(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上の一部の領域に設けられた第1電極と、前記第1導電型半導体層上の他の領域において前記第1電極を囲むように設けられた第2導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層上に設けられた第2電極と、を備える発光素子であって、
平面視において、
前記第2導電型半導体層の外周の形状は、第1対角線及び第2対角線を含む正方形であり、
前記第1電極は、前記第1対角線上に配置された第1接続部と、前記第1接続部から前記第1対角線上で延伸する第1延伸部と、を有し、
前記第2電極は、前記第1対角線上において前記第1接続部と前記第1延伸部を介して対向するように配置された第2接続部と、前記第2接続部から前記第1対角線の両側に延伸する第1部位及び前記第1部位から前記第1延伸部を挟んで直線状に延伸する第2部位を含む2つの第2延伸部と、を有し、
前記第1接続部は、前記第2接続部に近い側の端部が前記2つの第2延伸部の先端を結ぶ直線よりも前記第2接続部に近い側に配置され、且つ、その中心部が前記第2対角線よりも前記第2接続部から遠い側に配置されていることを特徴とする発光素子。
第1導電型半導体層と、前記第1導電型半導体層上の一部の領域に設けられた第1電極と、前記第1導電型半導体層上の他の領域において前記第1電極を囲むように設けられた第2導電型半導体層と、前記第2導電型半導体層上に設けられた第2電極と、を備える発光素子であって、
平面視において、
前記第2導電型半導体層の外周の形状は、第1対角線及び第2対角線を含む正方形であり、
前記第1電極は、前記第1対角線上に配置された第1接続部と、前記第1接続部から前記第1対角線上で延伸する第1延伸部と、を有し、
前記第2電極は、前記第1対角線上において前記第1接続部と対向するように配置された第2接続部と、前記第2接続部から前記第1対角線の両側に延伸する第1部位及び前記第1部位から前記第1延伸部を挟んで、前記第1延伸部に平行に延伸する第2部位を含む2つの第2延伸部と、を有し、
前記第1接続部は、前記第2接続部に近い側の端部が前記2つの第2延伸部の先端を結ぶ直線よりも前記第2接続部に近い側に配置されていることを特徴とする発光素子。
前記第2電極の2つの第2延伸部は、それぞれ、前記第2接続部から曲線状に延伸する第1部位と該第1部位から前記第1延伸部と対向するように直線状に延伸する第2部位を含み、
前記第1延伸部と前記第2接続部との最短距離は、前記第1延伸部と前記第2延伸部の第2部位との最短距離以上の長さである請求項1又は2に記載の発光素子。
前記第2電極の2つの第2延伸部は、それぞれ、前記第2接続部から曲線状に延伸する第1部位と該第1部位から前記第1延伸部と対向するように直線状に延伸する第2部位とを含み、
前記第1延伸部と前記第1部位との最短距離は、前記第1延伸部と前記第2延伸部の第2部位との最短距離よりも短い請求項1から4のいずれか1つに記載の発光素子。
前記第1電極は、さらに、前記第1接続部から第1対角線上で、前記第2接続部と反対側に向かって延伸する第1補助延伸部を有する請求項1から6のいずれか1つに記載の発光素子。
前記第1接続部は、前記第2接続部に近い側の端部が前記第2対角線よりも前記第2接続部から遠い側に配置されている請求項1から7のいずれか1つに記載の発光素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る発光素子を実施するための形態として、図面を参照しながら説明する。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する様態としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。さらにまた、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0010】
本発明の発光素子は、主として、第1導電型半導体層と、この第1導電型半導体層上の一部の領域に設けられた第1電極と、第1導電型半導体層上の他の領域において第1電極を囲むように設けられた第2導電型半導体層と、この第2導電型半導体層上に設けられた第2電極とを備える。
第2導電型半導体層の外周の形状は、平面視において、第1対角線及び第2対角線を含む正方形である。ここで正方形とは、一辺が他辺の±5%程度の長さの変動及び/又は四隅の角が90±10度程度の角度の変動が許容されることを意味する。また、隅部は角がとれて丸みを帯びていてもよい。
【0011】
(第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層)
