(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材との間に介在し、前記第一の接続端子と前記第二の接続端子とを電気的に接続する回路接続用接着剤であって、前記回路接続用接着剤が請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物を含有する、回路接続用接着剤。
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材と、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の接続端子と前記第二の接続端子とを電気的に接続する接続部材と、を備え、
前記接続部材が請求項5〜9のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤の硬化物を含む、回路部材の接続構造体。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。また本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。
【0036】
また、本明細書等において、重量平均分子量及び数平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー社製 GPC−8020
検出器:東ソー社製 RI−8020
カラム:日立化成工業社製 Gelpack GL−A−160−S+GL−A150
試料濃度:120mg/3ml
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μl
圧力:2.94×10
6Pa(30kgf/cm
2)
流量:1.00ml/min
【0037】
本実施形態に係る接着剤組成物は、スルフィド基を有する樹脂を含有する。「スルフィド基を有する樹脂」は、1個以上のスルフィド基を構成単位として含むポリマー、及び、重合により当該ポリマーを生成し得るポリマー前駆体を含む。当該樹脂は、主鎖中の構造単位中にスルフィド基を含むことが好ましい。接着剤組成物にスルフィド基を有する樹脂を含有することにより、銅等の金属を被着面に有する被着体に対して十分に良好な接着強度を得ることができる。
【0038】
スルフィド基を有する樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミドエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリウレア、ポリチオウレア、ポリカーボネート、ポリチオカーボネート及びポリアミック酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を主骨格とする樹脂のうち、スルフィド基を有するものが挙げられる。なお、ポリアミック酸は、ポリイミドの前駆体である。
【0039】
スルフィド基を有することで十分な高接着性が得られるため、高接着性の発現は樹脂の主骨格の種類によらないが、合成の簡便性と樹脂の耐熱性の点から、上記の群から選ばれる少なくとも1種を主骨格とすることが好ましい。これら樹脂群の中でも、接着剤組成物の耐熱性を向上させる点から、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミドエステル及びポリウレタンがより好ましく、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドエステル及びポリエステルが更に好ましい。
【0040】
本実施形態にかかるスルフィド基を有する樹脂は、例えば下記一般式(1)で表される構造を含んでいてもよい。
【化6】
【0041】
一般式(1)中のR
1〜R
6は、例えば、それぞれ独立に単結合、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選ばれる一価の基を示す。ただし、R
1〜R
6のうち2つは単結合である。
【0042】
一般式(1)で表される構造を含む化合物としては、例えば、2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオラン、4−(1,3−ジチオラン−2−イル)−N’−ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドアミド、1,4−ジチアスピロ[4,5]デカン−8−オール、エチル−1,3−ジチオラン−2−カルボキシレート、4−(1,3−ジチオラン−2−イル)フェノール、2−メチル−1,3−ジチオラン等が挙げられるが、この限りではない。これらの中でも、樹脂に導入する観点から、二官能である2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジチオランが好ましい。
【0043】
また、本実施形態にかかるスルフィド基を有する樹脂は、例えば下記一般式(2)で表される構造を含んでいてもよい。
【化7】
【0044】
一般式(2)中のR
7〜R
14は、例えば、それぞれ独立に単結合、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選ばれる一価の基を示す。ただし、R
7〜R
14のうち2つは単結合である。
【0045】
一般式(2)で表される構造を含む化合物としては、例えば、1,3−ジチアン、エチル−1,3−ジチアン−2−カルボキシレート、2−メチル−1,3−ジチアン、2−フェニル−1,3−ジチアン等が挙げられるが、この限りではない。
【0046】
また、本実施形態にかかるスルフィド基を有する樹脂は、例えば下記一般式(3)で表される構造を含んでいてもよい。
【化8】
【0047】
一般式(3)中のR
15〜R
22は、例えば、それぞれ独立に単結合、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選ばれる一価の基を示す。ただし、R
15〜R
22のうち2つは単結合である。
【0048】
一般式(3)で表される構造を有する化合物としては、例えば、1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン、2,5−ジヒドロキシ−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等が挙げられるが、この限りではない。これらの中でも、樹脂中に導入する観点から、二官能である2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン及び2,5−ジヒドロキシ−2,5−ジメチル−1,4−ジチアンが好ましく、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアンがより好ましい。
【0049】
前記一般式(1)〜(3)で表される構造に示されるように、脂環式炭化水素中に二つの硫黄原子を有することで、銅との接着性は特に高まる傾向にある。この理由は定かではないが、同一環状に硫黄原子が二つ存在することで、一つの硫黄原子が銅表面と相互作用したときに、もう一方の硫黄原子が銅表面と接近した位置に存在しているため、より多くの硫黄原子による相互作用が可能になるからであると発明者らは推察している。そのため、五員環、六員環のみならず、その他の多員環上に二つの硫黄原子を有する化合物でも同様の効果が期待できる。また、同一環上に二つのみならず、三つ以上の硫黄原子が存在する場合には、同様の理由から、より大きな効果が期待できる。
【0050】
また、本実施形態にかかるスルフィド基を有する樹脂は、例えば下記一般式(4)で表される構造を含んでいてもよい。
【化9】
