(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器に、水層及び油層に分離した液状芳香消臭組成物並びに該組成物の吸い上げ部材を備えた2層分離型液体芳香消臭剤であって、油層に油性香料及び/又は油性消臭成分、並びに有機ハロゲン系防腐剤を含むことを特徴とする2層分離型液体芳香消臭剤。
有機ハロゲン系防腐剤が、(N−(アルキル又はシクロアルキル)置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド類、3−ヨード−2−プロピニルN−アルキルカルバメート類、3−ヨードプロパルギルアセタール類、ヨードプロパルギルエーテル類、及びジヨードメチルスルホン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【背景技術】
【0002】
従来より知られている吸い上げ式液体芳香消臭剤は、容器に収容した液体芳香消臭剤中に棒状の吸い上げ部材の一端を浸し、他端を大気に触れるように露出させて、ここから芳香成分又は消臭成分が揮散するように設計されている。
【0003】
近年、液体芳香消臭剤が水層と油層からなる2層分離型の液体芳香消臭剤が利用されている。当該2層分離型液体芳香消臭剤は、例えば、単一溶媒に溶解できない2種以上の異なる香料(特に水溶性香料と油溶性香料)を組み合わせて用いる場合、互いに単一溶媒に溶解できる場合でも、色調、芳香性、安定性等の点から2種以上の異なる香料を敢えて相溶性のない溶媒に溶解させる場合などに利用されている。
【0004】
この2層分離型液体芳香消臭剤の液体部分は、上層に油層を下層に水層を形成している。使用初期から最後まで同じ芳香及び消臭効果を持続するためには、油層と水層から同じ割合で液体を吸い上げることが必要となる。この油層及び水層の減量バランスを保つために、水層には通常、ゲル化剤、増粘剤等の添加剤が配合される(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、水層は菌類や真菌類が増殖し易いため、衛生、美観等の観点から芳香消臭剤の商品価値を大きく低下させる場合がある。特に、上記のゲル化剤、増粘剤等の添加剤を配合した場合には、菌類や真菌類(かび等)の栄養源となるため、水層における菌類や真菌類の増殖(腐食)の問題がより顕在化する。2層分離型液体芳香消臭剤の商品価値を保持するためには、水層における菌類及び真菌類の増殖を抑制し液体芳香消臭剤の変質を防止することが重要であり、そのためには適切な防腐剤及び防かび剤を選択し添加することが必要となる。
【0006】
ところで、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート等の有機ハロゲン系防腐剤は、工業用の防腐防かび剤として知られている(特許文献2、3等)。また、3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート、所定の香料及び界面活性剤を含む水性芳香性組成物が、菌類及び真菌類の増殖を抑制できることが報告されている(特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、2層分離型の液体芳香消臭剤(以下、2層液体芳香消臭剤とも表記する)において、製造から使用開始までの保存期間及び使用開始から使用終了までの使用期間の長期にわたり、水層における菌類及び真菌類の増殖を抑制し液体芳香消臭剤の変質を防止することは、衛生及び美観の観点から極めて重要である。本発明は、長期保存後の使用において、水層の菌類及び真菌類の増殖を効果的に抑制し得る2層液体芳香消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記の課題を解決するために、2層液体芳香消臭剤において種々の防腐剤の添加を試みた。
【0010】
まず、2層液体芳香消臭剤では、界面活性剤を含まない又は実質的に含まないことで水層及び油層の2層が分離した状態が維持されている。この2層液体芳香消臭剤に親油性の防腐剤を用いた場合には、油層にのみ溶解し水層には溶解しないため、水層での菌類及び真菌類の増殖を防止できないであろうと考えられた。
【0011】
そこで、本発明者は、水層での防腐効果を発揮させるべく親水性の防腐剤について種々検討を行った。しかし、いずれの親水性防腐剤も長期保存後において防腐効果が大きく低下してしまい、また、多量に配合しても吸い上げ部材のろ紙上に結晶が析出してしまい美観の点からも望ましくない結果となってしまった。ところが、水に難溶である3−ヨード−2−プロピニル N−ブチルカルバメート(水溶解度:156mg/L 20℃)を油層に溶解させて使用したところ、予想外にも、長期保存後でも水層において顕著な防腐効果を発揮できることを見出した。かかる知見に基づき更に研究を行うことにより、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の2層液体芳香消臭剤を提供する。
【0013】
項1 容器に、水層及び油層に分離した液状芳香消臭組成物並びに該組成物の吸い上げ部材を備えた2層分離型液体芳香消臭剤であって、油層に油性香料及び/又は油性消臭成分、並びに有機ハロゲン系防腐剤を含むことを特徴とする2層分離型液体芳香消臭剤。
【0014】
項2 有機ハロゲン系防腐剤が、有機ヨード系防腐剤である項1に記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【0015】
