(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測定体である第1のレトロリフレクタに向けて出射され、当該第1のレトロリフレクタによって戻り方向に反射されるレーザビームの干渉を利用して前記第1のレトロリフレクタの変位を検出すると共に、前記レーザビームの光軸の位置の変化を用いてトラッキングを行うようにした追尾式レーザ干渉計であって、
固定配設された基準球と、
前記基準球との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第1の変位計を備えたキャリッジと、
前記キャリッジに設けられた第2のレトロリフクレクタと、
前記第1のレトロリフレクタと前記第2のレトロリフクレタとの相対的な変位に応じた変位信号を出力するレーザ干渉計と、
前記第1の変位計が出力する変位信号と、前記レーザ干渉計が出力する変位信号とから、前記基準球を基準とした前記第1のレトロリフレクタの変位を算出するデータ処理装置と、
を備えたことを特徴とする追尾式レーザ干渉計。
前記キャリッジに設けられ、且つ、前記基準球を挟んで前記第1の変位計に対向するように配置され、前記基準球との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第4の変位計を更に備え、
前記データ処理装置は、
前記第1の変位計が出力する変位信号と、前記レーザ干渉計が出力する変位信号と、前記第4の変位計が出力する変位信号とから、前記基準球を基準とした前記第1のレトロリフレクタの変位を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の追尾式レーザ干渉計。
前記第1のレトロリフレクタから反射されて前記レーザ干渉計に戻ってくるレーザビームが、その光軸と直交する方向にずれたとき、そのずれ量に応じた位置信号を出力する位置検出手段と、
前記位置検出手段からの位置信号に基づいて、前記ずれ量がゼロになるように前記キャリッジの回動を制御する制御手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の追尾式レーザ干渉計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、例えば一般的なマイケルソン型の干渉計をレーザ干渉計104として用いて、キャリッジ102上の接続点Pにおいて、レーザ干渉計104がキャリッジ102に固定されている状況を想定する。
【0009】
第1のレトロリフレクタ105が空間中を移動せずに静止している状態において、周囲温度の変化等によりレーザ干渉計104の筺体に熱膨張が発生した場合、接続点Pから基準点P
1までの距離L
4の変化量ΔL
4が発生し、接続点Pから基準点P
1までの距離L
4がΔL
4だけ大きくなってしまう。この結果、第1のレトロリフレクタ105は静止しており基準点P
1から第1のレトロリフレクタ105までの距離L
1は変化しないはずであるにも関わらず、レーザ干渉計104の基準点P
1の位置が押し出されて変化することで、変化量ΔL
4だけ距離L
1が小さく測定されてしまう。即ち、周囲温度の変化等によりレーザ干渉計104の筺体に熱膨張が発生した場合、変化量ΔLの測定値に誤差が生じてしまうという問題点がある。
【0010】
また同様に、周囲温度の変化等によりキャリッジ102に熱膨張が発生した結果、接続点Pから変位計103の変位測定の基準点P
2までの距離L
3の変化量ΔL
3が発生し、接続点Pから基準点P
2までの距離L
3がΔL
3だけ大きくなってしまう。この結果、第1のレトロリフレクタ105は静止しており基準点P
2から基準球101までの距離L
2は変化しないはずであるにも関わらず、変位計103の基準点P
2の位置が押し出されて変化することで、変化量ΔL
3だけ距離L
2が小さく測定されてしまう。即ち、周囲温度の変化等によりキャリッジ102の筺体に熱膨張が発生した場合、変化量ΔLの測定値に誤差が生じてしまうという問題点がある。
【0011】
本発明の第1の目的は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、追尾式レーザ干渉計において、レーザ干渉計の筐体に熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量を高精度に測定可能な追尾式レーザ干渉計を提供することを課題とする。