第1導電型半導体層及び第2導電型半導体は、発光素子における発光部となる部材であり、MIS接合、PIN接合、PN接合などのホモ構造、ヘテロ結合又はダブルヘテロ結合のいずれであってもよい。これら半導体層の間には活性層が含まれており、活性層は、量子効果が生ずる薄膜に形成された単一量子井戸構造、多重量子井戸構造のいずれでもよい。なかでも、第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層とがこの順に積層されたものが好ましい。なお、第1導電型半導体層を、例えば、n型とすると、第2導電型半導体層は、例えば、p型とするが、これらは逆であってもよい。半導体層の種類、材料は特に限定されるものではなく、例えばIn
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物半導体材料が好適に用いられる。
【0012】
第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層は、通常、基板上に積層されている。基板上には、第1導電型半導体層、活性層、第2導電型半導体層の順に積層されたものが好ましい。基板の材料としては、サファイア(Al
2O
3)やスピネル(MgA1
2O
4)のような絶縁性基板、炭化ケイ素(SiC)、ZnS、ZnO、Si、GaAs、ダイヤモンド及び窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板が挙げられる。
【0013】
(第1電極及び第2電極)
第1電極は、第1導電型半導体層上の一部の領域に設けられている。平面視において、発光素子の内側に配置されている。そして、第1電極は、第2導電型半導体層に囲まれている。これにより、第1電極の全周で電流を拡散させることができる。第1電極は、例えば、第1導電型半導体層に電流を供給するために、第1導電型半導体層に直接又は間接的に電気的に接続されており、第1対角線上に配置された第1接続部と、第1接続部から第1対角線上で延伸する第1延伸部とを備える。
【0014】
第2電極は、第2導電型半導体層上であって、平面視において、第1電極の外周の一部を取り囲むように配置されている。第2電極は、例えば、第2導電型半導体層に電流を供給するために、第2導電型半導体層に直接又は間接的に電気的に接続されており、第2接続部と、第2延伸部とを備える。
第2接続部は、第1対角線上において第1接続部と対向するように配置されている。この場合、第1延伸部を介して対向していてもよいし、第1延伸部を介さずに対向していてもよい。
第2延伸部は、後述するように、第2接続部から第1対角線の両側に延伸する第1部位と、この第1部位からそれぞれ延伸する第2部位を含む。
第2導電型半導体層には、その全面により効率的に電流を供給するために、第2電極、つまり、第2接続部及び第2延伸部と第2導電型半導体層との間に、後述するように、この第2導電型半導体層の略全面を被覆する透光性の導電層がさらに配置されていることが好ましい。ここで、略全面とは、第2導電型半導体層の全面積の90%程度以上の面積を意味する。
【0015】
第1接続部及び第2接続部は、発光素子に電流を供給するために外部電極又は外部端子等と接続するためのいわゆるパッド電極であり、例えば、導電性のワイヤ等がボンディングされる部位である。第1接続部及び第2接続部は、上述したように、いずれも、半導体層の1つの対角線(以下、第1対角線という)上に配置されている。ここで、対角線上に配置されているとは、接続部の中心が、対角線上に存在することが好ましいが、接続部の一部が対角線に跨るように配置されていることも包含される。第1接続部及び第2接続部は、いずれも、第1対角線に対して対称に配置されていることが好ましい。
また、第1接続部は、第1対角線上において、一方の対角から、半導体層の対角線の15〜45%程度の範囲内に配置されることが好ましく、第2接続部は、第1対角線上において、他方の対角から、半導体層の対角線の10〜35%程度の範囲内に配置されることが好ましい。
【0016】
第1接続部及び第2接続部の形状は、発光素子の大きさ、電極の配置等によって適宜調整することができ、例えば、円形、正多角形などの形状とすることができる。なかでも、ワイヤボンディングのしやすさ等を考慮すると、円形状又はこれに近似する形状が好ましい。また、第1接続部及び第2接続部の大きさは、発光素子の大きさ、電極の配置等によって適宜調整することができ、その最長の長さが、半導体層の一辺の長さの5〜30%程度の長さ、5〜20%程度の長さ、10〜20%程度の長さとすることが好ましい。第1接続部及び第2接続部の形状及び大きさは互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0017】
