(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中央部に開口を有する枠体と、端部が前記枠体の前記開口の内側に突出するように前記枠体にそれぞれ離間して設置された導電性の複数のアースプレートと、複数の前記アースプレートのそれぞれの前記端部に設けられ、複数の前記アースプレートとそれぞれ電気的に接続される複数のアースピンと、複数の前記アースピンの先端がそれぞれ突出し、かつ複数の前記アースピンとの間にそれぞれ隙間を有するように複数の前記アースピンをそれぞれ囲う複数の導電性のカバー部と、を有するマスクカバーを、遮光膜上にレジスト膜が形成された試料に対して、傾いた状態で上方から降下させ、前記複数のアースピンが前記試料の前記遮光膜に対して順に接するように、前記マスクカバーを前記試料に載置し、
複数の前記アースプレートを接地させて、前記試料上に荷電粒子ビームを照射することを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一態様に係るマスクカバー用アース機構、マスクカバー、荷電粒子ビーム描画装置、および荷電ビーム描画方法について説明する。
【0014】
まず、本発明の一態様に係るマスクカバー用アース機構およびマスクカバーについて、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係るマスクカバーを示す斜視図であり、
図2は、
図1の一点鎖線X−X´に沿った本発明に係るアース機構の断面図である。
【0015】
本発明の一態様に係るマスクカバー10は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である電子ビーム描画装置によって描画される試料の除電処理を行うものである。
図1に示すように、このマスクカバー10は、中央部に開口部を有する額縁形状の絶縁性の枠体11に、複数のアース機構12が備えられたものである。
【0016】
図2に示すように、各アース機構12は、例えば導電性ジルコニア等の導電体からなり、第1の端部にカバー部13を有するアースプレート14、およびアースピン15、を有するものである。なお、
図2において、マスクカバー10の枠体11は、点線にて表示されている。
【0017】
アースプレート14は、例えば、板状の導電体である。このアースプレート14には、アースプレート14を支持して描画中にアースを取る支持ピン14b、およびマスクカバー10を試料上に載置した際にこれらが電気的につながることを確認する接点14c、の2点の導電体が備えられている。
【0018】
アースプレート14は、後に詳述するアースピン15と、支持ピン14b、接点14cとを電気的に接続するために導電体である必要があるが、導電性を有するとともに低磁性材料からなるアースプレート14を適用することが好ましい。
【0019】
すなわち、マスクカバー10が搭載された試料の除電処理に伴って、アースプレート14には渦電流が発生する。この渦電流は磁界を発生させ、この磁界によって、試料に照射される電子ビーム等の荷電粒子ビームの軌道が曲げられてしまい、荷電粒子ビームの照射位置精度が劣化してしまう。そこで、アースプレート14として、導電性を有するとともに、例えばZr0
2−TiN、SiC、WC、TiC等の低磁性材料からなるアースプレート14を適用すると、渦電流によって発生する磁界の強度を低下させることができ、荷電粒子ビームの照射位置精度の劣化を抑制することができる。従って、アースプレート14として、低磁性材料からなるアースプレート14を適用することが好ましい。
【0020】
アースピン15は、例えば導電性ダイヤモンド等からなる導電体であって、アースプレート14の第1の端部に、アースプレート14と電気的に接続されるように設けられている。
【0021】
カバー部13は、例えばアースプレート14と一体的に形成された導電性を有するものであり、アースピン15の先端がカバー部13の下面から突出するとともに、アースピン15との間に隙間17を有し、アースピン15を囲うように、アースプレート14の第1の端部の下面に設けられている。
【0022】
