(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料供給事業者が所有する燃料供給手段から燃料が供給され、出力が一定となるように前記燃料供給事業者のものとして稼働する固体酸化物型燃料電池である第1燃料電池と、
前記燃料供給手段から供給される燃料により発電した電気を電気事業者が所有する電力系統に送電可能であり、出力が変動するように前記電気事業者のものとして稼働する固体酸化物型燃料電池である第2燃料電池と、
前記第1燃料電池及び前記第2燃料電池から排出された未燃の燃料で駆動するガスタービンと、
前記ガスタービンと同軸上に接続されるガスタービン圧縮機と、
前記ガスタービンから排出された排ガスの熱により温水又は蒸気を生成する排熱回収装置と、
電気及び前記排熱回収装置で生成された蒸気で駆動して空気を圧縮する空気圧縮装置とを備え、
前記第1燃料電池には、前記ガスタービンとともに駆動する前記ガスタービン圧縮機により圧縮された空気が供給され、
前記第2燃料電池には、前記空気圧縮装置で圧縮された空気が供給される
ことを特徴とする熱電併給型調整用電源。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〈実施形態1〉
以下、燃料供給事業者として燃料ガスを供給するガス事業者を例にとり、該ガス事業者及び電気事業者により運用される本発明の熱電併給型調整用電源について説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る熱電併給型調整用電源1は、需要家施設に配備されている。
【0023】
ガス事業者は、燃料として天然ガスを供給するガス供給手段20(燃料供給手段)を所有している。ガス供給手段20は、需要家施設の熱電併給型調整用電源1に天然ガスを供給可能になっている。
【0024】
電気事業者は、発電を行う火力発電所11や変電、送電、配電する送配電網10を含む電力系統を有している。火力発電所11は、定格時に高効率で運転される発電設備を備えたものである。なお、従来では、電気事業者は、定格時に高効率で運転されると共に、負荷待機時に効率を落として低効率で運転される発電設備を備えた負荷調整用の火力発電所を有していた。詳細は後述するが、本発明によれば、このような負荷調整用の火力発電所が不要となるか、若しくはその設備数を低減することができる。火力発電所11は、送配電網10を介して、需要家施設の負荷4に送電可能となっている。
【0025】
熱電併給型調整用電源1は、詳細な構成は後述するが、次のような機能を有している。一つは、ガス供給手段20(燃料供給手段)から燃料として天然ガスが供給され、該天然ガスを用いて発電する機能である。そして、発電した電気を需要家施設に配置された負荷4に送電可能となっている。さらに、該電気は、電気事業者の送配電網10に送電(売電)可能となっている。
【0026】
また、熱電併給型調整用電源1は、発電時に生じた排熱を用いて熱を供給する機能を有している。具体的には、排熱を温水や水蒸気として需要家施設の給水設備5や暖房設備6や蒸気設備7等に供給可能となっている。なお、温水はタンク等に貯留するようにしてもよい。
【0027】
また、熱電併給型調整用電源1には、出力を制御する制御装置8が取り付けられており、電気事業者側の制御装置12からの制御信号により熱電併給型調整用電源1の出力を変更することが可能となっている。
【0028】
図2を用いて、熱電併給型調整用電源1の詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る熱電併給型調整用電源の詳細な構成図である。
【0029】
熱電併給型調整用電源1は、発電装置30を備えている。発電装置30は、ガス供給手段20(
図1参照)により供給された天然ガスを用いて発電するものである。具体的には、発電装置30は、内部を高温・高圧に保持可能な容器31に、複数(ここでは2つ)の固体酸化物型燃料電池(SOFC)が設けられたものである。
【0030】
SOFCは、電解質層を挟んで空気極と燃料極(図示せず)とが設けられたものである。燃料極側には、燃料ガス室を経由して水素ガスが供給され、空気極側には空気室を介して空気が供給されるようになっている。
【0031】
本実施形態では、発電装置30は、容器31内に収容されたSOFCを2つ有している。これらのうち1つを第1燃料電池A、他の1つを第2燃料電池Bとする。
【0032】
第1燃料電池Aは、ガス供給手段20から天然ガスが供給され、ガス事業者のものとして稼働するものである。「第1燃料電池Aがガス事業者のものとして稼働する」とは、ガス事業者が第1燃料電池Aの運転に関するコスト(燃料の費用やメンテナンス費用など)を負担し、また、第1燃料電池Aで発電した電力を販売して利益を得ること、さらには第1燃料電池Aの排熱により製造した温水や蒸気を販売して利益を得ることをいう。