また、本発明の第2の目的は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、追尾式レーザ干渉計において、キャリッジに熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量を高精度に測定可能な追尾式レーザ干渉計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係る追尾式レーザ干渉計は、被測定体である第1のレトロリフレクタに向けて出射され、当該第1のレトロリフレクタによって戻り方向に反射されるレーザビームの干渉を利用して前記第1のレトロリフレクタの変位を検出すると共に、前記レーザビームの光軸の位置の変化を用いてトラッキングを行うようにした追尾式レーザ干渉計であって、固定配設された基準球と、前記基準球との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第1の変位計を備えたキャリッジと、前記キャリッジに設けられた第2のレトロリフクレクタと、前記第1のレトロリフレクタと前記第2のレトロリフクレタとの相対的な変位に応じた変位信号を出力するレーザ干渉計と、前記第1の変位計が出力する変位信号と、前記レーザ干渉計が出力する変位信号とから、前記基準球を基準とした前記第1のレトロリフレクタの変位を算出するデータ処理装置と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記キャリッジに設けられ、前記第1の変位計と前記第2のレトロリフレクタの間の距離の変化量を測定する変位計測手段を更に備え、前記データ処理装置は、前記第1の変位計が出力する変位信号と、前記レーザ干渉計が出力する変位信号と、前記変位計測手段が測定する前記変化量とから、前記基準球を基準とした前記第1のレトロリフレクタの変位を算出する、ようにしてもよい。
【0014】
さらにまた、前記変位計測手段は、ターゲットと、前記ターゲットの位置から、前記第1の変位計と前記第2のレトロリフレクタの間の距離離して配置され、前記ターゲットとの間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第2の変位計と、を備える、ようにしてもよい。
【0015】
また、前記変位計測手段は、前記第1の変位計と前記第2のレトロリフクレタの間に配置され、前記第2のレトロリフレクタとの間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第3の変位計を備える、ようにしてもよい。
【0016】
さらにまた、前記変位計測手段は、前記第2のレトロリフレクタの表面を覆うように配置されたホルダを更に備える、ようにしてもよい。
【0017】
また、前記キャリッジに設けられ、且つ、前記基準球を挟んで前記第1の変位計に対向するように配置され、前記基準球との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力する第4の変位計を更に備え、前記データ処理装置は、前記第1の変位計が出力する変位信号と、前記レーザ干渉計が出力する変位信号と、前記第4の変位計が出力する変位信号とから、前記基準球を基準とした前記第1のレトロリフレクタの変位を算出する、ようにしてもよい。
【0018】
さらにまた、前記第1のレトロリフレクタから反射されて前記レーザ干渉計に戻ってくるレーザビームが、その光軸と直交する方向にずれたとき、そのずれ量に応じた位置信号を出力する位置検出手段と、前記位置検出手段からの位置信号に基づいて、前記ずれ量がゼロになるように前記キャリッジの回動を制御する制御手段と、を更に備える、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーザ干渉計の筐体に熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量を高精度に測定可能である。また、キャリッジに熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量を高精度に測定可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0022】
<実施の形態1>
図2、
図3、及び
図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図2は本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の主要部分構成を示す模式図である。
図3は本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の内部構成の模式図である。
図4は本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の全体構成斜視図である。
【0023】
図2から
