特許第6104667号(P6104667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104667アクチュエータの位置算出装置、位置算出方法及び位置算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104667
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】アクチュエータの位置算出装置、位置算出方法及び位置算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01Q 10/06 20100101AFI20170316BHJP
   G01Q 60/24 20100101ALI20170316BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G01Q10/06
   G01Q60/24
   G01B21/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-68436(P2013-68436)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190923(P2014-190923A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】繁野 雅次
(72)【発明者】
【氏名】脇山 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将史
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和俊
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−201403(JP,A)
【文献】 特開平11−271333(JP,A)
【文献】 特開2002−214111(JP,A)
【文献】 特開2008−224587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 10/00 − 90/00
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出装置であって、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得手段と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出手段と、を備えたアクチュエータの位置算出装置。
【請求項2】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、
前記位置算出手段は、下記式1:
SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2A
よって前記位置SAを算出する請求項1に記載のアクチュエータの位置算出装置。
【請求項3】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出装置であって、
前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得手段と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出手段と、を備えたアクチュエータの位置算出装置。
【請求項4】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出方法であって、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、を有するアクチュエータの位置算出方法。
【請求項5】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、
前記位置算出過程は、下記式1:
SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2A
よって前記位置SAを算出する請求項4に記載のアクチュエータの位置算出方法。
【請求項6】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出方法であって、
前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、を有するアクチュエータの位置算出方法。
【請求項7】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出プログラムであって、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、をコンピュータに実行させるアクチュエータの位置算出プログラム。
【請求項8】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、
前記位置算出過程は、下記式1:
SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2A
よって前記位置SAを算出する請求項7に記載のアクチュエータの位置算出プログラム。
【請求項9】
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出プログラムであって、
前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、
ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、