【0033】
第2燃料電池Bは、発電した電力を電力系統に送電可能であり、電気事業者のものとして稼働するものである。「第2燃料電池Bが電気事業者のものとして稼働する」とは、電気事業者が第2燃料電池Bの運転に関するコスト(燃料の費用やメンテナンス費用など)を負担し、また、第2燃料電池Bで発電した電力を送配電網10に供給することをいう(電力を需要家施設に販売してもよい)。さらには第2燃料電池Bの排熱により製造した温水や蒸気を販売して利益を得てもよい。
【0034】
第1燃料電池Aは、出力が一定となるように稼働するように制御されている。第2燃料電池Bは、電力系統の電力需要の変動、又は熱需要の変動に応じて出力が変動するように制御されている。第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの動作の詳細については後述する。
【0035】
さらに、少なくとも第1燃料電池Aは(場合によっては第2燃料電池Bも)、その排熱を熱交換器43に供給可能となっている。これにより、熱交換器43は、第1燃料電池Aで生じた排熱で熱交換して温水や水蒸気を製造することが可能となっている。
【0036】
また、容器31内には、改質器32が配置されている。改質器32は、ガス供給手段20から供給される天然ガスを改質して水素ガスを生成するものである。改質器32は、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの各燃料ガス室に接続されており、それらに水素ガスを供給可能になっている。
【0037】
さらに、容器31内には、予熱器33が配置されている。予熱器33は、後述するガスタービン(GT)圧縮機46から空気が供給され、該空気をSOFCの動作温度に予熱するものである。予熱器33は、第1燃料電池Aの空気室に接続されており、それらに予熱した空気を供給可能になっている。
【0038】
一方、熱電併給型調整用電源1は、空気圧縮装置48を備えている。空気圧縮装置48は、圧縮機49、これの動力源となるスチームモータ50及び電動モータ51を備えている。
【0039】
圧縮機49は、予熱器35を介して第2燃料電池Bの空気室に接続されている。このような構成により、SOFCの動作温度に予熱された圧縮空気が第2燃料電池Bの空気室に供給可能となっている。また、スチームモータ50は、後述する熱交換器43で生成された蒸気により駆動し、圧縮機49に回転動力を伝達するものである。なお、スチームモータ50で仕事をした蒸気は図示しない冷却器により水となり熱交換器43に供給される。電動モータ51は、系内・系外の電気により駆動し、圧縮機49に回転動力を伝達するものである。
【0040】
このような空気圧縮装置48は、スチームモータ50及び電動モータ51が同軸で圧縮機49に接続されており、電気、蒸気の双方または何れか一方を動力源として圧縮機49を運転させることが可能となっている。
【0041】
上述したGT圧縮機46及び空気圧縮装置48により、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの各空気室は、空気が独立して供給されるように構成されている。
【0042】
そして、これらの第1燃料電池A及び第2燃料電池Bは、改質器32から水素ガス、予熱器33及び予熱器35から空気が供給されて発電する。発電した電気は集電され、インバータ34を介して負荷4若しくは送配電網10(
図1参照)に供給される。
【0043】
熱電併給型調整用電源1は、発電装置30の排熱により熱供給手段40を有している。本実施形態では、熱供給手段40は熱を温水・水蒸気として供給するほか、発電も行う、いわゆるコジェネシステムとして実装されている。
【0044】
具体的には、熱供給手段40は、ガス供給手段20から供給される天然ガスを燃焼する燃焼器41と、燃焼器41で燃焼されて生じる燃焼ガスにより駆動するガスタービン42と、熱交換器43(請求項の排熱回収装置の一例である。)を有している。
【0045】
熱交換器43は、ガスタービン42で仕事をしたガスの排熱を熱交換して温水や水蒸気を生成するものである。さらに、熱交換器43は、第1燃料電池Aの排熱を熱交換して温水や水蒸気を生成するものである。なお、熱交換器43は、第2燃料電池Bの排熱を利用してもよい。得られた温水や水蒸気は、需要家施設の給水設備5,暖房設備6及び蒸気設備7に供給される。さらに、水蒸気は、後述する空気圧縮装置48の圧縮機49にも供給可能となっている。
【0046】
ガスタービン42には、同軸上に発電機44が設けられており、ガスタービン42の運転に伴い発電する。発電機44で発電された電気は負荷4や送配電網10に供給可能となっている。
