特許第6102082号(P6102082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

特許6102082エポキシ樹脂組成物、半硬化エポキシ樹脂組成物、硬化エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、積層板、金属基板、及びプリント配線板
<>
  • 特許6102082-エポキシ樹脂組成物、半硬化エポキシ樹脂組成物、硬化エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、積層板、金属基板、及びプリント配線板 図000034
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6102082
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、半硬化エポキシ樹脂組成物、硬化エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、積層板、金属基板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20170316BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170316BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20170316BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170316BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20170316BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20170316BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C08G59/20
   C08G59/62
   C08K3/38
   C08K3/28
   C08K3/22
   C08K3/36
   C08L63/00 C
   C08J5/24CFC
   B32B15/08 J
   B32B15/08 U
   B32B5/28 Z
   H05K1/03 610L
【請求項の数】12
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2012-101344(P2012-101344)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-227451(P2013-227451A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年3月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優香
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 由高
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕之
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−285671(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/123237(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/144955(WO,A1)
【文献】 特開2012−149191(JP,A)
【文献】 特開昭58−206579(JP,A)
【文献】 特開2011−144159(JP,A)
【文献】 特開2008−266594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00
C07D 301/00−305/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相から液晶相に転移する温度と、液晶相から等方相に転移する温度との差の絶対値が25℃以上であるエポキシ樹脂モノマーを2種類以上と、硬化剤と、無機充填材と、を含み、前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂であり、前記フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表わされる構造単位を有する化合物を含む、エポキシ樹脂組成物(ただし、前記エポキシ樹脂モノマーとして下記構造で表される樹脂Aと、下記構造で表される樹脂Bとを含むものを除く)
【化1】



〔一般式(I−1)及び(I−2)中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表わす。mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。nはそれぞれ独立に、1〜7の整数を表わす。〕
【化2】

【化3】
【請求項2】
前記2種類以上のエポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、その分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーである請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記2種類以上のエポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、3個以上の環状化合物由来の基が単結合又は2価の連結基で直鎖状に連結した構造を有するメソゲン基を含む請求項1又は請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材の少なくとも1つは、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ及び窒化アルミニウムからなる群より選択される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材の含有率が、前記エポキシ樹脂組成物の全体積中の60体積%〜90体積%である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化体である半硬化エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化体である硬化エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体である樹脂シート。
【請求項9】
繊維基材と、前記繊維基材に含浸された請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と、を有するプリプレグ。
【請求項10】
被着材と、
前記被着材上に配置され、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、請求項8に記載の樹脂シート、及び請求項9に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの半硬化物である半硬化エポキシ樹脂組成物層、又は硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、を有する積層板。
【請求項11】
金属箔と、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、請求項8に記載の樹脂シート、及び請求項9に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、
金属板と、をこの順に有する金属基板。
【請求項12】
金属板と、
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、請求項8に記載の樹脂シート、及び請求項9に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、
配線層と、をこの順に有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、半硬化エポキシ樹脂組成物、硬化エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、積層板、金属基板、及びプリント配線板に関する。
【0002】
近年、電子・電気機器の小型化に伴って発熱量が増大したため、その熱をいかに放散させるかが重要な課題となっている。これらの機器に用いられている絶縁材料としては、電気絶縁性、耐熱性等の観点から、熱硬化性樹脂硬化物が広く使われている。しかし、一般に熱硬化性樹脂硬化物の熱伝導性は低く、熱放散を妨げている大きな要因となっているため、高熱伝導性を有する熱硬化性樹脂硬化物の開発が望まれている。
【0003】
高熱伝導性を有する熱硬化性樹脂硬化物として、分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂組成物の硬化物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、例えば、特許文献2〜4に示されている。また、高熱伝導性を有し、且つ軟化点(融点)の低い熱硬化性樹脂として、特定の構造を有するエポキシ樹脂が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
複数の樹脂からなる樹脂混合物としては、液晶エポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂の混合物が挙げられ、分散性、取り扱い性のよいエポキシ樹脂ワニスが製造できると報告されている(例えば、特許文献6参照)。また、液晶性ポリマーと熱硬化性樹脂とが相分離した状態で存在している絶縁組成物が提案されており、液晶性ポリマーが高熱伝導性、熱硬化性樹脂が金属との密着性に関与しているとされている(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂からなる樹脂混合物としては、特定の構造を有するエポキシ化合物の混合物について提案されており(例えば、特許文献8及び9参照)、これによって樹脂硬化物を製造する際の硬化温度範囲が単体の化合物の場合よりも広くなり、高熱伝導性を有する樹脂硬化物の製造が容易となることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4118691号公報
【特許文献2】特許4619770号公報
【特許文献3】特開2010−241797号公報
【特許文献4】特開2011−74366号公報
【特許文献5】特開2007−332196号公報
【特許文献6】特開2008−195835号公報
【特許文献7】特開2010−18679号公報
【特許文献8】特開2008−239679号公報
【特許文献9】特開2008−266594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂は、一般的に常温では固体であり、高熱伝導性であればあるほど融点も高くなるために成形等の作業性が厳しい場合が多い。特にエポキシ樹脂が高融点であると、エポキシ樹脂の溶融に高温を要するために熱硬化温度が高くなり、その分、エポキシ樹脂と硬化剤との反応速度も速くなる。エポキシ樹脂が十分に溶融する前に硬化剤との反応が開始されてしまうと、メソゲン骨格の配向が揃う前に硬化してしまい、分子構造中にメソゲン骨格を有するエポキシ樹脂が本来有する高熱伝導性を十分に発揮できない場合もある。また、特許文献5のように、高熱伝導性と低融点化を両立させた新規熱硬化性樹脂も存在するが、このような新規エポキシ樹脂の設計及び合成は決して容易ではない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、高熱伝導性と低融点化が両立可能なエポキシ樹脂組成物、その半硬化エポキシ樹脂組成物及び硬化エポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。また、該エポキシ樹脂組成物を用いて構成される樹脂シート、プリプレグ、積層板、及びプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1>結晶相から液晶相に転移する温度と、液晶相から等方相に転移する温度との差の絶対値が25℃以上であるエポキシ樹脂モノマーを2種類以上と、硬化剤と、無機充填材と、を含むエポキシ樹脂組成物。
【0010】
<2>前記2種類以上のエポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、その分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーである<1>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0011】
<3>前記2種類以上のエポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、3個以上の環状化合物由来の基が単結合又は2価の連結基で直鎖状に連結した構造を有するメソゲン基を含む<1>又は<2>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0012】
<4>前記硬化剤はフェノールノボラック樹脂である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
<5>前記フェノールノボラック樹脂は、下記一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表わされる構造単位を有する化合物を含む<4>に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

〔一般式(I−1)及び(I−2)中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を表わす。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表わす。mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。nはそれぞれ独立に、1〜7の整数を表わす。〕
【0014】
<6>前記無機充填材の少なくとも1つは、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ及び窒化アルミニウムからなる群より選択される<1>〜<5>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0015】
