(54)【発明の名称】細胞培養用プレートの作製方法、この作製方法で作製された細胞培養用プレート、細胞培養方法、細胞シート作製方法、細胞シート、及び感光性樹脂組成物
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板上の樹脂パターンが設けられていない部分に、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる温度応答性材料層を形成する温度応答性材料層形成工程を更に含む、請求項1記載の細胞培養用プレートの作製方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下では、まず、本発明に係る、基板上に樹脂パターンを形成するための感光性樹脂組成物について説明し、次いで、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法、細胞培養用プレート、細胞培養方法、細胞シート作製方法、及び細胞シートについて、順次、説明する。
【0014】
≪基板上に樹脂パターンを形成するための感光性樹脂組成物≫
本発明に係る、基板上に樹脂パターンを形成するための感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」という。)は、アルコール系有機溶剤(S)を少なくとも含有するものである。この感光性樹脂組成物は、基板上、特に、ポリスチレン等の樹脂を含む樹脂基板上に樹脂パターンを形成するのに好適に用いられる。この感光性樹脂組成物は、ポジ型、ネガ型のいずれであってもよいが、ポジ型であることが好ましい。また、この感光性樹脂組成物は、ポジ型である場合、非化学増幅型、化学増幅型のいずれであってもよい。以下、非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物及び化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0015】
<非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物>
非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物は、キノンジアジド基含有化合物(A)、アルカリ可溶性樹脂(B)、及びアルコール系有機溶剤(S)を少なくとも含有する。
【0016】
[キノンジアジド基含有化合物(A)]
キノンジアジド基含有化合物(A)としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、キノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化物や部分エステル化物が好ましい。このようなキノンジアジド基含有化合物は、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とキノンジアジド基含有スルホン酸とを、ジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下で縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより得ることができる。
【0017】
上記フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;
トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物;
ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等のビスフェノール型化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物;等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
キノンジアジド基含有化合物(A)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(B)100質量部に対し5〜50質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、得られる非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物の感度を良好なものとすることができる。
【0020】
[アルカリ可溶性樹脂(B)]
アルカリ可溶性樹脂(B)としては、特に限定されず、任意のアルカリ可溶性樹脂を用いることができる。ここで、アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のTMAH水溶液に1分間浸漬した際、0.01μm以上溶解するものをいう。アルカリ可溶性樹脂(B)としては、ノボラック樹脂(B1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)、及びアクリル樹脂(B3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0021】
(ノボラック樹脂(B1))
ノボラック樹脂(B1)は、例えばフェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。
【0022】
上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸等が使用される。
【0023】
なお、o−クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、ノボラック樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
このノボラック樹脂(B1)の質量平均分子量は、1000〜50000であることが好ましい。
【0024】
(ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2))
ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等が挙げられる。
更に、ポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましい。このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
このポリヒドロキシスチレン樹脂(B2)の質量平均分子量は、1000〜50000であることが好ましい。
【0025】
(アクリル樹脂(B3))
アクリル樹脂(B3)としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位、及びカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含むことが好ましい。
【0026】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等を例示することができる。上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物;等を例示することができる。上記カルボキシル基を有する重合性化合物は、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このアクリル樹脂(B3)の質量平均分子量は、50000〜800000であることが好ましい。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂(B)の含有量は、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物の全質量に対して5〜60質量%とすることが好ましい。
【0029】
[アルコール系有機溶剤(S)]
本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、アルコール系有機溶剤(S)以外の成分をアルコール系有機溶剤(S)に溶解した均一な溶液として製造し、使用することができる。本明細書において、「アルコール系有機溶剤」とは、脂肪族炭化水素の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であって、常温常圧下で液体である化合物をいう。アルコール系有機溶剤(S)は、基板、特に、ポリスチレン等の樹脂を含む樹脂基板を溶解する能力が高くないため、基板はアルコール系有機溶剤(S)に対する十分な耐性を有する。よって、アルコール系有機溶剤(S)を含む本発明の感光性樹脂組成物により、基板に対するダメージを効果的に抑えつつ、基板上に高い精度及び再現性で樹脂パターンを形成することができる。アルコール系有機溶剤(S)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