図4に示す本実施の形態は、被測定体である第1のレトロリフレクタ206が3次元測定機のZコラムの先端部などに取り付けられ、追尾式レーザ干渉計203を用いて、移動する第1のレトロリフレクタ206を追尾しつつ、空間中に固定配設された真球度の良い基準球201に関して、基準球201の中心Cから第1のレトロリフレクタ206までの距離Lの変化量ΔLを測定する。以下、従来の構成要素については、例えば特許文献1や特許文献4に詳細に説明されており、ここではその詳細な説明を省略する。以下では上記要素の機能と従来の構成要素の変更について説明する。
【0024】
図2及び
図4に示すように、本実施の形態の追尾式レーザ干渉計は、基準球201を有している。基準球201は、ホルダ410を介してベース板409に取り付けられている。ベース板409上には、支持枠406が設置されており、この支持枠406にはキャリッジ202が回動可能に取り付けられている。
支持枠406は、ベース板409上に設けられた方位角回転用モータ408によって、基準球201の中心Cを中心として方位角方向(
図4のY軸まわりの回転方向)に回動するように構成されている。また、支持枠406には仰角回転用モータ407が設けられており、仰角回転用モータ407の回転駆動によって、キャリッジ202が仰角方向(
図2及び
図4のX軸まわりの回転方向)に回転されるように構成されている。
仰角回転用モータ407、及び方位角回転用モータ408は、データ処理装置411に接続されている。このデータ処理装置411によってキャリッジ202の回動が制御されるように構成されている。
キャリッジ202には、測定光(レーザビーム)を出射するレーザ干渉計203が取り付けられている。レーザビームは、X軸及びY軸に共に直交するZ軸を光軸方向として出射される。
また、キャリッジ202には、基準球201とレーザ干渉計203の間で、且つ、レーザビームと同軸上に第1の変位計204が設けられている。この第1の変位計204とレーザ干渉計203の間には、レーザビームと同軸上で、且つ、キャリッジ202上に、第2のレトロリフレクタ205が設けられている。
なお、第1の変位計204及びレーザ干渉計203は、データ処理装置411に接続されている。
【0025】
レーザ干渉計203から第1のレトロリフレクタ206に向かう光軸Zは、キャリッジ202の回動に連動して、第1のレトロリフレクタ206を追尾しながら回動する。基準球201の中心点C、第1の変位計204、第2のレトロリフレクタ205、及びレーザ干渉計203は、いずれも光軸Z上に位置する。
【0026】
第1の変位計204は、基準球201と第1の変位計204との相対的な変位に応じた変位信号を出力する。具体的には、第1の変位計204は、キャリッジ202の回動に伴う、基準球201の表面から第1の変位計204までの距離L
2の変化量ΔL
2を測定するために使用される。
【0027】
レーザ干渉計203は、後述する変位検出手段を有しており、第1の変位計204により距離L
2の変化量ΔL
2が測定されるのと同時に、第2のレトロリフレクタ205と第1のレトロリフレクタ206との相対的な変位に応じた変位信号を出力する。具体的には、レーザ干渉計203は、第2のレトロリフレクタ205から第1のレトロリフレクタ206までの距離L
1の変化量ΔL
1を測定するために使用される。
【0028】
データ処理装置411は、第1の変位計204が出力する変位信号と、レーザ干渉計203が出力する変位信号とから、基準球201を基準とした第1のレトロリフレクタ206の変位を算出する。
【0029】
また、レーザ干渉計203は、後述する位置検出手段を有しており、第1のレトロリフレクタ206から反射されてレーザ干渉計203に戻ってくるレーザビームが、その光軸と直交する方向に移動したとき、そのずれ量に応じた位置信号を出力する。データ処理装置411は、制御手段を有しており、2次元PSD308からの位置信号に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにキャリッジ202の回動を制御する。
【0030】
以下、
図2に示した各構成要素についてより詳細に説明する。
基準球201は、例えば、等級がG3、直径が5〜25.4mmの大きさとすることができる。また、基準球201は、例えば、高炭素クロム軸受鋼や、スーパーインバ、貴金属などを用いてコーティングすることで導電性を付与した合成石英、導電性を付与したコーディライト系セラミクス、及び導電性を付与したBK7を素材として使用した球などを用いることができる。また、基準球201は、スーパーインバやコーディライト系セラミクスなどの線膨張係数が小さな素材を用いて製作された棒状或いは円錐状のホルダ410を介して、スーパーインバ、コーディライト系セラミクス、又はアルミニウム合金を用いて製作されたベース板409に固定することにより、空間中に固定することができる。
【0031】
