(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置及びその製造方法を例示するものであって、本発明は発光装置及びその製造方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一つの部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一つの部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0012】
本発明の一実施の形態に係る発光装置によれば、前記基体が絶縁性平面を有し、前記絶縁性平面上に導電性部材を形成すると共に、前記導電性部材を前記半導体発光素子と電気的に接続することができる。
【0013】
また本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第一樹脂モールド層が、前記半導体発光素子が発する出射光の波長を変換するための波長変換部材を含有させることができる。
【0014】
さらに本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第二樹脂モールド層が、前記半導体発光素子が発する出射光を拡散させるための拡散材を含むことができる。上記構成により、封止樹脂を、蛍光体等の波長変換部材を配合して波長変換を行う第一樹脂モールド層と、拡散剤を配合して発光むらを軽減するための第二樹脂モールド層に分離することにより、より高光質な発光装置を得ることができる。
【0015】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第一枠の内面の下端と前記基体との境界の位置を、前記第二枠の内面の下端よりも、前記枠体の内側に配置させることができる。上記構成により、枠体の内面側が全体として傾斜された形状となって、光の取り出し効率を改善できる。また、第二枠が部分的に第一樹脂モールド層31の上方を覆って光取り出しを阻害する事態も回避できる。
【0017】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第二枠を、前記第一枠よりも平面視において太く形成することができる。上記構成により、第一枠の上面及び外面を第二枠で覆うようにして枠体を形成でき、枠体を大きくして基体上に固定する際の接合強度を高めて信頼を向上できる。
【0018】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第一枠を形成する第一枠体用樹脂の粘度を、前記第二枠を形成する第二枠体用樹脂の粘度よりも高めることができる。上記構成により、第一枠を狭く高く形成し易くできる。
【0019】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、さらに前記半導体発光素子と逆並列に接続された保護素子を備えており、前記保護素子を、前記第二枠で埋設させることができる。上記構成により、保護素子を埋設する第二枠体用樹脂の粘度を低くして、第二枠体用樹脂の埋設後に保護素子表面と第二枠体用樹脂との界面に隙間が生じる事態を回避し、発光装置の信頼性を高めることができる。
【0020】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第二樹脂モールド層の、中央領域の高さを、前記第ニ枠の頂部とほぼ同じ高さに形成することができる。上記構成により、枠体の近傍においても第一樹脂モールド層と第二樹脂モールド層の厚さをほぼ一定に維持でき、従来色むらが生じ易かった枠体近傍の発光色の色むらを抑制できる効果が得られる。
【0021】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、
基体と、前記基体上に実装された半導体発光素子と、前記基体上で、前記半導体発光素子の周囲を取り囲む枠体と、前記枠体内に充填された樹脂モールド層とを備える発光装置であって、前記枠体が、第一枠と、前記第一枠の上面に形成された第二枠とを含み、前記樹脂モールド層は、前記第一枠の頂部と略等しい高さに形成され、前記半導体発光素子を埋設する第一樹脂モールド層と、前記第一樹脂モールド層の上面に積層された、中央領域の高さ
が、前記第二枠の頂部よりも高く形成
された第二樹脂モールド層とを含み、前記第一樹脂モールド層又は第二樹脂モールド層の少なくともいずれかに、前記半導体発光素子が発する出射光の波長を変換するための波長変換部材を含有させることができる。上記構成により、第二樹脂モールド層で光束を高める効果が得られる。