<7>前記無機充填材の含有率が、前記エポキシ樹脂組成物の全体積中の60体積%〜90体積%である<1>〜<6>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0016】
<8><1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の半硬化体である半硬化エポキシ樹脂組成物。
【0017】
<9><1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化体である硬化エポキシ樹脂組成物。
【0018】
<10><1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物のシート状成形体である樹脂シート。
【0019】
<11>繊維基材と、前記繊維基材に含浸された<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と、を有するプリプレグ。
【0020】
<12>被着材と、
前記被着材上に配置され、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、<10>に記載の樹脂シート、及び<11>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの半硬化物である半硬化エポキシ樹脂組成物層、又は硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、を有する積層板。
【0021】
<13>金属箔と、
<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、<10>に記載の樹脂シート、及び<11>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、
金属板と、をこの順に有する金属基板。
【0022】
<14>金属板と、
<1>〜<7>のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物、<10>に記載の樹脂シート、及び<11>に記載のプリプレグからなる群より選択される少なくとも1つの硬化物である硬化エポキシ樹脂組成物層と、
配線層と、をこの順に有するプリント配線板。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高熱伝導性と低融点化とが両立可能なエポキシ樹脂組成物、半硬化エポキシ樹脂組成物、硬化エポキシ樹脂組成物、樹脂シート、プリプレグ、積層板、及びプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例で使用したエポキシ樹脂モノマー樹脂DのDSC測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の作用が達成されれば本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0026】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、結晶相から液晶相に転移する温度と、液晶相から等方相に転移する温度との差の絶対値が25℃以上である2種類以上のエポキシ樹脂モノマーと、硬化剤と、無機充填材と、を含む。エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0027】
以下、エポキシ樹脂モノマーが結晶相から液晶相に転移する温度と、液晶相から等方相に転移する温度との差の絶対値を、液晶相を発現する温度範囲(℃)と称する場合がある。また、液晶相を発現する温度範囲が25℃以上であるエポキシ樹脂モノマーを「特定エポキシ樹脂モノマー」と称する場合がある。
【0028】
2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを使用することで、硬化前のエポキシ樹脂組成物としての融点を低下させることができる。また、エポキシ樹脂組成物の硬化後には高い熱伝導性を達成することができる。
【0029】
2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを使用しない場合、エポキシ樹脂組成物の熱伝導率は、通常、該樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマー単体のみを使用した場合のいずれのエポキシ樹脂組成物の熱伝導率よりも低くなる。
【0030】
本発明において「融点」とは、物質の相形態が変化する温度のことを指す。例えば、液晶相を発現するエポキシ樹脂モノマーでは、結晶相から液晶相に転移する温度及び液晶相から等方相に転移する温度のいずれか一方又は両方を指す。特に断らない限り、結晶相から液晶相に転移する温度及び液晶相から等方相に転移する温度の両方を指すこととする。また、液晶相を発現しないエポキシ樹脂モノマーでは、結晶相(固体)から直接等方相(液体)に転移する温度を指す。
【0031】
本発明において「液晶相」とは、結晶状態(結晶相)と液体状態(等方相)の中間に位置する相のひとつであり、分子の配向方向は何らかの秩序は保っているものの、3次元的な位置の秩序を失った状態を指す。
【0032】
[樹脂モノマー混合物]
前記エポキシ樹脂組成物は、2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを含む。2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを含む混合物(以下、樹脂モノマー混合物という)の融点は、前記樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマーのうち最も融点が高いエポキシ樹脂モノマーの融点よりも低くなる現象が見られる。従って、上記樹脂モノマー混合物を含むエポキシ樹脂組成物の低融点化を実現することができる。
【0033】
高熱伝導性を発現可能なエポキシ樹脂モノマーは一般に融点が高く、成形等の温度条件によってはエポキシ樹脂モノマーが本来発現可能な高熱伝導性を十分に発揮できない場合がある。しかし、2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを含む樹脂モノマー混合物とすることで融点が低くなるために成形等の温度条件の自由度が高くなり、作業性が向上する。結果として、樹脂モノマー混合物の硬化物が高熱伝導性を示すと考えられる。
【0034】
液晶相を発現する温度範囲が25℃未満のエポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物を含むエポキシ樹脂組成物の熱伝導率は、樹脂モノマー混合物中で最も高融点のエポキシ樹脂モノマー単体を含むエポキシ樹脂組成物の熱伝導率より低くなる場合がある。しかし、2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物を含むエポキシ樹脂組成物の熱伝導率は、該樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマー単体を含むいずれのエポキシ樹脂組成物の熱伝導率よりも低下することはない。
また、この場合も樹脂モノマー混合物の融点が低くなるため、作業性は向上する。
【0035】
樹脂モノマー混合物に含まれる2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーが液晶相を発現する温度範囲がそれぞれ25℃以上であることにより、高熱伝導性と低融点化が両立可能なエポキシ樹脂組成物を得ることができる。前記温度範囲は30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。特定エポキシ樹脂モノマーが液晶相を発現する温度範囲は広いほどよいが、液晶相を発現する温度範囲が広いということは等方相に転移する温度が高いということになるため、作業性の観点からは200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0036】
特定エポキシ樹脂モノマーが結晶相から液晶相に転移する温度は特に制限されないが、樹脂モノマー混合物に含まれる特定エポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、作業性の観点からは75℃〜250℃の範囲内であることが好ましく、75℃〜200℃の範囲内であることがより好ましく、75℃〜150℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0037】
特定エポキシ樹脂モノマーが液晶相から等方相に転移する温度は特に制限されないが、樹脂モノマー混合物に含まれる特定エポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、作業性の観点からは100℃〜350℃の範囲内であることが好ましく、100℃〜300℃の範囲内であることがより好ましく、100℃〜275℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0038】
さらに、樹脂モノマー混合物に含まれる特定エポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、液晶相を発現する温度範囲が30℃以上であり、結晶相から液晶相に転移する温度が75℃〜200℃の範囲内であり、液晶相から等方相に転移する温度が100℃〜300℃の範囲内である特定エポキシ樹脂モノマーが好ましい。また、樹脂モノマー混合物に含まれる特定エポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、液晶相を発現する温度範囲が40℃以上であり、結晶相から液晶相に転移する温度が75℃〜150℃の範囲内であり、液晶相から等方相に転移する温度が100℃〜275℃の範囲内である特定エポキシ樹脂モノマーがより好ましい。
【0039】
特定エポキシ樹脂モノマーを2種類以上含む樹脂モノマー混合物は液晶相を発現し、その温度範囲は20℃以上であることが好ましい。樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲は25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。
【0040】
樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲は広いほどよいが、作業性の観点からは150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂モノマーが液晶相を発現するか否かは、室温からの昇温過程での物質の状態変化を偏光顕微鏡を用いて観察することで判別できる。クロスニコル状態での観察において、結晶相及び液晶相は偏光解消による干渉模様が見られ、等方相は暗視野に見える。また、結晶相から液晶相への転移は流動性の有無により確認できる。すなわち、観察される干渉模様像が固定されている状態であれば結晶相であり、干渉される干渉模様像が流動的であれば液晶相ということができる。なお、物質自体の状態も、結晶相の場合は粉末または固体であり、液晶相の場合は液状(粘り気の多い液体であることが多い)である。つまり、液晶相を発現するということは、流動性を有し、且つ偏光解消による干渉模様が観察される温度範囲を有しているということである。
【0042】
エポキシ樹脂モノマーが流動性を有するか否かは、具体的には顕微鏡観察によって判断することができる。なお、偏光顕微鏡を用いて判断することが好ましい。エポキシ樹脂モノマーが液晶相を発現するか否かは、具体的にはエポキシ樹脂モノマーを加熱しながら状態変化を偏光顕微鏡(例えば、オリンパス社製BS51)にて(倍率:100倍)、クロスニコル状態で観察することで判断することができる。前記エポキシ樹脂モノマーが流動性を有し、且つ偏光解消による干渉模様が観察される温度範囲を有していることが確認されれば、液晶相を発現するエポキシ樹脂モノマーであると判断する。
【0043】
また、エポキシ樹脂モノマーが結晶相から液晶相に転移する温度、及びエポキシ樹脂モノマーが液晶相から等方相に転移する温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定することができる。具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度範囲25℃〜350℃、流量20±5ml/minの窒素雰囲気下の条件で、アルミパンに密閉した3mg〜5mgの試料の示差走査熱量測定を行い、相転移に伴うエネルギー変化(吸熱反応)が起こる温度として測定される。この測定で得られるグラフの一例を図1に示す。
【0044】
さらに、DSC測定で得られた吸熱反応ピークの温度付近にエポキシ樹脂モノマーを加熱し、偏光顕微鏡で観察すると、その温度付近で前記エポキシ樹脂モノマーがどのような相変化を起こすのかが分かる。以下、DSC測定にて150℃と200℃で吸熱反応ピークが得られるエポキシ樹脂モノマーを例に説明する。
【0045】
150℃に加熱した上記エポキシ樹脂モノマーを偏光顕微鏡で観察すると、150℃よりも低い温度で観察されていた偏光解消による干渉模様が少なくとも一部に観察されるが、150℃よりも低い温度ではみられなかった流動性を150℃より高くなるにつれて示し始める。このことより、前記エポキシ樹脂モノマーは150℃で結晶相から液晶相へと転移したと判断できる。なお、偏光解消による干渉模様がごく一部しか観察されず、それ以外は暗視野である場合もあるが、一部でも干渉模様が残っているならば、上記エポキシ樹脂モノマーは液晶相の状態であると判断する。
【0046】
200℃に加熱した上記エポキシ樹脂モノマーを偏光顕微鏡で観察すると、200℃よりも低い温度では少なくとも一部に観察された干渉模様が一切観察されなくなり、200℃よりも高い温度では完全に暗視野となる。このことより、前記エポキシ樹脂モノマーは200℃で液晶相から等方相へと転移したと判断できる。なお、液晶相から等方相へと転移する際、観察像が瞬間的に明るく輝き、その後、完全に暗視野となる現象が起こる。よって、液晶相の状態でほぼ暗視野であり、観察像だけでは液晶相か等方相かを判断しにくい場合があるが、この場合であっても、液晶相から等方相への転移は上記現象を以て判断することができる。
液晶相を有するエポキシ樹脂モノマーは、通常、加熱していくとまず結晶相から液晶相へと相転移し、その後、液晶相から等方相へと相転移する。
【0047】