キャリッジ202は、熱膨張の影響による、第2のレトロリフレクタ205と第1の変位計204との距離L
3の変化ΔL
3を抑制するために、スーパーインバやコーディエライト系セラミクスなどの線膨張係数が小さな材料を用いて製作するとよい。なお、キャリッジ202の材料はこれに限定されず、キャリッジ202の材料をアルミニウム合金や炭素鋼などの材料を用いて製作し、第2のレトロリフレクタ205及び第1の変位計204を、線膨張係数が小さな材料を使用した同一のホルダ内に配置し、且つ、このホルダの一端をキャリッジ202に固定するように設計するようにしてもよい。この場合、スーパーインバなどに比べて線膨張係数が大きいものの、より低価格な材料により実現することができる。
【0032】
レーザ干渉計203は、スーパーインバやコーディエライト系セラミクスなどの線膨張係数が小さな材料を使用して、筐体を製作してもよい。なお、本実施の形態では、後述するように、レーザ干渉計203の筐体の熱膨張の影響を受けずにΔLの測定を行うことができる。このため、レーザ干渉計203の筐体の材料はこれに限定されず、スーパーインバなどに比べて線膨張係数が大きいものの、レーザ干渉計203の筐体の材質として、より低価格な炭素鋼やアルミニウム合金を使用してもよい。
【0033】
第1の変位計204は、静電容量式変位計又は渦電流式変位計を用いることができる。
【0034】
第2のレトロリフレクタ205は、例えば、合成石英製のコーナーキューブプリズム、中空レトロリフレクタ、及び屈折率2.0のガラス球表面の一部にレーザを反射する金属のコーティングを施した球形のレトロリフレクタなどを使用することができる。第2のレトロリフレクタ205は、スーパーインバなどの線膨張係数が小さな材料で製作したホルダを介してキャリッジ202に固定するように設計してもよい。第2のレトロリフレクタ205は、第1のレトロリフレクタ206に比べてより安価な材料を用いて製作することができる。
【0035】
第1のレトロリフレクタ206は、例えば、中空レトロリフレクタ、半球張り合わせ型のレトロリフレクタ、及び屈折率2.0のガラス球表面の一部にレーザを反射する金属のコーティングを施した球形のレトロリフレクタなどを使用することができる。第1のレトロリフレクタ206は、スーパーインバやコーディライト系セラミクスなどの線膨張係数が小さな材料を用いたホルダを介して、被測定体である3次元測定機のZ軸の先端部などに取り付けるようにしてもよい。
【0036】
図3に示すように、レーザ干渉計203は、光源からのレーザビームを伝送する光ファイバ301と、コリメートレンズ302と、偏光ビームスプリッタ(PBS)303と、
無偏光ビームスプリッタ(NPBS)304と、λ/4板305と、λ/4板306と、
変位検出手段である位相計307と、位置検出手段である2次元位置検出器(2次元PSD)308と、を備えている。
【0037】
図3に示すレーザ干渉計203の構成を用いることにより、第2のレトロリフレクタ205から第1のレトロリフレクタ206までの距離L
1の変化量ΔL
1を測定することが可能となり、また、追尾のために必要となる、光軸Zに直交する方向への第1のレトロリフレクタ206の移動量及び移動方向を検出することが可能である。
【0038】
以下、
図3に示した各構成要素に関して、光ファイバ301は、例えば、偏波面保存ファイバ又はシングルモードファイバを使用することができる。また、コリメートレンズ302とPBS303の間に、光ファイバ301から出力されたレーザの消光比を高めるためのPBSと、P偏光の光量及びS偏光の光量の比を設定するためのλ/2板と、を配置するものとしてもよい。2次元PSD308は、2次元位置検出器に代えて4分割フォトダイオードを使用するものとしてもよい。また、2次元PSD308及び無偏光ビームスプリッタ304の間に、ビーム径を縮小するためのレンズを配置するものとしてもよい。位相計307は、例えば、Sinθ、−Sinθ、Cosθ、−Cosθの4相を検出可能な4相の位相計を使用することができる。また、4相の位相計に代えて、Sinθ及びCosθの2相を検出可能な2相の位相計を使用するものとしてもよい。また、PBS303及び位相計307の間に、ビームの直径を縮小するための光学系を配置するものとしてもよい。
【0039】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施の形態に係る、基準球201の中心Cから第1のレトロリフレクタ206までの距離Lの変化量ΔLの測定原理を説明する。
【0040】
レーザ光源(不図示)からのレーザビームが、光ファイバ301を介してレーザ干渉計203に導波される。レーザ光源(不図示)は、例えば633nmの単一波長レーザ光源を使用することができる。導波されたレーザビームは、コリメートレンズ302により平行光にされる。平行光とされたレーザビームは、P偏光の光及びS偏光の光を有しており、PBS303により測定光と参照光に分割される。