項3 有機ハロゲン系防腐剤が、(N−(アルキル又はシクロアルキル)置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド類、3−ヨード−2−プロピニルN−アルキルカルバメート類、3−ヨードプロパルギルアセタール類、ヨードプロパルギルエーテル類、及びジヨードメチルスルホン類からなる群より選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【0016】
項4 有機ヨード系防腐剤が、(N−(アルキル又はシクロアルキル)置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド類、及び/又は3−ヨード−2−プロピニル N−アルキルカルバメート類である項1〜3のいずれかに記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【0017】
項5 油層中の有機ハロゲン系防腐剤の配合量が0.0004〜1重量%である項1〜4のいずれかに記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【0018】
項6 液状芳香消臭組成物中に界面活性剤を実質的に含まない項1〜5のいずれかに記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【0019】
項7 水層に増粘剤及び/又はゲル化剤を含む項1〜6のいずれかに記載の2層分離型液体芳香消臭剤。
【発明の効果】
【0020】
本発明の2層分離型液体芳香消臭剤は、製造から使用開始までの保存期間及び使用開始から使用終了までの使用期間の長期にわたり、水層における菌類及び真菌類の発生及び増殖を抑制し液体芳香消臭剤の変質を防止することができる。
【0021】
本発明の芳香消臭剤は、親油性の有機ハロゲン系防腐剤は、油層に配合されているため長期保存後でも分解することなく安定に存在し、使用時において高い防腐効果が発揮される。また、有機ハロゲン系防腐剤は、経時的に油層から水層へ溶出することで、水層での菌類及び真菌類の発生及び増殖を抑制していると考えられる。
【0022】
また、本発明の芳香消臭剤は有機ハロゲン系防腐剤を用いるため、防腐剤の配合量を低減することができる。そのため安全性及び経済性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の2層分離型液体芳香消臭剤は、容器に2層に分離した液状芳香消臭組成物と吸い上げ部材を備えた、いわゆる吸い上げ式の2層液体芳香消臭剤である。具体的には、当該芳香消臭剤は、容器内に水層と油層とが2層に分離した状態で収納された液状芳香消臭組成物と、該液状組成物に一部が浸漬され一部が露出してなる吸い上げ部材とを備えた液体芳香消臭剤である。
【0024】
本発明の2層分離型液体芳香消臭剤は、油層に油性香料及び/又は油性消臭成分、並びに有機ハロゲン系防腐剤を含むことを特徴とする。これにより、製造から使用開始までの保存期間及び使用開始から使用終了までの使用期間の長期にわたり、水層における菌類及び真菌類の発生及び増殖を抑制することができる。
【0026】
水層
液状芳香消臭組成物の水層部は、本発明の効果を奏する範囲において任意の成分を含有していてもよい。水層部は、水性溶媒に、必要に応じ、増粘剤及び/又はゲル化剤、水性香料及び/又は水性消臭成分等を配合して調製することができる。
【0027】
水性溶媒としては、通常、水性の成分(例えば、水性の香料/消臭成分)を溶解することのできる溶媒であれば特に制限されない。好ましくは無臭若しくは微臭の水性溶媒であり、より好ましくは水である。
【0028】
増粘剤及び/又はゲル化剤は、吸い上げ部材による水層の揮散速度を調整して油層と同時に減量させるために用いることができる。具体的には、吸い上げ部材として安価なパルプ等を使用した場合に、パルプの親水性ゆえ水層の減少速度が油層の減少速度より大きくなる問題があり、増粘剤及び/又はゲル化剤を水層に添加することで水層部の液状芳香消臭組成物の吸い上げ速度を制御し水層の減少速度を抑制することができる。
【0029】
増粘剤及び/又はゲル化剤としては、例えば、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、ペクチン、ジェランガム、アラビアガム、鱈ガム又はそれらの混合物等が使用できる。好ましくは、カラギーナン、キサンタンガム、又はそれらの混合物である。
【0030】
増粘剤及び/又はゲル化剤を使用する場合、その使用割合は、各種増粘剤及び/又はゲル化剤によって異なり任意に調整できる。例えば、水層中、カラギーナンは0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0031】
水性香料及び/又は水性消臭成分は、水層に香りや消臭機能を付与する為に用いることができる。
【0032】