エポキシ樹脂モノマーが結晶相から液晶相に転移する温度、及びエポキシ樹脂モノマーが液晶相から等方相に転移する温度の確認は、DSC測定と偏光顕微鏡観察の両方で行うことが好ましい。これは、相転移に伴うエネルギー変化が非常に小さい場合、DSC測定では吸熱反応ピークが確認できない場合もあるからである。結晶相から液晶相へと転移する際のエネルギー変化は比較的大きく、DSC測定で確認できない場合は滅多にないが、液晶相から等方相へと転移する際のエネルギー変化は小さいことが多い。しかし、DSC測定で吸熱反応ピークを確認できなくても、偏光顕微鏡では結晶相から液晶相、及び液晶相から等方相への転移を明確に確認することができる。特に、液晶相から等方相への転移は、上記のように観察像が瞬間的に輝く現象が見られるため、確実に確認できる。偏光顕微鏡での観察は、エポキシ樹脂モノマーを室温から加熱する際、10℃ずつ昇温を行い、約30秒止めて温度を安定させ、その都度観察を行うと相転移を見逃すことはないため好都合である。
【0048】
液晶相を発現する温度範囲が25℃以上であるエポキシ樹脂モノマーは、例えば、後述する分子構造中にメソゲン基を有しているエポキシ樹脂モノマーの中から適宜選択して使用することができる。
【0049】
2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを含む樹脂モノマー混合物は、相溶することが好ましい。樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマーが相溶していると、樹脂モノマー混合物の熱伝導率は、樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマー単体の熱伝導率よりも高くなる傾向にある。
【0050】
なお、相溶せず相分離するエポキシ樹脂モノマーの組み合わせであると、たとえ高熱伝導性を有するエポキシ樹脂モノマーの組み合わせであっても、樹脂モノマー混合物の熱伝導率は、樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマー単体のいずれの熱伝導率よりも低下する場合がある。
【0051】
また、樹脂モノマー混合物が3種類以上のエポキシ樹脂モノマーを含む場合、樹脂モノマー混合物を構成する全てのエポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物の全体として相溶可能であればよく、3種類以上のエポキシ樹脂モノマーから選択される任意の2種類のエポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物が相溶可能である必要はない。
【0052】
ここでいう「相溶」とは、2種類以上のエポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物を溶融させ、自然冷却した後に、後述するエポキシ樹脂組成物の硬化温度において、それぞれのエポキシ樹脂モノマーに由来する相分離状態が観察されないことを意味する。すなわち、溶融及び自然冷却前の樹脂モノマー混合物において各エポキシ樹脂モノマーが相分離していても、溶融及び自然冷却後にエポキシ樹脂組成物の硬化温度において相分離していなければ、その樹脂モノマー混合物は相溶すると判断する。
【0053】
ここでいう「硬化温度」とは、樹脂モノマー混合物を含むエポキシ樹脂組成物を半硬化体又は硬化体にする温度をいう。例えば、エポキシ樹脂組成物を140℃で半硬化体又は硬化体にする場合は、硬化温度は140℃である。
【0054】
樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマーが互いに相溶しているか否かは、樹脂モノマー混合物を溶融させ、自然冷却した後の硬化温度における相分離状態の有無で判断できる。例えば、光学顕微鏡を用いて上記硬化温度における樹脂モノマー混合物を観察することで判断できる。
【0055】
樹脂モノマー混合物を構成する各エポキシ樹脂モノマーが相溶しているか否かは、具体的に以下のようにして判断できる。
樹脂モノマー混合物を、樹脂モノマー混合物が等方相に転移する温度以上に熱して溶融させ、次いで、溶融させた樹脂モノマー混合物を自然冷却させる。この過程において、硬化温度における樹脂モノマー混合物の光学顕微鏡像(倍率:100倍)を観察し、樹脂モノマー混合物を構成する各エポキシ樹脂モノマーが相分離しているか否かを観察することで判断する。
【0056】
さらに具体的には、エポキシ樹脂組成物を硬化温度140℃で半硬化物又は硬化物にする場合、エポキシ樹脂組成物に含まれる樹脂モノマー混合物のみを、樹脂モノマー混合物が等方相に転移する温度以上に熱して溶融させ、これを自然冷却させる。この過程で、140℃のときの樹脂モノマー混合物の光学顕微鏡像(倍率:100倍)を観察して相分離が確認されなければ、樹脂モノマー混合物として相溶状態にあると判断する。
【0057】
樹脂モノマー混合物に含まれる各エポキシ樹脂モノマーが、溶融及び自然冷却後にエポキシ樹脂組成物の硬化温度において相分離していなければ、樹脂モノマー混合物中で各エポキシ樹脂モノマーが互いに相分離していることはないと考えられる。
【0058】
なお、前記硬化温度は、エポキシ樹脂組成物の種類に応じて適宜選択されるが、100℃以上であることが好ましく、100℃〜200℃であることがより好ましく、100℃〜180℃であることがさらに好ましい。
【0059】
樹脂モノマー混合物を構成する各エポキシ樹脂モノマーが相溶しているか否かは、溶融及び自然冷却後の樹脂モノマー混合物を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することによっても調べることができる。具体的には、樹脂モノマー混合物の断面を、例えば、ダイヤモンドカッターで切り出した後、研磨紙及びスラリーを用いて研磨し、その断面の状態をSEMを用いて、例えば2000倍で観察する。相分離する組み合わせのエポキシ樹脂モノマーからなる樹脂モノマー混合物であるならば、相分離している様子が明確に観察できる。
【0060】
樹脂モノマー混合物が相溶している、つまり、樹脂モノマー混合物においてエポキシ樹脂モノマー同士が相分離していない状態であると、樹脂モノマー混合物に硬化剤、無機充填材等を加えてエポキシ樹脂組成物を構成した場合でも、エポキシ樹脂組成物の半硬化体又は硬化体においてエポキシ樹脂モノマー同士が相分離していない状態となる。
【0061】
樹脂モノマー混合物を構成する特定エポキシ樹脂モノマーは、25℃以上の温度範囲において液晶相を発現する限り特に制限はなく、通常用いられるエポキシ樹脂モノマーから適宜選択することができる。
なお、特定エポキシ樹脂モノマーは、その分子構造中にメソゲン基を有していることが好ましい。分子構造中にメソゲン基を有しているエポキシ樹脂モノマーは高次構造を形成し易く、エポキシ樹脂組成物を作製した場合により高い熱伝導率を達成できる傾向にある。
【0062】
ここで、メソゲン基とは、分子間相互作用の働きにより結晶性や液晶性を発現し易くするような官能基のことを指す。具体的には、ビフェニル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基、スチルベン基、それらの誘導体等が挙げられる。
【0063】
ここで、高次構造とは、その構成要素がミクロな配列をしている状態のことであり、例えば、結晶相や液晶相が相当する。このような高次構造が存在しているか否かは、偏光顕微鏡での観察によって容易に判断することが可能である。すなわち、クロスニコル状態での観察において、偏光解消による干渉模様が見られる場合は高次構造が存在していると判断できる。
高次構造は、通常は樹脂中に島状に存在しており、ドメイン構造を形成している。そして、ドメイン構造を形成している島のそれぞれを高次構造体という。一般に、高次構造体を構成する構造単位同士は一般的には共有結合を有している。
【0064】
分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーの具体的内容は、例えば、特許4118691号明細書に記載されている。以下に、分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0065】
分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーとしては、例えば、下記一般式(II)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(特許4118691号公報に記載)、下記一般式(III)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(特許第4619770号公報、特開2008−13759号公報に記載)、下記一般式(IV)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(特開2011−74366号公報に記載)、下記一般式(V)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(特開2010−241797号公報に記載)、下記化学式(VI)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(特開2011−98952号公報に記載)、下記化学式(VII)で表わされるエポキシ樹脂モノマー(公知物質)等が挙げられる。
【0066】
【化2】
【0067】
一般式(II)中、nは4、6、又は8である。
【0068】
【化3】
【0069】
一般式(III)中、Ar、Ar、及びArはそれぞれ同一又は相異なってよく、下記一般式のいずれかで示される2価基を表わす。R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ同一又は相異なってよく、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表わす。Q及びQはそれぞれ同一又は相異なってよく、炭素数1〜9の2価の基を表す。炭素数1〜9の2価の基は直鎖状アルキレン基であってよく、該直鎖状アルキレン基を構成する各メチレン基は、炭素数1〜18のアルキレン基で置換されていてもよい。また、炭素数1〜9の2価の基は、直鎖状アルキレン基を構成するメチレン基とメチレン基との間に−N(R)−又は−O−が挿入された構造であってもよい。ここで、Rは、水素原子もしくは炭素数1〜18のアルキル基を表わす。
【0070】
【化4】
【0071】
Ar、Ar、及びArを表す2価基において、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表わし、aは1〜8の整数を、b、e、及びgはそれぞれ独立に1〜6の整数を、cは1〜7の整数を、d及びhはそれぞれ独立に1〜4の整数を、fは1〜5の整数をそれぞれ表わす。また、上記2価基において、Rが複数のとき、全てのRが同一の基を表わしてもよいし、異なる基を表わしてもよい。
【0072】
【化5】
【0073】
一般式(IV)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表わす。
【0074】
【化6】
【0075】
一般式(V)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表わし、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は炭素数1〜3のアルコキシ基を表わす。
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーの市販品としては、YL6121H(三菱化学株式会社製、下記式中R=HとR=CHの化合物が約1:1の混合物)等が挙げられる。
【化9】
【0079】
前記樹脂モノマー混合物は、2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーを含む。分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーの全てが液晶相を発現し、且つその温度範囲が25℃以上であるとは限らない。例えば、市販品のYL6121Hは液晶相を発現しない。
【0080】
2種類以上の特定エポキシ樹脂モノマーの少なくとも1種類は、3個以上の環状化合物由来の基が直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した構造を有するメソゲン基を含むことが好ましい。
上記構造を有するメソゲン基を含むエポキシ樹脂モノマーには、液晶相を発現する温度範囲が25℃以上であるものが多い。さらに、上記構造を有するメソゲン基を含むエポキシ樹脂モノマーは高次構造を形成しやすく、エポキシ樹脂組成物を作製した場合により高い熱伝導性が得られる傾向にある。
メソゲン基内に含まれる直鎖状に連結した環状化合物由来の基の数は、成形性の観点より、3個又は4個であることがより好ましい。
【0081】
樹脂モノマー混合物は、3個以上の環状化合物由来の基が直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した構造を有するメソゲン基を持つ特定エポキシ樹脂モノマーを少なくとも1種類含んでいることが好ましい。上記構造を有するメソゲン基を含む特定エポキシ樹脂モノマーが2種類以上であることがより好ましく、全ての特定エポキシ樹脂モノマーが上記構造を有するメソゲン基を持つことがさらに好ましい。
【0082】
つまり、樹脂モノマー混合物を構成する特定エポキシ樹脂モノマーが2種類である場合は、2種類とも上記構造を有するメソゲン基を含むエポキシ樹脂モノマーであることが最も好ましく、樹脂モノマー混合物を構成する特定エポキシ樹脂モノマーが3種類である場合は、3種類とも上記構造を有するメソゲン基を含むエポキシ樹脂モノマーであることが最も好ましい。
【0083】
メソゲン基内に含まれる直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した環状化合物由来の基は、特に限定されず、ベンゼン、ピリジン、トルエン、ナフタレン等のアセン類等に代表される芳香環に由来する基であっても、シクロヘキサン、シクロへキセン、ピペリジン等の脂肪族環に由来する基であってもよい。中でも、メソゲン基内に含まれる直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した環状化合物由来の基のうち、少なくとも1つは芳香環に由来する基であることが好ましく、メソゲン基内に含まれる直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した環状化合物由来の基のうち、1つが脂肪族環であり、残りの環がすべて芳香環であることがより好ましい。
【0084】
2価の連結基としては、エステル基、エーテル基、ウレタン基、炭素数1〜10のアルキレン基等が挙げられる。
【0085】
