(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6103285
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】精製された珪酸アルカリ水溶液及びシリカゾルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/32 20060101AFI20170316BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20170316BHJP
B24B 37/00 20120101ALN20170316BHJP
H01L 21/304 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
C01B33/32
C01B33/141
!B24B37/00 H
!H01L21/304 622B
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-76025(P2016-76025)
(22)【出願日】2016年4月5日
(62)【分割の表示】特願2013-532626(P2013-532626)の分割
【原出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-183096(P2016-183096A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-192793(P2011-192793)
(32)【優先日】2011年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江間 希代巳
(72)【発明者】
【氏名】高熊 紀之
(72)【発明者】
【氏名】西村 透
(72)【発明者】
【氏名】河下 直紀
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩司
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−294420(JP,A)
【文献】
特表2001−518979(JP,A)
【文献】
特表2002−511379(JP,A)
【文献】
特開2006−036605(JP,A)
【文献】
特開平03−032739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
B24B 37/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度を0.5〜10.0質量%に調整し、これを1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上である絶対孔径0.3〜3.0μmのメンブレン型フィルターで濾過することを特徴とする、以下の条件(1)を満たす精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法:
(1)下記測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%。
該測定方法Aは、シリカ濃度を4質量%に調整した25℃の珪酸アルカリ水溶液30mLを絶対孔径0.4μmのメンブレン型フィルター(濾過面積4.90cm2)で濾過した後、該メンブレン型フィルターを走査型電子顕微鏡で5000倍に拡大して観察したとき、縦15μm、横20μmの長方形の観察域を1視野として、この1視野に上記平板状の微小粒子が1つ以上存在したときを1カウントとし、互いに重ならない100視野の総てについてカウントの有無を決定し、得られたカウント総数を該平板状の微小粒子の存在量(%)とする方法である。
【請求項2】
前記除去率が60%以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記除去率が70%以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記除去率が80%以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記除去率が90%以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記珪酸アルカリ水溶液のアルカリ成分が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン及びセシウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項で得られる精製された珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換して活性珪酸液を得た後、アルカリ性水溶液中に該活性珪酸液を添加し、加熱して、活性珪酸を重合することを特徴とする、以下の条件(2)を満たすシリカゾルの製造方法:
(2)請求項1に記載の測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%。
【請求項8】
前記アルカリ性水溶液のアルカリ成分が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミン化合物及び第4級アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のシリカゾルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の微小粒子の異物が低減された精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法に係わり、そして、平板状の微小粒子の異物が低減された精製された珪酸アルカリ水溶液を用いたシリカゾルの製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー磁気ディスクの記録密度を増加させるために磁気ヘッドの浮上厚さは極めて低く、10nm以下になってきている。磁気ディスク基板の製造工程には、表面研磨工程が欠かせず、コロイダルシリカを含んだ研磨剤等により表面研磨が行われている。