【0051】
一般式(4)中のR
23〜R
32は、例えば、それぞれ独立に単結合、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フェニル基及びアルコキシカルボニル基から選ばれる一価の基を示す。ただし、R
23〜R
32のうち2つは単結合である。
【0052】
一般式(4)で表される構造を有する化合物としては、例えば、4−アセチルジフェニルスルフィド、ペンタフルオロフェニルスルフィド、o−(フェニルチオ)アニリン、2−フルオロ−6−(4−クロロフェニルチオ)ベンゾニトリル、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルフィド、(p−t−ブチルフェニルチオ)ベンゼン、4−ニトロフェニルスルフィド、ビチオノール、4,4’−チオジアニリン、ジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオジフェノール、テトラスル、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオジアニリン等が挙げられるが、この限りではない。
【0053】
これらの中でも、樹脂に導入する観点から、二官能である4,4’−チオジアニリン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオジフェノール及び2,2’−チオジアニリンが好ましく、4,4’−チオジアニリン、2,2’−チオジアニリン及び4,4’−チオジフェノールがより好ましい。
【0054】
また、本実施形態にかかるスルフィド基を有する樹脂は、例えば下記一般式(5)で表される構造を含んでいてもよい。
【化10】
【0055】
一般式(5)中のR
33及びR
34はそれぞれ独立に二価の有機基を示す。有機基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、オキシアルキレン基等が挙げられる。
【0056】
一般式(5)で表される構造を有する化合物としては、例えば、3,3’−チオジプロパノール、L−ブチオニン、FUDOSTEINE、ジフルフリルスルフィド、2,2’−チオジアセトアミド、2−(2−クロロ−6−フルオロゼンジルチオ)エチルアミン、3−(エチルチオ)プロパノール、フルフリルイソプロピルスルフィド、(エチルチオ)アセトン、L−Deoxyalliin、2−(2−アミノエチルチオ)エタノール、アリルプロピルスルフィド、テトラデシルチオ酢酸、2−メルカプトエチルスルフィド、2−(エチルチオ)エチルアミン、チオジ琥珀酸、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、シスタチオニン、1,2−ビス(エチルチオ)エタン、ジイソアミルスルフィド、ジアリルスルフィド、1,2−ビス(カルボキシメチルメルカプト)エタン、メチルアリルチオアセテート、エルドステイン、エチル−3−(フルフリルチオ)プロピオネート、エチオニン、ランチオニン、2,2’−チオジエタノール、3,3’−チオジプロパン酸、2−(ブチルチオ)エタノール、エチルチオ酢酸、(2−クロロエチル)エチルスルフィド等が挙げられるが、この限りではない。
【0057】
これらの中でも、樹脂に導入する観点から、二官能である3,3’−チオジプロパノール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、ジアリルスルフィド、2,2’−チオジエタノール及び3,3’−チオジプロパン酸が好ましく、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、ジアリルスルフィド及び3,3’−チオジプロパノールがより好ましい。
【0058】
スルフィド基を有する樹脂の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、0.01質量%以上90質量%以下が好ましく、1質量%以上50質量%以下がより好ましい。含有量が0.01質量%以上であると、良好な接着力が得られる傾向がある。含有量が90質量%以下であると、良好な溶剤溶解性が得られ、扱いやすい傾向がある。
【0059】
スルフィド基を有する樹脂は、重量平均分子量が1000以上500000以下であることが好ましい。この重量平均分子量が500000以下であると、接着剤の粘度が高くなり過ぎず、扱いやすい傾向があり、1000以上であると、接着剤の耐熱性が向上する傾向がある。
【0060】
本実施形態にかかる接着剤組成物は、単独で接着剤として使用してもよく、他の樹脂から構成される接着剤の接着性を向上するための添加剤として用いてもよい。また、被着体の接着性を向上させるために、被着体を構成する樹脂等の材料に対して本実施形態の接着剤組成物を添加してもよい。いずれの場合でも、本実施形態にかかる接着剤組成物によれば、多様な材質の被着体に対して十分に高い接着強度を達成することが可能である。
【0061】
本実施形態にかかる接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を更に含有していてもよい。
【0062】
(ラジカル重合性化合物)
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤の作用でラジカル重合を生じる化合物であってもよく、光、熱等の活性化エネルギーを付与することでそれ自体ラジカルを生じる化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基等の、活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を好適に使用可能である。
【0063】
上記ラジカル重合性化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコール及びプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(A)又は一般式(B)で示される化合物などが挙げられる。
【0064】
【化11】
[式(A)中、R
35及びR
36はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、a及びbはそれぞれ独立に1〜8の整数を示す。]
【0065】
【化12】
[式(B)中、R
37及びR
38はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、c及びdはそれぞれ独立に0〜8の整数を示す。]
【0066】
また、上記ラジカル重合性化合物としては、単独で30℃に静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性が無く固体状態を示すものであっても、特に制限することなく使用することができる。このようなラジカル重合性化合物としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、下記一般式(C)〜(L)で示される化合物等が挙げられる。
【0067】
【化13】
[式(C)中、eは1〜10の整数を示す。]
【0069】
【化15】
[式(E)中、R
39及びR
40はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、fは15〜30の整数を示す。]
【0070】
【化16】
[式(F)中、R
41及びR
42はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、gは15〜30の整数を示す。]
【0071】
【化17】
[式(G)中、R
43は水素原子又はメチル基を示す。]