アースピン15およびカバー部13の構成について言い換えると、カバー部13には、下面から所定の深さ位置に至るテーパ形状の開口部13aが設けられている。そして、アースピン15は、カバー部13の開口部13aに設けられている。さらに詳述すると、アースピン15は、アースピン15とカバー部13の開口部13a内面との間に隙間17が設けられるように、開口部13aに設けられているとともに、アースピン15の先端が、カバー部13の下面から下側に突出するように、開口部13aに設けられている。
【0023】
すなわち、上述のカバー部13は、アースピン15の先端を除く全周を囲い、かつアースピン15との間に隙間17が設けられるように、アースプレート14の第1の端部の下面に設けられている。
【0024】
アースプレート14の長手方向に対して平行な方向におけるカバー部13の下面の長さL1が2mm程度の場合において、カバー部13の開口部13aは、最大直径L2が例えば0.5mm程度、深さL3が例えば0.4mm程度に形成される。また、アースピン15の先端とカバー部13の下面との距離L4は、試料にマスクカバー10を搭載する際に、カバー部13の下面が試料に接触しない程度、例えば0.1mm程度であることが好ましい。
【0025】
パーティクルの飛散方向を
図2に示すようにθとしたとき、パーティクルの飛散は、θが小さいほど抑制される。ここで、θは、アースプレート14のカバー部13の長さL1と、カバー部13の下面からアースピン15の先端までの高さL4と、を用いて、θ=Tan
−1{L4/(L1/2)}のように表現される。この式から、L4が小さいほど、また、L1が大きいほど、θが小さくなり、パーティクルの飛散を抑制することができる。ただし、描画装置としての実用的な数値となると、L1=2mm、L4=0.1mm程度であることが望ましい。
【0026】
接点14cは、例えばアースプレート14と同一の材料からなる導電体であって、アースプレート14の第1の端部に対向する第2の端部の下面に接するように設けられている。
【0027】
支持ピン14bは、例えばTi−6Al−4V、Ti、SiC、Zr0
2−TiN、WC、TiC等からなる導電体であって、アースプレート14の第1の端部に対向する第2の端部、および接点14cを貫通するように設けられている。
【0028】
このようなアース機構12の各々は、
図1に示すように、アースピン15およびカバー部13が枠体11の開口の内側に突出するとともに、支持ピン14bおよび接点14cが枠体11の外部に突出し、アースプレート14の下面が枠体11の表面に接するように、枠体11に設置されている。
【0029】
次に、以上に説明したマスクカバー10を搭載した試料について説明する。なお、以下の説明においては、試料としてマスク基板20を例にとって説明する。
【0030】
図3は、本発明の一態様に係るマスクカバー10が搭載されたマスク基板20を示す上面図であり、
図4は、
図3の一点鎖線Y−Y´に沿ったマスク基板20の部分断面図である。
図3に示すように、マスク基板20は四角形状のものであり、
図4に示すように、マスク基板20は、ガラス基板21の表面上に、Cr膜等の遮光膜22、レジスト膜23がこの順に積層されたものである。
【0031】
図3に示すように、マスクカバー10は、枠体11がマスク基板20の周辺部を覆うように、マスク基板20に搭載されている。枠体11は、磁界による描画精度劣化を抑えるために、導電膜処理が施され、表面に導電膜が形成された低磁性材料から構成されることが好ましい。低磁性材料としては、例えばAlO
2、ZrO
2、SiC等を用いることができ、導電膜としては、TiNコート等を用いることができる。
図4に示すように、マスク基板20に搭載されたマスクカバー10の各アース機構12のアースピン15は、マスク基板20のレジスト膜23を貫通し、遮光膜22に接している。このとき、各アース機構12のカバー部13の下面は、レジスト膜23から上方に離間している。すなわち、マスクカバー10は、アースピン15が遮光膜22に接し、カバー部13の下面がレジスト膜23から上方に離間するように、マスク基板20に搭載されている。
【0032】
次に、以上に説明したマスクカバー10を搭載した試料に対して描画を行うための、本発明に係る荷電粒子ビーム描画装置について説明する。なお、以下に説明においては、荷電粒子ビーム描画装置の一例として、試料の一例であるマスク基板20に対して描画を行う電子ビーム描画装置を説明する。
【0033】
図5は、本発明に係る電子ビーム描画装置30の構造を模式的に示す図である。