第1接続部は、第2接続部に近い側の端部が、2つの第2延伸部の先端を結ぶ直線よりも第2接続部に近い側に配置されていることが好ましい。第1接続部の中心部は、第2対角線上又は第2対角線よりも第2接続部に近い側に配置されていてもよいが、第2対角線よりも第2接続部から遠い側に配置されていることが好ましい。さらに、第1接続部は、第2接続部に近い側の端部が第2対角線よりも第2接続部から遠い側に配置されていることがより好ましい。
【0018】
第1延伸部及び第2延伸部は、第1接続部及び第2接続部に供給された電流を、半導体層に均一に拡散させるための補助電極である。第1延伸部及び第2延伸部は、いずれも、第1対角線に対して対称に配置されていることが好ましい。
第1延伸部は、第1接続部から第1対角線上で延伸しており、第2接続部に向かって延伸していることが好ましい。また、第1延伸部は、第2接続部に向かう方向と反対側の方向へ延伸していてもよい。なお、本明細書では、第1接続部から延伸する部位を第1延伸部と称するが、その延伸方向を区別するために、第2接続部に向かう方向と反対側の方向へ延伸する延伸部を第1補助延伸部という。第1延伸部は、第1接続部の直径の50〜300%程度の範囲の長さとすることが好ましい。第1補助延伸部の長さは、第1接続部の位置によって、第1接続部の直径の10〜200%程度の範囲の長さとすることが好ましい。また、第1延伸部は、第2接続部に向かって延伸する部位に加えて、第1補助延伸部をさらに含んでいてもよい。つまり、第1対角線上で、第1接続部から互いに反対方向に延長する2つの延伸部を含んでいてもよい。これにより、電流が不足がちな半導体層の角部にも電流を広げることができる。
【0019】
第2延伸部は、第2接続部から第1対角線の両側に延伸する第1部位と、この第1部位からそれぞれ延伸する第2部位を含む。
第1部位は、第2接続部から曲線状に延伸することが好ましい。
第2部位は、第1延伸部を挟んで直線状に延伸している。また、第2部位は、第1延伸部に平行に延伸していることが好ましい。
【0020】
この第2接続部から曲線状に延伸する2つの第1部位は、2つの第1部位をひとつに連結して見たときに、平面視で、例えば、円弧状、椀形状、半円状等の形状を成形する形状であるものが挙げられ、2つの第1部位は、半円状に配置されていることがより好ましい。ここでの、2つの第1部位の先端間の距離又は半円形状の直径は、例えば、第2接続部の半径の2〜10倍程度、2〜5倍程度、3〜5倍程度であることが好ましく、また別の観点から、半導体層の対角線の長さの10〜40%程度、10〜35%程度、15〜35%程度が好ましい。
【0021】
第2部位は、第1部位から、第1延伸部と対向するように直線状に及び/又は第1延伸部に平行に、延伸することが好ましい。
【0022】
第2延伸部は、第1部位からそれぞれ分岐する2つの第2補助延伸部をさらに含んでいてもよい。
【0023】
第1延伸部及び第2延伸部ならびに第1補助延伸部及び第2補助延伸部の太さは特に限定されるものではなく、例えば、第1接続部及び第2接続部の直径又は最長長さの5〜30%程度の太さ、5〜20%程度の太さ、5〜15%程度の太さとすることが好ましい。第1延伸部及び第2延伸部ならびに第1補助延伸部及び第2補助延伸部の太さは互いに異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。また、部分的に異なっていてもよいが、均一であることが好ましい。
【0024】
第1延伸部と第2接続部との最短距離は、第1延伸部と第2延伸部の第2部位との最短距離以上の長さであってもよいし、第1延伸部と第2延伸部の第1部位との最短距離は、第1延伸部と第2延伸部の第2部位との最短距離よりも短くてもよい。
第1延伸部の第2接続部に近い先端部と第2接続部までの距離が近いとこれらの間で電流が集中する傾向があるが、第1延伸部と第2延伸部の第2部位との最短距離以上の長さとすることにより、第1延伸部と第2接続部との間だけでなく、第1延伸部と第2延伸部との間にも均一に電流を拡散させることができる。これによって、第2電極(第2延伸部)へ、さらに第2導電型半導体層へ効率的に電流を拡散させることができる。
第1延伸部と2つの第2延伸部とのそれぞれの最短距離が同じであることが好ましい。また、第1延伸部と、直線状に延伸する第2延伸部(第2部位)とが平行に配置されていることが好ましい。
【0025】
これによって、第2接続部周辺で偏る電流分布を、このような距離の違いによって均一に調整することができる。
なお、本明細書において、第1部位と第2部位との交点は、第2部位に含まれることとする。
【0026】
第1電極及び第2電極は、通常、半導体層上に配置する第1電極及び第2電極の外縁を矩形で囲んだ面積が、後述する透光性の導電層の面積の60〜90%であることが好ましく、70〜90%がさらに好ましい。これによって、半導体層の略全面に均一に電流を供給することができる。これに加えて、半導体層上に占める電極(第1電極及び第2電極)の面積を低減させることができるため、これら電極による光の吸収等を低減させ、半導体層からの光取り出し効率の低下を軽減することができる。