【0022】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記波長変換部材を、前記半導体発光素子の発する光で励起可能な蛍光体とすることができる。
【0023】
さらにまた本発明の他の実施の形態に係る発光装置によれば、前記第一樹脂モールド層に、蛍光体層と、その上部に形成された透光性樹脂層とを含めることができる。上記構成により、蛍光体を第一樹脂モールド層内で沈降させて半導体発光素子からの光を効率よく捉えて波長変換し易くできる。
(実施例1)
【0024】
本発明の実施例1に係る発光装置100の平面図を
図1に、そのII−II線における断面図を
図2に、III−III線における断面斜視図を
図3に、またこの発光装置100の製造工程を
図4A〜
図4Dの模式断面図に、それぞれ示す。これらの図に示す発光装置100は、基体50と、基体50上に実装された半導体発光素子10と、基体50上で、半導体発光素子10の周囲を取り囲むように配置された樹脂製の枠体20と、この枠体20で画定された封止領域SAに充填された樹脂製の樹脂モールド層30とを備えている。
【0025】
この基体は、絶縁性平面を有しており、絶縁性平面上に導電性部材を形成している。この導電性部材を半導体発光素子と電気的に接続することで、配線を行う。
【0026】
ここでは、基体50を矩形状とし、また枠体20も矩形状に形成している。枠体20で囲まれた封止領域SA内には、一以上の半導体発光素子10が実装されている。ここでは、矩形状の封止領域SA内に、複数個の半導体発光素子10をマトリックス状に配置している。この例では縦6個×横6個=計36個の半導体発光素子を実装している。ただし、半導体発光素子の数や配置パターンは、任意のものが利用できる。例えば、縦横の数を変化させた長方形状としたり、あるいは円形状や多角形状に配置してもよい。さらには
図5の変形例に示す発光装置100Bのように、半導体発光素子10を1個とすることもできる。
(半導体発光素子10)
【0027】
半導体発光素子10は、発光ダイオードや半導体レーザ等が利用できる。このような半導体発光素子10は、液相成長法、HDVPE法やMOCVD法により基板上にZnS、SiC、GaN、GaP、InN、AlN、ZnSe、GaAsP、GaAlAs、InGaN、GaAlN、AlInGaP、AlInGaN等の半導体を発光層として形成させたものが好適に用いられる。半導体層の材料やその混晶度の選択により、半導体発光素子の発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。特に、野外でも好適に利用することができる表示装置とするときには、高輝度発光可能な発光素子が求められる。そこで、緑色系及び青色系の高輝度な発光する発光素子の材料として、窒化物半導体を選択することが好ましい。例えば、発光層の材料として、In
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1)等が利用できる。また、このような発光素子と、その発光により励起され、発光素子の発光波長と異なる波長を有する光を発する種々の蛍光体36(詳細は後述)とを組み合わせた発光素子とすることもできる。赤色系の発光する発光素子の材料として、ガリウム・アルミニウム・砒素系の半導体やアルミニウム・インジウム・ガリウム・燐系の半導体を選択することが好ましい。なお、カラー表示装置とするためには、赤色系の発光波長が610nmから700nm、緑色が495nmから565nm、青色の発光波長が430nmから490nmのLEDチップを組み合わせることが好ましい。
【0028】
また、この半導体発光素子10は、電極形成面を基体50に面するように位置させて、バンプや半田ボール等で実装すると共に、電極形成面の裏面側を主光取出し面とするフェイスダウン実装(所謂フリップチップ実装)としている。ただ、この構成に限らず基体への実装面側と反対側の電極形成面側を主光取り出し面としたフェイスアップ実装型とすることもできる。
(保護素子12)
【0029】
また、好ましくは半導体発光素子10に保護素子12を接続する。保護素子12は、逆電圧が印加された際に半導体発光素子10が破損される事態を回避する。このような保護素子12には発光素子の導通方向と逆向きに並列に接続されたツェナーダイオード等が好適に利用できる。あるいは、保護素子12にバリスタ等を使用してもよい。保護素子12や、基体50上に施された配線パターンは、後述する枠体20で埋設される。これにより、保護素子12や配線パターンを別途保護膜等で被覆することなく、枠体20でもって保護できる。すなわち枠体20を保護素子12や配線パターンの保護膜に兼用できる。
