(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記焼結磁石体を、アルカリ、酸又は有機溶剤のいずれか1種以上により洗浄した後、上記電着法により上記粉末を磁石体表面に塗着させる請求項1乃至7のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
上記焼結磁石体の表面層をショットブラストで除去した後、上記電着法により上記粉末を磁石体表面に塗着させる請求項1乃至8のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
上記熱処理後、最終処理として、アルカリ、酸又は有機溶剤のいずれか1種以上による洗浄処理、研削処理、又はメッキもしくは塗装処理を行う請求項1乃至9のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
【背景技術】
【0002】
Nd−Fe−B系永久磁石は、その優れた磁気特性のために、ますます用途が広がってきている。近年、モータや発電機などの回転機の分野においても、機器の軽量短小化、高性能化、省エネルギー化に伴い、Nd−Fe−B系永久磁石を利用した永久磁石回転機が開発されている。回転機中の永久磁石は、巻き線や鉄心の発熱により高温に曝され、更に巻き線からの反磁界により極めて減磁しやすい状況下にある。このため、耐熱性、耐減磁性の指標となる保磁力が一定以上あり、磁力の大きさの指標となる残留磁束密度ができるだけ高いNd−Fe−B系焼結磁石が要求されている。
【0003】
Nd−Fe−B系焼結磁石の残留磁束密度増大は、Nd
2Fe
14B化合物の体積率増大と結晶配向度向上により達成され、これまでに種々のプロセスの改善が行われてきている。保磁力の増大に関しては、結晶粒の微細化を図る、Nd量を増やした組成合金を用いる、あるいは効果のある元素を添加する等、様々なアプローチがある中で、現在最も一般的な手法はDyやTbでNdの一部を置換した組成合金を用いることである。Nd
2Fe
14B化合物のNdをこれらの元素で置換することで、化合物の異方性磁界が増大し、保磁力も増大する。一方で、DyやTbによる置換は化合物の飽和磁気分極を減少させる。従って、上記手法で保磁力の増大を図る限りでは残留磁束密度の低下は避けられない。
【0004】
Nd−Fe−B系焼結磁石は、結晶粒界面で逆磁区の核が生成する外部磁界の大きさが保磁力となる。逆磁区の核生成には結晶粒界面の構造が強く影響しており、界面近傍における結晶構造の乱れが磁気的な構造の乱れを招き、逆磁区の生成を助長する。一般的には、結晶界面から5nm程度の深さまでの磁気的構造が保磁力の増大に寄与していると考えられている(非特許文献1:K. −D. Durst and H. Kronmuller, “THE COERCIVE FIELD OF SINTERED AND MELT−SPUN NdFeB MAGNETS”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials 68 (1987) 63−75)。本発明者らは、結晶粒の界面近傍のみにわずかなDyやTbを濃化させ、界面近傍のみの異方性磁界を増大させることで、残留磁束密度の低下を抑制しつつ保磁力を増大できることを見出している(特許文献1:特公平5−31807号公報)。更に、Nd
2Fe
14B化合物組成合金と、DyあるいはTbに富む合金を別に作製した後に混合して焼結する製造方法を確立している(特許文献2:特開平5−21218号公報)。この方法では、DyあるいはTbに富む合金は焼結時に液相となり、Nd
2Fe
14B化合物を取り囲むように分布する。その結果、化合物の粒界近傍でのみNdとDyあるいはTbが置換され、残留磁束密度の低下を抑制しつつ効果的に保磁力を増大できる。
【0005】
しかし、上記方法では2種の合金微粉末を混合した状態で1,000〜1,100℃という高温で焼結するために、DyあるいはTbがNd
2Fe
14B結晶粒の界面のみでなく内部まで拡散しやすい。実際に得られる磁石の組織観察からは結晶粒界表層部で界面から深さ1〜2μm程度まで拡散しており、拡散した領域を体積分率に換算すると60%以上となる。また、結晶粒内への拡散距離が長くなるほど界面近傍におけるDyあるいはTbの濃度は低下してしまう。結晶粒内への過度な拡散を極力抑えるには焼結温度を低下させることが有効であるが、これは同時に焼結による緻密化を阻害するため現実的な手法となり得ない。ホットプレスなどで応力を印加しながら低温で焼結する方法では、緻密化は可能であるが、生産性が極端に低くなるという問題がある。
【0006】
一方、焼結磁石を小型に加工した後、磁石表面にDyやTbをスパッタによって被着させ、磁石を焼結温度より低い温度で熱処理することにより粒界部にのみDyやTbを拡散させて保磁力を増大させる方法が報告されている(非特許文献2:K. T. Park, K. Hiraga and M. Sagawa, “Effect of Metal−Coating and Consecutive Heat Treatment on Coercivity of Thin Nd−Fe−B Sintered Magnets”, Proceedings of the Sixteen International Workshop on Rare−Earth Magnets and Their Applications, Sendai, p.257 (2000)、非特許文献3:町田憲一、川嵜尚志、鈴木俊治、伊東正浩、堀川高志、“Nd−Fe−B系焼結磁石の粒界改質と磁気特性”、粉体粉末冶金協会講演概要集 平成16年度春季大会、p.202参照)。この方法では、更に効率的にDyやTbを粒界に濃化できるため、残留磁束密度の低下をほとんど伴わずに保磁力を増大させることが可能である。また、磁石の比表面積が大きい、即ち磁石体が小さいほど供給されるDyやTbの量が多くなるので、この方法は小型あるいは薄型の磁石へのみ適用可能である。しかし、スパッタ等による金属膜の被着には生産性が悪いという問題があった。
