(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る一実施形態のレーザー光源装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のレーザー光源装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、レーザー光源装置1は、レーザーヘッド部2と、コントローラー部3と、を備え、コントローラー部3によりレーザーヘッド部2を制御することで、所望の周波数に安定化されたレーザー光(オフセットレーザー光)を外部に出射する。
【0016】
より具体的には、レーザーヘッド部2は、オフセットロックレーザー光源21と、基準レーザー光源22と、第一ビームスプリッター23と、第二ビームスプリッター24と、ディテクター25とを備えている。
基準レーザー光源22は、出射されるレーザー光(基準レーザー光)の中心周波数が高度に安定化されたレーザー光源である。この基準レーザー光源22において、基準レーザー光の前記中心周波数が所定周波数となる各設定条件(例えば共振器長、共振器温度、出力電圧等)は予め測定されており、例えばコントローラー部3の記憶手段(図示略)に記憶されている。そして、コントローラー部3は、この設定条件を読み出して基準レーザー光源22を駆動させることで、上記のような所定周波数(f
R)の基準レーザー光を出射させる。
【0017】
第一ビームスプリッター23は、オフセットロックレーザー光源21から出射されるレーザー光(オフセットレーザー光)の一部を基準レーザー光に向かって反射させ、残りを外部に出射させる。
第二ビームスプリッター24は、第一ビームスプリッター23により反射された一部のオフセットレーザー光を、基準レーザー光の光進行方向に反射させ、基準レーザー光源22から出射された基準レーザー光を透過させる。
ディテクター25は、ビート干渉計であり、オフセットレーザー光及び基準レーザー光の干渉光からビート信号(ビート周波数)を検出し、コントローラー部3に出力する。なお、ディテクター25により検出されるビート周波数が、本発明の制御量となる。
【0018】
[オフセットロックレーザー光源21の構成]
図2は、オフセットロックレーザー光源21の概略構成を示す図である。
オフセットロックレーザー光源21は、
図2に示すように、電流入力により励起光を出力する励起光源210と、共振器211と、共振器211から出射された光を出力する出射レンズ212と、を備える。
励起光源210は、光源213及びコリメーターレンズ214を備える。光源213は、コントローラー部3の制御に基づいて電圧が印加されることで、励起光を出射する。
コリメーターレンズ214は、光源213から出射された励起光を平行化し、共振器211に向かって出力する。
【0019】
共振器211は、
図2に示すように、集光レンズ215、レーザー媒質216、エタロン217、共振器ミラー218、駆動アクチュエーター219(本発明の周波数変更手段)、及びTEクーラー(図示略)を備えている。
集光レンズ215は、励起光源210からの励起光をレーザー媒質216に集光させる。
レーザー媒質216は、励起光を受けて所定周波数のレーザー光を発振する。
エタロン217は、複数の縦モードで発振しているレーザー光のうち、所定の周波数の縦モードのレーザー光のみを透過させる。すなわち、マルチモードで発振されるレーザー光をシングルモードに変換する。
共振器ミラー218は、レーザー媒質216の端面に設けられた反射ミラー(図示略)との間で、レーザー光を共振させる。また、共振器ミラー218は、共振により強め合った所定周波数(レーザー周波数)のレーザー光の一部を透過させる。
【0020】
駆動アクチュエーター219は、本発明の周波数変更手段を構成する。この駆動アクチュエーター219は、例えばピエゾ素子等の圧電素子を備えて構成される圧電アクチュエーターである。そして、この駆動アクチュエーター219は、コントローラー部3の制御の下で駆動され、共振器ミラー218を共振器211の光軸に沿って移動させることで、共振器長を変化させる。この共振器長の変化に伴って、共振周波数が変化し、共振器211から出射されるレーザー光の周波数が変化する。
【0021】
