特許第6104804号(P6104804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104804スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104804
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/06 20060101AFI20170316BHJP
   C08F 220/02 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C08F212/06
   C08F220/02
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-531929(P2013-531929)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-544908(P2013-544908A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011054307
(87)【国際公開番号】WO2012044981
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/388,930
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】クロッツ,ティモシー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ガルヴァン,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】デブリング,ジョン
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−198749(JP,A)
【文献】 特開平07−206905(JP,A)
【文献】 特表2005−517061(JP,A)
【文献】 特開2007−297548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 212/06
C08F 220/02
C09D 133/04
C09D 125/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器中に、スチレン系モノマー、及び(メタ)アクリル系モノマーを含む20質量%〜80質量%のビニルモノマーと、
0.25質量%〜5質量%の重合開始剤と、
20質量%〜80質量%の反応溶媒を含む混合物を連続的に投入し;
前記反応器を120℃〜165℃の温度に維持して前記ビニルモノマーからオリゴマーを製造し;
該オリゴマーを単離する各工程を含むオリゴマーの製造方法であって、
前記オリゴマーは微量のオレフィン性不飽和結合を含み、前記オリゴマーの前記反応器における滞留時間が15分間〜60分間であり、
前記微量のオレフィン性不飽和結合は、前記オリゴマーが、1645cm−1〜1610cm−1の範囲にIR吸収を示さず、及びH−NMRにおいてテトラメチルシランを標準として4.5〜5.5ppmの範囲に共鳴を示さないことで特徴付けられ、及び
前記オリゴマーは、食品と接触する用途のために使用される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記重合開始剤が、アゾ化合物、過酸化物、またはこれらのいずれか2つ以上の混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系モノマーが、エチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系モノマーがグリシジル(メタ)アクリレートを含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記スチレン系モノマーがスチレンまたはα−メチルスチレンを含む請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般的には、従来から製造されている相当品より安定性が高いスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの製造方法に関する。本技術は、低温で製造された(メタ)アクリル系オリゴマーとスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーと水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー、またこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温下でのビニルモノマーの連続バルク重合で製造したスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、残留末端ビニル性不飽和結合または炭素−炭素二重結合をいくらか含む低分子量コポリマーである。このような残留不飽和結合は、これらのオリゴマーやこれから製造される製品や成形物の安定性等の性質に悪影響を及ぼすことがある。残留不飽和結合は、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの熱安定性を低下させ、高温条件に曝す必要があるいくつかの用途では、これらのポリマーの使用が制限を受けることがある。
【0003】
例えば、高温でバルク重合条件下で製造した高グリシジルメタクリレート(GMA)含量のスチレン−GMAオリゴマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、シクロヘキサンジメタノール(PETG)と共重合したPETなどの多くのプラスチックに対する優れた鎖延長剤である。しかしながら、これらのスチレン−GMAオリゴマーは熱安定性が低いため、食品との接触が必要な特定の用途には不適当である。
【0004】
スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを食品と接触する用途では、最終成形物中に残留モノマーの存在に関する厳格なガイドラインを満たす必要がある。残留モノマーに関するこのような厳格な規制のため、高分子添加物は二つの基本的な要件を満たす必要がある。一つは、これらが残留モノマーを含まないか、含んでいても極微量であることと、もう一つは、コンパウンディング中にあるいは最終成形物の製造中にモノマーや他の有害化学物質の生成が無いか最小限であることである。
【0005】
代表的なスチレン−GMAオリゴマーの用途では、少量のこれらのオリゴマーを主材料のプラスチックと混合して、最終成形物、例えばボトルを製造する。PLAではコンパウンディング温度は200℃〜220℃の範囲であり、PETでは270℃以上にまでなる。このコンパウンディングサイクルは、通常5分間以下である。しかしながらこのような条件下では、スチレン−GMAオリゴマーが分解を始めることがある。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの製造に用いられる高温では、末端二重結合または末端ビニル性不飽和結合が形成される。これらの末端不飽和結合が、このようなスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、また特に高GMA含有スチレン−GMAオリゴマーが、一般に熱的に不安定である理由の一つである。従来のスチレン−GMAオリゴマーは、200℃〜250℃の範囲の温度で分解を始めることがある。これらのスチレン−GMAオリゴマーの熱的不安定性とこのための劣化のため、食品と直接接触する製品中でのこれらの利用は、数多くの他の用途と同様に制限を受ける。
【0006】
高温で製造された従来の(メタ)アクリル系オリゴマーは同様な欠点を持つが、必ずしも同じ理由のためではない。例えば、この(メタ)アクリル系オリゴマーがアクリル系のオリゴマーである場合は、いくらかの量の不飽和が存在し、スチレン−GMAオリゴマーに対するのと同様な熱的不安定性を引き起こす。メタクリレートオリゴマーでは、不飽和結合がほとんど存在しないが、高温では、固有の不安定性がいくらか引き起こされる。重合の熱力学の理由で全てのメタクリレート系は高温下で重合されるのではないが、得られるポリマーは、高温下であるいは過酷な条件下で使用すると欠点を有する。
【0007】
従来のスチレン系(メタ)アクリル系およびアクリル系オリゴマー中に不飽和結合が残留すると、これらのオリゴマーが紫外(UV)光を吸収するようになり、これらオリゴマーまたはこれらのオリゴマーを含む塗液などの製品が劣化することがある。
【発明の概要】
【0008】
スチレン系(メタ)アクリル系及び(メタ)アクリル系オリゴマーであって、従来のバルク重合法で製造されるものと比較してより大きな温度安定度を示すオリゴマーの製造方法が提供される。このようなオリゴマーは、従来のバルク重合と比較して低温重合で製造されるか、従来法で製造されたスチレン(メタ)アクリル系オリゴマーが水素化プロセスで変性される。全体として、これらのオリゴマーは、特定の条件下では、通常の高温工程で製造されるか水素化なしに製造された従来のオリゴマーより安定である。
【0009】
ある側面において、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、またはこれらのビニルモノマーの混合物を含むビニルモノマーと最大で5質量%の重合開始剤と5〜80質量%の反応溶媒とを含む混合物を反応器に連続的に投入し;この樹脂混合物を120℃〜165℃の反応温度に維持し;この樹脂混合物からオリゴマーを分離する;オリゴマーの製造方法であって、このオリゴマーが実質的にオレフィン性不飽和結合を含んでいないものが提供される。いくつかの実施様態においては、このオリゴマーは、1645cm−1〜1610cm−1の範囲で大きなIR吸収を持たないことに特徴がある。いくつかの実施様態においては、このオリゴマーは、H−NMRにおいてテトラメチルシランを標準として4.5〜5.5の範囲で大きな共鳴を持たないことに特徴がある。
【0010】