前述の分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーの具体例の中では、上記一般式(II)〜(V)及び上記化学式(VI)、(VII)で表されるものが3個以上の環状化合物由来の基が直鎖状に単結合又は2価の連結基で連結した構造を有するメソゲン基を含むエポキシ樹脂モノマーに相当する。
中でも、上記化学式(VI)、(VII)及び下記化学式(VIII)〜(XII)で表わされるエポキシ樹脂モノマーは、液晶相を発現し、且つ液晶相を発現する温度範囲が25℃以上であることに加え、より優れた熱伝導性を発現できる。従って、前記エポキシ樹脂組成物に好ましく適用することができる。
【0086】
【化10】

(特許第4118691号公報に記載の4−(オキシラニルメトキシ)ベンゾイックアシッド−4,4’−〔1,8−オクタンジイルビス(オキシ)〕ビスフェノールエステル)
【0087】
【化11】

(特許第4619770号公報に記載の1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)−1−シクロヘキセン)
【0088】
【化12】

(特許第4619770号公報に記載の1−(3−メチル−4−オキシラニルメトキシフェニル)−4−(4−オキシラニルメトキシフェニル)ベンゼン)
【0089】
【化13】

(特開2011−241797号公報に記載の2−メチル−1,4−フェニレン−ビス{4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート})
【0090】
【化14】

(特開2011−74366号公報に記載の4−{4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル}シクロヘキシル−4−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゾエート)
【0091】
また、前記エポキシ樹脂モノマーは、モノマーであってもモノマーを硬化剤等により部分的に反応させたプレポリマーの状態であってもよい。分子構造中にメソゲン基を有するエポキシ樹脂モノマーは一般に結晶化し易く、溶媒への溶解度も低いものが多いが、一部重合させると結晶化を抑制することができる。このため、成形性が向上する場合がある。
【0092】
前記樹脂モノマー混合物を構成する特定エポキシ樹脂モノマーの種類数は、2以上であれば特に制限されない。
【0093】
特定エポキシ樹脂モノマーの樹脂モノマー混合物中の含有率は、特に制限はない。樹脂モノマー混合物の低融点化の観点より、特定エポキシ樹脂モノマーのそれぞれが樹脂モノマー混合物中に5体積%以上含まれていることが好ましく、特定エポキシ樹脂モノマーのそれぞれが樹脂モノマー混合物中に10体積%〜90体積%の範囲内で含まれることがより好ましく、特定エポキシ樹脂モノマー全体として樹脂モノマー混合物の100体積%を占めていることがさらに好ましい。
【0094】
特定エポキシ樹脂モノマーの混合比は、熱伝導性の観点より、樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲が広くなる混合比であることが好ましい。樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲が広ければ広いほど、高熱伝導性が得られ易い傾向にある。従って前述の通り、樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲は20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。
【0095】
樹脂モノマー混合物が液晶相を発現する温度範囲を広くする混合比は、樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマーの種類に応じて適宜選択される。
例えば、樹脂モノマー混合物を、特定エポキシ樹脂モノマーAと、特定エポキシ樹脂モノマーAとは異なる特定エポキシ樹脂モノマーBとで構成する場合、特定エポキシ樹脂モノマーBに対する特定エポキシ樹脂モノマーAの混合比(A/B)が、エポキシ当量基準で0.05〜20であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。
【0096】
前記樹脂モノマー混合物は、特定エポキシ樹脂モノマー以外にその他のエポキシ樹脂モノマーを含んでもよい。その他のエポキシ樹脂モノマーの含有率は特に制限はないが、特定エポキシ樹脂モノマーを用いることにより得られる効果が妨げられない範囲であることが好ましい。
【0097】
前記樹脂モノマー混合物の含有率は、成形性、接着性、及び熱伝導性の観点から、エポキシ樹脂組成物の全固形分の全体積中の10体積%〜40体積%であることが好ましく、15体積%〜35体積%であることがより好ましく、15体積%〜30体積%であることがさらに好ましい。
【0098】
なお、本明細書におけるエポキシ樹脂組成物に用いる材料の含有率(例えば、硬化剤、硬化促進剤及び樹脂モノマー混合物の合計のエポキシ樹脂組成物全体における含有率)(体積%)は、次式により求めた値とする。以下、エポキシ樹脂組成物に用いる材料の含有率(体積%)は、本方法に基づいて求めた値である。
【0099】
硬化剤、硬化促進剤及び樹脂モノマー混合物の含有率(体積%)={((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew+Ed))}×100
【0100】
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:樹脂モノマー混合物の質量組成比(質量%)
Bw:硬化剤の質量組成比(質量%)
Cw:硬化促進剤(任意成分)の質量組成比(質量%)
Dw:無機充填材の質量組成比(質量%)
Ew:その他の任意成分(有機溶剤を除く)の質量組成比(質量%)
Ad:樹脂モノマー混合物の比重
Bd:硬化剤の比重
Cd:硬化促進剤(任意成分)の比重
Dd:無機充填材の比重
Ed:その他の任意成分(有機溶剤を除く)の比重
【0101】
[硬化剤]
前記エポキシ樹脂組成物は硬化剤を少なくとも1種類含む。硬化剤としては、樹脂モノマー混合物を熱硬化可能であれば特に制限されない。例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤等の重付加型硬化剤や、イミダゾール等の触媒型硬化剤等を挙げることができる。
【0102】
中でも、耐熱性の観点から、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも1種類を用いることが好ましく、さらに、保存安定性の観点から、フェノール系硬化剤の少なくとも1種類を用いることがより好ましい。
【0103】
アミン系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販されているものであってもよい。中でも、硬化性の観点から、2以上の官能基を有する多官能硬化剤であることが好ましく、さらに、熱伝導性の観点から、剛直な骨格を有する多官能硬化剤であることがより好ましい。
【0104】
2官能のアミン系硬化剤として、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルベンゾエート、1,5−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0105】
中でも、熱伝導性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン及び1,5−ジアミノナフタレンから選ばれる少なくとも1種類であることが好ましく、1,5−ジアミノナフタレンであることがより好ましい。
【0106】
フェノール系硬化剤としては、通常用いられるものを特に制限なく用いることができ、市販の低分子フェノール化合物や、それらをノボラック化したフェノール樹脂を用いることができる。
【0107】
低分子フェノール化合物として、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の単官能の化合物や、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能の化合物、さらに、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等の3官能の化合物等が使用可能である。また、これら低分子フェノール化合物をメチレン鎖等で連結してノボラック化したフェノールノボラック樹脂を硬化剤として用いることもできる。
【0108】
フェノール系硬化剤としては、熱伝導性の観点から、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン等の2官能のフェノール化合物、又はこれらをメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることが好ましく、さらに、耐熱性の観点から、これら低分子の2官能のフェノール化合物をメチレン鎖で連結したフェノールノボラック樹脂であることがより好ましい。
【0109】
フェノールノボラック樹脂として、具体的には、クレゾールノボラック樹脂、カテコールノボラック樹脂、レゾルシノールノボラック樹脂、ヒドロキノンノボラック樹脂等の1種類のフェノール化合物をノボラック化した樹脂や、カテコールレゾルシノールノボラック樹脂、レゾルシノールヒドロキノンノボラック樹脂等の2種類又はそれ以上のフェノール化合物をノボラック化した樹脂を挙げることができる。
【0110】
中でも、前記フェノールノボラック樹脂が、下記一般式(I−1)及び(I−2)からなる群より選択される少なくとも1つで表わされる構造単位を有する化合物を含むノボラック樹脂であることが好ましい。
【0111】
【化15】
【0112】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を表わす。Rで表わされるアルキル基、芳香族基、及びアラルキル基は、可能であればさらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
【0113】
mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表わし、mが2の場合、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。本発明において、mはそれぞれ独立に。0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、nはそれぞれ独立に、1〜7の整数を表わす。
【0114】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、芳香族基、又はアラルキル基を表わす。R及びRで表わされるアルキル基、芳香族基、又はアラルキル基は、可能であればさらに置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等を挙げることができる。
【0115】
本発明におけるR及びRとしては、保存安定性と熱伝導性の観点から、水素原子、アルキル基、又は芳香族基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12の芳香族基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0116】
さらに、耐熱性の観点から、R及びRの少なくとも一方は芳香族基であることもまた好ましく、炭素数6〜12の芳香族基であることがより好ましい。
なお、上記芳香族基はヘテロ原子を含んでいてもよく、この場合、ヘテロ原子と炭素の合計数が6〜12となるヘテロアリール基であることが好ましい。
【0117】
本発明に係る硬化剤は、上記一般式(I−1)又は(I−2)で表わされる構造単位を有する化合物を1種類単独で含むものであってもよいし、2種類以上を含むものであってもよい。好ましくは、一般式(I−1)で表わされるレゾルシノールに由来する構造単位を有する化合物を少なくとも含む場合である。
【0118】
上記一般式(I−1)で表わされる構造単位を有する化合物は、さらにレゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも1種類をさらに含んでいてもよい。上記一般式(I−1)におけるレゾルシノール以外のフェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。本発明においては、これらに由来する部分構造を1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0119】
また、上記一般式(I−2)で表わされるカテコールに由来する構造単位を有する化合物においても同様に、カテコール以外のフェノール化合物に由来する部分構造の少なくとも1種類を含んでいてもよい。
【0120】
ここで、フェノール化合物に由来する部分構造とは、フェノール化合物のベンゼン環部分から1個又は2個の水素原子を取り除いて構成される1価又は2価の基を意味する。なお、水素原子が取り除かれる位置は特に限定されない。
【0121】
レゾルシノール以外のフェノール化合物に由来する部分構造としては、熱伝導性及び接着性の観点から、フェノール、クレゾール、カテコール、ヒドロキノン、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることが好ましく、カテコール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種類に由来する部分構造であることがより好ましい。
【0122】
また、上記一般式(I−1)で表わされる構造単位を有する化合物において、レゾルシノールに由来する部分構造の含有比率については特に制限はない。弾性率の観点から、上記一般式(I−1)で表わされる構造単位を有する化合物の全質量に対するレゾルシノールに由来する部分構造の含有比率が55質量%以上であることが好ましい。さらに、Tgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0123】
さらに、本発明におけるフェノールノボラック樹脂が、下記一般式(II−1)〜(II−4)からなる群より選択される少なくとも1つで表わされる構造を有する化合物を含むノボラック樹脂であることがより好ましい。
【0124】
【化16】
【0125】
【化17】
【0126】
【化18】
【0127】
【化19】
【0128】
上記一般式(II−1)〜(II−4)中、m及びnはそれぞれ独立に、正の整数であり、それぞれの繰り返し単位の繰り返し数を示す。また、Arは下記一般式(II−a)及び(II−b)のいずれか1つで表わされる基を示す。
【0129】
【化20】
【0130】
上記一般式(II−a)及び(II−b)中、R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基を示す。R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
