【文献】
J. Exp. Med.,1999年,Vol.189, No.5,p.871-876
【文献】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2003年,Vol.278, No.5,p.3466-3473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトの自己免疫疾患または癌の治療薬の製造のための、マウス抗CD19 B4抗体に由来する改変抗CD19抗体の薬理学的有効量を含む医薬組成物の使用であって、前記マウス抗CD19 B4抗体が配列番号13の重鎖可変領域及び配列番号25の軽鎖可変領域によって特定され、前記疾患が、関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン病、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫からなる群より選ばれ、前記改変抗CD19抗体が
(i)配列番号17の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域を含み、
(ii)YB2/0細胞で発現させることによって得られる、
前記使用。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】B4抗体の重鎖可変領域(B4 VH0)をコードする核酸配列(配列番号1)を示す図である。
【
図2】変異K23E、G42D、K69EおよびS85Dに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv1)をコードする核酸配列(配列番号2)を示す図である。
【
図3】変異K69EおよびS85Dに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv2)をコードする核酸配列(配列番号3)を示す図である。
【
図4】変異Q5E、V12K、R19K、L20V、T24A、S85DおよびS88Aに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv3)をコードする核酸配列(配列番号4)を示す図である。
【
図5】変異Q5E、R19K、L20V、R40T、Q43K、K65D、S85D、S88AおよびV93Tに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv4)をコードする核酸配列(配列番号5)を示す図である。
【
図6】変異Q5E、V12K、R19K、L20V、T24A、K38R、R40A、Q43K、K65D、S85DおよびV93Tに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv5)をコードする核酸配列(配列番号6)を示す図である。
【
図7】変異Q5E、R19K、L20V、K65D、S85DおよびV93Tに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv6)をコードする核酸配列(配列番号7)を示す図である。
【
図8】B4抗体の軽鎖可変領域(B4 VK0)をコードする核酸配列(配列番号8)を示す図である。
【
図9】変異V3A、S7EおよびA54Dに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv1)をコードする核酸配列(配列番号9)を示す図である。
【
図10】変異Q1D、I10T、M11LおよびA54Dに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv2)をコードする核酸配列(配列番号10)を示す図である。
【
図11】変異I10T、M11L、V19A、V29AおよびS75Eに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv3)をコードする核酸配列(配列番号11)を示す図である。
【
図12】変異I10T、M11L、V19A、S51DおよびL53Tに対応するコドンを含む、例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv4)をコードする核酸配列(配列番号12)を示す図である。
【
図13】B4抗体の重鎖可変領域(B4 VH0)のアミノ酸配列(配列番号13)を示す図である。
【
図14】変異K23E、G42D、K69EおよびS85Dを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv1)のアミノ酸配列(配列番号14)を示す図である。
【
図15】変異K69EおよびS85Dを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv2)のアミノ酸配列(配列番号15)を示す図である。
【
図16】変異Q5E、V12K、R19K、L20V、T24A、S85DおよびS88Aを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv3)のアミノ酸配列(配列番号16)を示す図である。
【
図17】変異Q5E、R19K、L20V、R40T、Q43K、K65D、S85D、S88AおよびV93Tを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv4)のアミノ酸配列(配列番号17)を示す図である。
【
図18】変異Q5E、V12K、R19K、L20V、T24A、K38R、R40A、Q43K、K65D、S85DおよびV93Tを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv5)のアミノ酸配列(配列番号18)を示す図である。
【
図19】変異Q5E、R19K、L20V、K65D、S85DおよびV93Tを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv6)のアミノ酸配列(配列番号19)を示す図である。
【
図20】変異V12K、K23E、G42D、K65D、K69EおよびS85Dを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv11)のアミノ酸配列(配列番号20)を示す図である。
【
図21】変異Q5E、V12K、R19K、L20V、T24A、R40T、Q43K、K65D、S85D、S88AおよびV93Tを有する例示的なB4抗体の重鎖可変領域(B4 VHv34)のアミノ酸配列(配列番号21)を示す図である。
【
図22】未確定アミノ酸残基X5、X12、X19、X20、X23およびX24を有する例示的なB4抗体の重鎖フレームワーク領域(B4 VHfr1)のアミノ酸配列(配列番号22)を示す図である。
【
図23】未確定アミノ酸残基X3、X5、X7およびX8を有する例示的なB4抗体の重鎖フレームワーク領域2(B4 VHfr2)のアミノ酸配列(配列番号23)を示す図である。
【
図24】未確定アミノ酸残基X6、X10、X26、X29およびX34を有する例示的なB4抗体の重鎖フレームワーク領域3(B4 VHfr3)のアミノ酸配列(配列番号24)を示す図である。
【
図25】B4抗体の軽鎖可変領域(B4 VK0)のアミノ酸配列(配列番号25)を示す図である。
【
図26】変異V3A、S7EおよびA54Dを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv1)のアミノ酸配列(配列番号26)を示す図である。
【
図27】変異Q1D、I10T、M11LおよびA54Dを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv2)のアミノ酸配列(配列番号27)を示す図である。
【
図28】変異I10T、M11L、V19A、V29AおよびS75Eを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv3)のアミノ酸配列(配列番号28)を示す図である。
【
図29】変異I10T、M11L、V19A、S51DおよびL53Tを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv4)のアミノ酸配列(配列番号29)を示す図である。
【
図30】変異V3A、S7E、V19A、A54DおよびS75Eを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv11)のアミノ酸配列(配列番号30)を示す図である。
【
図31】変異I10T、M11L、V19A、V29A、S51D、L53TおよびS75Eを有する例示的なB4抗体の軽鎖可変領域(B4 VKv34)のアミノ酸配列(配列番号31)を示す図である。
【
図32】未確定アミノ酸残基X1、X3、X7、X10、X11およびX19を有する例示的なB4抗体の軽鎖フレームワーク領域(B4 VKfr1)のアミノ酸配列(配列番号32)を示す図である。
【
図33】未確定アミノ酸残基X3、X5およびX6を有する例示的なB4抗体の軽鎖相補性決定領域(B4 VKcdr2)のアミノ酸配列(配列番号33)を示す図である。
【
図34】B4抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。相補性決定領域には下線が引かれている。改変可能なアミノ酸残基は太字で示されている。
【
図35】B4抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。相補性決定領域には下線が引かれている。改変可能なアミノ酸残基は太字で示されている。
【
図36】B4抗体の重鎖可変領域VH0(配列番号13)、VHv1(配列番号14)、VHv2(配列番号15)、VHv3(配列番号16)、VHv4(配列番号17)、VHv5(配列番号18)、VHv11(配列番号20)およびVHv34(配列番号21)のアミノ酸配列のアラインメントである。
【
図37】B4抗体の軽鎖可変領域VK0(配列番号25)、VKv1(配列番号26)、VKv2(配列番号27)、VKv3(配列番号28)、VKv4(配列番号29)、VKv11(配列番号30)およびVKv34(配列番号31)のアミノ酸配列のアラインメントである。
【
図38】実施例4に記載されているように、4HEK293T細胞(白三角)またはYB2/0細胞(黒三角)のいずれかから発現されたB4 VHv4/VKv4抗体および、NS/0細胞株(白丸)またはYB2/0細胞(黒丸)のいずれかから発現されたB4 VHv5/VKv4抗体を用いて行った、バーキットリンパ腫Daudi細胞に対するADCCアッセイの結果を示す図である。
【
図39】実施例5に記載されているように、本発明のB4 VHv4/VKv4抗体(縞のあるバー)、Leu16抗体(白抜きバー)またはPBS(黒いバー)のいずれかで処置した、ヒトPBMC移植マウスの治療結果を示す図である。
【
図40】実施例6に記載されているように、本発明のB4 VHv4/VKv4抗体(白丸)またはPBS(星印)のいずれかで処置した、ナマルバリンパ腫細胞担持マウスの治療結果を示す図である。
【
図41】実施例7に記載されているように、本発明のB4 VHv4/VKv4抗体(白三角)、シクロホスファミド(白正方形)、B4 VHv4/VKv4抗体およびシクロホスファミドの組み合わせ(白丸)またはPBS(星印)のいずれかで処置した、バーキットリンパ腫Daudi細胞移植マウスの治療結果を示す図である。
【
図42a】実施例8に記載されているように、種々の化学療法剤と組み合わせた、本発明の抗体を用いたナマルバリンパ腫細胞担持マウスの治療結果を示す図である。