前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、をコンピュータに実行させるアクチュエータの位置算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡の試料ステージの駆動等に用いられるアクチュエータの位置算出装置、位置算出方法及び位置算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーの先端に取付けた探針を試料表面に近接又は接触させ、試料の表面形状を測定するものである。走査型プローブ顕微鏡の測定モードとしては、(1)探針と試料の間の原子間力を一定に保って試料の表面形状を測定するコンタクト・モード、(2)カンチレバーをピエゾ素子等によって共振周波数近傍で強制振動させ、探針を試料に近接させた時に、両者の間の間欠的な接触によって探針の振幅が減衰するのを利用して試料の形状を測定する方法(以下、適宜「ダイナミック・フォース・モード(DFM測定モード)」という)が知られている。
【0003】
又、走査型プローブ顕微鏡は、試料をxy(平面)方向に走査する圧電素子と、試料をz(高さ)方向に走査する圧電素子とからなるアクチュエータを備え、アクチュエータ上に配置された試料ステージの表面に試料が載置されている。圧電素子に印加する電圧と圧電素子の変位はある程度比例するので、試料表面の高さ情報は圧電素子に印加した電圧から算出することができる。しかし、圧電素子の動作特性はヒステリシスやクリープを有するため、印加電圧から圧電素子の正確な位置を求めることは困難である。そこで、圧電素子と別個に設けたセンサにより、圧電素子のZ方向の変位を検出する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−80060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般にセンサの位置検出分解能は圧電素子の最小移動量(移動分解能)よりも低く、圧電素子の微小な位置を正確に求めようとすると、高分解能の高価なセンサが必要となり、コストアップに繋がる。又、センサの分解能が圧電素子の移動分解能よりも低い場合には、位置の検出精度がセンサの分解能に制限されるので、圧電素子の高い移動分解能が発揮されないことになる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、移動量検出センサの分解能が移動機構の移動分解能より低くても、移動機構の位置を精度良く算出することができ、アクチュエータのコストダウンを実現できるアクチュエータの位置算出装置、位置算出方法及び位置算出プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のアクチュエータの位置算出装置は、最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出装置であって、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得手段と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出手段と、を備えている。
このアクチュエータの位置算出装置によれば、移動量検出センサの分解能が移動機構の最小分解能(移動分解能)より低くても、移動機構の位置を精度良く算出することができ、コストダウンを実現できる。
【0007】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、前記位置算出手段は、下記式1:SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2Aよって前記位置SAを算出してもよい。
【0008】
又、本発明のアクチュエータの位置算出装置は、最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出装置であって、前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得手段と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出手段と、を備えている。
センサ信号が変動すると、制御信号に応じて規則正しくセンサ信号がΔSずつ上昇せず、上記式1によってSAを正確に算出することが難しくなる。そこで、回帰分析によって精度よくSAを算出することができる。
【0009】
本発明のアクチュエータの位置算出方法は、最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出方法であって、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、を有する。
【0010】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、前記位置算出過程は、下記式1:SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2Aよって前記位置SAを算出してもよい。
【0011】
又、本発明のアクチュエータの位置算出方法は、最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出方法であって、前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、を有する。
【0012】