特に、第1電極及び第2電極の外縁を囲んだ矩形は、発光素子の重心に向かって縮尺した、発光素子の外形又は第2導電型半導体層の外形と相似又は略相似の形状とすることが好ましい。このような形状によって、より均一な電流の供給を実現することができる。ここでの第1電極及び第2電極の外縁を囲んだ矩形とは、第1電極及び第2電極の最も外側に配置する端部に接し、かつ発光素子又は第2導電型半導体層の外縁に平行な線をそれぞれ描いて囲まれる矩形を意味する。また、略相似とは、±10%程度の部分的な縮尺率の変動が許容される意味である。
【0027】
第1電極及び第2電極は、例えば、Ni、Rh、Cr、Au、W、Pt、Ti、Al等の金属又は合金による単層膜又は多層膜を用いることができ、なかでも、Ti/Pt/AuやTi/Rh/Au等の順番に積層した多層膜を用いることが好ましい。
【0028】
(導電層)
特に、第2電極(第2接続部及び第2延伸部)と第2導電型半導体層との間に配置する導電層は、第2電極から供給される電流を、第2導電型半導体層の面内全体に均一に流すための部材である。導電層として金属薄膜を用いることもできるが、発光素子の光取り出し面側に配置されるため、透明性を有する導電層、具体的には、導電性酸化物層が好ましい。このような導電性酸化物としては、Zn、In、Sn、Mgから選択される少なくとも1種を含む酸化物、具体的にはZnO、In
2O
3、SnO
2、ITO(Indium Tin Oxide;ITO)、IZO(Indium Zinc Oxide)、GZO(Gallium-doped Zinc Oxide)等が挙げられる。導電性酸化物(特にITO)は可視光(可視領域)において高い光透過性を有し(例えば、60%以上、70%以上、75%以上又は80%以上)、また導電率の比較的高い材料であることから好適に用いることができる。
【0029】
本発明の発光素子は、通常、パッケージングされて発光装置を構成する。発光装置では、発光素子は基体に実装され、封止部材で封止されている。この場合、発光素子はフェイスアップ又はフェイスダウンのいずれによって実装されていてもよい。
【0030】
基体は、通常、配線と、絶縁性材料とによって形成されている。配線は、発光素子の電極に電力を供給するために用いられるものである。そのために、この機能を果たすことができる導電材であれば、限定されることなくいかなる材料でも用いることができる。このような材料としては、上述した第1電極等に使用されるものの中から適宜選択することができる。絶縁性材料としては、セラミック、樹脂、誘電体、パルプ、ガラス又はこれらの複合材料、あるいはこれら材料と導電材料(例えば、金属、カーボン等)との複合材料等が挙げられる。
なお、配線及び絶縁性材料は、一体として、直方体又は立方体等であってもよいし、発光素子を搭載するいずれかの部位に凹部が形成されていてもよい。
【0031】
封止部材は、発光素子及びワイヤ等の接続部材等を外部から保護するために使用され、発光素子から光を効率的に取り出すことができる材料であれば、いかなる材料でも用いることができる。例えば、透光性樹脂を用いることができる。
透光性樹脂は、発光層から出射される光の60%以上を透過するもの、さらに、70%、80%又は90%以上を透過するものが好ましい。このような樹脂は、例えば、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂等が挙げられる。なお、このような透光性樹脂の外周に、発光素子から出射された光を特定の方向に配光するために、反射性の部材又は樹脂が配置されていてもよい。
【0032】
反射性の樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物;エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物;ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物;ポリフタルアミド(PPA);ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);液晶ポリマー(LCP);ABS樹脂;フェノール樹脂;アクリル樹脂;PBT樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂によって又はその表面に金属膜等を配置することによって、反射性の部材を形成することができる。
封止部材には、当該分野で公知の光散乱材、無機フィラー等を含有していてもよい。
【0033】