いくつかの実施様態においては、このビニルモノマーがスチレン系モノマーと(メタ)アクリルモノマーを含む。いくつかの実施様態においては、この(メタ)アクリルモノマーが、エチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、またはアクリル酸(AA)を含む。いくつかの実施様態においては、このスチレン系モノマーが、スチレンまたはα−メチルスチレンを含む。いくつかの実施様態においては、このビニルモノマーが、40〜65質量%の上記スチレン系モノマーと35〜60質量%の上記(メタ)アクリルモノマーを含む。いくつかの実施様態においては、この重合開始剤が、アゾ化合物、過酸化物、またはこれらの開始剤のいずれか2種以上の混合物を含む。
【0011】
いくつかの実施様態においては、この反応混合物の滞留時間が5分間〜60分間である。
【0012】
いくつかの実施様態においては、このオリゴマーの数平均分子量(Mn)が1,000g/mol〜10,000g/molである。いくつかの実施様態においては、このオリゴマーの重量平均分子量(Mw)が1,500g/mol〜30,000g/molである。
【0013】
もう一つの側面では、ほとんどオレフィン性不飽和結合をもたないスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、反応器にスチレン系モノマーと(メタ)アクリルモノマーと、最大で5質量%の重合開始剤を含む混合物を投入し;この混合物を175℃〜300℃の温度に維持し;この混合物からスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを分離し;このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを水素化することを含む連続重合法で製造される。いくつかの実施様態においては、この水素化が、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを水素と水素化触媒に接触させて行われる。
【0014】
いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、1645cm−1〜1610cm−1の範囲で大きなIR吸収を持たないことに特徴がある。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、H−NMRにおいてテトラメチルシランを標準として4.5〜5.5の範囲で大きな共鳴を持たないことに特徴がある。
【0015】
いくつかの実施様態においては、この(メタ)アクリルモノマーが、エチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、または(メタ)アクリル酸を含む。いくつかの実施様態においては、このスチレン系モノマーが、スチレンまたはα−メチルスチレンを含む。いくつかの実施様態においては、この混合物が40〜65質量%の上記スチレン系モノマーと35〜60質量%の上記(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0016】
いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの数平均分子量(Mn)が1,000g/mol〜10,000g/molである。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が1,500g/mol〜30,000g/molである。
【0017】
もう一つの側面では、上記オリゴマーのいずれかが、印刷インク、表面塗液、または重ね塗りワニス中で使用され、あるいは顔料分散剤として、あるいは鎖延長高分子組成物中で使用できる。もう一つの側面では、上記オリゴマーのいずれかから製造される成形物が提供される。ある実施様態においては、この成形物が食品と直接接触して用いられる。例えばこの成形物は、この成形物が最高で250℃の温度に曝される食品接触用途で使用できる。
【0018】
もう一つの側面では、上記オリゴマーのいずれかを、流れ改質剤、相溶化剤、可塑剤、反応性可塑剤、ストレス開放剤、または分散剤として含む高分子組成物が提供される。もう一つの側面では、上記オリゴマーのいずれかを、シート、フィルム、発泡体、ボトル、または押出塗膜として含むプラスチック成形物が提供される。もう一つの側面では、上記オリゴマーのいずれかを、生分解性プラスチック、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/グリコール酸、ポリヒドロキシブチラート、またはポリヒドロキシブチラート−コ−バレレートをさらに含む鎖延長組成物中に含ませることができる。
【0019】
上記オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれかを担体と混合して、マスターバッチ化合物を製造してもよい。このマスターバッチ化合物は、約10質量%〜約50質量%の上記オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを含んでいてもよい。いくつかの実施様態においては、このオリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、マスターバッチ中に約15質量%〜約35質量%の量で存在する。この担体は反応性担体であっても非反応性担体であってもよい。
【0020】
もう一つの側面では、スチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、またはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを含む組成物であって、この組成物を500時間以上UV試験に暴露した後のこの組成物のΔb値が、同じUV試験にかけられた、従来法で製造したスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、またはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを含む組成物のΔb値より小さいものが提供される。例えば、このUVは下の実施例に述べるようなものであってもよい。ある実施様態においては、このUV試験が、340ランプを用いて、50℃で照射照度が0.89で、照射サイクルが4時間、続く消灯が4時間で行うQUV−A試験である。このUV試験は、UV−B試験またはウェザロメーター試験であってもよい。ある実施様態においては、このスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、またはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、連続的に反応器に約20質量%〜約80質量%のビニルモノマー(このビニルモノマーは、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、またはこれらの混合物を含む)と、約0.25質量%〜約5質量%の重合開始剤と約20質量%〜約80質量%の反応溶媒を含む混合物を投入し;この反応器を約120℃〜約165℃の温度に維持してスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、またはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを形成し;このオリゴマー(ただし、このオリゴマーはほとんどオレフィン性不飽和結合を含まない)を分離することからなる方法で製造される。ある実施様態においては、この組成物が、連続的に反応器にスチレン系モノマーと(メタ)アクリルモノマーと約0.25質量%〜約5質量%の重合開始剤を含む混合物を投入し;この混合物を約175℃〜約300℃の温度に維持し;この混合物からスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを分離し;このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを水素化する;ことを含む方法で製造された水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー(なお、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーはほとんどオレフィン性不飽和結合を含まない)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施例中で高温で製造された生成物とその水素化類縁体とを比較するゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)である。
図2図2は、実施例中で高温で製造された生成物とその水素化類縁体とを比較するH−NMRスペクトルである。
図3図3は、実施例の例示試料と比較試料の熱重量分析(TGA)グラフである。
図4図4は、実施例中で高温で製造された生成物とその水素化類縁体とを比較するUV−Visスペクトルである。
図5図5は、実施例中で高温で製造された試料とその水素化類縁体を、標準試料と比較するTGA図である。
図6図6は、実施例の試料2と試料18とを比較するTGAグラフである。
図7図7は、実施例において、PLA中で物質収支で1質量%の量でコンパウンディングし押出機中を二回通過させた後のスチレンモノマーのグラフである。
図8図8は、実施例において、PLA中で物質収支で1質量%の量でコンパウンディングし押出機中を二回通過させた後のGMAモノマーのグラフである。
図9図9は、実施例において、PLA低温樹脂中で物質収支で1質量%の量でコンパウンディングし押出機中を二回通過させた後のスチレンモノマーのグラフである。
図10図10は、実施例において、PLA低温樹脂中で物質収支で1質量%の量でコンパウンディングし押出機中を二回通過させた後のGMAモノマーのグラフである。
図11図11は、実施例において、PET中で物質収支で1質量%の量でコンパウンディングし押出機中を二回通過させた後のスチレンモノマーのグラフである。
図12図12は、実施例における二対の試料のQUV−B暴露を黄変の変化の関数として表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の定義を適用する:
本明細書中において、「(メタ)アクリルモノマー」は、アクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル、アクリル酸またはメタクリル酸の塩やアミド、他の適当な誘導体、またはこれらの混合物をさす。適当なアクリルモノマーの例としては、特に限定されずに、以下のメタクリレートエステル、即ち、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート(BMA)、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、sec−n−ブチルメタクリレート、tert−n−ブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、メタリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メトキシブチルメタクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレートが含まれる。好適なアクリレートエステルの例には、特に限定されずに、アクリル酸メチルやエチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、n−デシルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、2−スルホエチルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、アリルアクリレート、2−n−ブトキシエチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、シンナミルアクリレート、クロチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フルフリルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、メタリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メトキシブチルアクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、プロパルギルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレートが含まれる。
【0023】
他の適当なアクリルモノマーの例には、特に限定されずに、メタクリル酸誘導体が、具体的にはメタクリル酸とその塩、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、メタクロレインが含まれる。アクリル酸誘導体の例には、特に限定されずに、アクリル酸とその塩、アクリロニトリル、アクリルアミド、メチルα−クロロアクリレート、メチル2−シアノアクリレート、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクロレインが含まれる。
【0024】
他のいくつかの適当なアクリル酸またはメタクリル酸誘導体の例には、特に限定されずに、架橋可能な官能基を含むもの、例えばヒドロキシ基やカルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、エポキシ基、アリル基を含むものがあげられる。
【0025】
ヒドロキシ官能性モノマーの例には、特に限定されずに、ヒドロキシアルキルアクリレートやメタクリレートが、具体的には2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)や3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−ブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート(HMMA)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、5,6−ジヒドロキシヘキシルメタクリレートがあげられる。
【0026】
「架橋可能な」スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、熱硬化性であり、架橋剤とともに過熱すると架橋する官能基を持つスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーをさす。これらのポリマーは、官能基含有モノマーを、例えば架橋可能官能基を含むモノマーを十分な量で含み、ポリマーの架橋を可能とさせる。
【0027】
例えば、架橋可能なスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、約10%〜約80質量%のスチレン系モノマーと約10%〜約50質量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルと約20%〜約50質量%のヒドロキシアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを含んでいてもよい。このスチレン系モノマーは、スチレン及び/又はα−メチルスチレンであってよい。このアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルは、1〜8個の炭素原子を持つアルキル基を有し、その具体例としては、特に限定されずに、アクリル酸とメタクリル酸のメチルエステルや、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、イソアミル、2−エチルヘキシル、オクチルエステルが含まれる。
【0028】
これらのヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレートは、2〜6個のヒドロキシ基が結合した炭素原子をもつアルキレン基を含んでいてもよい。これらのモノマーの例は、ヒドロキシエチルアクリレートまたはメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレートまたはメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレートまたはメタクリレートである。他の共重合可能なモノマーも利用可能である。熱硬化性ポリマーの例には、特に限定されずに、三元重合体が含まれ、例えばスチレン/2−エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレートや、スチレン/メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれる。これらのスチレン系モノマーは約20%〜約50質量%の量で用いられ、アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルは約10%〜約40質量%の量で、ヒドロキシモノマーは約20%〜約50質量%の量で用いられる。
【0029】
高分子状生成物の架橋に使用できる硬化剤または架橋剤の例には、特に限定されずに、ポリエポキシドやポリイソシアネート、尿素−アルデヒド、ベンゾグアナミンアルデヒド、メラミン−アルデヒド縮合物などが挙げられる。架橋剤として作用するメラミン−ホルムアルデヒド縮合物の例には、特に限定されずに、ポリメトキシメチルメラミンが、具体的にはヘキサメトキシメチルメラミンが含まれる。メラミン−ホルムアルデヒド架橋剤または尿素−ホルムアルデヒド架橋剤を使用する場合、架橋速度を上げるために、酸触媒を、例えばトルエンスルホン酸を使用してもよい。通常これらの架橋剤は、メラミンまたは尿素とホルムアルデヒド及びいろいろな4個以下の炭素原子を持つアルコールとの反応生成物である。
【0030】
架橋剤には、「シメル」という商標で販売されているものも含まれる。特に限定されずに、アルキル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂であるシメル301やシメル303、シメル1156が有用な架橋剤である。
【0031】
「エポキシ官能化スチレン(メタ)アクリル系コポリマー」は、グリシジルメタクリレートなどのアクリルモノマーと他のエポキシ基含有(メタ)アクリルモノマーとを含むスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーをさす。
【0032】
「エチレン性モノマー」は、酢酸ビニルやビニルピリジン、ビニルピロリドン、ナトリウムクロトネート、メチルクロトネート、クロトン酸、無水マレイン酸等をさす。
【0033】
「水素化」は、化合物に化学的に水素分子を付加させることをいう。オレフィン結合または炭素−炭素二重結合(C=C)は水素化可能であり、水素化される。水素化には、いろいろな水素源を使用できるが、便利な供給源は分子状水素である。水素化を触媒するためにいろいろな触媒が有用である。触媒の例には、特に限定されずに、いろいろな支持体上に分散されているPtやPd、PtO、Pd(OH)、Rh、また他の多くの適当な重金属があげられる。適当な支持体には、特に限定されずに、炭素や活性炭、アルミナ等が含まれる。水素化は、水素を使用して大気圧下また加圧下で実施可能である。
【0034】
「水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー」は、バルク重合法でビニルモノマーから得られるスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーより不飽和レベルの低い、即ち炭素−炭素二重結合の数が少ないスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーをさす。水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー中では、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー中に存在する末端二重結合の多くが水素化されている;この差以外では、この水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、通常対応する非水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーと同じモノマー構成をしている。末端C=C結合は、240nm〜275nmの範囲のUV光と1645cm−1〜1610cm−1の範囲のIR光を吸収する。したがって、水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーでは、対応する非水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーと較べて、240nm〜275nmでのUV吸収と1645cm−1〜1610cm−1でのIR吸収が小さい。本明細書中において、当分野の通常の知識を持つものなら誰でも、上述のような二種のポリマー(またはこれらの成形物)のUV吸収率あるいはIR吸収率を比較する場合に、高分子フィルムの厚みまたは高分子溶液の濃度が結果に大きな影響を与えることを知っている。したがって得られる吸収率は、これらのポリマーまたはこれらの成形物の厚みや濃度等で規格化する必要がある。