【0072】
【化18】
[式(H)中、R
44は水素原子又はメチル基を示し、hは1〜10の整数を示す。]
【0073】
【化19】
[式(I)中、R
45は水素原子、又は下記一般式(i)若しくは(ii)で表される有機基を示し、iは1〜10の整数を示す。ただし、複数存在するR
45のうち少なくとも一つは下記一般式(i)又は(ii)で表される有機基である。]
【0075】
【化22】
[式(J)中、R
46は水素原子、又は下記一般式(iii)若しくは(iv)で表される有機基を示し、jは1〜10の整数を示す。ただし、複数存在するR
46のうち少なくとも一つは下記一般式(iii)又は(iv)で表される有機基である。]
【0077】
【化25】
[式(K)中、R
47は水素原子又はメチル基を示す。]
【0078】
【化26】
[式(L)中、R
48は水素原子又はメチル基を示す。]
【0079】
また、上記ラジカル重合性化合物として、ウレタンアクリレートを用いることができる。ウレタンアクリレートは、単独で使用してもよく、ウレタンアクリレート以外のラジカル重合性化合物と併用してもよい。ウレタンアクリレートを、単独で使用、又は、ウレタンアクリレート以外のラジカル重合性化合物と併用することで、可とう性が向上し、接着強度を更に向上させることができる。
【0080】
ウレタンアクリレートとしては、特に制限はないが、下記一般式(M)で表されるウレタンアクリレートが好ましい。ここで、下記一般式(M)で表されるウレタンアクリレートは、脂肪族系ジイソシアネート又は脂環式系ジイソシアネートと、脂肪族エステル系ジオール及び脂環式エステル系ジオール並びに脂肪族カーボネート系ジオール及び脂環式カーボネート系ジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種との縮合反応により得ることができる。
【0081】
【化27】
[式(M)中、R
49及びR
50はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R
51はエチレン基又はプロピレン基を示し、R
52は飽和脂肪族基又は飽和脂環式基を示し、R
53は、エステル基を含有する飽和脂肪族基又は飽和脂環式基、若しくは、カーボネート基を含有する飽和脂肪族基又は飽和脂環式基を示し、kは1〜40の整数を示す。なお、式(M)中、複数存在するR
51同士、R
52同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0082】
上記ウレタンアクリレートを構成する脂肪族系ジイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート等から選択されてもよい。
【0083】
また、上記ウレタンアクリレートを構成する脂肪族エステル系ジオールは、例えば、低分子ジオール類、二塩基酸又はこれらに対応する酸無水物を脱水縮合させて得られるポリエステルジオール類、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合させて得られるポリエステルジオール類などから選択されてもよい。
【0084】
低分子ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ドデカンジオール、ピナコール、1,4−ブチンジオール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0085】
二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、3−メチルアジピン酸、2,2,5,5−テトラメチルアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2−エチル−2−メチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0086】
上記脂肪族エステル系ジオールは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0087】
また、上記ウレタンアクリレートを構成する脂肪族ポリカーボネート系ジオール及び脂環式カーボネート系ジオールは、少なくとも1種類の上記ジオール類とホスゲンとの反応によって得られるポリカーボネートジオール類から選択されてもよい。上記グリコール類とホスゲンとの反応によって得られるポリカーボネート系ジオールは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0088】
また、上記ウレタンアクリレートは、接着強度を更に向上させる観点から、5000以上30000未満の範囲内で重量平均分子量を自由に調整し、好適に使用することができる。上記ウレタンアクリレートの重量平均分子量が上記範囲内であれば、柔軟性と凝集力の双方を十分に得ることができ、PET、PC、PEN等の有機基材との接着強度が更に向上し、更に優れた接続信頼性を得ることができる。また、このような効果をより充分に得る観点から、上記ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、8000以上25000未満がより好ましく、10000以上20000未満が更に好ましい。なお、この重量平均分子量が5000以上であると、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、可とう性が更に向上する傾向があり、重量平均分子量が30000未満であると、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、可とう性が更に向上する傾向がある。
【0089】
また、上記ウレタンアクリレートを含有する場合には、その含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。上記含有量が5質量%以上であると、硬化後の耐熱性が更に向上する傾向がある。また、上記ウレタンアクリレートの含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。上記含有量が95質量%以下であると、接着剤組成物をフィルム状接着剤として使用する場合に、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、可とう性が更に向上する傾向がある。
【0090】
上記ラジカル重合性化合物は、リン酸基含有ビニル化合物(リン酸基を有するビニル化合物)と、リン酸基含有ビニル化合物以外のラジカル重合性化合物と、をそれぞれ1種以上含んでいてもよい。ラジカル重合性化合物は、N−ビニル化合物及びN,N−ジアルキルビニル化合物からなる群より選ばれるN−ビニル系化合物と、N−ビニル系化合物以外のラジカル重合性化合物と、をそれぞれ1種以上含んでいてもよい。リン酸基含有ビニル化合物の併用により、接続端子を有する基板に対する接着剤組成物の接着性を更に向上させることができる。また、N−ビニル系化合物の併用により、接着剤組成物の橋かけ率を向上させることができる。
【0091】
リン酸基含有ビニル化合物としては、リン酸基及びビニル基を有する化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(N)〜(P)で表される化合物が好ましい。
【0092】
【化28】
[式(N)中、R
54は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、R
55は水素原子又はメチル基を示し、l及びmはそれぞれ独立に1〜8の整数を示す。なお、式(N)中、複数存在するR
54同士、R
