反射体3に追尾させることができる。
また、本実施形態では、撮像画像に基づいて、レーザー射出方向が追尾対象方向の近傍まで移動されているため、渦状パターンを用いて再帰反射体3を探索する場合でも、レーザー射出方向を微小量だけ移動することで容易に、かつ迅速に再帰反射体3を探索することができる。
【0063】
[第三実施形態]
上記第一実施形態では、1台の撮像カメラ20を用い、その撮像カメラ20により撮像される1つの撮像画像に基づいて再帰反射体3を探索する例を示した。これに対して、第三実施形態では、複数の撮像カメラ20を用いる点で上記第一実施形態と相違する。
つまり、第一実施形態では、撮像画像内に再帰反射体3がない場合、撮像カメラ20の撮像方向を順次変化させて撮像範囲を切り替えて再帰反射体3を探索する。この場合でも、撮像カメラ20の撮像範囲は、測定光のレーザー径よりも大きいので、従来のように測定光を所定パターンに沿って走査して再帰反射体3を探索する場合に比べて、探索時間を短縮することができるが、再帰反射体3の位置によっては、再帰反射体3が撮像される位置を検出するまで、探索時間が長くなることが考えられる。
これに対して、本実施形態は、複数の撮像カメラ20を用いることで、撮像画像として取得される範囲が広くなり、より効率的な再帰反射体3の探索を実施できる。
【0064】
図12は、本実施形態の測長装置1Bにおける、干渉計10及び撮像カメラ20の位置関係を示す図である。
本実施形態では、
図12に示すように、干渉計10に対して、複数の撮像カメラ20が設けられている。具体的には、複数の撮像画像により測長装置1Bのほぼ周囲全方向が撮像範囲となるように、撮像カメラ20(20A,20B,20C,20D)が干渉計10に固定されている。
なお、
図12に示す例では、第一回転機構31の回転軸周りで、90度間隔で4台の撮像カメラ20が設置される例を示すが、より小さい角度間隔で5台以上の撮像カメラ20が設置される構成などとしてもよく、各撮像カメラ20の撮像範囲(画角θg)により適宜設定すればよい。
また、
図12に示す例は、第一回転機構31の回転軸周り(方位角方向)に複数の撮像カメラ20を設けるが、仰角方向にも、複数の撮像カメラ20が設置される構成としてもよい。例えば、
図12における紙面に直交する方向(第一回転機構31の回転軸方向)を撮像方向とした撮像カメラ20が設けられる構成としてもよい。
【0065】
図13は、
図12に示す各撮像カメラ20により撮像された撮像画像を繋ぎ合わせた状態を示す図である。
測長装置1Bの撮像画像取得手段51は、複数の撮像カメラ20により取得された撮像画像を取得し、位置検出手段52は、これらの撮像画像に基づいて、追尾対象方向、及び角度調整方向を検出する。
つまり、位置検出手段52は、
図13に示すように、各撮像カメラ20(20A,20B,20C,20D)により撮像された撮像画像Ga,Gb,Gc,Gdのうち、撮像カメラ20Aの撮像画像Gaの中心画素Oをレーザー射出方向として、角度調整方向を検出する。
ここで、再帰反射体3が撮像された画像が、レーザー射出方向を示す画素Oを含む撮像画像Gaである場合、上記第一実施形態と同様に、この撮像画像Gaに基づいて、角度調整方向を検出する。
【0066】
一方、他の撮像画像Gb,Gc,Gdに再帰反射体3が撮像されている場合、
図13に示すように、各撮像画像Ga,Gb,Gc,Gdを撮像カメラ20の並びに応じて繋ぎ合わせる。そして、位置検出手段52は、この繋ぎ合わせた画像におけるレーザー射出方向を示す画素Oと、再帰反射体3の位置を示す画素Pとに基づいて、画素Oから画素Pに向かう方向(矢印Y2)を角度調整方向として検出する。
そして、第一方向制御手段541は、この矢印Y2に沿ってレーザー射出方向が移動するように、回転機構30を制御する。
【0067】
なお、本実施形態では、
図12に示すように、各撮像カメラ20の撮像可能範囲がほぼ隣接するように、当該各撮像カメラ20が設置されているため、上記のように、各撮像画像を繋ぎ合わせた画像に基づいて、角度調整方向を検出できる。
これに対して、各撮像カメラ20の撮像可能範囲の間に隙間(撮像不可能領域)がある場合、位置検出手段52は、各撮像画像の間に、撮像不可能領域の寸法に応じた仮領域を設定した上で、画素Oから画素Pまでの方向を検出すればよい。
または、各撮像カメラ20の撮像方向の角度と、再帰反射体3が撮像された撮像画像における、再帰反射体3に対応する画素Pとに基づいて、角度調整方向を算出してもよい。
【0068】
あるいは、第一方向制御手段541により、まず撮像カメラ20Aの撮像方向を修正した後、撮像カメラ20Aの撮像画像Gaに基づいて角度調整方向を検出してもよい。例えば、
図12及び
図13の例を用いて説明すると、位置検出手段52により再帰反射体3が撮像された撮像画像Gcが検出さると、第一方向制御手段541は、まず、回転機構30を制御して、撮像画像Gcが撮像された撮像方向(撮像カメラ20Cの撮像方向)に、撮像カメラ20Aの撮像方向を移動させる。その後、位置検出手段52は、撮像カメラ20Aにより撮像された撮像画像Gaに基づいて、上記第一実施形態と同様の処理によりレーザー射出方向を修正する。
【0069】
[第三実施形態の作用効果]
本実施形態では、複数の撮像カメラ20を用いて、移動体2の再帰反射体3の位置を探索することができる。したがって、例えば、第一実施形態におけるステップS3のように、回転機構30を制御し、撮像方向(撮像範囲)を各方向に変化させて再帰反射体3を探索する場合に比べて、より迅速に再帰反射体3の位置を特定することができる。したがって、より迅速にレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせ、測定光を再帰反射体3に追尾させることができる。