【0131】
上記一般式(II−1)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有する化合物は、2価のフェノール化合物をノボラック化する後述の製造方法によって副生成的に生成可能なものである。
【0132】
上記一般式(II−1)〜(II−4)で表わされる部分構造は、化合物の主鎖骨格として含まれていてもよく、又は側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、上記一般式(II−1)〜(II−4)のいずれか1つで表わされる部分構造を構成するそれぞれの繰り返し単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
【0133】
また、上記一般式(II−1)〜(II−4)において、水酸基の置換位置は芳香族環上であれば特に制限されない。
【0134】
上記一般式(II−1)〜(II−4)のそれぞれについて、複数存在するArは全て同一の原子団であってもよいし、2種類以上の原子団を含んでいてもよい。なお、Arは上記一般式(II−a)及び(II−b)のいずれか1つで表わされる基を表わす。
【0135】
上記一般式(II−a)及び(II−b)における、R11及びR14はそれぞれ独立に、水素原子又は水酸基であるが、熱伝導性の観点から水酸基であることが好ましい。また、R11及びR14の置換位置は特に制限されない。
【0136】
また、上記一般式(II−a)におけるR12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。前記R12及びR13における炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及びオクチル基が挙げられる。また、上記一般式(II−a)におけるR12及びR13の置換位置は特に制限されない。
【0137】
上記一般式(II−1)〜(II−4)におけるArは、より優れた熱伝導性を達成する観点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(上記一般式(II−a)においてR11が水酸基であって、R12及びR13が水素原子である基)、及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(上記一般式(II−b)においてR14が水酸基である基)からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。
【0138】
ここで、「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から水素原子を2つ取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。また、「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」等についても同様の意味である。
【0139】
また、前記エポキシ樹脂組成物の生産性や流動性の観点からは、Arはジヒドロキシベンゼンに由来する基であることがより好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選ばれる少なくとも1種類であることがさらに好ましい。さらに、熱伝導性を特に高める観点から、Arとして少なくともレゾルシノールに由来する基を含むことが好ましい。
また、熱伝導性を特に高める観点から、繰り返し単位nで表わされる構造単位は、レゾルシノールに由来する基を含んでいることが好ましい。
【0140】
レゾルシノールに由来する基を含む構造単位の含有率は、弾性率の観点から、上記一般式(II−1)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有する化合物の総重量中において55質量%以上であることが好ましい。さらに、Tgと線膨張率の観点から、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、熱伝導性の観点から、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0141】
上記一般式(II−1)〜(II−4)におけるm及びnについては、流動性の観点からm/n=20/1〜1/5であることが好ましく、20/1〜5/1であることがより好ましく、20/1〜10/1であることがさらに好ましい。また、(m+n)は、流動性の観点から20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
なお、(m+n)の下限値は特に制限されない。
【0142】
上記一般式(II−1)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有するフェノールノボラック樹脂は、特にArが置換又は非置換のジヒドロキシベンゼン及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレンの少なくともいずれか1種類である場合、これらを単純にノボラック化した樹脂等と比較して、その合成が容易であり、軟化点の低い硬化剤が得られる傾向にある。したがって、このような樹脂を含む樹脂組成物の製造や取り扱いも容易になる等の利点がある。
【0143】
なお、上記一般式(II−1)〜(II−4)のいずれかで表わされる部分構造を有するフェノールノボラック樹脂は、電界脱離イオン化質量分析法(FD−MS)によって、そのフラグメント成分として前記部分構造が含まれていることを容易に特定することができる。
【0144】
本発明において、上記一般式(II−1)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有するフェノールノボラック樹脂の分子量は特に制限されない。流動性の観点から、数平均分子量(Mn)として2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350以上1500以下であることがさらに好ましい。また、重量平均分子量(Mw)としては2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400以上1500以下であることがさらに好ましい。
これらMn及びMwは、GPCを用いた通常の方法により測定される。
【0145】
本発明において、上記一般式(II−1)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有するフェノールノボラック樹脂の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、水酸基当量は平均値で50以上150以下であることが好ましく、50以上120以下であることがより好ましく、55以上120以下であることがさらに好ましい。
【0146】
本発明において、前記フェノールノボラック樹脂は、前記フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーを含んでいてもよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール化合物であるモノマーの含有比率(以下、「モノマー含有比率」ともいう)としては特に制限されない。熱伝導性及び成形性の観点から、5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0147】
モノマー含有比率が80質量%以下であることで、硬化反応の際に架橋に寄与しないモノマーが少なくなり、架橋する高分子量体が多くなるため、より高密度な高次構造が形成され、熱伝導性が向上する。また。5質量%以上であることで、成形の際に流動し易いため、フィラーとの密着性がより向上し、より優れた熱伝導性と耐熱性が達成できる。
【0148】
前記エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に制限されない。例えば、硬化剤がアミン系硬化剤の場合は、アミン系硬化剤の活性水素の当量(アミン当量)と、樹脂モノマー混合物のエポキシ当量との比(アミン当量/エポキシ当量)が0.5〜2となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。また、硬化剤がフェノール系硬化剤の場合は、フェノール性水酸基の活性水素の当量(フェノール性水酸基当量)と、樹脂モノマー混合物のエポキシ当量との比(フェノール性水酸基当量/エポキシ当量)が0.5〜2となることが好ましく、0.8〜1.2となることがより好ましい。
【0149】
ここで、樹脂モノマー混合物のエポキシ当量については、前記樹脂モノマー混合物を構成する各エポキシ樹脂モノマーのエポキシ当量と、各エポキシ樹脂モノマーの混合割合とから計算して求める。
例えば、エポキシ当量が100のエポキシ樹脂モノマーAとエポキシ当量が200のエポキシ樹脂モノマーBが、エポキシ当量基準でA/B=9/1の割合で混合されている樹脂モノマー混合物である場合、前記樹脂モノマー混合物のエポキシ当量は(100×(9/10))+(200×(1/10))=110となる。
【0150】
また、フェノール系硬化剤を用いる場合、必要に応じて硬化促進剤を併用しても構わない。硬化促進剤を併用することで、エポキシ樹脂組成物をさらに十分に硬化させることができる。硬化促進剤の種類や配合量は特に限定されないが、反応速度や反応温度、保管性等の観点から、適切なものを選択することができる。硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、及び第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種類単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0151】
[無機充填材]
前記エポキシ樹脂組成物は無機充填材の少なくとも1種類を含む。これにより、高熱伝導性を達成することができる。
無機充填材は非導電性であっても導電性であってもよい。非導電性の無機充填材を使用することによって電気絶縁性が低下するリスクを低下させることができる。また、導電性の無機充填材を使用することによって熱伝導性がより向上する。
【0152】
非導電性の無機充填材として、具体的には、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。また、導電性の無機充填材としては、金、銀、ニッケル、銅、黒鉛等が挙げられる。中でも、熱伝導性及び電気絶縁性の観点から、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
【0153】
これら無機充填材は、1種類又は2種類以上の混合系で用いることができる。例えば、窒化ホウ素とアルミナとを併用することができるが、この組み合わせに限定されるものではない。
【0154】
前記無機充填材は、横軸に粒子径を、縦軸に頻度をとった粒度分布曲線を描いた場合に単一のピークを有していてもよく、複数のピークを有していてもよい。粒度分布曲線が複数のピークを有する無機充填材を用いることで、無機充填材の充填性が向上し、硬化エポキシ樹脂組成物としての熱伝導性が向上する。
【0155】
前記無機充填材が粒度分布曲線を描いたときに単一のピークを有する場合、無機充填材の重量累積粒度分布の小粒径側からの累積50%に対応する平均粒子径(D50)は、熱伝導性の観点から、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜50μmであることがより好ましい。また、粒度分布曲線が複数のピークを有する場合は、例えば、異なる平均粒子径を有する2種類以上の無機充填材を組み合わせて構成できる。
【0156】
本発明において、無機充填材の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて行なうことができる。
【0157】
前記無機充填材の組み合わせについて、例えば、異なる平均粒子径を有する2種類の無機充填材を組み合わせる場合を挙げると、平均粒子径が10μm以上100μm以下である無機充填材(A)、及び平均粒子径が無機充填材(A)の1/2以下であり、0.1μm以上10μm未満である無機充填材(B)との混合物であり、前記無機充填材の全体積に対し、無機充填材(A)が60体積%〜90体積%及び無機充填材(B)が10体積%〜40体積%(ただし、無機充填材(A)及び(B)の総体積%は100体積%である)の割合で充填すると好適である。
【0158】
なお、このときの無機充填材は、同一であっても異なっていてもよい。すなわち、無機充填材(A)及び(B)がともに窒化ホウ素であってもよいし、無機充填材(A)が窒化ホウ素で、無機充填材(B)がアルミナであってもよい。
【0159】
また、異なる平均粒子径を有する3種類の無機充填材を組み合わせる場合を挙げると、平均粒子径が10μm以上100μm以下である無機充填材(A’)、平均粒子径が無機充填材(A’)の1/2以下であり、1μm以上10μm未満である無機充填材(B’)、平均粒子径が無機充填材(B’)の1/2以下であり、0.1μm以上1μm未満である無機充填材(C’)との混合フィラーであり、前記無機充填材の全体積に対し、無機充填材(A’)が30体積%〜89体積%、無機充填材(B’)が10体積%〜40体積%、及び無機充填材(C’)が1体積%〜30体積%(ただし、無機充填材(A’)、(B’)、及び(C’)の総体積%は100体積%である)の割合で充填すると好適である。
【0160】
前記無機充填材(A)及び(A’)の平均粒子径は、エポキシ樹脂組成物を後述の樹脂シートに適用する場合には、目標とする樹脂シートにおける硬化エポキシ樹脂組成物層の膜厚に、また、エポキシ樹脂組成物を後述のプリプレグに適用する場合には、目標とするプリプレグの膜厚及び繊維基材の目の細かさに、それぞれ応じて適宜選択されることが好ましい。
【0161】
他の制限が特にない場合、前記無機充填材(A)及び(A’)の平均粒子径は、熱伝導性の観点からは大きいほど好ましいが、前記膜厚は熱抵抗の観点からは電気絶縁性が許容する範囲でなるべく薄くすることが好ましい。よって、前記無機充填材(A)及び(A’)の平均粒子径は10μm〜100μmであることが好ましく、無機充填材の充填性及び熱抵抗、熱伝導性の観点から10μm〜80μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることがさらに好ましい。
【0162】