【0035】
「吸収率」は、被照射試料により吸収される放射線の量である。吸収率Aは、Eとcとlの積である。なお、Eは、モル吸光率または質量吸光率であり、cは、フィルムまたは溶液または分散液中の試料の濃度(例えば、ポリマーまたはオリゴマー)であり、lは、光路長(フィルムの厚みまたは溶液または分散液が含まれるキュベットの幅)である。したがって、二種の異なるポリマーまたはオリゴマーの吸収率を適切に比較するためには、濃度やフィルム厚または光路長などの変数を適宜考慮する必要がある。
【0036】
「スチレン系モノマー」には、α−メチルスチレン(AMS)やスチレン(Sty)、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−クロロスチレン等が含まれる。
【0037】
「多分散度」または「多分散指数」は、Mw/Mnを、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比をさす。同じ平均分子量をもち異なる分子多分散度を持つポリマーまたはオリゴマーは、異なる溶液粘性をもつ。高分子量画分は低分子量画分より粘度により大きな寄与をするため、多分散度の大きい生成物は、より高い溶液粘度をもつ。
【0038】
「樹脂」は、いくらかの量のポリマーまたはオリゴマーを含む組成物をいう。
【0039】
「スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー」は、スチレン系モノマーに由来する高分子単位と(メタ)アクリルモノマーに由来する高分子単位をもつポリマーやオリゴマーである。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、約75%〜約99%の不揮発性成分を含むことができる。いくつかの実施様態では、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、約90%〜約99%の不揮発性成分を含んでいる。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの多分散度または多分散指数は、約1.5〜約5である。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの多分散度が約1.5〜約3である。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの多分散度が約1.5〜約2である。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの多分散度が約1.7である。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの数平均分子量(Mn)は、約1,000g/mol〜約10,000g/molである。いくつかの実施様態においては、Mnが約5000g/molより小さい。いくつかの実施様態においては、Mnが約1000g/mol〜約3000g/molである。いくつかの実施様態においては、Mnが約1000g/mol〜約2500g/molである。分散度が狭いと、高分子量画分と低分子量画分の含量がかなり小さなポリマーの製造が可能となる。これらの高分子量画分と低分子量画分の量を減らすことで、一定の分子量範囲で改善された性能と低い粘度を得ることができる。いくつかの実施様態では、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーはスチレン系モノマーを含んでいない。
【0040】
例えば、米国特許4,414,370と4,529,787と4,546,160と6,984,694に記載のように、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、高温(即ち、約180℃を越える)での連続バルク重合法で製造される。なお、各文書を参考として採用する。組成の点で、これらのスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーはバッチ間均一性を示す。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの製造には、いろいろなビニルモノマーが有用である。従来から、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、溶媒を使用せずに製造されている。しかしながら、従来の高温法で製造される既存のスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、残存ビニル性不飽和結合または非芳香族炭素−炭素二重結合を含んでいる。これらの不飽和は末端のビニル二重結合である。
【0041】
スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの用途には、特に限定されずに、缶やコイル、織布、ビニル、紙、自動車、家具、マグネットワイヤ、家庭電化製品、金属部材、木材パネルや床材の塗装や仕上げが含まれる。例えば、米国特許4,414,370と4,529,787と4,546,160を参照のこと。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの他の用途には、塗料やインク、接着剤、粘着性付与剤、分散剤が含まれる。これらの用途のためには、コポリマーが、硬いモノマーと軟らかいモノマー、酸モノマー及び/又は他の架橋性官能基をもつモノマーから形成されていることが必要なことがある。硬いポリマーを与えやすいモノマーが硬いモノマーであり、例えば、スチレン系モノマーやC−Cアルキルメタクリレートである。柔らかなポリマーを与えやすいモノマーが軟らかいモノマーであり、例えば上記のアクリレートやC以上のメタクリレート、より具体的にはn−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレート、n−アクリル酸オクチルである。スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは鎖延長剤としても有用である。例えば、米国特許6,984,694を参照。いくつかの実施様態においては、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、上記の材料が食品と直接接触する用途のいずれかで使用される。これらのスチレンアクリル系のコポリマーは、例えばマイクロ波加熱やオーブンや熱表面への接触で食品が加熱される食品接触用途向けのインクや重ね塗り剤、塗料、顔料分散樹脂中でも有用である。
【0042】
鎖延長剤スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、以下の特徴のいずれか一つ以上を持っていてもよい。これらは、エポキシと無水物と酸の群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有している。この官能基がエポキシである場合は、これらの数平均エポキシ官能基数(Efn値)は多くても30であり、いくつかの場合には30より大きいこともある。Efn値が1以上で20以下のこともある。また、Efn値が3以上で10以下のこともある。これらの鎖延長剤スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの多分散指数(PDI)は1.5以上で5以下である。PDI値は1.75以上で4以下のこともある。また、PDI値が2以上d3.5以下のこともある。これらの鎖延長剤スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのエポキシ等量(EEW)は低く、2,800〜180である。EEWは1,400〜190のこともある。また、EEWが700〜200のこともある。
【0043】
これらの鎖延長剤スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのMnは6,000g/molより小さく、また重量平均分子量(Mw)は25,000g/molより小さいため。分子移動性が高く、コンパウンディング中に重縮合物溶融物中への鎖延長剤の取り込みが速くなる。上記の分子量の範囲はいろいろであり、例えば、Mnは約1,000g/mol〜約5,000g/molの範囲であり、また約1,500g/mol〜4,000g/mol、さらには約2,000g/mol〜約3,000g/molの範囲である。上記の分子量の範囲はいろいろであり、例えば、Mwは約1,500g/mol〜約18,000g/molの範囲であり、また約3,000g/mol〜約13,000g/mol、さらには約4,000g/mol〜約8,500g/molの範囲である。また、これらの鎖延長剤スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは重縮合物中で高溶解度となるため、広範囲の溶解度パラメータを有している。いろいろな実施様態においては、これらの鎖延長剤のEEWは180〜300であり、Efn値は4〜12であり、PDIは1.5〜2.8である。他の実施様態においては、これらの鎖延長剤のEEWは300〜500であり、Efn値は4〜12であり、PDIは2.8〜3.2である。さらに他の実施様態においては、これらの鎖延長剤のEEWは500〜700であり、Efn値は4〜12であり、PDIは3.2〜4.5である。