本発明のアクチュエータの位置算出プログラムは、最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出プログラムであって、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0、かつ前記センサ信号をS0としたとき、(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)の値;前記センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1について、M0からT1又はT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数n;及び、A=ΔS/ΔMの値から(但し、mは1以上の自然数、1≦n≦m×A)、前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、をコンピュータに実行させる。
【0013】
前記センサ信号が(S0+m×ΔS)で変化し、m=1としたとき、前記位置算出過程は、下記式1:SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2Aよって前記位置SAを算出してもよい。


【0014】
又、本発明のアクチュエータの位置算出プログラムは、
最小移動量ΔM毎に生成される制御信号に比例して一の方向に移動する移動機構と、前記移動機構の移動量を最小分解能ΔS(但し、A=ΔS/ΔM≧2)で検出する移動量検出センサとを有するアクチュエータの位置算出プログラムであって、前記制御信号から前記移動機構の概算位置を算出可能であり、ΔM毎に前記制御信号を取得すると共に、前記移動量検出センサのセンサ信号を取得する信号取得過程と、前記移動機構の目標位置における前記制御信号をM0としたとき、(i)それぞれ異なる少なくとも1以上の前記センサ信号にそれぞれ属する前記制御信号から、同一の前記センサ信号毎に前記移動機構の概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出し、(ii)前記最小値及び前記最大値を一方の変数とし、前記センサ信号を他の変数とする回帰分析による直線又は二次曲線が、M0における前記概算位置と交わる交点Pを求め、(iii)該交点Pから前記目標位置における前記移動機構の位置SAを算出する位置算出過程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動量検出センサの分解能が移動機構の移動分解能より低くても、移動機構の位置を精度良く算出することができ、アクチュエータのコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置を有する走査型プローブ顕微鏡のブロック図である。
図2】第1の実施形態のアクチュエータの位置算出装置による圧電素子(移動機構)のz方向の位置を算出する処理を示す図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】第2の実施形態のアクチュエータの位置算出装置による圧電素子(移動機構)のz方向の位置を算出する処理を示す図である。
図5図4の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
<第1の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置>
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置17を有する走査型プローブ顕微鏡100のブロック図である。
図1において、走査型プローブ顕微鏡100は、先端に探針22を有するカンチレバー11と、探針22に対向配置された試料10を載置するステージ5と、試料10(ステージ5)を3次元に移動させる円筒型のアクチュエータ1、カンチレバー11に振動を与えるカンチレバー加振部12、カンチレバー加振部12を駆動させるための加振電源13、制御部(アクチュエータの位置算出装置)17等を有する。
【0019】
アクチュエータ1は、試料10をxy(試料10の平面)方向に走査する圧電素子1aと、試料10をz(高さ)方向に走査する圧電素子(特許請求の範囲の「移動機構」に相当)1bとを備え、さらに、アクチュエータ1のうちステージ5の裏面側にミラー2aが取り付けられている。圧電素子1aはXY駆動電源18に接続され、XY駆動電源18に所定の制御信号(電圧)を出力して圧電素子1aをxy方向へ駆動する。同様に、圧電素子1bはZ駆動電源19に接続され、Z駆動電源19に所定の制御信号(電圧)を出力して圧電素子1bをz方向へ駆動する。圧電素子は、電界を印加すると結晶がひずみ、外力で結晶を強制的にひずませると電界が発生すると素子であり、圧電素子としては、セラミックスの一種であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を一般に使用することができるがこれに限られない。
アクチュエータ1の内部には光学センサ(移動量検出センサ)2bが配置され、光学センサ2bからミラー2aに出射された光が反射されて光学センサ2bへ戻ることで、試料10のz方向の位置(変位)を検出するようになっている。光学センサ2bは、例えば光ファイバと光学干渉計から構成されている。移動量検出センサは特に限定されず、他の光学式センサや、静電容量センサ、歪ゲージ等の電気式センサであってもよい。
【0020】
制御部17は例えばパーソナルコンピュータ等からなり、走査型プローブ顕微鏡100の動作を制御するための制御基板、CPU(中央制御処理装置、特許請求の範囲の「信号取得手段」、「位置算出手段」)、ROM、RAM等の記憶手段、インターフェース、操作部等を有する。