55同士、l同士及びm同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0093】
【化29】
[式(O)中、R
56は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、n、o及びpはそれぞれ独立に1〜8の整数を示す。なお、式(O)中、複数存在するR
56同士、n同士、o同士及びp同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。]
【0094】
【化30】
[式(P)中、R
57は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、R
58は水素原子又はメチル基を示し、q及びrはそれぞれ独立に1〜8の整数を示す。]
【0095】
リン酸基含有ビニル化合物としては、例えば、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイルオキシジエチルホスフェート、エチレンオキシド(EO)変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、リン酸ビニル等が挙げられる。
【0096】
N−ビニル系化合物としては、例えば、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0097】
上述したリン酸基含有ビニル化合物及びN−ビニル系化合物を含有する場合には、それぞれの含有量は、リン酸基含有ビニル化合物及びN−ビニル系化合物以外のラジカル重合性化合物の含有量とは独立に、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。上記含有量が0.2質量%以上であると、接着強度が更に向上する傾向がある。上述したリン酸基含有ビニル化合物及びN−ビニル系化合物の含有量のそれぞれは、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。上記含有量が15質量%以下であると、接着剤組成物の硬化後の物性低下を抑えつつ、信頼性の確保が更に容易になる傾向がある。
【0098】
また、上述したリン酸基含有ビニル化合物又はN−ビニル系化合物に該当する化合物を除いた上記ラジカル重合性化合物の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。上記含有量が5質量%以上であると、硬化後の耐熱性が更に向上する傾向がある。上述したリン酸基含有ビニル化合物又はN−ビニル系化合物に該当する化合物を除いたラジカル重合性化合物の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、95質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。上記含有量が95質量%以下であると、接着剤組成物をフィルム状接着剤として使用する場合に、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、可とう性が更に向上する傾向がある。
【0099】
(ラジカル重合開始剤)
上記ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物、アゾ化合物等、外部からのエネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、安定性、反応性及び相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃であり、且つ重量平均分子量が180〜1000の有機過酸化物が好ましい。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に更に優れ、ラジカル重合性が充分に高く、短時間で硬化できる。
【0100】
有機過酸化物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0101】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0102】
また、上記ラジカル重合開始剤としては、150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年、p17〜p35)に記載されているα−アミノアセトフェノン誘導体及びホスフィンオキサイド誘導体等の光照射に対する感度が高い化合物などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いる他に、上記有機過酸化物及びアゾ化合物と混合して用いてもよい。
【0103】
上記ラジカル重合開始剤の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。上記含有量が0.5質量%以上であると、接着剤組成物がより硬化しやすくなる傾向がある。上記ラジカル重合開始剤の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。上記含有量が40質量%以下であると、貯蔵安定性を維持しつつ、接着剤組成物がより硬化しやすくなる傾向がある。
【0104】
また、本実施形態にかかる接着剤組成物は、熱可塑性樹脂を更に含有していてもよい。
【0105】
(熱可塑性樹脂)
上記熱可塑性樹脂は、融点又はガラス転移温度以上の温度で加熱すると、粘度の高い液状状態になって外力により自由に変形し、冷却し外力を取り除くとその形状を保ったままで硬くなり、この過程を繰り返し行える性質を持つ樹脂(高分子)をいう。また、熱可塑性樹脂は、上記の性質を有する反応性官能基を有する樹脂(高分子)であってもよい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30℃以上190℃以下が好ましく、−25℃以上170℃以下がより好ましく、−20℃以上150℃以下が更に好ましい。
【0106】
上記熱可塑性樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂(例えばポリビニルブチラール樹脂等)、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミド樹脂、並びに、酢酸ビニルを構造単位として有する共重合体(酢酸ビニル共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことができる。これらの中でも、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことがより好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。更に、これら熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合及びフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶する状態、又は、ミクロ相分離が生じて白濁する状態であることが好ましい。
【0107】