【0044】
低温法
ある側面では、オリゴマーが低温条件下で製造される。本明細書中において、「低温」は、重合を実施するのにかなりの高温を用いる従来の高温での製造方法と比較の上で用いられる相対的な用語である。このような方法には、限定されずに、例えば、連続的なバルク重合法や、バッチ式及び半バッチ式の重合法が含まれる。これらの方法では、(メタ)アクリルモノマーとスチレン系モノマー、またはこれらビニルモノマーのいずれか2つ以上の混合物を含むビニルモノマーを、連続的に反応器中に投入することができる。
【0045】
この低温重合法の一つの実施様態では、このビニルモノマーと重合開始剤を、反応溶媒と共に反応器に連続的に投入して反応混合物を得る。次いで、この反応混合物をビニルモノマーの重合を起こすのに十分な温度に維持する。反応物の混合のためにこの反応混合物を攪拌してもよい。上記方法のいずれを用いても、ビニルモノマーの重合を引き起こすのに十分な温度は約120℃〜約165℃である。いくつかの実施様態においては、いずれの低温重合法でも利用可能な温度は約140℃である。いくつかの他の実施様態においては、これらの低温重合法のいずれで用いてもよい温度が約150℃である。このような方法で製造されるオリゴマーは、実質的にオレフィン性不飽和結合を含んでいない。
【0046】
本明細書中で「微量のオレフィン性不飽和結合」とは、このオリゴマーが、微量以外ではその樹脂中にオレフィン性不飽和結合を含んでいないことを意味する。いくつかの実施様態においては、この微量のオレフィン性不飽和結合がIRまたはNMRスペクトル法で測定される。いくつかの実施様態では、この微量のオレフィン性不飽和結合は、1645cm−1〜1610cm−1の範囲に大きなIR吸収が見られないことを特徴とする。他の実施様態においては、この微量のオレフィン性不飽和結合は、テトラメチルシランを標準とするH−NMRにおいて4.5〜5.5ppmの範囲に大きな共鳴がないことを特徴とする。本明細書中においては、「大きな」IR吸収または共鳴とは、スチレンアクリル樹脂に特徴的な位置に明確なシグナルを与えるものである。本明細書中において、これは通常、大きなシグナルが欠損しているあるいは不在であることをさすのに用いられ、これは、スチレンアクリル樹脂がオレフィン性不飽和結合を持たないか、持っていても微量であることを示す。言い換えると、このシグナルの存在は、スチレンアクリル樹脂中にオレフィン性不飽和結合が存在することを示す。
【0047】
本方法で使用するのに好適なビニルモノマーには、特に限定されないが、スチレン系モノマーや(メタ)アクリルモノマー、エチレン性モノマー、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、エチレン性モノマーが含まれる。好適なスチレン系モノマーには、特に限定されずに、α−メチルスチレンやスチレン、ビニルトルエン、第三級のブチルスチレン、o−クロロスチレン、またはこれらのスチレン系モノマーのいずれか2つ以上の混合物が含まれる。好適な(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定されずに、例えば、メチルメタクリレートやエチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、sec−n−ブチルメタクリレート、tert−n−ブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、メタリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メトキシブチルメタクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、2−スルホエチルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、アリルアクリレート、2−n−ブトキシエチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、シンナミルアクリレート、クロチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、フルフリルアクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、メタリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メトキシブチルアクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェニルエチルアクリレート、フェニルアクリレート、プロパルギルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート、これらの(メタ)アクリレートのいずれか2つ以上の混合物があげられる。いくつかの実施様態においては、この(メタ)アクリルモノマーには、エチルアクリレートとメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリル酸が含まれる。いくつかの実施様態においては、この(メタ)アクリルモノマーに、グリシジル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0048】
これらのビニルモノマーが、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、またはこれらモノマーの混合物を含んでいてもよい。これらのビニルモノマーがこのような混合物を含む場合、これらのビニルモノマーが、約40質量%〜約65質量%のスチレン系モノマーと約35質量%〜約60質量%の(メタ)アクリルモノマーを含んでいてもよい。いくつかの実施様態においては、これらのビニルモノマーが、スチレンとグリシジル(メタ)アクリレートの混合物を含んでいる。いくつかのこのような実施様態では、これらのビニルモノマーが、約40〜約65質量%のスチレンと約35〜約60質量%のグリシジル(メタ)アクリレートを含む。
【0049】
この方法では重合開始剤を反応器に連続的に投入してもよい。本方法を実施するのに適当な開始剤は、一次反応的に熱的にラジカルに分解する。好適な開始剤には、90℃以上の温度でこのラジカル分解法での半減期が1時間であるものが含まれ、またさらに100℃以上の温度でラジカル分解法での半減期が10時間のものも含まれる。100℃未満の温度で半減期が10時間であるものも使用できる。例えばこれらの重合開始剤としては、特に限定されずに、2,2’−アゾジ−(2,4−ジメチルバレロニトリル)や;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN);2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル);1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル);t−ブチルペルベンゾエート;tert−アミルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシアセテート、tert−ブチルペルオキシアセテート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート(TBPB)、2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ−tert−アミルペルオキシド(DTAP);ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP);ラウリルペルオキシド;ジラウリルペルオキシド(DLP)、コハク酸ペルオキシド;またはベンゾイルペルオキシドが含まれる。いくつかの実施様態においては、この重合開始剤には、2,2’−アゾジ−(2,4−ジメチルバレロニトリル);2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN);または2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が含まれる。他の実施様態においては、この重合開始剤に、ジ−tert−アミルペルオキシド(DTAP);ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP);ラウリルペルオキシド;コハク酸ペルオキシド;またはベンゾイルペルオキシドが含まれる。用いられる重合開始剤の量は反応条件に依存し、これに合わせて調整することができる。しかしながらいくつかの実施様態では、この重合開始剤の量がビニルモノマーの重量に対して0〜5質量%の範囲であり、他の実施様態ではこの量が2〜5質量%の範囲である。
【0050】
反応溶媒は、モノマーと共に反応器に連続的に投入してもよく、あるいは別ラインで投入してもよい。この溶媒は、本明細書記載の重合法の温度でビニルモノマーと反応しない溶媒など、公知のいずれの溶媒であってもよい。適当な反応溶媒としては、限定されずに、例えば、アセトン、アロマチック100、アロマチック150、アロマチック200、エチル−3−エトキシプロピオネート、メチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチル−イソブチルケトン、N−メチルピロリドン(NMP)、(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、カルビトール、シクロヘキサノール、ジプロピレングリコール(モノ)メチルエーテル、n−ブタノール、n−ヘキサノール、ヘキシルカルビトール、イソオクタノール、イソプロパノール、メチルシクロヘキサンメタノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、またはイソパラフィンがあげられる。いくつかの実施様態においては、この反応溶媒が、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、アロマチック100、アロマチック150、アロマチック200、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルアミルケトン(MAK)、メチル−イソブチルケトン(MIBK)、N−メチルピロリジノン、イソプロパノールまたはイソパラフィンである。これらの溶媒は、反応器条件とモノマー供給量を考慮に入れた上での所望の量で存在する。ある実施様態においては、一種以上の溶媒が約20質量%〜約80質量%の量で存在する。もう一つの実施様態においては、一種以上の溶媒が約30質量%〜約75質量%の量で存在する。もう一つの実施様態においては、一種以上の溶媒が約35質量%〜70質量%の量で存在する。
