(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1,3−ペンタジエン40〜60重量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン20〜35重量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン5〜30重量%、脂環式ジオレフィン0〜1重量%およびその他の単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を付加重合してなり、重量平均分子量(Mw)が2000〜5000であり、Z平均分子量(Mz)が3500〜10500であり、50重量%トルエン溶液のガードナー色数が2以下である炭化水素樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の炭化水素樹脂は、1,3−ペンタジエン40〜60重量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン20〜35重量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン5〜30重量%、脂環式ジオレフィン0〜1重量%およびその他の単量体0〜30重量%からなる単量体混合物を付加重合してなるものである。
【0013】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物では、1,3−ペンタジエン(ピペリレン)が、単量体混合物(付加重合性成分)全体に対する割合として、40〜60重量%含有される必要があり、42〜59重量%含有されることが好ましく、44〜58重量%含有されることがより好ましい。単量体混合物中の1,3−ペンタジエンが少なすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が耐熱劣化性に劣るものとなり、1,3−ペンタジエンが多すぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。なお、1,3−ペンタジエンにおけるシス/トランス異性体比は任意の比でよく、特に限定されない。
【0014】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物に含まれる炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を1つと非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4〜6の炭化水素化合物であり、その具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンを挙げることができる。本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物では、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンが、単量体混合物(付加重合性成分)全体に対する割合として、20〜35重量%含有される必要があり、22〜34重量%含有されることが好ましく、24〜32重量%含有されることがより好ましい。単量体混合物中の炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンが少なすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなり、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンが多すぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、耐熱劣化性に劣るものとなる。なお、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれることが好ましく、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50重量%以上であることがより好ましい。
【0015】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物に含まれる炭素数4〜8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4〜8の鎖状炭化水素化合物であり、その具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などのブテン類、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンなどのペンテン類、1−ヘキセン、2−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテンなどのヘキセン類、1−ヘプテン、2−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセンなどのヘプテン類、1−オクテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチルペンテン−1および2,4,4−トリメチルペンテン−1)などのオクテン類を挙げることができる。本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物では、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンが、単量体混合物(付加重合性成分)全体に対する割合として、5〜30重量%含有される必要があり、7〜28重量%含有されることが好ましく、10〜25重量%含有されることがより好ましい。単量体混合物中の炭素数4〜8の非環式モノオレフィンが少なすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなり、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンが多すぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、耐熱劣化性に劣るものとなる。