【0047】
また、熱供給手段40は、混合器45を有している。混合器45は、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bに供給された水素ガスや空気のうち未反応分が供給される。混合器45は、これらの水素ガスや空気の混合ガスを生成し、燃焼器41に供給するようになっている。これにより、燃焼器41においては、燃料ガスと共に混合ガスが燃焼される。
【0048】
このように、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bのそれぞれから排出された未反応の燃料は、燃焼器41及び混合器45で燃焼された後、共通したガスタービン42に供給される構成となっている。
【0049】
さらに、ガスタービン42には、同軸上にガスタービン(GT)圧縮機46が接続されている。GT圧縮機46は、ガスタービン42の動力により外部の空気を圧縮するものである。GT圧縮機46で圧縮された空気は、燃焼器41に供給されると共に、発電装置30の予熱器33に供給される。
【0050】
なお、熱供給手段40は、コジェネシステムとして構成されているがこのような態様に限定されない。例えば、発電装置30で生じる排ガス(第1燃料電池A及び第2燃料電池Bから排出されたガス)の熱を用いて熱を供給する熱交換器を熱供給手段としてもよい。
【0051】
上述した熱電併給型調整用電源1においては、発電装置30は燃料ガス(天然ガス)を用いて発電し、発電した電気を負荷4又は送配電網10に供給することが可能となっている。また、熱供給手段40は、燃料ガス、若しくは発電装置30で未反応の水素ガス及び空気を用いて、発電すると共に生じた排熱を用いて温水や水蒸気を生成し、需要家施設の給水設備5や暖房設備6や蒸気設備7に供給することが可能となっている。
【0052】
図3〜
図5を用いて、熱電併給型調整用電源1の動作を説明する。
図3は通常運転時の熱電併給型調整用電源1の動作を説明する概略図である。通常運転時とは、熱電併給型調整用電源1が電力需要に応じて出力を増減させていないときをいう。
【0053】
図3左上のグラフは、熱電併給型調整用電源1全体について、負荷率とエネルギー効率の特性を示すグラフである。X軸は負荷率(プラント負荷率)を表し、Y軸はエネルギー効率を表している。
【0054】
熱電併給型調整用電源1は、エネルギー効率が負荷率の中間でピークとなる特性を有する。エネルギー効率とは、熱電併給型調整用電源1の発電効率である。また、負荷率とは、ある期間中の負荷の平均需要電力と最大需要電力の割合をいう。
【0055】
「熱電併給型調整用電源1の特性が負荷率の中間でピークとなる」とは、特性が上に凸な曲線であり、負荷率(0〜100%)の間の何れかの箇所でエネルギー効率の最大値(極大値)が存在することをいう。本実施形態の熱電併給型調整用電源1は、プラント負荷率が約50%であるときにエネルギー効率が最大(極大)である約55%となる特性を有している。
【0056】
図3右上のグラフは、電気事業者が有する電力系統における電力需要推移を示している。X軸は時刻を、Y軸は電力需要を示している。例えば、朝及び夜間の電気需要は少なく、朝から昼間にかけて電力需要が上昇し、しばらくの間、電力需要が高いまま推移し、夕方にかけて電力需要が減少している。
【0057】
このような電力需要の変動が少ない朝方や昼間では、火力発電所11が定格運転をしている。例えば、朝方の時間帯Aには1基の火力発電所11が定格運転を行ってその時間帯Aの電力需要を満たしている。また、昼間の時間帯Bには2基の火力発電所11が定格運転を行って時間帯Bの電力需要を満たしている。
【0058】
火力発電所11の定格運転時では、熱電併給型調整用電源1は、
図3左下に示すように動作する。すなわち、熱電併給型調整用電源1は、ガス供給手段20から供給されたガスを用いて発電し、負荷4に電気を供給する。さらに、発電時の排熱で温水・蒸気を生成し、需要家施設の給水設備5や暖房設備6や蒸気設備7に供給する。なお、熱電併給型調整用電源1において、発電した電気が余剰であるならば、送配電網10に送電してもよい。
【0059】
第1燃料電池Aと第2燃料電池Bの運転状況は、第1燃料電池Aについては、出力が一定となるように稼働させる。このとき、その出力の際にエネルギー効率が最大(極大)となるようにする。一方、第2燃料電池Bについては、そのときの電力系統の負荷に応じた出力とする。
【0060】
このように、第1燃料電池Aは、エネルギー効率が最大となる一定の出力で稼働するので、最もよい燃費で稼働することになり、ガス事業者にとってメリットがある。
【0061】
図4は、電力系統の負荷上昇時における熱電併給型調整用電源1の動作を説明する概略図である。右上のグラフに示すように、例えば、朝方から昼間にかけての時間帯Aにおいて電力需要が急激に増大した場合について説明する。