図5に示す電子ビーム描画装置30は、マスク基板20に対して描画を行う描画チャンバ31、マスク基板20、マスクカバー10等の搬送対象物が載置される搬入出部32、大気状態と真空状態との切り替えが可能なロードロックチャンバ33、マスク基板20のアライメントを行うアライメントチャンバ34、マスクカバー10を内部に収納可能なマスクカバー収納チャンバ35、および真空搬送ロボット36aを内部に有する真空ロボットチャンバ36、を有する。
【0034】
搬入出部32は、搬送対象物を載置可能な複数の載置部32aを有する。この搬入出部32は、内部に、大気中において搬送対象物を搬送する大気搬送ロボット32bを有する。
【0035】
搬入出部32には、ロードロックチャンバ33が連通可能となっている。ロードロックチャンバ33内は、給排気によって大気化または真空化される。
【0036】
ロードロックチャンバ33には、真空ロボットチャンバ36が連通可能となるように設置されている。真空ロボットチャンバ36は、水平面における断面形状が略8角形のものであって、内部に、真空中において搬送対象物を搬送する真空搬送ロボット36aを有する。
【0037】
真空ロボットチャンバ36の8つの側面のうち、ロードロックチャンバ33が設置される側面に対して略垂直な一側面には、アライメントチャンバ34が連通可能となるように設置されている。また、真空ロボットチャンバ36の8つの側面のうち、アライメントチャンバ34がされる側面に対向する側面には、マスクカバー収納チャンバ35が連通可能となるように設置されている。
【0038】
アライメントチャンバ34は、搬入されるマスク基板20の位置ずれおよび回転ずれを検知し、マスク基板20の位置ずれおよび回転ずれを補正する処理、すなわち、アライメント処理を行う。
【0039】
マスクカバー収納チャンバ35は、内部にマスクカバー10を収納することができるとともに、マスク基板20に対してマスクカバー10を着脱することができる。
【0040】
また、マスク基板20に対して描画を行う描画チャンバ31は、真空ロボットチャンバ36の8つの側面のうち、ロードロックチャンバ33が設置される側面に対向する一側面に連通している。
【0041】
図6は、描画チャンバ31の構造を模式的に示す図である。
図6に示すように、描画チャンバ31は、描画室41、描画室41内に備えられ、マスク基板20が載置されるステージ42、および描画室41の上面に備えられ、ステージ42上に載置されたマスク基板20の所望の位置に電子ビーム43を照射する電子光学鏡筒44を有する。
【0042】
描画室41は、例えばステンレスまたはインバー等からなる略直方体状の筐体である。
【0043】
ステージ42は、描画室41内において、描画チャンバ31の設置面Sに対して実質的に水平な方向(以下、この方向をXY方向と称し、またXY方向を含む平面を水平面と称する)に移動することができるように備えられている。
【0044】
ステージ42には、マスク基板20を下方から支持する複数本のピン42aが備えられている。マスク基板20は、これらの複数のピン42a上に載置される。
【0045】
また、ステージ42には、接地された電極である板ばね42b、および板ばね42bを支持する支持体42cが備えられている。マスク基板20が複数のピン42a上に載置された際、マスク基板20に搭載されたマスクカバー10の各アース機構12の一部である支持ピン14bは、板ばね42bに接する。これにより、マスク基板20の帯電膜である遮光膜22(
図4)は、アースピン15、アースプレート14、支持ピン14bを介して板ばね42bに電気的に接続され、接地される。
【0046】
電子光学鏡筒44は、描画室41と同様の材料、例えばステンレスまたはインバー等からなる円筒であり、円筒内部には、上から順に、電子ビーム発生部45、電子ビーム成形部46、および電子ビーム偏向部47、が備えられている。
【0047】
電子ビーム発生部45は、電子ビーム43を出射する。この電子ビーム発生部45は、電子ビーム43を出射する電子銃45aを備える。
【0048】
電子ビーム成形部46は、電子ビーム発生部45から出射された電子ビーム43の水平面による断面形状を成形する。電子ビーム成形部46は、例えば長方形の穴を有する第1のアパーチャ46a、および第1のアパーチャ46aの下方に備えられ、矢印形状の穴を有する第2のアパーチャ46b、を有する。
【0049】