なお、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくとも2−メチル−2−ブテン、イソブチレンおよびジイソブチレンからなる群から選択される少なくとも一種が含まれることが好ましく、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン中に2−メチル−2−ブテン、イソブチレンおよびジイソブチレンの合計量が占める割合が50重量%以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物は、脂環式ジオレフィンを含むことができる。脂環式ジオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を2つ以上と非芳香族性の環構造とを有する炭化水素化合物であり、その具体例としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンの多量体を挙げることができる。但し、単量体混合物中の脂環式ジオレフィンの割合は特定割合以下である必要があり、具体的には、本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物(付加重合性成分)全体における脂環式ジオレフィンの割合は、0〜1重量%であることが必要であり、0〜0.8重量%であることが好ましく、0〜0.5重量%であることがより好ましい。単量体混合物中の脂環式ジオレフィンが多すぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。
【0017】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物は、1,3−ペンタジエン、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンおよび脂環式ジオレフィン以外のその他の単量体を含んでいてもよい。このその他の単量体は、前述した単量体以外で1,3−ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、クマロンなどの芳香族ビニル化合物、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエンなどの1,3−ペンタジエン以外の非環式ポリエン、シクロヘプテンなどの炭素数7以上の脂環式モノオレフィン、エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数4〜8以外の非環式モノオレフィンなどが包含される。但し、単量体混合物中のその他の単量体の割合は特定割合以下である必要があり、具体的には、本発明の炭化水素樹脂を得るために用いられる単量体混合物(付加重合性成分)全体におけるその他の単量体の割合は、0〜30重量%であることが必要であり、0〜25重量%であることが好ましく、0〜20重量%であることがより好ましい。単量体混合物中のその他の単量体が多すぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低いものとなる。
【0018】
本発明の炭化水素樹脂を得るために用いる単量体混合物の調製方法は特に限定されず、それぞれ純粋な化合物を混合して目的の単量体混合物を得てもよいし、例えばナフサ分解物の留分などに由来する、目的の単量体を含む混合物を用いて、目的の単量体混合物を得てもよい。例えば、単量体混合物に1,3−ペンタジエンなどを配合するためには、イソプレンおよびシクロペンタジエン(その多量体を含む)を抽出した後のC5留分を好適に用いることができる。
【0019】
本発明の炭化水素樹脂は、以上述べたような付加重合性成分を含有する単量体混合物を、付加重合してなるものである。付加重合する方法は、特に限定されず、炭化水素樹脂を製造するための付加重合法として公知の方法から選択することができるが、得られる炭化水素樹脂が、以下に述べる性状を有するように付加重合法やその条件を選択する必要がある。また、本発明の炭化水素樹脂は、単量体混合物を付加重合した後、重合体分子構造中に残存する不飽和結合の一部または全部を水素添加反応(水添)により飽和化したものであってもよいが、炭化水素樹脂をより生産性に優れるものとする観点からは、水添を行っていない、非水添の炭化水素樹脂であることが好ましい。
【0020】
本発明の炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000〜5000であり、2200〜4800であることが好ましく、2400〜4600であることがより好ましい。炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)が小さすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が耐熱劣化性に劣るものとなり、重量平均分子量(Mw)が大きすぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。
【0021】
本発明の炭化水素樹脂のZ平均分子量(Mz)は、3500〜10500であり、4500〜10000であることが好ましく、5000〜9500であることがより好ましい。炭化水素樹脂のZ平均分子量(Mz)が小さすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が耐熱劣化性や高温接着性能に劣るものとなり、Z平均分子量(Mz)が大きすぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。
【0022】
なお、本発明において、炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
【0023】