そして、カンチレバー11にはレーザー光照射部14からレーザー光が照射され、カンチレバー11から反射されたレーザー光はフォトディテクタ15に入射し、この入射位置からカンチレバー11の変位量がカンチレバー変位検出部16で検出される。そして、カンチレバー変位検出部16により検出されたカンチレバー11の変位に基づいて制御部17から、Z駆動電源19に所定の制御信号を出力して圧電素子1bを駆動させて探針22と試料10のZ方向の相対位置を制御する。すなわち、試料10と探針22の間に働く原子間力によって生じるカンチレバー11の変位を上述の機構で検出し、カンチレバー11の変位量を一定に保つように探針22と試料10の相対位置を制御している。
【0021】
次に図2図3、表1を参照し、制御部17による圧電素子(移動機構)のz方向の位置を算出する処理について説明する。なお、表1は、図2のグラフのデータである。
図2は、圧電素子1bに出力される制御信号(=圧電素子1bの概算位置)と、光学センサ2bのセンサ信号(=圧電素子1bの測定位置)との関係を示す。圧電素子1bの微小変位は制御信号(電圧)に比例するので、制御信号から圧電素子1bの概算位置を算出することができる。但し、圧電素子1bの動作特性はヒステリシスやクリープを有し、概算位置は圧電素子1bの真の値ではないため、光学センサ2bにより圧電素子1bの正確な位置を求める。
ここで、圧電素子1bの最小移動量(移動分解能)をΔMとし、光学センサ2bの最小分解能をΔSとしたとき、A=ΔS/ΔM≧2の関係にあり、光学センサ2bの位置検出分解能が圧電素子1bの移動分解能よりも低いものとする。
2≦A≦100000であることが好ましく、2≦A≦1000であることがより好ましい。なお、圧電素子1bは、例えば10μm/100Vの変位を示し、最小移動量として10μV〜100μVの範囲で制御できる。従って、この圧電素子1bの移動分解能ΔMは、
10μm:100V=ΔM:10μV〜100μV
ΔM=(0.0001μV・V〜0.00μV・V)/100V
=1〜10pmとなる。
一方、光学センサ2bの分解能は一般に0.05〜500nm(50〜500000pm)程度であることは良く知られており、特に走査型プローブ顕微鏡に用いる光学センサ2bの分解能ΔS=50〜1000pm程度の高分解能が要求される。従って、これらの値から、
A=ΔS/ΔM=(50〜1000pm)/(1〜10pm)=5〜1000となる。
ΔMは最大で0.1〜100pm、ΔS最大で50〜500000pmの範囲が考えられ、これより、0.5≦A≦5000000の範囲となるが、走査型プローブ顕微鏡における実際のΔMとΔSの範囲を考慮すれば、2≦A≦100000であることが好ましく、2≦A≦1000であることがより好ましい。
【0022】
又、図2の例では、A=5である(ΔM=100μV=10pm、ΔS=50pm)。
【0023】
【表1】
【0024】
この場合、図2に示すように、ΔMがΔSよりも5倍の分解能となるから、圧電素子1bを5×ΔMに相当する分だけ探針22と試料10が離れる方向(特許請求の範囲の「一の方向」に相当)に変位させたとき、光学センサ2bの分解能ΔSに達するので、光学センサ2bで変位を検出し、ΔSだけセンサ信号が変化することになる。つまり、圧電素子1bを探針22と試料10が離れる方向に移動させる場合、図2の横軸に制御信号が5回生成される毎に、縦軸(センサ信号)にΔSが1個分上昇し、階段状のグラフとなる(図2の黒丸)。なお、圧電素子1bを探針22と試料10が接近する方向に移動させると、探針22や試料10がダメージを受ける場合があるので、移動方向は探針22と試料10が離れる方向に限定される。但し、本発明を走査型プローブ顕微鏡以外に適用する場合は、一方の方向であれば反対方向に移動させても構わない場合もある。(センサ信号の+方向は、移動機構が縮む方向である)
そこで、第1の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置は、光学センサ2bのセンサ信号を、圧電素子1bの高い移動分解能に応じて案分し、圧電素子1bの位置SAを精度良く推定する(算出する)。具体的には、図2に示すように、センサ信号を概算位置に対してプロットした外挿直線L1上で、圧電素子1bの制御信号M0に対応する正確な位置SAを算出する。
なお、外挿直線L1は、圧電素子1bの概算位置とセンサ信号とを対応させる1次関数であり、図2の場合、その傾きは、ΔS/(A×ΔM)=1である。
【0025】
図2において、圧電素子1bの目標位置における制御信号をM0、かつセンサ信号をS0とする。圧電素子1bの目標位置とは、圧電素子1bの正確な位置SAを求めたい位置である。
位置SAを求めたい場合としては、以下のSISモードが相当する。例えば、図1の走査型プローブ顕微鏡にて上述のDFM測定モードで測定する場合、探針を常に試料に接触させると、凹凸の大きい試料で斜面から受ける横方向の力により探針やカンチレバーが曲がる恐れがある。そこで、SISモード(サンプリング・インテリジェント・スキャンモード)と称され、データ取得時のみ探針と試料が接触し、それ以外は探針が上空に待避しながら水平方向に高速移動し、試料表面に接触しそうな場合には走査速度を落として試料面から上昇するような退避動作を自動で行うモードがある。
このように、SISモードにおいては、データ取得後、探針と試料を引離す動作を行うが、引離し動作に本発明を適用する。つまり、データ取得時のセンサ信号S0に対して、(S0+ΔS)分上昇するまで、探針22と試料10が離れる方向に圧電素子1bをΔMずつ動作させ、以下の方法によりSAを算出する。そして、このSAの位置まで再びSISでの測定に戻って測定を行う。通常のDFM測定モードと異なり、データ取得後に探針と試料を引離す動作を行うSISモードでは、その動作の中で、本発明による測定を行うことで、測定効率を低下させること無く測定精度の向上が実現できる。