(基体50)
【0030】
基体50は、放熱性に優れた絶縁性の基板が好適に利用できる。例えばセラミック基板が利用でき、この例ではアルミナセラミック基板を利用している。また、ガラスエポキシ基板、窒化アルミ基板等も適宜利用できる。
図1の平面図に示すように、基体50のほぼ中央に、封止領域SAを画定する枠体20を形成すると共に、枠体20の外側には、外部との電気接続用の外部接続端子14が形成される。外部接続端子14は、正極用、負極用の一対が形成され、それぞれの外部接続端子14が配線パターンによって封止領域SAに実装された半導体発光素子10(及び保護素子12)と電気的に接続される。
図1の例では、矩形状の枠体20の対角線上に、正極側外部接続端子と、負極側外部接続端子が、それぞれ印刷によって形成されている。ここでは外部接続端子を一対としているが、外部接続端子は一対に限らず、二対以上とすることもできる。
(樹脂モールド層30)
【0031】
樹脂モールド層30は、第一樹脂モールド層31と、この第一樹脂モールド層31の上面に積層された第二樹脂モールド層32を含む。第一樹脂モールド層31は、半導体発光素子10を埋設するように、波長変換部材を含有させている。また第二樹脂モールド層32は、拡散材を含んでおり、半導体発光素子10の発光と、波長変換部材で波長変換された光とを拡散させて混色させ、均一な出力光を得る。
(枠体20)
【0032】
さらに枠体20は、第一枠体用樹脂で構成された第一枠21と、第二枠体用樹脂で構成された第二枠22とを含む。このようにすることで、第一樹脂モールド層31と第二樹脂モールド層32を略均一な厚さで積層し易くして、出力光の色むらを抑制した高品質な発光を得ることが可能となる(詳細は後述)。
(第一樹脂モールド層31)
【0033】
第一樹脂モールド層31は、
図2の断面図に示すように、波長変換層34と、その上部に形成された透光性樹脂層35とを含む。このため、第一樹脂モールド層31の形成時において、第一樹脂モールド層31用の第一モールド樹脂は、透光性樹脂中に波長変換部材を含有させている。この第一モールド樹脂を第一枠21に充填すると、透光性樹脂中に含有された波長変換部材がその自重により沈降して、第一樹脂モールド層31の下方に偏在した波長変換部材によって波長変換層34が形成され、また第一樹脂モールド層31の上方には、波長変換部材の少ない透光性樹脂層35が形成される。このような構成とすることで、半導体発光素子10の周囲及び上面に波長変換部材を効果的に配置でき、この半導体発光素子10の発する光を効率よく波長変換できる。このような第一モールド樹脂を構成する透光性樹脂には、シリコーン樹脂等が好適に利用できる。
(蛍光体36)
【0034】
このような波長変換部材には、半導体発光素子10の発する光で励起可能な蛍光体36が好適に利用できる。蛍光体36には、YAG、CASN、SCASN等が好適に利用できる。例えば、半導体発光素子10にInGaNのLEDを利用し、蛍光体36に希土類元素で賦活されたYAGを利用することで、LEDの青色光と、この青色光で蛍光体が励起されて波長変換させた黄色の蛍光とが得られ、これらの混色によって白色光が得られる。これにより、白色の発光装置を得ることができる。また、必要に応じて蛍光体は複数種類を混入させることができる。例えば赤色系の蛍光体を付加して、赤み成分を加えた暖色系の発光色を得ることができる。また白色光以外の発光色を得ることも可能である。ここでは、発光ダイオードのピーク波長を445〜455nmの青色、蛍光体には、この青色光で励起されて黄色の蛍光を発するYAG、黄緑の蛍光を発するLAG、赤色の蛍光を発するSCASNを組み合わせて、これらの混色により電球色の白色光を出力光として生成する発光装置を得ている。
【0035】
蛍光体36は、第一樹脂モールド層31内において下方に偏って分布させることができる。これにより、蛍光体36を半導体発光素子10の近傍に配置して、半導体発光素子10から出射される出射光を効率よく蛍光体36に照射して波長変換できる。このように蛍光体36を偏在させるには、例えば第一樹脂モールド層31中に蛍光体36を混入させた状態で充填し、第一樹脂モールド層31を硬化させる段階で、蛍光体36をその自重によって自然に沈降させる。この結果、硬化後の第一樹脂モールド層31の下方には、蛍光体36を多く含む領域が形成される。
【0036】
