【実施例】
【0029】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0030】
本実施例は、蒸着材料が収容される材料収容部1(ルツボ)と、この材料収容部1に収容され加熱されて蒸発した前記蒸着材料を一時的に貯留させる材料貯留部2及びこの材料貯留部2の蒸着材料を対向する基板6に向かって噴出させる噴出口3を有する複数の噴出口部4とを備えた蒸発源装置であって、複数の噴出口部4毎に前記噴出口3を前記基板6に対して移動させる噴出口移動機構と、前記基板6上に形成された薄膜の膜厚分布を測定しこの膜厚分布に応じて前記噴出口移動機構を制御する移動制御機構とを備え、蒸着中に前記基板6上に成膜される薄膜の膜厚分布を調整し得るように構成したものである。
【0031】
具体的には、
図1に図示したように、例えば有機材料を真空蒸着する蒸着装置の真空槽内に設けられるものである。
図1では、蒸発源装置を複数並設し、基板6上に順次成膜を行うように構成している。また、各蒸発源装置の各噴出口3は基板搬送方向と直交するように並設配置する。
図1中、符号24は仕切り板である。
【0032】
また、本実施例では、蒸着速度モニタ8で測定した蒸着速度に応じて蒸発速度制御装置により蒸着材料の加熱温度(材料収容部1の温度)を制御するように構成し、また、膜厚センサ9(例えば光学式)で測定した基板6上に形成された薄膜の膜厚分布に応じて噴出口移動制御装置により噴出口移動機構を制御するように構成している。なお、蒸着速度モニタ8は、各噴出口3の移動に伴って適切な位置に移動するように構成してある。
【0033】
また、本実施例は、
図2に図示したように、複数の噴出口部4毎に隣り合う材料貯留部2同士を連通状態で相対移動自在に連結し、複数の噴出口部4毎に噴出口3を基板6に対して接離動させると共に、複数の噴出口部4毎に互いに接離動させて、基板6と噴出口3との間隔及び複数の噴出口部4毎の間隔を調整するように前記噴出口移動機構を構成している。なお、下端位置の噴出口部4の材料貯留部2は材料収容部1と連通するように直接連結されている。
【0034】
具体的には、隣接する一の噴出口部4の材料貯留部2同士を夫々連通する伸縮部材7(ベローズ)により気密状態で連結して、噴出口3がライン状に一列に並ぶようにし、各噴出口部4を夫々ボールネジ機構により個別に移動制御可能に構成している。本実施例においては、噴出口部4は金属製の枠状容器28及び有底枠状容器29の基板6との対向面に円筒ノズル状の噴出口3を設けて構成されている。
【0035】
また、ボールネジ機構は、ボールネジ10と、ボールネジ10を駆動するモータ11・12と、ボールネジ10と螺合連結しボールネジ10の回転に応じて移動するブロック13とで構成されている。なお、噴出口部4側のブロックの図示は省略している。本実施例においては、噴出口部4を基板6に対して接離動させるためのモータ11を、基板6から所定の距離となるように真空槽内に固定し、噴出口部4同士を接離動させるためのモータ12及びブロック13は基板6の被成膜面と平行方向にガイドされるように構成している。また、下端位置のモータ12は真空槽内に固定している。
【0036】
従って、本実施例は、ボールネジ機構により夫々の噴出口部4、即ち、噴出口3の位置を自在に移動させることが可能となり、綿密に基板6上に形成される薄膜の膜厚分布を調整可能となる。
【0037】
下端位置に設けられた材料収容部1で加熱され蒸発した蒸着材料は、各噴出口部4の蒸着材料貯留部2に順次満たされていき、各噴出口3から噴射されることになるため、下端側の噴出口3側からの噴出量が多く、上端側の噴出口3側からの噴出量が少なくなりがちであるが、例えば、材料収容部1から遠い上端側の噴出口3側ほど噴出口3と基板6との間隔が小さくなるように各噴出口部4を移動制御することで、膜厚分布を均一にすることが可能となる。また、一度設定した各噴出口3の位置の微調整も容易に行える。
【0038】
また、本実施例は、基板6上に形成された薄膜の膜厚分布を測定し、この膜厚分布に応じて前記噴出口移動機構を制御して、所定の噴出口部4を移動させ所定の噴出口3の位置を調整する移動制御機構としての噴出口位置制御装置を設けている。
【0039】
従って、基板6上に形成された薄膜の膜厚分布を成膜後に即時(例えば、次の基板6への蒸着開始前に)測定し、測定された膜厚をフィードバックすることで、リアルタイムで精度良く膜厚分布を調整することも可能となる。
【0040】
なお、上記構成に限らず、以下に説明する
図3〜11に図示したような構成としても良い。具体的には、モータ11を
図3〜7に示すように、真空槽の壁面26に設けたベローズ27等の伸縮部材を介して、真空槽の外に配置することができる。
【0041】
図3は、材料貯留部2を一端部側に材料収容部1が連結される一つの金属製の箱状の容器5内に連続的に設け、即ち、複数並設される噴出口部4で材料貯留部2を共有する構成とし、この容器5の基板6との対向面に円筒ノズル状の噴出口3を複数並設し、容器5全体を基板6の被成膜面に平行な面と交差するように傾斜させることで、膜厚分布を調整するように噴出口移動機構を構成した例である。