TEクーラーは、コントローラー部3の制御の下、共振器211の温度を変化させる。本実施形態では、共振器ミラー218を共振器211の光軸に沿って移動させることで共振器長を変化させる。したがって、コントローラー部3は、共振器長が温度により変動しないように、TEクーラーを制御して共振器211の温度を一定値に維持する。
【0022】
[コントローラー部3の構成]
コントローラー部3は、本発明の制御手段を構成し、
図1に示すように、基準レーザー光源22を制御する基準レーザー制御手段31と、オフセットロックレーザー光源21を制御するオフセットレーザー制御手段32と、を備えている。また、図示は省略するが、コントローラー部3は、所定の周波数で高度に安定化された基準レーザー光を射出させるための、基準レーザー光源22の各種条件等を記憶する記憶手段を備えている。
基準レーザー制御手段31は、記憶手段に記憶された各種条件に基づいて、基準レーザー光源22から基準レーザー光を出射させる。
【0023】
[オフセットレーザー制御手段32の構成]
図3は、オフセットレーザー制御手段32のシステム構成を示す構成図である。
図3に示すように、オフセットレーザー制御手段32は、基準周波数源41と、第一分周器42と、フィードバック制御部43と、微動制御部44と、微動電圧制限部45と、粗動制御部46と、信号合成部47と、を備えている。
【0024】
基準周波数源41は、オフセットロックレーザー光源21から出力されるオフセットレーザー光の周波数目標値(基準レーザー光の光周波数とオフセットレーザー光の光周波数との差の目標値)である基準周波数f
rを出力する。
第一分周器42は、所定の分周数B(Bは整数)で、基準周波数源41から出力される基準周波数f
rを分周し、後述する微動制御部44の微動用周波数カウンター441、及び粗動制御部46の粗動用周波数カウンター460が動作可能な周波数帯域の信号に変換する。なお、第一分周器42から出力される信号波形は、矩形波状となっている。
【0025】
フィードバック制御部43は、第二分周器431、微動用ビート周波数カウンター432、及び粗動用ビート周波数カウンター433を備える。
第二分周器431は、ディテクター25から出力されるビート信号(ビート周波数f
B)を第一分周器42と同じ分周数Bで分周する。第二分周器431を通過した信号の信号波形は矩形波状となっており、各ビート周波数カウンター432,433でパルス数を計数することで周波数カウント値N
b,N
b2が得られる。
微動用ビート周波数カウンター432におけるカウント値N
bは、微動制御部44に出力され、粗動用ビート周波数カウンター433におけるカウント値N
b2は、粗動制御部46に出力される。
【0026】
微動制御部44は、
図3に示すように、微動用周波数カウンター441、微動用比較演算部442、微動用周波数変換部443、微動制御器444、微動用増幅器445、DAC(D/Aコンバーター)446、微動用LPF(ローパスフィルター)447、及び微動用減衰器448を備える。
微動用周波数カウンター441は、第一分周器42を通過した信号(矩形波状)のパルス数を計数し、カウント値N
rを出力する。
微動用比較演算部442は、微動用周波数カウンター441のカウント値N
rと、微動用ビート周波数カウンター432のカウント値N
bとの差(N
r−N
b)を算出する。
微動用周波数変換部443は、微動用比較演算部442より算出された周波数カウント値の差(N
r−N
b)に対して所定のゲインHをかけ合せ、周波数差(f
r−f
b)に変換する。なお、微動制御部44では、この周波数差(f
r−f
b)が、小さくなるように駆動アクチュエーター219を制御する。
【0027】
微動制御器444は、周波数差(f
r−f
b)に対して制御演算を実施し、電圧値(微動電圧信号V
f)を算出する。ここで、微動制御器444のパラメーターの設定により、駆動アクチュエーター219の応答性等を適宜設定することができる。
微動用増幅器445は、微動制御器444から入力される微動電圧信号V
f(微動信号)を所定の微動用ゲインG
fにより増幅する。
DAC446は、微動用増幅器445から入力される微動電圧信号V
f(デジタル)をアナログ信号に変換する。
微動用LPF447は、周波数帯域を所定帯域以下に制限することで、ノイズを低減する。なお、微動用LPF447の帯域設定により、駆動アクチュエーター219の応答性を適切な値に設定することができる。
微動用減衰器448は、微動用増幅器445により増幅された微動電圧信号V
fの電圧レベルを1/G
f倍し、小さくする。これにより、狭い電圧範囲(例えば1〜10V程度)の微動電圧信号V