水性香料には、香料成分または香料含有成分(例えば植物エキスなど)そのものが水性である場合だけでなく、水に可溶性になるように調製された香料製剤が包含される。かかる香料としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−サイメン、ターピノレン、α−ターピネン、γ−ターピネン、α−フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、イソアミルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、安息香酸リナリル、エチルシンナメート、ヘキシルサリシレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン類;アニソール、p−クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキノン、メチルオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis−3−ヘキセノール、ヘプタノール、2−オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、テトラハイドロゲラニオール、1−メントール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、アセトフェノン、α−又はβ−ダマスコン、α−又はβ−ダマセノン、α−、β−又はγ−ヨノン、α−、β−又はγ−メチルヨノン、メチル−β−ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α−又はβ−イソメチルヨノン、α−、β−又はγ−イロン、マルトール、エチルマルトール、cis−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、ジヒドロカルボン等のケトン類などを例示することができる。これらの香料は、1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0033】
同様に、水性消臭成分にも、消臭成分または消臭成分含有物(例えば植物エキスなど)そのものが水性である場合だけでなく、水に可溶性になるように調製された消臭剤が包含される。かかる消臭成分としては、ポリフェノールを主成分とする植物抽出物消臭成分、ベタイン化合物,二価鉄イオンまたは安定化二酸化塩素を主成分とする反応型消臭成分を挙げることができる。これらの消臭成分は、1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。また上記香料と消臭成分とを任意に組み合わせて使用することもできる。
【0034】
水層では、水性香料及び/又は水性消臭成分のうち、水性香料のみを用いることもできる。
【0035】
水性香料及び/又は水性消臭成分を使用する場合、その配合量は、その効果が発揮できる量であれば特に限定はなく、例えば、水層中、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
【0036】
水層部には、上記成分に加えて、油層部との分離性(非相溶性)、芳香性、消臭性、または清澄性などといった水層部に求められる性質を妨げないことを限度として、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、色素、消泡剤、酸化防止剤、清澄剤、可溶化剤等を配合することもできる。
【0037】
油層
液状芳香消臭組成物の油層部は、油性香料及び/又は油性消臭成分、有機ハロゲン系防腐剤、並びに必要に応じ油性溶媒を配合して調製することができる。さらに、本発明の効果を奏する範囲において任意の成分を含有していてもよい。
【0038】
油性香料及び/又は油性消臭成分は、油層に香りや消臭機能を付与する為に用いられる。
【0039】
油性香料には、香料成分または香料含有成分(例えば植物オイルなど)そのものが油性である場合だけでなく、油に可溶性になるように調製された香料製剤が包含される。かかる香料としては、前述する各種の香料に加えて、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油等の天然精油を挙げることができる。これらの香料もまた、1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0040】
油性消臭成分にも、消臭成分または消臭成分含有物(例えば植物オイルなど)そのものが油性である場合だけでなく、油に可溶性になるように調製された消臭剤が包含される。かかる消臭成分としては、前述のものを挙げることができる。また当該消臭成分は上記香料と任意に組み合わせて使用することもできる。
【0041】
油層では、油性香料及び/又は油性消臭成分のうち、油性香料のみを用いることもできる。
【0042】
油性香料及び/又は油性消臭成分の配合量は、その効果が発揮できる量であれば特に限定はなく、例えば、油層中、1〜98重量%、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜40重量%である。
【0043】
有機ハロゲン系防腐剤は、水に難溶であり親油性の有機ハロゲン系防腐剤であり、好ましくは有機ヨード系防腐剤であり、より好ましくは式:I−C≡C−で表される基を有する有機ヨード系防腐剤である。
【0044】