本発明の炭化水素樹脂の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、特に限定されないが、1.5〜2.5であることが好ましく、1.6〜2.4であることがより好ましく、1.65〜2.35であることがさらに好ましい。この比が小さすぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が耐熱劣化性に劣るものとなり、この比が大きすぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低いものとなる。
【0024】
本発明の炭化水素樹脂の50重量%トルエン溶液のガードナー色数は、3以下であり、2以下であることが好ましい。この値が大きすぎる炭化水素樹脂は、色相に劣る。
【0025】
本発明の炭化水素樹脂の軟化点は、特に限定されないが、90〜130℃であることが好ましく、95〜125℃であることがより好ましく、100〜120℃であることがさらに好ましい。炭化水素樹脂の軟化点が低すぎると、炭化水素樹脂を配合して得られるホットメルト粘接着剤組成物が耐熱劣化性に劣るものとおそれがあり、軟化点が高すぎると、該ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなるおそれがある。
【0026】
本発明の炭化水素樹脂を製造する方法は、上記した組成を有する単量体混合物を付加重合して、上記した性質を有するような炭化水素樹脂を得ることができるものである限りにおいて、特に限定されず、例えば、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒を用いた付加重合によって、本発明の炭化水素樹脂を得ることができる。本発明の炭化水素樹脂を製造するために好適に用いられる方法としては、次に述べる、ハロゲン化金属からなるルイス酸触媒(A)と、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)または炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)であるハロゲン化炭化水素(B)とを組み合わせて、重合触媒として用いた重合方法を挙げることができる。
【0027】
本発明の炭化水素樹脂を得るために好適に用いられる重合触媒の一成分を構成するルイス酸触媒(A)は、ハロゲン化金属からなるものであれば特に限定されるものではないが、良好な反応活性を有する点から、周期律表第III族に属する元素のハロゲン化物またはその錯体であることが好ましい。このようなルイス酸触媒の具体例としては、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、三臭化アルミニウム(AlBr
3)、三塩化ガリウム(GaCl
3)、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体(BF
3・Et
2O)などを挙げることができる。なかでも汎用性などの観点から、AlCl
3またはBF
3・Et
2Oが好適に用いられる。
【0028】
ルイス酸触媒(A)の使用量は、特に限定されないが、重合に使用する単量体混合物100重量部に対し、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0029】
本発明の炭化水素樹脂を得るために好適に用いられる重合触媒のもう一つの成分を構成するハロゲン化炭化水素(B)は、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)または炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)である。このようなハロゲン化炭化水素(B)を、ハロゲン化金属からなるルイス酸触媒(A)と併用することにより、重合触媒の活性が極めて良好なものとなる。
【0030】
3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)の具体例としては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、2−クロロ−2−メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドを挙げることができる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、t−ブチルクロライドが特に好適に用いられる。また、炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)における不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合が挙げられ、芳香族環などにおける炭素−炭素共役二重結合も含むものである。このような化合物の具体例としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3−クロロ−1−プロピン、3−クロロ−1−ブテン、3−クロロ−1−ブチン、ケイ皮クロライドが挙げられる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、ベンジルクロライドが好適に用いられる。なお、ハロゲン化炭化水素(B)は、1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ハロゲン化炭化水素(B)の使用量は、ハロゲン化金属からなるルイス酸触媒(A)に対するモル比で、好ましくは0.05〜50、より好ましくは0.1〜10の範囲である。
【0032】
重合反応を行うに当たり、単量体混合物や重合触媒のそれぞれの成分を重合反応器に添加する順序は特に限定されず、任意の順で添加すればよいが、重合反応を良好に制御して、より色相に優れる炭化水素樹脂を得る観点からは、単量体混合物と重合触媒の成分の一部とを重合反応器に添加して、重合反応を開始した後に、重合触媒の残部を重合反応器に添加することが好ましい。
【0033】
