【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明の技術的内容が以下の実施例により限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、ビニール袋に詰め、更にゴム型に入れ、かつ、CIP装置に収容して原料粉末の成形体を作製した。
【0044】
次に、GGG基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0045】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0046】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0047】
すなわち、育成炉内に配置された外径φ150mm、高さ150mm、厚さ2mmであるイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1400℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1400℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0048】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0049】
また、GGG単結晶の育成は、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施した。
【0050】
そして、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0051】
その結果、67ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0052】
[実施例2]
GGG結晶用の原料として、54.0重量%のGd
3O
3、46.0重量%のGa
2O
3を適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0053】
次に、GGG基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0054】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0055】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0056】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1200℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1200℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0057】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0058】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0059】
その結果、53ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0060】
[実施例3]
LT(タンタル酸リチウム)結晶用の原料として、86.4重量%のTa
2O
3、13.6重量%のLi
2CO
3を適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、実施例1と同様に、CIP装置を用いて原料粉末の成形体を作製した。
【0061】
次に、LT基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1500℃、15時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0062】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0063】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるLT単結晶(融点:1750℃)の育成を実施した。
【0064】
すなわち、育成炉内に配置された外径φ150mm、高さ150mm、厚さ2mmであるイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1200℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1200℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、2体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるLT単結晶の育成を行なった。
【0065】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0066】
また、LT単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0067】
その結果、58ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0068】
[比較例1]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0069】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0070】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も113〜258ppmであった。
【0071】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0072】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0073】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0074】
そして、3ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0075】
[比較例2]
GGG結晶用の原料として、54.0重量%のGd
3O
3、46.0重量%のGa
2O
3を適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0076】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0077】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も99〜294ppmであった。
【0078】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0079】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜800℃の温度域にあるときは、育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、イリジウム製坩堝の温度が800℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0080】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0081】
そして、5ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0082】
[比較例3]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0083】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0084】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も75〜581ppmであった。
【0085】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0086】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、400℃〜1000℃の温度域にあるときは、育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から400℃未満の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0087】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0088】
そして、14ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0089】
[比較例4]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0090】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0091】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も81〜342ppmであった。
【0092】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0093】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、800℃〜1000℃の温度域にあるときは、育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から800℃未満の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0094】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0095】
そして、7ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0096】
[比較例5]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0097】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0098】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も82〜320ppmであった。
【0099】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0100】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0101】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0102】
そして、8ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0103】
[比較例6]
LT結晶用の原料として、86.4重量%のTa
2O
3、13.6重量%のLi
2CO
3を適用し、かつ、実施例3と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0104】
次に、LT基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1500℃、15時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0105】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も70〜620ppmであった。
【0106】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるLT単結晶(融点:1750℃)の育成を実施した。
【0107】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、2体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるLT単結晶の育成を行なった。
【0108】
また、LT単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0109】
そして、10ロットのGGG単結晶の育成後においてクラックの発生が認められ、それ以上の結晶の育成を断念した。
【0110】
[比較例7]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0111】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0112】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も108〜327ppmであった。
【0113】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0114】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1400℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1400℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0115】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0116】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0117】