図2に示す発光装置100の例では、説明のため第一樹脂モールド層31を、蛍光体を含む波長変換層34と、蛍光体36を含まない透光性樹脂層35とで区別した状態に図示しているが、実際には波長変換層34と透光性樹脂層35との境界は曖昧なことがある。蛍光体の沈降の状態は、使用する第一モールド樹脂の粘度や蛍光体の粒径、比重等によっても変化する。したがって、例えば
図6に変形例として示す発光装置100Cのように、第一樹脂モールド層31Cの下方に進む程、蛍光体36の密度が高くなり、逆に上方に進む程蛍光体36の密度が低くなるような状態も、本発明に含むものとする。この第一樹脂モールド層31Cは、蛍光体36が沈降した波長変換層34Cと、蛍光体36を実質的に含まない透光性樹脂層35Cとで構成される。本明細書において、「蛍光体を実質的に含まない」とは、全く蛍光体粒子を含んでいない場合はもとより、微量に蛍光体粒子を含んでいても、半導体発光素子によって出射される光の吸収が確認されない場合も含むことを意味する。
(第二樹脂モールド層32)
【0037】
第一樹脂モールド層31の上面には、第二樹脂モールド層32を形成する。第二樹脂モールド層32には、拡散材を含有させる。これによって、LEDからの出射光、及びこの出射光を蛍光体36で波長変換させた蛍光とを、第二樹脂モールド層32で拡散して均一な光を得ることができる。このような第二モールド樹脂には、シリコーン樹脂等が好適に利用できる。また拡散材としては、フィラーが利用できる。実施例1においては、第二モールド樹脂としてジメチルシリコーン樹脂を使用し、この樹脂中にフィラーとしてTiO
2の粉体を混入させている。
【0038】
このように、第一樹脂モールド層31の一部を、半導体発光素子10の出射光の波長を変換する波長変換層34として機能させ、一方第二樹脂モールド層32を、半導体発光素子10の出射光と波長変換光とを拡散させて均一に混色させる拡散層として機能させている。このように、樹脂モールド層30を二層に分けて、各層に波長変換機能と拡散機能とをそれぞれ振り分けることで、効率よく各層で個別の機能を各々発揮させて、均一な発光を得ることが可能となる。
【0039】
ここで、第一樹脂モールド層31は、その上面が、第一枠21の頂部とほぼ同一平面となるように形成することが好ましい。これは、
図4A、
図4Bに示すように、第一枠21の形成後に、第一樹脂モールド層31を形成すると共に、第一モールド樹脂を第一枠21に充填する際には、第一モールド樹脂が第一枠21の頂部とほぼ同一面となるように充填することで実現される。すなわち従来の方法において、枠体20にモールド樹脂を二段階に充填しようとすれば、
図14に示すように、第一モールド樹脂は枠体20の高さの中間で注入を止める必要があった。この結果、表面張力によって、枠体20の近傍で第一モールド樹脂が這い上がってしまう状態が生じていた。このような第一モールド樹脂が硬化した後に第二モールド樹脂を充填すると、
図15に示すように、必然的に枠体20の近傍で第一樹脂モールド層31が厚くなる分、相対的に第二樹脂モールド層32が相当薄くなってしまい、結果として第二樹脂モールド層32による光の拡散効果が弱められ、特に樹脂モールド層の周囲の部分で出力光の色むらがリング状に生じていた。
【0040】
そこで実施例1に係る発光装置100においては、枠体20を二段階で積層することによって、このような表面張力の影響を低減して、第一モールド樹脂の這い上がりを回避している。すなわち、先ず
図4Aに示すように、第一樹脂モールド層31の厚さに対応した高さの第一枠21を形成する。これにより、
図4Bに示すように第一樹脂モールド層31を封止領域SAに充填する際、第一樹脂モールド層31を第一枠21の上端まで充填できることから、第一枠21の近傍も含めて封止領域SAの全域に亘り、ほぼ均一な厚さに形成できる。そして、
図4Cに示すように、第一樹脂モールド層31の硬化後に第二枠22を形成することで、所望の高さの枠体20を得ると共に、
図4Dに示すように第二樹脂モールド層32を形成できるようになり、複数の樹脂モールド層の膜厚を均一にして色むらを抑制できる。
【0041】
このようにして、枠体20の近傍においても第一樹脂モールド層31と第二樹脂モールド層32の厚さをほぼ一定に維持でき、従来色むらが生じ易かった枠体20近傍の発光色の色むらを抑制できる。
【0042】
ただし本明細書において頂部とは、枠体の最も高い位置という意味でなく、枠体で画定された封止領域にモールド樹脂を充填した際に、モールド樹脂の液面の高さとほぼ一致させることで、這い上がりが実質的に生じないようにした部位を指す。言い換えると、モールド樹脂を充填する領域を画定する部位の高さを指し、このようなモールド樹脂の充填とは無関係な位置、例えば枠体の外面の、封止領域から離れた位置で上方に突出させたような態様も本願発明に含むものとする。