接着剤組成物をフィルム状にして利用する場合、上記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が大きいほど、良好なフィルム形成性が容易に得られ、また、フィルム状接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、7000以上がより好ましく、10000以上が更に好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、フィルム形成性が更に向上する傾向がある。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、150000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、80000以下が更に好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が150000以下であると、他の成分との相溶性を維持しつつ、フィルム形成性が更に向上する傾向がある。
【0108】
接着剤組成物に熱可塑性樹脂を含有する場合には、その含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が5質量%以上であると、接着剤組成物をフィルム状にして利用する場合に特に、フィルム形成性が更に向上する傾向がある。熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が80質量%以下であると、接着剤組成物の流動性を維持しつつ、フィルム形成性が更に向上する傾向がある。
【0109】
また、本実施形態にかかる接着剤組成物は、導電性粒子を更に含有していてもよい。
【0110】
(導電性粒子)
上記導電性粒子は、その全体又は表面に導電性を有する粒子であればよいが、接続端子を有する部材の接続に使用する場合は、接続端子間の距離よりも平均粒径が小さい粒子が好ましい。
【0111】
上記導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、Pd、はんだ等の金属から構成される金属粒子及びカーボン等から構成される粒子が挙げられる。また、導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子又はカーボンを被覆した粒子であってもよい。導電性粒子が、プラスチックの核に上記金属、金属粒子又はカーボンを被覆したもの及び熱溶融金属粒子であると、加熱加圧により変形性を有することから、接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するため好ましい。導電性粒子は、例えば、銅からなる金属粒子に銀を被覆した粒子等であってもよい。また、導電性粒子として、特開2005−116291号公報に記載されるような、微細な金属粒子が多数、鎖状に繋がった形状を有する金属粉末を用いることもできる。
【0112】
また、これらの上記導電性粒子の表面を高分子樹脂等で更に被覆したもの、又はハイブリダイゼーション等の方法により導電性粒子の表面に絶縁性物質からなる絶縁層が設けられたものを用いることで、導電性粒子の含有量が増加した場合の粒子同士の接触による短絡が抑制されて、電極回路間の絶縁性が向上することから、適宜これらを単独で又は導電性粒子と混合して用いてもよい。
【0113】
上記導電性粒子の平均粒径は、分散性及び導電性の点から、1〜18μmが好ましい。このような導電性粒子を含有する場合、接着剤組成物を異方導電性接着剤として好適に用いることができる。
【0114】
上記導電性粒子を含有する場合には、その含有量は、特に制限は受けないが、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全体積を基準として、0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましい。上記含有量が0.1体積%以上であると、対向する接続端子間の導電性を確保しつつ、隣接する接続端子間の絶縁性が更に向上する傾向がある。導電性粒子の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全体積を基準として、30体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。上記含有量が30体積%以下であると、回路の短絡がより生じにくい傾向がある。なお、「体積%」は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して質量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等に、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよく濡らす適当な溶媒(例えば、水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
【0115】
(その他の成分)
本実施形態に係る接着剤組成物には、硬化速度の制御及び貯蔵安定性の更なる向上のために、安定化剤を添加することできる。このような安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができるが、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体;4−メトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体;テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが好ましい。安定化剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0116】
安定化剤を含有する場合には、その含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましい。上記含有量が0.005質量%以上であると、硬化速度をより制御しやすくなると共に貯蔵安定性が更に向上しやすい傾向がある。安定化剤の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。上記含有量が10質量%以下であると、硬化性を損なわずに、更に貯蔵安定性が向上する傾向がある。
【0117】
また、本実施形態に係る接着剤組成物には、例えば、アルコキシシラン誘導体及びシラザン誘導体に代表されるカップリング剤、密着向上剤、レベリング剤等の接着助剤を適宜添加してもよい。カップリング剤としては、例えば、下記一般式(Q)で表される化合物等が好ましい。カップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0118】
【化31】
[式(Q)中、R
59、R
60及びR
61はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基又はアリール基を示し、R
62は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基又はグリシジル基を示し、sは1〜10の整数を示す。]
【0119】
本実施形態に係る接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を含有してもよい。ゴム成分とは、そのままの状態でゴム弾性(JIS K6200)を示す成分又は反応によりゴム弾性を示す成分をいう。ゴム成分は、室温(25℃)で固形でも液状でもよいが、流動性向上の観点から液状であることが好ましい。ゴム成分としては、ポリブタジエン骨格を有する化合物が好ましい。ゴム成分は、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基を有していてもよい。また、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基及びカルボキシル基のうち少なくもいずれかを側鎖又は末端に含むゴム成分が好ましい。なお、本明細書では、ゴム成分であっても、熱可塑性を示す場合は熱可塑性樹脂に分類し、ラジカル重合性を示す場合はラジカル重合性化合物に分類する。