また、電子ビーム成形部46において、第1のアパーチャ46aの上方には、照明レンズ46cが備えられている。さらに、第1のアパーチャ46aと第2のアパーチャ46bとの間には、成形偏向器46dおよび投影レンズ46e、が備えられている。
【0050】
照明レンズ46cは、例えば、リング状のコイルの周囲が、リング中心方向に開口部を有する非磁性体で覆われた磁気レンズ(以下、スタンダードレンズと称する)であって、電子ビーム発生部45から出射された電子ビーム43を第1のアパーチャ46aの穴に照明する。
【0051】
投影レンズ46eも、照明レンズ46cと同様に、例えばスタンダードレンズである。この投影レンズ46cは、第1のアパーチャ46aの穴を通過した電子ビーム43を第2のアパーチャ46b上に投影する。
【0052】
成形偏向器46dは、第1のアパーチャ46aの穴を通過した電子ビーム43の第2のアパーチャ46bへの投影位置を制御する。
【0053】
電子ビーム偏向部47は、電子ビーム成形部46において成形された電子ビーム43が、マスク基板20上の所定の位置に照射されるように電子ビーム43の照射位置を制御する。電子ビーム偏向部47は、主対物偏向器47a、および主対物偏向器47aの位置に対して上方に離間した位置に備えられた副対物偏向器47bを有する。主対物偏向器47aは、電子ビーム43が照射されるサブフィールドの位置を決定する偏向器であり、副対物偏向器47bは、主対物偏向器47aにおいて決定されたサブフィールド内において、電子ビーム43が照射される照射位置を決定する偏向器である。
【0054】
さらに、電子ビーム偏向部47において、主対物偏向器47aの下方には、対物レンズ47cが設けられている。対物レンズ47cには、例えば、リング状のコイルの周囲が、下方に開口部を有する非磁性体で覆われた、スタンダードレンズより高屈折率を有する磁気レンズ(以下、イマルジョンレンズと称する)を用いることができる。
【0055】
なお、対物レンズ47cとして、上述のイマルジョンレンズを採用した場合、対物レンズ47cと、ステージ42上に載置されるマスク基板20と、の距離を近づけることができ、電子ビーム描画装置30の分解能を向上させることができる。しかし一方で、イマルジョンレンズと、ステージ42上に載置されるマスク基板20と、の距離が短いため、この間に他の機構を設けることができなくなる。本実施形態においては、対物レンズ47cとしてイマルジョンレンズを採用しているため、上方からステージ42にマスク基板20を押圧する機構、マスク基板20を接地させるアースブレード等のアース機構、をステージ42上に設けることができない。従って、マスク基板20は、マスクカバー10を搭載することによって接地され、ステージ42に設けられたピン42aによって下方から支持されることによって、ステージ42上に載置される。
【0056】
次に、本発明の一態様に係る荷電粒子ビーム描画方法について説明する。なお、以下に説明においては、荷電粒子ビーム描画方法の一例として、上述の電子ビーム描画装置30を用いて、試料の一例であるマスク基板20に対して描画する方法である電子ビーム描画方法を説明する。
【0057】
図7は、本発明の一態様に係る電子ビーム描画方法を説明するためのフローチャート図である。なお、マスク基板20に搭載されるマスクカバー10は、予めマスクカバー収納チャンバ35内に収納されているものとする。
【0058】
図7に示すように、まず、マスク基板20をマスク保管庫から取り出し、搬入出部32の載置部32aに載置する(S101)。
【0059】
続いて、搬入出部32の載置部32aに載置されたマスク基板20を、マスクカバー収納チャンバ35内に搬入する(S102)。具体的には、以下の通りである。
【0060】
まず、大気搬送ロボット32bを用いて、搬入出部32の載置部32aに載置されたマスク基板20を、ロードロックチャンバ33内に搬入する。次に、ロードロックチャンバ33内を真空化し、真空搬送ロボット36aを用いて、ロードロックチャンバ33内のマスク基板20を、アライメントチャンバ34内に搬入する。次に、アライメントチャンバ34内において、マスク基板20に対してアライメント処理を施し、アライメント処理が施されたマスク基板20を、真空搬送ロボット36aを用いて、マスクカバー収納チャンバ35内に搬入する。
【0061】