有機ハロゲン系防腐剤として具体的には、例えば、3−ヨードプロピオール酸アミド、N−メチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−エチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−プロピル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−ヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−オクチル−3−ヨードプロピオール酸アミド、N−シクロヘキシル−3−ヨードプロピオール酸アミド等の(N−(アルキル又はシクロアルキル)置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド類;3−ヨード−2−プロピニルN−メチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−エチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−プロピルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−ヘキシルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−オクチルカルバメート、3−ヨード−2−プロピニルN−シクロヘキシルカルバメート等の3−ヨード−2−プロピニルN−アルキルカルバメート類;4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール等の3−ヨードプロパルギルアセタール類;2,4,5−トリクロロフェニルヨードプロパルギルエーテル等のヨードプロパルギルエーテル類;1−[(ジヨードメチル)スルホニル]−4−メチルベンゼン、ジヨードメチルp−トリルスルホン等のジヨードメチルスルホン類等が挙げられる。
【0045】
このうち、(N−(アルキル又はシクロアルキル)置換−)3−ヨードプロピオール酸アミド類(特に、N−ブチル−3−ヨードプロピオール酸アミド)、3−ヨード−2−プロピニルN−アルキルカルバメート類(特に、3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメート)が好ましく、特に3−ヨード−2−プロピニルN−ブチルカルバメートが好ましい。
【0046】
有機ハロゲン系防腐剤は、1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0047】
有機ハロゲン系防腐剤の配合量は、その防腐効果が発揮できる量であれば特に限定はなく、例えば、油層中、0.0004〜1重量%、好ましくは0.001〜0.8重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0048】
油性溶媒としては、上記の油性の香料/消臭成分を溶解することのできる溶媒であれば特に制限されず、例えば、シリコンオイル、ハロゲン化炭化水素、テルペン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、エーテル類、エステル類等の油可溶性の有機溶媒を挙げることができる。好ましくは無臭若しくは微臭の油性溶媒である。油性溶媒は、1種単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0049】
油性溶媒を使用する場合、その使用量は、油層中、通常、1〜98重量%、好ましくは39〜89重量%、より好ましくは59〜79重量%である。
【0050】
水層部と同様、油層部には、上記成分に加えて水層部との分離性(非相溶性)、芳香性、消臭性、または清澄性などといった油層部に求められる性質を妨げないことを限度として、界面活性剤、防腐剤、抗菌剤、色素、消泡剤、酸化防止剤、清澄剤、可溶化剤等を配合することもできる。
【0051】
これらの水層部及び油層部は、互いに相溶性がないように調製され、その結果互いに混合することなく分離した状態とすることができる。特に、水層部及び油層部との分離性を考慮して、界面活性剤は実質的に含有していないことが好ましく、例えば、液状芳香消臭組成物中、1重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0052】
吸い上げ部材
本発明の2層液体芳香消臭剤は、上記の構成を有する2層の液状芳香消臭組成物の各層液を同時に吸い上げて大気中に揮散できるように構成された、吸い上げ部材を備えることを特徴とする。
【0053】
吸い上げ部材は親水性であり、その1態様としては公定水分率として8〜15%を有する素材からなるものを挙げることができる。好ましくは公定水分率が10〜15%、より好ましくは12〜15%の素材である。かかる公定水分率を有する素材としてはパルプ、綿、レーヨン、羊毛等を例示することができる。かかる吸い上げ部材は、各層が略同容量からなる多層液状芳香消臭組成物とともに用いられることが好ましい。なお、吸い上げ部材は、上記公定水分率を充足することを限度として、単品の素材からなるものであっても2種以上の素材から構成されるものであってもよい。このような素材からなる吸い上げ部材とともに用いられる2層液状芳香消臭組成物は、特に制限されることなく、該液状組成物を構成する水層及び油層が1:9〜9:1の割合(容量比)で積層されていればよい。好ましくは1:5〜5:1の割合(容量比)であり、より好ましくは1:3〜3:1の割合(容量比)であり、さらに好適な態様としては各層が略同容量比で積層されてなるものを挙げることができる。
【0054】
吸い上げ部材は、上記に示す公定水分率を有する素材からなるものであればよく、その形態は特に問わないが、毛細管現象による吸い上げ機能を発揮するために多孔質であることが好ましい。多孔質物としては、天然また合成繊維の集束物(繊維束)、織物、織布、不織布、合成樹脂粉末の集合物または焼結体、合成樹脂発泡体等を例示することができる。また、本発明の吸い上げ部材は、下記の態様で使用できるように棒状、円(角)柱状、または円(角)筒状などの形態を備える。なお、吸い上げ部材は本発明の効果を損なわない限り、その横手断面が2層以上の積層構造を有するものであってもよい。
【0055】