fが出力されることになり、量子化誤差の影響を低減でき、高分解能での微動制御が実施可能となる。
【0028】
また、微動制御部44の微動制御器444と、微動用増幅器445との間には、微動電圧制限部45が接続されており、この微動電圧制限部45により微動制御部44及び粗動制御部46が接続されている。
具体的には、この微動電圧制限部45は、所定のゲインO(定数)を有するアンプであり、微動制御器444から出力された微動電圧信号V
fが、ゲインOとかけ合わされて粗動制御部46の粗動制御器464の前段に出力される。このゲインOとしては、例えば駆動アクチュエーター219に相当するゲインに設定されていることが好ましい。この場合、微動電圧制限部45を疑似的な駆動アクチュエーター219のモデルとして機能させることができ、微動電圧信号V
fを駆動アクチュエーター219に印加した際の周波数変化を示す周波数変動信号f
sが出力される。
【0029】
このような微動電圧制限部45が設けられることで、微動制御部44における出力電圧(微動電圧信号V
f)を小さく抑えることができる。
つまり、微動制御部44では、駆動アクチュエーター219を微動駆動させることで、高分解能でレーザー光の発振周波数を変化させる。したがって、微動制御部44において出力される微動電圧信号V
fは、粗動制御部46により出力される粗動電圧信号V
cに比べて小さい信号となり、許容される微動電圧信号V
fの電圧範囲も狭くなる。したがって、微動電圧信号V
fは、この電圧範囲内に抑える必要がある。
本実施形態では、微動電圧制限部45が設けられることで、微動制御器444から粗動制御部46に周波数変動信号f
sが入力され、粗動制御部46における出力が増加される。これにより、微動制御部44における微動電圧信号V
fが所定の電圧範囲内となるように制限することができる。
【0030】
粗動制御部46は、
図3に示すように、粗動用周波数カウンター460、粗動用比較演算部461、粗動用周波数変換部462、微動信号合成部463、粗動制御器464、オフセット信号出力部465、粗動用減衰器466、DAC467、粗動用LPF468、及び粗動用増幅器469を備える。
粗動用周波数カウンター460は、第一分周器42を通過した信号(矩形波状)のパルス数を計数し、カウント値N
r2を出力する。
粗動用比較演算部461は、粗動用周波数カウンター460のカウント値N
r2と、粗動用ビート周波数カウンター433のカウント値N
b2との差(N
r2−N
b2)を算出する。
粗動用周波数変換部462は、粗動用比較演算部461より算出された周波数カウント値の差(N
r2−N
b2)に対して所定のゲインH
2をかけ合せ、周波数差(f
r2−f
b2)に変換する。なお、粗動制御部46においても、この周波数差(f
r2−f
b2)が、小さくなるように駆動アクチュエーター219を制御する。
【0031】
微動信号合成部463は、粗動用周波数変換部462からの出力値(f
r2−f
b2)と、微動電圧制限部45から入力される周波数変動信号f
sとを加算した信号値を出力する。
粗動制御器464は、微動信号合成部463から出力される信号値に対して制御演算を実施し、電圧信号V
c1(粗動信号)を算出する。ここで、粗動制御器464のパラメーターの設定により、駆動アクチュエーター219の応答性等を適宜設定することができる。
【0032】
オフセット信号出力部465は、駆動アクチュエーター219を粗動駆動させて、レーザー周波数を目標値(基準周波数)近傍に近付ける際(周波数粗動走査時)に用いられ、オフセット信号V
offを出力する。
また、この周波数粗動走査において、オフセットレーザー光の周波数が基準周波数近傍の値になると、つまり、周波数差(f
r2−f
b2)が所定の閾値以下となると、オフセット信号をロックし、以降、ロックしたオフセット信号V
offを出力し続ける。これにより、粗動制御器464から出力される粗動信号V
c1と、オフセット信号V
offとが加算器465Aにより加算され、粗動電圧信号V
cとして粗動用減衰器466に出力される。
【0033】
粗動用減衰器466は、粗動用ゲインG
cを用いて、粗動電圧信号V
cの電圧レベルを1/G
c倍する。
DAC467は、粗動用減衰器466から入力される粗動電圧信号V
c(デジタル)をアナログ信号に変換する。