【0043】
なお、第二樹脂モールド層32の上面は、
図2等の例では平面状としている。言い換えると、第二樹脂モールド層32の高さは、その端縁から中央領域に至るまで、第二枠22の頂部とほぼ同じ高さとなるように形成されている。ただ、本発明はこの構成に限定されるものでなく、例えば第二樹脂モールド層32の上面を、その中央領域の高さが第二枠22の頂部よりも高くなるように形成することもできる。このような例を変形例として
図7の断面図に示す。この発光装置100Dは、第二樹脂モールド層32Dの上面を、中央領域で凸状に突出するように湾曲させた形状としている。このようにすることで、出力光の空気との界面での全反射によるロスを軽減し、光束を向上できる。
(枠体20)
【0044】
次に枠体20について説明する。枠体20は、反射率を高めるため、白色系の樹脂で形成することが好ましい。また、基体50上に形成しやすいよう、断面視ドーム状に形成されている。特に、封止領域SAの内面側において、出力光を反射させて上向きに取り出せるように、上向きに開口面積を広くするように広げられた傾斜面を形成することが好ましい。
【0045】
また枠体20は、第一枠21と第二枠22で形成される。第一枠21は、半導体発光素子10の周囲を囲む封止領域SAを画定するため、基体50上に形成される。また第一枠21で画定された封止領域SAには、第一モールド樹脂が実装される。このように第一枠21は、第一モールド樹脂を充填する堰として利用される。このような第一枠21を構成する第一枠体用樹脂は、基体50との密着性に優れ、かつ第一枠体用樹脂との密着性にも優れた樹脂が利用される。このような第一枠体用樹脂には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が好適に利用できる。
(第二枠22)
【0046】
第二枠22は、第一枠21の上面に形成されて、第一モールド樹脂を硬化させた第一樹脂モールド層31の上面に第二モールド樹脂を充填させるための堰となる。このため第二枠22を形成する第二枠体用樹脂には、第一枠21との密着性に優れ、かつ第二モールド樹脂との密着性にも優れた樹脂が選択される。好ましくは、第一枠体用樹脂と同種の樹脂を用いる。ただし、第一枠体用樹脂よりも粘度を低下させることが好ましい(詳細は後述)。このような第二枠体用樹脂には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が好適に利用できる。また第二枠22は、第一枠21よりも平面視において太く形成され、
図4B、
図4C等に示すように第一枠21の上面及び外面の表出した領域を覆うように積層される。
【0047】
上述の通り第二枠22は、上面から外面にかけて積層するために、
図8に示す変形例に係る発光装置100Eのように第一枠21の上面にだけ積層するよりも、枠体20内の開口部分に適度な傾斜面を形成し易くできる。開口部分を傾斜させることで、半導体発光素子10からの出射光を傾斜面で反射させて外部に取り出しやすくなり、光の取り出し効率が向上する。
【0048】
また、第一枠21と第二枠22との界面は、連続的に形成することが好ましい。このようにすることで、第一枠21と第二枠22との界面における第一樹脂モールド層31と第二樹脂モールド層32の膜厚の変化を抑制して、高品質な出力光を得ることができる。
【0049】
この際、第二枠22の境界部分は、
図9の拡大断面図に示すように、第一枠21と第一モールド層との界面と連続させることが好ましい。すなわち、第二枠22の端面の位置x
2が、第一枠21の端面の位置x
1よりも、枠体20の外側に若干シフトさせるように形成することが好ましい。これによって、第二枠22の端面の位置x
2が第一樹脂モールド層31を覆うことを避け、光の損失を回避できる。また枠体20の内面側を傾斜させて、出力光をこの部分で光の取り出し方向に反射させやすくできる。
【0050】
さらにこの際、
図8に示すように第一枠21の上面のみに第二枠22を積層させ、言い換えると基体50と非接触とすると、第一枠21が幅狭となって第二枠22との接触面積が制限され、接合強度が弱くなる。そこで、
図2及び
図4C等に示すように第一枠21を第二枠22よりも幅広として、第一枠21の露出部分を第二枠22で被覆するように積層する。これにより、より広い面積で第二枠22を基体50上に固定でき、接着強度も向上されて信頼性も高まる。
【0051】