図42(a)において、治療薬はシクロホスファミド(白正方形)、B4 VHv4/VKv4抗体(X)、B4 VHv4/VKv4抗体およびシクロホスファミドの組み合わせ(黒正方形)またはPBS(星印)である。
【
図42b】実施例8に記載されているように、種々の化学療法剤と組み合わせた、本発明の抗体を用いたナマルバリンパ腫細胞担持マウスの治療結果を示す図である。
図42(b)において、治療薬はビンクリスチン(白三角)、B4 VHv4/VKv4抗体(X)、B4 VHv4/VKv4抗体およびビンクリスチンの組み合わせ(黒三角)またはPBS(星印)である。
【
図42c】実施例8に記載されているように、種々の化学療法剤と組み合わせた、本発明の抗体を用いたナマルバリンパ腫細胞担持マウスの治療結果を示す図である。
図42(c)において、治療薬はドキソルビシン(白丸)、B4 VHv4/VKv4抗体(X)、B4 VHv4/VKv4抗体およびドキソルビシン(黒丸)の組み合わせまたはPBS(星印)である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、野生型B4抗体と比較してその免疫原性を低減するように改変された抗CD19マウスB4モノクローナル抗体に関する。より具体的には、本発明のB4抗体可変領域は、潜在的T細胞エピトープを除去するように改変されている。結果として、本発明のB4抗体において、野生型B4抗体と比較して生物学的特性の改善が見られた。
【0007】
従って、一側面において、本発明は、位置X5、X12、X19、X20、X23およびX24におけるアミノ酸残基の1以上が次のとおりである配列番号22のアミノ酸残基1〜30を含む改変された免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする:X5はQまたはEであり、X12はVまたはKであり、X19はRまたはKであり、X20はLまたはVであり、X23はK、EまたはDであり、あるいはX24はTまたはAである。本発明のこの側面によれば、位置X5、X12、X19、X20、X23またはX24におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは、配列番号13のアミノ酸残基1〜30に記載の未改変免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域内の対応する位置におけるアミノ酸と同じアミノ酸残基ではない。一実施形態において、X23はEまたはDである。
他の側面において、本発明は、位置X3、X5、X7およびX8におけるアミノ酸残基の1以上が以下のとおりである配列番号23のアミノ酸残基1〜14を含む改変された免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする:X3はKまたはRであり、X5はR、T、またはAであり、X7はG、D、またはEであり、あるいはX8はQまたはKである。本発明のこの側面によれば、位置X3、X5、X7またはX8におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは、配列番号13のアミノ酸残基36〜49に記載の、未改変免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域内の対応する位置におけるアミノ酸とは同じではない。一実施形態において、X7はEまたはDである。
【0008】
他の側面において、本発明は、位置X6、X10、X26、X29およびX34におけるアミノ酸残基の1以上が以下のとおりである配列番号24のアミノ酸残基1〜39を含む改変された免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする:X6はK、DまたはEであり、X10はK、EまたはDであり、X26はS、DまたはEであり、X29はSまたはAであり、あるいはX34はVまたはTである。本発明のこの側面によれば、位置X6、X10、X26、X29、またはX34におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは、配列番号13のアミノ酸残基60〜98に記載の未改変免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域内の対応する位置におけるアミノ酸とは同じではない。一実施形態において、X10はEまたはDである。
【0009】
他の側面によれば、本発明は、位置X1、X3、X7、X10、X11およびX19におけるアミノ酸残基の1以上が以下のとおりである配列番号32のアミノ酸残基1〜23を含む改変された免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする:X1はQまたはDであり、X3はVまたはAであり、X7はSまたはEであり、X10はIまたはTであり、X11はMまたはLであり、あるいはX19はVまたはAである。本発明のこの側面によれば、位置X1、X3、X7、X10、X11またはX19におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは、配列番号25のアミノ酸残基1〜23に記載の未改変免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域内の対応する位置におけるアミノ酸とは同じではない。一実施形態において、X3はAでありX7はEである。他の実施形態において、X1はDであり、X10はIでありX11はLである。
他の側面において、本発明は、配列番号28のアミノ酸残基24〜33を含む改変された免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする。
他の側面において、本発明は、配列番号28のアミノ酸残基56〜87を含む改変された免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域を規定するアミノ酸配列を特徴とする。
【0010】
他の側面によれば、本発明は、抗体可変領域がCD19に特異的に結合する、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号20、配列番号21、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30または配列番号31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体可変領域を特徴とする。
他の側面によれば、本発明は、B4抗体の重鎖可変領域と少なくとも90%または少なくとも95%同一であるポリペプチドであって、Val12、Leu20、Lys23、Thr24、Lys38、Gly42、Gln43、Lys65、Lys69、Ser85、Ser88またはVal93に対応する1以上の残基におけるアミノ酸置換を含む前記ポリペプチドを特徴とする。一実施形態において、前記ポリペプチドは、置換Gln5Glu、Val12Lys、Arg19Lys、Leu20Val、Lys23Glu、Lys23Asp、Thr24Ala、Lys38Arg、Arg40Thr、Gly42Asp、Gly42Glu、Gln43Lys、Lys65Asp、Lys65Glu、Lys69Glu、Lys69Asp、Ser85Asp、Ser85Glu、Ser88AlaまたはVal93Thrの1以上を含む。
【0011】
他の側面によれば、本発明は、B4抗体の軽鎖可変領域と少なくとも90%または少なくとも95%同一であるポリペプチドであって、Val3、Ser7、Ile10、Met11、Val19、Val29、Ser51、Leu53、Ala54またはSer75に対応する1以上の残基におけるアミノ酸置換を含む前記ポリペプチドを特徴とする。一実施形態において、前記ポリペプチドは置換Gln1Asp、Val3Ala、Ser7Glu、Ile10Thr、Met11Leu、Val19Ala、Val29Ala、Ser51Asp、Leu53Thr、Ala54AspまたはSer75Gluの1以上を含む。
他の側面において、本発明は、本発明の実施形態のいずれか1つに記載のポリペプチドをコードする核酸を特徴とする。
他の側面において、本発明は、患者の治療方法であって、本発明の実施形態のいずれか1つに記載のポリペプチドの治療的有効量を患者に投与する工程を含む前記方法を特徴とする。
他の側面において、本発明は、その表面にCD19を有する細胞を標的化する方法であって、本発明の実施形態のいずれか1つに記載の抗体可変領域を投与する工程を含む前記方法を特徴とする。前記方法の一実施形態において、細胞は腫瘍細胞である。
【0012】
要約すれば、本発明は以下に関する:
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる改変B4抗体であって、以下の免疫グロブリン重鎖フレームワーク領域:
(i)QVQLX
5QPGAEVX
12KPGASVX
19X
20SCX
23X
24SGYTFT(配列番号22)
(式中、X
5はQまたはEであり、X
12はVまたはKであり、X
19はRまたはKであり、X
20はLまたはVであり、X
23はK、EまたはDであり、X
24はTまたはAであるが、ただし前記位置におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは配列番号13のアミノ酸残基1〜30における対応する位置のアミノ酸と同じではない)
(ii)WVX
3QX
5PX
7X
8GLEWIG(配列番号23)
(式中、X
3はKであり、X
5はR、A、またはTであり、X
7はGでありX
8はQまたはKであるが、ただし位置X5またはX8のアミノ酸残基の1つは配列番号13のアミノ酸残基36〜49における対応する位置のアミノ酸と同じではない);
(iii)YNQKFX
6GKAX
10LTVDKSSSTAYMEVSX
26LTX
29EDSAX
34YYCAR(配列番号24)
(式中、X
6はK、DまたはEであり、X
10はK、EまたはDであり、X
26はS、DまたはEであり、X
29はSまたはAであり、X
34はVまたはTであるが、ただし前記位置のアミノ酸残基の少なくとも1つは配列番号13のアミノ酸残基60〜98における対応する位置のアミノ酸と同じではない)
の少なくとも1つを含む前記改変抗体
・重鎖フレームワーク領域(i)、(ii)および(iii)を含む、対応する改変抗体、
【0013】
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる対応する改変B4抗体であって、以下の免疫グロブリン軽鎖フレームワーク領域:
(iv)X
1IX
3LTQX
7PAX
10X
11SASPGEKX
19TMTC(配列番号32)
(式中、X
1はQまたはDであり、X
3はVまたはAであり、X
7はSまたはEであり、X
10はIまたはTであり、X
11はMまたはLでありX
19はVまたはAであるが、ただし前記位置におけるアミノ酸残基の少なくとも1つは配列番号25のアミノ酸残基1〜23における対応する位置のアミノ酸と同じではない)を含む前記改変抗体、
・X
3がAでありX
7がEである、対応する改変B4抗体、
・X
1がDであり、X
10がIでありX
11がLである、対応する改変B4抗体、
・重鎖フレームワーク領域(i)、(ii)および(iii)ならびに軽鎖フレームワーク領域(iv)を含む、対応する改変B4抗体、
・以下の免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域(CDR):
SASSGANYMH を含む、対応する改変B4抗体(配列番号28のアミノ酸残基24〜33)、