【0051】
低温でのこれらのオリゴマーを製造する方法が、連続反応器法であってもよい。このような方法では、滞留時間、即ち特定の反応物が平均して反応器中に存在する時間は、反応器のデザインと特定の性能を達成するための反応条件とに依存する。いくつかの実施様態においては、反応混合物の滞留時間は5分〜60分である。適当な反応器としては、限定されずに、例えば、連続攪拌槽反応器(「CSTR」)やチューブ反応器、ループ反応器、押出反応器、これらのいずれか2つ以上の組合せ、あるいは連続運転に適当ないずれかの反応器が含まれる。
【0052】
適当な形のCSTRの一つが、冷却コイル及び/又は冷却ジャケットを備えたタンク反応器である。この冷却コイル及び/又は冷却ジャケットにより、連続投入されるモノマー組成物の温度を上げることで吸収されない重合熱を十分に除去でき、内部の重合温度を前もって選択した温度に維持することができる。このようなCSTRには、少なくとも一台の、通常複数の攪拌器が備え付けられており、これによりよく混合された反応ゾーンが与えられる。このようなCSTRは、いろいろな充填レベルで、即ち完全充填(液体充填反応器LFR)の約20〜100%の範囲で運転できる。ある実施様態では、この反応器が、50%より多くまた100%より少ない量で充填されている。もう一つの実施様態においては、この反応器が100%液体で充填されている。
【0053】
この連続重合は、従来のこのようなオリゴマーのバルク重合製造法で用いられる温度より低い温度で行われる。ある実施様態においては、この重合温度が、約120℃〜約165℃の範囲である。もう一つの実施様態では、重合温度が約130℃〜約165℃である。もう一つの実施様態では、重合温度が約120℃〜約150℃である。もう一つの実施様態では、重合温度が約140℃〜約150℃である。
【0054】
上記の方法により低温で製造されたオリゴマーの数平均分子量(Mn)は、約1,000g/mol〜約10,000g/molの範囲であってよい。例えばこのオリゴマーがスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーである場合、そのMnは約1,000g/mol〜約10,000g/molである。
【0055】
水素化法
もう一つの側面では、水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの製造方法が提供される。このようなオリゴマーは、従来法で、即ち高温法で生産でき、製造されたオリゴマーを水素化法にかけて、低オレフィン性のスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを得ることができる。例えば、このスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを、上述のような低温法で製造するオリゴマー用の、ビニルモノマーと重合開始剤とを含む混合物を、反応器に投入する連続重合法により製造してもよい。次いで、この反応器を175℃〜300℃の温度で、モノマーをオリゴマーに変換するのに十分な時間維持する。次いでオレフィン性不飽和結合を含むスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを分離して、水素化して、実質的にオレフィン性不飽和結合を含まないスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを形成する。いくつかの実施様態においては、この水素化が、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを水素と水素化触媒に接触させて行われる。
【0056】
いくつかの実施様態においては、水素化触媒には、不飽和分子の水素化に効果的であることが知られている触媒が含まれる。例えば、このような触媒には、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、イリジウム等の触媒、あるいはこれらの触媒のいずれか2つ以上の混合物またはこれらの合金が含まれる。いくつかの実施様態では、この水素化触媒が、パラジウム、白金、またはニッケルを含んでいる。いくつかのこのような実施様態では、この水素化触媒が、パラジウム/炭素であるか、白金/炭素、ラネーニッケルである。
【0057】
低温法で製造されるオリゴマーと同様に、いくつかの実施様態では、この水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、1645cm−1〜1610cm−1の範囲に大きなIR吸収がないことに特徴があることもある。他の実施様態では、これらの水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、H−NMRでテトラメチルシランを標準として4.5ppm〜5.5ppmの範囲に大きな共鳴がないことに特徴があることもある。これらの水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーの数平均分子量(Mn)が約1,000g/mol〜約10,000g/molであり、及び/又は重量平均分子量(Mw)が約1,500g/mol〜約30,000g/molであることがある。
【0058】
もう一つの実施様態においては、この(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが鎖延長剤オリゴマーである。これらの(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーもまた、印刷インク、表面塗料、重ね塗りワニス、顔料分散剤、発泡体、フィルム、シート、押出塗料、押出成型プラスチック、ボトル中で使用でき、また重縮合物用反応器内鎖延長剤として利用でき、あるいは他のいろいろな物品中に投入することができる。いくつかの実施様態では、このような用途や物品が、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを含んでいる。
【0059】
上記オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれも、担体と混合して、マスターバッチ化合物を製造できる。このマスターバッチ化合物が、約5質量%〜約50質量%の上記オリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーを含むことができる。いくつかの実施様態においては、このオリゴマーまたはスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーが、マスターバッチ化合物中に約15質量%〜約35質量%の量で存在している。この担体は反応性担体であっても非反応性担体であってもよい。本明細書中において、マスターバッチ化合物は、上記オリゴマー添加物と担体を含むプレミックス組成物と定義される。本明細書中において、反応性担体は、処理過程でオリゴマー添加物と反応しうる反応性基を持つ希釈担体であり、その具体例には、限定されずに、PETやPETG、PLAがあげられる。本明細書中において、非反応性担体は、処理過程でオリゴマー添加物と反応しうる反応性基を持たない希釈担体であり、その具体例には、限定されずに、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンがあげられる。
【0060】
低温で製造され水素化されたオリゴマーの安定性
本技術のオリゴマーはその改善された熱安定性に特徴を持つことがある。この熱安定性を、図3と5を参照しながらさらに、しかし簡単に説明する。オレフィン性不飽和結合をもたないあるいは最低量のオレフィン性を示すオリゴマーは、従来製造されているオリゴマーよりはるかに熱的に安定である。図3と5から明らかなように、この水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマー、言い換えればオレフィン性を示さないスチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーは、従来の非水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーより高い熱劣化挙動を示す。理論に拘泥するわけではないが、これらの水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーと低温生産されたオリゴマーは、相当する非水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーより少ない数の末端またはビニル炭素−炭素二重結合を含んでいる。末端炭素−炭素二重結合を含むポリマーは、加熱により解重合し、最終的に分解することがある。その結果、これらの水素化スチレン−アクリル系オリゴマーや低温オリゴマーは加熱で解重合しにくく、相当する非水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーより熱的に安定である。
【0061】
上記のスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーまたは水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれも、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLAブレンド、ポリ乳酸/グリコール酸、ポリヒドロキシブチラート(PHB)、ポリヒドロキシブチラート−コ−バレレート(PHBV)、PHBブレンド等の重縮合物の鎖延長剤として使用すると、あるいはプラスチック中の流れ改質剤やプラスチック中の分散剤、プラスチック中の相溶化剤として使用すると、改善された性能を与えるのに使用できる。特に、上記オリゴマーを含む鎖延長組成物は、従来の高温重合法で製造されたオリゴマーより改善された熱安定性を示す。特に、熱劣化開始温度の上昇と熱分解で放出される揮発性物質の量の減少が認められる。
