(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理水に無機凝集剤を0.5〜50mg/L添加して凝集処理した後、凝集処理水に、下記重合体A及び/又は下記重合体Bであるスルホ基を有する重合体を含む分散剤を、該無機凝集剤の添加量に対して1/50〜1/2(重量倍)添加して精密濾過膜又は限外濾過膜で膜分離処理することを特徴とする膜分離方法。
重合体A:スチレンスルホン酸の単独重合体であるポリスチレンスルホン酸、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AA)とを、10〜30:70〜90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
AMPSとAAとN−ビニルホルムアミドとを、5〜30:40〜90:5〜30(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)とAAとを、10〜30:70〜90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
HAPSとAAとヒドロキシエチルアクリル酸とを、10〜30:55〜85:5〜15(モル%)の割合で共重合体させてなる共重合体、
より選ばれる重量平均分子量1,000〜1,000,000の重合体
重合体B:(メタ)アクリル酸及びこれらの水溶性塩よりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和スルホン酸単量体から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミドよりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上との共重合体である、重量平均分子量1,000〜25,000の重合体
被処理水に無機凝集剤を0.5〜50mg/L添加して凝集処理する凝集処理手段と、凝集処理水に、下記重合体A及び/又は下記重合体Bであるスルホ基を有する重合体を含む分散剤を、該無機凝集剤の添加量に対して1/50〜1/2(重量倍)添加する分散剤添加手段と、分散剤が添加された水を精密濾過膜又は限外濾過膜で膜分離処理する膜分離処理手段とを有することを特徴とする膜分離装置。
重合体A:スチレンスルホン酸の単独重合体であるポリスチレンスルホン酸、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AA)とを、10〜30:70〜90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
AMPSとAAとN−ビニルホルムアミドとを、5〜30:40〜90:5〜30(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)とAAとを、10〜30:70〜90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
HAPSとAAとヒドロキシエチルアクリル酸とを、10〜30:55〜85:5〜15(モル%)の割合で共重合体させてなる共重合体、
より選ばれる重量平均分子量1,000〜1,000,000の重合体
重合体B:(メタ)アクリル酸及びこれらの水溶性塩よりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和スルホン酸単量体から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミドよりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上との共重合体である、重量平均分子量1,000〜25,000の重合体
【背景技術】
【0002】
用水処理や排水処理において、処理対象となる被処理水(原水)には、有機物や濁質が含まれているため、通常、これらを低減するために、アルミニウム(Al)系や鉄(Fe)系の無機凝集剤を用いた凝集処理を行った後、形成された凝集フロックを精密濾過膜(MF膜)や限外濾過膜(UF膜)で除去することが行われている。例えば、特許文献1には、工業用水を逆浸透膜(RO膜)分離処理して水回収するに当たり、RO膜分離処理の前処理として、無機凝集剤による凝集処理とUF膜による膜分離処理を行うことが記載されている。
【0003】
また、冷却ブロー排水をRO膜分離処理して水回収する場合においても、冷却ブロー排水中には、冷却塔の安定運転のために添加された防食剤や無機系のスケール分散剤等が含まれており、これらがRO膜の汚染原因となることから、RO膜の膜汚染を防止するために、Al系やFe系の無機凝集剤による凝集処理を行った後、膜分離処理して冷却ブロー排水中の有機物や濁質を除去することが行われている。
【0004】
なお、本発明で分散剤として用いるスルホ基を有する重合体については、特許文献2に、RO膜給水中にFeが1000μg/L以下とごく微量しか含有されていない条件下でのRO膜フラックスの低下を抑制するために、RO膜給水に添加することが記載されている。
また、特許文献3には、冷却水系のスケール防止剤として、マレイン酸及び/又はマレイン酸の水溶性塩の重合体と共に併用される重合体として記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機凝集剤の添加による凝集処理は、濁質成分や水溶性有機物の除去に有効ではあるが、従来の無機凝集剤による凝集処理とMF膜又はUF膜などの除濁膜による膜分離処理では、次のような問題があった。
(1) 無機凝集剤の成分である溶解性のAlやFeなどが、MF膜やUF膜などの除濁膜を汚染してフラックスの低下の原因となる。