アルコール系有機溶剤(S)としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール等が挙げられ、1価アルコールが好ましく、1級又は2級の1価アルコールがより好ましく、2級の1価アルコールが更に好ましく、炭素数5以上(より好ましくは炭素数7以上)の2級の1価アルコールが特に好ましい。更に、アルコール系有機溶剤(S)としては、炭素数5以上(より好ましくは炭素数7以上)の環状構造を有しているアルコール、及び、炭素数5以上(より好ましくは炭素数7以上)の鎖状構造のアルコールが好ましい。上記環状構造又は鎖状構造は、エーテル結合をその構造中に含むものであってもよい。炭素数5以上(より好ましくは炭素数7以上)の鎖状構造について、水酸基を含む最長の主鎖が炭素数5以上であると、更に好ましい。上記主鎖は、エーテル結合をその構造中に含むものであってもよい。アルコール系有機溶剤(S)として特に好ましいものは、炭素数5以上(より好ましくは7以上)の鎖状構造の1価アルコールである。ここで、「1価アルコール」とは、分子中に含まれる水酸基の数が1個のアルコールを意味するものであり、2価アルコール及び3価アルコール並びにこれらの誘導体は包含しない。なお、上記炭素数の上限は、アルコール系有機溶剤(S)が常温常圧下で液体である限り特に限定されないが、例えば、30以下、好ましくは20以下である。
【0031】
アルコール系有機溶剤(S)の沸点は、塗布性、保存時の組成物の安定性、及びPAB工程又はPEB工程における加熱温度の観点から、80〜250℃であることが好ましく、90〜240℃であることがより好ましく、100〜235℃であることが更により好ましい。なお、「沸点」は、常圧下で測定した標準沸点をいう。
【0032】
アルコール系有機溶剤(S)の具体例としては、プロピレングリコール(PG;沸点188℃);1−ブトキシ−2−プロパノール(BP;沸点170℃)、n−ヘキサノール(沸点157.1℃)、2−ヘプタノール(沸点160.4℃)、3−ヘプタノール(沸点156.2℃)、1−ヘプタノール(沸点176℃)、5−メチル−1−ヘキサノール(沸点167℃)、6−メチル−2−ヘプタノール(沸点171℃)、1−オクタノール(沸点196℃)2−オクタノール(沸点179℃)、3−オクタノール(沸点175℃)、4−オクタノール(沸点175℃)、2−エチル−1−ヘキサノール(沸点185℃)、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール(沸点231℃)、n−ペンチルアルコール(沸点138.0℃)、s−ペンチルアルコール(沸点119.3℃)、t−ペンチルアルコール(101.8℃)、イソペンチルアルコール(沸点130.8℃)、イソブタノール(イソブチルアルコール又は2−メチル−1−プロパノールとも呼ぶ。)(沸点107.9℃)、イソプロピルアルコール(沸点82.3℃)、2−エチルブタノール(沸点147℃)、ネオペンチルアルコール(沸点114℃)、n−ブタノール(沸点117.7℃)、s−ブタノール(沸点99.5℃)、t−ブタノール(沸点82.5℃)、1−プロパノール(沸点97.2℃)、2−メチル−1−ブタノール(沸点128.0℃)、2−メチル−2−ブタノール(沸点112.0℃)、4−メチル−2−ペンタノール(沸点131.8℃)等の鎖状構造の1価アルコール;シクロペンタンメタノール(沸点162℃)、1−シクロペンチルエタノール(沸点167℃)、シクロヘキサノール(沸点160℃)、シクロヘキサンメタノール(CM;沸点183℃)、シクロヘキサンエタノール(沸点205℃)、1,2,3,6−テトラヒドロベンジルアルコール(沸点191℃)、exo−ノルボルネオール(沸点176℃)、2−メチルシクロヘキサノール(沸点165℃)、シクロヘプタノール(沸点185℃)、3,5−ジメチルシクロヘキサノール(沸点185℃)、ベンジルアルコール(沸点204℃)等の環状構造の1価アルコール等が挙げられる。中でも、鎖状構造の1価アルコールが好ましく、鎖状構造の2級の1価アルコールがより好ましく、水酸基を含む最長の主鎖が炭素数5以上9以下(好ましくは炭素数5以上8以下)である2級の1価アルコールが更に好ましく、1−ブトキシ−2−プロパノールが最も好ましい。
【0033】
アルコール系有機溶剤(S)の含有量は、特に限定されず、例えば、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%となる範囲である。
【0034】
(その他の成分)
本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、可塑性を向上させるため、更にポリビニル樹脂を含有していてもよい。ポリビニル樹脂の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。ポリビニル樹脂は、ガラス転移点の低さの点から、好ましくはポリビニルメチルエーテルである。
また、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、支持体との接着性を向上させるため、更に接着助剤を含有していてもよい。
【0035】
また、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、更に界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤の具体例としては、BM−1000、BM−1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145(いずれも旭硝子社製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、現像液に対する溶解性の微調整を行うため、酸又は酸無水物を更に含有していてもよい。酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ桂皮酸、3−ヒドロキシ桂皮酸、4−ヒドロキシ桂皮酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
また、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、感度を向上させるため、増感剤を更に含有していてもよい。
更に、本発明に係る非化学型ポジ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、アルコール系有機溶剤(S)以外の有機溶剤を含有してもよい。
【0037】
<化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物>
化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(C)と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(D)、及びアルコール系有機溶剤(S)を少なくとも含有する。
【0038】
[酸発生剤(C)]
本発明に用いられる酸発生剤(C)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であり、光により直接又は間接的に酸を発生する化合物であれば特に限定されない。
【0039】
酸発生剤(C)における第一の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−ト等の下記一般式(a3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0041】
上記一般式(a3)中、R
9a、R
10a、R
11aは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
また、酸発生剤(C)における第二の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネ−ト基を含有する下記一般式(a4)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
上記一般式(a4)中、R
12aは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R
13aは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
上記一般式(a4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R
13aは、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R
12aが芳香族性化合物基であり、R
13aが炭素数1〜4のアルキル基である化合物が好ましい。
上記一般式(a4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R
12aがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R
13aがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記一般式(a4)で表される酸発生剤としては、具体的には下記式で表される酸発生剤が挙げられる。
【0045】
酸発生剤(C)における第三の態様としては、オニウム塩系産発生剤があけられ、オニウム塩系酸発生剤として、例えば下記一般式(b1)又は(b2)で表される化合物を用いることができる。
【0046】
【化4】
[一般式(b1)、及び(b2)において、R
b1〜R
b3,R
b5〜R
b6は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアルキル基を表す。一般式(b1)におけるR
b1〜R
b3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環を形成してもよい。M