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる改変B4抗体であって、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21からなる群から選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む前記改変抗体、
【0014】
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる改変B4抗体であって、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31からなる群から選択される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む前記改変抗体、
・配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21からなる群から選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つならびに、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31からなる群から選択される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つを含む、対応する改変B4抗体、
・以下の、群から選択される重鎖および軽鎖を含む、対応する改変B4抗体:
(i)配列番号14の重鎖可変領域および配列番号26の軽鎖可変領域;
(ii)配列番号15の重鎖可変領域および配列番号27の軽鎖可変領域;
(iii)配列番号16の重鎖可変領域および配列番号28の軽鎖可変領域;
(iv)配列番号17の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域(これは好ましい);
(v)配列番号18の重鎖可変領域および配列番号29の軽鎖可変領域(これは好ましい);
(vi)配列番号20の重鎖可変領域および配列番号30の軽鎖可変領域;ならびに
(vii)配列番号21の重鎖可変領域および配列番号31の軽鎖可変領域、
【0015】
・以下の免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域(CDR):
SASSGANYMH
を含む、対応する改変B4抗体(配列番号28のアミノ酸残基24〜33)、
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる、B4抗体の重鎖可変領域と少なくとも90%同一であるポリペプチドであって、Val12、Leu20、Lys23、Thr24、Gly42、Lys38、Lys65、Lys69、Ser85またはVal93に対応する1以上の残基におけるアミノ酸置換を含む前記ポリペプチド、
・B4抗体の重鎖可変領域と少なくとも95%同一である、対応するポリペプチド、
・置換Gln5Glu、Val12Lys、Arg19Lys、Leu20Val、Lys23Glu、Lys23Asp、Thr24Ala、Lys38Arg、Gly42Asp、Gly42Glu、Lys65Asp、Lys65Glu、Lys69Glu、Lys69Asp、Ser85Asp、Ser85GluまたはVal93Thrの1以上を含む、対応するポリペプチド、
【0016】
・ヒトに投与したとき未改変B4抗体よりも低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる、B4抗体の軽鎖可変領域と少なくとも90%同一である対応するポリペプチドであって、Val3、Ser7、Ile10、Met11、Val19、Val29、Ser51、Leu53、Ala54またはSer75に対応する1以上の残基におけるアミノ酸置換を含む前記ポリペプチド、
・B4抗体の軽鎖可変領域と少なくとも95%同一である、対応するポリペプチド、
・置換Gln1Asp、Val3Ala、Ser7Glu、Ile10Thr、Met11Leu、Val19Ala、Val29Ala、Ser51Asp、Leu53Thr、Ala54AspまたはSer75Gluの1以上を含む、対応するポリペプチド、
【0017】
・アミノ酸置換Gln5Glu、Val12Lys、Arg19Lys、Leu20Val、Lys23Glu、Lys23Asp、Thr24Ala、Lys38Arg、Gly42Asp、Gly42Glu、Lys65Asp、Lys65Glu、Lys69Glu、Lys69Asp、Ser85Asp、Ser85GluまたはVal93Thrを含む重鎖ポリペプチドおよびアミノ酸置換Gln1Asp、Val3Ala、Ser7Glu、Ile10Thr、Met11Leu、Val19Ala、Val29Ala、Ser51Asp、Leu53Thr、Ala54AspまたはSer75Gluを含む軽鎖ポリペプチドを含む改変B4抗体、
・本明細書記載の改変B4抗体または対応するポリペプチドをコードするDNA分子、
・対応するDNA分子を含む発現ベクター、
・本明細書記載の改変B4抗体または対応するポリペプチドを発現する宿主細胞、
・本明細書記載の抗体またはポリペプチドを薬理学的有効量含み、場合により、薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を共に含む、癌および自己免疫疾患の治療に適した医薬組成物、
・自己免疫疾患または癌の治療薬の製造のための、対応する医薬組成物の使用。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、野生型B4と比較して低減された免疫原性を有するB4タンパク質ならびに該タンパク質の製造方法および使用方法に関する。より具体的には、本発明は、主として免疫反応を刺激する可能性のあるB4内のT細胞エピトープを除去することによりB4抗体それ自身の免疫原性を低減する効果を有する、B4抗体の変異を提供する。
【0019】
本発明は、本明細書においてそれぞれ一般的に“B4 VHvx”および“B4 VKvy”と呼ぶ、一連の、抗CD19マウス抗体B4(Nadler et al., (1983) J. Immunol. 130:2947 - 2951; Roguska et al., (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969 - 973) の改変抗体重鎖(VH)および軽鎖(VK)可変領域に関する。参考のために、元のマウスB4抗体の重鎖可変領域(B4 VH0)の配列および元のマウスB4抗体(B4 VK0)の軽鎖可変領域の配列を、CDRに下線を付して、それぞれ
図34および35に示す。
元のB4 VH0およびB4 VK0ポリペプチドと比較して、B4 VHvxおよびB4 VKvyポリペプチドは低減された免疫原性を有する。より具体的には、本発明は、主として免疫反応を刺激する可能性のあるこれらのポリペプチド内のT細胞エピトープを除去することによりB4可変領域ポリペプチドの免疫原性を低減する効果を有する、B4 VHおよび/またはB4 VKの変異を提供する。本発明によれば、B4可変領域の改変体を含有するタンパク質組成物は、ヒトに投与したとき、より低い免疫原性を有するが、なおCD19に特異的に結合し、CD19を発現する細胞を標的とすることができる。
【0020】
本明細書において、用語“相補性決定領域”および“CDR”は、抗原と主として相互作用する免疫グロブリン可変領域の超可変領域またはループを意味するものと理解される。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VK)は、共に、それぞれ
図34および35に示すように、フレームワーク領域に挿入された3つのCDRを含む。例えば、
図34(配列番号13)に示すB4抗体の免疫グロブリン重鎖可変領域を規定するアミノ酸配列を参照して、アミノ酸配列Ser31〜His35(CDR1)、Glu50〜Asn59(CDR2)およびGly99〜Tyr109(CDR3)によりCDRが規定される。
図35(配列番号25)に示すB4抗体の免疫グロブリン軽鎖可変領域を規定するアミノ酸配列を参照して、アミノ酸配列Ser24〜His33(CDR1)、Asp49〜Ser55(CDR2)およびHis88〜Thr94(CDR3)によりCDRが規定される。
本明細書において、用語“フレームワーク領域”および“FR”は、相補性決定領域に隣接した免疫グロブリン可変領域の領域を意味するものと理解される。免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VK)は、
図34および35に示すように、それぞれ4つのFRを含む。例えば、
図34(配列番号13)に示すB4抗体の免疫グロブリン重鎖可変領域を規定するアミノ酸配列を参照して、アミノ酸配列Gln1〜Thr30(FR1)、Trp36〜Gly49(FR2)、Tyr60〜Arg98(FR3)およびTrp110〜Ser120(FR4)によりFRが規定される。
図35(配列番号25)に示すB4抗体の免疫グロブリン軽鎖可変領域を規定するアミノ酸配列を参照して、アミノ酸配列Gln1〜Cys23(FR1)、Trp34〜Tyr48(FR2)、Gly56〜Cys87(FR3)およびPhe95〜Lys104(FR4)によりFRが規定される。さらにまた、
図34および35において太字で示したアミノ酸残基は、本発明の種々の実施形態に従って変異させることができるアミノ酸残基である。
【0021】
T細胞エピトープは、構造に基づいたコンピュータモデリングに基づいた予測を含む種々のコンピュータおよび非コンピュータ手法または、ペプチドの合成および特定のMHCクラスII分子への結合試験もしくは免疫原性アッセイにより同定することができる。本発明によれば、潜在的T細胞エピトープは、単離されたペプチドとして考慮される場合、MHCクラスII分子または非ヒト種における同等物に結合すると予測される配列である。潜在的T細胞エピトープは、抗原プロセシングの他の側面、例えば抗原提示細胞へのタンパク質の取り込みの効率、MHCクラスIIに結合できるペプチドを生じるための無傷のタンパク質の部位における切断効率などを考慮せずに規定される。従って、動物へのタンパク質の投与後にMHCクラスIIに実際に提示される一連のT細胞エピトープは潜在的T細胞エピトープのサブセットである。本発明によれば、T細胞エピトープはMHCクラスII分子と相互作用するタンパク質上のエピトープである。理論に束縛されるものではないが、T細胞エピトープはT細胞の発生中にT細胞のネガティブ選択過程を受けなかったタンパク質のアミノ酸配列であり、従ってMHCクラスII分子により提示され、T細胞受容体により認識されることが予期されると考えられる。
一実施形態によれば、本発明は、B4 VHおよびB4 VK領域の免疫原性を低減することに関連する方法を提供する。本発明の一実施形態によれば、潜在的非自己T細胞エピトープがB4 VHまたはB4 VKの配列において同定される。例えば、潜在的非自己T細胞エピトープは、MHCクラスII分子に結合するモデリングペプチドに基づくコンピュータ手法により同定される。ついで、潜在的T細胞エピトープを含有するペプチドがMHCクラスIIに結合する能力が低減されるか除去されるように、特定のアミノ酸残基への置換が行われる。
【0022】
本発明の改変された可変領域タンパク質配列