本発明の2層分離型液体芳香消臭剤は、外観の審美性、取扱性等を考慮して、さらに上記の容器及び露出した吸い上げ部材の一部又は全部を覆うカバーを設けてもよい。当該カバーは、露出した吸い上げ部材から芳香消臭剤が揮散し易いように、1又は複数の開口部を設けてもよい。
【実施例】
【0056】
次いで、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
本実施例で用いた試薬を以下に記載する。
<消臭剤>
・デオエースYT−13E:アミノ酸系消臭剤(理研香料工業(株))
<調節剤>
・乳酸ナトリウムDL−72:乳酸ナトリウム(和光純薬工業(株))
<防腐剤>
・スラオフ717A:2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物(日本エンバイロケミカルズ(株))
・ジオガード111S(Geogard 111S):デヒドロ酢酸ナトリウム(ロンザジャパン(株))
・ソルビン酸K:ソルビン酸カリウム((株)タイショーテクノス)
・安息香酸Na:安息香酸ナトリウム((株)伏見製薬所)
・レバナックスBS−3:2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(昌栄化学(株))
・ホクサイドIPB:3-ヨード-2-プロピニル N-ブチルカルバメート(北興化学工業(株))
<粘度調節剤>
・カラギーナンFK-6111:芳香ゼリー状ゲル化剤(κ−カラギーナン)(新田ゼラチン(株))
<香料>
・フローラル系調合香料(ジボダンジャパン(株))
<溶剤>
・NAS-3ソルベント:イソパラフィン溶剤(日本油脂(株))
・NAS-4ソルベント:イソパラフィン溶剤(日本油脂(株))
<紫外線吸収剤>
・SEE SORB 704:2-(3,5-ジtert-ペンチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(シプロ化成(株))
<色素>
・OIL red 5B:C.I Solvent Red 27(オリエント化学工業(株))
【0058】
試験例1
以下の表1に示す成分組成を有するサンプル(実施例1〜3及び比較例1〜5)を用いて、以下の黒カビ防腐試験、減量試験及び安定性試験を評価した。表1中の各成分組成の数値は「重量%」を意味する。
【0059】
各水層処方をボトルに充填し(下層)、その上に油層処方を重層し(上層)、中栓をして、ろ紙を挿入し、キャップをしめて各サンプルを調製した。
【0060】
(1)黒カビ防腐試験
黒カビ(Aspergillus brasiliensis;NBRC 9455/ATCC 16404)を供試菌株として使用し、一定期間保存した後のサンプルについて黒カビ防腐試験を実施した。
【0061】
黒カビをポテトデキストロース寒天(PDA)培地を用いて20〜25℃、1週間又は十分な胞子が形成されるまで、5継代以内培養した。これをポリソルベート80 0.05%含有滅菌生理食塩水を用いて、約10
8 CFU/mlになるように懸濁させて黒カビ胞子懸濁液を調製した。
【0062】
調製した各処方サンプルを2層の状態で静置し、50℃、1ヶ月間保存した。保存後のサンプルから水層部分のみを採取し、10ml滅菌遠心管に分注した。これに対し1/100容量の上記の黒カビ胞子懸濁液を接種して撹拌後、20〜25℃で遮光下静置保存した。静置後、14日の菌数を測定した。菌数測定方法は、レシチン-ポリソルベート80を含有したグルコースペプトン寒天(GPCPA)培地による寒天平板塗沫法を用いた。その結果を表1に示す。
【0063】
判定基準を以下に示す。
A:コントロール(接種菌数)と比較して1/100以下に菌数が減少した
B:コントロール(接種菌数)と比較して1/100を超えて1/10以下に菌数が減少した
C:コントロール(接種菌数)と比較して菌数の減少が見られない又は1/10を超える程度しか菌数が減少しなかった
【0064】
(2)減量試験
作成した各処方サンプルを2層の状態で静置し、約25℃、湿度約30%の部屋で減量した(N=3)。処方液がなくなるまで減量し、外観を確認した。その結果を表1に示す。
【0065】
判定基準を以下に示す。
A:ろ紙部分の変化なし
B:ろ紙部分に防腐剤の結晶が析出した
【0066】
(3)安定性試験
作成した各処方サンプルを2層の状態で静置し、50℃、40日間保存した。サンプルを取り出し、水層の液色に変色がないか外観を確認した。
【0067】
判定基準を以下に示す。
A:変色なし
B:やや褐色に変色した
C:褐色に変色した
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、親油性のヨードプロピニル基を有する防腐剤を用いた実施例1〜3のサンプルは、典型的な親水性防腐剤を用いた比較例1〜5のサンプルと比較して、保存後の黒カビ防腐効果は顕著に優れ、しかも減量試験及び安定性試験においても優れている。
【0070】
具体的には、水溶性防腐剤(スラオフ717A)のみを水層に添加したサンプルでは、保存後において充分な防腐効果が発揮できない(比較例1)。また、他の水溶性防腐剤を水層に添加したサンプルでも、防腐効果は不十分である(比較例1、2、4及び5)、ろ紙に防腐剤の結晶が析出する(比較例2)、水層の外観が損なわれる、という結果に終わった(比較例2及び3)。
【0071】
これに対し、当初は期待していなかった親油性のヨードプロピニル基を有する防腐剤(ホクサイドIPB)を添加したサンプルでは、予想外にも、いずれの試験でも優れた効果を発揮できることが分かった(実施例1〜3)。