重合反応を開始した後に、重合触媒の残部を重合反応器に添加する方法を適用する場合において、ルイス酸触媒(A)およびハロゲン化炭化水素(B)の添加方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)予めルイス酸触媒(A)の全量を重合反応器に添加し、重合反応を開始した後、ハロゲン化炭化水素(B)の全量を重合反応器に添加する方法。
(2)予めルイス酸触媒(A)の全量とハロゲン化炭化水素(B)の一部とを重合反応器に添加し、重合反応を開始した後、ハロゲン化炭化水素(B)の残部を重合反応器に添加する方法。
(3)予めルイス酸触媒(A)の一部を重合反応器に添加し、重合反応を開始した後、ルイス酸触媒(A)の残部とハロゲン化炭化水素(B)の全量を重合反応器に添加する方法。
(4)予めルイス酸触媒(A)の一部とハロゲン化炭化水素(B)の一部とを重合反応器に添加し、重合反応を開始した後、ルイス酸触媒(A)の残部とハロゲン化炭化水素(B)の残部とを重合反応器に添加する方法。
(5)予めルイス酸触媒(A)の一部とハロゲン化炭化水素(B)の全量とを重合反応器に添加し、重合反応を開始した後、ルイス酸触媒(A)の残部を重合反応器に添加する方法。
これらのなかでも、重合反応を制御しやすく、さらに操作性にも優れる点で、(1)または(2)の添加方法が好適である。
【0034】
重合反応をより良好に制御する観点からは、重合反応系に溶媒を添加して、重合反応を行うことが好ましい。溶媒の種類は、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。溶媒として用いられる飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの炭素数5〜10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5〜10の環状飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。溶媒として用いられる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6〜10の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合反応に用いる単量体混合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、50〜500重量部であることがより好ましい。なお、例えば、C5留分に由来するシクロペンタンとシクロペンテンとの混合物のような、付加重合性成分と非付加重合性成分との混合物を重合反応系に添加して、付加重合性成分は単量体混合物の成分として用い、非付加重合性成分は溶媒として用いるようにすることもできる。
【0035】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、−20〜100℃の範囲内であることが好ましく、0〜65℃の範囲内であることが好ましい。重合温度が低すぎると重合活性が低下して生産性が劣る可能性があり、重合温度が高すぎると得られる炭化水素樹脂の色相に劣るおそれがある。重合反応を行う際の圧力は、大気圧下でも加圧下でもよい。重合反応時間は、適宜選択できるが、通常10分間〜12時間、好ましくは30分間〜6時間の範囲で選択される。
【0036】
重合反応は、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することができる。なお、重合停止剤を添加して、重合触媒を不活性化した際に生成する、溶媒に不溶な触媒残渣は濾過などにより除去してもよい。重合反応停止後、未反応の単量体と溶媒を除去し、さらに水蒸気蒸留などにより低分子量のオリゴマー成分を除去し、冷却することにより、固体状の炭化水素樹脂を得ることができる。
【0037】
例えば、以上のようにして得られる本発明の炭化水素樹脂は、水添されなくとも色相に優れるものであることから、その特性を活かして、従来の炭化水素樹脂を適用しうる各種の用途に適用することができる。なかでも、本発明の炭化水素樹脂は、粘接着剤の粘着付与樹脂として好適に用いられ、ホットメルト粘接着剤の粘着付与樹脂として特に好適に用いられる。本発明の炭化水素樹脂を粘着付与樹脂として用いてホットメルト粘接着剤を得る場合において、ホットメルト粘接着剤のベースポリマーは特に限定されず、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン/共役ジエンブロック共重合体などのスチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン/酢酸ビニル共重合体などを用いることができるが、特に耐熱劣化性に優れるホットメルト粘接着剤を得る観点からは、オレフィン系熱可塑性エラストマーが好適であり、そのなかでもエチレン/α−オレフィン共重合体である熱可塑性エラストマーが特に好適である。すなわち、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、本発明の炭化水素樹脂と、エチレン/α−オレフィン共重合体である熱可塑性エラストマーと、を含有してなるホットメルト粘接着剤組成物である。
【0038】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物において、ベースポリマーとして用いられる熱可塑性エラストマーは、エチレン/α−オレフィン共重合体である熱可塑性エラストマーである。エチレン/α−オレフィン共重合体を得るために、エチレンと共重合されるα−オレフィンは、特に限定されないが、たとえば、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどの炭素数3〜20のα−オレフィンが好適に用いられ、なかでも、炭素数6〜8のα−オレフィンが特に好適であり、1−オクテンが最も好適である。α−オレフィンは、1種が単独で使用されていてもよいし、2種以上が組み合わせて使用されていてもよい。
【0039】
エチレン/α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン単位の含有割合は、特に限定されないが、全単量体単位に対してα−オレフィン単位が占める割合が、20〜40モル%であることが好ましい。
【0040】