研磨剤には表面平滑性(例えば、表面粗さ〔Ra〕及びうねり〔wa〕)が良好であることの他に、スクラッチ、ピット等の表面欠陥を引き起こさないことが求められている。
【0003】
また、半導体分野においても、回路の高集積化、動作周波数の高速化に伴って配線の微細化が進んでいる。半導体デバイスの製造工程においても、パターン形成面のより一層の平滑化が望まれている。
【0004】
これら磁気ディスク基板や半導体基板の平坦化工程では、コロイダルシリカを含む研磨剤による研磨工程に続いて、砥粒であるコロイダルシリカ及び微小な粒子を洗浄により除去することが行われている。
洗浄には、酸性又はアルカリ性の薬品の水溶液が用いられる。酸性の薬品としては、例えばフッ化水素酸、フッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウム、ホウフッ化水素酸等のフッ素イオンを含む化合物、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、過塩素酸等が用いられる。アルカリ性の薬品としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン類等が用いられる。また、これらの酸性又はアルカリ性の薬品の水溶液にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ジオクチルスルホサクシネート等の界面活性剤やトリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ゼオライト、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤等を成分として添加することも行われる場合がある。
上記の研磨剤に用いられるコロイダルシリカは、球状又はほぼ球状であるため、従来行われてきた洗浄方法により除去可能であるが、最近、従来の洗浄では容易に除去できない粒子が存在することが判ってきた。
【0005】
また、1nm以上の大きさの粒子が実質的に存在しない珪酸アルカリ水溶液を得る方法として、珪酸アルカリ水溶液の粘度を予め1〜50mPa・sに調節し、これを分画分子量15000以下の限外濾過膜を通過させる方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−294420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の洗浄では容易に除去できない粒子は、走査型電子顕微鏡観察により、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さ1〜100nmの平板状の微小粒子であることが確認された。この平板状の微小粒子は、研磨剤の原料として用いられるシリカゾルに由来するものであることが判った。
従来、珪酸アルカリ水溶液は、原料カレットを加熱溶解した直後の粗珪酸アルカリ水溶
液に珪藻土等の濾過助剤を加えて濾過して精製することが行われているが、この方法では走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm厚さ、1〜100nmの平板状の微小粒子の含有量を低減させることはできなかった。
また、特許文献1の方法では、一般に限外濾過膜の持つ孔径は0.01μm以下と言われており、珪酸アルカリ水溶液の濾過速度が著しく遅く、大量生産には不向きであった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さ1〜100nmの平板状の微小粒子を低減させたシリカゾルを製造する方法を提供することにあり、そのために、シリカゾルの原料となる珪酸アルカリ水溶液について、前記の平板状の微小粒子を低減させる方法を提供することを本発明の課題とする。
また、本発明の目的は、濾過速度が速く、大量生産可能な上記平板上の微小粒子を低減させたシリカゾルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、珪酸アルカリ水溶液を特定の条件で濾過することにより、課題を解決する方法を見出した。
即ち、第1観点として、珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度を0.5〜10.0質量%に調整し、これを1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターで濾過することを特徴とする、以下の条件(1)を満たす精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法:
(1)測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%、
該測定方法Aは、シリカ濃度を4質量%に調整した25℃の珪酸アルカリ水溶液30mLを絶対孔径0.4μmのメンブレン型フィルター(濾過面積4.90cm
2)で濾過した後、該メンブレン型フィルターを走査型電子顕微鏡で5000倍に拡大して観察したとき、縦15μm、横20μmの長方形の観察域を1視野として、この1視野に上記平板状の微小粒子が1つ以上存在したときを1カウントとし、互いに重ならない100視野の総てについてカウントの有無を決定し、得られたカウント総数を該平板状の微小粒子の存在量(%)とする方法である、
第2観点として、前記除去率が60%以上である第1観点に記載の製造方法、