【0120】
ゴム成分としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール等が挙げられる。ゴム成分を含有する場合には、その含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、3〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0121】
また、上記高極性基を有し、室温で液状であるゴム成分としては、例えば、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。高極性基を有し、室温で液状であるゴム成分の含有量は、接着剤組成物における導電性粒子を除く成分の全質量を基準として、3〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0122】
これらのゴム成分は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0123】
また、本実施形態に係る接着剤組成物には、応力緩和及び接着性向上を目的に、有機微粒子を添加してもよい。有機微粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmが好ましい。なお、有機微粒子が上述のゴム成分からなる場合は、有機微粒子ではなくゴム成分に分類し、有機微粒子が上述の熱可塑性樹脂からなる場合は、有機微粒子ではなく熱可塑性樹脂に分類する。
【0124】
有機微粒子としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体及びシリコーン−(メタ)アクリル共重合体、並びに、これらの複合体からなる有機微粒子が挙げられる。
【0125】
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等を用いることができる。なお、無機フィラーが球状の場合、表面積の増加によって、回路接続用接着剤の流動性が十分でなく、十分な接続信頼性が得られない場合がある。また、無機フィラーが繊維状の場合、回路接続用接着剤中で無秩序に充填されるため、十分な接続信頼性が得られない場合がある。
【0126】
無機フィラーの含有量は、回路接続用接着剤全体に対して、0.5〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。0.5質量%以上であると、無機フィラーによる耐熱性向上の効果を十分に発揮することができる。一方、20質量%以下であると、回路接続用接着剤の流動性を維持しつつ、接続信頼性が更に向上する傾向にある。
【0127】
本実施形態に係る接着剤組成物は、当該接着剤組成物が室温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。接着剤組成物が室温で固体の場合には、例えば、加熱して使用する他、溶媒を使用してペースト化してもよい。使用できる溶媒としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、且つ十分な溶解性を示すものが好ましく、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以上であると、室温で放置した場合に揮発がより少なくなり、開放系での使用が容易となる傾向にある。また、沸点が150℃以下であると、溶媒を容易に揮発させることができるため、相溶性を維持しつつ、ペーストを塗布でき、接着後の信頼性が更に向上し易い傾向がある。
【0128】
また、本実施形態に係る接着剤組成物は、フィルム状の接着剤にして用いることもできる。フィルム状の接着剤は、上述の成分を含む組成物を有機溶剤に溶解又は分散することにより、液状化して、例えば、剥離性基材上、不織布等の基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより得ることができる。剥離性基材としては、例えば、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等を用いることができる。フィルムの形状で使用すると、取扱性等の点から一層便利である。
【0129】
本実施形態に係る接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、100〜200℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲が好ましく、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましく、例えば、120〜190℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【0130】
本実施形態に係る接着剤組成物は、同一種の被着体同士を接着するために使用できるとともに、熱膨張係数の異なる異種の被着体を接着するための接着剤として使用することができる。具体的には、本実施形態にかかる接着剤組成物は、例えば、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、チップサイズパッケージ(Chip Size Package、CSP)用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、リードオンチップ(Lead On Chip、LOC)テープ等に代表される半導体素子接着材料などとして使用することができる。
【0131】
(接続構造体)
次に、上述した接着剤組成物を用いて製造される接続構造体について説明する。
図1は、実施形態に係る接続構造体を示す模式断面図である。
図2は、
図1に示す接続構造体の製造方法を示す模式断面図である。
【0132】
図1に示す回路部材の接続構造体100は、回路部材(第一の回路部材)10と、回路部材(第二の回路部材)20と、接続部材30とを備える。回路部材10は、回路基板(第一の基板)12と、回路基板12の主面12a上に配置された接続端子(第一の接続端子)14と、を有している。回路部材20は、回路基板(第二の基板)22と、回路基板22の主面22a上に配置された接続端子(第二の接続端子)24と、を有している。
【0133】
接続部材30は、回路部材10及び回路部材20の間に配置されている。接続部材30は、主面12a及び主面22aが互いに略平行に対向するように、回路部材10及び回路部材20を接続している。接続構造体100において接続端子14と接続端子24とは、対向配置されていると共に、互いに接することにより電気的に接続されている。接続部材30は、回路接続用接着剤30aの硬化物を含む。
【0134】
接続構造体100は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、
図2に示すように、回路部材10と、回路部材20と、回路接続用接着剤30aと、を用意する。回路接続用接着剤30aは、例えば、上述の接着剤組成物がフィルム状に形成されてなる。次に、回路部材20における接続端子24が形成されている主面22a上に回路接続用接着剤30aを載せる。そして、接続端子14が接続端子24と対向するように回路接続用接着剤30aの上に回路部材10を載せる。続いて、回路部材10及び回路部材20を介して回路接続用接着剤30aを加熱しながら回路接続用接着剤30aを硬化させると共に主面12a、22aに垂直な方向に加圧し、回路部材10、20の間に接続部材30を形成する。これにより、接続構造体100が得られる。
【0135】