−は有機アニオンを表す。R
b1〜R
b3のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R
b5〜R
b6のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0047】
一般式(b1)中、R
b1〜R
b3はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基又はアルキル基を表す。なお、一般式(b1)におけるR
b1〜R
b3のうち、何れか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環を形成してもよい。また、R
b1〜R
b3のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R
b1〜R
b3のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R
b1〜R
b3の全てがアリール基であることが最も好ましい。
【0048】
R
b1〜R
b3のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0049】
アリール基は、置換基を有していてもよい。ここで、「置換基を有する」とは、アリール基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていることを意味する。アリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシアルキルオキシ基、−O−R
b7−C(=O)−(O)
n”−R
b8[式中、R
b7はアルキレン基又は単結合であり、R
b8は酸解離性基又は酸非解離性基であり、n”は0又は1である。]等が挙げられる。
【0050】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、より好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パ−フルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記一般式(a9)で表されるものが挙げられる。
【0052】
上記一般式(a9)において、R
20aは、下記一般式(a10)、(a11)で表される基や、下記式(a12)で表される基である。
【0054】
上記一般式(a10)中、xは1〜4の整数を表す。また、上記一般式(a11)中、R
21aは、水素原子、水酸基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1〜3の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
また、アニオン部としては、下記一般式(a13)、(a14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0056】
上記一般式(a13)、(a14)中、X
aは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Y
a、Z
aは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
X
aのアルキレン基の炭素数、又はY
a、Z
aのアルキル基の炭素数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
また、X
aのアルキレン基又はY
a、Z
aのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、即ちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0057】
また、酸発生剤(C)における第四の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレ−ト、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0058】
この酸発生剤(C)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸発生剤(C)の含有量は、本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物の全質量に対し、0.1〜10質量%とすることが好ましく、0.5〜3質量%とすることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な感度が得られる様になり、有機溶剤に対する溶解性がよく、均一な溶液が得られ、保存安定性が向上する。
【0059】
[酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(D)]
酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(D)としては、特に限定されず、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する任意の樹脂を用いることができる。その中でも、ノボラック樹脂(D1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(D2)、及びアクリル樹脂(D3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
【0060】
(ノボラック樹脂(D1))
ノボラック樹脂(D1)としては、下記一般式(b1)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0062】
上記一般式(b1)中、R
1bは、酸解離性溶解抑制基を示し、R
2b、R
3bは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
上記R
1bで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(b2)、(b3)で表される基、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0064】
上記一般式(b2)、(b3)中、R
4b、R
5bは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R
6bは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R
7bは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1を表す。
【0065】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0066】
ここで、上記一般式(b2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert−ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。また、上記一般式(b3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ−tert−ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。
【0067】
(ポリヒドロキシスチレン樹脂(D2))
ポリヒドロキシスチレン樹脂(D2)としては、下記一般式(b4)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0069】
上記一般式(b4)中、R
8bは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
9bは、酸解離性溶解抑制基を表す。
上記炭素数1〜6のアルキル基は、例えば炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
上記R
9bで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記一般式(b2)、(b3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0070】
更に、ポリヒドロキシスチレン樹脂(D2)は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0071】
(アクリル樹脂(D3))
アクリル樹脂(D3)としては、下記一般式(b5)〜(b7)で表される構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0073】
上記一般式(b5)〜(b7)中、R
10b〜R
17bは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し(ただし、R
11bが水素原子であることはない)、X
bは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の炭化水素環を形成し、Y
bは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、pは0〜4の整数を表し、qは0又は1を表す。
【0074】
