特許第6101567号(P6101567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6101567
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ワーク搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20170313BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20170313BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   H01L21/68 F
   H01L21/304 631
   H01L21/304 622L
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-111729(P2013-111729)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-232757(P2014-232757A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】福士 暢之
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210827(JP,A)
【文献】 特開2010−147134(JP,A)
【文献】 特開2011−040637(JP,A)
【文献】 特開2010−186863(JP,A)
【文献】 特開2012−121096(JP,A)
【文献】 特開2007−317982(JP,A)
【文献】 特開平10−175147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/304
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを水平方向に移動させる第1の移動機構と、板状ワークを該水平方向に交わる水平方向に移動させる第2の移動機構と、板状ワークを仮置きする仮置き手段と、板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを研削する研削手段と、から少なくとも構成される研削装置において、該第1の移動機構及び第2の移動機構を用いて該仮置きテーブルから該保持テーブルに板状ワークを搬送するワーク搬送方法であって、
該仮置き手段は、板状ワークを吸引保持して回転可能な仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに吸引保持される該板状ワークの外周の所定位置を測定するとともに該板状ワークの外周部に備えた結晶方位を示すマークを検出する測定部とを含んで構成され、
該研削手段を用いて該保持テーブルに保持される板状ワークの中央部分を研削して凹部を形成し、該凹部の周囲に凸部を形成する研削工程と、
該研削工程で研削された板状ワークを該仮置きテーブルが吸引保持し、該仮置きテーブルを回転させ該測定部によって検出されたマークの位置を測定開始位置とし、該仮置きテーブルを回転させ該測定部が該板状ワークの外周の3カ所の位置から該板状ワークの中心を算出する板状ワーク中心算出工程と、
該仮置きテーブルを回転させ該測定部によって検出されたマークの位置を測定開始位置とし、該仮置きテーブルを回転させ該測定部が該板状ワークの該凹部と該凸部との境界の3カ所の位置から該凹部の中心を算出する凹部中心算出工程と、
該板状ワーク中心算出工程で算出された板状ワークの中心と、該凹部中心算出工程で算出された板状ワークの凹部中心とから、搬送補正量と搬送補正方向とを算出し、該第1の移動機構の移動量についての第1の補正量と、該第2の移動機構の移動量についての第2の補正量とを算出する搬送補正量算出工程と、
該搬送補正量算出工程により算出された該第1の補正量と該第2の補正量とによって、該第1の移動機構及び第2の移動機構による該仮置きテーブルから該保持テーブルへの搬送量を補正し、該保持テーブルの中心と該板状ワークの中心とを一致させて該板状ワークを搬送する搬送工程と、
を備えるワーク搬送方法。
【請求項2】
前記第1の移動機構または第2の移動機構のいずれか一方を仮置き手段が備え、前記搬送工程では、該第1の移動機構及び該第2の移動機構によって板状ワークが搬送される
請求項1に記載のワーク搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークを研削して円形凹部を形成する研削装置において板状ワークを搬送するワーク搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面にデバイスが形成されたウェーハなど円板状の板状ワークの裏面を研削して薄化するに当たり、板状ワークの外周部分を残し、中央部分だけを薄化して円形凹部を形成することにより、板状ワークの強度を保つ技術がある。例えば、特許文献1には、板状ワークを保持テーブルで保持し、保持テーブルを回転させながら板状ワークを研削することにより、円形凹部を形成する技術が記載されている。