(2) 処理水を更にRO膜分離処理する場合にも無機凝集剤の成分である溶解性のAlやFeなどがRO膜を汚染してフラックス低下の原因となる。
(3) 排水処理では、排水中に高分子有機物等の凝集阻害物質が含まれているため、無機凝集剤の添加量制御が難しく、添加量の最適化を図っても膜汚染を阻止し得ない。
(4) 冷却ブロー排水の処理においては、冷却ブロー排水中にはスケール防止剤や防食剤などの凝集阻害物質が含まれているため、大量の無機凝集剤が必要となる結果、膜汚染物質となるAlやFe量も増加し、より一層膜汚染が加速される。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、河川水、湖水、工業用水、冷却ブロー排水等の各種排水を凝集処理した後、MF膜又はUF膜で膜分離処理するに当たり、膜汚染を防止して効率的な処理を行うことができる膜分離方法及び膜分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、無機凝集剤による凝集処理水にスルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加することにより、スルホ基を有する重合体が無機凝集剤由来のAlやFeと反応し、AlやFeと結合した濁質や有機物も含めてこれらを効果的に分散させて、膜汚染を防止することができることを見出した。
【0009】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0010】
[1] 被処理水に無機凝集剤を0.5〜50mg/L添加して凝集処理した後、凝集処理水に、下記重合体A及び/又は下記重合体Bであるスルホ基を有する重合体を含む分散剤を、該無機凝集剤の添加量に対して1/50〜1/2(重量倍)添加して精密濾過膜又は限外濾過膜で膜分離処理することを特徴とする膜分離方法。
重合体A:スチレンスルホン酸の単独重合体であるポリスチレンスルホン酸、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AA)とを、10〜30:70〜
90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
AMPSとAAとN−ビニルホルムアミドとを、5〜30:40〜90:5〜30(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)とAAとを、10〜30:70〜
90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
HAPSとAAとヒドロキシエチルアクリル酸とを、10〜30:55〜85:5〜15(モル%)の割合で共重合体させてなる共重合体、
より選ばれる重量平均分子量1,000〜1,000,000の重合体
重合体B:(メタ)アクリル酸及びこれらの水溶性塩よりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和スルホン酸単量体から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミドよりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上との共重合体である、重量平均分子量1,000〜25,000の重合体
【0011】
[2] [1]において、被処理水をpH5〜6に調整した後前記膜分離処理を行うことを特徴とする膜分離方法。
【0013】
[3] 被処理水に無機凝集剤を0.5〜50mg/L添加して凝集処理する凝集処理手段と、凝集処理水に、下記重合体A及び/又は下記重合体Bであるスルホ基を有する重合体を含む分散剤を、該無機凝集剤の添加量に対して1/50〜1/2(重量倍)添加する分散剤添加手段と、分散剤が添加された水を精密濾過膜又は限外濾過膜で膜分離処理する膜分離処理手段とを有することを特徴とする膜分離装置。
重合体A:スチレンスルホン酸の単独重合体であるポリスチレンスルホン酸、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AA)とを、10〜30:70〜
90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
AMPSとAAとN−ビニルホルムアミドとを、5〜30:40〜90:5〜30(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)とAAとを、10〜30:70〜
90(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
HAPSとAAとヒドロキシエチルアクリル酸とを、10〜30:55〜85:5〜15(モル%)の割合で共重合体させてなる共重合体、
より選ばれる重量平均分子量1,000〜1,000,000の重合体
重合体B:(メタ)アクリル酸及びこれらの水溶性塩よりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和スルホン酸単量体から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上と、(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミドよりなる群から選ばれる単量体成分の1種又は2種以上との共重合体である、重量平均分子量1,000〜25,000の重合体
【0014】
[
4] [