一実施形態によれば、特定のアミノ酸変異(単数または複数)の効果は、構造に基づいたコンピュータモデリングに基づいて予測される。例えば、ProPred(http://www.imtech.res.in/raghava/propred; Singh and Raghava (2001) Bioinformatics 17:1236 - 1237)は、HLA-DR対立遺伝子に結合するペプチドの予測に使用することができる公開されたウェブベースツールである。ProPredは、一連の50HLA-DR対立遺伝子に関してSturnioloにより記載されたマトリックス予測アルゴリズム(Sturniolo et al., (1999) Nature Biotechnol. 17:555 - 561)に基づく。このようなアルゴリズムを用いて、複数のMHCクラスII対立遺伝子に結合すると予測され、従って免疫原性を有すると推定される種々のペプチド配列がB4 VHおよびB4 VK内に見いだされた。これらのペプチド配列およびそのHLA-DR対立遺伝子に対する予測される結合頻度(binding frequency)を表1に示す。
表1を参照して、B4 VH領域(左カラム)またはB4 VK領域(右カラム)におけるその位置(#)と共に、少なくとも5HLA-DR対立遺伝子に結合する各9-merペプチドの配列を示す。“結合頻度(Bind freq.)”は、任意の結合閾値(binding threshold)(この場合20%)以上にペプチドが結合する、可能性のある50対立遺伝子中の対立遺伝子数を指す。結合頻度“+”は、5〜9対立遺伝子に結合するペプチドを指し、“++”は10〜19対立遺伝子に結合するペプチドを指し、“+++”は20〜50対立遺伝子に結合するペプチドを指す。20%結合閾値は、Sturnioloらにより記載されたアルゴリズムにより算出される理論的最大結合スコア(theoretical maximum binding score)に関連している。
【0023】
表1.ヒトHLA-DR対立遺伝子に結合すると予測される、選択されたB4 V領域ペプチド
【0024】
ヒトHLA-DR対立遺伝子への特定のペプチドの結合を減少または除去させる特定の変異を導入することにより、B4 VHおよびB4 VKポリペプチドにおけるこれらの潜在的に免疫原性を有する配列を、より免疫原性の低いものにすることができる(例えばWO98/52976およびWO00/34317を参照のこと)。あるいはまた、非ヒトT細胞エピトープは、ヒト生殖系列抗体に存在するヒト自己エピトープに相当するように変異される(例えば米国特許第5,712,120号を参照のこと)。
抗体可変領域の3次構造および4次構造を参照することにより、適切な変異を選択するための指針を得ることができる。抗体可変領域の結晶構造は当該技術分野で公知であり、FRの構造は一般にお互いに大変類似していることが知られている。抗CD19抗体 B4 VH0/VK0の抗体可変領域の理論モデルは、一次構造のアラインメントから同定できる、構造が決定された最も密接に関連している抗体の重鎖および軽鎖可変領域から構築することができる(Altschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-415)。解析された構造に合わせてB4の軽鎖および重鎖を作るためにスレッディングアルゴリズムを用い(Marti-Renom et al., (2000) Annu Rev Biophys Biomol Struct 29:291-325)、スレッド構造をさらに精密化して立体化学的に有利なエネルギーを得ることができる(Weiner et al., (1984) J Am Chem Soc 106:765-784)。PDBデータベースアクセッションコードによりそれぞれ1FBI(モノクローナル抗体F9.13.7のFabフラグメント)および1MIM(抗CD25キメラ抗体Sdz Chi621のFabフラグメント)と表される解析された重鎖および軽鎖構造は、この目的のために有用な参照構造であることが見いだされた。
【0025】
好ましい変異は、タンパク質の発現、フォールディングまたは活性をあまり妨害しない。本発明によれば、B4 VH内の位置Q5、V12、R19、L20、K23、T24、K38、R40、G42、Q43、K65、K69、S85、S88、またはV93におけるアミノ酸およびB4 VK内の位置Q1、V3、S7、I10、M11、V19、V29、S51、L53、A54またはS75におけるアミノ酸は、抗体が発現され、B4の未改変体に匹敵するレベルでCD19に結合する能力を保持したままで変異させることができる。従って、本発明は、Q5、V12、R19、L20、K23、T24、K38、R40、G42、Q43、K65、K69、S85、S88およびV93からなるアミノ酸位置の群から選択される、VH配列における少なくとも1つの改変ならびに/またはQ1、V3、S7、I10、M11、V19、V29、S51、L53、A54およびS75からなるアミノ酸位置の群から選択される、VK配列における少なくとも1つの改変を有するB4抗体を含む。
本発明のアミノ酸置換を許容することが見いだされた特定の位置の網羅的ではないリストを、これらの位置における典型的な置換と共に表2に示す。
【0027】
一連の実施形態は、Q5E、V12K、R19K、L20V、K23E、T24A、K38R、R40T、G42D、Q43K、K65D、K69E、S85D、S88AおよびV93Tから選択される、B4 VHポリペプチドにおけるアミノ酸置換を含む。さらに考慮される置換は、K23D、G42E、K65EおよびK69Dである。変異の特別な組み合わせもまた有用であることもまた認められる。例えば、特定の実施形態の1つにおいて、置換K23EおよびK69Eが含まれる。他の特定の実施形態において、例えば、B4 VHv1(配列番号14)に関して示されるように、さらに置換G42DおよびS88Aが含まれる。さらに他の特定の実施形態において、VHv1はさらに置換V12KおよびK65Dを含む(B4 VHv11)(配列番号20)。さらなる特定の実施形態において、B4 VHv3(配列番号16)で例示されるように、置換Q5E、V12K、R19K、L20V、S85DおよびS88Aが含まれる。よりさらなる特定の実施形態において、B4 VHv4(配列番号17)で例示されるように、置換Q5E、R19K、L20V、R40T、Q43K、K65D、S85D、S88AおよびV93Tが含まれる。よりさらなる特定の実施形態において、B4 VHv5(配列番号18)で例示されるように、置換Q5E、R19K、L20V、K38R、R40A、Q43K、K65D、S85DおよびV93Tが含まれる。他の特定の実施形態において、B4 VHv34(配列番号21)の配列に示すように、B4 VHv3およびB4 VHv4の置換が組み合わされる。
【0028】
他の一連の実施形態は、Q1D、V3A、S7E、I10T、M11L、V19A、V29A、S51D、L53T、A54DおよびS75Eから選択される、B4 VKポリペプチドにおけるアミノ酸置換を含む。特定の実施形態の1つにおいて、置換A54Dが含まれる。変異の特定の組み合わせもまた有用であることが認められる。例えば、さらに特定の実施形態において、さらに、B4 VKv1(配列番号26)で例示されるように、置換V3AおよびS7Eが含まれ、あるいはB4 VKv2(配列番号27)で例示されるように、置換Q1D、I10TおよびM11Lが含まれる。他の実施形態において、B4 VKv11(配列番号30)において例示されるように、B4 VK1はさらに置換V19AおよびS75Eを含む。さらに他の実施形態において、B4 VKv3(配列番号28)で例示されるように、置換I10T、M11L、V19A、V29AおよびS75Eが含まれる。よりさらなる特定の実施形態において、B4 VKv4(配列番号29)で例示されるように、置換I10T、M11L、V19A、S51DおよびL53Tが含まれる。他の特定の実施形態において、B4 VKv34(配列番号31)の配列に示すように、B4 VKv3およびB4 VKv4の置換が組み合わされる。
【0029】
前述の、本発明のB4 VHvxおよびB4 VKvxの一部の例示的な配列の一次構造のアラインメントを、それぞれ
図36および37に示す。太字で示したアミノ酸は、本発明に従って変異させることができるVH0およびVK0の位置であり、下線を引いたアミノ酸はCDRを表す。VHv1〜VHv34およびVKv1〜VKv34は、それぞれ、免疫原性を低減する特定のアミノ酸置換を有する代表的な重鎖および軽鎖である。
本発明の可変領域構成は、少なくとも本発明の重鎖または軽鎖を含む。例えば、一実施形態において、可変領域はB4 VHv1(配列番号14)およびB4 VK0(配列番号25)を含む。他の実施形態において、可変領域はB4 VHv1(配列番号14)およびB4 VKv1(配列番号26)を含む。さらに他の実施形態において、可変領域はB4 VHv4(配列番号17)およびB4 VKv4(配列番号29)を含む。さらに他の実施形態において、可変領域はB4 VHv5(配列番号23)およびB4 VKv4(配列番号29)を含む。本発明の他の実施形態は、本発明により考えられるB4 VHvxおよびB4 VKvyポリペプチドの完全な組みの組み合わせをマッチさせることにより容易に得られることが認められる。有用な組み合わせは、さらに、これらの組み合わせ、たとえばB4 VHvx/VKvy抗体などを含有するタンパク質組成物を、その発現性およびCD-19結合活性ばかりでなく、以下にさらに詳細に記載されているようなその低減された免疫原性を分析することにより実験的に決定することができる。
【0030】
本発明の可変領域の低減された免疫原性の確認
本発明の変異が実際に低減された免疫原性をもたらすかどうかを確認するために、当該分野で公知の標準試験を用いることができる。例えば、T細胞刺激アッセイを用いることができる(例えば、Jones et al., (2004), J. Interferon Cytokine Res., 24:560)。このアッセイにおいて、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を入手し、標準条件に従って増殖させる。随意に予備刺激した後、潜在的MHCクラスIIエピトープに対応するペプチドをPBMC培養物に加え、PBMCをさらにインキュベートし、その後トリチウム化チミジンを加える。ペプチドは最小9merであることができ、あるいは約10〜15または15を超えるアミノ酸を有することもできる。細胞をさらにインキュベートした後、次にトリチウム化チミジンのDNAへの取り込みを標準法により測定する。
T細胞刺激アッセイは以下の機構により機能すると考えられる。最初に、刺激因子としてペプチドが用いられる場合、ペプチドは最初にPBMC中の細胞上に存在するMHCクラスII分子に結合する必要がある。次に、MHCクラスII/ペプチド複合体は、CD4+T細胞上のT細胞受容体と増殖性相互作用を行う必要がある。試験ペプチドがMHCクラスII分子に十分に強固に結合できない場合、シグナルは生成されない。ペプチドがMHCクラスII分子に結合でき、特定のMHCクラスII/ペプチド複合体を認識できる適切に再構成されたT細胞受容体を発現するT細胞が存在する場合、シグナルは生成するであろう。しかしながら、ネガティブセレクション過程の結果として、このようなT細胞が除去されている場合、シグナルは生成されない。これらの機構は、所定のペプチドによる刺激または刺激の欠如から推測されるように、タンパク質配列の免疫原性に関連性があると考えられる。
【0031】
適切なT細胞受容体の不足や、他の関連のないT細胞の増殖とそれに続くT細胞集団のホメオスタシスに関連する確率論的理由から、PBMC集団中に認識T細胞が極少数しか存在しない場合、シグナルが期待される場合であってもシグナルが生成されない場合がある。このように、擬陰性結果は生じうる。これらの考察に基づき、多くの異なるPBMC源を用い、これらのサンプルを独立して試験することが重要である。また一般に、人種的に多様なヒトの組みからのPBMCを試験し、各PBMC集団に存在するMHCクラスII対立遺伝子を決定することも有用である。