また、この際に第二枠22を構成する第二枠体用樹脂で、保護素子12を埋設することが好ましい。ここで、第二枠体用樹脂の粘度を、第一枠体用樹脂の粘度よりも低くすることで、保護素子12を確実に枠体20内に埋設して保護できる。いいかえると、第一枠体用樹脂の粘度を、第二枠体用樹脂の粘度よりも高め、第二枠22を構成する第二枠体用樹脂の粘度を相対的に柔らかくしたことで、第二枠体用樹脂で保護素子12の表面形状に第二枠体用樹脂を追従させやすくして、埋設の信頼性を高められる利点が得られる(詳細は後述)。
【0052】
なお、本発明は
図10の拡大断面図に示す変形例に係る発光装置のように、第二枠22で第一枠21のみならず、第一樹脂モールド層31の端縁を部分的に被膜する構成としてもよい。言い換えると、第二枠22の端縁の位置x
2を、第一枠21の開口端における第一樹脂モールド層31との境界部分の位置x
3よりも封止領域SAの内面側にシフトさせた構成とすることもできる。このようにすることで、第二枠22で第一樹脂モールド層31の端縁を被覆した領域の分だけ出力光の損失が発生するものの、枠体の幅を抑制してサイズを小型化でき、また封止領域SAの開口面積を若干小さくでき、2次光学系での集光のし易さを向上できる利点が得られる。
(樹脂の粘度)
【0053】
各枠体用樹脂の粘度は、樹脂を構成する材質の配合比を変化させることで、適切な値に調整できる。ここでは、第一枠体用樹脂及び第二枠体用樹脂共にジメチルシリコーンを用いており、粘度の高い樹脂と低い樹脂の配合比率を変化させて粘度を調整している。
【0054】
ここで、第一枠体用樹脂は、粘度を高くすることで、必要な高さに形成しつつも、幅狭とすることができる。枠体20は、発光に寄与しない領域となるため、装置の小型化の観点からは極力狭くすることが望ましいといえる。しかしながら、粘度の高い樹脂で保護素子を埋設しようとすると、流動性が低いことから保護素子の周囲の細かい隙間に樹脂を完全に充填させることが困難となる。例えば、
図11に示すように、基体750上に実装された保護素子12の上面に樹脂720を充填した際、保護素子12の周囲で、基体750と樹脂720との間に隙間GPが生じる可能性がある。このような隙間GPがあると、外気が進入しやすくなることがあり、外気に含まれる水分や腐食性ガスの進入による不良発生が懸念される。
【0055】
そこで、保護素子12を、第二枠体用樹脂で埋設することとし、かつこの第二枠体用樹脂の粘度を第一枠体用樹脂よりも低くすることで、保護素子12の周囲を確実に第二枠体用樹脂で被覆して、第二枠22に保護素子12を埋設する構成を実現できる。この構成であれば、第一枠21の粘度を高めて、第一枠21を幅狭に形成する一方、第二枠22で保護素子12を、隙間を少なくした状態で埋設できる。また、第一枠21を幅狭にすることで、第二枠22で第一枠21の露出部分を覆いやすくなり、また枠体20全体の幅も抑制できる効果も得られる。
【0056】
なお、本発明は
図2の構成に限定するものでなく、
図6や
図8に示す他の変形例に係る発光装置100C、100Eのような、第一枠21C、21Eの上面に第二枠22C、22Eを積層して枠体20C、20Eを構成することもできる。特に、枠体の幅を一層狭くして小型化を図る用途等においては、
図8や
図6の構成が好適に利用できる。
【0057】
また以上の例では枠体20を、
図1に示したように平面視において正方形状に形成しているが、本発明はこの構成に限定されるものでなく、例えば長方形状としたり、或いは矩形状に限らず、六角形や八角形等の多角形状としたり、隅部を面取りさせたり、あるいはトラック形状としたり、円形や楕円形等、任意の平曲面の形状とすることもできる。枠体の形状や求められる光量や配向パターン、必要な半導体発光素子10の数、配置パターン等に応じて設計できる。
図12に一例として、枠体20Fを円形状に形成した発光装置100Fの例を示す。このように円形状とすることで、上述した第二樹脂モールド層をレンズ状に変形させる構成も採りやすくなる。
【0058】
さらに以上の例では、基体50上に半導体発光素子10を実装した、いわゆるCOB(Chip On Board)型の発光装置の例を説明した。ただ本発明は上記構成に限らず、チップ型の発光装置等にも適用できる。
(発光装置100の製造方法)
【0059】
次に実施例1に係る発光装置100の製造方法を、
図4A〜
図4Dに基づいて説明する。まず、
図4Aに示すように、予め配線パターンが印刷等により形成された基体50上に、配線パターンを形成して半導体発光素子10や保護素子12を実装すると共に、この半導体発光素子10の周囲を取り囲むように第一枠体用樹脂で第一枠21を形成する。なお半導体発光素子10の実装と、第一枠21の形成は、いずれを先に行うこともできる。例えば半導体発光素子等の実装をリフロー等の高温環境下で行う場合は、先に半導体発光素子を実装した後に第一枠21を形成することで、第一枠体用樹脂が半導体発光素子の実装時に溶融、破損する事態を回避できる。