【0062】
朝方、1基の火力発電所11が定格運転をしている状況で、電力需要が急激に増大する場合、待機している別の火力発電所11を定格運転にする。しかし、火力発電所11は、定格運転になるまで時間が掛かるので、直ぐには電力需要を吸収できない(従来においては、このような需要の増大に対応できるように低効率で火力発電所を待機運転させていた)。
【0063】
本発明では、このように電力需要が増大したとき、すなわち待機状態にある火力発電所11を定格運転にするまでの間に、電気事業者は、制御装置12から制御装置8に制御信号を送信し、熱電併給型調整用電源1の出力を増大させる(負荷率を高める)。このとき熱電併給型調整用電源1としては、左上のグラフに示すように、負荷率がピークよりも高い負荷率(点Y、約80%)で運転することになる。
【0064】
このような電力需要の増大時、熱電併給型調整用電源1は、
図4左下に示すように動作する。熱電併給型調整用電源1は、通常運転時よりも多く出力するように発電を行い、発電した電気のうち一部を送配電網10に供給する。このように送配電網10に電気が供給されることで、電力需要の増大が吸収される。
【0065】
熱電併給型調整用電源1から送配電網10に供給される電力により、電力需要の増大を吸収している間、待機状態にあった火力発電所11は定格運転状態になる。このように火力発電所11が定格運転に至ったら、制御装置12及び制御装置8により熱電併給型調整用電源1の負荷率を最もエネルギー効率が高い状態に戻す(点X)。
【0066】
熱電併給型調整用電源1が電力需要の増大に対応するので、従来のような効率の悪い待機運転で火力発電所11を待機・運転する必要がなくなる。したがって、電気事業者側は、設備面、ランニングコスト面での負担が軽減される。また、熱電併給型調整用電源1が電力需要の増大に対応するときは、最もエネルギー効率が高い状態(点X)で稼働している。そして、この状態から出力を高めて送配電網10に電気を供給する。すなわち、高速で熱電併給型調整用電源1の負荷率を増加させることができるため、急激な電気需要の増大に対して直ちにそれを吸収するだけの電気を得ることができる。このように、電気事業者としては、費用面の負担を軽減しながらも、電気の安定供給をすることができる。
【0067】
第1燃料電池Aと第2燃料電池Bの運転状況は、通常運転時と同様に、第1燃料電池Aについては、エネルギー効率が最大であり、出力が一定となるように稼働させる。一方、第2燃料電池Bについては、そのときの電力系統の負荷に応じた出力とする。
【0068】
このように、第1燃料電池Aは、エネルギー効率が最大となる一定の出力で稼働するので、最もよい燃費で稼働することになり、ガス事業者にとってメリットがある。また、第2燃料電池Bが電力系統の負荷増大に応じて電力を供給することになるので、電気事業者にとって、負荷増大を吸収することができるというメリットがある。
【0069】
ここで、熱電併給型調整用電源1で生成された熱について説明する。熱電併給型調整用電源1で生じた熱は、需要家施設の給水設備5等に供給される。そして、負荷増大に対応して第2燃料電池Bの出力を増大させた際には、給水設備5等の熱需要を上回って熱が余る可能性がある。熱電併給型調整用電源1は、その余剰の熱を自身が用いるように構成されている。
【0070】
具体的には、
図2に示すように、第1燃料電池Aは、負荷に関わらず出力が一定となるように稼働しているため、ガスタービン42を介して熱交換器43に供給される熱量もほぼ一定となり、熱交換器43で製造される温水や蒸気などの熱の量や温度もほぼ一定となる。
【0071】
一方、第2燃料電池Bは、電力系統の急激な負荷増大に対応するために出力が増大する。このとき、第2燃料電池Bの排熱量も増大する。したがって、熱交換器43では、第2燃料電池Bの排熱量の増大に応じて、より多くの温水や蒸気などの熱を生成することができるようになる。
【0072】
しかしながら、このように熱交換器43で生成された温水や蒸気は、給水設備5等の熱需要を上回る可能性がある。
【0073】
熱電併給型調整用電源1では、熱交換器43で余剰となった熱を蒸気として空気圧縮装置48に供給し、その動力源として利用する。このように余剰の熱を系内の蒸気で駆動する空気圧縮装置48で利用することで、生成した蒸気を系外に排気することなく有効利用することができる。
【0074】
図5は電力系統の負荷減少時における熱電併給型調整用電源1の動作を説明する概略図である。右上のグラフに示すように、例えば、昼間から夜間にかけての時間帯Bにおいて電力需要が急激に減少した場合について説明する。
【0075】