粗動用LPF468は、周波数帯域を所定帯域以下に制限することで、ノイズを低減する。なお、粗動用LPF468の帯域設定により、駆動アクチュエーター219の応答性を適切な値に設定することができる。
粗動用増幅器469は、粗動用減衰器466により減衰された粗動電圧信号V
cの電圧レベルをG
c倍する。これにより、広範囲の駆動電圧(例えば1V〜100V)の設定ができ、周波数粗動走査における駆動アクチュエーター219の駆動量を広げることができ、レーザー周波数を広い範囲で走査させることができる。また、微動制御においても、温度変化等による共振器長のドリフトに対応することができる。
【0034】
信号合成部47は、微動制御部44から出力される微動電圧信号V
fと、粗動制御部46から出力される粗動電圧信号V
cとを加算し、駆動アクチュエーター219に出力する。
【0035】
なお、上述したオフセットレーザー制御手段32において、各周波数カウンター432,433,441,460は、所定のゲート時間の間だけ、周波数カウントを実施し、周波数カウント終了後は、カウント値をリセットして再度カウントを開始する。これにより、各周波数カウンター432,433,441,460における周波数カウント値は、ゲート時間間隔で更新されることになり、各制御器444,464から出力される電圧信号V
f,V
c1もゲート時間間隔で更新されることになる。このため、ゲート時間を設定することで、制御速度を適切な値に設定することができる。また、例えば、粗動制御に用いるゲート時間(粗動用ビート周波数カウンター433及び粗動用周波数カウンター460のゲート時間)と、微動制御に用いるゲート時間(微動用ビート周波数カウンター432及び微動用周波数カウンター441のゲート時間)とをそれぞれ異なる値に設定することも可能であり、これにより、粗動駆動と微動駆動とにおいて異なる制御速度(応答速度)で駆動アクチュエーター219を駆動させることも可能となる。
【0036】
[レーザー光源装置1における周波数安定化処理]
次に、上述したレーザー光源装置1におけるオフセットレーザー光の周波数安定化処理について、図面に基づいて説明する。
図4は、レーザー光源装置1におけるオフセットレーザー光の周波数安定化処理を示すフローチャートである。
図5は、周波数粗動走査前におけるオフセットロックレーザー光源21から出射されるオフセットレーザー光と、基準レーザー光源22から出射される基準レーザー光の周波数を示す図である。
図6は、オフセットレーザー光の光周波数値が、基準レーザー光の光周波数値から基準周波数値だけ離れた周波数値付近にまで走査された状態を示す図である。
図7は、オフセットレーザー光が基準周波数に安定化された状態のオフセットレーザー光の周波数を示す図である。
本実施形態のレーザー光源装置1は、
図5に示すようなオフセットレーザー光の周波数を、目標である基準周波数f
rに設定して周波数ロックを行い、オフセットレーザー光の周波数安定化を行う。
【0037】
これには、まず、
図4に示すように、駆動アクチュエーター219の粗動駆動による探索・誘導ステップ(周波数粗動走査)を実施する(ステップS1)。
このステップS1では、基準レーザー制御手段31は、基準レーザー光源22を駆動させ、基準レーザー光源22から周波数f
Rの基準レーザー光を出射させる。
また、オフセットレーザー制御手段32は、基準周波数源41から基準周波数f
rを出力させるとともに、微動制御器444及び粗動制御器464からの出力信号(V
f,V
c1)を「0」に設定する。そして、オフセットレーザー制御手段32は、オフセット信号出力部465から出力されるオフセット信号により駆動アクチュエーター219を粗動駆動させる。つまり、レーザー周波数を広範囲に亘って粗動走査させる。
そして、オフセットレーザー制御手段32は、粗動用周波数変換部462により算出される周波数差(f
r2−f
b2)が第一閾値以下であるか否かを判定する(ステップS2)。
そして、ステップS2において、周波数差(f
r2−f
b2)が第一閾値より大きい場合、ステップS1に戻り、周波数粗動走査を継続させる。
一方、ステップS2において、周波数差(f
r2−f
b2)が第一閾値以下であると判定されると、オフセット信号出力部465は、オフセット信号V
offを一定値に保つ(ステップS3)。これにより、
図6に示すように、オフセットレーザー光の周波数が、目標値近傍のオフセット周波数f
off付近になる。
【0038】