【0003】
このようにして形成された円形凹部の中心は、保持テーブルの回転軸上に位置する。したがって、板状ワークの中心と保持テーブルの回転軸とがずれた状態で保持テーブルが板状ワークを保持した場合、板状ワークの中心と円形凹部の中心とがずれるという問題がある。そこで、特許文献2には、板状ワークの中心と円形凹部の中心とがずれている場合でも正常に加工をするため、円形凹部を形成した後の工程において、円形凹部の中心位置を測定して位置合わせをすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−19461号公報
【特許文献2】特開2010−147134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された加工方法は、円形凹部が既に形成された板状ワークに対して加工をするものである。しかし、円形凹部を形成する際に、中心位置がずれないように形成すれば、以後の工程において、中心位置がずれている場合を考慮する必要がないので、処理を簡略化できるなど、コストを削減することができる。
【0006】
本発明は、板状ワークに円形凹部を形成する際に、板状ワークの中心が保持テーブルの回転軸に一致して保持されるよう板状ワークを搬送することにより、円形凹部の中心と板状ワークの中心とを一致させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワーク搬送方法は、板状ワークを水平方向に移動させる第1の移動機構と、板状ワークを該水平方向に交わる水平方向に移動させる第2の移動機構と、板状ワークを仮置きする仮置き手段と、板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを研削する研削手段と、から少なくとも構成される研削装置において、該第1の移動機構及び第2の移動機構を用いて該仮置きテーブルから該保持テーブルに板状ワークを搬送するワーク搬送方法であって、該仮置き手段は、板状ワークを吸引保持して回転可能な仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに吸引保持される該板状ワークの外周の所定位置を測定するとともに該板状ワークの外周部に備えた結晶方位を示すマークを検出する測定部とを含んで構成され、該研削手段を用いて該保持テーブルに保持される板状ワークの中央部分を研削して凹部を形成し、該凹部の周囲に凸部を形成する研削工程と、該研削工程で研削された板状ワークを該仮置きテーブルが吸引保持し、該仮置きテーブルを回転させ該測定部によって検出されたマークの位置を測定開始位置とし、該仮置きテーブルを回転させ該測定部が該板状ワークの外周の3カ所の位置から該板状ワークの中心を算出する板状ワーク中心算出工程と、該仮置きテーブルを回転させ該測定部によって検出されたマークの位置を測定開始位置とし、該仮置きテーブルを回転させ該測定部が該板状ワークの該凹部と該凸部との境界の3カ所の位置から該凹部の中心を算出する凹部中心算出工程と、該板状ワーク中心算出工程で算出された板状ワークの中心と、該凹部中心算出工程で算出された板状ワークの凹部中心とから、搬送補正量と搬送補正方向とを算出し、該第1の移動機構の移動量についての第1の補正量と、該第2の移動機構の移動量についての第2の補正量とを算出する搬送補正量算出工程と、該搬送補正量算出工程により算出された該第1の補正量と該第2の補正量とによって、該第1の移動機構及び第2の移動機構による該仮置きテーブルから該保持テーブルへの搬送量を補正し、該保持テーブルの中心と該板状ワークの中心とを一致させて該板状ワークを搬送する搬送工程とを備える。
【0008】
前記第1の移動機構または第2の移動機構のいずれか一方を仮置き手段が備えることもあり、その場合も、前記搬送工程では、該第1の移動機構及び該第2の移動機構によって板状ワークが搬送される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、円形凹部の中心位置と、板状ワークの中心位置とのずれを計測し、計測したずれに基づいて、板状ワークの搬送量を補正するので、板状ワークの中心位置を保持テーブルの回転軸に一致させることができる。これにより、板状ワークに形成される円形凹部の中心位置を、板状ワークの中心位置に一致させることができる。このため、以後の工程で、中心位置がずれている場合を考慮する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】研削装置を示す斜視図。
図2】搬送手段を示す平面図。
図3】円形凹部が形成された板状ワークを示す斜視図。
図4】中心位置の算出方式を示す平面図。
図5】中心位置の算出方式を示す平面図。
図6】板状ワークの中心と円形凹部の中心とのずれを示す平面図。
図7】別の搬送手段を示す平面図。