第3観点として、前記除去率が70%以上である第1観点に記載の製造方法。
第4観点として、前記除去率が80%以上である第1観点に記載の製造方法、
第5観点として、前記除去率が90%以上である第1観点に記載の製造方法、
第6観点として、前記フィルターが、メンブレン型フィルター、プリーツ型フィルター、デプス型フィルター、糸巻き型フィルター、サーフェース型フィルター、ロール型フィルター、デプスプリーツ型フィルター、珪藻土含有型フィルターからなる群から選ばれる少なくとも1種である第1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の製造方法、
第7観点として、前記フィルターが、絶対孔径0.3〜3.0μmのメンブレン型フィルターである1観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の製造方法。
第8観点として、前記珪酸アルカリ水溶液のアルカリ成分が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン及びセシウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の製造方法、
第9観点として、第1観点乃至第8観点のいずれか一つで得られる精製された珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換して活性珪酸液を得た後、アルカリ性水溶液中に該活性珪酸液を添加し、加熱して、活性珪酸を重合することを特徴とする、以下の条件(2)を満たすシリカゾルの製造方法:
(2)第1観点に記載の測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%、
第10観点として、前記アルカリ性水溶液のアルカリ成分が、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミン化合物及び第4級アンモニウムイオンからなる群から選ばれる
少なくとも1種である第9観点に記載の製造方法、
である。
特に本発明は、第7観点に記載の精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法及び該水溶液からのシリカゾルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法は、従来行われていた珪酸アルカリ水溶液の濾過では残留していた前記0.2〜4.0μm、1〜100nmの平板状の微小粒子を効率よく除去することができる。このため、本発明により得られた精製された珪酸アルカリ水溶液を用いて製造したシリカゾルにおいても前記の平板状の微小粒子の残存量は、従来のシリカゾルに比べて低減される。
この走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さ1〜100nmの平板状の微小粒子が低減されたシリカゾルを用いた研磨剤を磁気ディスク基板や半導体基板の平坦化工程に用いた場合に、洗浄工程の後にこれら基板上に前記平板状の微小粒子は残留しないか、ほとんど残留しない。
【0011】
また、本発明の製造方法は、珪酸アルカリ水溶液の濾過速度が大きく、精製された珪酸アルカリ水溶液及びそれを用いて製造するシリカゾルの大量生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に用いられる珪酸アルカリ水溶液は、そのSiO
2/M
2Oモル比(Mはアルカリ金属元素を表す。)に制限はなく、市販の珪酸アルカリ水溶液を用いることができるが、一般にはSiO
2/M
2Oモル比は2〜4である。
珪酸アルカリ水溶液のアルカリ成分は、アルカリ金属イオンであり、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。中でも、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンの珪酸アルカリ水溶液は市販されており、安価に入手可能である。珪酸ナトリウム水溶液は最も汎用であり、好ましく用いることができる。市販の珪酸ナトリウム水溶液のシリカ濃度は、19〜38質量%である。
【0013】
本発明の測定方法Aに従い計測された一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%である精製された珪酸アルカリ水溶液の製造方法では、まず珪酸アルカリ水溶液を水を用いてシリカ濃度0.5〜10.0質量%に調整する。次いで、1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターを用意し、前記の濃度調整された珪酸アルカリ水溶液をフィルターで濾過する。
【0014】
本発明において用いられるフィルターについて、1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は50%以上である。また前記除去率は60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。ここで1次粒子径1.0μm以上の粒子の除去率は、直径1.0μmの単分散ポリスチレンラテックス粒子の水分散液を濾過した際の濾過前後の該ラテックス粒子の個数から算出される。直径1.0μmの単分散ポリスチレンラテックス粒子は、例えばJSR株式会社製STANDEX−SC−103−S、Thermo Fisher
Scientific社製標準粒子4009A等を用いることができる。
【0015】
本発明において用いられるフィルターの材質は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、セルロース・エポキシ樹脂、ガラス繊維・アクリル樹脂、コットン、ポリスルフォン、ナイロン、ポリエーテルスルフォンからなる群から選ばれるすくなくとも1種であり、これらは単独で又は複合して若しくは重ね併せて使用される。