なお、上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
【0075】
上記R
11bとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅等が良好な点から、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、上記R
13b、R
14b、R
16b、R
17bとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0076】
上記X
bは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の脂肪族環式基を形成する。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(更に置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0077】
更に、上記X
bの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0078】
上記Y
bは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(更に置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0079】
更に、上記Y
bの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)等の極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0080】
また、Y
bがアルキル基である場合、炭素数1〜20、好ましくは6〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基等が挙げられる。
【0081】
上記一般式(b5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b5−1)〜(b5−33)で表されるものを挙げることができる。
【0085】
上記式(b5−1)〜(b5−33)中、R
18bは、水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(b6)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b6−1)〜(b6−24)で表されるものを挙げることができる。
【0088】
上記式(b6−1)〜(b6−24)中、R
18bは、水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(b7)で表される構成単位の好ましい具体例としては、下記式(b7−1)〜(b7−15)で表されるものを挙げることができる。
【0091】
上記式(b7−1)〜(b7−15)中、R
18bは、水素原子又はメチル基を表す。
更に、アクリル樹脂(D3)は、上記一般式(b5)〜(b7)で表される構成単位に対して、更にエーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0092】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、エーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物を例示することができ、具体例としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記エーテル結合を有する重合性化合物は、好ましくは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの重合性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
更に、アクリル樹脂(D3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含めることができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。
【0094】
このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0095】
また、重合性化合物としては、酸非解離性の脂肪族多環式基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ビニル基含有芳香族化合物類等を挙げることができる。酸非解離性の脂肪族多環式基としては、特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基等が、工業上入手しやすい等の点で好ましい。これらの脂肪族多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0096】
樹脂(D)のポリスチレン換算質量平均分子量は、好ましくは5000〜600000であり、より好ましくは7000〜400000であり、更に好ましくは10000〜300000である。このような質量平均分子量とすることにより、支持体との剥離性が低下することなく樹脂層の十分な強度を保持できる。
【0097】
また、樹脂(D)は、分散度が1.05以上の樹脂であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とする応力耐性を得ることができる。
樹脂(D)の含有量は、本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物の全質量に対して5〜60質量%とすることが好ましい。
【0098】
[酸拡散制御剤(E)]
本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物は、樹脂パターン形状、引き置き安定性等の向上のため、更に酸拡散制御剤(E)を含有してもよい。酸拡散制御剤(E)としては、含窒素化合物(E1)が好ましく、更に必要に応じて、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E2)を含有させることができる。
【0099】
(含窒素化合物(E1))
含窒素化合物(E1)としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3,−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、8−オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6−トリ(2−ピリジル)−S−トリアジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
含窒素化合物(E1)は、上記樹脂(E)及び上記アルカリ可溶性樹脂(B)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
【0101】
(有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E2))
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E2)のうち、有機カルボン酸としては、具体的には、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好適であり、特にサリチル酸が好ましい。
【0102】
リンのオキソ酸又はその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体;等が挙げられる。これらの中でも、特にホスホン酸が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E2)は、上記樹脂(E)及び上記アルカリ可溶性樹脂(B)の合計質量100質量部に対して、通常0〜5質量部の範囲で用いられ、特に0〜3質量部の範囲で用いられることが好ましい。
また、塩を形成させて安定させるために、有機カルボン酸、又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E2)は、上記含窒素化合物(E1)と同等量を用いることが好ましい。
【0104】
[アルコール系有機溶剤(S)]
本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物は、アルコール系有機溶剤(S)以外の成分をアルコール系有機溶剤(S)に溶解した均一な溶液として製造し、使用することができる。アルコール系有機溶剤(S)としては、非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物において例示したものを用いることができる。
【0105】
アルコール系有機溶剤(S)の含有量は、特に限定されず、例えば、本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%となる範囲である。
【0106】
[その他の成分]
本発明に係る化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、非化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物において例示したものを用いることができる。