【0041】
P偏光の光は、参照光としてそのまま位相計307に入射する。一方、S偏光の光は、PBS303により反射されて、NPBS304及びλ/4板305を介して、第1のレトロリフレクタ206の方向に測定光として出射される。
【0042】
第1のレトロリフレクタ206により再帰反射された測定光は、λ/4板305を再び透過した後、NPBS304によりその一部が反射されて、2次元PSD308により検出される。
【0043】
2次元PSD308により検出される測定光の2次元PSD308上での位置は、第1のレトロリフレクタ206が、光軸Zと直交する方向に移動した時に、その移動量及び移動の方向に応じて変化する。従って、2次元PSD308により検出される測定光の位置をデータ処理装置411が取得し、データ処理装置411の制御手段が、2次元PSD308で検出される測定光の位置が常に一定になるように仰角回転用モータ407及び方位角回転用モータ408を駆動してキャリッジ202を回動させる。これにより、レーザ干渉計203から出射される測定光の光軸Zは、常に第1のレトロリフレクタ206を再び追尾することができる。
【0044】
一方、第1のレトロリフレクタ206により再帰反射された測定光は、λ/4板305を再び透過した後、NPBS304によりその一部は反射されずに透過し、PBS303及びλ/4板306を透過し、第2のレトロリフレクタ205に向けて出射される。第2のレトロリフレクタ205により再帰反射された測定光は、λ/4板306を再び透過した後、PBS303により位相計307の方向に反射される。この第2のレトロリフレクタ205により再帰反射された測定光が、PBS303を透過してきた参照光と重ね合わされる。この測定光と参照光の位相差を位相計307により検出し、データ処理装置411がこの位相差の値を取得し、この位相差の値を用いて変化量ΔL
1を算出する。
【0045】
データ処理装置411は、第1の変位計204を用いて測定した変化量ΔL
2と、レーザ干渉計203を用いて測定した変化量ΔL
1とを加算することにより、以下に示すようにして距離Lの変化量ΔLを求めることができる。
ΔL=ΔL
1+ΔL
2
【0046】
本実施の形態に係る構成によれば、レーザビームと同軸上に位置する第2のレトロリフクレクタ205を、キャリッジ202上に新たに設け、第2のレトロリフクレクタ205と第1のレトロリフクレクタ206との相対的な変位を測定する構成としたため、レーザ干渉計203の筺体が熱膨張した場合においても、第2のレトロリフレクタ205から第1のレトロリフレクタ206までの距離L
1は影響を受けずに変化しない。このため、従来方式において生じる可能性があった、レーザ干渉計の筐体の熱膨張による誤差は発生しない。従って、レーザ干渉計203の筐体に熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0047】
また、従来方式において、レーザ干渉計の筺体の熱膨張による誤差の発生を抑制するために、レーザ干渉計203の筐体の素材として、スーパーインバやコーディエライト系セラミクスなどの線膨張係数が小さな材料を使用することが考えられる。これに対して本実施の形態に係る構成によれば、レーザ干渉計203の筺体の材料として、スーパーインバなどに比べると線膨張係数が大きな材料であるが、アルミニウム合金や炭素鋼などの材料を使用することができるため、より低価格な材料を用いて製作することができる。このため、より低価格な追尾式レーザ干渉計を提供することができる。
【0048】
<実施の形態2>
図5は、本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の主要部分構成を示す模式図である。なお、以降の実施形態の説明に当たり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略、又は簡略化する。
図5に示すように、本実施の形態に係る追尾式レーザ干渉計は、さらに、変位計測手段の一例としての、第2の変位計501及び第2の変位計のターゲット502を備える。
【0049】
第2の変位計501及び第2の変位計のターゲット502は、所定の距離L
3離してキャリッジ202に固定配設される。
図5に示すように、距離L
3は、第1の変位計204の変位測定の基準点と第2のレトロリフレクタ205の距離に等しい。
【0050】
第2の変位計501は、第2の変位計のターゲット502との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力し、第1の変位計204の変位測定の基準点と第2のレトロリフレクタ205との間の距離の変化量を測定するために用いられる。