この後、オフセットレーザー制御手段32は、駆動アクチュエーター219の微動駆動による周波数ロック処理を実施する。
これには、まず、オフセットレーザー制御手段32は、微動制御器444及び粗動制御器464の出力値(V
f,V
c1)を有効にする(ステップS4)。これにより、微動制御器444及び粗動制御器464は、フィードバック制御部43により検出されるビート周波数f
B、及び基準周波数f
rに基づいたフィードバック制御を行い、レーザー周波数を高分解能で微動走査させる(ステップS5)。
このステップS5では、オフセットレーザー制御手段32は、粗動用周波数変換部462により算出される周波数差(f
r2−f
b2)(または、微動用周波数変換部443により算出される周波数差(f
r−f
b))を監視し、この周波数差が「0」に近づくようにフィードバック制御を行う。
【0039】
[周波数微動走査で出力される電圧信号]
次に、上述したステップS5のレーザー周波数の微動走査において、オフセットレーザー制御手段32から出力される電圧信号について説明する。
上述したように、本実施形態のオフセットロックレーザー光源21は、微動制御部44から出力される微動電圧信号V
fと、粗動制御部46から出力される粗動電圧信号V
cとを加算した制御信号Vに基づいて、駆動アクチュエーター219が駆動され、これにより周波数が変化する。ここで、微動電圧制限部45により、微動制御部44及び粗動制御部46が接続されている。
このため、微動制御部44から出力される微動電圧信号(V
f)、及び粗動制御部46から出力される粗動電圧信号(V
c)は、それぞれ以下に示す式(1)及び式(2)の値となる。
【0042】
上記式(1)及び式(2)において、「C
f」は、微動制御器444において、周波数差(f
r−f
b)から出力電圧を演算するための制御関数、「H」は、微動用周波数変換部443におけるゲイン、「B」は、基準周波数源41及び第二分周器431における分周数、「C
r」は、微動用周波数カウンター441の関数、「C
b」は、微動用ビート周波数カウンター432の関数である。また、「C
c」は、粗動制御器464において、周波数差(f
r2−f
b2)から出力電圧を演算するための制御関数、「H
2」は、粗動用周波数変換部462におけるゲイン、「C
r2」は、粗動用周波数カウンター460の関数、「C
b2」は、粗動用ビート周波数カウンター433の関数であり、「O」は、微動電圧制限部45におけるゲインである。
式(2)に示すように、本実施形態では、微動電圧信号V
fが、粗動電圧信号V
cに影響を与えており、これにより、微動制御部44から出力される微動電圧信号の電圧値が小さくなるように機能している。このため、フィードバック制御中において、微動電圧信号が出力可能範囲を超えて、ロックが外れるという不都合が生じない。
また、オフセットレーザー光の出力周波数f
oは、基準レーザー光の周波数f
Rと、ビート周波数f
Bとを用いて以下の式(3)となる。式(1)〜(3)より式(4)が導かれる。なお、式(4)において、「K」は、駆動アクチュエーター219への電圧入力とビート周波数f
Bの変化とを関係づける伝達関数であり、「D」は、DAC446,467のゲイン、L
fは、微動用LPF447のゲイン、L
cは、粗動用LPF468のゲインである。
【0045】
次に、上記周波数微動走査における微動電圧信号及び粗動電圧信号の変化について説明する。
図8は、周波数微動走査でのビート周波数の変化を示す図である。
図9は、周波数微動走査での微動電圧信号V
fの変化を示す図である。
図10は、周波数微動走査での粗動制御器464から出力される粗動信号V
c1の変化を示す図である。これらの
図8から
図10は、時刻t=0に単位ステップ(f
r=1)の目標を与えた場合のビート周波数f
B、微動電圧信号V
f、粗動信号V
c1の変化を示している。
図8から
図10に示すように、検出されるビート周波数に対して、微動制御部44の微動制御器444は、粗動制御部46の粗動制御器464よりも速く応答し、十分な時間が経過すると微動制御器444からの微動電圧信号V
fが低下し、その分、粗動信号V
c1が大きくなる。そして、最終的に、ビート周波数f
Bが基準周波数f
rに一致するようになると、微動電圧信号V
fはほぼ0となり、粗動信号V
c1、及び粗動電圧信号V
c(=V
off+V
c1)は、略一定値に保たれる。
なお、実際には、フィードバック制御中において外乱が入るため、これを抑制するように、両電圧(微動電圧信号V