上記接着剤組成物が導電性粒子を含む場合、このような接着剤組成物を使用して作製した異方導電フィルムを、相対峙する接続端子間に介在させて加熱加圧することで、導電性粒子を介して接続端子同士を電気的に接続しつつ回路部材同士を接着することにより、回路部材の接続構造体を得ることができる。
【0136】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。
【実施例】
【0137】
以下に、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0138】
<樹脂の合成>
1.スルフィド基を有する樹脂の合成例
(1)ポリアミド樹脂(PA−1)の調製
還流冷却器、温度計及び攪拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、イソフタル酸ジクロライド40.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35gとを加えて調製した反応液を、氷浴中(0℃)で10分間攪拌した。次いで、ジアミンである2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン46.0mmol及び4,4’−チオジアニリン4.0mmol、発生する塩酸の捕捉剤としてトリエチルアミン88.0mmolを加え、30分攪拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、1.5時間反応させ、スルフィド基を有するポリアミド樹脂(以下「PA−1」という。)のNMP溶液を得た。
【0139】
PA−1のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPA−1を得た。得られたPA−1の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で15000であった。PA−1をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
【0140】
(2)ポリアミドエステル樹脂(PAEs−1)の調製
還流冷却器、温度計及び攪拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、イソフタル酸ジクロライド70.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)54gとを加えて調製した反応液を、氷浴中(0℃)で10分間攪拌した。次いで、ジアミンである2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン35.0mmolと、ジオールである2,5−ジヒドロキシ−1,4−ジチアン35.0mmol、発生する塩酸の捕捉剤としてピリジン154.0mmolを加え、30分攪拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、1.5時間反応させ、スルフィド基を有するポリアミドエステル樹脂(以下「PAEs−1」という。)のNMP溶液を得た。
【0141】
PAEs−1のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPAEs−1を得た。得られたPAEs−1の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で12000であった。PAEs−1をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
【0142】
(3)ポリイミド樹脂(PI−1)の調製
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルトリシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物52.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを加えて調製した反応液を、室温(25℃)で30分間攪拌した。次いで、ジアミンである4,4’−チオジアニリン22.75mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン22.75mmol及びポリオキシプロピレンジアミン6.5mmolを加えた。その後、反応液を180℃まで昇温し、ディーンスターク還流冷却器により水とNMPの混合物を除去しながら1時間還流を行い、スルフィド基を有するポリイミド樹脂(以下「PI−1」という。)のNMP溶液を得た。
【0143】
PI−1のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−1を得た。得られたPI−1の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で51000であった。PI−1をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
【0144】
2.スルフィド基を有しない樹脂の合成例
(1)ポリアミド樹脂(PA−2)の準備
還流冷却器、温度計及び攪拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、イソフタル酸ジクロライド40.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35gとを加えて調製した反応液を、氷浴中(0℃)で10分間攪拌した。次いで、ジアミンである2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン46.0mmol及びジェファーミンD−2000(ハインツマン製)4.0mmol、発生する塩酸の捕捉剤としてトリエチルアミン88.0mmolを加え、30分攪拌した。その後、反応液を室温まで昇温し、1.5時間反応させ、スルフィド基を有しないポリアミド樹脂(以下「PA−2」という。)のNMP溶液を得た。
【0145】
PA−2のNMP溶液をメタノールに投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPA−2を得た。得られたPA−2の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で13000であった。PA−2をMEKに溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
【0146】
(2)ポリイミド樹脂(PI−2)の準備
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び撹拌器を装着した300mLのセパラブルフラスコに、5,5’−エキソ−(1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルトリシロキサン−1,5−ジイル)ビスビシクロ[2.2.1]ヘプタン−エキソ−2,3−ジカルボン酸無水物52.0mmolと、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを加えて調製した反応液を、室温(25℃)で30分間攪拌した。次いで、ジアミンである1,4−ビスアミノプロピルピペラジン22.75mmol、2,2-ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン22.75mmol及びポリオキシプロピレンジアミン6.5mmolを加えた。その後、反応液を180℃まで昇温し、ディーンスターク還流冷却器により水とNMPの混合物を除去しながら1時間還流を行い、スルフィド基を有しないポリイミド樹脂(以下「PI−2」という。)のNMP溶液を得た。