【0107】
<感光性樹脂組成物の調製>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記各成分を通常の方法で混合、撹拌するだけで調整することができ、必要に応じ、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合してもよい。また、混合した後で、更にメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0108】
<基板上に樹脂パターンを形成するための方法>
本発明に係る感光性樹脂組成物を用いて基板上に樹脂パターンを形成するための方法としては、例えば、本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥させて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、上記樹脂層を選択的に露光する露光工程と、露光後の上記樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程とを含む、方法が挙げられる。
【0109】
まず、樹脂層形成工程では、上述したように調製した感光性樹脂組成物の溶液を基板上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって所望の樹脂層を形成する。被処理基板上への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。本発明の組成物の樹脂層のプレベーク条件は、組成物中の各成分の種類若しくは配合割合又は樹脂層の膜厚等によって異なるが、通常は70〜150℃で、好ましくは80〜140℃で、2〜60分間程度である。
樹脂層の膜厚は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜5μm、更により好ましくは0.5〜3μmの範囲である。
【0110】
基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル系材料(例えば、ウレタンアクリレート)、セルロース等の樹脂を含む樹脂基板;ガラス基板が挙げられる。ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクタン、その共重合体等の生分解性ポリマーを含む樹脂基板であってもよい。また、基板は多孔質なものであってもよい。
本発明においては、中でも、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂を含む樹脂基板又はガラス基板を好ましく用いることができ、特に、ポリスチレンを含む樹脂基板が、透明性、機械的性質、電気的性質、生体親和性等の性質に優れているために、最も好ましく用いることができる。
【0111】
次に、露光工程では、得られた樹脂層に、所定のパターンのマスクを介して、又は、マスクレス露光装置を用いて、活性光線又は放射線、例えば波長が100〜500nmの紫外線又は可視光線を選択的に照射(露光)する。
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、本発明に係る感光性樹脂組成物の組成や樹脂層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜10000mJ/cm
2である。また、放射線には、酸を発生させるために、酸発生剤(C)を活性化させる光線が含まれる。
露光後は、露光により発生した酸が、露光部分の樹脂層のアルカリ溶解性を変化させる。
【0112】
次いで、現像工程では、例えば所定のアルカリ性水溶液を現像液として用いて、不要な部分を溶解、除去して所定の樹脂パターンを得る。
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性アルコール系有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0113】
現像時間は、本発明に係る感光性樹脂組成物の組成や樹脂層の膜厚等によっても異なるが、通常1〜30分間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0114】
現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、エアーガンやオーブン等を用いて乾燥させる。このようにして、樹脂パターンを形成することができる。
【0115】
≪細胞培養用プレートの作製方法≫
本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法は、本発明に係る感光性樹脂組成物を使用することを含むものである。本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法において、本発明に係る感光性樹脂組成物は、後述の細胞接着阻害材料層、温度応答性材料層、又はこれらの組み合わせを所望のパターンに形成するために用いられる樹脂パターンの形成に用いられる。
【0116】
本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法は、具体的には、本発明に係る感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥させて樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、上記樹脂層を選択的に露光する露光工程と、露光後の上記樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程とを含む。樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程並びに基板は、上記<基板上に樹脂パターンを形成するための方法>で説明したとおりである。
【0117】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法をより具体的に説明する。
<細胞培養用プレートの作製方法1>
図1は、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法の一実施形態(細胞培養用プレートの作製方法1)を示す横断面図である。
図1を参照して、細胞培養用プレートの作製方法1について説明する。
【0118】
[樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程]
まず、上記の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程により、
図1(a)に示すとおり、基板1上の一部に樹脂パターン2を設ける。
【0119】
[細胞接着阻害材料層形成工程]
次に、
図1(b)に示すとおり、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に細胞接着阻害材料層3を形成する(細胞接着阻害材料層形成工程)。細胞接着阻害材料層3は、細胞接着阻害材料を含む。
【0120】
本発明に用いられる細胞接着阻害材料は、細胞非接着性を有するものである。このような細胞接着阻害材料としては、細胞と接着することを阻害する細胞接着阻害性を有するものであれば特に制限はない。細胞接着阻害材料としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等のポリエチレングリコール系材料;デシルメトキシシラン重合体等の長鎖アルキル系材料;ポリフルオロアルキルシラン等のフッ素系材料;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド等の親水性材料;MPCポリマー等のリン脂質材料;BSAタンパク等が挙げられる。
【0121】
本発明において、細胞接着阻害材料層3の形成は、例えば、下記のようにして行うことができる。即ち、細胞接着阻害材料と、これを溶解しうる溶剤(アルコール系有機溶剤、水等)とを含む溶液を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に塗布することにより、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に細胞接着阻害材料層3を形成することができる。
【0122】
また、細胞接着阻害材料がポリアクリルアミド等の、光重合反応により形成することのできるポリマーである場合、このようなポリマーの原料モノマーと、光重合開始剤と、これらを溶解しうる溶剤(アルコール系有機溶剤、水等)とを含む溶液を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に塗布した後、これに全面光を照射して、光重合反応を起こさせることにより、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に細胞接着阻害材料層3を形成することができる。ここで使用可能な光重合開始剤としては、例えば、水溶性カンファーキノン等が挙げられる。照射する光としては、例えば、波長150〜600nm、照度1〜100mW/cm
2の紫外光又は可視光を使用することができる。
【0123】