次に、マスク基板20に対して傾いた状態のマスクカバー10を、マスク基板20の上面に対して降下させ(S103)、マスク基板20に、マスクカバー10を搭載する(S104)。なお、マスク基板20にマスクカバー10が搭載された後、アース機構12のアースプレート14に設けられた接点14cを用いて、マスク基板20の遮光膜22とマスクカバー10のアースピン15との導通の確認を行ってもよい。
【0062】
以下に、マスクカバー10の搭載方法を、
図8および
図9を参照してより具体的に説明する。
図8および
図9の各図は、マスクカバー10の搭載方法を説明するための図である。なお、
図8および
図9の各図において、マスク基板20に対するマスクカバー10のサイズは、説明の都合上、実際よりも大きくしてある。
【0063】
まず、上述のように、マスク基板20に対して傾いた状態のマスクカバー10を、マスク基板10に対して降下させる(
図8(a))。傾いたマスクカバー10を降下させ続けると、複数個備えられたアース機構12のうちの一つのアース機構12(以下の説明において、このアース機構12を第1のアース機構12−1と称する。)のアースピン15のみが、マスク基板20に対して角度θ1だけ傾いた状態でレジスト膜23を貫通し、マスク基板20の遮光膜22に到達する(
図8(b))。
【0064】
なお、上述の角度θ1は、図示するマスクカバー10およびマスク基板20の断面において、マスク基板20に対して垂直な軸A1と、アースピン15の軸A2と、によって形成される角度、と定義するものとする。以下の説明において述べられる角度についても、同様に定義される。
【0065】
図8(b)に示される状態、すなわち第1のアース機構12−1のアースピン15のみがマスク基板20の遮光膜22に到達した状態から、さらにマスクカバー10を降下させる。すると、第1のアース機構12−1とは異なる位置に備えられたアース機構12(以下の説明において、このアース機構12を第2のアース機構12−2と称する。)のアースピン15が、マスク基板20に対して傾いた状態でレジスト膜23に到達する(
図9(a))。このとき、第1のアース機構12−1のアースピン15の角度は、θ1より小さい角度θ2となる。すなわち、第1のアース機構12−1のアースピン15は、マスク基板20に対して実質的に垂直な状態に近づく。
【0066】
さらにマスクカバー10を降下させると、第2のアース機構12−2のアースピン15が、レジスト膜23を貫通し、遮光膜22に到達する(
図9(b))。このとき、第1のアース機構12−1のアースピン15の角度は、θ2よりさらに小さい角度θ3=0°となる。そして、第2のアース機構12−2のアースピン15は、マスク基板20に対して垂直な角度に近づきながら、レジスト膜23を貫通し、最終的に、マスク基板20に対して実質的に垂直な状態で、遮光膜22に到達する。
【0067】
以上、
図8および
図9を参照して説明したように、マスクカバー10は、これに備えられた複数のアース機構12のアースピン15が、1本ずつ順に、マスク基板20に対して傾いた状態でレジスト膜23を貫通し、マスク基板20の遮光膜22に到達するように、マスク基板20に搭載される。このようにマスクカバー10を搭載することにより、傾いた状態でマスク基板20の遮光膜22に到達した各々のアースピン15は、その後にマスク基板20に対して実質的に垂直になる。従って、アースピン15の先端と遮光膜22との間に、レジスト膜23の不要物(アースピン15が貫通することによって除去されるレジスト膜23)が介在することが抑制される。
【0068】
これに対して、マスク基板20に対して傾いていない状態(マスク基板20に対して水平な状態)のマスクカバー10をマスク基板20に対して降下させると、マスクカバー10は、複数のアース機構12のアースピン15が、全て同時に垂直にレジスト膜23を貫通し、遮光膜22に到達するように、マスク基板20に搭載される。しがたって、遮光膜22に到達した各々のアースピン15は、その後に動くことはないため、アースピン15の先端と遮光膜22との間に、レジスト膜23の不要物が介在する。この場合、遮光膜22は接地されないため、マスク基板20の帯電は抑制されない。
【0069】
すなわち、マスク基板20にマスクカバー10を搭載した際に、アースピン15が遮光膜22に接する確率を高めるために、本実施形態においては、マスク基板20に対して傾いた状態のマスクカバー10をマスク基板20に対して降下させることにより、マスクカバー10をマスク基板20に搭載している。