発光装置の光取り出し面側には、蛍光体層が設けられていることが好ましい。蛍光体層は、例えば、封止部材に蛍光体を含有したものとしてもよい。また、封止部材の表面の一部に蛍光体が含有されてもよい。
蛍光体層に含まれる蛍光体は、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、発光素子として青色発光する窒化ガリウム系発光素子を用いる場合、青色光を吸収して黄色〜緑色系発光するYAG系、LAG系、緑色発光するSiAlON系(βサイアロン)、赤色発光するSCASN、CASN系の蛍光体の単独又は組み合わせが挙げられる。また、当該分野で公知の光散乱材等を含有していてもよい。
なお、蛍光体層に代えて、上述した透光性樹脂による蛍光体を含有しない封止部材を配置していてもよい。
これら蛍光体層及び/又は封止部材は、それぞれ2種以上を積層させてもよい。
【0034】
<実施形態1>
この実施形態の発光素子100は、
図1A及び
図1Bに示すように、基板2と、基板2上に設けられる半導体層3と、半導体層3上に形成された第1電極10と、半導体層3上であって、第1電極10の外周に配置された第2電極20とを備える。
半導体層3は、第1導電型半導体層3a(例えば、n層)、活性層3c及び第2導電型半導体層3b(例えば、p層)を備えている。
基板2及び半導体層3(特に、第2導電型半導体層3b)は、平面視で略正方形であり、基板2の一辺は、例えば、460μmである。
第1電極10は、半導体層3のうち、第2導電型半導体層3b及び活性層3cの一部が除去されて露出した第1導電型半導体層3a上に形成されている。第1電極10は、これら第2導電型半導体層3b及び活性層3cに取り囲まれている。第2電極20は、第2導電型半導体層3bの上に形成されている。なお、第2電極20と第2導電型半導体層3bとの間には、第2導電型半導体層3b上のほぼ全面に形成された透光性の導電層4が配置されている。
これら半導体層3、第1電極10及び第2電極20は、後述する第1接続部及び第2接続部の一部以外は、保護膜5によって被覆されている。
【0035】
第1電極10は、外部回路(図示しない)と電気的に接続される第1接続部11と、第1接続部11から延伸する第1延伸部12とを有する。第1接続部11は、第1対角線であるA−A’線上に配置されており、例えば、半径が30μm程度の大きさの略円形を有する。第1延伸部12は、後述する第2接続部21に向かって延伸している。その幅は、例えば、6μm程度であり、長さは、130μm程度である。
第2電極20は、外部回路(図示しない)と電気的に接続される第2接続部21と、第2接続部21から延伸する2つの第2延伸部22とを有する。第2接続部21は、第1対角線であるA−A’線上に配置されており、例えば、半径が30μm程度の大きさの略円形を有する。2つの第2延伸部22は、第2接続部21からそれぞれ第1対角線に対して線対称に、曲線状に延伸する第1部位22cと第1部位22cから第2接続部21と反対側(言い換えると、第1接続部11側)に向かって直線状に延伸する第2部位22dとを有している。ここでの、曲線状に延伸した形状は、例えば、2つの曲線状に延伸した第1部位22cが、略半円形状であり、その半径は、例えば、110μm程度である。また、直線状に延伸する第2部位22dは、第1対角線に平行であり、その長さは、170μm程度である。
【0036】
第1接続部11は、第2接続部21に近い端部11aが、第2延伸部22の第2部位22dの2つの先端部22a、22bを結ぶ直線C−C’線よりも第2接続部21に近い側に配置されている。本明細書において、第1接続部11の端部とは外縁のことであり、第1接続部11と第1延伸部とが接続された部分においては、第1接続部11の外縁(例えば、円形の外縁)を仮定する。第2接続部21に近い端部11aとは、第1接続部11の仮定の円形の外縁と第1対角線との交点をいう。また、第1接続部11の中心部が第1対角線A−A’線に直交する半導体層3の第2対角線B−B’線よりも第2接続部21から遠い側に配置されている。つまり、第1接続部11は、第2延伸部22の2つの先端部22a、22bを結ぶ直線C−C’線を跨いで配置されている。また、第1接続部11は、第1接続部11の外縁と第2延伸部との最短距離が、第1接続部11の外縁と半導体層3の外縁との最短距離よりも短い。
【0037】
第1電極10及び第2電極20は、半導体層3の中心部を中心とした70%程度の縮尺領域内に配置されている。言い換えると、第1電極10及び第2電極20の最も外側に配置する端部に接し、かつ半導体層3の外縁に平行な線を4本描いた場合、その4本の線によって囲まれる平面積が、導電層の平面積の70%の面積縮小率である。
【0038】
第1延伸部12は、第1延伸部12から直線状に延伸する第2延伸部22の第2部位22dまでの最短距離がいずれも同一となる位置に配置されている。言い換えると、