図8】更に別の搬送手段を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す研削装置10は、本体11と、本体11の前方に載置されたカセット30a,30bに対して板状ワークを搬出入する搬出入手段12と、搬出入手段12によってカセット30aから搬出された板状ワークを仮置きする仮置き手段13と、仮置き手段13から板状ワークを搬送する搬送手段14と、搬送手段14によって搬送された板状ワークを保持する保持手段15と、保持手段15によって保持された板状ワークを研削する2つの研削手段16a,16bと、板状ワークを洗浄する洗浄手段18と、研削後の板状ワークを保持手段15から洗浄手段18に搬送する搬送手段17と、研削装置10全体を制御する制御部19とを備えている。
【0012】
カセット30aには、加工前の板状ワークが収容される。一方、カセット30bには、加工及び洗浄が終了した板状ワークが収容される。
【0013】
搬出入手段12は、ロボットアームを備え、カセット30aに収容された板状ワークを保持し、その板状ワークを搬出して仮置き手段13に仮置きする。また、搬出入手段12は、洗浄が終わった板状ワークを洗浄手段18から搬送して、カセット30bに収容する。
【0014】
仮置き手段13は、載置された板状ワークを保持する仮置きテーブル131と、仮置きテーブル131に保持された板状ワークなどの外周位置を測定する測定部132と、測定部132を支持する測定支持部133とを有する。仮置きテーブル131は、例えば載置された板状ワークを吸引源(不図示)で吸引することにより、板状ワークを保持する。また、仮置きテーブル131は、±Z方向(鉛直方向)に平行な回転軸を中心として回転可能となっている。測定部132は、例えば撮像手段であり、仮置きテーブル131が保持した板状ワークの外周や板状ワークの外周部に備えた結晶方位を示すマークを検出し、その位置を測定する。測定支持部133は、±Y方向に移動可能となっており、測定支持部133の移動に伴って測定部132の測定範囲が変化するとともに、仮置きテーブル131の回転に伴って板状ワークの被測定範囲が変化する。これにより、測定部132は、板状ワーク上の任意の位置を測定することができる。
【0015】
保持手段15は、±Z方向と平行な回転軸を中心として回転するターンテーブル151と、ターンテーブル151上に配置された3つの保持テーブル152とを有する。保持テーブル152は、例えばチャックテーブルであり、載置された板状ワークを吸引源(不図示)で吸引することにより、板状ワークを保持する。また、保持テーブル152は、±Z方向(鉛直方向)に平行な回転軸を中心として回転可能となっている。3つの保持テーブル152は、ターンテーブル151の回転軸から等距離の位置に、正三角形状に配置されている。ターンテーブル151が120度ずつ回転することにより、保持テーブル152は、搬送手段14,17との間で板状ワークを受け渡しする受渡位置と、研削手段16aが板状ワークを研削する第一研削位置と、研削手段16bが板状ワークを研削する第二研削位置との間を移動する。
【0016】
図2に示すように、搬送手段14は、板状ワーク20を保持する搬送パッド141と、搬送パッド141を支持する回動アーム142と、回動アーム142を支持する基部143と、基部143を移動させる移動手段144とを有する。回動アーム142は、±Z方向に平行な回転軸149を中心として回動するとともに、±Z方向に昇降して、搬送パッド141を移動させる。基部143は、回動アーム142の回転軸149を支持する。移動手段144は、例えばボールねじ機構を有し、基部143を±X方向に移動させる。これにより、回動アーム142の回転軸149は、±X方向に平行な直線148上を移動する。回動アーム142は、搬送パッド141に保持された板状ワークを水平方向に回動させる第1の移動機構として機能し、移動手段144は、回動アーム142に対して水平方向に交わる直線方向(±X方向)に板状ワーク20を移動させる第2の移動機構として機能する。回動アーム141の回転軸149と仮置きテーブル131の回転軸139との±Y方向の距離は、Y1である。
【0017】
図1に示す研削手段16aは、回転可能な粗研削用の研削砥石160aを備えており、送り手段161によって駆動されて全体が±Z方向に移動可能であり、いずれかの保持テーブル152が保持した板状ワークに、研削砥石160aを回転させながら押し当てて粗研削を行う。一方、研削手段16bは、回転可能な仕上げ研削用の研削砥石160bを備えており、送り手段161によって駆動されて全体が±Z方向に移動可能であり、研削砥石160bを回転させながら、いずれかの保持テーブル152に保持され粗研削された板状ワークに押し当てて仕上げ研削を行う。研削砥石160a、160bの回転軌道の最外周の直径は、ともに板状ワークの半径より若干大きい程度であり、板状ワークの外周付近は研削せず、中央部分だけを研削することにより、図3に示すように、円板状の板状ワーク20に、保持テーブル152の回転軸を中心とする円形凹部22が形成される。板状ワーク20には、結晶方位を示すノッチからなるマーク21が形成されている。なお、マークとして、ノッチに代えてオリエンテーションフラットが形成されていることもある。