エポキシ樹脂組成物中の無機充填材の含有量は特に制限されないが、熱伝導性及び成形性の観点から、エポキシ樹脂組成物の全体積を100体積%とした場合に、60体積%〜90体積%であることが好ましく、70体積%を超え90体積%以下であることがより好ましい。無機充填材の含有率が60体積%以上であることで、より高い熱伝導性を達成することができ、一方、90体積%以下であることで、成形性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0163】
本明細書における無機充填材の含有率(体積%)は、次式により求めた値とする。
【0164】
無機充填材の含有率(体積%)={(Dw/Dd)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+(Ew+Ed))}×100
【0165】
ここで、各変数は以下の通りである。
Aw:樹脂モノマー混合物の質量組成比(質量%)
Bw:硬化剤の質量組成比(質量%)
Cw:硬化促進剤(任意成分)の質量組成比(質量%)
Dw:無機充填材の質量組成比(質量%)
Ew:その他の任意成分(有機溶剤を除く)の質量組成比(質量%)
Ad:樹脂モノマー混合物の比重
Bd:硬化剤の比重
Cd:硬化促進剤(任意成分)の比重
Dd:無機充填材の比重
Ed:その他の任意成分(有機溶剤を除く)の比重
【0166】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、必要に応じてナノ粒子サイズの無機充填材(例えば、平均粒子径が1nm〜100nmである無機充填材)をさらに含んでいてもよい。
【0167】
マイクロ粒子サイズの無機充填材を高充填すると、無機充填材の表面と樹脂との相互作用により粘度が著しく上昇し、これによって空気を巻き込んで気泡を内包し易くなる場合や、また、無機充填材同士が嵌合する頻度が高くなり、流動性が著しく低下する場合がある。これらの課題に対する解決策として、ナノ粒子サイズの無機充填材を少量添加する方法が挙げられ、このことは特開2009−13227号公報にも示されている。
【0168】
平均粒子径が1nm〜100nmである無機充填材の含有量は特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物の全固形分の全体積中の0.01体積%〜1体積%で含有されることが好ましく、0.01体積%〜0.5体積%で含有されることがより好ましい。エポキシ樹脂組成物の全固形分の全体積中の0.01体積%〜1体積%で含有されることで、マイクロ粒子サイズの無機充填材間、及びマイクロ粒子サイズの無機充填材と繊維基材間の潤滑性をより高め、かつエポキシ樹脂組成物の熱伝導性をより高める効果が期待できる。
【0169】
[シランカップリング剤]
前記エポキシ樹脂組成物は、シランカップリング剤の少なくとも1種類をさらに含むことが好ましい。シランカップリング剤を添加する効果としては、無機充填材の表面とその周りを取り囲むエポキシ樹脂モノマーの間で共有結合を形成する役割(バインダ剤に相当する)を果たし、熱を効率良く伝達する働きや、さらには水分の浸入を妨げることによって絶縁信頼性の向上にも寄与する。
【0170】
前記シランカップリング剤の種類としては特に限定されず、市販のものを使用して構わない。特定エポキシ樹脂モノマーや硬化剤との相溶性、及びエポキシ樹脂モノマーの硬化物と無機充填材との界面での熱伝導欠損を低減することを考慮すると、本発明においては、末端にエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ウレイド基、又は水酸基を有するシランカップリング剤を用いることが好適である。
【0171】
シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、SC−6000KS2に代表されるシランカップリング剤オリゴマー(日立化成コーテットサンド株式会社製)をさらに挙げることもできる。これらシランカップリング剤は1種類単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0172】
[その他の成分]
前記エポキシ樹脂組成物は、1種類以上の有機溶剤をさらに含んでいてもよく、有機溶剤を含むことで種々の成形プロセスに適合させることができる。有機溶剤としては通常用いられる有機溶剤を用いることができ、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤等を挙げることができる。具体的には、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等を用いることができる。これらは1種類単独でも、2種類以上を併用した混合溶剤として用いてもよい。
【0173】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、上記成分に加え、必要に応じてその他の成分を含むことができる。例えば、分散剤、可塑剤等が挙げられる。分散剤としては、味の素ファインテック株式会社製アジスパーシリーズ、楠本化成株式会社製HIPLAADシリーズ、花王株式会社製ホモゲノールシリーズ等が挙げられる。これら分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0174】
<半硬化エポキシ樹脂組成物>
本発明の半硬化エポキシ樹脂組成物は前記エポキシ樹脂組成物に由来するものであり、前記エポキシ樹脂組成物を半硬化処理して得られる。前記半硬化エポキシ樹脂組成物は、例えば、これをシート状に成形した場合に、半硬化処理していないエポキシ樹脂組成物からなる樹脂シートに比べて取り扱い性が向上する。
【0175】
ここで、前記半硬化エポキシ樹脂組成物とは、前記半硬化エポキシ樹脂組成物の粘度が常温(25〜30℃)では10Pa・s〜10Pa・sであることに対して、100℃では10Pa・s〜10Pa・sに低下する特徴を有するものである。
上記粘度は動的粘弾性測定(DMA)(例えば、TAインスツルメンツ社製ARES−2KSTD)によって測定される。なお、測定条件は、周波数1Hz、荷重40g、昇温速度3℃/分であり、せん断試験により行う。
【0176】
前記半硬化処理としては、例えば、前記エポキシ樹脂組成物を温度100℃〜200℃で1分間〜30分間加熱する方法を挙げることができる。
【0177】
<硬化エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化エポキシ樹脂組成物は前記エポキシ樹脂組成物に由来するものであり、前記エポキシ樹脂組成物を硬化処理してなる。硬化後の硬化エポキシ樹脂組成物は、加温によって溶融することはない。前記硬化エポキシ樹脂組成物は熱伝導性に優れる。これは例えば、特定エポキシ樹脂モノマーが高次構造を形成しているためと考えることができる。また、前記硬化エポキシ樹脂組成物は耐熱性に優れる。
【0178】
硬化エポキシ樹脂組成物は、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物又は前記半硬化エポキシ樹脂組成物を硬化処理することで製造することができる。前記硬化処理の方法は、エポキシ樹脂組成物の構成や硬化エポキシ樹脂組成物の目的等に応じて適宜選択することができるが、加熱・加圧処理であることが好ましい。
【0179】
例えば、未硬化状態のエポキシ樹脂組成物又は前記半硬化エポキシ樹脂組成物を100℃〜250℃で1時間〜10時間、好ましくは130℃〜230℃で1時間〜8時間加熱することで硬化エポキシ樹脂組成物が得られる。
【0180】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、前記エポキシ樹脂組成物をシート状に成形したものである。前記樹脂シートは、例えば、前記エポキシ樹脂組成物を離型フィルム上に塗布し、必要に応じて含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することで製造することができる。前記樹脂シートは、前記エポキシ樹脂組成物から形成されることで、熱伝導性及び耐熱性に優れる。
【0181】
前記樹脂シートの厚みは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、樹脂シートの厚みとして、50μm〜500μmとすることができ、熱伝導性、電気絶縁性、及び可とう性の観点から、80μm〜300μmであることが好ましい。
【0182】
前記樹脂シートは、例えば、PETフィルム等の離型フィルム上に、前記エポキシ樹脂組成物にメチルエチルケトンやシクロヘキサノン等の有機溶剤を添加して調製されるワニス状のエポキシ樹脂組成物(以下、「樹脂ワニス」ともいう)を塗布して塗布層を形成した後、塗布層から前記有機溶剤の少なくとも一部を除去して乾燥することで製造することができる。
【0183】
樹脂ワニスの塗布は、公知の方法により実施することができる。具体的には、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。所定の厚みにエポキシ樹脂組成物層を形成するための塗布方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調節した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等が挙げられる。例えば、乾燥前の塗布層(樹脂組成物層)の厚みが50μm〜500μmである場合は、コンマコート法を用いることが好ましい。
【0184】
乾燥方法は、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤の少なくとも一部を除去できれば特に制限されず、樹脂ワニスに含まれる有機溶剤の種類に応じて通常用いられる乾燥方法から適宜選択することができる。一般には、80℃〜150℃程度で加熱処理する方法を挙げることができる。
【0185】
前記樹脂シートのエポキシ樹脂組成物層は硬化反応がほとんど進行していない。このため、可とう性を有するものの、シートとしての柔軟性に乏しく、支持体である前記PETフィルムを除去した状態ではシート自立性に乏しく、取り扱い難い場合がある。
【0186】
従って、前記樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物を半硬化処理して得られる半硬化エポキシ樹脂組成物から構成されていることが好ましい。すなわち、前記樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物が半硬化状態(Bステージ状態)になるまで、さらに加熱処理されて得られるBステージシートであることが好ましい。前記樹脂シートが前記エポキシ樹脂組成物を半硬化処理して得られる半硬化エポキシ樹脂組成物から構成されることで、熱伝導性及び耐熱性に優れるとともに、Bステージシートの特性としての優れた可とう性及び可使時間が達成できる。
【0187】
ここで、Bステージシートとは、その粘度が常温(25〜30℃)では10Pa・s〜10Pa・sであることに対して、100℃では10Pa・s〜10Pa・sに低下する特徴を有する樹脂シートである。なお、上記粘度はDMA(周波数1Hz、荷重40g:昇温速度3℃/分)によって測定される。
【0188】
前記樹脂シートを加熱処理する条件は、エポキシ樹脂組成物層をBステージ状態にすることができれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の構成に応じて適宜選択することができる。加熱処理は、塗工の際に生じた樹脂層中の空隙(ボイド)をなくす目的から、熱真空プレス、熱ロールラミネート等から選択される加熱処理方法により行うことが好ましい。これにより、表面が平坦なBステージシートを効率よく製造することができる。
【0189】
具体的には、例えば、減圧下(例えば、1kPa)、温度100℃〜200℃で1分間〜5分間、1MPa〜20MPaのプレス圧で加熱・加圧処理することで、前記エポキシ樹脂組成物をBステージ状態にまで半硬化させることができる。
【0190】
なお、塗布・乾燥後の樹脂シートを2枚貼り合わせた後で、上記加熱・加圧処理を行ってBステージ状態にまで半硬化させることが好ましい。このとき、塗布面(エポキシ樹脂組成物を離型フィルムに塗布して形成したエポキシ樹脂組成物層において、離型フィルムと接していない面)同士を貼り合わせることが望ましい。このように2枚の樹脂シートを貼り合わせると、得られるBステージ状態の樹脂シートの両面がより平坦となり、被着体との接着性が良好となる。このため、後述の積層板や金属基板、及びプリント配線板に用いた際により高い熱伝導性を発揮する。
【0191】
前記Bステージシートの厚みは、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm〜500μmとすることができ、熱伝導性、電気絶縁性、及び可とう性の観点から、80μm〜300μmであることが好ましい。また、2層以上の樹脂シートを積層しながら、熱プレスすることにより作製することもできる。
【0192】
前記Bステージシートにおける溶剤残存率は、硬化時のアウトガス発生による気泡形成を抑える観点から、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0193】
溶剤残存率は、Bステージシートを40mm角に切り出し、190℃に予熱した恒温槽中で2時間乾燥させたときの、乾燥前後の質量変化から求める。
【0194】
前記Bステージシートは流動性に優れる。具体的には、前記Bステージシートにおけるフロー量は130%〜210%であることが好ましく、150%〜200%であることがより好ましい。このフロー量は熱圧着時の溶融流動性の指標である。フロー量が130%以上であると埋め込み性が十分に得られ、また、210%以下であるとフロー過剰によるバリの発生を抑制できる。
【0195】
前記フロー量は、200μm厚のBステージシートを10mm角に打ち抜いた試料を大気圧条件下、Bステージシートを作製する際と同一の温度及びプレス圧で1分間押圧したときの、押圧前後のBステージシートの上面からみた面積の変化率として算出される。面積変化率は試料の外形投影像を300DPI以上のスキャナで取り込み、画像解析ソフト(Adobe Photoshop)にて2値化処理した後、面積(ピクセル数)の変化率から求める。
【0196】
フロー量(%)=(押圧後のBステージシートの面積)/(押圧前のBステージシートの面積)
【0197】
また、前記樹脂シートは前記エポキシ樹脂組成物を硬化処理して得られる硬化エポキシ樹脂組成物の樹脂シートであってもよい。硬化エポキシ樹脂組成物の樹脂シートは、未硬化状態の樹脂シート又はBステージシートを硬化処理することで製造することができる。前記硬化処理の方法は、エポキシ樹脂組成物の構成や硬化エポキシ樹脂組成物の目的等に応じて適宜選択することができるが、加熱・加圧処理であることが好ましい。
【0198】
例えば、未硬化状態の樹脂シート又はBステージシートを100℃〜250℃で1時間〜10時間、好ましくは130℃〜230℃で1時間〜8時間加熱することで硬化エポキシ樹脂組成物の樹脂シートが得られる。上記加熱は、1MPa〜20MPaの圧力をかけながら行うことが好ましい。