図1Aの矢印X及びZで表される第1延伸部12から第2延伸部22の第2部位22dまでの最短距離のいずれもが、略同一長さである。また、第1対角線A−A’線上において、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2接続部21までの距離Y、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2延伸部22の曲線状に延伸する2つの第1部位22cまでのそれぞれの距離も、略同一長さである。具体的には、X=Z=Y=107μmである。
【0039】
<実施形態1の変形例1>
また、
図1Cに示すように、発光素子101は、基板2と、基板2上に設けられる半導体層3と、半導体層3上に形成された第1電極10と、半導体層3上であって、第1電極10の外周に配置された第2電極20とを備える点で、発光素子100と実質的に同様の構造を有する。
そして、第1接続部11の全体が、第2延伸部22の第2部位22dの2つの先端部22a、22bを結ぶ直線C−C’線よりも第2接続部21に近い側に配置されている。これにより、第1接続部11と第2接続部21との距離が短くなるため、第1接続部11と第2接続部21との間の抵抗を下げることができる。
【0040】
<実施形態1の変形例2>
図1Dに示すように、発光素子102は、基板2と、基板2上に設けられる半導体層3と、半導体層3上に形成された第1電極10aと、半導体層3上であって、第1電極10aの外周に配置された第2電極20とを備える点で、発光素子100と実質的に同様の構造を有する。
【0041】
第1電極10aは、第1接続部11と、第1接続部11から延伸する第1補助延伸部12aとを有する。
第1接続部11は、第2対角線上に配置しており、その中心部が第2対角線と重なっている。従って、第1接続部11は、第2接続部21に近い側の端部が、第2部位22dの2つの先端部22a、22bを結ぶ直線よりも第2接続部に近い側に配置されている。さらに、第2対角線よりも、第2接続部に近い側に配置されている。
第1補助延伸部12aは、第2接続部21と反対側に向かって延伸している。つまり、第1接続部11は、第2接続部21と第1対角線上で対向する。第1補助延伸部12aは、その端部11bが、第2延伸部22の第2部位22dの2つの先端部22a、22bを結ぶ直線よりも第2接続部21に遠い側に配置されている。言い換えると、第1補助延伸部12aは、第2延伸部22の2つの先端部22a、22bを結ぶ直線線を跨いで配置されている。第1補助延伸部12aの長さは、発光素子100の第1延伸部12と略同程度である。
【0042】
第2電極20は、第2接続部21と、第2接続部21から延伸する2つの第2延伸部22とを有する。2つの第2延伸部22は、第2接続部21からそれぞれ曲線状に延伸する第1部位22cと、第1部位22cから第2接続部21と反対側に向かって、第1補助延伸部12aに平行に延伸する第2部位22dとを有している。
【0043】
<実施形態2>
この実施形態の発光素子200は、
図2Aに示すように、第2電極23における2つの第2延伸部25の形状が異なる以外、実質的に実施形態1の発光素子100と同様の構成を有する。
この発光素子200では、平面視において、2つの第2延伸部25の第1部位25cが、その中ほどで円弧形状よりも若干半導体層3の内側に凹んだ形状に配置されている。この凹みの程度は、半円よりも凹み、かつ、第1部位25cの2つの端部と第2接続部とで構成される二等辺三角形の辺よりも外側に膨らんだ形状とすることが好ましい。
【0044】
第1延伸部12は、第1延伸部12から第2延伸部25の第2部位25dまでの最短距離がいずれも同一となる位置に配置されている。言い換えると、
図2の矢印X1及びZ1で表される第1延伸部12から第2延伸部25の第2部位25dまでの最短距離のいずれもが、同一長さである。
一方、第1対角線A−A’線上において、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2接続部24までの距離(矢印Y1)に対して、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2延伸部25の第1部位25cまでの距離(P1、Q1)は短い。この短い程度は、例えば、矢印Y1で表される距離の1〜10%程度とすることができる。具体的には、X1=Z1=107μm、Y1=110μm、P1=Q1=100μmである。
【0045】
<実施形態2の変形例>
また、