本発明に係る細胞培養用プレートにおいて、細胞接着阻害材料に覆われてなる領域同士の間の幅は、1μm〜500μmであることが好ましく、2〜200μmであることが好ましい。また、本発明に係る細胞培養用プレートにおいて、細胞接着阻害材料層の乾燥時の厚さは、0.01〜15μmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜1.5μmである。
【0124】
[樹脂パターン剥離工程]
その後、樹脂パターン2を剥離し(樹脂パターン剥離工程)、
図1(c)に示すとおり、基板1と、基板1上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層3とを備える細胞培養用プレートを得る。樹脂パターン2の剥離は、定法に従って剥離液等を用いて行われる。剥離方法は、特に限定されず、浸漬法、スプレー法、シャワー法、パドル法等を用いることができる。剥離液としては、例えば3〜15質量%の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエタノールアミン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。剥離処理時間は、特に限定されないが、例えば1〜120分間程度である。なお、剥離液は、25〜60℃程度に加温してもよい。
【0125】
<細胞培養用プレートの作製方法2>
図2は、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法の別の実施形態(細胞培養用プレートの作製方法2)を示す横断面図である。
図2を参照して、細胞培養用プレートの作製方法2について説明する。
【0126】
[樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程]
まず、<細胞培養用プレートの作製方法1>で説明したのと同様に、上記の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程により、
図2(a)に示すとおり、基板1上の一部に樹脂パターン2を設ける。
【0127】
[温度応答性材料層形成工程]
次に、
図2(b)に示すとおり、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる温度応答性材料層4を形成する(温度応答性材料層形成工程)。
【0128】
本発明に用いられる温度応答性材料としては、細胞接着性を有し、かつ、温度により細胞非接着性を発現し得るものであれば特に限定されるものではない。本発明において、温度応答性材料は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
本発明に用いられる温度応答性材料の細胞接着の度合いの変化としては、少なくとも、細胞接着性を有する状態から細胞非接着性を有する状態に変化することができるものであれば特に限定されるものではなく、可逆的に変化するものであってもよく、非可逆的に変化するものであってもよい。
【0130】
本発明に用いられる温度応答性材料としては、温度変化により、細胞接着の度合いが所望量変化するものであれば特に限定されるものではない。本発明において、温度応答性材料が細胞接着性を発揮する温度は、10℃〜45℃の範囲内であることが好ましく、中でも、33℃〜40℃の範囲内であることが好ましい。上記温度が上述の範囲内であることにより、細胞を安定的に培養することができるからである。
【0131】
本発明において、温度応答性材料が細胞非接着性を発現する温度は、1℃〜36℃の範囲内であることが好ましく、中でも、4℃〜32℃の範囲内であることが好ましい。上記温度が上述の範囲内であることにより、細胞へのダメージを減らすことができるからである。
【0132】
本発明に用いられる温度応答性材料としては、具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド等を挙げることができ、中でもPIPAAm、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドを好ましく用いることができ、特に、PIPAAmを好ましく用いることができる。細胞を好適な培養条件で培養でき、細胞の活性を低下させる等の影響の少ない温度条件で細胞非接着性を発現するものであるため、細胞を安定的に形成し、剥離、回収、転写することができるからである。本発明において、温度応答性材料は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
本発明に用いられる温度応答性材料層4は、温度に応じて、細胞接着性を発現している状態から、細胞非接着性を発現している状態に細胞接着の度合いが変化し得るものである。
ここで、温度応答性材料層4が細胞接着性を発現しているとは、温度応答性材料層4上で、細胞が接着、伸展しやすく、細胞接着伸展率が高い状態であることをいうものである。本発明において、このような細胞接着伸展率が高い状態としては、具体的には、細胞接着伸展率が60%以上である状態とすることができる。本発明においては、中でも、80%以上であることが好ましい。効率的に細胞を培養し、細胞シート又は細胞パターンを形成させることができるからである。
【0134】
なお、本発明における細胞接着伸展率は、播種密度が4000cells/cm
2以上30000cells/cm
2未満の範囲内でウシ血管内皮細胞を播種し、37℃インキュベーター内(CO
2濃度5体積%)に保管し、14.5時間培養した時点で接着伸展している細胞の割合({(接着している細胞数)/(播種した細胞数)}×100(%))を表すものである。また、上記細胞の播種は、10質量%FBS(血清)入りDMEM培地に懸濁させて細胞培養用基板上に播種し、その後、上記細胞ができるだけ均一に分布するよう、上記細胞が播種された細胞培養用基板をゆっくりと振とうすることにより行うものである。更に、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。また、細胞接着伸展率の測定個所としては、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いて測定を行うものである。
【0135】
また、温度応答性材料層4が細胞非接着性を発現している場合には、温度応答性材料層4上で細胞が接着、伸展しにくく、細胞接着伸展率が低い状態であることをいうものである。本発明において、このような細胞接着伸展率が低い状態としては、具体的には、上記細胞接着伸展率が5%以下である状態とすることができる。本発明においては、中でも2%以下であることが好ましい。したがって、温度応答性材料層4に細胞を播種すると、細胞接着性を発現している際には細胞が温度応答性材料層4に接着するが、細胞非接着性を発現している際には細胞が温度応答性材料層4に接着することを阻害されるため、温度応答性材料層4に接着していた細胞を剥離しやすいものとすることができる。
【0136】
また、温度応答性材料層4の露出した表面の幅、即ち、細胞シート又は細胞パターンの幅となる幅としては、上記細胞が接着・培養可能なものであれば特に限定されるものではないが、マイクロパターン、即ち、ミクロン(μm)スケールの細胞パターンを作製する場合には、15μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。なお、本願における各構成の幅、高さ等については、特に断りがない限り乾燥時のものである。
【0137】
温度応答性材料層4の膜厚としては、温度応答性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、中でも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0138】
温度応答性材料層4は、上記温度応答性材料を含むものであるが、刺激応答性を阻害しない範囲内において、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、増感剤等の添加剤や、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレンや、ポリエチレングリコール、MPCポリマー(商品名)等の両性イオン高分子等のバインダー樹脂を含むものであってもよい。
【0139】
また、温度応答性材料層4は、必要に応じて、表面処理が施されているものとすることができる。表面処理の種類により、種々の機能を付与することができるからである。本発明における表面処理としては、例えば、シラン処理、即ち、温度応答性材料層4の表面がシラン処理されているものを挙げることができる。このようなシラン処理としては、例えば、シランカップリング剤の塗布が挙げられる。
【0140】
本発明において、シラン処理に用いられるシランカップリング剤としてはメタクリロイルオキシシラン、ビニルシラン、アミノシラン、エポキシシラン等を挙げることができ、中でも、メタクリロイルオキシシランを好ましく用いることができる。
【0141】
本発明におけるシランカップリング剤の塗布方法としては、上記シランカップリング剤を溶解しうるアルコール系有機溶剤を使用して溶解させ、これを慣用の塗布方法、例えば、スピンナー法、ダイコート法、浸漬法、グラビア印刷法、CVD(化学蒸着法)等により温度応答性材料層4を塗布する方法を挙げることができる。例えば、スピンナー法で行う場合、条件は、700rpm〜2000rpmで、3秒〜20秒程度とすることができる。