【0199】
なお、高熱伝導性と高耐熱性を有する硬化エポキシ樹脂組成物の樹脂シートを製造する方法の一例として以下の方法が挙げられる。まず、Bステージシートを片面が粗化面である2枚の銅箔(厚み80〜120μm)の粗化面とそれぞれ接するように挟み、温度130℃〜230℃で3分間〜10分間、圧力1MPa〜20MPaのプレス圧で加熱・加圧処理を行い、Bステージシートと銅箔とを接着させる。続いて、130℃〜230℃で1時間〜8時間加熱し、銅箔付き樹脂シートを得る。得られた銅箔付き樹脂シートの銅箔部分をエッチング処理にて除去すると、硬化エポキシ樹脂組成物の樹脂シートが得られる。
【0200】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、繊維基材と、前記繊維基材に含浸された前記エポキシ樹脂組成物と、を有して構成される。かかる構成であることで、熱伝導性及び耐熱性に優れたプリプレグとなる。
【0201】
プリプレグを構成する繊維基材としては、金属箔貼り積層板や多層プリント配線板を製造する際に通常用いられるものであれば特に制限されず、通常使用される織布や不織布等の繊維基材が用いられる。
【0202】
前記繊維基材の目開きは特に制限されない。熱伝導性及び電気絶縁性の観点から、目開きは前記無機充填材の平均粒子径の5倍以上であることが好ましい。また、前記無機充填材の粒度分布曲線が複数のピークを有する場合、粒子径が最大となるピークに対応する粒子径の5倍以上の目開きであることがより好ましい。
【0203】
繊維基材の材質は特に制限されない。具体的には、ガラス、アルミナ、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維や、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等、及びこれらの混抄系を挙げることができる。中でも、ガラス繊維の織布が好ましく用いられる。これにより例えば、プリプレグを用いてプリント配線板を構成する場合、屈曲性があり任意に折り曲げ可能なプリント配線板を得ることができる。さらに、製造プロセスでの温度変化や吸湿等に伴うプリント配線板の寸法変化を小さくすることも可能となる。
【0204】
前記繊維基材の厚さは特に限定されない。より良好な可とう性を付与する観点から、30μm以下であることがより好ましく、含浸性の観点から15μm以下であることが好ましい。繊維基材の厚みの下限は特に制限されないが、通常5μm程度である。
【0205】
前記プリプレグにおけるエポキシ樹脂組成物の含浸量(含有率)は、繊維基材及びエポキシ樹脂組成物の総質量に対して50質量%〜99.9質量%であることが好ましい。
【0206】
前記プリプレグは、上記と同様にしてワニス状に調製された前記エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸し、80℃〜150℃の加熱処理により有機溶剤の少なくとも一部を除去して製造することができる。
【0207】
また、エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸する方法に特に制限はない。例えば、塗工機により塗布する方法を挙げることができる。詳細には、繊維基材をエポキシ樹脂組成物にくぐらせて引き上げる縦型塗工法、及び支持フィルム上にエポキシ樹脂組成物を塗工してから繊維基材を押し付けて含浸させる横型塗工法などを挙げることができる。繊維基材内での無機充填材の偏在を抑える観点からは横型塗工法が好適である。
【0208】
本発明におけるプリプレグは、被着材上に積層又は貼付する前に、プレスやロールラミネータなどによる熱間加圧処理により、あらかじめ表面を平滑化してから使用してもよい。熱間加圧処理の方法は、前記Bステージシートの製造方法で挙げた方法と同様である。また、前記プリプレグの熱間加圧処理における加熱温度、減圧度、及びプレス圧等の処理条件についても、前記Bステージシートの加熱・加圧処理で挙げた条件と同様である。
【0209】
前記プリプレグにおける溶剤残存率は、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0210】
溶剤残存率は、プリプレグを40mm角に切り出し、190℃に予熱した恒温槽中に2時間乾燥させたときの、乾燥前後の質量変化から求める。
【0211】
<積層板>
本発明における積層板は、被着材と、前記被着材上に配置された半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層と、を有する。前記半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層は、前記エポキシ樹脂組成物から構成されるエポキシ樹脂組成物層、前記樹脂シート、及び前記プリプレグからなる群より選択される少なくとも1つに由来する半硬化エポキシ樹脂組成物層及び硬化エポキシ樹脂組成物層からなる群より選択される少なくとも1つである。前記エポキシ樹脂組成物から形成される半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層を有することで、熱伝導性及び耐熱性に優れた積層板となる。
【0212】
前記被着材としては、金属箔や金属板などを挙げることができる。前記被着材は、前記半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層の片面のみに付設しても、両面に付設してもよい。
【0213】
前記金属箔としては特に制限されず、通常用いられる金属箔から適宜選択することができる。具体的には金箔、銅箔、アルミニウム箔等を挙げることができ、一般には銅箔が用いられる。前記金属箔の厚みは特に制限されず、例えば1μm〜200μmであってよく、使用する電力等に応じて好適な厚みを選択することができる。
【0214】
また、前記金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両表面に厚みが0.5μm〜15μmの銅層と厚みが10μm〜150μmの銅層とをそれぞれ設けた3層構造の複合箔、又はアルミニウム箔と銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0215】
前記金属板は熱伝導性が高く、熱容量が大きい金属材料からなることが好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、鉄、及びリードフレームに使われる合金等が例示できる。
【0216】
前記金属板の板厚は用途に応じて適宜選択することができる。例えば、前記金属板は、軽量化や加工性を優先する場合はアルミニウムを、放熱性を優先する場合は銅を、というように目的を応じて材質を選定することができる。
【0217】
前記積層板においては、半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層として、前記エポキシ樹脂組成物層、前記樹脂シート、又は前記プリプレグのいずれか1つに由来する1層を有する形態であってもよく、2層以上を積層して有する形態であってもよい。2層以上の半硬化エポキシ樹脂組成物層又は硬化エポキシ樹脂組成物層を有する場合の積層板は、前記エポキシ樹脂組成物層を2層以上有する形態、前記樹脂シートを2枚以上有する形態、及び前記プリプレグを2枚以上有する形態のいずれであってもよい。さらには、前記エポキシ樹脂組成物層、前記樹脂シート、及び前記プリプレグのいずれか2つ以上を組み合わせて有してもよい。
【0218】
本発明における積層板は、例えば、被着材上に前記エポキシ樹脂組成物を塗工してエポキシ樹脂組成物層を形成し、これを加熱及び加圧処理して前記エポキシ樹脂組成物層を半硬化又は硬化させるとともに被着材に密着させることで得られる。又は、前記被着材に前記樹脂シート又は前記プリプレグを積層したものを準備し、これを加熱及び加圧して前記樹脂シート又は前記プリプレグを半硬化又は硬化させるとともに被着材に密着させることで得られる。
【0219】
前記エポキシ樹脂組成物層、樹脂シート、及びプリプレグを半硬化又は硬化する硬化方法は特に制限されない。例えば、加熱及び加圧処理であることが好ましい。加熱及び加圧処理における加熱温度は特に限定されない。通常100℃〜250℃の範囲であり、好ましくは130℃〜230℃の範囲である。また、加熱及び加圧処理における加圧条件は特に限定されない。通常1MPa〜20MPaの範囲であり、好ましくは1MPa〜15MPaの範囲である。また、加熱及び加圧処理には、真空プレスが好適に用いられる。
【0220】
積層板の厚みは500μm以下であることが好ましく、100μm〜300μmであることがより好ましい。厚みが500μm以下であると可とう性に優れ曲げ加工時にクラックが発生するのが抑えられ、厚みが300μm以下の場合はその傾向がより見られる。また、厚みが100μm以上の場合には作業性に優れる。
【0221】
<金属箔付樹脂硬化物、金属基板>
前記積層板の一例として、後述のプリント配線板を作製するのに用いることができる金属箔付樹脂硬化物及び金属基板を挙げることができる。
【0222】
前記金属箔付樹脂硬化物は、前記積層板における被着材として2枚の金属箔を用いて構成される。具体的には、一方の金属箔と、前記硬化エポキシ樹脂組成物層と、他方の金属箔とがこの順に積層されて構成される。
前記金属箔付樹脂硬化物を構成する金属箔及び硬化エポキシ樹脂組成物層の詳細は、既述の通りである。
【0223】
また、前記金属基板は、前記積層板における被着材として金属箔と金属板とを用いて構成される。具体的に、前記金属基板は、前記金属箔と、前記硬化エポキシ樹脂組成物層と、前記金属板とがこの順に積層されて構成される。
前記金属基板を構成する金属箔及び硬化エポキシ樹脂組成物層の詳細は、既述の通りである。
【0224】
前記金属板は特に制限されず、通常用いられる金属板から適宜選択することができる。具体的にはアルミニウム板、鉄板等を挙げることができる。金属板の厚みは特に制限されない。加工性の観点から、厚みは0.5mm〜5mmであることが好ましい。
【0225】
また、前記金属板は、生産性を高める観点から、必要分より大きなサイズで作製されて電子部品を実装した後に、使用するサイズに切断されることが好ましい。そのため、金属基板に用いる金属板は切断加工性に優れることが望ましい。
【0226】
前記金属板としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金を材質として選定できる。アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金は、その化学組成と熱処理条件により多種類のものが入手可能である。中でも、切削し易い等の加工性が高く、かつ強度に優れた種類を選定することが好ましい。
【0227】
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、金属板と、硬化エポキシ樹脂組成物層と、配線層とがこの順に積層されてなる。前記硬化エポキシ樹脂組成物層は、前記エポキシ樹脂組成物から構成されるエポキシ樹脂組成物層、前記樹脂シート、及び前記プリプレグから選択される少なくとも1つに由来する硬化エポキシ樹脂組成物層である。前記エポキシ樹脂組成物から形成される硬化エポキシ樹脂組成物層を有することで、熱伝導性及び耐熱性に優れたプリント配線板となる。
【0228】
前記プリント配線板は、既述の金属箔付樹脂硬化物における少なくとも一方の金属箔又は金属基板における金属箔を回路加工することにより製造することができる。前記金属箔の回路加工には、通常のフォトリソ法等が適用できる。
【0229】
前記プリント配線板の好ましい態様としては、例えば、特開2009−214525号公報の段落番号0064や、特開2009−275086号公報の段落番号0056〜0059に記載のプリント配線板と同様のものを挙げることができる。
【実施例】
【0230】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、とくに断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0231】
以下にエポキシ樹脂組成物の作製に用いた材料とその略号を示す。
[エポキシ樹脂モノマー]
・樹脂A(公知物質)
【化21】
【0232】
結晶層から液晶相に転移する温度:216℃
液晶相から等方相に転移する温度:320℃
液晶相を発現する温度範囲:104℃
エポキシ当量:269
【0233】
・樹脂B(特許第4619770号公報参照)
【化22】
【0234】
結晶層から液晶相に転移する温度:90℃
液晶相から等方相に転移する温度:142℃
液晶相を発現する温度範囲:52℃
エポキシ当量:201
【0235】
・樹脂C(特開2011−98952号公報参照)
【化23】
【0236】
結晶層から液晶相に転移する温度:149℃
液晶相から等方相に転移する温度:271℃
液晶相を発現する温度範囲:122℃
エポキシ当量:209
【0237】
・樹脂D(特開2011−74366号公報参照)
【化24】
【0238】
結晶層から液晶相に転移する温度:148℃
液晶相から等方相に転移する温度:202℃
液晶相を発現する温度範囲:54℃
エポキシ当量:212
【0239】
・樹脂E(特開2011−74366号公報参照)
【化25】
【0240】
結晶層から液晶相に転移する温度:143℃
液晶相から等方相に転移する温度:155℃
液晶相を発現する温度範囲:12℃
エポキシ当量:219
【0241】
・YL6121H(三菱化学株式会社製、下記式中R=HとR=CHの化合物が約1:1の混合物、液晶相発現なし、融点(結晶相→等方相):100℃、エポキシ当量:172)
【化26】
【0242】
[硬化剤]
・CRN(カテコールレゾルシノールノボラック(仕込み比:5/95)樹脂、シクロヘキサノン50%含有)
【0243】
(CRNの合成方法)
撹拌機、冷却機、温度計を備えた3Lのセパラブルフラスコに、レゾルシノール627g、カテコール33g、37%ホルムアルデヒド316.2g、シュウ酸15g、水300gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。104℃前後で還流し、還流温度で4時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を170℃に昇温し、170℃を保持しながら8時間反応を続けた。反応後、減圧下20分間濃縮を行い、系内の水等を除去し、目的であるフェノール樹脂CRNを得た。
また、得られたCRNについて、FD−MSにより構造を確認したところ、一般式(II−1)〜(II−4)で表わされる部分構造すべての存在が確認できた。
【0244】
なお、上記反応条件では、一般式(II−1)で表わされる部分構造を有する化合物が最初に生成し、これがさらに脱水反応することで一般式(II−2)〜(II−4)のうち少なくとも1つで表わされる部分構造を有する化合物が生成すると考えられる。