図2Bに示すように、第2電極23における2つの第2延伸部25の形状を発光素子200と同様の形状とし、第1電極30における第1接続部31の位置が、発光素子100に比べて、第1対角線A−A’線に沿って、発光素子の内側にシフトしており、第1接続部31から、第1対角線上で、第2接続部24に向かって延伸する第1延伸部32に加えて、第2接続部24と反対側に向かって延伸する第1補助延伸部33を有する以外、実質的に実施形態2の発光素子200と同様の構成を有する発光素子210としてもよい。
第1補助延伸部33は、直線状に延伸する第2延伸部25の2つの先端部25a、25bを結ぶ直線D−D’線上又はD−D’線よりも外側(第1延伸部32と逆方向)に配置されることが好ましい。これにより、半導体層の角部にも効果的に電流を広げることができる。
この発光素子210においても、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2接続部24までの距離(矢印Y1)に対して、第1延伸部12の先端部からこの先端部に対向する第2延伸部25の第1部位までの距離(P1、Q1)が短い点は、発光素子200と同様である。
【0046】
<実施形態3>
この実施形態の発光素子300は、
図3に示すように、第1電極40における第1接続部41から、第1対角線上で、第2接続部21に向かって延伸する第1延伸部42に加えて、第2接続部21と反対側に向かって延伸する第1補助延伸部43を有する以外、実質的に実施形態1の発光素子100と同様の構成を有する。第1補助延伸部43の長さは、15μm程度である。これにより、第1接続部付近の発光素子の隅部へ電流を拡散させることができる。
この発光素子300においても、発光素子100におけるX、Z、Yに対応する長さは、発光素子100と同様である。
【0047】
<実施形態4>
この実施形態の発光素子400は、
図4に示すように、第1電極30における第1接続部31の位置が、発光素子100に比べて、第1対角線A−A’線に沿って、発光素子の内側にシフトしており、また、第1接続部31から、第1対角線上で、第2接続部21に向かって延伸する第1延伸部32に加えて、第2接続部21と反対側に向かって延伸する第1補助延伸部33を有する以外、実質的に実施形態1の発光素子100と同様の構成を有する。
この発光素子400では、第1接続部のシフト長さが、第1接続部の直径に対して63%程度であり、第1補助延伸部33の長さは、50μm程度である。
この発光素子400においても、発光素子100におけるX、Z、Yに対応する長さは、発光素子100と同様である。
【0048】
<実施形態5>
この実施形態の発光素子500は、
図5に示すように、第1電極50における第1接続部51の位置が、発光素子100に比べて、第1対角線A−A’線に沿って、発光素子の内側にシフトしており、また、第1接続部51から、第1対角線上で、第2接続部21に向かって延伸する第1延伸部52に加えて、第2接続部21と反対側に向かって延伸する第1補助延伸部53を有する以外、実質的に実施形態1の発光素子100と同様の構成を有する。
この発光素子500では、第1接続部のシフト長さが、第1接続部の直径に対して97%程度であり、第1補助延伸部53の長さは、75μm程度である。
この発光素子500においても、発光素子100におけるX、Z、Yに対応する長さは、発光素子100と同様である。
【0049】
<実施形態6>
この実施形態の発光素子600は、
図6に示すように、第2電極60における第2延伸部62が、第2接続部61から曲線状に延伸した部位からそれぞれ分岐する2つの第2補助延伸部63を有する以外、実質的に実施形態4の発光素子400と同様の構成を有する。
この発光素子600では、半導体層の一辺に平行な線を、曲線状に延伸した部位に対する接線とした場合、この接線に沿って分岐部である第2補助延伸部63が延伸する。また、その長さは、半導体層の一辺の長さの25%程度の長さに相当する。具体的には、110μm程度である。
【0050】
<実施形態7>
この実施形態の発光素子700は、
図7に示すように、第2電極70における第2延伸部72の第2接続部71から曲線状に延伸した部位からそれぞれ分岐する分岐部である第2補助延伸部73の長さが、実施形態6の発光素子600の第2補助延伸部63の長さの半分程度である以外、実質的に実施形態6の発光素子600と同様の構成を有する。
【0051】
<発光素子の評価>
上述した実施形態1〜7の発光素子を以下のように評価した。
なお、電極の配置が以下のように異なる以外、実施形態1〜7と実質的に同様の構成の発光素子を比較例として準備した。
【0052】
比較例1
図8Aに示したように、この発光素子800Aでは、第2電極80において、第2接続部81から延伸する第2延伸部82が直線部分を有さない円弧状とした。第1電極30は、発光素子400の第1電極と同様である。
【0053】
比較例2
図8Bに示したように、この発光素子800Bでは、第1電極90において、第1延伸部92が延伸する第1接続部91の第2接続部21に近い端部が、直線状に延伸する第2延伸部22の2つの先端部22a、22bを結ぶ直線C−C’線に接触する位置に配置されている。第2電極20は、発光素子100の第2電極と同様である。