標準的なT細胞アッセイにおいて、トリチウム取り込みシグナルは、多くの場合バックグラウンド取り込みより2倍しか大きくないという不都合がある。本発明のタンパク質およびペプチドはまた、例えば、純化したCD4+T細胞および純化した樹状細胞を試験ペプチドの存在下で共培養し、ついでトリチウム化チミジンに暴露し、ついでトリチウム化チミジン取り込みをアッセイする改良T細胞アッセイで試験することもできる。この第2のアッセイは、CD8+T細胞などの関連性のない細胞へのトリチウム化チミジン取り込みが本質的に排除され、従ってバックグラウンドが低下しているという利点を有する。
第3のアッセイは、霊長類などの動物における、低減された免疫原性を有する候補タンパク質の試験を含む。このようなアッセイは、一般に、B4 VHvx/VKvyタンパク質組成物、例えば前述の細胞系アッセイなどの細胞系アッセイにおける潜在的免疫原性に関する各成分ペプチドの試験により設計された抗体の試験を含む。いったんこのような候補B4 VHvx/VKvyタンパク質組成物が設計され、発現されれば、このタンパク質は動物への注射により免疫原性が試験される。
【0032】
B4 VHvx/VKvyタンパク質組成物の注射は、一般に、ヒトにおける治療への使用に際して想定される送達経路と同様に行われる。例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内注射または静脈内注入を用いることができる。2以上の投与が用いられる場合、投与は異なる経路によるものであることができる。
免疫原性試験を目的とする場合、シグナルを増大させ、使用されることが必要な動物数を最小限にするために、アジュバントを同時投与することが有用な場合がある。アジュバントが使用される場合、タンパク質成分を欠くアジュバント、例えば非メチル化CpGジヌクレオチドを有するDNA、細菌リピドA、N-ホルミルメチオニンまたは他の細菌非タンパク質成分を使用することが可能である。理論に束縛されるものではないが、タンパク質含有アジュバントを避ける理論的根拠は、他のタンパク質は、候補タンパク質に対して抗体反応に最終的に寄与するT細胞エピトープを提供する可能性があることである。
候補B4 VHvx/VKvyタンパク質組成物の1以上の投与後、ELISA法などの標準法に従って抗イディオタイプ抗体の存在を試験する。本発明のB4 VHvx/VKvyタンパク質組成物は、元のB4 VH/VK配列を含有する対応する分子よりも、抗体産生を低い頻度でより低い程度に誘導することが見いだされる。
【0033】
本発明の可変領域の他の形態
裸の(naked)抗体における本発明のV領域の使用に加えて、毒素、免疫刺激剤および他のタンパク質を標的とする抗体融合タンパク質ならびにFab、一本鎖Fv、二重特異性抗体および抗体エンジニアリングの分野で公知の他の配置に本発明のV領域を構成することもまた可能である。
本発明のある実施形態において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、それぞれ、免疫グロブリンの軽鎖定常領域および重鎖定常領域に連結することができる。免疫グロブリン軽鎖は、κ鎖またはλ鎖のいずれかで示される定常領域を有する。本発明の特定の実施形態において、軽鎖定常領域はκ鎖である。重鎖定常領域ならびにそれらの種々の改変および組み合わせを以下にさらに詳細に説明する。
【0034】
Fc部分
本発明の抗体可変領域は、場合によりFc部分に融合している。本明細書において、Fc部分は、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域由来の、該定常領域のフラグメント、アナログ、変種、変異体または誘導体を含むドメインを含む。免疫グロブリン重鎖の定常領域は、CH1、ヒンジ、CH2、CH3および、一部の重鎖クラスについてはCH4ドメインを含む重鎖のC末端領域の少なくとも一部と相同の天然に存在するまたは合成により製造されるポリペプチドとして定義される。“ヒンジ”領域は、Fc部分のCH2-CH3領域にCH1ドメインを連結する。すべての哺乳動物の免疫グロブリンの重鎖定常領域は、広範なアミノ酸配列類似性を示す。これらの免疫グロブリン領域のDNA配列は当該分野で公知である(例えば、Gillies et al.(1989) J. Immunol. Meth. 125:191を参照のこと)。
本発明において、Fc部分は通常少なくともCH2ドメインを含む。例えば、Fc部分は全免疫グロブリン重鎖定常領域(CH1-ヒンジ-CH2-CH3)を含むことができる。あるいはまた、Fc部分はヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインの全部または一部を含むことができる。免疫グロブリンの定常領域は、Fc受容体(FcR)結合および補体結合により仲介されるものを含めて、多くの重要な抗体のエフェクター機能に関与している。それぞれがイソタイプにより表される特徴的なエフェクター機能を有する、IgA、IgG、IgD、IgEおよびIgMとして分類される、重鎖定常領域の5つの主要なクラスが存在する。
【0035】
IgGは、例えば、4つのγイソタイプ:γ1、γ2、γ3およびγ4に分けられ、それぞれIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4としても知られている。IgG分子は、IgGクラスの抗体に特異的な3つのクラスのFc受容体(FcγR)、すなわちFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを含む複数のクラスの細胞受容体と相互作用できる。IgGがFcγR受容体に結合するための重要な配列はCH2およびCH3ドメイン中に存在すると報告されている。
抗体、特にIgGクラスの広く認められたエフェクター機能は、補体依存性細胞傷害CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を含む。すべてのIgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)は、CDCおよびADCCをある程度仲介し、両方の活性に関してIgG1およびIgG3が最も強力である(Chapter 3, Table 3in Paul, Essential Immunology 4.sup.th Ed., p. 62)。CDCは複数の機構により生じると考えられる。抗体が細胞表面上の抗原上に結合するとき、1つの機構が開始される。一度抗原抗体複合体が形成されれば、C1q分子が抗原抗体複合体に結合すると考えられる。ついでC1qはそれ自身を分解して他の補体タンパク質の酵素的活性化および分解のカスケードを開始させ、次いでそれが標的細胞表面に結合し、例えば、細胞溶解および/またはマクロファージによる貪食によるその死を促進する。ADCCは、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージおよび好中球などの細胞傷害性細胞上のFc受容体が細胞表面上の抗原に結合した抗体のFc領域に結合するとき生じると考えられる。Fc受容体結合は、細胞傷害性細胞に標的細胞を殺すようにシグナルを出す。特質上、NK細胞は、Fc RIIIaのみを発現する、ADCCの主要なメディエイターであると考えられている。
【0036】
抗体のエフェクター機能を改変することは多くの場合有用である。例えば、B細胞腫瘍の関連する癌またはB細胞成分に伴う自己免疫疾患を治療するために、抗体のADCC活性を促進することは有用である。例えばCD19に対する、比較的低密度で存在するB細胞表面抗原に特異的な抗体のADCC活性を増強することは極めて有用な可能性がある(Niwa et al., (2005) Clin. Cancer Res. 11:2327-2336)。B細胞表面上のCD20に対するCD19の抗原密度は、おおよそ10倍低いと考えられる。親抗体に対するその抗体のADCC活性を増強させる抗体の改変は当該技術分野で公知であり、一般に、FcγRIIIに対する変種抗体の結合親和性を増強させる改変に相関する(例えば、米国特許第6,737,056号を参照のこと)。例えば、Fc領域の256、290、298、312、326、330、333、334、339、360、378および430から選択される1以上の位置(IgGγ1におけるそれらの位置を参照して)において変異が導入される(番号付けは、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, 1991による)。好ましい変異は、298、333および334から選択される1以上の位置において導入される。例えば、アラニン置換を導入することができる。
【0037】
抗体のADCC活性はまた、抗体を産生するために用いられる特定の細胞株によっても影響を受ける。例えば、マウス骨髄腫NS/0細胞(またはSP2/0細胞)内に産生される抗体は一般に弱いADCCを示し、ラット骨髄腫YO細胞(またはYB2/0)細胞内に産生される抗体は高いADCCを示す(Lifely et al., (1995) Glycobiology 5:813 - 822)。抗体発現に用いられる細胞株のタイプは、IgGγ1におけるN297に対応する位置における抗体のFc領域に結合しているN-結合型グリコシル鎖の炭水化物構造に影響を及ぼすことは当該技術分野で公知である。CHO細胞内で産生される抗体の炭水化物構造はフコシル化されており、一方でYB2/0内で産生される抗体の炭水化物鎖は大きくフコースを欠いている(Shinkawa et al., (2003) JBC 278:3466-3473)。炭水化物構造上にフコースを欠く抗体はヒトFc RIIIaに高い親和性で結合する(Shields et al., (2002) JBC 277:26733-26740)。特定の実施形態において、本発明の可変領域を有する抗CD19抗体は、抗体のFc部分のN-結合型グリコシル鎖上におけるフコシル化が低下されていることを特徴とする。
【0038】
抗体の血清半減期を改変することもまた多くの場合有用である。免疫グロブリン融合タンパク質としての抗体の血清半減期は、Fc受容体(FcR)に結合する抗体の能力により影響を受ける(Gillies et al., Cancer Research (1999) 59:2159-66)。IgG2およびIgG4のCH2およびCH3ドメインは、IgG1のものと比較して、Fc受容体に対する結合親和性が検出されないかまたは低下している。従って、特徴付けられた抗体の血清半減期は、IgG2またはIgG4イソタイプ由来のCH2および/またはCH3ドメインを用いることにより半減期を増加させることができる。あるいはまた、抗体は、Fc受容体に対する結合親和性を低下させるために、IgG1またはIgG3由来のCH2および/またはCH3ドメインを、これらのドメインにおける1以上のアミノ酸を改変させて含むことができる(例えば、米国特許出願公開第2003-0105294号として公開された米国特許出願第09/256,156号を参照のこと)。
Fc部分のヒンジ領域は、通常重鎖定常領域のCH1ドメインのC末端に隣接している。本発明のタンパク質に含まれる場合、ヒンジは天然に存在する免疫グロブリン領域に相同であり、天然の免疫グロブリンにおけると同様に、通常ジスルフィド結合を介して2つの重鎖を連結するシステイン残基を含有している。ヒトおよびマウス免疫グロブリンに関するヒンジ領域の典型的な配列は、ANTIBODY ENGINEERING, a PRACTICAL GUIDE, (Borrebaeck, ed., W. H. Freeman and Co., 1992)において見いだすことができる。