【0062】
上記のスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーまたは水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれかを含む塗装組成物は、従来の高温重合法で製造されたオリゴマーを含む組成物と比較して改善された耐候性を示す。
【0063】
上記のスチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーまたは水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれかを含むエマルションポリマーとコロイド系は、従来の高温重合法で製造されたオリゴマーを含む組成物と比較して、乳化重合用の担体として使われた場合に改善された特性を示す。
【0064】
上記スチレン系オリゴマー、(メタ)アクリル系オリゴマー、スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーまたは水素化スチレン系(メタ)アクリル系オリゴマーのいずれかを含む上述のエマルションポリマーとコロイド系は、従来の高温重合法で製造されたオリゴマーを含む組成物と比較して、分散剤として使われる場合にあるいは印刷インクや塗料、接着剤等のバインダーとして使われる場合に改善された特性を示す。
【0065】
このように概説した本発明は、以下の実施例を参照するとより容易に理解できるであろう。なお、これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0066】
一般的な方法
GPCによるポリマー分子量の測定
以下に述べる実施例のポリマーの分子量を測定するために、この高分子樹脂を先ずテトラヒドロフラン(THF)溶媒の溶液に溶解し、次いでゲルパーミエーションクロマトグラム(ウォーターズ2410屈折率検出器を備えたウォーターズ2695装置)に注入した。ガードカラムを備えた一対のPLゲル混合Bカラムを用い、ポリマーの数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)、平均分子量(Mz)を決定するのに、ミレニウムのソフトウェアを使用した。
【0067】
ポリマー試料のNMR分析
樹脂試料を適当な重水素化溶媒、例えばCDClまたは(CD)S(O)CDに約2質量%で溶解した。ブルカー300MHz−NMRを使用して、プロトンNMRスペクトルを記録した。
【0068】
ポリマーの熱重量分析
Q50装置(TAインスツルメント)を用いて、以下の方法でポリマーの熱重量分析(TGA)を行った。通常10〜15mgの量の試料を、重量既知のPtるつぼに入れた。温度を20℃/分の速度で室温から最終的に約550℃の温度にまで上げた。重量対温度の一次導関数曲線を記録した。
【0069】
ポリマーのUV分析
HP8453UV−Vis分光光度計を用いて、イソシアヌレートで硬化させたアクリルポリオールフィルムのUVスペクトル特性を記録した。このアクリルポリオールの水素化前後の吸収曲線を比較した。
【0070】
ガードナー乾燥時間
ポール・N・ガードナー社のガードナー乾燥時間記録計(Quadcycle cat DT−5040及びMulticycle cat DT−5020)を用いて乾燥時間を測定した。新たに塗布した試料を装置の下に置き、テフロンボールをもつ触針を下ろして表面に接触させる。この触針を経時的に回転させて塗膜の表面を検査する。オペレータにより、接触時間とタックフリー時間、乾燥硬化時間、完全乾燥時間を記録する。
【0071】
ケーニッヒ硬度
ケーニッヒ硬度は、ケーニッヒ・ペンジュラム硬さ試験機、Byk−Gardner Pendulum Konig型、カタログ番号5856を用いて測定した。停止までに必要なスイングの回数を測定する試験を3回行い、その平均を用いた。
【0072】
UV暴露試験
UV暴露試験は、Q−Lab社の装置を用いて行った。QUV−A試験は、UVA340ランプを用いて、60℃で放射照度が0.8で4時間、次いで光照射なしに50℃で4時間行った。QUV−B試験は、UVB313ランプを用いて、70℃で放射照度が0.48で8時間、次いで次いで光照射なしに50℃で4時間行った。
【0073】
ウェザロメーター試験
J−2527サイクルで運転されているアトラスCI4000ウェザロメーター中でパネルを加速風化させた。サイクル条件を以下に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1:従来の高温重合方法でのスチレン−アクリル系の高分子樹脂の製造
表1に示す組成物を、連続攪拌槽反応器に連続的に投入し、同時に生成物を抜き出した。この生成物を、加熱エバボレータに連続的に投入して、残留モノマーと溶媒を可能な限り除いた。表1に製造した試料を示す。
【0076】
【表2】
【0077】
実施例2:低反応温度でのスチレン−アクリル系高分子樹脂およびヒドロキシ官能化スチレン−アクリル系高分子樹脂の製造
この実施例では、低反応温度での連続法によるスチレン−アクリル樹脂の製造を述べる。各試験で、モノマーを、溶媒と開始剤に混合し、次いで連続攪拌槽反応器に連続的に投入し、同時に生成物を引き抜いた。この生成物を加熱エバボレータに投入し、残留モノマーと溶媒を可能な限り除いた。表2に製造した試料を示す。
【0078】
【表3】
【0079】
試料12と13は、実質的に試料6と7と同様に低温度条件で製造した。ただし、DTBPに代えてジ−tert−アミルペルオキシド(DTAP)を使用した。試料6と12の比較から、また試料7と13の比較から、DTAP開始剤を用いて低温で製造すると、Mw/Mnとしての多分散性は低いが、実質的に同じMwをもつポリマーが得られる。試料13の多分散性が試料7と較べてきわめて小さいことが注目される。試料7と13は両方ともに、特定の条件下でエステル化反応を起こして架橋ポリマー鎖を与えうる酸官能基とヒドロキシ官能基を含んでいる。したがって、この低温法により分散度が狭い二官能性ポリマーの製造が可能である。
【0080】
実施例3:高温で製造されたスチレン−アクリル樹脂の水素化
本実施例では、樹脂試料1〜5を水素化してC−C不飽和結合を除いた。水素化は、試験室スケールで次のように行った。樹脂を先ずキシレン溶媒におよそ50質量%固体の濃度で溶解した。この樹脂/溶媒溶液を1リットル容器に入れ、表3に示す水素化触媒を加えた。全ての試験に用いた触媒はPd/Cであった。この容器を加熱し、約1500RPMの高速攪拌下、加圧下で連続的に水素を添加した。いろいろな時間後にこの反応を停止させ、内容物を濾過して触媒を除いた。このキシレン溶媒を、もう一つの加工工程で、標準的なビュッヒ・ラボ・ロータリーエバボレータを用いて加熱真空下で除いた。
【0081】
【表4】
【0082】
実施例4:樹脂の性質に与える水素化の影響
水素化前後に製造した樹脂の性質を測定した。試験した性能は、GPCによる分子量と、NMRによる骨格二重結合含量などの構造、TGA(熱重量分析)による熱安定性であった。図1に示すように、GPC線を重ねて、試料3の保持時間とその水素化類縁体である試料21の保持時間を比較する。水素化の結果として樹脂分子量に実質的に変化がないことが明らかである。水素化試料のクロマトグラム中の約21分にある最も大きなピークは、水素化のために樹脂を溶解するのに用いた溶媒(キシレン)である。
【0083】
高温生産による骨格不飽和結合を除くのにこの水素化法が有効であるかどうかを調べるためには、NMRやIRスペクトロスコピーなどの構造解析が可能な分析技術を使用する必要がある。図2で、高温下で製造した試料3のプロトンNMRチャートを、水素化生成物である試料2のそれとを比較した。二つのNMRチャートで比較すると、一般的なバルク構造は、芳香族プロトン共鳴と骨格プロトン共鳴のいずれにおいても差はないが、水素化の結果、オレフィン系のプロトンに関わる小さなピークが消失していることが容易に認められる。
【0084】
最終使用時の性質の改善の代表例を図3に示す。これは試料3と試料21のTGAを重ねた図である。約125〜200℃で気化する試料21中の残留溶媒に加えて、主たる分解ピークが388℃から430℃へ移動する。また、300℃付近の出発原料の一次導関数図中の分解ピークが完全に消失した。面白いことに、これらの水素化材料のTGA図が、多かれ少なかれ、アニオン重合で製造された分子量が2200のポリスチレン樹脂(似た分子量だが、狭い分子量分布)のそれと一致する
【0085】
実施例5:水素化の結果起こるアクリルポリオール塗膜のUV吸収の変化
キシレンとn−酢酸ブチル中で、試料5または試料23をヘキサメチレンジ−イソシアネート3量体(HDI−3)とOH:NCO官能基モル比が1:1で混合し、固体含量が約60質量%の溶液を形成し、塗料を製造調合物を製造した。これらの調合物に、100部(pHR)に対して0.01部の触媒ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加し、均一に混合した。この塗料調合物を、ゲル化点に達する直前で、テフロンシート上に塗布し、24時間空気を当て、最後に100℃の炉中で90分間焼成した。これらのフィルムをテフロン(登録商標)から取り外し、34ドライミクロンで測定し、次いでUV−Vis分光光度計中に入れ、水素化前後の光吸収性能を比較した。図4から、水素化試料23の樹脂と比較すると、試料5の樹脂中でUV吸収率がかなり高いことがわかる。また吸収開始波長が、299nmから279nmと高エネルギー側に移動した。これ以外では、これらの二つの樹脂が同様に振る舞い、同一のゲル化時間とOH含量、最終フィルム硬度を持っているという点に注目することが重要である。
【0086】
実施例6:スチレン−メタクリレートコポリマーの熱安定性
試料1と9と19の温度に対する重量減少曲線と一次導関数曲線を図5に示す。試料9と試料19の両方の方法が、高温生産された試料1の樹脂と較べてより熱的に安定なスチレン系−(メタ)アクリレート組成物を与えることが容易に認められる。図6には、DTAP開始剤を用いて低温で製造したポリマー(試料18)と高温で製造した同じポリマー(試料2)の比較を示すが、これからも熱安定性の改善が見られる。