【0026】
図2の部分拡大図3に示すように、M0から、センサ信号が(S0+ΔS)に上昇した時点T1の1つ前の制御信号M3までの制御信号の生成回数nは4である。このときのM0と外挿直線L1との交点からSAを算出することができる。まず、時点T1からM0までの横軸の距離を求めると、センサ信号S0のときの隣接する制御信号Mc、M0〜M3(表1参照)同士の横軸の間隔はそれぞれΔM(=2ΔM/2)である。一方、M3と、センサ信号が(S0+ΔS)にジャンプした制御信号M4との間隔もΔMであるが、M3とM4の中間に時点T1が位置するため、時点T1とM3との間隔のみΔM/2となる。制御信号Mcについても同様である。
このため、時点T1からM3までの横軸の距離はΔM/2(つまり、{ΔM/2+(2ΔM/2)×0})であるが、時点T1からM2までの横軸の距離は{ΔM/2+(2ΔM/2)×1}、時点T1からM1までの横軸の距離は{ΔM/2+(2ΔM/2)×2}、となる。又、M3、M2、M1はそれぞれn=1、2、3である。これらのことから、時点T1から特定の制御信号Mx(xは表1のセンサ信号の添字)までの横軸の距離を一般式で表すと、{ΔM/2+(2ΔM/2)×(n−1)}={(ΔM/2)×(2n−1)}となる。
【0027】
ここで、時点T1と外挿直線L1との交点におけるセンサ信号の値は(S0+ΔS/2)となるから、時点T1からMxまでの横軸の距離を(S0+ΔS/2)から差し引いた値が、Mxと外挿直線L1との交点におけるセンサ信号の値SA(つまり、制御信号Mxにおける圧電素子1bの正確な位置)となる。これを式1で表すと、
SA=(S0+ΔS/2)−{(ΔM/2)×(2n−1)}
=(S0+ΔS/2)−{(ΔS/A)/2)×(2n−1)}
=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2A
となる(但し、nは、M0からT1の1つ前までの前記制御信号の生成回数であって、1≦n≦m×A)。又、mは、センサ信号がS0からΔSの整数倍ジャンプしたときの整数値(1以上の自然数)であり、図2図3の例では、m=1である。
【0028】
図2図3及び表1の例では、制御信号M0での圧電素子1bの概算位置を20、S0=25、ΔS=25、A=5であり、
SA=(S0+ΔS/2)−ΔS×(2n−1)/2A
=(25+25/2)−25×(2×4−1)/10
=(25+25/2)−25×7/10
=(25)−25×1/5=20
となる。つまり、図3に示すように、SAは、S0からΔMだけ低い値となる。
【0029】
なお、上記例では、m=1の場合について説明したが、m≧2の場合についても同様である。m≧2とすると、SAを算出する際に、長い距離の圧電素子1bの変位を利用するので、外乱の影響等によりセンサ信号が変動しても、SAを精度よく算出することができる。但し、m≧2とすると、圧電素子1bの変位を長く採る必要があるため、圧電素子1bの微小な変位でSAを迅速に算出するにはmを小さくするとよい。
又、上記例では、T1の1つ前の制御信号M3からM0までの制御信号の生成回数を数え挙げてSAを算出したが、T1における制御信号M4からM0までの制御信号の生成回数を数え挙げてSAを算出してもよい。後者の場合、nが1つ増えることになる。
【0030】
次に、制御部(信号取得手段、位置算出手段)17による処理について説明する。
まず、制御部17は、Z駆動電源19にΔM毎に制御信号を出力して圧電素子1bを駆動する。信号取得手段は、この制御信号をΔM毎に取得すると共に、光学センサ2bのセンサ信号を取得する。信号取得手段は、制御信号の取得タイミングと同時にセンサ信号を取得するものとする。
位置算出手段は、目標位置における制御信号をM0、かつセンサ信号をS0としたとき、センサ信号が(S0+m×ΔS)又は(S0−m×ΔS)になった時点T1の1つ前の制御信号M3から(但し、mは1以上の自然数)、目標位置における圧電素子1bの位置SAを算出する。算出方法は上述の通りであり、又、mは作業者が適宜設定してもよく、デフォルトで所定の値に規定してもよい。又、位置算出手段は、制御信号(電圧)と圧電素子1bの概算位置との比例係数を既知の値としてROM等から取得するものとする。又、式1はROM等にプログラムとして記憶されており、位置算出手段が適宜このプログラムを読みだして式1の計算をすることができる。
【0031】
なお、通常のDFM測定モードでのM0を検出するタイミングは、走査型プローブ顕微鏡100の面内(水平方向)の各測定点上に、探針22が達した時である。又、上記した走査型プローブ顕微鏡100の面内(水平方向)の各測定点に探針22が達したことは、制御部17によるアクチュエータ1のXYの駆動制御によって検出できる。
SISモードでのM0を検出するタイミングは、走査型プローブ顕微鏡の面内(水平方向)の各測定点上に探針22が達し、探22針が試料10へ接近して目的の振幅に達した時である。
【0032】
以上のように、第1の実施形態によれば、移動量検出センサの分解能が移動機構の最小移動量より小さくても、移動機構の位置を精度良く算出することができ、コストダウンを実現できる。
【0033】
<第2の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置>
次に、図4図5及び表2を参照し、本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置について説明する。但し、第2の実施形態に係るアクチュエータの位置算出装置は、制御部17で行う処理が異なること以外は、第1の実施形態と同様である。