【0142】
なお、表面をシラン処理した温度応答性材料層4において、シラン処理層は温度応答性材料と一体又は区別不能な状態となっており、別個独立したそれぞれの層を形成しているのではないと考えられる。このため、本願においては、温度応答性材料層という場合には、シラン処理を施したものを含めて言う場合がある。なお、これらは理論又は仮定であって、本発明を限定するものではない。
【0143】
このようなポリマー被覆量又はシラン処理被覆量は、例えば被覆部又は非被覆部の染色や蛍光物質の染色による分析、更に接触角測定等による表面分析、X線光電子分光法測定(XPS)又は飛行時間二次イオン質量分析計(TOF−SIMS)を単独又は併用して求めることができる。
【0144】
本発明において、温度応答性材料層4の形成は、例えば、下記のようにして行うことができる。即ち、上記温度応答性材料又は上記温度応答性材料を形成可能なモノマー成分等を含む温度応答性材料組成物を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に塗布することにより、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に温度応答性材料層4を形成することができる。
【0145】
[樹脂パターン剥離工程]
その後、樹脂パターン2を剥離し(樹脂パターン剥離工程)、
図2(c)に示すとおり、基板1と、基板1上の一部に設けられた温度応答性材料層4とを備える細胞培養用プレートを得る。樹脂パターン剥離工程の詳細は、<細胞培養用プレートの作製方法1>で説明したとおりである。
【0146】
<細胞培養用プレートの作製方法3>
図3は、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法の更に別の実施形態(細胞培養用プレートの作製方法3)を示す横断面図である。
図3を参照して、細胞培養用プレートの作製方法3について説明する。
【0147】
[樹脂層形成工程、露光工程、現像工程、細胞接着阻害材料層形成工程、及び樹脂パターン剥離工程]
まず、<細胞培養用プレートの作製方法1>で説明したのと同様に、上記の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程により、
図3(a)に示すとおり、基板1上の一部に樹脂パターン2を設け、次に、上記の細胞接着阻害材料層形成工程により、
図3(b)に示すとおり、基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に細胞接着阻害材料層3を形成し、その後、上記の樹脂パターン剥離工程により、
図3(c)に示すとおり、基板1上の一部に細胞接着阻害材料層3を設ける。
【0148】
[樹脂層積層工程]
ついで、
図3(d)に示すとおり、細胞接着阻害材料層3上に、本発明に係る感光性樹脂組成物からなる樹脂層5を積層する(樹脂層積層)。
本発明において、樹脂層5の形成は、例えば、下記のようにして行うことができる。即ち、一部に細胞接着阻害材料層3が設けられた基板1の全面に、本発明に係る感光性樹脂組成物の塗膜を形成した後、細胞接着阻害材料層3のパターンに合わせて上記感光性樹脂組成物が残るように、フォトリソ法によりパターンニングする方法や、本発明に係る感光性樹脂組成物を、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等のパターン印刷法を用いて、細胞接着阻害材料層3上に塗布する方法を用いることができる。
【0149】
[温度応答性材料層形成工程]
次に、<細胞培養用プレートの作製方法2>で説明したのと同様に、上記の温度応答性材料層形成工程により、
図3(e)に示すとおり、基板1上の細胞接着阻害材料層3が設けられていない部分に、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる温度応答性材料層4を形成する。温度応答性材料層形成工程の詳細は、<細胞培養用プレートの作製方法2>で説明したとおりである。
【0150】
[樹脂層剥離工程]
その後、樹脂層5を剥離し(樹脂層剥離工程)、
図2(f)に示すとおり、基板1と、基板1上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層3と、基板1上の細胞接着阻害材料層3が設けられていない部分に設けられた温度応答性材料層4とを備える細胞培養用プレートを得る。樹脂層剥離工程における剥離方法、剥離液、剥離条件等は、<細胞培養用プレートの作製方法1>の樹脂パターン剥離工程で説明したのと同様である。
【0151】
≪細胞培養用プレート≫
本発明に係る細胞培養用プレートは、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法で作製されたものである。
<細胞培養用プレート1>
例えば、細胞培養用プレートの作製方法1で作製された細胞培養用プレートは、基板と、この基板上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層とを備える。基板上において、細胞接着阻害材料層は、パターン状に配置されている。細胞接着阻害材料層のパターンは、細胞培養用プレートの作製方法1の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程を経て形成された樹脂パターンが設けられなかった部分の形状に対応する。
【0152】
<細胞培養用プレート2>
また、細胞培養用プレートの作製方法2で作製された細胞培養用プレートは、基板と、この基板上の一部に設けられた温度応答性材料層とを備え、この温度応答性材料層は、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる。基板上において、温度応答性材料層は、パターン状に配置されている。温度応答性材料層のパターンは、細胞培養用プレートの作製方法2の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程を経て形成された樹脂パターンが設けられなかった部分の形状に対応する。
【0153】
<細胞培養用プレート3>
また、細胞培養用プレートの作製方法3で作製された細胞培養用プレートは、基板と、この基板上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層と、上記基板上の上記細胞接着阻害材料層が設けられていない部分に設けられた温度応答性材料層とを備え、この温度応答性材料層は、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる。基板上において、細胞接着阻害材料層及び温度応答性材料層は、パターン状に配置されている。細胞接着阻害材料層のパターンは、細胞培養用プレートの作製方法3の樹脂層形成工程、露光工程、及び現像工程を経て形成された樹脂パターンが設けられなかった部分の形状に対応し、温度応答性材料層のパターンは、この樹脂パターンが設けられた部分の形状に対応する。
【0154】
≪細胞培養方法≫
本発明に係る細胞培養方法は、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法で作製された細胞培養用プレート上で細胞を培養する細胞培養工程を含むものである。より具体的には、上記細胞培養用プレート上に細胞を播種して、培養に適した温度条件下にてインキュベートすることで細胞を培養することができる。
【0155】
本発明に係る細胞培養方法により、種々の細胞、例えば、生体内の各組織及び臓器を構成する上皮細胞及び内皮細胞;収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、及び心筋細胞;神経系を構成するニューロン及びグリア細胞;繊維芽細胞;生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞、及び脂肪細胞;種々の組織に存在する幹細胞並びに骨髄細胞及びES細胞等の、分化能を有する細胞を培養することができる。
【0156】
本発明に係る細胞培養方法において、細胞を播種する方法としては、本発明に係る細胞培養用プレート上に均一に細胞を播種することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な播種方法を用いることができる。例えば、細胞を培地中に懸濁させた状態で、細胞培養用プレート上に播種する方法を挙げることができる。
【0157】
本発明に係る細胞培養方法において、培養温度は、用いる細胞の培養に適した温度であれば特に限定されるものではない。例えば、温度応答性材料層を備えた細胞培養用プレートを用いる場合、培養温度としては、温度応答性材料が疎水性から親水性に変化する臨界溶解温度より高い温度が挙げられる。
【0158】
上記細胞培養方法において用いられる細胞培養用プレートとしては、例えば、細胞培養用プレート1、2、及び3が挙げられる。細胞培養用プレート1を用いた場合、細胞は、基板上の細胞接着阻害材料層が形成されていない部分にのみ接着し、細胞接着阻害材料層には接着しない。また、細胞培養用プレート2を用い、温度応答性材料が疎水性から親水性に変化する臨界溶解温度より高い温度で培養を行った場合、細胞は、温度応答性材料層にも、基板上の温度応答性材料層が形成されていない部分にも接着する。なお、温度応答性材料層に接着した細胞は、細胞培養用プレート2の温度を、上記臨界溶解温度又はそれより低い温度に変化させることにより、温度応答性材料層から剥離させることができる。また、細胞培養用プレート3を用い、上記臨界溶解温度より高い温度で培養を行った場合、細胞は、温度応答性材料層にのみ接着し、細胞接着阻害材料層には接着しない。このように、細胞培養用プレート1又は3を用いた場合には、基板上で細胞をパターン状に培養することができる。