【0051】
第2の変位計501は、レーザ干渉式の変位計又は静電容量式変位計を用いることができる。第2の変位計501として例えばレーザ干渉式の変位計を使用した場合には、第2の変位計のターゲット502として、例えば平面鏡又はレトロリフレクタを用いることができる。第2の変位計501として例えば静電容量式変位計を使用した場合には、第2の変位計のターゲット502としてスーパーインバなどの線膨張係数が小さな材料により製作されたブロックを使用することができる。
【0052】
次に、
図5を参照して、本実施の形態に係る、基準球201の中心Cから第1のレトロリフレクタ206までの距離Lの変化量ΔLの測定原理を説明する。
レーザ干渉計203により変化量ΔL
1が測定され、また、第1の変位計204により変化量ΔL
2が測定されるのと同時に、第2の変位計501により距離L
3の変化量ΔL
3が測定される。データ処理装置411は、第1の変位計204を用いて測定した変化量ΔL
2と、レーザ干渉計203を用いて測定した変化量ΔL
1とに加えて、さらに、第2の変位計501を用いて測定した変化量ΔL
3を加算することにより、以下に示すようにして、キャリッジ202の熱膨張による変化量ΔL
3を補正して、距離Lの変化量ΔLを求めることができる。
ΔL=ΔL
1+ΔL
2+ΔL
3
【0053】
本実施の形態に係る構成によれば、上述した実施の形態1と同様に、レーザ干渉計203の筺体が熱膨張した場合においても距離の変化量ΔL
1が変化しないため、従来方式において生じていた、レーザ干渉計の筐体の熱膨張による誤差が発生しない。従って、レーザ干渉計203の筐体の熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る構成によれば、第2の変位計501をキャリッジ202上に新たに設け、第1の変位計204の変位測定の基準点と第2のレトロリフレクタ205の間の距離の変化量を測定する構成としたため、従来方式において生じる可能性があった、キャリッジ202の熱膨張による誤差ΔL
3を補正することができる。このため、キャリッジ202の熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0055】
<実施の形態3>
図6は、本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の主要部分構成を示す模式図である。なお、以降の実施形態の説明に当たり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略、又は簡略化する。
図6に示すように、本実施の形態に係る追尾式レーザ干渉計は、上述した実施の形態1と比較して、さらに、変位計測手段の他の一例としての、第3の変位計601及びホルダ602を備える。
【0056】
第3の変位計601は、キャリッジ202上において、第1の変位計204と第2のレトロリフクレタ205の間に配置され、第1の変位計204の背面に固定配設されている。ホルダ602は、キャリッジ202上において、第3の変位計601に対向する第2のレトロリフレクタ205の表面を覆うように、固定配設されている。ホルダ602の背面は、平面に設計されている。第2のレトロリフレクタ205は、ホルダ602を介して、キャリッジ202に固定配設されている。なお、第2のレトロリフレクタ205が球面構造を有している場合には、ホルダ602を用いずに本実施の形態を実現することもできる。
【0057】
第3の変位計601及びホルダ602は、所定の距離L
3A離してキャリッジ202上に固定配設される。
図6に示すように、距離L
3Aは、第3の変位計601の変位測定の基準点とホルダ602の表面の距離である。
【0058】
第3の変位計601は、第2のレトロリフレクタ205(ホルダ602)との間の相対的な変位に応じた変位信号を出力し、第1の変位計204の変位測定の基準点と第2のレトロリフレクタ205の間の距離の変化量の一部分である変化量ΔL
3Aを測定するために使用される。
【0059】
第3の変位計601は、レーザ干渉式の変位計又は静電容量式変位計を用いることができる。ホルダ602は、線膨張係数が小さなスーパーインバにより製作することができる。
【0060】
次に、
図6を参照して、本実施の形態に係る、基準球201の中心Cから第1のレトロリフレクタ206までの距離Lの変化量ΔLの測定原理を説明する。
レーザ干渉計203により変化量ΔL
1が測定され、また、第1の変位計204により変化量ΔL
2が測定されるのと同時に、第3の変位計601により距離L
3の変化量ΔL
3の一部分であるΔL
3Aが測定される。データ処理装置411は、第1の変位計204を用いて測定した変化量ΔL