【0018】
搬送手段17は、仕上げ研削後の板状ワークを保持して旋回することにより、受渡位置にある保持テーブル152と、洗浄手段18との間で板状ワークを搬送する。
【0019】
洗浄手段18は、例えばスピンナ洗浄装置であり、研削が終わった板状ワークを回転させるとともに、回転する板状ワークに向けて洗浄液を噴出することにより、板状ワークを洗浄して研削屑等を除去する。
【0020】
制御部19は、例えばコンピュータであり、プログラムやデータを記憶し、プログラムを実行してデータを処理することにより、測定部132の測定結果などの情報を外部から入力したり、様々な演算をしたり、搬送手段14などを制御する制御信号を外部に出力したりして、研削装置10を制御する。制御部19は、本体11が内蔵する構成であってもよいし、本体11の外に配置し、本体11と接続する構成であってもよい。
【0021】
以下では、図1に示した研削装置10を用いて板状ワークを搬送する方法について説明する。
【0022】
(1)仮置き工程
仮置き工程においては、搬出入手段12が、カセット30aから板状ワーク20を搬出して仮置きテーブル131に載置(仮置き)する。仮置きテーブル131は、載置された板状ワーク20を保持する。
【0023】
(2)研削工程
次に、搬送手段14が仮置きテーブル131から受渡位置に位置するいずれかの保持テーブル152に板状ワーク20を搬送し、ターンテーブル151が回転して板状ワーク20が研削手段16aの下方に移動する。そして、研削手段16aが降下して回転する研削砥石160aが板状ワーク20の上面中央部分に接触して粗研削が行われ、図3に示したように、保持テーブル152の回転軸を中心とする円形凹部22が形成される。円形凹部22の周囲には凸部23が形成される。
【0024】
また、ターンテーブル151が回転して粗研削後の板状ワーク20が研削手段16bの下方に移動し、研削手段16bが降下して回転する研削砥石160bが板状ワーク20の上面に接触して仕上げ研削が行われ、円形凹部22が仕上げ研削される。
【0025】
仕上げ研削された板状ワーク20は、ターンテーブル151が回転することにより受渡位置に移動する。そして、搬送手段17によって板状ワーク20が洗浄手段18に搬送され洗浄された後、搬出入手段12によってカセット30aまたは30bに収容される。
【0026】
(3)板状ワーク中心算出工程
研削工程によって円形凹部22が形成された板状ワーク20は、搬出入手段12によってカセット30aまたは30bから搬出され、再び仮置き手段13に搬送され仮置きテーブル131に吸引保持される。そして、測定部132の測定範囲138に板状ワーク20の外周がおさまるように測定支持部133が測定部132を移動させるとともに、仮置きテーブル131を回転させ、板状ワーク20に形成されたマーク21を測定部132が検出する。マーク21は、仮置きテーブル131を回転させながら、測定部132から板状ワーク20の外周に向けて測定光を投光し、その反射光を受光することにより検出することができる。
【0027】
次に、マーク21を測定開始位置として仮置きテーブル131を回転させながら、板状ワーク20の外周の3箇所の位置を求め、その3箇所の位置情報から板状ワーク20の中心位置を算出する。具体的には、図4に示すように、板状ワーク20の外周上の3点d,e,fの位置を測定し、3点d,e,fを頂点とする三角形の外心を算出することにより、板状ワーク20の中心29の位置を算出する。この計算は、制御部19が行う。
【0028】
(4)凹部中心算出工程
同様に、図4に示すように、マーク21を測定開始位置として仮置きテーブル131を回転させながら、円形凹部22と凸部23との境界の3箇所の位置を求め、その3箇所の位置情報から板状ワーク20の中心位置を算出する。具体的には、円形凹部22と凸部23との境界の3点a,b,cの位置を測定し、3点a,b,cを頂点とする三角形の外心(3つの辺の垂直二等分線の交点)を算出する。三角形の外心は外接円の中心であるから、これにより、円形凹部22の中心28の位置を算出できる。この計算は、制御部19が行う。
【0029】
なお、板状ワーク中心算出工程及び凹部中心算出工程で測定する3点は、マーク21の位置以外であればよいが、図5に示すように、測定する3点が形成する三角形abc,defが鈍角三角形であると、各辺の垂直二等分線がなす角が小さくなり、測定誤差の影響が出やすくなる。このため、例えば仮置きテーブル131を120度回転させるごとに測定するなどして、3点がなるべく均等に散らばるようにしたほうがよい。
【0030】
(5)搬送補正量算出工程
次に、板状ワーク中心算出工程で算出された板状ワーク20の中心と、凹部中心算出工程で算出された板状ワーク20の凹部22の中心とから、板状ワークを仮置きテーブル131から保持テーブル152に搬送する際の搬送補正量を算出する。