第1の実施形態においては、図2及び表1に示すように、センサ信号が変動することはなく、制御信号が5回生成される毎に、規則正しくセンサ信号がΔS上昇して階段状のグラフとなる。ところが、センサ信号が変動すると、図4及び表2(センサ信号のグレー表示部分)に示すように、制御信号が5回生成されても規則正しくセンサ信号がΔS上昇せず、傾き1の外挿直線L1から乖離し、式1によってSAを正確に算出することが難しくなる。
そこで、第2の実施形態においては、図4に示すように、各階段(同一のセンサ信号に属する制御信号)の中央を通る直線を最小二乗法により求め、この直線を、センサ信号と概算位置との対応を示す外挿直線L2とする。そして、外挿直線L2がM0における概算位置と交わる交点Pを求め、交点と、目標位置における制御信号との距離からSAを算出する。
【0034】
【表2】
【0035】
具体的には、それぞれ異なる少なくとも1以上のセンサ信号S0、S1、S2にそれぞれ属する制御信号から、同一のセンサ信号S0、S1、S2毎に、圧電素子1bの概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出する。
例えば、S0に属する制御信号はMb、Mc、M1、M2、M4の5個であるから、これらのうちそれぞれMb、M4が概算位置の最小値と最大値に対応する。従って、上述した制御信号(電圧)と圧電素子1bの概算位置との比例係数に従って、概算位置の最小値と最大値を算出する。
同様に、S1に属する制御信号はM3、M5、M6、M7の4個であるから、これらのうちそれぞれM3、M7が概算位置の最小値と最大値に対応する。又、S2に属する制御信号はM8、M8、M10、M11の4個であるから、これらのうちそれぞれM8、M11が概算位置の最小値と最大値に対応する。なお、S1、S2に属する制御信号はそれぞれ4個であり、規定値である5個に足りない。又、例えば、M4は本来S1に属するはずであるが、S0に属している。
【0036】
そして、上記した最小値及び最大値を一方の変数とし、センサ信号S0、S1、S2を他の変数とする最小二乗法により、これら最小値及び最大値からの残差の二乗和を最小とする外挿直線L2を算出する。
次に、図5に示すように、外挿直線L2がM0における概算位置と交わる交点Pを求め、交点PからSAを算出する。
【0037】
次に、制御部(信号取得手段、位置算出手段)17による処理について説明する。
まず、制御部17は、第1の実施形態と同様、Z駆動電源19にΔM毎に制御信号を出力して圧電素子1bを駆動させる。信号取得手段は、この制御信号をΔM毎に取得すると共に、光学センサ2bのセンサ信号を取得する。
位置算出手段は、目標位置における制御信号をM0としたとき、センサ信号S0、S1、S2にそれぞれ属する制御信号から、同一のセンサ信号毎に上記したように概算位置の最小値と最大値をそれぞれ算出する。そして、最小値及び最大値を一方の変数とし、センサ信号を他の変数とする最小二乗法により外挿直線L2を算出する。そして、外挿直線L2が、M0における概算位置と交わる交点Pを求め、交点Pから位置SAを算出する。
【0038】
以上のように、第2の実施形態によれば、移動量検出センサの分解能が移動機構の最小移動量より小さくても、移動機構の位置を精度良く算出することができ、コストダウンを実現できる。
特に、図5に示すように、センサ信号が変動すると、目標位置における制御信号M0が外挿直線L1、L2のいずれとも著しく乖離し、上記式1からSAを算出することはできない。そこで、外挿直線L2がM0における概算位置と交わる交点Pを求めることで、センサ信号が変動しないときと同様に、SAの算出が可能となる。
なお、第2の実施形態において、外挿直線L2を求めるための最小二乗法に用いるデータは、必ずしもセンサ信号S0に属する制御信号でなくてもよい。但し、M0が出力する(はずの)センサ信号S0に属する制御信号を最小二乗法に用いると、M0近傍のデータを反映するので好ましい。この場合、M0自身はセンサ信号S0を出力しないため、例えばM0に隣接する制御信号Mc、M1が属するセンサ信号(図5ではS0のみであるが、Mc、M1がそれぞれ異なるセンサ信号に属することもあり得る)を必ず最小二乗法に用いるように設定することができる。
【0039】
なお、第2の実施形態において、概算位置の最小値及び最大値を一方の変数とし、センサ信号を他の変数とする回帰分析は、上記した直線に限らず、二次曲線であってもよい。
圧電素子1bは、短い距離の移動ではヒステリシスの影響が少なく、電圧の1次関数として移動量を近似できるので、上述の直線で回帰分析(最小二乗法)することができる。しかし、圧電素子1bの移動距離が長くなると、ヒステリシスの影響が大きくなるので、電圧の2次関数として移動量を近似した方が精度が高くなる。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されず、例えば、xy方向へ変位する圧電素子1aに本発明を適用してもよい。又、走査型プローブ顕微鏡に限定されず、例えば、ステッパー等の露光装置のマスクの位置決め機構のアクチュエータに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 アクチュエータ
1b 移動機構(圧電素子)
2b 移動量検出センサ(光学センサ)
17 アクチュエータの位置算出装置(制御部、信号取得手段、位置算出手段)
Ma〜Mc、M0〜M11 制御信号
S0〜S2 センサ信号
L2 直線(外挿直線)
100 走査型プローブ顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5