昼間、2基の火力発電所11が定格運転をしている状況で、電力需要が急激に減少する場合、1基の火力発電所11を待機状態にする。しかし、火力発電所11は、待機状態にするまでに一定の時間が掛かるので、直ぐには電力需要の減少を吸収できない(従来においては、このような需要の減少に対応できるように、効率は悪いが火力発電所の出力を徐々に下げて待機運転にしていた)。
【0076】
本発明では、このように電力需要が減少したとき、すなわち定格運転している火力発電所11を待機状態にするまでの間に、電気事業者は、制御装置12から制御装置8に制御信号を送信し、熱電併給型調整用電源1の出力を減少させる(負荷率を低くする)。このとき熱電併給型調整用電源1としては、左上のグラフに示すように、負荷率がピークよりも低い負荷率(点Z、約30%)で運転することになる。
【0077】
このような電力需要の減少時、熱電併給型調整用電源1は、
図5左下に示すように動作する。熱電併給型調整用電源1は、通常運転時よりも低く出力するように発電を行う。つまり、熱電併給型調整用電源1の出力を低減することで、電力需要の減少を吸収する。なお、熱に関しては、定格運転時と同様に、温水や水蒸気として給水設備5や暖房設備6や蒸気設備7に供給される。
【0078】
熱電併給型調整用電源1が電力需要の減少を吸収する間、定格運転していた火力発電所11は待機状態になる。このように火力発電所11が待機状態に至ったら、制御装置12及び制御装置8により熱電併給型調整用電源1の負荷率を最もエネルギー効率が高い状態に戻す(点X)。
【0079】
熱電併給型調整用電源1が電力需要の減少に対応するので、火力発電所11は徐々に効率を落として待機状態にする必要がない。火力発電所11は熱電併給型調整用電源1が電力需要の減少を吸収しきったところで、待機状態にすればよい。このように火力発電所11は、電力需要の減少時においても、効率が悪い状態で徐々に待機状態にする必要が無いので、ランニングコストを低減することができる。このように、電気事業者としては、費用面の負担を軽減しながらも、電気の安定供給をすることができる。
【0080】
第1燃料電池Aと第2燃料電池Bの運転状況は、通常運転時と同様に、第1燃料電池Aについては、エネルギー効率が最大であり、出力が一定となるように稼働させる。一方、第2燃料電池Bについては、そのときの電力系統の負荷に応じた出力とする。
【0081】
このように、第1燃料電池Aは、エネルギー効率が最大となる一定の出力で稼働するので、最もよい燃費で稼働することになり、ガス事業者にとってメリットがある。また、第2燃料電池Bが電力系統の負荷減少に応じて出力を低下させることになるので、電気事業者にとって、負荷減少を吸収することができるというメリットがある。
【0082】
上述したように、負荷増大時においては、第2燃料電池Bでの出力が増大し、圧縮空気もより多く必要となる。したがって、十分な圧縮空気を供給するために、空気圧縮装置48にも十分な蒸気量が供給される必要がある。しかしながら、第2燃料電池Bの出力増大に伴い、その排熱も多くなり、熱交換器43で生成できる蒸気量も多くなる。すなわち、空気圧縮装置48には第2燃料電池Bで必要となる圧縮空気を十分供給できるだけの蒸気が供給される。
【0083】
同様に、負荷減少時においては、第2燃料電池Bでの出力を減少させるので、圧縮空気は多くを必要としなくなる。したがって、空気圧縮装置48には、負荷増大時ほど蒸気量は必要ない。このとき、第2燃料電池Bの出力減少に伴い、その排熱も少なくなり、熱交換器43で生成できる蒸気量も少なくなる。すなわち、空気圧縮装置48に第2燃料電池Bで必要となる圧縮空気を超える蒸気が供給されることはない。
【0084】
このように、負荷増大時又は負荷減少時に第2燃料電池Bの出力が増減することにより、熱交換器43で生成される熱も増減する。しかし、その出力の増減に合わせて空気圧縮装置48で必要となる蒸気量も増減するので、空気圧縮装置48に必要な熱が過不足することを防止することができる。すなわち、負荷が増減しても、安定して圧縮空気を第2燃料電池Bに供給し、確実に負荷の増減を吸収するように出力を増減させることができる。
【0085】
また、熱電併給型調整用電源1は、ガス事業者及び電気事業者がそれぞれ所有する第1燃料電池A、第2燃料電池Bについて、ガスタービン42を共通のものとし、その排ガスを利用する熱交換器43も共通のものとした構成となっている。
【0086】
このような共通の熱交換器43を採用することにより、第1燃料電池Aのみならず、第2燃料電池Bも含めた排熱を用いて熱交換器43で温水や蒸気を生成することができる。これにより、需要家施設での給水設備5等で熱需要が増大した際に、第1燃料電池Aの出力ではその熱需要を賄いきれない場合であっても、第2燃料電池Bの出力による排熱を利用することができるため、その熱需要を賄うことが可能となる。すなわち、第2燃料電池Bは熱需要に応じて出力を変動させてもよい。