2と、レーザ干渉計203を用いて測定した変化量ΔL
1とに加えて、さらに、第3の変位計601を用いて測定した変化量ΔL
3Aを加算することにより、以下に示すようにして、キャリッジ202の熱膨張による変化量ΔL
3の一部分の変化量ΔL
3Aを補正して、距離Lの変化量ΔLを求めることができる。
ΔL=ΔL
1+ΔL
2+ΔL
3
【0061】
本実施の形態に係る構成によれば、上述した実施の形態1と同様に、レーザ干渉計203の筺体が熱膨張した場合においても距離の変化量ΔL
1が変化しないため、従来方式において生じていた、レーザ干渉計の筐体の熱膨張による誤差が発生しない。従って、レーザ干渉計203の筐体の熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0062】
さらに、本実施の形態に係る構成によれば、第3の変位計601をキャリッジ202上に新たに設け、第1の変位計204の変位測定の基準点と第2のレトロリフレクタ205の間の距離の変化量の一部分を測定する構成としたため、従来方式において生じる可能性があった、キャリッジ202の熱膨張による誤差ΔL
3の一部分の変化量ΔL
3Aを補正することができる。このため、キャリッジ202の熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0063】
なお、変化量ΔL
1、ΔL
2、ΔL
3Aの各測定値と、予め測定した距離L
3の値及び距離L
3Aの値とを併用し、以下に示すようにして変化量ΔLを求めて、キャリッジ202の熱膨張を補正することもできる。
【数1】
【0064】
<実施の形態4>
図7は、本実施形態に係る追尾式レーザ干渉計の主要部分構成を示す模式図である。なお、以降の実施形態の説明に当たり、既に説明した構成については同符号を付し、その説明を省略、又は簡略化する。
図7に示すように、本実施の形態に係る追尾式レーザ干渉計は、上述した実施の形態1と比較して、さらに、第4の変位計701を備える。
【0065】
第4の変位計701は、キャリッジ202上に設けられ、レーザビームと同軸上に、且つ、基準球201を挟んで第1の変位計204に対向するように固定配設される。
【0066】
第4の変位計701は、基準球201と第4の変位計701との相対的な変位に応じた変位信号を出力する。具体的には、第4の変位計701は、キャリッジ202の回動に伴う、基準球201の表面から第4の変位計701までの距離L
5の変化量ΔL
5を測定するために使用される。この変化量ΔL
5を測定することにより、基準球201の熱膨張を補正することができる。第4の変位計701は、静電容量式変位計又は渦電流式変位計を用いることができる。
【0067】
次に、
図7を参照して、本実施の形態に係る、基準球201の中心Cから第1のレトロリフレクタ206までの距離Lの変化量ΔLの測定原理を説明する。
レーザ干渉計203により変化量ΔL
1が測定され、また、第1の変位計204により変化量ΔL
2が測定されるのと同時に、第4の変位計701により距離L
5の変化量ΔL
5が測定される。データ処理装置411は、第1の変位計204を用いて測定した変化量ΔL
2と、レーザ干渉計203を用いて測定した変化量ΔL
1とに加えて、さらに、第4の変位計701を用いて測定した変化量ΔL
5を加算することにより、以下に示すようにして、基準球201の熱膨張による変化量ΔL
5を補正して、距離Lの変化量ΔLを求めることができる。
【数2】
【0068】
本実施の形態に係る構成によれば、上述した実施の形態1と同様に、レーザ干渉計203の筺体が熱膨張した場合においても距離の変化量ΔL
1が変化しないため、従来方式において生じていた、レーザ干渉計の筐体の熱膨張による誤差が発生しない。従って、レーザ干渉計203の筐体の熱膨張が生じた場合においても、距離の変化量ΔLを高精度に測定することが可能である。
【0069】
また、本実施の形態に係る構成によれば、レーザ干渉計203の筺体の材料として、スーパーインバなどに比べると線膨張係数が大きな材料であるが、アルミニウム合金や炭素鋼などの材料を使用することができるため、より低価格な材料を用いて製作することができる。このため、より低価格な追尾式レーザ干渉計を提供することができる。
【0070】
さらに、本実施の形態によれば、第4の変位計701をキャリッジ202上に新たに設け、基準球201と第4の変位計701との相対的な変位を測定する構成としたため、基準球201が点Cを中心に均等に熱膨張した場合には、基準球201の熱膨張を補償することができる。従って、距離の変化量を高精度に測定することが可能である。
【0071】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。