【0087】
実施例7:ポリ乳酸(PLA)の鎖延長
比較用樹脂と対応する水素化類似体の3組を、樹脂負荷量を1.0質量%としてPLA(インジオ4042D、ネイチャーワークス)で混合した。乾燥下でこれらの材料を混合し、液状で供給して、ブラベンダー・コニカル二軸押出機を用いてペレット状に押し出した。上のPLAの場合は、ピーク加工温度が230℃であり、滞留時間が約90秒間であった。材料を少し抜き出し(第一のパス)、残りを押出機を通して第二のパスに返送した。
【0088】
次いで、これらの第1のパスと第2のパスの材料中のスチレンとGMAモノマーを、次のようにして分析した。これらのペレットをジクロロメタンに溶解し、数種の校正用のスチレンとGMAのジクロロメタン溶液を使用してGC−MSで分析した。スチレンの結果を図7に、GMAの結果を図8に示す。単位は、質量部(PPM)である。実施例1(試料1と2)の高温工程での残留物で物質収支から期待されるモノマー量を超えるものは、高温加工で生成するモノマーの正味量である。明らかに図7から、「水素化された」実施例3の樹脂(試料19と20と24)ではスチレン発生量が少ないことがわかる。図7はまた、水素化により全ての初期残留モノマーが除かれるというさらなる利点を示している。この水素化による樹脂のさらなる精製とそのGMA含量への影響を図8に示す。
【0089】
鎖長が伸びたPLATの分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で評価した。試料をTHFに溶解してフローカラムに注入し、ポリスチレン標準試薬で校正して、表4に示す結果を得た。数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwがそれぞれ約100と200キロダルトン(kD)であるこのPLAが最初に流出する。この表から鎖長が延びていることが明白である。このデータは、水素化樹脂では第一パスのMwが幾分小さな値をもち、第二パス値がよく似た値を持つことを示す。この傾向は、水素化の結果としてのエポキシ含量のいくらかの低下と熱安定性の改善を反映している。
【0090】
【表5】
【0091】
比較用樹脂(実施例2)と3種の「低温」樹脂(実施例9と11と17)を用いて同じブラベンダー試験を行った。試料2と比較の上でのスチレンの結果(単位:PPM)を図9に、GMAの結果を図10に示す。図10より、興味ある規則、即ち樹脂が非常に熱的に安定である場合、最終生成物(PLA)中に出発樹脂の物質収支より計算される量より少ない量のモノマーが認められるという規則があることが分る。これは単に、反応したGMA(単純な酸基の末端封鎖による)と気化による損失の総量が生成するGMAより多いという事実のためである。
【0092】
実施例8:ポリエチレンテレフタレート(PET)中での鎖延長
二つの異なる試験で、3種の水素化樹脂(試料19と20と24)を、また3種の「低温」樹脂(実施例9と11と17)を、PET(9921、イーストマン社)と樹脂負荷量が0.5質量%で混合した。いずれの場合も、比較用樹脂(試料2)も混合した。典型的なPET鎖延長条件を真似るように条件を選択した。これらの材料を乾燥状態で混合して供給し、ブラベンダーコニカル二軸押出機を用いてペレット状に押し出した。最高加工温度を280℃であり、滞留時間は約90秒間であった。少量の材料を抜き出し(第一パス)、残りを返送し押出機を通して第二パスとした。第1パス及び第2パスの両方を通した後の試料中のスチレンモノマー(単位:PPM)の結果を図11に示す。
【0093】
実施例9:ウレタン塗液の製造と試験
本実施例では、実施例1と2の試料から、先ず、これらの樹脂をMAKまたは酢酸ブチルに溶解して溶剤中に約60%の固体を含む「画分」を調合した。この「画分」に、さらにMAK溶媒とレベリング剤、触媒、イソシアネートを添加した。調合物を表5に示す。
【0094】
これらの塗液を、44ミクロンのワイヤを巻きつけた棒を持つACT−B1000−CRSパネル上に塗布し、ガードナー乾燥時間とケーニッヒ硬度を測定した。その結果を表5に示す。この結果は、低温法で製造した塗膜が、高温で従来の反応温度で製造した材料を用いる塗膜と同等であるか、これより優れた機械試験特性をもつことを示している。
【0095】
【表6】

用いた触媒(Cat)は、1質量%のジブチルスズジラウレートを含むMAK溶液
用いたイソシアネート(Iso)はバソナートHI100である。
用いたレベリング(Lev)添加剤はビック361Nである。
GRD1=ガードナー乾燥時間(不粘着)
GRD2=ガードナー乾燥時間(完全乾燥)
【0096】
耐侯性データ
次いで、上記の塗液を、44ミクロンの無ワイヤ棒をもつアルミニウムQパネル(A−363003H14Al)上に塗布した。これらの塗液の塗布前に、これらのパネルを白色の基礎塗液で塗布して製造した。この白色の基礎塗液は、100部のグラスリットL−55ホワイトと10部のグラスリット355−55活性化剤と40部のグラスリット352−50還元剤とを混合し、44ミクロンの無ワイヤ棒を持つQパネル上に塗布し、乾燥させて製造した。塗布後のパネルを耐侯性試験室に入れ、経時的に色変化(Δb)と黄変度(ΔYI)を分析した。三つ試験室を用いた。一つの試験室では、パネルをUV−A光に暴露し、もう一つの試験室ではUV−B光に暴露した。第三の試験室では、ウェザロメーターを用いた。表6は、bと黄変度の経時変化の結果を示す。表6に示す数値は、CIE1976色空間(Lとa、b;「Lab」色空間)値によるものである。Lab色空間中では、b*値が青色−黄色座標を示し、Δb*は、青色−黄色座標における経時変化(例えば、時間0と時間tでのbの差)の測定値である。Δbの正の変化は、暴露/老化による塗膜黄変の増加に相当する。表6中に示すYI(またはΔYI値)は、透明または白色の試験試料の黄変度の経時的変化を示す。これらの値は、ASTM−E313の方法により分光光度データから計算される。
【0097】
【表7】
【0098】
図12は、表6のデータを図示したものである。図12から、低温重合で製造した試料では、黄変指数の変化がかなり小さいことがわかる。
【0099】
等価物
特記しない限り、あるいは明らかに異常ではないなら、要素(特に以下の請求項中の要素)の記述に当り単数で表示されたものは、単数と複数の両方を含むものとする。特記しない場合、「有する」や「含む」などの用語は、無制限の用語(即ち、「特に限定されずに含む」ことを意味する)であるとする。また、本明細書中で使用される用語や発現は、説明のために使用されるものであり、制限のために使用されるのではない。これらの用語や表現を使用する際に、表示・記載された形体のいずれの等価物もあるいはその一部を排除する意図はなく、本発明の請求範囲内でいろいろな変更が可能である。また、「実質的に...からなる」という表現は、具体的にあげられた要素と請求の発明の基本的で新規な特徴に実質的に悪影響を与えない他の要素とを含むことを意味する。「からなる」という表現は、具体的に特定されていないいずれの要素も含まない。
【0100】
本明細書中で参照された刊行物や出願特許、登録特許、他の文書は引用のために含めたものであり、各々の個々の刊行物、出願特許、登録特許、または他の文書は、明確にかつそれぞれその全てを引用として採用する。引用として採用したテキスト中に含まれる定義で、本明細書中の定義に反するものは除かれる。
【0101】
本開示は、本明細書に記載の特定の実施様態により制限を受けるのではない。当業界の熟練者には明白なように、その精神と範囲から逸脱することなく多くの変更や変動が可能である。本明細書中で開示のもの以外に、本開示の範囲内で機能的に同等な方法や装置が、上の明細書から当業界の熟練者には明白であろう。このような変更や変動は、添付の請求項の範囲内に収まるものである。本開示は、添付の請求項の規定と請求項の等価物の全範囲によってのみ制限を受ける。この開示は、特定の方法、反応剤、化合物組成物または生物学的システムに限定されるものではなく、これらはもちろん変動可能である。また、本明細書で用いる用語は、特定の実施様態を説明するためだけのものであり、制限を加えるものではない。
【0102】
また、開示の特徴または側面がマーカッシュ群で示されている場合、この開示がまたマーカッシュ群メンバーの各メンバーまたはサブグループにより記述できることは当業界の熟練者には既知である。
【0103】
当業界の熟練者には明らかなように、あらゆる目的で、特に記述のためのあらゆる目的で本明細書に開示される全ての範囲はまた、あらゆる可能なサブレンジやサブレンジの組合せを含む。上記の範囲はいずれも、その範囲を十分に記述しており、また同じ範囲が少なくとも等しい1/2や1/3、1/4、1/5、1/10等のサブレンジに分割可能であることは容易に認められる。非制限的な例をあげると、本明細書中で検討した範囲のそれぞれは、容易に下の1/3と中央の1/3、上の1/3等に分割できる。当業界の熟練者には明白なように、「多くて」や「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの表現の全ては、あげられた数字を含む範囲を示す。またこれらの範囲は、上述のようにサブレンジに分解できる。最後に当業界の熟練者には明白なように、範囲はそれぞれ個々のメンバーを含む。
【0104】
本明細書中でいろいろな側面と実施様態を開示したが、他の側面や実施様態が当業界の熟練者には明らかであろう。本明細書に開示されているこれらいろいろな側面や実施様態は、説明の目的のためであって制限を意図するものでなく、その本当の範囲と精神は、以下の請求項により示される。
【0105】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国仮出願特許61/388,930(2010年10月1日出願)の優先権を主張する。なお、この文書の開示の全てを、あらゆる目的で引用として本明細書に組み込む。
図1
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図5
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図10
図11
図12