エチレン/α−オレフィン共重合体を得るための重合方法は、特に限定されないが、特に接着力や耐熱劣化性に優れるホットメルト粘接着剤を得る観点からは、メタロセン型重合触媒を用いたものであることが好ましい。
【0041】
熱可塑性エラストマーとして用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体の密度は、特に限定されないが、0.86〜0.90g/cm
3であることが好ましい。密度がこの範囲にあるエチレン/α−オレフィン共重合体を用いることにより、得られるホットメルト粘接着剤組成物を、特に接着力に優れるものとすることができる。
【0042】
また、熱可塑性エラストマーとして用いられるエチレン/α−オレフィン共重合体のメルトインデックス(ASTM D−1084(E条件、190℃、2.16kg)に準拠して測定される値(g/10分))として、100以上であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましい。メルトインデックスがこの範囲にあるエチレン/α−オレフィン共重合体を用いることにより、得られるホットメルト粘接着剤組成物を、特に塗工容易性に優れるものとすることができる。
【0043】
なお、以上述べたようなエチレン/α−オレフィン共重合体である熱可塑性エラストマーは、市販品として入手可能であり、例えば、ダウケミカル社製の「アフィニティGA1950」や「アフィニティGA1900」を好適に用いることができる。
【0044】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物における、エチレン/α−オレフィン共重合体である熱可塑性エラストマーと本発明の炭化水素樹脂との配合割合は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー100重量部に対して、炭化水素樹脂が50〜500重量部配合されることが好ましく、80〜300重量部配合されることがより好ましい。炭化水素樹脂の配合割合がこの範囲にあると、本発明のホットメルト粘接着剤組成物の接着力が特に良好なものとなる。
【0045】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、炭化水素樹脂およびエチレン/α−オレフィン共重合体(熱可塑性エラストマー)のみからなるものであってよいが、さらに、他の成分を含有するものであってもよい。本発明のホットメルト粘接着剤組成物に含有され得る他の成分としては、ワックス、酸化防止剤、本発明の炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂、前述したもの以外の重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。なお、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0046】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得るワックスは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニル共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、Fischer−Tropshワックス、酸化Fischer−Tropshワックス、水素添加ひまし油ワックス、ポリプロピレンワックス、副産ポリエチレンワックス、水酸化ステアラミドワックスなどを用いることができる。ワックスは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ホットメルト粘接着剤組成物におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部当り、10〜200重量部であることが好ましく、20〜150重量部であることがより好ましい。ワックスの含有量がこの範囲であることにより、得られるホットメルト粘接着剤組成物が、塗工容易性に特に優れたものとなる。
【0047】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る酸化防止剤は、特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、エチレン/α−オレフィン共重合体100重量部当り、通常10重量部以下であり、好ましくは0.5〜5重量部である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る軟化剤は、特に限定されず、例えば、芳香族系、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル;ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体などを使用することができる。軟化剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る本発明の炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂としては従来公知の粘着付与樹脂が使用できる。