3]において、前記膜分離処理手段の前段に被処理水をpH5〜6に調整するpH調整手段を有することを特徴とする膜分離装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無機凝集剤による凝集処理水にスルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加することにより、スルホ基を有する重合体が膜汚染物質である無機凝集剤由来の溶解性のAlやFeと反応し、AlやFeと結合した濁質や有機物も含めてこれらを効果的に分散させることができる。この結果、凝集処理水の除濁処理に用いるMF膜又はUF膜の膜汚染を防止して、膜フラックスの低下を抑制し、長期に亘り安定かつ効率的に処理を継続することができる。
【0017】
また、本発明によれば、スルホ基を有する重合体を含む分散剤を用いることで、粗大な凝集フロックを形成しなくても、スルホ基を有する重合体による分散効果で、有機物や濁質などを吸着した無機凝集剤由来のAlやFeの微小フロックを効果的に分散させて膜汚染を防止した上で効率的な膜分離処理を行えるため、無機凝集剤の必要量を低減することができる。
【0018】
更に、MF膜又はUF膜の膜分離処理水をRO膜分離処理する場合においては、後段のRO膜の膜汚染をも防止して、RO膜フラックスの低下を抑制することができ、装置全体の運転を安定化させると共に、膜の薬品洗浄頻度を低減して、処理コストの低減、処理水量の増大を図ることができる。
また、このように、除濁用のMF膜又はUF膜、更には後段のRO膜の膜フラックスを高く維持することができることから、除濁膜やRO膜の単位処理水量を高く設定することができ、膜の必要本数を低減してコストの低減と装置の小型化を図ることも可能となる。
【0019】
本発明におけるスルホ基を有する重合体を含む分散剤による分散効果は、pH5〜6のpH条件で特に有効に発揮されるため、本発明では、必要に応じてpH調整剤を添加して被処理水のpHを5〜6に調整することが好ましい。
【0020】
本発明は、既存の設備に対して、分散剤の添加手段、更には必要に応じてpH調整剤の添加手段を付加するのみで実施することができ、工業的に極めて有利である。
【0021】
なお、被処理水が冷却ブロー排水である場合、冷却ブロー排水を本発明により処理して得られた処理水にはスルホ基を有する重合体が含まれる結果、この処理水を冷却水系に返送して冷却水として再利用する場合、スルホ基を有する重合体による分散効果でスケール防止効果を高めることができ、この結果、冷却水系の濃縮倍率を高め、水使用量を低減することができるという効果も奏される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明の膜分離方法は、被処理水に無機凝集剤を添加して凝集処理した後、凝集処理水にスルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加してMF膜又はUF膜で膜分離処理することを特徴とする。
また、本発明の膜分離装置は、被処理水に無機凝集剤を添加して凝集処理する凝集処理手段と、凝集処理水にスルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加する分散剤添加手段と、分散剤が添加された水をMF膜又はUF膜で膜分離処理する膜分離処理手段とを有することを特徴とするものであり、例えば、
図1に示す如く、被処理水にpH調整剤、無機凝集剤、及びスルホ基を有する重合体を含む分散剤を順次添加した後、MF膜又はUF膜分離装置1で除濁処理し、必要に応じて、更にRO膜分離装置2で高度処理を行うものである。
【0025】
[被処理水]
本発明で処理対象とする被処理水としては、河川水、湖水、工業用水、冷却ブロー排水等の各種排水が挙げられる。
本発明では、特に、これらの被処理水を、本発明に従って凝集処理及びMF膜又はUF膜により膜分離処理し、必要に応じて更にRO膜分離処理して得られた処理水を回収して利用する水回収技術として有用である。
【0026】
[pH調整]
本発明で用いるスルホ基を有する重合体による分散効果は、特にpH5〜6の範囲において向上することから、本発明においては、被処理水のpHを5〜6の範囲、特に5.3〜5.7の範囲に調整することが好ましい。
【0027】
このpH調整は、MF膜又はUF膜による膜分離処理の前段であればよく、特に制限はないが、スルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加する前であることが好ましく、無機凝集剤を添加する前であることがより好ましい。
即ち、本発明の処理は、特に被処理水をpH5〜6、好ましくはpH5.3〜5.7にpH調整した後無機凝集剤を添加して凝集処理し、次いでスルホ基を有する重合体を含む分散剤を添加した後、MF膜又はUF膜分離処理することにより行うことが好ましい。
【0028】
pH調整に用いるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリや、塩酸、硫酸等の酸を適宜用いることができる。
【0029】
[無機凝集剤]
被処理水に添加する無機凝集剤としては、塩化アルミニウム(AlCl
3)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸バンド(Al
2(SO
4)
3)、その他、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)を塩酸(HCl)又は硫酸(H
2SO
4)で溶解したものなどのアルミニウム塩や、塩化第二鉄(FeCl
3)、硫酸第二鉄(Fe
2(SO
4)
3)、硫酸第一鉄(FeSO
4)等の鉄塩等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
被処理水への無機凝集剤の添加量(Al
2O