また、これらの材質でフィルターが製作されるときに、珪藻土、シリカ・アルミナ、ゼオライトとシリカ・アルミナとの混合物などの濾過助剤をフィルターに織り込んだものを使用することもできる。
【0016】
本発明において用いられるフィルターは、その製作方法によって、メンブレン型フィルター(多孔質膜フィルター)、プリーツ型フィルター(ひだ加工したフィルター)、デプスフィルター(濾材表面だけでなく、濾材内部でも固体粒子を捕捉するフィルター)、ロールタイプフィルター(ロール巻きにしたフィルター)、糸巻きタイプフィルター(糸巻き)、サーフェスタイプフィルター(粒子状物質をフィルター内部でなく、主にフィルターの一次側の面で捕捉するタイプのフィルター)、珪藻土含有フィルターなどに分類される。本発明に用いられるフィルターの製作方法は特に限定されず、上記の方法のいずれも採用することができるが、中でもメンブレン型フィルターは精密濾過に効果的である。特に絶対孔径0.3〜3.0μmのメンブレン型フィルターは平板状の微小粒子を極めて効果的に除去可能である。
【0017】
これらのフィルターの使用可能時間を延ばすために、1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%未満のフィルターを前処理フィルターとして用い、次いで1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターを用いて濾過することもできる。
前記1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターを用いて珪酸アルカリ水溶液を濾過する際の温度は常温で良いが、珪酸アルカリ水溶液の粘度が高い場合はフィルターの濾過性能を損なわない温度にまで珪酸アルカリ水溶液の温度を上げて濾過することができる。珪酸アルカリ水溶液の温度は50℃以下が好ましく、更に好ましくは15℃以上、35℃以下である。
前記1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターを用いて珪酸アルカリ水溶液を濾過する際の濾過速度は、珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度、粘度及び用いられるフィルターにより異なるが、用いるフィルターの濾過面積1m
2当たり13〜400リットル/分である。
【0018】
前記1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターにより濾過された精製された珪酸アルカリ水溶液中に含まれる平板状の微小粒子の測定方法Aは以下の通りである。
〔測定方法A〕
シリカ濃度を4質量%に調整した25℃の被観察液30mlを絶対孔径0.4μmのポリカーボネート製メンブレン型フィルター(濾過面積4.90cm
2、直径25mm)に通過させ、通液後の前記メンブレン型フィルターを走査型電子顕微鏡で5000倍に拡大して観察したとき、縦15μm、横20μmの長方形の観察域を1視野として、この1視野に一辺の長さが0.2μm〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子が1つ以上存在したときを1カウントとし、互いに重ならない100視野の総てについてカウントの有無を決定し、得られたカウント総数を前記平板状の微小粒子の存在量(%)とする。前記ポリカーボネート製メンブレン型フィルターとしては、例えば日本ミリポア(株)社製アイソポアHTTP−02500を使用することができる。
この場合、前記被観察液は1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターにより濾過された精製された珪酸アルカリ水溶液である。
【0019】
本発明の方法で珪酸アルカリ水溶液を濾過することにより、測定方法Aに従い計測された一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%である精製された珪酸アルカリ水溶液が得られる。
【0020】
本発明はまた、前記の1次粒子径1.0μmの粒子の除去率が50%以上であるフィルターにより濾過して得られた、測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.
0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%である精製された珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換して活性珪酸液を得た後、アルカリ性水溶液中で該活性珪酸を重合することを特徴とする、以下の条件を満たすシリカゾルの製造方法:
(1)上記の測定方法Aに従い計測された、一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量が0〜30%、
である。
この場合、被観察液は前記シリカゾルである。
【0021】
精製された珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換して活性珪酸液を得る方法は、従来の一般的な方法を採用することができる。例えばシリカ濃度2〜4質量%の精製された珪酸アルカリ水溶液に水素型陽イオン交換樹脂(例えばアンバーライト(登録商標)120B:ダウ・ケミカル社製)を投入し、該水溶液のpHが酸性、好ましくはpH2〜4になったところで陽イオン交換樹脂を分離する方法、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに充填し、シリカ濃度2〜4質量%の精製された珪酸アルカリ水溶液を通過させる方法などが採用できる。イオン交換する精製された珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度は、0.1〜10.0質量%の範囲から選択してよいが、得られる活性珪酸液の安定性が良好な範囲は、シリカ濃度0.1質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下である。