具体的には、ロジン;不均化ロジン、二量化ロジンなどの変性ロジン類;グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとロジンまたは変性ロジン類とのエステル化物;テルペン系樹脂;脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族−芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物;フェノール樹脂;クマロン−インデン樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る上述したもの以外の重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体、(スチレン−ブタジエン)ランダム共重合体、(スチレン−イソプレン)ランダム共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエンランダム共重合体、(スチレン−ブタジエン)ブロック共重合体、(スチレン−イソプレン)ブロック共重合体などの芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体、ポリスチレンなどの芳香族ビニル単独重合体、イソブチレン系重合体、アクリル系重合体、エステル系重合体、エーテル系重合体、ウレタン系重合体、ポリ塩化ビニルなどの室温(23℃)で弾性を有する重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のホットメルト粘接着剤組成物において、これらの重合体の含有量は、ホットメルト粘接着剤組成物の全量に対して、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが
より好ましい。
【0051】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、炭化水素樹脂、エチレン/α−オレフィン共重合体、およびさらに必要に応じて添加されるその他の成分を混合する方法は特に限定されず、例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで溶融混合する方法を挙げることができる。混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法のなかでも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100〜200℃の範囲である。
【0052】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、色相に優れる本発明の炭化水素樹脂を粘着付与樹脂として含有していることから色相に優れ、さらには、オープンタイムが長く、塗工容易性、高温接着性能、接着力および耐熱劣化性にも優れるものである。したがって、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の部材の接着に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行なうことができる。
【0053】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、塗布量が少なくても十分な接着強度を発揮し、また、耐熱劣化性に優れるものであるという特性を有し、封緘機などにおいて劣化しがたいものであることから、特に、産業用の輸送梱包材の封緘のための接着剤として好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0055】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0056】
〔重量平均分子量、Z平均分子量および分子量分布〕
試料となる炭化水素樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)を求め、分子量分布はMz/Mwの比で示した。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC−8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0ml/minの流量で測定した。
〔軟化点(℃)〕
試料となる炭化水素樹脂について、JIS K 6863に従い測定した。
〔50重量%トルエン溶液のガードナー色数〕
試料となる炭化水素樹脂について、50%トルエン溶液を調製し、この溶液のガードナー色数をJIS K 0071−2に従い測定した。値が小さいものほど、色相に優れる。
〔溶融粘度〕
試料となるホットメルト粘接着剤組成物を加熱溶融させ、177℃における溶融粘度(mPa・s)を、ローターNo.27を使用し、サーモセル型ブルックフィールド粘度計により測定した。値が小さいものほど、塗工容易性に優れる。
〔曇点〕
試料となるホットメルト粘接着剤組成物を試験管に入れ、温度計を底部まで差し込んだ後、180℃まで加熱溶融させた。その後、放冷して、試験管底部に曇りを生じた温度を曇点として記録した。値が低いものほど、ホットメルト粘接着剤組成物を構成する成分同士の相溶性に優れ、その結果として、ホットメルト粘接着剤組成物が、オープンタイムが長く、接着力が高いものとなる。
〔せん断破壊温度(SAFT)〕
試料となるホットメルト粘接着剤組成物を25μmのPETフィルムに厚み20μmとなるように溶融塗布した。この塗布シートを用い、被着体としてステンレス鋼を使用し接着部が10×25mmとなるように接触させ、140℃で2秒間、加熱圧着させた。このようにして得られた試験片に、被着体としてステンレス鋼を使用し接着部が10×25mm、錘を500gとして負荷をかけ、温度上昇速度0.5℃/minにてせん断破壊温度(SAFT)を測定した。値が大きいものほど、高温接着性能に優れる。
〔皮剥ぎ試験〕
試料となるホットメルト粘接着剤組成物を、厚みが2mmのクラフトシートに、厚みが50μmとなるように、溶融塗布した。この塗布シートを幅25mmで切
断し、その塗布面を厚みが2mmのクラフトシートに接触させ、10
5N/m
2の加圧条件で、140℃で2秒間、加熱圧着させて、試験片を1検体につき10片作製した。この試験片を、0℃および−20℃において引き剥がし、クラフトシートの材料破壊の割合を測定した。100%がすべての試験片で材料破壊が起こり、0%がすべての試験片で材料破壊されなかったことを示す。値が高いものほど、低温接着性能に優れる。
〔皮張り試験〕
ステンレスビーカーの中に試料となるホットメルト粘接着剤組成物を入れ、180℃での72時間保存試験後のビーカー上層表面での皮張りの割合を測定した。0%が皮張りなしであり、100%が表層全て皮張りしたことを示す。値の低いものほど、耐熱劣化性に優れる。
【0057】
〔実施例1〕
