【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水分や各種金属イオンを吸着除去するA型ゼオライト粉末の分散性に関して検討を行った。通常、平均一次粒子径と凝集粒子径との値が近い値であれば、A型ゼオライト粉末の二次凝集が少なくなる。平均一次粒子径と凝集粒子径とが同程度であれば、実質的に単分散状態になるため、分散性が高くなる。しかしながら、本発明者らは、A型ゼオライト粉末においては、一次粒子の全てを単分散にすることなく、粉末としての分散性が高くなること、更に、これによりイオンや水分の吸着特性がより向上する可能性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
以下、本発明のA型ゼオライト粉末について説明する。
【0011】
本発明のA型ゼオライト粉末の平均一次粒子径は0.2μm以上、更には0.5μm以上、また更には0.8μm以上である。平均一次粒子径が0.2μm未満では、一次粒子間の凝集性が強くなる。このようなA型ゼオライト粉末は、分散性が低下する。一方、吸着材として使用した場合、実用的な吸着速度を発現するため、平均一次粒子径は3.0μm以下、更には2.5μm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明において、「一次粒子」とは走査型顕微鏡(以下、「SEM」ともいう。)観察おいて単独粒子として確認できる最小単位の粒子の粒子である。また、「平均一次粒子径」とはSEM観察において150個以上の一次粒子の粒子径を測定し、その平均の粒子径である。
【0013】
本発明のA型ゼオライト粉末は、凝集粒子径が平均一次粒子径の5倍以下、更には2.5倍以下、また更には2倍以下である。凝集粒子径と平均一次粒子径とがこのような関係を満たすことで、A型ゼオライト粉末の分散性が高くなる。本発明のA型ゼオライト粉末は、凝集粒子径と平均一次粒子径とが同程度ではなくとも高い分散性を示す。
【0014】
本発明において、「凝集粒子径」とは、光散乱を利用した体積基準の粒度分布測定における粒子径である。したがって、凝集粒子径は、二以上の一次粒子が凝集した凝集粒子のみならず、単独の一次粒子も含まれた粒子の粒子径となる。
【0015】
本発明のA型ゼオライト粉末は、凝集粒子径が体積分布で90%の粒子径、いわゆる90%粒子径(以下、「D90」とする。)であることが好ましい。D90と平均一次粒子径が上記の関係を満たすことで、A型ゼオライト粉末が実質的に粗大な粒子を含まなくなる。これにより、凝集粒子径が平均一次粒子径の1.3倍以上、更には1.5倍以上と、一次粒子が凝集している状態であっても、A型ゼオライト粉末の分散性が高くなる。
【0016】
さらに、本発明のA型ゼオライト粉末は、体積分布で50%の粒子の平均粒子径、いわゆる50%粒子径(以下、「D50」とする。)が平均一次粒子径の2倍以下、更には1.6倍以下、また更には1.3倍以下であることが好ましい。D50が平均一次粒子径の2倍以下であることで、A型ゼオライト粉末における、単分散の一次粒子が多くなる。これにより、A型ゼオライト粉末の分散性がより高くなりやすい。
【0017】
また、D90はD50の2倍以下、更には1.5倍以下であることが好ましいD50とD90とが上記の関係を満たすことで、一次粒子の凝集が、A型ゼオライト粉末の分散性に与える影響がより小さくなりやすい。
【0018】
本発明のA型ゼオライト粉末のイオン型は、用途に応じて任意の物とすることができる。例えば、洗剤用ビルダーとして使用するときはナトリウム(Na)型のA型ゼオライト粉末、リチウム二次電池用電解液の脱水剤として使用するときはリチウムイオンでイオン交換を行いリチウム(Li)型のA型ゼオライトを挙げることできる。
【0019】
次に本発明のA型ゼオライト粉末の製造方法について詳述する。
【0020】
本発明のA型ゼオライト粉末は、上記の平均一次粒子径及び平均凝集粒子径を有していれば、その製造方法は任意である。
【0021】
本発明の好ましい製造方法として、ケイ素、アルミニウム及びアルカリを含む混合物を結晶化させる結晶化工程を含むA型ゼオライト粉末の製造方法であって、該混合物のケイ素とアルカリとがモル比で2.5≦OH/Si≦10.0であることを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0022】