【0022】
得られる活性珪酸液は、アルカリ性水溶液中に添加され、加熱されて、活性珪酸が重合される。該活性珪酸の重合によりコロイダルシリカ粒子が生成して、シリカゾルが得られる。アルカリ性水溶液に添加される活性珪酸液のシリカ濃度は0.1〜10.0質量%の範囲であり、0.1質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下である。
【0023】
前記アルカリ性水溶液のアルカリ成分は、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミン化合物及び第4級アンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
アルカリ金属としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
アミン化合物としては、水溶性のアミン化合物が好ましく、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−(β−アミノメチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モルホリン等が挙げられる。
第4級アンモニウムイオンとしては、テトラエタノールアンモニウムイオン、モノメチルトリエタノールアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0024】
添加される活性珪酸液とアルカリ性水溶液との適切な量比は、添加される活性珪酸液の全量中のシリカモル数とアルカリ性水溶液中のアルカリ成分のモル数との比により記述することができ、シリカモル数/アルカリ成分モル数の比として25〜100の範囲が好ましい。
【0025】
前記活性珪酸が重合される際のアルカリ水溶液の温度は、20〜300℃の範囲で選択することができる。重合の際の温度が低ければ、得られるコロイダルシリカ粒子の粒子径は小さくなり、高ければ、得られるコロイダルシリカの粒子径は大きくなる。得られるコロイダルシリカ粒子の粒子径は、活性珪酸の重合条件により異なるが、透過型電子顕微鏡で観察される一次粒子径として3〜1000nmの範囲である。
【0026】
活性珪酸の重合により得られたコロイダルシリカ粒子を含む希薄シリカゾルは、蒸発濃縮法、限外濾過法等の従来より知られた方法により、濃縮することができる。シリカゾルの濃縮は、通常、シリカ濃度50質量%程度まで行うことができる。
【実施例】
【0027】
〔1次粒子径1.0μmの粒子の除去率測定方法〕
用いるフィルターについて、1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は以降の方法により測定した。直径1.0μmの単分散ポリスチレンラテックス粒子(JSR社製、STADEX SC−103−S)0.5mlを純水5000mlに分散させた水分散液を準備し、液中パーティクルセンサKS−42C(リオン株式会社製)を用いて1次粒子径1.0μmの粒子数(a)を測定した。また、前記水分散液に使用した純水の粒子数(b)を測定し、ブランク1とした。用いるフィルターで前記水分散液を濾過し、濾過後の水分散液中の1次粒子径1.0μmの粒子数(c)を測定した。また、用いるフィルターは純水のみを予め濾過し、濾過した純水中の粒子数(d)を測定し、ブランク2とした。用いるフィルターの1次粒子径1.0μmの除去率は、下記の式(I)から算出した。
式(I) … 除去率(%)=[1−{(c−d)/(a−b)}]×100
【0028】
実施例1
市販の珪酸ナトリウム水溶液(JIS3号、SiO
229.3質量%、Na
2O9.5質量%)1000gに純水6325gを添加して希釈した。希釈した珪酸ナトリウム水溶液はSiO
24.0質量%、Na
2O1.3質量%、比重1.038の物性であり、測定条件Aで測定したときの走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量は100%であった。この珪酸ナトリウム水溶液をグラスファイバーと珪藻土を混抄させたポリプロピレン不織布の公称孔径0.5μmのプリーツ型フィルター(ロキテクノ社製PEH−005:1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は99.9%、濾過面積0.2m
2、フィルター全長250mm)1本を用いて、流量3リットル/分で濾過を行った。濾過後の珪酸ナトリウム水溶液を測定方法Aに従い計測した結果、前記平板状の微小粒子の存在量は14%であった。
【0029】
実施例2
濾過に用いるフィルターとして、1段目にポリプロピレン不織布の公称孔径0.5μmのデプス型フィルター(ロキテクノ社製SL−005:1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は90%、濾過面積0.3m
2、フィルター全長250mm)1本を用い、2段目にグラスファイバーと珪藻土を混抄させたポリプロピレン不織布の公称孔径0.5μmのプリーツ型フィルター(ロキテクノ社製PEH−005:1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は99.9%、濾過面積0.2m
2、フィルター全長250mm)1本を直列に接続し、流量5リットル/分とした他は、実施例1と同様にしてSiO
24.0質量%の希釈珪酸ナトリウム水溶液7325gの濾過を行った。濾過後の珪酸ナトリウム水溶液を測定方法Aに従い計測した結果、前記平板状の微小粒子の存在量は6%であった。