【0031】
制御部19は、計測した中心位置に基づいて、板状ワーク20の中心位置と、円形凹部の中心位置との間のずれを算出する。図6に示すように、Δxは、所定の方向(例えば板状ワーク20の中心29に対して+Y方向)にマーク21を向けた状態における円形凹部の中心28と板状ワーク20の中心29との間の±X方向のずれ、Δyは、そのときの円形凹部の中心28と板状ワーク20の中心29との間の±Y方向のずれを表す。この誤差の分、板状ワーク20の搬送量を調整すれば、板状ワーク20の中心29を、保持テーブル152の回転軸159に合致させることができる。Δx及びΔyの値は、板状ワーク中心算出工程で求めた板状ワーク20の中心29のX座標及びY座標の値と、凹部中心算出工程で求めた円形凹部22の中心28のX座標及びY座標の値との差をとることによって求められる。
【0032】
Δx及びΔyのうち、一方の値は、仮置きテーブル131に保持された板状ワークWを搬送パッド141が保持する際に基部143を移動させる移動量(第2の移動機構の移動量)の補正量とする。この値として、制御部19はΔxを記憶する。他方の値は、搬送パッド141に保持された板状ワークWを保持テーブル152に載置して保持させる際に移動手段144が基部143を移動させる移動量(第1の移動機構の移動量)の補正量とする。この値として、制御部19はΔyを記憶する。
【0033】
(6)搬送工程
次に、搬送手段14が、板状ワーク20を、仮置きテーブル131から受渡位置で待機する保持テーブル152に搬送する。搬送工程は、図2に示した搬送パッド141が仮置きテーブル131から板状ワークを受け取る受取段階と、搬送パッド141が保持した板状ワークを保持テーブル152に引き渡す引渡段階とに分けられる。
【0034】
受取段階においては、図2に示した移動手段144が基部143を移動させ、回動アーム142の回転軸149を、板状ワーク20の中心29から図6に示したΔxだけずらした位置に移動させる。これにより、回転軸149のX座標と板状ワーク20の中心29のX座標とが等しくなる。
【0035】
そして、搬送手段14は、回動アーム142を回動させることにより回動アーム142の先端をY方向に向け、搬送パッド141を下降させて、板状ワーク20を保持する。
【0036】
次に、引渡段階においては、移動手段144が基部143を移動させ、回動アーム142を回動させて、その先端を+X方向へ向ける。そして、回動アーム142の回転軸149を、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159から図2に示したY1に図6に示したΔyを足した分だけ離れた位置に移動させる。そうすると、搬送パッド141が保持した板状ワーク20の中心29と保持テーブル152の回転軸159とが一致するため、その位置で、搬送パッド141を下降させて、板状ワーク20を保持テーブル152に引き渡す。保持テーブル152は、載置された板状ワーク20を保持する。
【0037】
その後、上記研削工程を行うと、保持テーブル152の回転軸159と板状ワーク20の中心29とが合致しているため、板状ワーク20の中心と、研削工程で形成される円形凹部22の中心28とが合致する。
【0038】
(7)洗浄工程
洗浄工程においては、搬送手段17が、受渡位置にある保持テーブル152に載置された板状ワーク20を保持して搬送し、洗浄手段18に載置する。洗浄手段18は、載置された板状ワーク20を保持して、板状ワーク20を回転させるとともに洗浄液を噴出して板状ワークを洗浄する。
【0039】
(8)収容工程
収容工程においては、搬出入手段12が、洗浄が終わった板状ワーク20を洗浄手段18から搬送して、カセット30bに収納する。
【0040】
このように、板状ワーク20を研削して円形凹部22を形成し、実際に形成された円形凹部22の中心28の位置と、板状ワーク20の中心29の位置との間のずれを計測し、計測したずれに基づいて算出した補正量に基づいて、搬送手段14の搬送量を補正することにより、板状ワーク20の中心29の位置が保持テーブル152の回転軸159に一致する。これにより、研削工程において形成される円形凹部22の中心28の位置を、板状ワーク20の中心29の位置と一致させることができる。
【0041】
なお、搬送手段は、図2に示した搬送手段14の構成に限らず、他の構成であってもよい。搬送補正量算出工程において求める搬送補正量は、搬送手段14の構成により異なるので、別の例をいくつか説明する。
【0042】
図7に示す搬送手段14Aは、図2に示した移動手段144に相当するものを有さず、基部143が、図1に示した本体11に固定されている。その代わりに、回動アーム142は、搬送パッド141と回転軸149との間の距離を所定の範囲内で変動させる伸縮手段145を有する。回動アーム142の回転軸149は、仮置きテーブル131の回転軸139から見て+Y方向に距離Rだけ離れて配置されるとともに、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159から見て−X方向に同じく距離Rだけ離れて配置されている。以下では、図6に示したように、板状ワーク20の中心29と円形凹部22の中心28とがΔx、Δyだけずれている場合について説明する。