【0087】
具体的には、熱交換器43から空気圧縮装置48に供給していた蒸気を需要家施設に向けて供給するようにする。このとき、空気圧縮装置48は、系内又は系外の電気で駆動する電動モータ51により圧縮機49を駆動させるようにする。
【0088】
ガス事業者の観点からすれば、第1燃料電池Aを出力一定で運転させる以上、熱需要を賄えないリスクが存在する。しかしながら、第2燃料電池Bの排熱分を蒸気として熱需要に充当することができるため、そのようなリスクなく、効率のよい熱電併給を行えるということになる。
【0089】
上述したように、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bに共通して1つのガスタービン42が接続されている。そして、一方の第1燃料電池Aは、負荷変動に関わりなく出力は一定である。このため、ガスタービン42には常に一定圧力の燃焼ガスが供給されることになる。したがって、ガスタービン42では、その圧力が一定に維持されるため、ガスタービン42を高性能な状態で安定して運転することができる。
【0090】
ここで、上述したように、第1燃料電池Aと第2燃料電池Bはそれぞれ独立して圧縮空気が供給されるようになっている。このため、第1燃料電池Aには、ガスタービン42が一定圧力で運転することから、GT圧縮機46から圧縮空気がほぼ一定で供給される。一方、第2燃料電池Bには、第2燃料電池Bの出力の増減に合わせた量の圧縮空気が供給されるようになっている。
【0091】
このように、熱電併給型調整用電源1は、第1燃料電池Aと第2燃料電池Bに対してそれぞれ独立して圧縮空気を供給する構成であるので、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bのそれぞれの運転に合わせて適切な量の圧縮空気を供給することができる。
【0092】
以上に説明したように、本実施形態に係る熱電併給型調整用電源1によれば、第1燃料電池Aと第2燃料電池Bとを異なる事業者が稼働させることで、電力系統側においてエネルギー効率よく電力を安定供給することができるとともに、効率良く低コストで熱電併給することができる。
【0093】
すなわち、熱電併給型調整用電源1は、電気事業者にとって、効率のよい電源として機能する。従来では、電気事業者は、電力需要の増減を吸収するために、効率を落として運転させる負荷調整用の火力発電所を有していたが、これが不要、又は数を少なくすることができるため、特に費用面の負担を著しく低減することができる。
【0094】
さらに、負荷増大時に第2燃料電池Bの出力を増大させるが、この出力の増大に伴う発熱で蒸気を生成し、この蒸気で、第2燃料電池Bに供給する空気を圧縮するための空気圧縮装置48を駆動させることができる。これにより、負荷増大時において生じる熱を系外に排気することなく、有効利用することができる。
【0095】
また、熱電併給型調整用電源1は、ガス事業者にとって、負荷の状況に関わらず最もエネルギー効率がよく、一定の出力で稼働することになるので、燃費がよく経済的に熱電併給を行うことができる。
【0096】
なお、本実施形態では、事業者として電気事業者を、事業者側発電装置として火力発電所11を例にとり説明したが、このような態様に限定されない。例えば、工場設備を有する事業者を対象とし、事業者側発電装置としてその工場設備に電力を供給する発電装置を用いる場合にも本発明を適用できる。この場合においては、工場設備で増減する電力需要を吸収するために、熱電併給型調整用電源1を利用することができる。
【0097】
他にも、風力や太陽光などの自然エネルギーによる発電装置を事業者側発電装置とし、当該発電装置を用いて電気を販売する者を事業者としてもよい。この場合においては、安定しない自然エネルギーによる発電を安定化させるために熱電併給型調整用電源1を利用することができる。
【0098】
〈解析例〉
図6及び
図7を用いて、実施形態1に示した構成の熱電併給型調整用電源1の出力等について解析した結果を示す。
【0099】
図6は、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの出力(特性L1)、熱電併給型調整用電源1全体の熱出力(特性L2)及びガスタービン42の出力(特性L3)を示すグラフである。横軸は、熱電併給型調整用電源1全体の出力(図では、プラント全体の電気出力;kW、以下プラント出力と称する)である。当該プラント出力は、第1燃料電池A、第2燃料電池B及びガスタービンなどの出力を合計したものである。左側縦軸は、ガスタービン42、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの出力(kW)、右側縦軸は、熱出力(kW)を示している。