【0245】
得られたCRNについて、Mn、Mwの測定を次のようにして行った。
Mn及びMwの測定は、株式会社日立製作所製高速液体クロマトグラフィL6000、及び株式会社島津製作所製データ解析装置C−R4Aを用いて行った。分析用GPCカラムは東ソー株式会社製G2000HXL及び3000HXLを使用した。試料濃度は0.2質量%、移動相にはテトラヒドロフランを用い、流速1.0ml/minで測定を行った。ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、それを用いてポリスチレン換算値でMn及びMwを計算した。
【0246】
得られたCRNについて、水酸基当量の測定を次のようにして行った。
水酸基当量は、塩化アセチル−水酸化カリウム滴定法により測定した。なお、滴定終点の判断は溶液の色が暗色のため、指示薬による呈色法ではなく、電位差滴定によって行った。具体的には、測定樹脂の水酸基をピリジン溶液中塩化アセチル化した後、その過剰の試薬を水で分解し、生成した酢酸を水酸化カリウム/メタノール溶液で滴定した。
【0247】
得られたCRNは一般式(II−1)〜(II−4)のうちの少なくとも1つで表わされる部分構造を有する化合物の混合物であり、Arが、前記一般式(II−a)においてR11=水酸基であり、R12=R13=水素原子である1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基であり、低分子希釈剤として単量体成分(レゾルシノール)を35%含む硬化剤(水酸基当量62、数平均分子量422、重量平均分子量564)を含むフェノール樹脂であった。
【0248】
[無機充填材]
・AA−18(α−アルミナ、住友化学株式会社製、平均粒子径:18μm)
・AA−3(α−アルミナ、住友化学株式会社製、平均粒子径:3μm)
・AA−04(α−アルミナ、住友化学株式会社製、平均粒子径:0.4μm)
・HP−40(窒化ホウ素、水島合金鉄株式会社製、平均粒子径:18μm)
【0249】
[添加剤]
・TPP(トリフェニルホスフィン、硬化促進剤)
・KBM−573(3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、シランカップリング剤、信越化学株式会社製)
【0250】
[溶剤]
・MEK(メチルエチルケトン)
・CHN(シクロヘキサノン)
【0251】
[支持体]
・PETフィルム(藤森工業株式会社製、75E−0010CTR−4、厚み75μm)
・銅箔(古河電工株式会社製、厚さ80μm、GTSグレード)
【0252】
<実施例1>
樹脂モノマー混合物を7.56質量部(樹脂A:4.33質量部、樹脂B:3.23質量部、エポキシ当量で樹脂A/樹脂B=1/1)、CRNを3.98質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.89質量部(MEK:17.91質量部、CHN:3.98質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0253】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0254】
(半硬化エポキシ樹脂組成物の作製)
上記エポキシ樹脂ワニスを、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが約200μmとなるようにPETフィルム上に塗布した後、常温(10℃〜30℃)で15分、さらに100℃で30分間乾燥させた。その後、真空プレスにて熱間加熱(プレス温度:80℃〜150℃、真空度:1kPa、プレス圧:1MPa、加圧時間:1分)を行い、シート状の半硬化エポキシ樹脂組成物を得た。
【0255】
(銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物の作製)
上記で得られた半硬化エポキシ樹脂組成物のPETフィルムを剥がした後、2枚の銅箔のマット面がそれぞれ半硬化エポキシ樹脂組成物に対向するようにして挟み、真空プレスにて真空熱圧着(温度:150〜180℃、真空度:1kPa、プレス圧:4MPa、加圧時間:5分)した。その後、大気圧条件下、140℃で2時間、165℃で2時間、さらに190℃で2時間加熱し、銅箔付き化硬化エポキシ樹脂組成物を得た。
【0256】
上記で得られた樹脂モノマー混合物と銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
なお、表1には樹脂モノマー混合物の代わりにエポキシ樹脂モノマー単体を使用した場合の評価結果を示す。
【0257】
(液晶相の有無の確認)
樹脂モノマー混合物を加熱しながら、樹脂モノマー混合物の状態変化を偏光顕微鏡(オリンパス社製BS51)を用いてクロスニコル状態で観察(100倍率)した。加熱過程において、流動性を有し、且つ偏光解消による干渉模様が観察されれば、上記樹脂モノマー混合物は液晶相を発現すると判断した。
【0258】
(相溶の有無の確認)
上記の溶融した樹脂モノマー混合物を自然冷却させ、140℃(硬化温度)において樹脂モノマー混合物を構成するエポキシ樹脂モノマー同士が相溶するか否かを偏光顕微鏡によって観察した。
【0259】
(融点の測定)
樹脂モノマー混合物について、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマ製DSC7)を用い、昇温速度10℃/分、測定温度範囲25℃〜350℃、流量20±5ml/minの窒素雰囲気下の条件で、アルミパンに密閉した3mg〜5mgの試料の示差走査熱量測定を行った。得られた結果より、相転移に伴うエネルギー変化が起こる温度(吸熱反応ピーク)を融点とした。
また、樹脂モノマー混合物を室温から加熱し、10℃加熱する毎に温度を30秒安定させ、その都度偏光顕微鏡にて相転移が起こっているかどうかをクロスニコル状態で観察(100倍率)した。上記DSC測定で得られた融点と同じ温度付近で相転移が観察されれば、上記DSC測定で得られた吸熱反応ピークの温度を融点とした。また、上記DSC測定で吸熱反応ピークが得られなかった場合で、偏光顕微鏡観察にて相転移の様子が観察された場合、その観察された温度も融点とした。
【0260】
(熱伝導率の測定)
銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物の銅箔をエッチングして取り除き、シート状の硬化エポキシ樹脂組成物を得た。得られた硬化エポキシ樹脂組成物を10mm角に切り出してグラファイトスプレーにて黒化処理した後、キセノンフラッシュ法(NETZSCH製のLFA447 nanoflashを使用)にて熱拡散率を評価した。この値と、アルキメデス法で測定した密度と、DSC(パーキンエルマ製のPyris1を使用)にて測定した比熱との積から、硬化エポキシ樹脂組成物の熱伝導率を求めた。
【0261】
<実施例2>
樹脂モノマー混合物を7.59質量部(樹脂A:4.27質量部、樹脂C:3.32質量部、エポキシ当量で樹脂A/樹脂C=1/1)、CRNを3.92質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.92質量部(MEK:17.91質量部、CHN:4.01質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0262】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0263】
上記で得られたエポキシ樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半硬化エポキシ樹脂組成物及び銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物を作製し、上記と同様にして評価した。
その結果を表2に示した。
【0264】
<実施例3>
樹脂モノマー混合物を7.35質量部(樹脂D:3.77質量部、樹脂B:3.58質量部、エポキシ当量で樹脂D/樹脂B=1/1)、CRNを4.40質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.68質量部(MEK:17.91質量部、CHN:3.77質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0265】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0266】
上記で得られたエポキシ樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半硬化エポキシ樹脂組成物及び銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物を作製し、上記と同様にして評価した。
その結果を表2に示した。
【0267】
<実施例4>
樹脂モノマー混合物を7.33質量部(樹脂D:1.91質量部、樹脂B:5.42質量部、エポキシ当量で樹脂D/樹脂B=1/3)、CRNを4.45質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.66質量部(MEK:17.91質量部、CHN:3.75質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0268】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0269】
上記で得られたエポキシ樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半硬化エポキシ樹脂組成物及び銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物を作製し、上記と同様にして評価した。
その結果を表2に示した。
【0270】
<実施例5>
樹脂モノマー混合物を4.48質量部(樹脂D:2.30質量部、樹脂B:2.18質量部、エポキシ当量で樹脂D/樹脂B=1/1)、CRNを2.68質量部、無機充填材として窒化ホウ素/α−アルミナ混合フィラーを26.94質量部(HP−40:22.43質量部、AA−04:4.51質量部)、TPPを0.047質量部、KBM−573を0.045質量部、及び溶剤を19.63質量部(MEK:15.73質量部、CHN:3.90質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0271】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及び窒化ホウ素の密度を2.2g/cm、α−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対する窒化ホウ素/α−アルミナフィラーの割合を算出したところ、70体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、30体積%であった。
【0272】
(半硬化エポキシ樹脂組成物の作製)
上記エポキシ樹脂ワニスを、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが約300μmとなるようにPETフォルム上に塗布した後、100℃で10分間乾燥させた。その後、真空プレスにて熱間加熱(プレス温度:150〜180℃、真空度:1kPa、プレス圧:15MPa、加圧時間:1分)を行い、シート状の半硬化エポキシ樹脂組成物を得た。
【0273】
(銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物の作製)
上記で得られた半硬化エポキシ樹脂組成物のPETフィルムを剥がした後、2枚の銅箔のマット面がそれぞれ半硬化エポキシ樹脂組成物に対向するようにして挟み、真空プレスにて真空熱圧着(温度:150〜180℃、真空度:1kPa、プレス圧:15MPa、加圧時間:8分)した。その後、大気圧条件下、140℃で2時間、165℃で2時間、さらに190℃で2時間加熱し、銅箔付き化硬化エポキシ樹脂組成物を得た。
【0274】
上記で得られた樹脂モノマー混合物と銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物について、上記と同様にして評価した。
その結果を表2に示した。
【0275】
<比較例1>
樹脂モノマー混合物を7.46質量部(樹脂A:4.55質量部、YL6121H:2.91質量部、エポキシ当量で樹脂A/YL6121H=1/1)、CRNを4.18質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.79質量部(MEK:17.91質量部、CHN:3.88質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0276】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0277】
上記で得られたエポキシ樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半硬化エポキシ樹脂組成物及び銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物を作製し、上記と同様にして評価した。
その結果を表3に示した。
【0278】
<比較例2>
樹脂モノマー混合物を7.42質量部(樹脂D:3.65質量部、樹脂E:3.77質量部、エポキシ当量で樹脂D/樹脂E=1/1)、CRNを4.26質量部、無機充填材としてα−アルミナフィラーを90.17質量部(AA−18:59.51質量部、AA−3:21.64質量部、AA−04:9.02質量部)、TPPを0.076質量部、KBM−573を0.096質量部、及び溶剤を21.75質量部(MEK:17.91質量部、CHN:3.84質量部)を混合し、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物としてエポキシ樹脂ワニスを得た。
【0279】
樹脂モノマー混合物、CRN、TPP、及びKBM−573の混合物の密度を1.2g/cm、及びα−アルミナフィラーの密度を3.98g/cmとして、これら全体積に対するα−アルミナフィラーの割合を算出したところ、74体積%であった。樹脂モノマー混合物の割合は、26体積%であった。
【0280】
上記で得られたエポキシ樹脂ワニスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして半硬化エポキシ樹脂組成物及び銅箔付き硬化エポキシ樹脂組成物を作製し、上記と同様にして評価した。
その結果を表3に示した。
【0281】
【表1】
【0282】
【表2】
【0283】
【表3】
図1