【0070】
なお、本実施形態において、アースピン15をレジスト膜23に貫通させることによって発生するパーティクルは、アースピン15とカバー部13との隙間17に溜まる。
【0071】
再度
図7を参照する。上述のようにマスク基板20に対してマスクカバー10を搭載させた後、マスクカバー10が搭載されたマスク基板20を描画チャンバ31内に搬入する(S105)。搬入されたマスク基板20は、マスク基板20の上面を基準面としたときの所定の高さ位置において、
図6に示すように、ステージ42のピン42a上に載置される。このとき、マスクカバー10の支持ピン14bは、接地された板ばね42bに接した状態となるため、マスク基板20の遮光膜22は接地される。
【0072】
この後、マスク基板20に対して描画が行われる(S106)。マスク基板20に対する描画は、以下のように行われる。すなわち、まず、電子ビーム発生部45において電子ビーム43を出射すると、この電子ビーム43は、電子ビーム成形部46の照明レンズ46cによって、第1のアパーチャ46aの穴全体を照射するように集光される。第1のアパーチャ46aの穴を通過した電子ビーム43は、第1のアパーチャ46aの穴の形状に略等しい形に成形される。
【0073】
第1のアパーチャ46aの穴を通過した電子ビーム43は、成形偏向器46dによって、第2のアパーチャ46bの穴の一部を照射するように偏向されるとともに、投影レンズ46eによって、第2のアパーチャ46bの穴の一部を照射するように集光される。第2のアパーチャ46bの穴を通過した電子ビーム43は、例えば水平面による断面が四角形または三角形の形状となるように成形される。
【0074】
電子ビーム成形部46において成形された電子ビーム43は、電子ビーム偏向部47の副対物偏向器47bおよび主対物偏向器47aによって、マスク基板20上の所望の位置に向かって偏向されるとともに、対物レンズ47cによって所望の位置に集光される。
【0075】
このようにしてステージ42上に載置されたマスク基板20に対して描画を行う。なお、描画中、マスク基板20を載置するステージ42は、例えばXY方向に絶えず移動している。マスク基板20に照射される電子ビーム43は、このように絶えず移動するステージ42上に載置され、ステージ42とともに絶えず移動するマスク基板20を追従して、マスク基板20上の所定の位置を照射する。
【0076】
マスク基板20に対する描画が終了すると、真空搬送ロボット36aを用いて、マスクカバー10が搭載されたマスク基板20を、マスクカバー収納チャンバ35内に搬入し(S107)、マスクカバー収納チャンバ35内において、マスク基板20からマスクカバー10が外される(S108)。外されたマスクカバー10は、マスクカバー収納チャンバ35内に保管される。
【0077】
マスクカバー10が外されたマスク基板20は、真空搬送ロボット36aおよび大気搬送ロボット32bを用いて、ロードロックチャンバ33を通って搬入出部32の載置部32aに搬送される(S109)。
【0078】
このようにして、電子ビーム描画装置30は、マスク基板20に対して描画を行う。
【0079】
以上に説明したように、本発明の一態様に係るマスクカバー用アース機構、マスクカバー、荷電粒子ビーム描画装置、および荷電粒子ビーム描画方法によれば、各アース機構12のアースピン15とカバー部13との間に、隙間17が設けられているため、アースピン15をレジスト膜23に貫通させる際に生じるパーティクルは、アースピン15とカバー部13との隙間17に留められる。従って、マスク基板20に付着するパーティクル量を低減することができ、描画精度の劣化を抑えることができる。
【0080】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0081】
例えば、本発明は、電子ビーム描画装置に限らず、例えばイオンビーム照射装置などを含む、荷電粒子光学鏡筒を有する荷電粒子ビーム照射装置全てにおいて適用することができる。ここで荷電粒子光学鏡筒とは、試料に照射する荷電ビームの発生部、荷電ビーム発生部から出射された荷電粒子ビームを所望の形状に形成する荷電粒子ビーム成形部、および荷電粒子ビーム成形部において成形された荷電粒子ビームを所望の方向に偏向させる荷電粒子ビーム偏向部、を有するものである。