重合反応器にシクロペンタン45.6重量部およびシクロペンテン15.2重量部の混合物を仕込み、55℃に昇温した後、塩化アルミニウム0.6部を添加した。引き続き、1,3−ペンタジエン47.2重量部、シクロペンテン13.3重量部、イソブチレン16.2重量部、ジイソブチレン6.9重量部、ジシクロペンダジエン0.1部、C4−C6不飽和炭化水素1.0重量部、およびC4−C6飽和炭化水素8.6重量部からなる混合物と、t−ブチルクロライド1部とを、それぞれ、別のラインを通して、60分間に亘り温度(55℃)を維持して、重合反応器に連続的に添加しながら重合を行なった。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。この時の重合転化率は、85%であった。なお、重合反応時の重合反応器中の成分の種類および量は、単量体混合物を構成する成分(付加重合性成分)、溶媒に相当する成分(非付加重合性成分)、および重合触媒に区分して、表1にまとめて示した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去した後、得られた重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。次いで、240℃以上で、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマー成分を留去した。溶融状態の樹脂100部に対して、老化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製「イルガノックス1010」)0.2部を添加し、混合した後、蒸留釜から溶融樹脂を取り出し、室温まで放冷して、実施例1の炭化水素樹脂を得た。得られた実施例1の炭化水素樹脂については、重量平均分子量、Z平均分子量、分子量分布、軟化点およびガードナー色数を測定した。これらの測定結果は、表1にまとめて示した。
【0058】
【表1】
【0059】
〔実施例2〜4,比較例1〜4〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、および重合温度を表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4および比較例1〜4の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。得られた実施例2〜4および比較例1〜4の炭化水素樹脂については、実施例1と同様の測定を行った。これらの測定結果は、表1にまとめて示した。
【0060】
〔実施例5〕
実施例1の炭化水素樹脂40部、エチレン/オクテン共重合体熱可塑性エラストマー(メルトインデックス:500g/10分、密度:0.874g/cm
3、ダウケミカル社製「アフィニティGA1950」)40部およびパラフィンワックス(融点:63℃)20部を、180℃で、1時間混練して、実施例5のホットメルト粘接着剤組成物を得た。この実施例5のホットメルト粘接着剤組成物については、溶融粘度、曇点、およびせん断破壊温度を測定し、また、皮剥ぎ試験および皮張り試験に供した。これらの測定結果および試験結果は、表2にまとめて示した。
【0061】
【表2】
【0062】
〔実施例6〜8,比較例5〜8〕
用いる炭化水素樹脂の種類を、実施例1の炭化水素樹脂から、表2に示すとおり、実施例2〜4および比較例1〜4の炭化水素樹脂にそれぞれ変更したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6〜8および比較例5〜8のホットメルト粘接着剤組成物を得た。得られた実施例6〜8および比較例5〜8のホットメルト粘接着剤組成物については、実施例5と同様の測定および試験に供した。これらの測定結果および試験結果は、表2にまとめて示した。
【0063】
表1および表2から以下のようなことが分かる。すなわち、本発明(実施例1〜4)の炭化水素樹脂は、ガードナー色数が小さいことから、色相に優れ、また、この炭化水素樹脂とエチレン/α−オレフィン共重合体熱可塑性エラストマーを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物(実施例5〜8)は、溶融粘度が低いことから塗工容易性に優れ、また、曇点が低いことから、オープンタイムが長く、かつ、接着力が高く、せん断破壊温度が高いことから、高温接着性能に優れ、皮剥ぎ試験の値が高いことから低温接着性能に優れ、皮張り試験の値が低いことから耐熱劣化性に優れるといえる。一方、脂環式ジオレフィンであるジシクロペンタジエンが比較的多量に含まれる単量体混合物を用いて得られた比較例1の炭化水素樹脂は、ガードナー色数が大きいことから色相に劣るといえ、そして、この炭化水素樹脂を用いて得られたホットメルト粘接着剤組成物(比較例5)は、オープンタイムが短く、かつ、接着力が低く(曇点が高いため)、耐熱劣化性にも劣る(皮張り試験の値が高いため)ものであった。また、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンであるイソブチレンおよびジイソブチレンが比較的多量に含まれる単量体混合物を用いて得られた比較例2の炭化水素樹脂は、Z平均分子量が小さく、そして、この炭化水素樹脂を用いて得られたホットメルト粘接着剤組成物(比較例6)は、高温接着性能に劣り(せん断破壊温度が低いため)、耐熱劣化性にも劣る(皮張り試験の値が高いため)ものであった。また、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンであるシクロペンテンの含量が比較的少ない単量体混合物を用いて得られた比較例3の炭化水素樹脂は、Z平均分子量が大きく、そして、この炭化水素樹脂を用いて得られたホットメルト粘接着剤組成物(比較例7)は、塗工容易性に劣り(溶融粘度が高いため)、オープンタイムが短く、かつ、接着力が低く(曇点が高いため)、低温接着性能に劣る(皮剥ぎ試験の値が低いため)ものであった。また、比較的に高い重合温度で重合されて得られたガードナー色数が大きい炭化水素樹脂(比較例4)を用いて得られたホットメルト粘接着剤組成物(比較例8)は、耐熱劣化性に劣る(皮張り試験の値が高いため)ものであった。