その結果、32ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0118】
[比較例8]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0119】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0120】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も111〜329ppmであった。
【0121】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0122】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、イリジウム製坩堝の温度が1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0123】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0124】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0125】
その結果、30ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0126】
[比較例9]
GGG結晶用の原料として、54.0重量%のGd
3O
3、46.0重量%のGa
2O
3を適用し、かつ、実施例1と同様の方法により原料粉末の成形体を作製した。
【0127】
次に、GGG基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0128】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も89〜367ppmであった。
【0129】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0130】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1200℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1200℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0131】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0132】
また、GGG単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0133】
その結果、32ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0134】
[比較例10]
LT結晶用の原料として、86.4重量%のTa
2O
3、13.6重量%のLi
2CO
3を適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、実施例1と同様にして原料粉末の成形体を作製した。
【0135】
次に、LT基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1500℃、15時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0136】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も77〜582ppmであった。
【0137】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるLT単結晶(融点:1750℃)の育成を実施した。
【0138】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1200℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1200℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、2体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるLT単結晶の育成を行なった。
【0139】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0140】
また、LT単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0141】
その結果、34ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0142】
[比較例11]
LT結晶用の原料として、86.4重量%のTa
2O
3、13.6重量%のLi
2CO
3を適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、実施例1と同様にして原料粉末の成形体を作製した。
【0143】
次に、LT基板が敷き詰められていないPt坩堝内に、作製された原料粉末の成形体を直接投入し、この状態で、大気中、1500℃、15時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0144】
尚、実施例1と同様、得られた複数ロットの複合酸化物原料におけるPt濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も73〜616ppmであった。
【0145】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるLT単結晶(融点:1750℃)の育成を実施した。
【0146】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、300℃〜1000℃の温度域、および、1000℃を超えて1500℃の温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定し、かつ、イリジウム製坩堝の温度が1500℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域にあるときは、上記育成炉内の雰囲気を、2体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるLT単結晶の育成を行なった。
【0147】
尚、イリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域にあるときも、上記育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない窒素雰囲気に設定した。
【0148】
また、LT単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0149】
その結果、33ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0150】
[比較例12]
GGG結晶用の原料として、50.3重量%のGd
3O
3、38.5重量%のGa
2O
3、8.1重量%のZrO
2、1.8重量%のCaO、1.3重量%のMgOを適用し、実施例1と同様にして原料粉末の成形体を作製した。
【0151】
次に、GGG基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0152】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0153】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0154】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0155】
また、GGG単結晶の育成は、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施し、かつ、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0156】
その結果、31ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0157】
[比較例13]
GGG結晶用の原料として、54.0重量%のGd
3O
3、46.0重量%のGa
2O
3を適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、ビニール袋に詰め、更にゴム型に入れ、かつ、CIP装置に収容して原料粉末の成形体を作製した。
【0158】
次に、GGG基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1350℃、6時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0159】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0160】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるGGG単結晶(融点:1850℃)の育成を実施した。
【0161】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、1体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるGGG単結晶の育成を行なった。
【0162】
また、GGG単結晶の育成は、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施した。
【0163】
そして、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0164】
その結果、33ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0165】
[比較例14]
LT結晶用の原料として、86.4重量%のTa
2O
3、13.6重量%のLi
2CO
3を適用し、これ等原料粉末を攪拌機で混合した後、実施例1と同様にして原料粉末の成形体を作製した。
【0166】
次に、LT基板が敷き詰められたPt坩堝内に、作製された成形体を上記坩堝の壁面に成形体が接触しないように挿入し、この状態で、大気中、1500℃、15時間仮焼して、複合酸化物化がある程度進行した複合酸化物の原料を得た。
【0167】
尚、得られた複数ロットの複合酸化物原料についてPtの濃度を分析したところ、いずれの複合酸化物原料も60ppm未満であった。
【0168】
こうして得られた複合酸化物の原料とイリジウム製坩堝を用い、Cz法によるLT単結晶(融点:1750℃)の育成を実施した。
【0169】
すなわち、育成炉内に配置されたイリジウム製坩堝の温度が、初期温度から300℃未満の温度域、300℃〜1000℃の温度域、1000℃を超えて原料が融解するまでの温度域、および、原料が融解している温度域(全ての温度域)にあるとき、育成炉内の雰囲気を、2体積%の酸素を含む窒素雰囲気に設定してCz法によるLT単結晶の育成を行なった。
【0170】
また、LT単結晶の育成は、実施例1と同様、イリジウム製坩堝に複合酸化物の原料を追加しながら何度も繰り返し実施した。
【0171】
そして、単結晶の育成後に、イリジウム製坩堝の外観を観察してクラック発生の有無を確認した。
【0172】
その結果、36ロットの単結晶育成後にもクラックの発生がないことを確認できた。
【0173】
[評 価]
(1)Pt濃度が60ppm未満である複合酸化物原料を適用する要件(A)と、イリジウム製坩堝の温度が300℃〜1000℃の温度域にあるとき、育成炉内の雰囲気を、酸素を含まない不活性ガス雰囲気に設定する要件(B)を満たす実施例1〜3に係る複合酸化物単結晶の製造方法は、53ロット〜67ロットの単結晶育成後においてもイリジウム製坩堝にクラックが発生しておらず、イリジウム製坩堝の長寿命化が飛躍的に改善されていることが確認される。
【0174】
(2)一方、上記要件(A)と(B)を満たさない比較例1〜6に係る複合酸化物単結晶の製造方法は、3ロット〜14ロットの単結晶育成後においてクラックの発生が認められ、実施例1〜3に係る複合酸化物単結晶の製造方法と比較してイリジウム製坩堝の長寿命化が図られていないことが確認される。
【0175】
(3)また、上記要件(A)は満たさないが要件(B)を満たす比較例7〜11に係る複合酸化物単結晶の製造方法は、30ロット〜34ロットの単結晶育成後においてもイリジウム製坩堝にクラックが発生しておらず、比較例1〜6に係る複合酸化物単結晶の製造方法との比較においてイリジウム製坩堝の長寿命化が図られているが、実施例1〜3に係る複合酸化物単結晶の製造方法と較べて若干劣ることも確認される。
【0176】
(4)更に、上記要件(A)は満たすが要件(B)を満たさない比較例12〜14に係る複合酸化物単結晶の製造方法は、31ロット〜36ロットの単結晶育成後においてもイリジウム製坩堝にクラックが発生しておらず、比較例1〜6に係る複合酸化物単結晶の製造方法との比較においてイリジウム製坩堝の長寿命化が図られているが、実施例1〜3に係る複合酸化物単結晶の製造方法と較べて若干劣ることも確認される。
【0177】
(5)また、上記要件(A)は満たさないが要件(B)を満たす比較例7〜11に係る複合酸化物単結晶の製造方法と、上記要件(A)は満たすが要件(B)を満たさない比較例12〜14に係る複合酸化物単結晶の製造方法は、上記要件(A)と(B)を満たさない比較例1〜6に係る複合酸化物単結晶の製造方法との比較において、略同等のイリジウム製坩堝の長寿命化が図られていることも確認される。