3又はFeとして)は、被処理水の種類、性状によっても異なるが、通常0.5〜50mg/L程度とすることが好ましい。無機凝集剤の添加量が少な過ぎると凝集不良となり好ましくない。無機凝集剤の添加量が過度に多いと、添加した無機凝集剤が膜汚染を高める結果ともなり、また、凝集性も逆に悪化し、アルミニウム等に由来する金属イオンリーク量が多くなる上に、薬剤コストも高くつき好ましくない。
【0031】
本発明において、無機凝集剤添加による凝集処理は、無機凝集剤を被処理水の送水配管に注入する処理であってもよく、凝集処理槽を設けて、所定時間攪拌下に凝集処理を行うものであってもよい。
【0032】
なお、被処理水が工業用水である場合、既に無機凝集剤が添加されている場合があり、この場合には無機凝集剤の添加が不要であるか、或いは、無機凝集剤の添加量が上記範囲よりも少なくて足りる場合もある。即ち、この場合、既に添加されている無機凝集剤が本発明で添加される無機凝集剤に該当する。
【0033】
[スルホ基を有する重合体]
本発明において、凝集処理水に添加する分散剤の有効成分であるスルホ基(−SO
3H)を有する重合体としては、スルホ基を有する単量体の単独重合体或いは、スルホ基を有する単量体とスルホ基を有しない単量体との共重合体を挙げることができる(以下、これらを「重合体A」と称す場合がある。)。
重合体Aを構成するスルホ基を有する単量体としては、例えば、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸などの共役ジエンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−メタアリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホ基を有する不飽和(メタ)アリルエーテル系単量体や(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、又はこれらの塩類などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一方、スルホ基を有しない単量体としては、例えば、イソブチレン、アミレン、アクリルアミド、N−ビニルホルムアルデヒドなどの非イオン性単量体や、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アトロパ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリル酸又はこれらの塩などのカルボキシル基を有する単量体を挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
重合体Aとしては、
スチレンスルホン酸の単独重合体であるポリスチレンスルホン酸、
アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸(AA)とを、10〜30:70〜99(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
AMPSとAAとN−ビニルホルムアミドとを、5〜30:40〜90:5〜30(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)とAAとを、10〜30:70〜99(モル%)の割合で共重合させてなる共重合体、
HAPSとAAとヒドロキシエチルアクリル酸とを、10〜30:55〜85:5〜15(モル%)の割合で共重合体させてなる共重合体、
が特に好適である。
【0035】
重合体Aの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,00〜100,000であることがより好ましい。重合体Aの重量平均分子量が1,000未満であると、分散効果が不十分になるおそれがある。重合体Aの重量平均分子量が1,000,000を超えると、重合体Aの水溶液の粘度が高くなって、取り扱い性が低下したり、重合体A自体が膜面に吸着し、膜汚染の原因となるおそれがある。
なお、本発明における「重量平均分子量」は、ポリアクリル酸ナトリウムを標準物質として用い、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定した値である。
【0036】
また、スルホ基を有する重合体としては、(メタ)アクリル酸及びこれらの水溶性塩よりなる群から選ばれる単量体成分(以下「単量体成分b1」と称す場合がある。)の1種又は2種以上と、モノエチレン性不飽和スルホン酸単量体から選ばれる単量体成分(以下「単量体成分b2」と称す場合がある。)の1種又は2種以上と、(メタ)アクリルアミド及び置換(メタ)アクリルアミドよりなる群から選ばれる単量体成分(以下「単量体成分b3」と称す場合がある。)の1種又は2種以上との共重合体(以下、「重合体B」と称す場合がある。)も好適に用いることができる。
なお、ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル」と「メタクリル」の一方又は双方を意味する。
【0037】
単量体成分b1の(メタ)アクリル酸の水溶性塩としては、(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
単量体成分b2のモノエチレン性不飽和スルホン酸単量体としては、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸が好ましく、特に下記一般式(1)で表されるものが好ましく、とりわけ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。
【0040】
(式中、R