【0043】
搬送工程の受取段階において、搬送手段14Aは、回動アーム142を回動させて、回動アーム142を−Y方向からtan−1(Δx/R)だけずらした方向に向ける。そして、伸縮手段145は、回動アーム142を伸縮させて、搬送パッド141の中心と回転軸149との間の距離をR+Δyにする。
【0044】
次に、引渡段階において、搬送手段14Aは、回動アーム142を回動させて+X方向に向け、伸縮手段145が回動アーム142を伸縮させて、搬送パッド141の中心と回転軸149との間の距離をRにする。これにより、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159に、搬送パッド141の中心が位置合わせされ、板状ワーク20の中心29が、保持テーブル152の回転軸159に一致する。
【0045】
図8に示す搬送手段14Bは、図2に示した移動手段144に相当するものを有さず、基部143が図1に示した本体11に固定されている。また、回動アーム142は、図7に示した伸縮手段145に相当するものを有さず、伸縮しない。その代わりに、仮置き手段13Bが、仮置きテーブル131を±Y方向に移動させる移動手段134を有する。すなわち、仮置き手段13Bが、第1の移動機構または第2の移動機構のいずれか一方を備えている。回動アーム142の回転軸149は、仮置きテーブル131の回転軸139から見て+Y方向に配置されるとともに、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159から見て−X方向に距離X2だけ離れて配置されている。
【0046】
搬送工程の受取段階において、移動手段134は、仮置きテーブル131を移動させて、仮置きテーブル131の回転軸139を、回動アーム142の回転軸149からX2−Δxだけ離れた位置に移動させる。搬送手段14Bは、回動アーム142を回動させて、回動アーム142を−Y方向からtan−1(Δx/X2)だけずらした方向に向け、搬送パッド141によって板状ワーク20を保持する。
【0047】
次に、引渡段階において、搬送手段14Bは、回動アーム142を回動させて+X方向に向ける。これにより、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159と板状ワーク20の中心29とが合致し、その状態で搬送パッド141を下降させて板状ワークWを保持テーブル152に保持させる。
【0048】
なお、上述した搬送手段の構成や、仮置き手段や受渡位置にある保持テーブル152との位置関係は、例示であり、これに限定されるものではない。例えば、仮置き手段13は、仮置きテーブル131を±Y方向に移動させる移動手段134のほかに、仮置きテーブル131を±X方向に移動させる移動手段を有し、仮置きテーブル131をXY平面内で自在に移動させる構成であってもよい。
【0049】
以上のように、円形凹部22の中心28の位置と、板状ワーク20の中心29の位置とのずれを計測し、計測したずれに基づいて、板状ワーク20の搬送量を補正するので、板状ワーク20の中心29の位置を、受渡位置にある保持テーブル152の回転軸159に一致させることができる。これにより、板状ワーク20に形成される円形凹部22の中心28の位置を、板状ワーク20の中心29の位置に一致させることができる。このため、以後の工程で、中心位置がずれている場合を考慮する必要がなくなる。
【0050】
以上説明した実施形態は、一例であり、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、板状ワーク中心算出工程及び凹部中心算出工程は、仮置き手段13で実行する必要はなく、別の位置で実行してもよい。そうすれば、研削工程で円形凹部22が形成された板状ワーク20を仮置き手段13に戻す必要がなく、次の板状ワーク20を仮置き手段13上で待機させておくことができるので、流れがスムーズになり、生産性を高めることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 研削装置、11 本体、12 搬出入手段、
13 仮置き手段、131 仮置きテーブル、132 測定部、133 測定支持部、
134 移動手段、139,149,159 回転軸、
14,17 搬送手段、141 搬送パッド、
142 回動アーム(第1の移動機構)、143 基部、
144 移動手段(第2の移動機構)、145 伸縮手段、148 直線、
15 保持手段、151 ターンテーブル、152 保持テーブル、
16 研削手段、18 洗浄手段、19 制御部、
20 板状ワーク、21 マーク、22 円形凹部、28,29 中心、
30 カセット、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8