【0159】
≪細胞シート作製方法≫
本発明に係る細胞シート作製方法は、本発明に係る細胞培養用プレートの作製方法で作製された細胞培養用プレートであって、細胞接着性を有し、かつ、温度変化により細胞非接着性を発現し得る温度応答性材料からなる温度応答性材料層を備える細胞培養用プレート上で、温度応答性材料が疎水性から親水性に変化する臨界溶解温度より高い温度で細胞を培養する細胞培養工程と、上記細胞培養用プレートの温度を上記臨界溶解温度又はそれより低い温度に変化させることにより、細胞を温度応答性材料層から剥離させて、細胞シートを回収する回収工程とを含むものである。上記細胞培養用プレートとしては、例えば、細胞培養用プレート2及び3を用いることができる。
【0160】
細胞培養工程において、細胞培養は、例えば、上記≪細胞培養方法≫に記載したのと同様にして行うことができる。
【0161】
回収工程において、温度応答性材料層から剥離させた細胞シートは、公知の方法により回収することができる。例えば、細胞シート上にコラーゲンゲル膜、セルロース膜、PVDF膜、パーチメント紙、ゼラチン膜等の細胞回収層を載せ、細胞シートと細胞回収層とを接触させることにより、細胞シートを細胞回収層に転写することで、細胞シートを回収することができる。
【0162】
なお、細胞回収層としてコラーゲンゲル膜、セルロース膜、PVDF膜、ナイロンメッシュ、又はパーチメント紙を用いた場合、細胞回収層から細胞シートを剥離する方法として、細胞回収層に水を滴下し吸湿させることにより、細胞回収層と細胞シートとの間の吸着力を低下させる方法を用いることができる。また、細胞回収層としてゼラチン膜を用いた場合、ゼラチン膜から細胞シートを剥離する方法として、細胞シートが転写されたゼラチン膜を培養温度に保温した状態にする方法を用いることができる。ゼラチン膜は培養に適した温度付近、具体的には33℃〜40℃の範囲内に温めることにより溶解し、細胞シートから除去することができる。
【0163】
≪細胞シート≫
本発明に係る細胞シートは、本発明に係る細胞シート作製方法で作製されたものである。こうして作製された細胞シートは、所望する特定の形状を有するもの(細胞パターン)であり、かつ、表面の接着因子が損なわれていないことに加えて、細胞培養面に接した部分が均一な品質を有することから、再生医療等への利用に適したものである。また、細胞シートを利用することでバイオセンサー等の検出デバイスへの応用へも展開できる。
【実施例】
【0164】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1、比較例1、2>
表1に記載の処方(単位は質量部)に従って、アルカリ可溶性樹脂、キノンジアジド基含有化合物、及び溶剤を混合して、実施例1並びに比較例1及び2の感光性樹脂組成物を調製した。
表1における各成分の詳細は下記のとおりである。
【0165】
アルカリ可溶性樹脂A:m−クレゾールとp−クレゾールとをm−クレゾール/p−クレゾール=60/40(質量比)で混合し、ホルマリンを加えて常法により付加縮合して得たクレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量16300)
キノンジアジド基含有化合物A:ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン(1モル)と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.3モル)との縮合物(ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル)
キノンジアジド基含有化合物B:2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(1モル)と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2モル)との縮合物(2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル)
溶剤A:1−ブトキシ−2−プロパノール
溶剤B:乳酸エチルと酢酸エチルとの混合溶剤(質量混合比9:1)
溶剤C:乳酸エチル
【0166】
【表1】
【0167】
<ポリスチレンディッシュの溶剤耐性の評価>
実施例1並びに比較例1及び2で用いた各溶剤30gを別々のポリスチレンディッシュ(電子線滅菌済、直径8cm、8.73g)に入れた。30分経過後、溶剤を除去し、ポリスチレンディッシュ表面の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
A:ポリスチレンディッシュ表面に変化は見られなかった。
B:ポリスチレンディッシュ表面の一部又は全体が白濁した。
【0168】
<不揮発分析>
実施例1並びに比較例1及び2で用いた各溶剤500gに上記と同様のポリスチレンディッシュを浸漬した。30分経過後、溶剤からポリスチレンディッシュを取り出し、溶剤中の不揮発分の質量を測定することで、溶剤中に溶け出したポリスチレンディッシュ由来の成分の濃度(ppm、質量基準)を求めた。結果を表2に示す。
【0169】
<感光性樹脂組成物の感度の評価>
実施例1並びに比較例1及び2の感光性樹脂組成物を、上記と同様のポリスチレンディッシュ上にスピンコーターで塗布し、80℃で1時間加熱(プレベーク)し、膜厚2μmの樹脂層を得た。次いで、この樹脂層に対して、ghi線を用いた平行露光装置(MAT2501、伯東社製)により、線幅6、8、10、及び12μmのラインパターンが形成されたマスクを介して紫外線を照射した後、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに65秒間浸漬し揺動することにより、露光部分を溶解除去し、ラインアンドスペースパターンを形成した。良好なラインアンドスペースパターンが形成されるのに必要な紫外線照射量を求め、感光性樹脂組成物の感度とした。結果を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
<ポリスチレンディッシュ表面のAFM解析>
ラインパターンが形成されたマスクを介さずに紫外線を照射した以外は、上記<感光性樹脂組成物の感度の評価>と同様にして、感光性樹脂組成物の塗布、感光、及び現像を行って、感光性樹脂組成物が除去されたポリスチレンディッシュを得た。このポリスチレンディッシュ表面の粗さ及び状態をAFM解析により測定した。なお、対照実験として、未処理のポリスチレンディッシュ及び感光性樹脂組成物の塗布はせずに現像処理のみを行ったポリスチレンディッシュについてもAFM解析を行った。結果を表3に示す。
【0172】
【表3】
【0173】
<細胞パターンの形成>
基板と、この基板上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層とを備える細胞培養用プレートを得、この細胞培養用プレート上で細胞を培養して、細胞パターンを形成させた。この細胞培養用プレートの作製は、
図1に示すとおりに行った。
【0174】
実施例1又は比較例1の感光性樹脂組成物を、基板1、即ち、上記と同様のポリスチレンディッシュ上にスピンコーターで塗布し、80℃で1時間加熱(プレベーク)し、膜厚2μmの樹脂層を得た。次いで、この樹脂層に対して、マスクアライナー露光装置(BA100、ナノテック製)によりフォトマスクを通して紫外線を照射した後、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに65秒間浸漬し揺動することにより、露光部分を溶解除去し、基板1上の一部に樹脂パターン2を設けた。なお、樹脂パターンの形状としては、線幅100μmのラインアンドスペースパターン又は一辺100μmの正方形パターンを用いた。
【0175】
基板1上の樹脂パターン2が設けられていない部分に、アクリルアミド20質量部、重合開始剤である水溶性カンファーキノン1質量部、及び水79質量部からなる溶液を塗布し、ピーク波長470nm、照度16000LXの可視光を照射して、細胞接着阻害材料層3を形成させた。なお、可視光の照射は、研究用LED光源システム(Panasonic製)を用いて、青色LED光源により行った。
【0176】
ついで、樹脂パターン2を、剥離液として2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを用いて剥離した。これにより、基板1と、基板1上の一部に設けられた細胞接着阻害材料層3とを備える細胞培養用プレートを得た。
【0177】
このようにして得た細胞培養用プレートに、10質量%FBS(血清)入りDMEM培地に懸濁させたウシ血管内皮細胞を播種し、37℃インキュベーター内(CO
2濃度5体積%)中で培養した。その結果、実施例1の感光性樹脂組成物を用いた場合には、細胞接着阻害材料層3が設けられていない部分、即ち、ポリスチレンが露出した部分に沿って、細胞が増殖し、細胞培養用プレート上で細胞パターンが形成された。一方、比較例1の感光性樹脂組成物を用いた場合には、細胞パターンが形成されなかった。