f及び粗動電圧信号V
c)は常に変動する。
【0046】
また、微動制御部44及び粗動制御部46の応答性は、上述したように、微動制御器444及び粗動制御器464における設定パラメーター、制御速度(微動用ビート周波数カウンター432、粗動用ビート周波数カウンター433、微動用周波数カウンター441、及び粗動用周波数カウンター460のゲート時間)、微動用LPF447及び粗動用LPF468の帯域設定等によって個別に調整することができる。
本実施形態では、微動制御部44の応答速度を高速(広帯域)にし、粗動制御部46の応答速度を低速(狭帯域)にすることが好ましい。
この場合、オフセットロックレーザー光源21の目標周波数(基準周波数f
r)へのロックや、高速な外乱への対応に対して、主に微動制御部44が応答し、高分解能で共振器長を制御することができる。一方、温度変化等による共振器長のドリフトなど、低速な外乱への対応に対して、主に粗動制御部46が応答し、微動制御部44の出力(微動電圧信号V
f)を0に近付けるように機能する。
また、粗動制御部46は、広い電圧出力範囲(例えば、1〜100V)で粗動電圧信号V
cを出力できるので、微動制御部44の微動電圧信号V
fの出力電圧範囲(例えば、1〜10V)が狭い場合でも飽和せず、安定した周波数ロックを維持することができる。さらに、微動制御部44は、微動電圧信号V
fの出力電圧範囲を狭くできるため、高分解能かつ高精度な微動駆動を実現できる。粗動制御部46は、粗い電圧出力であるが、微動制御部44がより高速で動作することで、粗動制御部46の誤差出力を微動制御部44により補正することができる。
【0047】
本実施形態では、周波数差(f
r−f
b)(またはf
r2−f
b2)から、レーザー周波数のロック状態を観測することができるが、さらに、微動制御器444と粗動制御器464との出力比較を実施する出力比較部を設ける構成としてもよい。例えば、微動制御器444から出力される微動電圧信号V
fが、粗動制御器464から出力される粗動信号V
c1よりも大きい場合、レーザー周波数(オフセットレーザー光の発振周波数)のドリフトが大きく発生していると判定することができ、この場合、ドリフト補正をより強める処理を行う。具体的には、微動制御部44及び粗動制御部46の各構成要素のパラメーターを調整することで、レーザー周波数のロック性能やドリフト補正性能を設定することができる。
【0048】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、1つの駆動アクチュエーター219に対して、微動制御部44による高分解能な駆動制御と、粗動制御部46による広範囲に亘る駆動制御との双方の制御を実施できる。
つまり、通常、共振器長を単一のアクチュエーターで制御する場合、広範囲に亘ってレーザー周波数を変化させるためには、アクチュエーターに入力する信号レベルを増幅する必要があり、信号のSN比や分解能の低下により、レーザー周波数を高精度に制御することが困難となる。これに対して、本実施形態では、上記のように、広い電圧出力範囲で粗動電圧信号V
cを出力する粗動制御部46と、狭範囲で高分解能な制御が可能な微動電圧信号V
fを出力する微動制御部44とにより、駆動アクチュエーター219の駆動が制御される。このため、駆動アクチュエーター219を、粗動駆動時において広範囲に亘って駆動させることができ、かつ、微動駆動時に高分解能な駆動制御を行うことができる。つまり、レーザー周波数を広範囲かつ高分解能で走査することができる。
また、広範囲な駆動制御を行うためのアクチュエーターと、高分解能な駆動制御を行うためのアクチュエーターとの双方を備える構成に比べ、単一の駆動アクチュエーター219を駆動させる構成となるため、共振器211の構成の簡略化、小型化を図ることができる。また、駆動アクチュエーター219を駆動させるためのドライバー等も1つでよく、レーザー光源装置1の構成の簡略化、低コスト化を実現できる。また、共振器211の構成を簡略化できるため、故障要因が減り、信頼性が高いレーザー光源装置1を実現できる。
【0049】
本実施形態では、微動制御部44の微動制御器444の後段と、粗動制御部46の粗動制御器464の前段とが、微動電圧制限部45により接続されている。そして、微動制御器444からの出力された微動電圧信号V
fが、微動電圧制限部45を介して周波数変動信号f