【0070】
ここで、本実施形態では、複数の撮像カメラ20の撮像範囲が、測長装置1Bの全方向をカバーするように、各撮像カメラ20が設置されている。このため、いずれかの撮像画像に再帰反射体3が撮像される可能性が高く、回転機構30を駆動させることなく、より容易に再帰反射体3の探索を行うことができる。
【0071】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記第一実施形態では、撮像カメラ20が干渉計10に固定され、レーザー射出方向と撮像方向とが一致する例を示したが、撮像方向とレーザー射出方向とが異なる構成としてもよい。
この場合、さらに、撮像カメラ20の撮像方向を、レーザー射出方向とは別に制御可能な、撮像カメラ回転機構を備える構成とし、制御装置40は、さらに、撮像カメラ回転機構を制御する撮像方向変更手段を備えることが好ましい。
このような構成では、状態判定手段542により追尾不可能状態である(再帰反射体3を見失った)と判断された場合、撮像カメラ回転機構を制御して、撮像カメラ20の撮像方向を変化させる。そして、再帰反射体3が撮像された撮像画像が取得されると、第一方向制御手段541は、回転機構30を制御して、その撮像カメラ20の撮像方向にレーザー射出方向を合わせる。この後、上記第一実施形態と同様の処理を実施し、レーザー射出方向を追尾対象方向に合わせる。
このような構成では、撮像カメラ20を独立して駆動させるための構成が別途必要となるが、例えば、干渉計10に対して撮像カメラ20を取り付ける際の取付誤差等に起因したずれを補正することができ、精度よくレーザー射出方向を追尾対象方向に合わせることができる。
【0072】
さらに、測長装置1,1A,1Bに撮像カメラ20が設置されず、例えば、撮像画像取得手段51は、室内等に別途設けられたカメラや、測定者により撮像されたカメラ等により撮像された撮像画像を取得してもよい。この場合、撮像画像が取得された位置や、撮像画像におけるレーザー射出方向等を検出するための構成が必要となるが、撮像カメラ20を搭載しない分、測長装置1,1A,1Bの構成を簡略化できる。
【0073】
第一実施形態において、位置検出手段52により撮像画像内に再帰反射体3が検出されなかった場合、ステップS3の処理により撮像方向を変化させて再帰反射体3を探索する処理を実施したが、これに限定されない。
例えば、追尾対象の移動範囲が予め設定されており、撮像カメラ20により、この移動範囲全体を撮像することが可能である場合では、撮像画像内に再帰反射体3を検出できなかった場合に、エラー信号を出力し、測長処理を終了させてもよい。
【0074】
第一実施形態において、撮像画像におけるレーザー射出方向に対応する画素を、撮像画像の中心画素Oとしたが、これに限定されない。撮像カメラ20の設置位置等に応じて、撮像画像の中心画素よりも上方の画素をレーザー射出方向に対応する画素として設定してもよい。
また、移動体2の移動方向が予め予想できる場合では、移動体2の移動方向に対して広い撮像範囲が得られるように、撮像カメラ20が設置されていてもよい。例えば、移動体2の移動方向がレーザー射出方向に対して右方向である場合、撮像カメラの撮像方向を予め、レーザー射出方向よりも右側にずらしておく。この場合、撮像画像におけるレーザー射出方向を示す画素は、中心画素よりも左側に設定され、レーザー射出方向よりも右側に広い撮像領域が設定される。この場合、移動体2が右方向に大きく移動した場合でも、回転機構30の姿勢を変更することなく、再帰反射体3が撮像された撮像画像を取得することができる。
【0075】
第三実施形態において、測長装置1Bの周囲全方向を撮像範囲としてカバー可能なように、複数の撮像カメラ20を設置する例を示したが、これに限定されない。
例えば、追尾対象の移動範囲が予め設定された限られた範囲である場合等では、当該範囲を撮像可能に複数の撮像カメラ20を設置すればよい。
【0076】
前記各実施形態では、回転機構30は、2つの回転軸を中心として干渉計10を回転させていたが、これに限らない。例えば、回転機構30としては、1つの回転軸のみを中心として干渉計10を回転させてもよく、3つの以上の回転軸を中心として干渉計10を回転させてもよい。
また、前記各実施形態では、撮像カメラ20と制御装置40とが無線接続されている例を示したが、例えばケーブル線等により有線接続される構成としてもよい。
【0077】
また、前記各実施形態では、本発明の追尾式レーザー装置を、追尾式レーザー干渉測長装置に適用する例を示したが、これに限定されず、レーザー光により、所定の追尾対象を追尾するいかなる装置にも適用することができる。例えば、レーザー光を用いて工作機械等のアームの動きを追跡する動作検査装置等にも適用することができる。
また、追尾式レーザー装置として、測長装置1,1A,1Bを例示し、再帰反射体3の戻り光に基づいて測長処理を実施するものとしたため、位置検出手段52は、撮像画像において、再帰反射体3の有無を判定する構成としたが、上述のように、他の産業機械等に追尾式レーザー装置を適用する場合では、再帰反射体が設けられない構成としてもよい。この場合、位置検出手段52は、撮像画像内の追尾対象の所定の定点(例えば重心点)を追尾対象方向として検出することができる。また、このような構成では、戻り光を検出する必要なく、第一受光手段113や第二受光手段122、レーザー光を測定光及び参照光に分けるスプリッター112等も不要となる。