【0030】
実施例3
市販の珪酸ナトリウム水溶液(JIS3号、SiO229.3質量%、Na
2O9.5質量%)1000gに純水6325gを添加して希釈した。希釈した珪酸ナトリウム水溶液はSiO
24.0質量%、Na
2O1.3質量%、比重1.038の物性であり、測定条件Aで測定したときの走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量は100%であった。この珪酸ナトリウム水溶液をポリエーテルスルフォン製の絶対孔径0.45μmのメンブレン型フィルター(ロキテクノ社製CES−005:1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は100%、濾過面積0.75m
2、フィルター全長250mm)1本を用いて、流量3リットル/分で濾過を行った。濾過後の珪酸ナトリウム水溶液を測定方法Aに従い計測した結果、前
記平板状の微小粒子の存在量は4%であった。
【0031】
実施例4
実施例1で得られたフィルター濾過後の珪酸ナトリウム水溶液4000gを陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)120B:ダウ・ケミカル社製)500mLを充填したイオン交換塔に2500g/時の速度で通液し、活性珪酸液を得た。得られた活性珪酸液は比重1.019、pH2.90、SiO
23.55質量%で無色透明の液体であった。次いで容積3Lのガラス製セパラブルフラスコに32質量%NaOH水溶液を4.55gと純水379gを添加し、攪拌しながら85℃に加熱した。この加熱されたNaOH水溶液に前記活性珪酸液723gを430g/分の速度で添加した後、液温を100℃まで上げ、更に活性珪酸液1879gを添加した。添加終了後、液温を100℃に保ちながら6時間攪拌を続けた。加熱終了後、冷却し、分画分子量5万の限外濾過膜にて濃縮してシリカゾルを得た。このシリカゾルの物性は比重1.211、pH9.9、粘度4.5、シリカ濃度30.4重量%、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子径は10〜40nmであった。であった。得られたシリカゾルを測定方法Aに従い計測したところ、前記平板状の微小粒子の存在量は1%であった。
【0032】
比較例1
市販の珪酸ナトリウム水溶液(JIS3号、SiO
229.3質量%、Na
2O9.5質量%)1000gに純水6325gを添加して希釈した。希釈した珪酸ナトリウムはSiO24.0質量%、Na
2O1.3質量%、比重1.038の物性であった。得られた珪酸ナトリウム水溶液4000gを陽イオン交換樹脂(アンバーライト(登録商標)120B、ダウ・ケミカル社製)500mLを充填したイオン交換塔に2500g/時の速度で通液し、活性珪酸液を得た。得られた活性珪酸液は比重1.020、pH2.88、SiO23.55質量%で無色透明の液体であった。この活性珪酸液中に含まれる、測定方法Aに従い計測したときの前記平板状の微小粒子の存在量は100%であった。この活性珪酸液を用いた以外は実施例4に記載の方法でシリカゾルを製造した。このシリカゾルの物性は比重1.212、pH9.9、粘度4.6、シリカ濃度30.5重量%、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子径は10〜40nmであった。得られたシリカゾルを測定方法Aに従い計測したときの前記平板状の微小粒子の存在量は100%であった。
【0033】
比較例2
市販の珪酸ナトリウム水溶液(JIS3号、SiO229.3質量%、Na
2O9.5質量%)1000gに純水6325gを添加して希釈した。希釈した珪酸ナトリウム水溶液はSiO24.0質量%、Na
2O1.3質量%、比重1.038の物性であり、測定条件Aで測定したときの走査型電子顕微鏡で観察される一辺の長さが0.2〜4.0μm、厚さが1〜100nmの平板状の微小粒子の存在量は100%であった。この珪酸ナトリウム水溶液をポリプロピレン不織布の公称孔径20μmのデプス型フィルター(ロキテクノ社製SL−200:1次粒子径1.0μmの粒子の除去率は20%、濾過面積0.3m
2、フィルター全長250mm)1本を用いて、流量3リットル/分で濾過を行った。濾過後の珪酸ナトリウム水溶液を測定方法Aに従い計測した結果、前記平板状の微小粒子の存在量は100%であった。
【0034】
比較例3
比較例2で得られたフィルター濾過後の珪酸ナトリウム水溶液を用いた以外は実施例4と同様にしてシリカゾルを得た。このシリカゾルの物性は比重1.214、pH9.9、粘度5.0、シリカ濃度30.7重量%、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子径は10〜40nmであった。得られたシリカゾルを測定方法Aに従い計測したところ、前記平板状の微小粒子の存在量は100%であった。
【0035】
比較例4
珪酸アルカリ水溶液の濾過に分画分子量10000のポリスルフォン製限外濾過膜(濾過面積45cm
2、直径76mm)を用いて、実施例1と同様の製法で作製した珪酸アルカリ水溶液を濾過に供した。濾過の最初の5分間の平均流量は濾過面積1m
2当たり1リットル/分であった。また、濾過開始から100分後の濾過速度は濾過面積1m
2当たり0.4リットル/分に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明で得られる精製された珪酸アルカリ水溶液を原料として製造されたシリカゾルは、平板状の微小粒子が少ないため、金属、合金、ガラスなどの基材の表面加工において、微小な異物を残留させることがなく、異物による配線不良、表面荒れなどの欠陥を防止し、表面精度の高い基板の製造に利用することができる。