1はH又はCH
3であり、R
2は炭素数1〜8のアルキレン基又はフェニレン基であり、R
3はH又は炭素数1〜4のアルキル基であり、X
1は水素又は1価の金属陽イオン(例えば、Na,K等)である。)
【0041】
単量体成分b3の置換(メタ)アクリルアミドとしては、下記一般式(2)で表されるものが好ましく、特にN−tert−ブチルアクリルアミドが好ましい。
【0043】
(式中、R
4はH又はCOOX
2(X
2はH又は1価の金属陽イオン(例えば、Na,K等)を表す。)を表し、R
5は、H又はCH
3を表し、R
6,R
7は各々独立にH又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。ただし、R
6,R
7が同時にHであることはない。)
【0044】
重合体B中の各単量体成分の含有割合は、モル%で単量体成分b1:単量体成分b2:単量体成分b3=30〜92:5〜40:3〜30、特に、単量体成分b1:単量体成分b2:単量体成分b3=50〜90:7〜20:3〜30であることが好ましい。
【0045】
また、重合体Bの分子量としては、1,000〜25,000、特に2,000〜20,000の範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明において、スルホ基を有する重合体としては、重合体Aの1種又は2種以上を用いてもよく、重合体Bの1種又は2種以上を用いてもよく、また、重合体Aの1種又は2種以上と重合体Bの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
凝集処理水へのスルホ基を有する重合体を含む分散剤の添加量は、少な過ぎると、この分散剤の分散効果による膜汚染防止効果を十分に得ることができず、多過ぎるとUF膜やMF膜の膜濾過性が悪くなる。従って、スルホ基を有する重合体を含む分散剤は、スルホ基を有する重合体の添加量として、凝集処理水に対して、0.01〜100mg/L、特に0.1〜10mg/Lの範囲となるように添加することが好ましい。また、スルホ基を有する重合体は、前述の無機凝集剤の添加量に対して1/50〜1/2(重量倍)程度の添加量とすることが好ましい。
【0048】
なお、無機凝集剤添加からスルホ基を有する重合体を含む分散剤の添加までの時間間隔については特に制限はないが、無機凝集剤添加後、30秒以上の凝集処理時間を確保できるように添加することが、凝集処理後のフロックに対して分散効果を有効に作用させる上で好ましい。この分散剤の添加についてもライン注入であってもよく、分散処理槽を設けてもよい。
【0049】
[MF膜又はUF膜]
本発明において、スルホ基を有する重合体を含む分散剤が添加された水を処理するMF膜又はUF膜としては、除濁処理用のMF膜又はUF膜として一般的に用いられているものを用いることができ、MF膜であれば孔径0.01〜0.2μm程度のものが好適であり、UF膜であれば、分画分子量5,000〜250,000、特に10,000〜100,000程度のものが好適である。
【0050】
[後処理]
本発明において、MF膜又はUF膜で膜分離処理して得られた処理水は、各種用途に再利用することができるが、この水を更にRO膜分離処理して高純度化してもよく、この場合においては、RO膜の膜汚染をも防止して、安定運転を行える。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0052】
なお、以下において、無機凝集剤としてはPAC(ポリ塩化アルミニウム)を用い、スルホ基を有する重合体としては以下の重合体Bを用いた。
【0053】
<重合体B>
アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とN−tert−ブチルアクリルアミドとの共重合体
アクリル酸:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:N−tert−ブチルアクリルアミド(モル比)=77:12:11
分子量=10,000
【0054】
また、処理した原水は、pH調整6.5の工業用水であり、そのpH調整には塩酸(HCl)を用いた。
除濁膜としては、旭化成ケミカルズ社製MF膜(PVDF、公称孔径0.1μm)を用いた。
【0055】
[実施例1]
原水にHClを添加してpH5.5にpH調整した後、PACを3mg/L(Al
2O
3として)添加して凝集処理し、次いで凝集処理水に重合体Bを0.5mg/L添加した後(PACの添加から1分後)、MF膜分離装置で膜フラックス2m
3/m
2/dayで膜分離処理する運転を行った。この運転を14日間継続し、運転開始初期の膜差圧と14日後の膜差圧から、差圧上昇速度とMF膜処理水中のAl濃度を求め、結果を表1に示した。
【0056】
[比較例1]
実施例1において、HClによるpH調整と、重合体Bの添加を行わなかったこと以外は同様に運転を行ったときの結果を表1に示した。
【0057】
[比較例2]
実施例1において、重合体Bの添加を行わなかったこと以外は同様に運転を行ったときの結果を表1に示した。
【0058】
[比較例3]
実施例1において、重合体Bに替えて、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸を0.85mg/L添加したこと以外は同様に運転を行ったときの結果を表1に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
以上の実施例1と比較例1,2及び3の結果より、本発明によれば、無機凝集剤による凝集処理水にスルホ基を有する重合体を添加することにより、除濁膜の膜汚染を防止して、安定運転を継続することができることが分かる。