【0060】
次に第一枠21が硬化された状態で、
図4Bに示すように、第一枠21の内側の封止領域SAに、第一モールド樹脂を充填して第一樹脂モールド層31を形成する。この際、第一モールド樹脂を、第一枠21の高さとほぼ一致する高さまで充填する。これにより、表面張力の影響による第一モールド樹脂が第一枠21の内面を這い上がることによる問題を避け、もって第一樹脂モールド層31の厚さと、この上に後ほど形成される第二樹脂モールド層32の厚さを均一にでき、色むらの発生を回避できる。なお、第一モールド樹脂には、波長変換部材を混入させている。第一モールド樹脂が充填されると、内部に混入された波長変換部材は自重により沈降して、波長変換層34と透光性樹脂層35とが第一樹脂モールド層31に形成される。
【0061】
さらに第一モールド樹脂を硬化させて第一樹脂モールド層31を形成させた後、
図4Cに示すように第二枠22を形成する。第二枠22は、第一枠21の上面から外面にかけて基体50上で露出された領域を覆うと共に、第二枠22の内面の下端が、第一枠21の内面の下端と基体50との境界の位置よりも、枠体20の外側となるように積層させる。これにより、第二モールド樹脂を、第一樹脂モールド層31の上面に、第一枠21と第二枠22の界面においてもほぼ連続的に積層させることができ、また第二モールド樹脂で構成する第二樹脂モールド層32の厚さが全面に亘ってほぼ均一となるようにできる。また、第二枠22で第一枠21を覆う際に、併せて保護素子12を第二枠22に埋設させてこれを保護する。
【0062】
最後に、第二枠体用樹脂を硬化させた状態で、第二枠22の内部の封止領域SAに、第二モールド樹脂を充填して第二樹脂モールド層32を形成する。第二モールド樹脂は、第二枠22の高さとほぼ等しい高さまで充填することで、同じく表面張力を回避した均一な膜厚が実現される。また第二モールド樹脂には拡散材が混入されており、第一樹脂モールド層31から出射させる半導体発光素子10の出射光と、波長変換部材で波長変換された波長変換光とを拡散材で乱反射させて拡散させ、均一に混色させた状態で、封止領域SAから面状に発光させる。この状態でモールド樹脂を硬化させて第二樹脂モールド層32を形成させると、半導体発光素子10が封止領域SAで封止された発光装置100が得られる。また、第一樹脂モールド層31と第二樹脂モールド層32の厚さを全面に亘ってほぼ均一として、特に枠体20の近傍における出力光の色むらを抑制した高品質な発光を得ることが可能となる。
【0063】
以上のように、本実施例によれば、封止樹脂を、蛍光体36等の波長変換部材を配合して波長変換を行う第一樹脂モールド層と、拡散材を配合して発光むらを軽減するための第二樹脂モールド層に分離することにより、より高光質な発光装置を得ることができる。
【0064】
LEDを用いた発光装置には、
図14の断面図に示すような、パッケージ950内にLED素子910を実装した構成が採用できる。このような構成において、モールド樹脂930を二層とするには、最初に蛍光体36を含む第一樹脂モールド層931をモールドする。これにより、第一樹脂モールド層931内で、LED素子910から出射される光、及びこの出射光を励起光として、蛍光体36で波長変換させた蛍光とを生成できる。次にこの第一樹脂モールド層931の上面に、拡散材を含有させた第二樹脂モールド層932を充填する。これによって、LED素子910からの出射光、及びこの出射光を蛍光体36で波長変換させた蛍光とを、第二樹脂モールド層932で拡散して、均一な光を得ることができる。
【0065】
しかしながら、このようなモールド樹脂930を二段階に形成する構成においては、特に枠体920の近傍で色むらが生じるという問題があった。すなわち、
図14において破線で示す領域を拡大した
図15の拡大断面図に示すように、第一樹脂モールド層931を構成するモールド樹脂が、表面張力によって樹脂製枠体920の近傍CPで這い上がる状態となる。この上に第二樹脂モールド層932をモールドすると、必然的に枠体920の部分で第一樹脂モールド層931が厚く、第二樹脂モールド層932が薄い状態となる。すなわち、封止領域SAの中央部分における第一樹脂モールド層931の厚さd
1と第二樹脂モールド層932の厚さd
2との比率R(=d
1/d
2)が、封止領域SA周辺における第一樹脂モールド層931の厚さd
1’と第二樹脂モールド層932の厚さd