本発明に適したヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4および他の免疫グロブリンイソタイプに由来し得る。IgG1イソタイプは、効率的でばらつきのないジスルフィド結合形成を可能にする、ヒンジ領域における2つのジスルフィド結合を有する。従って、本発明の好ましいヒンジ領域はIgG1に由来する。場合により、IgG1ヒンジの最初の、大部分のN末端システインは、本発明の抗体または抗体融合タンパク質の発現およびアセンブリーを促進するために変異されている(例えば、米国特許出願公開第2003-0044423号として公開された米国特許出願第10/093,958号を参照のこと)。
【0039】
IgG1とは対照的に、IgG4のヒンジ領域は、鎖間ジスルフィド結合の形成が非効率的であることが知られている(Angal et al., (1993), Mol. Immunol. 30:105-8)。同様に、IgG2ヒンジ領域は、組換え系での分泌中にオリゴマー化およびおそらくは間違ったジスルフィド結合を促進する傾向のある4つのジスルフィド結合を有する。本発明に適するヒンジ領域の1つは、重鎖由来部分間のジスルフィド結合の正しい形成を促進する変異を選択的に含有するIgG4ヒンジ領域に由来し得る(Angal et al., (1993), Mol. Immunol. 30(1):105-8)。他の好ましいヒンジ領域は、最初の2つのシステインがそれぞれ他のアミノ酸、例えば一般的な優先順に、セリン、アラニン、スレオニン、プロリン、グルタミン酸酸、グルタミン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸酸、グリシン、メチオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンまたはセレノシステインに変異されているIgG2ヒンジに由来する(例えば米国特許出願公開第2003-0044423号を参照のこと)。
【0040】
本発明の抗体可変領域に融合させたFc部分は、CH2および/またはCH3ドメインならびに異なる抗体イソタイプに由来するヒンジ領域を含むことができる。例えば、Fc部分は、IgG2またはIgG4のCH2および/またはCH3ドメインならびにIgG1のヒンジ領域を含むことができる。このようなハイブリッドFc部分のアセンブリーは米国特許出願公開第2003-0044423号に記載されている。
本発明の抗体可変領域に融合させる場合、Fc部分は、一般にFc融合タンパク質の血清半減期を延ばす1以上のアミノ酸改変を含むことができる。このようなアミノ酸改変は、Fc受容体結合活性または補体結合活性を実質的に低下または除去させる変異を含む。例えば、このような変異の1つのタイプでは、免疫グロブリン重鎖のFc部分のグリコシル化部位が除去されている。IgG1において、グリコシル化部位はAsn297である(例えば、米国特許出願公開第2003-0166163号として公開された米国特許出願第10/310,719号を参照のこと)。
本発明の抗体可変領域は、診断剤および/または治療剤と結合させることができる。該薬剤は、抗体に融合させて融合タンパク質を作製することができる。あるいはまた、該薬剤は抗体と化学的に連結させて免疫複合体を作製することができる。該薬剤は、例えば、毒素、放射性標識、イメージング剤、免疫刺激部分などであることができる。
【0041】
本発明の抗体可変領域はサイトカインに結合させることができる。好ましいサイトカインはインターロイキン、例えばインターロイキン-2(IL-2)、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-18、IL-21およびIL-23など、造血因子、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびエリスロポエチンなど、腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNFαなど、リンホカイン、例えばリンホトキシンなど、代謝過程の調節剤、例えばレプチンなど、インターフェロン、例えばインターフェロンα、インターフェロンβおよびインターフェロンγなど、ならびにケモカインを含む。好ましくは、抗体サイトカイン融合タンパク質または免疫複合体はサイトカインの生物活性を示す。一実施形態において、抗体可変領域はIL-2に融合している。好ましくは、米国特許出願公開第2003-0166163号に記載されているように、IL-2部分内のいくつかのアミノ酸は毒性を低減するように変異されている。
場合により、タンパク質複合体はさらに第2の薬剤、例えば第2のサイトカインを含むことができる。一実施形態において、B4 VHvx/VKvy抗体融合タンパク質はIL-12およびIL-2を含む。免疫グロブリンドメインおよび異なる2つのサイトカインを含有するタンパク質複合体の作製については、米国特許第6,617,135号に詳細に記載されている。
【0042】
抗体産生
本発明の抗体はもちろん、本発明の他の可変領域含有タンパク質もまたタンパク質工学の分野で公知の方法で製造される。本発明の配列を含む重鎖および軽鎖を発現することができる核酸ベクターが適切な細胞中に導入され、組換えタンパク質産物が発現され、精製される。例えば、本発明の抗体は、操作された哺乳動物細胞株、例えばNS/0細胞、CHO細胞、SP2/0細胞(SP2/0-Ag14; ATCC-CRL 1581)、YB2/0細胞(YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20; ATCC CRL-1662)または抗体産生の分野で公知の他の哺乳動物細胞内で産生することができる。
一実施形態において、B4 VHvx/VKvy抗体はNS/0細胞内で産生される。他の実施形態において、B4 VHvx/VKvy抗体はYB2/0細胞内で産生される。あるいはまた、本発明の可変領域を含有するタンパク質を産生するために、酵母、植物、昆虫細胞または細菌を用いることができる。
【0043】
投与
本発明の抗体は、好ましくは、B細胞性疾患、例えばB細胞リンパ腫、またはB細胞成分による自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、重症筋無力症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどを患う患者の治療に使用される。B細胞リンパ腫に関しては、医師の判断に従って、他の治療が役に立たなかった患者の治療に有用である可能性がある。例えば、リタキサン(Rituxan(登録商標))で治療した患者の中には初期段階で応答する患者もありうるが、Rituxan(登録商標)耐性癌細胞が生じる可能性がある。このような患者は、一般になお本発明の抗体に感受性を示す筈である。
CD19に対する抗体の場合、正常B細胞を身体から除くのが有用な場合もあるが、これは、これらの細胞が本発明の抗体を滴定する可能性があるからである。このために、標準手順に従ってRituxan(登録商標)を使用できる。あるいはまた、本発明の抗CD19抗体は、例えば実施例5および実施例9に記載されているように、身体から正常B細胞を除くために使用できる。
注入は好ましい投与方法である。他の投与方法は、皮下、皮内、筋肉内、腹腔内または静脈内(ボーラス)送達などの注射経路を含む。吸入および経口送達もまた可能な送達方法である。
70キログラムのヒトに対して、典型的な投与量は約50mg〜2グラムの範囲であり、好ましい投与量は約400〜600mgの範囲である。例えば、3〜6週間ごとに約1回反復投与することができ、その間、正常B細胞および腫瘍細胞がモニターされる。
本発明の融合タンパク質は、ヒト疾患、例えば癌などの治療に有用である。癌を治療するとき、例えば、0.1〜100mg/m
2/患者の投与量を用い、注入または皮下注射により、本発明の可変領域を含む抗体-IL-2融合タンパク質を投与することは有用である。好ましい実施形態において、1〜10mg/m
2/患者、より好ましくは約3〜6mg/m
2/患者の投与量を用い、注入または皮下注射により、本発明の可変領域を含む抗体-IL-2融合タンパク質を投与することは特に有用である。
【0044】
本発明の医薬組成物は、固体、半固体または液体剤形の形態、例えば、ピル、カプセル、粉末剤、液体、懸濁液などで、好ましくは正確な投与量の投与に適した単位剤形で使用できる。本組成物は通常の医薬担体または賦形剤を含み、加えて、他の医薬品、医薬剤、担体、アジュバントなどを含むことができる。このような賦形剤は、他のタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿タンパク質を含むことができる。このような剤形の実際の製造方法は既知であるか、または当業者には明白である。いずれにしても、投与される組成物または製剤は、治療対象者において望ましい効果を達成するのに有効な量で若干量の活性成分(単数または複数)を含む。
本組成物の投与は、このような活性を示す薬剤の一般に認められた投与方法のいずれによっても行うことができる。これらの方法は局所投与または全身投与である。薬学的に許容される担体による静脈内注射は好ましい投与方法である。投与される活性化合物の量は、もちろん、治療対象者、苦痛の重篤度、投与方法および処方医師の判断によって決まる。
本発明は、限定するものではない以下の実施例によってさらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0045】
本発明の重鎖および軽鎖の可変領域を含有する抗CD19抗体の構築
本発明の重鎖領域および軽鎖領域をコードする核酸配列を適切な哺乳動物発現ベクターに導入するために、一般的な遺伝子工学技術を用いた。例示的なクローニング戦略を以下に説明する。発現ベクターpdHL12は新世代pdHL発現ベクターであって、重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸カセットの挿入のための固有の制限部位を含有するように操作されている。pdHL12は、重鎖可変領域をコードする核酸をNhe I/Hind IIIフラグメント、そして軽鎖可変領域をコードする核酸をAfl II/Bam HIフラグメントとして受容し、無傷の抗体の重鎖および軽鎖を共発現するように設計されている(例えば米国特許出願第2003/0157054号を参照のこと)。
エンドヌクレアーゼ制限認識配列5’-CTTAAGC-3’(上流、Nhe I部位を含有する)および5’-CGTAAGTGGATCC-3’(下流、Hind III部位を含有する)を有する配列に挟まれた本発明の重鎖可変領域の核酸配列をde novo合成し、pUCベクター由来担体プラスミド(Blue Heron Biotechnology, Bothell, WA)中に挿入した。該核酸をNhe I/Hind IIIフラグメントとして担体プラスミドから切り出し、同様に消化したpdHL12プラスミドの適切なベクターフラグメントに連結させた。B4 VH0(配列番号1)、B4 VHv1(配列番号2)、B4 VHv2(配列番号3)、B4 VHv3(配列番号4)、B4 VHv4(配列番号5)、B4 VHv5(配列番号6)およびB4 VHv6(配列番号7)の核酸配列を示す。
【0046】