【0042】
具体的には、容器5の長手方向両端部の底面若しくは側面に、前記ボールネジ機構のブロック(図示省略)を設け、モータ11側を固定しブロックの移動に伴い容器5側が移動するように構成している。
【0043】
従って、容器5両端部のブロックのモータ11からの離反度合いを適宜設定することで適宜な角度θで傾斜させて、基板6の被成膜面に対し、容器5の一端側(材料収容部1に遠い側)を近接させ、他端側(材料収容部1に近い側)を離反させることが可能となる。
【0044】
なお、基板6は、蒸着時に、
図2,3に図示したように被成膜面が横向きとなるように搬送しても良いし、
図4に図示したように被成膜面が下向きとなるように搬送しても良い。
図4中、符号14は材料収容部1と容器5の開口部同士を連通状態で連結する連結体である。
【0045】
その余は
図2の例と同様である。
【0046】
図5,6は、複数の噴出口部4毎に隣り合う材料貯留部2同士を連通状態で相対移動自在に連結し、複数の噴出口部4毎に噴出口3を基板6に対して接離動させて、基板6と噴出口3との間隔を調整するように噴出口移動機構を構成した例である。
【0047】
具体的には、
図5,6は、上、下及び中央の噴出口部4を夫々ユニット化したものであり、3つの噴出口部4を容器5に一体化して夫々構成される上ユニット及び下ユニットは、上下端部側の噴出口3ほど基板6に近接するように、傾斜した状態で中央ユニットに夫々伸縮部材7により連結され、中央ユニットに材料収容部1を連結して蒸発した蒸着材料が上下に拡散するように構成している。
【0048】
また、中央ユニットは真空槽の壁面26に立設した支持体17により支持され、上ユニット及び下ユニットはベローズ27を介して真空槽の外に設けたボールネジ機構により基板6に対し接離動(若しくは傾斜)するように構成している。従って、各ボールネジ機構により、上ユニット及び下ユニットを個別に基板6の被成膜面に近接させることが可能となる。
【0049】
また、
図5は、材料収容部1を1つ、
図6は材料収容部1を2つ設けた例であり、中央ユニットが、一の噴出口部4により構成されるか3つの噴出口部4により構成されるかの違い以外は同様である。また、
図5,6中、符号16は、中央ユニットを構成する容器5と材料収容部1の開口部同士を連通状態で連結する連結体である。
【0050】
その余は
図2の例と同様である。
【0051】
図7は、
図3の例において円筒ノズル状の噴出口3の傾斜角度を自在に設定できるように構成した例であり、容器5を所定の傾斜角度θに傾斜させた状態でも、円筒ノズル状の噴出口3の先端面を基板6の被成膜面と平行とすることができ、それだけ膜厚分布の調整が容易となる。
【0052】
その余は
図2の例と同様である。
【0053】
図8,9は、材料貯留部2を一端部側に材料収容部1が連結される一つの金属製の箱状の容器5内に連続的に設け、この容器5の基板6との対向面に円筒ノズル状の噴出口3を複数並設し、熱膨張を利用した熱アクチュエータ機構により容器5の一部を湾曲変形させることで、膜厚分布を調整するように噴出口移動機構を構成した例である。
【0054】
具体的には、容器5の基板6との対向面側及び反対面側に夫々噴出口移動機構としての電熱線18と電源19とで構成される電熱ヒータ20を設け、容器5の対向面側を反対面側より加熱して膨張させることで湾曲させ、所定の端部側を基板6の被成膜面から離反させるか(
図8参照)、容器5の反対面側を対向面側より加熱して膨張させることで湾曲させ、所定の端部側を基板6の被成膜面に近接させるか(
図9参照)することで、膜厚分布を調整するように構成している。
【0055】
その余は
図2の例と同様である。
【0056】
図10は、
図8,9において、噴出口部4毎に電熱ヒータ20を夫々設けて、各電熱ヒータ20を個別制御することにより、より微細な容器5の湾曲調整を行えるようにした例である。
【0057】
その余は
図2の例と同様である。
【0058】
図11は、
図3におけるボールネジ機構を金属製の支柱21及び電熱ヒータ20に置き換えたものであり、この金属製の支柱21の熱膨張を夫々電熱ヒータ20により調整することで、各支柱21の熱膨張による伸長度合いの差によって容器5の傾斜角度θを調整するように構成した例である。
図11中、符号25は支柱21が立設される固定体である。
【0059】
その余は
図2の例と同様である。
【0060】
図12は、
図1のように隣接する一の噴出口部4の材料貯留部2同士を夫々連通する伸縮部材7(ベローズ)により気密状態で連結し、各噴出口部4を金属製の支持部材22に立設した支柱23で夫々支持する構成とし、前記支持部材22にして各支柱23間部分を加熱する電熱ヒータ20を夫々設け、支持部材22にして各支柱23間部分を個別に加熱して伸長させることで、噴出口部4毎に互いに接離動させて、噴出口部4毎の間隔を調整するように前記噴出口移動機構を構成した例である。
【0061】
その余は
図2の例と同様である。
【0062】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。