【0100】
なお、凡例については、GT出力はガスタービン42の出力、負荷調整用SOFC出力は第2燃料電池Bの出力、コジェネ用SOFC出力は第1燃料電池Aの出力、熱出力は熱電併給型調整用電源1全体の熱出力を表している。
【0101】
図示するように、特性L1は、第1燃料電池Aの出力を表している。本例では、出力は約15,000kWで一定である。特性L2は、第2燃料電池Bの出力を表している。プラント出力が約22,000kWを超えると、第2燃料電池Bの出力は増加している。特性L3は、熱電併給型調整用電源1全体の熱出力を表している。プラント出力が約22,000kWを超えると、第2燃料電池Bの出力の増大に伴い熱出力は増加している。すなわち、第2燃料電池Bの出力増大に合わせて、プラント全体の出力も増大し、熱出力も増大している。
【0102】
従来では、第2燃料電池Bによる熱出力から第1燃料電池Aによる熱出力を引いた分(領域Rで示される部分の熱出力)が余剰の熱として系外に排出されていた。本実施形態の熱電併給型調整用電源1においては、領域R部分の熱出力が第2燃料電池B用の空気圧縮装置48を駆動させるエネルギーとして有効利用される。
【0103】
なお、凡例については、プラント全体の発電効率は熱電併給型調整用電源1全体の熱効率、熱電併給用モジュール単体の発電効率は第1燃料電池Aの発電効率、負荷調整用モジュール単体の発電効率は第2燃料電池Bの発電効率を表している。
【0104】
図7は、熱電併給型調整用電源1全体、第1燃料電池A、及び第2燃料電池Bの出力と発電効率との関係を示すグラフである。横軸は、熱電併給型調整用電源1全体の出力(図では、プラント全体の電気出力;kW、以下プラント出力と称する)である。当該プラント出力は、ガスタービン42、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bの出力を合計したものである。縦軸(左側)は、熱効率を示している。縦軸右側は、第1燃料電池Aの熱出力の効率を表している(図では、コジェネ用熱出力)。
【0105】
特性M1は、プラント出力が約30,000kWで発電効率が極大値(約55%)となるような上に凸な特性を有している。また、特性M2は、第1燃料電池Aの特性を表し、特性M3は、第2燃料電池Bの特性を表している。
【0106】
電力需要の増大時には、特性M3に示されるように、電気事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bの出力を増大させる。すると、特性M1に示されるように、熱電併給型調整用電源1全体のプラント出力が増加し、電力需要の増大を吸収できる。この出力の増大に伴い、特性M3に示すように、第2燃料電池Bの効率は低下している。一方、特性M2に示すように、第1燃料電池Aの効率は向上している。
【0107】
すなわち、熱電併給型調整用電源1全体としては、出力の増大に伴い発電効率は低下しているものの、ガス事業者からみた第1燃料電池Aの効率は向上している。つまり、ガス事業者としては効率良く熱電併産することが可能となる。電気事業者としては、第2燃料電池Bは、効率は落ちるものの、急激に増大する電力需要に即時に対応することができる電源として機能するものとなる。これにより、電力需要の増大に応えると共に、従来のように待機運転をする火力発電所11を準備・運用するコストを削減することができる。
【0108】
〈実施形態2〉
実施形態1に係る熱電併給型調整用電源1を利用する環境としては、表1に示すものが考えられる。
【0110】
表1に示すように、人口が比較的多く温暖な地域(都市部)、寒冷な地域(寒冷地)のそれぞれの地域において夏季又は冬季であるかによって、電気需要及び熱負荷の程度が異なるという利用環境1〜4が想定される。
【0111】
このような各利用環境1〜4において、熱電併給型調整用電源1の好ましい利用方法について説明する。
[利用環境1]
夏季の都市部では、電力需要が大きく、熱負荷はそれほどの需要はない。したがって、熱電併給型調整用電源1は、熱よりも電気をより多く供給できるように運転することが好ましい。具体的には、電力事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bを高負荷で運転させ、それにより生じる蒸気を空気圧縮装置48に供給する。
【0112】
このような運転により、電力需要に応えるとともに、熱(蒸気)の供給を過剰とすることなく、蒸気を空気圧縮装置48で有効利用することができる。
[利用環境2]