【0054】
(光出力及び順方向電圧(Vf)の評価)
発光素子400、発光素子210及び発光素子800Aについて、電流120mAで、光出力及びVfを測定した。
その結果を
図9Aに示す。
この結果から、本実施形態の発光素子400及び210は、比較例の発光素子800Aに比較して、非常に明るいことが確認された。これは、第1電極及び第2電極の長さ(面積)を極力抑えることにより、電極によって遮られる光出力の低減を抑えたことに起因する。特に、発光素子210はP1、Q1の距離がX1、Z1よりも短く、したがって発光素子400よりも第2延伸部の全長が短くなるため、発光素子400よりも光出力が高かった。これによって、第1電極と第2電極との間に電流が過度に流れるような配置ではなく、第2延伸部と第1電極との距離の関係を考慮することが電流密度の半導体層全面における均一化を図ることになり、加えて出力が向上する傾向があることが確認された。
【0055】
(電力効率の評価)
発光素子300、400、500、800B、102について、電流120mAで、光出力、Vf及び電力効率を測定した。その結果を
図9B及び表1に示す。なお、これら発光素子300、400、500、800B、102は、第1電極(第1接続部と第1延伸部)の面積が同一であり、第1接続部の位置のみを移動させたものである。
電力効率は、{光出力/(電流×電圧)}×100[%]、電力効率差は、(基準/対象)×100−100[%]で算出した。光出力の単位はmW、電流の単位はmA、電圧の単位はVである。
【0056】
【表1】
表1に示したように、発光素子800Bを基準として評価したところ、本実施形態の発光素子102において、0.66%の差が得られた。さらに本実施形態の発光素子300、400、500は、それぞれ0.77、0.78及び0.72の差と良好な結果を示した。
また、第1接続部と第2接続部との距離が近づくとVfが低下した。これにより、第1接続部の配置(第1接続部と第2接続部との距離)がVfに影響していることが確認された。
【0057】
(電流密度のシミュレーション)
発光素子300、400及び発光素子102について、電流密度の分布を、有限要素法を用いたシミュレーションソフトにより解析した。その結果を
図10Aから
図10Cにそれぞれ示す。
図10Aから
図10Cにおいて、濃淡が濃い程に電流密度が低いことを示す。また、
図10Aから
図10Cに、第2部位22dの2つの先端部22a、22bを結ぶ直線C−C’線及び第2対角線(F−F’)を参考のために示す。
発光素子102では、特に、第1対角線上の第1接続部側の隅部においては、濃淡が濃く、電流密度が低い部分が比較的大面積で現れていたが、第2対角線を構成する対角部分においては、第1対角線上の第1接続部側の隅部よりも緩和されていることが確認された。電流密度分布については、部分的な電流集中を発生させる傾向があるが、
図9に示されるVf値の低減とのバランスによって、光出力の向上が期待できる。
一方、発光素子300、400では、発光素子の隅部の暗い部分の発生がより防止され、電極間においても電流密度の集中が見られず、均一な電流密度分布が認められた。これによって、半導体層の全面において効率的に光出力を向上させ、明るい発光素子を得ることができる。
【0058】
(電極面積による電力効率)
上述した実施形態及び比較例の発光素子について、第1電極及び第2電極の最も外側に配置される外縁を矩形で囲んだ平面積を、導電層の面積に対して、発光素子の中心を中心として縮小した場合の電力効率を測定した。電力効率の測定は、上記と同様に行った。
その結果を
図11に示す。
この結果から、電極面積縮小率が70〜90%程度で非常に良好な電力効率が得られることが確認された。また、面積縮小によって、半導体層上に占める電極(第1電極及び第2電極)の面積を低減させることができるため、電力効率と半導体層からの光取り出し効率との調整が可能となることが確認された。
【0059】
(パッケージング後の光束の評価)
凹部を有するセラミック製パッケージ(縦×横×高さ=3.5mm×3.5mm×0.8mm)に、発光素子400(実施形態4)と発光素子800A(比較例1)をそれぞれ実装し、YAGを含むシリコーン樹脂で発光素子を封止して発光装置を作製した。
これらの発光装置について、電流120mAで光出力を測定した。
その結果、発光素子400を実装した発光装置は、比較例1の発光素子800Aを実装したものよりも0.5%出力が向上することが確認された。
発光素子400では、電力効率が良好な第1電極及び第2電極の配置を実現しており、それに伴って、発光素子全体に占める延伸部の面積が縮小したことが一因であると考えられる。