結晶化工程では、ケイ素、アルミニウム及びアルカリを含む混合物を結晶化させる。混合物は、ケイ素源、アルミニウム源及びアルカリ源を混合することで得ることができる。
【0023】
ケイ素源としては、ケイ酸ナトリウム溶液、シリカゾル、無定形シリカ及びカオリナイトの群から選ばれる少なくとも1種を例示できる。アルミニウム源としては、アルミン酸ナトリウム溶液又は水酸化アルミニウムの少なくともいずれかを例示できる。入手が容易であるため、ケイ素源はケイ酸ナトリウム溶液、及び、アルミニウム源はアルミン酸ナトリウム溶液が好ましい。アルカリ源としては、水酸化ナトリウムが好ましい。これらの原料は任意の方法で混合することができる。
【0024】
結晶化工程では、ケイ素源とアルカリ源とがモル比(以下、「アルカリ比」とする。)で2.5≦OH/SiO
2≦10.0、更には3≦OH/SiO
2≦6とすることが好ましい。アルカリ比がこの範囲であることで、得られるA型ゼオライト粉末の平均一次粒子径が小さくなりやすい。これにより、得られるA型ゼオライト粉末の分散性が高くなりやすい。
【0025】
結晶化工程では、混合物のアルカリ比が上記の範囲であれば、他の原料の組成は任意である。混合物の組成として以下の物を挙げることができる。
【0026】
SiO
2/Al
2O
3=1.8〜2.2
OH/SiO
2=2.5〜10.0
H
2O/Al
2O
3=60〜250
【0027】
なお、上記の組成は混合物中のケイ素、アルミニウムを酸化物換算した場合のモル比である。
【0028】
原料を混合して得られた混合物は、0℃以上70℃以下、更には30℃以上70℃以下で熟成することが好ましい。これにより、混合物中の組成が均一になりやすい。熟成時間は30分以上5時間以下を例示できる。
【0029】
結晶化工程では、混合後又は熟成後の混合物を結晶化する。これにより、混合物が結晶化し、A型ゼオライトが得られる。結晶化は、60℃以上100℃以下の温度で混合物を加熱すればよい。また、結晶化時間は2時間以上、5時間以下を例示できる。
【0030】
本発明の好ましい製造方法においては、必要に応じて結晶化工程の後に、ろ過・洗浄工程、イオン交換工程、乾燥工程及び解砕工程のいずれか1種以上を有していてもよい。
【0031】
ろ過・洗浄工程では、結晶化したA型ゼオライトと液相との固液分離を行う。これにより本発明のA型ゼオライト粉末を得ることができる。ろ過洗浄方法は、例えば、減圧ろ過、フィルタープレスなどのろ過方法を使用することができる。
【0032】
イオン交換工程では、用途に応じて、A型ゼオライトのイオン交換サイトをイオン交換する。例えば、アルカリ源として水酸化ナトリウムを使用した場合、結晶化後のA型ゼオライトのイオン交換サイトは主にナトリウムで占められている。これは、いわゆるNa型のA型ゼオライトである。Na型のA型ゼオライトは、塩化リチウムなどのリチウム塩水溶液と接触させることで、Li型のA型ゼオライトとすることもできる。また、例えば、塩化カリウムなどのカリウム塩水溶液をNa型のA型ゼオライトと接触させることで、K型のA型ゼオライトとすることもできる。
【0033】
乾燥工程では、乾燥を行いA型ゼオライト粉末を得る。乾燥方法は大気中、50℃以上、200℃以下で乾燥することが例示できる。
【0034】
本発明の好ましい製造方法では、結晶化後のA型ゼオライトを解砕する解砕工程を有していてもよい。結晶化後のA型ゼオライト粉末は凝集している場合がある。このような凝集は簡単にほぐすことができる。したがって、解砕工程では、緩慢に凝集した状態のA型ゼオライト粉末の凝集を壊すことを目的とする。晶析工程で得られるA型ゼオライト粉末は適度な大きさの平均一次粒子径を有している。そのため、解砕工程では、A型ゼオライト粉末を粉砕するほどのエネルギーを必要としない。また、解砕工程では、再凝集を抑制するため、解砕は乾式で行うことが好ましい。具体的な解砕方法として、乳鉢、ボールミル、インパクトミル及びジェットミル等を例示できる。特に、A型ゼオライト粉末の再凝集が防ぎやすいため、ジェットミルによる解砕が好ましい。