sとして微動信号合成部463に入力され、粗動用周波数変換部462から出力された周波数差(f
r2−f
b2)に基づく信号と加算されて粗動制御器464に入力される。
したがって、オフセットレーザー制御手段32では、微動制御部44からの微動電圧信号V
fを0に近づけるように機能し、微動電圧信号V
fの信号レベルを低減させることができる。このため、微動電圧信号V
fが設定された出力範囲外となる不都合を回避でき、これにより、微動制御部44による高分解能な駆動アクチュエーター219の駆動制御を適切に実現できる。
【0050】
この際、微動電圧制限部45は、駆動アクチュエーター219に相当するゲインOを有している。このため、微動電圧信号により駆動アクチュエーター219を駆動させたと仮定した場合の周波数変化を粗動制御器464に入力させることができ、より精度の高い駆動アクチュエーター219の駆動制御を実現できる。
【0051】
本実施形態では、フィードバック制御部43によりビート周波数を計数し、そのカウント値を微動制御部44及び粗動制御部46に出力する。そして、微動制御部44及び粗動制御部46は、基準周波数(目標値)とビート周波数との周波数差に基づいて微動電圧信号V
f及び粗動電圧信号V
cを出力する。このため、フィードバック制御により、高精度にレーザー周波数を目的となる基準周波数に合わせ込むことができる。
【0052】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上記実施形態では、レーザー光源装置1として、オフセットロックレーザー光源21から発振されるオフセットレーザー光を、基準レーザー光源22から発振される周波数f
Rの基準レーザー光と干渉させ、そのビート周波数f
bを基準周波数(目標値)f
rにロックすることで、オフセットレーザー光の周波数安定化を図ったが、本発明における周波数安定化方法としては、これに限定されない。
例えば、ヨウ素等の分子吸収線を利用し、分子吸収線に周波数を安定化させたり、光周波数コム装置から発振される光コムとの干渉光に基づいて周波数を安定化させたりしてもよい。いずれの場合においても、上述したようなステップS1の周波数粗動走査を実施した後、ステップS5の周波数微動走査を実施する。したがって、周波数粗動走査における駆動アクチュエーター219の粗動駆動、及び周波数微動走査における駆動アクチュエーター219の微動駆動、周波数ロック中における周波数ドリフトに対する制御を上記のようなオフセットレーザー制御手段32により制御することで、周波数を広範囲に亘って、かつ高分解能で走査することができる。
【0053】
上記実施形態では、周波数変更手段として、ピエゾ素子等により構成された圧電アクチュエーターを例示したが、これに限定されない。周波数変更手段としては、高い応答性で広範囲に亘る駆動制御が行えるアクチュエーターであれば、いかなる構成を用いてもよい。例えば、サーボモーター、ソレノイドアクチュエーター、リニアアクチュエーター等により共振器長を変化させる構成としてもよい。
この場合でも、これらのアクチュエーターを駆動させる制御手段として、オフセットレーザー制御手段32を用いることで、各アクチュエーターの駆動量を広範囲かつ高分解能で駆動制御することができる。
【0054】
上記実施形態において、微動電圧制限部45として、駆動アクチュエーター219と同等のゲインOが設定される例を示した。これに対して、微動電圧制限部45のゲインとして、他の一定値が設定されていてもよい。また、微動電圧制限部45を可変ゲインにより構成してもよい。
【0055】
微動電圧制限部45として、微動制御器444及び微動用増幅器445の間と、粗動用周波数変換部462及び粗動制御器464の間とを接続する例を示したが、これに限定されない、微動制御部44における微動制御器444の後段と、粗動制御部46における粗動制御器464の前段とを接続する構成であれば、いかなる位置に設けられていてもよい。例えば、微動用増幅器445の後と、粗動用周波数変換部462及び粗動制御器464の間とを接続する構成などとしてもよい。
【0056】
また、ビート周波数カウンターを粗動用及び微動用に分け、基本周波数を計数する周波数カウンターも同様に粗動用及び粗動用に分ける構成を例示したが、1つのビート周波数カウンター、及び1つの基準周波数カウンターにより構成されていてもよい。
【0057】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。