同様に、エンドヌクレアーゼ制限認識配列5’-GCTAGCTCCAGC-3’(上流、Afl II部位を含有する)および5’-GGTAAGCTT-3’(下流、Bam HI部位を含有する)を有する配列に挟まれた本発明の軽鎖可変領域の核酸をde novo合成し、pUCベクター由来担体プラスミド(Blue Heron Biotechnology, Bothell, WA)に挿入した。該核酸をAfl II/Bam HIフラグメントとして担体プラスミドから切り出し、同様に消化したpdHL12プラスミドの適切なベクターフラグメントに連結させた。B4 VK0(配列番号8)、B4 VKv1(配列番号9)、B4 VKv2(配列番号10)、B4 VKv3(配列番号11)およびB4 VKv4(配列番号12)をコードする核酸配列を示す。
異なる重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸配列をpdHL12に組み合わせて挿入することにより、本発明のB4抗体B4 VHvx/VKvyをコードする一団のプラスミドを作製した。
【実施例2】
【0047】
本発明の抗体の発現および精製
続く実施例において、以下の一般的技術を用いる。
1A.細胞培養およびトランスフェクション
哺乳動物細胞から抗体を一過性に発現させるために、リン酸カルシウムによるプラスミドDNAの共沈により、ヒト胎児腎臓293細胞または新生仔ハムスター腎臓(BHK)細胞にプラスミドDNAを導入し、プラスミドの安定維持のために細胞を選択なしで増殖させた[Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.]。いくつかの標準法、例えば、エレクトロポレーションまたはヌクレオフェクション(nucleofection)の1つにより安定的にトランスフェクトされたクローンが得られる。マウス骨髄腫NS/0細胞へのDNAのエレクトロポレーションを以下のように行う。10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1xペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM, Life Technologies)でNS/0細胞を増殖させる。約5x10
6細胞をPBSで1回洗浄し、リン酸緩衝液(PBS)0.5mlに再懸濁させる。ついで、氷で冷やしながらGene Pulserキュベット(電極ギャップ0.4cm、BioRad)中で細胞と共に線状化プラスミドDNA10μgを10分間インキュベートする。Gene Pulser(BioRad)を用い、0.25VおよびμFの設定でエレクトロポレーションを行う。氷で冷やしながら細胞を10分間回復させ、ついで増殖培地中に細胞を再懸濁させ、次に2つの96ウェルプレート上にプレーティングする。トランスフェクション2日後に添加される100nMメトトレキサート(MTX)の存在下で増殖させることにより、安定的にトランスフェクトされたクローンが選択される。3日おきにさらに2〜3回細胞の培地を交換すると、MTX耐性クローンは一般に2〜3週間で現れた。高産生クローンを特定するために抗ヒトFc ELISAによりクローンの上清をアッセイする[Gillies et al.(1989) J. Immunol. Methods 125:191]。高産生クローンを単離し、100nM MTXを含有する増殖培地中で増殖させる。
同様に、本質的に同様な方法により安定的にトランスフェクトされたクローンを得るために、他の細胞株、例えばCHO細胞、BHK細胞、SP2/0細胞およびYB2/0細胞を使用することができる。YB2/0細胞を用いた場合、一般に50nM MTXの存在下で増殖させることにより、安定的にトランスフェクトされたクローンが選択された。
【0048】
安定的にトランスフェクトされたクローン、例えばラット骨髄腫YB2/0細胞由来のクローンもまたヌクレオフェクションにより得られた。熱失活させた10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1xペニシリン/ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた約2x10
6YB2/0細胞を室温で10分間90xgで遠心分離し、添加されたNucleofector Solution V 100μlに再懸濁させた。細胞懸濁物100μlを線状化プラスミドDNA(β-ラクタマーゼ配列内のFsp I部位における線状化)2μgと混合し、キュベット(Amaxa)中に移し、適切なNucleofector(Amaxa)プログラムであるQ-20を用いてヌクレオフェクションを行った。前加温した培地500μlを添加し、サンプルを12ウェルプレートのウェルに移した。トランスフェクションの1日後に細胞を増殖培地中に再懸濁させ、おおよそ10細胞/ウェル〜おおよそ600細胞/ウェルの範囲の細胞密度で96ウェルプレート上にプレーティングした。トランスフェクションの2日後に添加した50nMメトトレキサート(MTX)の存在下で安定的にトランスフェクトされたクローンが選択された。さらに2回2〜3日おきに細胞の培地を交換した。MTX耐性クローンは一般に2〜3週間経って現れた。高産生クローンを同定するために、抗ヒトFc ELISAによりクローンの上清をアッセイした[Gillies et al. (1989) J. Immunol. Methods 125:191]。高産生クローンを単離し、50nM MTXを含有する増殖培地中で増殖させた。
当該技術分野で公知の代替培地、例えば2.5%ウシ胎児血清および100nMメトトレキサートを添加したHSFMまたはタンパク質を含まない培地、例えばCD培地中で該細胞を増殖させることができる。
【0049】
1B. ELISA
MTX耐性クローンの上澄および他の試験サンプルにおけるタンパク質産物の濃度を測定するために種々のELISAが用いられる。例えば、ヒトFc含有タンパク質、例えばキメラ抗体の量を測定するために抗huFc ELISAが用いられ、κ-軽鎖(キメラまたはヒト免疫グロブリン)の量を測定するために抗huκELISAが用いられる。以下に、抗huFc ELISAを詳細に説明する。
【0050】
A.コーティングプレート
AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno Research)の5μg/mlPBSを用い、96ウェルプレート(Nunc-Immuno plate Maxisorp)に100μl/ウェルでELISAプレートをコーティングする。コーティングされたプレートに蓋をして終夜4°Cでインキュベートする。ついでプレートを0.05%Tween(Tween20)/PBSで4回洗浄し、1%BSA/1%ヤギ血清/PBSを用い、200μl/ウェルでブロックする。ブロッキング緩衝液で、37°C、2時間インキュベーション後、0.05%Tween/PBSでプレートを4回洗浄し、ペーパータオル上で軽くたたいて水気を取る。
【0051】
B.試験サンプルおよび二次抗体を用いるインキュベーション
試験サンプルを、1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%Tween/PBSを含有するサンプル緩衝液に適切な濃度に希釈する。濃度が既知のキメラ抗体(ヒトFcとの)を用いて検量線を作成する。検量線を作成するために、125ng/ml〜3.9ng/mlの範囲の検量線を与える連続希釈液をサンプル緩衝液中に調製する。希釈サンプルおよ標準サンプルを100μl/ウェルでプレートに添加し、プレートを37°Cで2時間インキュベートする。
インキュベーション後、0.05%Tween/PBSを用いてプレートを8回洗浄する。ついで各ウェルに、二次抗体である、サンプル緩衝液におよそ1:120,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)を100μl加える。HRP結合抗ヒトIgGの各ロットについて、二次抗体の正確な希釈度を決定する必要がある。37°Cで2時間インキュベーション後、プレートを0.05%Tween/PBSで8回洗浄する。
【0052】
C.発色
基質溶液を100μl/ウェルでプレートに添加する。基質溶液は、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)(1錠)30mgを、新たに加えたH
2O
2 0.03%を含む0.025Mクエン酸/0.05M Na
2HPO
4緩衝液(pH5)15ml中に溶解して調製する。室温、暗所で30分間発色させる。発色時間は、コーティングされたプレートのロット間変動、二次抗体などに応じて変化させる必要がある。いつ反応を停止するか決定するために検量線における発色を観察する。4N H
2SO
4を100μl/ウェル添加することにより、反応を停止する。490nmと650nmの両方に設定され、490nmにおけるODから650nmにおけるバックグラウンドODを差し引くようにプログラムされたプレートリーダーによりプレートを読み取る。
抗hu κELISAは、二次抗体に希釈度1:4000の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗hu κ (Southern Biotechnology Assoc. Inc., Birmingham, Ala.)を用いることを除いて、前述の手順に従って行う。
【0053】
精製
標準的な抗体精製方法に従った。典型的には、本発明のB4 VHvx/VKvy抗体組成物は、プロテインAに対するFc部分の親和性に基づくプロテインAクロマトグラフィーにより細胞培養上清から精製した。B4 VHvx/VKvy抗体組成物を発現する細胞からの培養上清を予め平衡化させたFast Flow Protein A Sepharoseカラムに添着した。カラムをリン酸ナトリウム緩衝液(50mMリン酸ナトリウム,150mM NaCl,中性のpH)で十分に洗浄した。低いpH(pH2.5〜3)のリン酸ナトリウム緩衝液(上記の組成)で結合タンパク質を溶離し、溶離画分を直ちに1Mトリス塩基で約pH6.5に中和した。この組成物をTween80を0.01%まで添加した50mMリン酸ナトリウム, 150mM NaCl, pH6.5中に保存した。
HPLCサイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEにより産物の純度および完全性をルーチンに評価した。本発明のB4 VHvx/VKvy抗体は、通常、分解産物はほとんど認められず、90%以上は非凝集性で無傷であることが示された。
【実施例3】
【0054】
本発明のB4抗体のCD-19提示細胞に対する相対結合親和性の測定
本発明の抗体がCD19に対する結合を保持していることを確かめるために、標識親B4抗体(B4 VH0/VK0)の、CD19抗原を提示するDaudiリンパ腫細胞に対する結合を阻害するこれらの抗体の強度を測定する競合アッセイを用いた。
EZ-link Sulfo-NHS-LC-Biotinylation Kit(Pierce,#21430)を用いてビオチン標識B4 VH0/VK0抗体を提供されたプロトコルに従って調製した。Slide-a-lyzer(Pierce,#66425)を用いて産物を透析し、HPLCサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。
簡潔に言えば、PBS/2%血清緩衝液に溶解した800ng/ml、400ng/ml、200ng/ml、100ng/mlおよび50ng/mlの非標識実験B4 VHvx/VKvy抗体の1つと最終濃度100ng/mlで混合したビオチン標識B4 VH0/VK0抗体の滴定系列を調製した。対照として、上記と同じ濃度の非標識B4 VH0/VK0抗体(阻害対照)または緩衝液のみ(陽性結合対照)とビオチン標識抗体を混合した。4℃で30分間、合わせた抗体をDaudi細胞に添加した。この細胞に希釈度1:200のFITC標識ストレプトアビジンを添加し、サンプルをさらに30分間、4℃でインキュベートした。FACS分析により標識B4 VH0/VK0抗体の結合量を定量し、結果を陽性結合対照に対する“阻害%”として表した。試験した抗体は、B4 VH0/VK0(C)、B4 VHv1/VKv1(1)、B4 VHv2/VKv1(2)、B4 VHv1/VKv2(3)、B4 VHv2/VKv2(4)、B4 VHv3/VKv3(5)、B4 VHv4/VKv3(6)、B4 VHv3/VKv4(7)、B4 VHv4/VKv4(8)、B4 VHv5/VKv4(9)およびB4 VHv6/VKv4(10)であった。2つの実験の代表的な結果を表3および表4に示す。