2’の比率R’が変化する。この結果、封止領域SAの中央部分から発される光と、端縁部分から発される光とで色むらが生じていた。
【0066】
これに対して本実施例に係る発光装置では、上述の通り蛍光体36等の波長変換部材を配合して波長変換を行う第一樹脂モールド層形成後に、第二枠を形成し、拡散材を配合して発光むらを軽減するための第二樹脂モールド層を形成することによって、より高光質な発光装置を得ることができる。
【0067】
また、樹脂成形パッケージや積層セラミックパッケージ等で封止材を2段で設ける場合、上述した表面張力を避けるためにも、1段目と2段目の端部の位置は構造上、一定距離以上離間しなければならない。この場合、1段目のみで封止した場合に比べて発光径が拡大するため、発光素子から放たれた光が分散し、光度低下に起因する。
【0068】
これに対し本実施例では、第一枠および、第一モールド樹脂の硬化後に第二枠を形成するため、1段目と2段目の枠の端部を合わせることも可能となって、発光部サイズを拡大することなく封止材を2層分離で形成することが可能となる。
【0069】
また、蛍光体等の波長変換部材は、必ずしも第一樹脂モールド層にのみ配置する構成に限られない。例えば第一樹脂モールド層として、白色フィラーを配合した第一モールド樹脂の封止材で封止し、第二樹脂モールド層に、例えばYAG等の蛍光体を配合した第二モールド樹脂の封止材を用いることで、高輝度の白色光源を得ることができる。この構成は、発光装置の正面光を主に使用する灯具に対して特に有効となり得る。
(実施例2)
【0070】
また、以上の例では二層構造とした例を説明したが、本発明は二層に限定するものでなく、三層以上の多層構造を採用することもできる。このような例を実施例2に係る発光装置200として
図13に示す。この図に示す発光装置200の例では、基体250上に形成された樹脂モールド層230を、第一樹脂モールド層231、第二樹脂モールド層232、第三樹脂モールド層233の三層構造とした例を示している。すなわち枠体220は、第一枠221と第二枠222に加え、第三枠223で構成されている。また、各モールド樹脂をモールドする前には、枠体220をそれぞれのモールド樹脂の充填位置まで嵩上げするように予め積層することで、各樹脂モールド層の形成時には枠体220の上端とほぼ同じ高さまでモールド樹脂を充填させることができ、表面張力によるモールド樹脂の枠体220内面での這い上がりを各樹脂モールド層で抑制でき、高品質な発光装置が得られる。このような多層構造の例としては、例えば蛍光体層を多層構造とする構成に好適に適用できる。すなわち、蛍光体を同一の層内に渾然一体に混入させるのでなく、層毎に分離して積層させることで、蛍光体の吸収スペクトルや反射スペクトル特性を利用した励起効率の改善等が期待できる
。
【0071】
さらに、樹脂モールド層間の屈折率差を軽減させることもできる。例えば、半導体発光素子をフリップチップ実装した際には、半導体発光素子の製造時に半導体層を成長させる成長基板(例えばサファイア基板)を通じて出射光が出力されることとなるが、このサファイア基板と、発光装置外、すなわち周囲の大気とは、屈折率差がある。屈折率の異なる媒体を光が通過する際には、界面で全反射が生じるため、発光装置から取り出される光の効率を低下させることとなる。そこで、サファイア基板から、樹脂モールド層を通じて発光装置外(大気)まで、光が通過する経路の屈折率差を、樹脂モールド層で段階的に変化させることで、各界面での全反射を抑制して光取り出し効率の向上が期待できる。例えばサファイア基板の屈折率1.75から、大気の屈折率1までの間、三層の樹脂モールド層によって、1.6→1.5→1.4のように徐々に屈折率を低下させることで、各界面における全反射を抑制して、最終的に発光装置から取り出すことのできる光量を高める効果が期待できる。
【0072】
さらに、出力光の内、特定の波長成分をカット、或いは通過させるバンドエリミネイト、バンドバスフィルタとしての波長域遮断/透過層を、樹脂モールド層に含めることもできる。例えば、肌の色を綺麗に見せるために特定波長の光をカットする照明光源として発光装置を利用する用途において、樹脂モールド層にこのような波長域遮断機能を備えさせたり、あるいはこのような層を追加させることもできる。
【0073】
このように樹脂モールド層を二層に限らず、様々な機能を備えた多層構造とする場合において、各層の端縁においてもそれぞれ均一な膜厚に形成するために、本発明は有効に利用できる。加えて、上述の通り多層構造とした樹脂モールド層においても、上面を平坦面とするのみならず、凸状、凹状等に変形させることもできる。