【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
本発明のシリコン単結晶製造装置を用いてCZシリコン単結晶を製造した後、ウエーハ状に切り出し、該シリコン単結晶ウエーハについて面内の初期酸素濃度分布を調査した。
【0039】
まず、
図1のシリコン単結晶製造装置を用意した。なお、メインチャンバーの上部に設置された冷却筒から延びるガス整流筒の先端に設置された熱遮蔽板の内周傾斜面の傾斜角αが25°で、外周傾斜面の傾斜角βが35°のものを用いた。更に黒鉛ルツボより下方には肉厚が40mmの下部断熱板を装着してある。
【0040】
このようなシリコン単結晶製造装置のメインチャンバー内に設置された口径32インチ(800mm)の石英ルツボ内に、シリコン多結晶原料360kgを石英ルツボ内に充填した。さらに抵抗調整用のボロンドーパントも充填し、加熱ヒーターを用いて加熱し原料を溶融した。
そして、MCZ法を用い、中心磁場強度3000ガウスの水平磁場を印加しながら、直径300mm、直胴長さ140cmのP型シリコン単結晶を育成した。
【0041】
なお、原料融液内部の最高温度とシリコンの融点との温度差(ΔT
1)が93℃であった。
また石英ルツボ内の原料融液面の最高温度とシリコンの融点との温度差(ΔT
2)が52℃であった。このときの石英ルツボの径方向における原料融液面の温度分布のイメージを
図3に示す。縦軸が原料融液面の温度であり、横軸が融点(シリコン単結晶)からの、ルツボ径方向における距離である。
【0042】
また、これら原料融液内部の温度については直接の計測が困難ではあるものの、FEMAG(文献:F.Dupret, P.Nicodeme, Y.Ryckmans, P.Wouters, and M.J.Crochet, Int.J.Heat Mass Transfer, 33 1849(1990))のようなソフトウェアによるシミュレーション解析による予測が可能である。また、原料融液面についてはFEMAGによる予測または放射温度計による計測が可能である。
【0043】
引き上げたシリコン単結晶からスライスしたウエーハを鏡面加工し、ウエーハを赤外分光器に顕微鏡を付けた顕微FT−IRによって、ウエーハ試料の径方向に2mmステップで走査させ、1107cm
−1格子間酸素とシリコンのSi−Oピークを使用して格子間酸素を測定した。その際、顕微FT−IRの空間分解能を100μm×100μmとし、酸素濃度の測定ばらつきを0.01ppma(1979年ASTM基準)以下に抑えることを可能にし、測定に供した。
【0044】
上記のように、ウエーハ径方向の最外周から、0.5mmから2mmの測定間隔(ここでは2mm間隔)でFT−IRスキャン測定を行う。このようにして測定したウエーハ径方向における複数の測定点から選んだ2つの測定点を両端とする区間(区間サイズ(Δx))を設定する。ここではΔxを6mmとした。より具体的には、ウエーハ径方向において端から1番目と3番目を両端とする第1の測定区間を設定し、以降、これを繰り返し、ウエーハの径方向の他端に達するまで区間を設定し続けた。
そして、上記のようにして設定した区間ごとに、区間の起点の酸素濃度[Oi]
0[ppma]と終点の酸素濃度[Oi]
1[ppma]との差Δ[Oi]を区間サイズΔx[mm]で割った酸素濃度勾配Δ[Oi]/Δx[ppma/mm]の絶対値を算出する。この酸素濃度勾配の平均値、すなわち全ての上記算出値の平均値を初期酸素変動の代表値として、ウエーハ面内酸素濃度の均一性を評価した。
なお、この平均値であるが、数値が小さいほど結果が良好であることを意味する。
【0045】
そして、実際に引上げたシリコン単結晶からスライスしたウエーハの酸素濃度勾配の平均値は0.022[ppma/mm]であった。
またそのウエーハによるデバイスプロセス後の撮像素子デバイスには画像ムラはなかった。これは、シリコン単結晶中に酸素が面内均一に導入され、素子形成の際のプロセスによる酸素析出物の密度の面内分布が均一であるためと考えられる。
【0046】
(実施例2)
熱遮蔽板における傾斜角αが25°、傾斜角βが35°であり、肉厚が60mmの下部断熱板を装着する以外は実施例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0047】
ΔT
1およびΔT
2の値であるが、其々、76℃、44℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.010[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには画像ムラはなかった。
【0048】
(実施例3)
熱遮蔽板における傾斜角αが0°、傾斜角βが7°である以外は実施例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0049】
ΔT
1およびΔT
2の値であるが、其々、114℃、54℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.038[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには画像ムラはなかった。
【0050】
(実施例4)
熱遮蔽板における傾斜角αが30°、傾斜角βが40°である以外は実施例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0051】
ΔT
1およびΔT
2の値は、其々、112℃、50℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.027[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには画像ムラはなかった。
【0052】
(比較例1)
従来のシリコン単結晶製造装置を用意した。この装置は、
図1のシリコン単結晶製造装置とは熱遮蔽板が異なっている。
そして、実施例1と同様の手順でシリコン単結晶を引上げて製造し、酸素濃度勾配の平均値を測定した。
なお、熱遮蔽板は、傾斜角αが35°、傾斜角βが45°のものを用いた。
【0053】
ΔT
1およびΔT
2の値は、其々、120℃、48℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.045[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには強い画像ムラが確認された。これは、シリコン単結晶中に酸素が面内不均一に導入され、素子形成の際のプロセスによる酸素析出物の密度の面内分布が不均一であるためと考えられる。
【0054】
(比較例2)
熱遮蔽板における傾斜角αが−5°、傾斜角βが−5°である以外は比較例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0055】
ΔT
1およびΔT
2の値は、其々、122℃、62℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.055[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには強い画像ムラが確認された。
【0056】
(比較例3)
熱遮蔽板における傾斜角αが25°、傾斜角βが50°である以外は比較例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0057】
ΔT
1およびΔT
2の値は、其々、124℃、45℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.034[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには強い画像ムラが確認された。
【0058】
(比較例4)
熱遮蔽板における傾斜角αが30°、傾斜角βが7°である以外は比較例1と同様にしてシリコン単結晶を引上げて製造し、同様にして酸素濃度勾配の平均値を測定した。
【0059】
ΔT
1およびΔT
2の値は、其々、127℃、57℃であった。
また酸素濃度勾配の平均値を測定したところ、0.049[ppma/mm]であった。またそのウエーハによるプロセス後の撮像素子デバイスには強い画像ムラが確認された。
【0060】
以上の実施例1−4、比較例1−4における傾斜角α、β、下部断熱板の肉厚、ΔT
1、ΔT
2、酸素濃度勾配の平均値、撮像素子の画像ムラの有無について表1にまとめた。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、本発明の製造装置や製造方法を用いれば、原料融液の温度ムラを容易に防ぐことができ、半導体デバイス又は太陽電池の電気的な特性を阻害しないシリコン単結晶ウエーハを製造でき、安定的に供給することができる。そして、得られたシリコンウエーハを用いれば、種々のデバイスプロセスにおいて、BMDが均一に形成され、デバイスの電気特性が優れた高品質のシリコン単結晶ウエーハの供給が可能である。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。