冬季の都市部では、電力需要は小さく、熱負荷は大きい。したがって、熱電併給型調整用電源1は、電気よりも熱をより多く供給できるように運転することが好ましい。具体的には、燃料供給事業者のものとして稼働する第1燃料電池Aは最も効率がよい一定の出力で運転させ、電力事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bを低負荷で運転させる。そして、発生する熱は需要者側に供給し、空気圧縮装置48には供給しないようにする(空気圧縮装置48は電動モータ51で駆動する)。
【0113】
このような運転により、熱需要に応えるとともに、電気の供給を過剰とすることがない。なお、熱需要がさらに増大するのであれば、必要に応じて第2燃料電池Bの出力をあげて熱出力をさらに増大させてもよい。
[利用環境3]
夏季の寒冷地では、電力需要も熱負荷も小さい。したがって、熱電併給型調整用電源1は、全体的に低負荷で運転させることが好ましい。具体的には、電力事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bを低負荷で運転させ、それにより生じる蒸気を空気圧縮装置48に供給する。
【0114】
このような運転により、電力需要に応えるとともに、熱(蒸気)の供給を過剰とすることなく、蒸気を空気圧縮装置48で有効利用することができる。
[利用環境4]
冬季の寒冷地では、電力需要は大きく、熱負荷は特に大きい。したがって、熱電併給型調整用電源1は、電気も一定以上供給するとともに、さらに多くの熱を供給できるように運転することが好ましい。具体的には、燃料供給事業者のものとして稼働する第1燃料電池Aは最も効率がよい一定の出力で運転させ、電力事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bを高負荷で運転させる。そして、発生する熱は需要者側に供給し、空気圧縮装置48には供給しないようにする(空気圧縮装置48は電動モータ51で駆動する)。
【0115】
このような運転により、電気需要に応えるとともに、熱需要に十分に応えることができる。
【0116】
〈実施形態3〉
実施形態1及び実施形態2に係る熱電併給型調整用電源1は、単独で利用される場合を想定したものであったが、複数の熱電併給型調整用電源1を備える熱電併給システムとしてもよい。
【0117】
図8に示すように、熱電併給システム100は、複数(この例では2つ)の熱電併給型調整用電源1(以下、単に電源1とし、個別の電源1に言及する場合は電源1A、電源1Bと称する)を備えている。それぞれの電源1は、例えば数km離れて設置されているとする。そして、これらの電源1は、電力系統で接続され、それぞれが発電した電気を他方に供給可能に構成されている。
【0118】
一方の電源1が熱需要に応えられない場合、他方の電源1からパイプライン等を介して熱を融通してもらうことも考えられる。しかしながら、電源1同士が離れて設置されている場合、熱が損失するため現実的ではない。一方、各電源1が発電した電気は、電力系統を介して互いに融通することが可能である。
【0119】
例えば、電源1Aにおいて熱需要が増大したとする。この場合、電力事業者のものとして稼働する第2燃料電池Bの出力を増大させ、生じた蒸気を空気圧縮装置48に供給するのではなく熱需要に充てる。空気圧縮装置48は電動モータ51で駆動することになるが、この電源として、電源1Bから供給される電気を充てる。換言すれば、電源1Bでは、電気出力を高め、電力系統を介して電源1Aに供給する。
【0120】
つまり、電源1Bは、熱を電源1Aに供給できない代わりに電気を供給し、電源1Aは、電源1Bから供給される電気の分を熱として出力する。このように、熱電併給システム100は、電源1A側で増大する熱需要に応えるために、電源1Bは、電気という形で電源1Aの熱供給能力を補完することができる。
【0121】
上述したように熱電併給システム100は、複数の電源1を用いて全体として熱電併給を実施するので、いわゆるコジェネシステムを個別に設置する場合に比べて熱効率がよい。
【0122】
〈他の実施形態〉
本発明に係る熱電併給型調整用電源は、燃料供給事業者、電気事業者(事業者)がそれぞれ専有するものであってもよいし、共有していてもよい。また、第三者の設備事業者が所有していてもよい。それらの何れかの者が熱電併給型調整用電源を構築・運用する。つまり、熱電併給型調整用電源1の初期コストは、何れかのもので折半することができる。
【0123】
熱電併給型調整用電源1の利用は、所有者と異なってもよい。実施形態1では、ガス事業者及び電気事業者が利用したが、第三者であってもよい。例えば、第三者は、ガス事業者から燃料を購入して熱電併給型調整用電源を運用し、電力及び熱を併産・販売する事業者であってもよい。
【0124】
なお、第1燃料電池A及び第2燃料電池Bのそれぞれの個数は特に限定されない。少なくともそれぞれが1つずつあれば、本発明の作用効果を奏する。