【0147】
PI−2のNMP溶液を水中に投入し、析出物を回収した。この析出物を粉砕及び乾燥して固形のPI−2を得た。得られたPI−2の重量平均分子量は、GPCによる測定の結果、標準ポリスチレン換算で48000であった。PI−2をMEK(メチルエチルケトン)に溶解して、濃度30質量%のMEK溶液を調製した。
【0148】
<熱可塑性樹脂>
(ポリエステルウレタンの準備)
ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡社製、UR−1400(商品名))をメチルエチルケトンとトルエンの重量比1:1の混合溶媒に溶解して樹脂分30質量%の溶液を準備した。
【0149】
<ラジカル重合性化合物>
(ウレタンアクリレート(UA1)の合成)
攪拌機、温度計、及び塩化カルシウム乾燥管を備えた還流冷却管と、窒素ガス導入管とを備えた反応容器に、数平均分子量1000のポリ(1,6−ヘキサンジオールカーボネート)(商品名:デュラノール T5652、旭化成ケミカルズ社製)2500質量部(2.50mol)及びジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ社製)5.53質量部を投入した。充分に窒素ガスを導入した後、70〜75℃に加熱し、イソホロンジイソシアネート(シグマアルドリッチ社製)666質量部(3.00mol)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後、約10時間反応を継続した。これに2−ヒドロキシエチルアクリレート(シグマアルドリッチ社製)238質量部(2.05mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(シグマアルドリッチ社製)0.53重量部を投入し、空気雰囲気下70℃で6時間反応させ、ウレタンアクリレート(UA1)を得た。得られたウレタンアクリレートの重量平均分子量は15000であった。
【0150】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤として、ジラウロイルパーオキサイド(商品名:パーロイルL、日油社製)を準備した。
【0151】
<導電性粒子>
(導電性粒子の作製)
ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設けた後、このニッケル層の外側に厚み0.02μmの金層を設けて、平均粒径10μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0152】
<その他の成分:無機フィラーの準備>
無機フィラーとして、シリカ粒子(商品名:アエロジルR805、日本アエロジル社製)を準備した。
【0153】
<積層体の作製>
(実施例1)
PA−1のMEK溶液2.4gに、調製したポリエステルウレタン樹脂(UR−1400)の溶液2.4gを配合し、バーコーターを用いて銅板上に均一に塗布した。塗膜を70℃で60分の加熱により乾燥して、銅板上に接着層を形成させた。この方法により、被着体及び被着体上に形成された接着層から構成される積層体を作製した。
【0154】
(実施例2、3)
PA−1に代えて、PAEs−1及びPI−1をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
【0155】
(比較例1、2)
PA−1に代えて、PA−2及びPI−2をそれぞれ作製した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
【0156】
<接着強度の測定と評価>
各積層体について、被着体から接着層を剥離するために必要な力(剥離力)をJIS−Z0237に準じて90°剥離法(剥離速度50mm/分、測定温度25℃)により測定した。測定装置としてテンシロンUTM−4(東洋ボールドウィン社製)を使用した。測定結果を表1及び2に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
表1に示されるように、ポリアミド樹脂系において、スルフィド基を有するポリアミド樹脂PA−1又はポリアミドエステルPAEs−1を含有する接着剤組成物を用いて接着層を形成した実施例1〜2の積層体の場合、スルフィド基を有しないポリアミド樹脂PA−2を含有する接着剤組成物を用いて接着層を形成した比較例1の積層体の2倍以上の高接着強度を示した。
【0160】
また、表2に示されるように、ポリイミド樹脂系において、スルフィド基を有するポリイミド樹脂PI−1を含有する接着剤組成物を用いて接着層を形成した実施例3の積層体の場合、スルフィド基を有しないポリイミド樹脂PI−2を含有する接着剤組成物を用いて接着層を形成した比較例2の積層体の3.5倍もの高接着強度を示した。
【0161】
(回路接続用接着剤の作製)
(実施例4)
固形質量比で表3に示すPA−1、熱可塑性樹脂(UR−1400)、ラジカル重合性化合物(UA1)、ラジカル重合開始剤(パーロイルL)及び無機フィラー(R805)とともに、更に、これらの成分(接着剤組成物における導電性粒子を除いた成分)の全体積を基準として1.5体積%の導電性粒子を配合し、分散させて、回路接続用接着剤組成物を得た。得られた回路接続用接着剤組成物を、塗工装置を用いて厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上に塗布し、70℃、5分の熱風乾燥によって、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続用接着剤を得た。
【0162】
(実施例5、6)
PA−1に代えて、PAEs−1及びPI−1をそれぞれ使用した以外は、実施例4と同様にフィルム状回路接続用接着剤を作製した。
【0163】
(比較例3、4)
PA−1に代えて、PA−2及びPI−2をそれぞれ使用した以外は、実施例4と同様にフィルム状回路接続用接着剤を作製した。
【0164】
【表3】
【0165】
(接着強度の測定)
実施例4〜6及び比較例3〜4のフィルム状回路接続用接着剤を、フッ素樹脂フィルムから剥離し、銅板と、銅箔(日本電解社製:YGP−12)との間に介在させた。これを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング社製)を用いて、120℃、2MPaで10秒間加熱加圧して幅40mmにわたり接続し、接続構造体Aを作製した。この接続構造体Aの接着強度をJIS−Z0237に準じて90°剥離法で測定した。ここで、接着強度の測定装置としては、東洋ボールドウィン社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
【0166】
以上のように測定した接続構造体の接着強度の測定結果を下記表4及び5に示す。
【0167】
【表4】
【0168】
【表5】
【0169】
表4に示されるように、ポリアミド樹脂系において、スルフィド基を有するポリアミド樹脂PA−1又はポリアミドエステル樹脂PAEs−1を含有する回路接続用接着剤組成物を用いて作製した実施例4〜5の接続構造体の場合、スルフィド基を有しないポリアミド樹脂PA−2を含有する回路接続用接着剤組成物を用いて作製した比較例3の接続構造体よりも高い接着強度を示した。
【0170】
また、表5に示されるように、スルフィド基を有するポリイミド樹脂PI−1を含有する回路接続用接着剤組成物を用いて作製した実施例6の接続構造体の場合、スルフィド基を有しないポリイミド樹脂PI−2を含有する回路接続用接着剤組成物を用いて作製した比較例4の接続構造体より高い接着強度を示した。