【0055】
表3:本発明の抗体による、Daudi細胞に対するビオチン-B4 VH0/VK0の結合の阻害。
【0056】
表4:本発明の抗体による、Daudi細胞に対するビオチン-B4 VH0/VK0の結合の阻害。
【0057】
表3および表4に示すように、B4 VHvx/VKvy抗体は非標識B4 VH0/VK0抗体と同程度に、Daudi細胞に対する標識B4抗体の結合を阻害することが見いだされ、これはB4 VHvx/VKvy抗体およびB4 VH0/VK0抗体の親和性が同様であることを示している。
【実施例4】
【0058】
本発明の抗体のADCC活性
種々の細胞株で産生される本発明の抗体により仲介されるADCC活性を評価した。ADCCは、当該技術分野で公知の標準的な
51Cr放出アッセイで測定した。抗体の連続希釈液を調製し(100ng/ml〜0.025ng/mlの範囲での4倍希釈液)、抗体の存在下における
51Cr標識Daudi細胞(標的細胞;E:T=100:1)の純化したヒトPBMC(エフェクター細胞)による溶解を、全細胞
51Crに対する特異的
51Cr放出(自発的に放出される
51Crに対して補正する)により測定した。ヒト胎児腎臓293T細胞またはYB2/0細胞から産生されるB4 VHv4/VKv4抗体およびNS/0細胞株またはYB2/0細胞から産生されるB4 VHv5/VKv4抗体を試験した。
図38にこの実験の結果を示す。YB2/0細胞の発現により得られるどちらの抗体もADCCの仲介において同等に活性であり、NS/0細胞株または293T細胞の発現により得られる対応する抗体よりも少なくとも50倍活性であった。293T細胞から産生されるB4 VHv4/VKv4は、NS/0細胞株から産生されるB4 VHv5/VKv4よりも活性が高かった。
【実施例5】
【0059】
本発明の抗体による、SCIDマウスに移植したヒトB細胞の枯渇
B細胞の枯渇は多くの治療状況において有用である。例えば、抗体による自己免疫疾患および炎症性疾患は、本発明の抗体により処置してB細胞を減少または本質的に除去することができる。あるいはまた、腫瘍ターゲティング剤、例えばゼバリン(Zevalin(登録商標))またはベクザー(Bexxar (登録商標))またはLeu16-IL2融合タンパク質(WO2005/016969)により治療するとき、最初に正常B細胞を除去するのは有用である。
本発明の抗体がヒトB細胞を枯渇させることができるかどうかを明らかにするために以下の実験を行った。0日目に、本質的にヒト脾臓細胞の移入のために記載されたプロトコルに従って(Yacoub-Youssef et al., Transpl. Immunol. (2005) 15:157-164)、PBS0.2ml中の約4.5x10
7細胞を腹腔内に注射することにより、雄SCID-CB17マウス(n=3)に純化したヒトPBMCを移植した。3日目に、PBSまたは抗CD20抗体Leu16もしくはK4H4抗CD19抗体50μgのいずれかをマウスの腹腔内に注射した。7日目、14日目および21日目に、ヒトIgM ELISA定量キットによりヒトIgM濃度を測定した(Bethyl Laboratories; Cat#E80-100)。
図39に典型的な結果を示す。PBS投与対照において、ヒトIgM力価は着実に上昇し、42日目に約800μg/mlに達した。Leu16またはB4 VHv5/VKv4抗体のいずれかで処置したマウスにおいて、ヒトIgM力価は本質的に認められず、これらの抗体を用いた処置によりヒトB細胞が枯渇されたことが示された。
【実施例6】
【0060】
本発明の抗体を用いるリンパ腫移植哺乳動物の治療
in vivoにおいて本発明の抗体が有効であるかどうかを明らかにするために、YB2/0細胞内で発現されたB4 VHv4/VKv4抗体をヒトリンパ腫の動物モデルにおいて試験した。0日目に、約1x10
6生存ナマルバ(Namalwa)Nalm-6-UM-1細胞を8週齢のSCID CB17マウス(n=6)の静脈内に注射した。1日目、3日目および5日目に、マウスに抗体500μgまたはPBSを腹腔内投与した。週約1〜2回、どのマウスが安楽死が必要な程度に病気になったかを確かめるためにマウスを検査した。
この実験の典型的な結果を
図40に示す。PBSを投与したマウスは、腫瘍細胞注射の10週以内にすべて病気になったが、B4 VHv4/VKv4抗体を投与したマウスは病気になるのがより遅く、この群のマウス6匹中3匹は30週の実験期間中、健康を維持した。
【実施例7】
【0061】
化学療法と組み合わせた、本発明の抗体を用いるバーキットリンパ腫移植哺乳動物の治療
本発明の抗体がin vivoで化学療法と組み合わせて使用できるかどうかを明らかにするために、前記実施例におけるよりもより厳しく、より進行したまたは治療がより困難なリンパ腫に対応するヒトリンパ腫の動物モデルにおいてB4 VHv4/VKv4抗体を試験した。代表的な実験の1つにおいて、バーキットリンパ腫細胞株であるDaudi細胞株を、シクロホスファミド(CPA)存在下または非存在下で、YB2/0細胞内で発現されたB4 VHv4/VKv4抗体で処理した。0日目に、8週齢SCID CB17マウス(n=6)に約5x10
6生存Daudi細胞を静脈内注射した。8日目および12日目に、マウスを抗体100μgまたはPBSで処置した。7日目に、マウスをPBSまたは体重1kgあたりCPA75μgで処置した。処置は腹腔内に治療薬を0.2ml投与することによって行った。週約1〜2回、どのマウスが安楽死が必要な程度に病気になったかを確かめるためにマウスを検査した。
図41に典型的な実験結果を示す。抗体もCPAも投与しなかった対照群において、すべてのマウスはリンパ腫細胞の注射の4週間以内に病気になった。B4 VHv4/VKv4抗体またはCPAのいずれかをで単独処置したマウスの群において、マウス6匹中5匹は少なくとも5週間は健康であったが、約6週間以内に病気になった。B4 VHv4/VKv4抗体およびCPAの両方で処置したマウスの群において、すべてのマウスは少なくとも8週間健康を維持した。
【実施例8】
【0062】
化学療法と組み合わせた、本発明の抗体を用いる播種性リンパ腫の治療
他の実験セットにおいて、前記実施例に記載されているようにして、1x10
6細胞の代わりに2x10
6細胞を用いるという条件下でナマルバ(Namalwa)細胞をマウスの静脈内に注射した。
図42におけるPBS処置マウス(5〜10週間で病気になった
図40におけるPBS処置マウスとは対照的に、3週間以内にすべて病気になった)の比較により示されるように、この細胞数の増加は、より悪性の疾患経過をもたらす。3日目、7日目および11日目に、マウス(n=5)に、抗体500μgまたはPBSを腹腔内投与した。また、3日目、7日目および11日目に、シクロホスファミド(75mg/kg、i.p.)またはビンクリスチン(0.4mg/kg、i.v.)またはドキソルビシン(3mg/kg、i.v.)またはPBS(i.v.)のいずれかでマウスを処置した。結果を
図42(a-c)に示す。これらの結果は、3つの化学療法剤のそれぞれは本発明の抗体と組み合わせることができることを示した。
【実施例9】
【0063】
本発明の抗体および方法を用いるヒト患者の治療
本発明の抗CD19抗体は、以下のようにヒトの疾病・疾患の治療に用いられる。一般に、好ましい投与方法は静脈内注入または静脈内注射によるものであるが、皮下注射、吸入、経口送達および他の方法もまた可能である。2、3または4週間ごとに約1回の投与が用いられるが、患者の必要性に応じて投与頻度を変えることができる。典型的な投与量は、成人のヒトについて約100〜800mgである。投与される患者は免疫抑制に起因する感染の徴候をモニターされる。
例えば、キャッスルマン病患者には、本発明の抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で2週間ごとに約1回処置される。
関節リウマチ患者には、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で4週間ごとに約1回処置される。疾患修飾性抗リウマチ薬と比べても、単独療法により関節破壊の進行が有意に抑制されることが見いだされる。
クローン病患者には、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で4週間ごとに約1回処置される。
多発性骨髄腫患者には、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回処置される。抗CD19 B4 VHv4/VKv4の投与は、患者の必要に応じて医師により決定される多発性骨髄腫の標準的治療と組み合わされる。
【0064】
B細胞リンパ腫患者には、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回処置され、場合により、体表面積1m
2あたり約375mgで毎週投与されるRituxan(登録商標)などの抗体または抗CD22抗体エプラツズマブと組み合わせて処置される。あるいはまた、難治性リンパ腫患者の場合、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体による治療は、Bexxar(登録商標)またはZevalin(登録商標)などの放射免疫コンジュゲートと組み合わされる。
より具体的には、B細胞リンパ腫患者には、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体が、約1時間の点滴静注による投与により、約8mg/kgの投与量で3週間ごとに約1回処置され、場合により化学療法レジメン、例えばシクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+プレドニゾロン(“CHOP”)または、CHOP+ブレオマイシン、またはCHOP+エトポシド、またはミトキサントロン+ビンクリスチン+チオテパ、またはエトポシド+プレドニゾロン+シタラビン+シスプラチン、またはメスナ+イホスファミド+ミトキサントロン+エトポシドまたはベンダムスチンまたはフルダラビンおよび2-CdAと組み合わせて処置される。
【0065】
代替治療戦略において、B細胞リンパ腫患者は、最初に約8mg/kgの投与量で抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体で処置され、その後WO2005/016969に記載されているような抗CD20-IL2融合タンパク質で処置される。例えば、患者は、1日目において約1時間の点滴静注による投与により抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体で処置され、ついで2日目および4日目において約4時間の点滴静注による投与により、約150μg/kgの投与量で抗CD20-IL2融合タンパク質で処置され、このサイクルが約3週間ごとに繰り返される。理論に束縛されるものではないが、抗CD19 B4 VHv4/VKv4抗体は患者由来正常B細胞の大部分を除去する効果を有し、その結果、抗CD20-IL2融合タンパク質が残りの腫瘍細胞に結合することによりその効果を発揮する。