【0007】
これらの課題に対し、R
1−Fe−B系組成(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)からなる焼結磁石体表面に、R
2の酸化物、フッ化物又は酸フッ化物(R
2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末を塗布し熱処理してR
2を焼結磁石体に吸収させる方法が提案されている(特許文献3:特開2007−53351号公報、特許文献4:国際公開第2006/043348号)。
【0008】
この方法によれば、残留磁束密度の減少を抑制しつつ保磁力を増大させることが可能であるが、その実施に際しては未だ種々改善が望まれる。即ち、焼結磁石体表面に粉末を存在させる方法としては、上記粉末を水や有機溶媒に分散させた分散液に焼結磁石体を浸漬し、又はこの分散液をスプレーして塗布し、乾燥させる方法が採られるが、浸漬法やスプレー法では、粉末の塗着量をコントロールすることが難しく、上記R
2を十分に吸収させることができなかったり、逆に必要以上の粉末が塗布され貴重なR
2を無駄に消費してしまう場合もある。また、塗膜の膜厚にバラツキが生じやすく、膜の緻密性も高くないため、保磁力増大を飽和にまで高めるには過剰な塗着量が必要になる。更に、粉末からなる塗膜の密着力が低いために塗着工程から熱処理工程が完了するまでの作業性に劣るという問題もあり、また更に大面積の処理が困難であるとの問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、R
1−Fe−B系組成(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)からなる焼結磁石体表面に、R
2のフッ化物(R
2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末を塗布し熱処理して希土類永久磁石を製造する際に、上記粉末を焼結磁石体表面に塗布する工程を改善し、当該粉末を緻密でムラのない膜として磁石体表面に塗布して、良好な残留磁束密度と高い保磁力を有する高性能な希土類磁石を効率的に製造することができる希土類永久磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、Nd−Fe−B系焼結磁石に代表されるR
1−Fe−B系焼結磁石体に対し、R
2のフッ化物(R
2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末を磁石表面に存在させた状態で加熱して磁石体にR
2を吸収させることにより、保磁力を増大させた希土類永久磁石を得る際に、上記粉末を水に分散したスラリーからなる電着液に上記磁石体を浸漬して電着法により当該粉末を磁石体表面に塗着させ
、当該粉末からなる塗膜を形成することにより、粉末の塗着量を容易にコントロールすることができると共に、膜厚のバラツキが小さく緻密で塗着ムラの少ない塗膜を密着性よく磁石体表面に形成することができ、更に大面積を短時間で効率的に処理することが可能となり、良好な残留磁束密度と高い保磁力を有する高性能な希土類磁石を非常に効率的に製造し得ることを見い出し、本発明を完成したものである。
【0013】
従って、本発明は、下記の希土類永久磁石の製造方法を提供するものである。
請求項1:
R
1−Fe−B系組成(R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)からなる焼結磁石体を、R
2のフッ化物(R
2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末が水に分散したスラリーからなる電着液に浸漬し、電着法により当該粉末を上記焼結磁石体の表面に塗着させ
て当該粉末からなる塗膜を形成し、当該磁石体の表面に上記粉末を存在させた状態で、当該磁石体及び粉末
に対して当該磁石の焼結温度以下の温度で真空又は不活性ガス中において熱処理を施すことを特徴とする希土類永久磁石の製造方法。
請求項2:
電着液が、界面活性剤を分散剤として含有するものである請求項1記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項3:
R
2のフッ化物を含有する粉末の平均粒子径が100μm以下である請求項1又は2記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項4:
R
2のフッ化物を含有する粉末の磁石体表面に対する存在量が、その面密度で、10μg/mm
2以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項5:
R
2のフッ化物のR
2に10原子%以上のDy及び/又はTbが含まれている請求項1乃至4のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項6:
上記R
2のフッ化物を含有する粉末において、R
2に10原子%以上のDy及び/又はTbが含まれ、且つR
2におけるNdとPrの合計濃度が前記R
1におけるNdとPrの合計濃度より低いことを特徴とする請求項5記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項7:
上記熱処理後、更に低温で時効処理を施すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項8:
上記焼結磁石体を、アルカリ、酸又は有機溶剤のいずれか1種以上により洗浄した後、上記電着法により上記粉末を磁石体表面に塗着させる請求項1乃至7のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項9:
上記焼結磁石体の表面層をショットブラストで除去した後、上記電着法により上記粉末を磁石体表面に塗着させる請求項1乃至8のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
請求項10:
上記熱処理後、最終処理として、アルカリ、酸又は有機溶剤のいずれか1種以上による洗浄処理、研削処理、又はメッキもしくは塗装処理を行う請求項1乃至9のいずれか1項記載の希土類永久磁石の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、高い残留磁束密度と高い保磁力を有するR−Fe−B系焼結磁石を確実かつ効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の希土類永久磁石の製造方法は、上記のようにR
1−Fe−B系組成からなる焼結磁石体表面に、上記R
2で示される後述する希土類元素のフッ化物を供給して熱処理を行うものである。
【0017】
ここで、R
1−Fe−B系焼結磁石体は、常法に従い、母合金を粗粉砕、微粉砕、成形、焼結させることにより得ることができる。
【0018】
なお、本発明において、R、R
1はいずれもY及びScを含む希土類元素から選ばれるものを意味するが、Rは主に得られた磁石体に関して使用し、R
1は主に出発原料に関して用いる。
【0019】
母合金は、R
1、Fe、Bを含有する。R
1はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上で、具体的にはY、Sc、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb及びLuが挙げられ、好ましくはNd、Pr、Dyを主体とする。これらY及びScを含む希土類元素は合金全体の10〜15原子%、特に12〜15原子%であることが好ましく、更に好ましくはR
1中にNdとPrあるいはそのいずれか1種を10原子%以上、特に50原子%以上含有することが好適である。Bは3〜15原子%、特に4〜8原子%含有することが好ましい。その他、Al、Cu、Zn、In、Si、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Hf、Ta、Wの中から選ばれる1種又は2種以上を0〜11原子%、特に0.1〜5原子%含有してもよい。残部はFe及びC、N、O等の不可避的な不純物であるが、Feは50原子%以上、特に65原子%以上含有することが好ましい。また、Feの一部、例えばFeの0〜40原子%、特に0〜15原子%をCoで置換しても差支えない。
【0020】
母合金は原料金属あるいは合金を真空あるいは不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中で溶解したのち、平型やブックモールドに鋳込む、あるいはストリップキャストにより鋳造することで得られる。また、本系合金の主相であるR
2Fe
14B化合物組成に近い合金と焼結温度で液相助剤となるRリッチな合金とを別々に作製し、粗粉砕後に秤量混合する、いわゆる2合金法も本発明には適用可能である。但し、主相組成に近い合金に対して、鋳造時の冷却速度や合金組成に依存してα−Fe相が残存しやすく、R
2Fe
14B化合物相の量を増やす目的で必要に応じて均質化処理を施す。その条件は真空あるいはAr雰囲気中で700〜1,200℃で1時間以上熱処理する。この場合、主相組成に近い合金はストリップキャスト法にて得ることもできる。液相助剤となるRリッチな合金については上記鋳造法のほかに、いわゆる液体急冷法やストリップキャスト法も適用できる。
【0021】
更に、以下に述べる粉砕工程において、R
1の炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種あるいはこれらの混合物又は複合物を0.005〜5質量%の範囲で合金粉末と混合することも可能である。
【0022】
上記合金は、通常0.05〜3mm、特に0.05〜1.5mmに粗粉砕される。粗粉砕工程にはブラウンミルあるいは水素粉砕が用いられ、ストリップキャストにより作製された合金の場合は水素粉砕が好ましい。粗粉は、例えば高圧窒素を用いたジェットミルにより通常0.2〜30μm、特に0.5〜20μmに微粉砕される。微粉末は磁界中圧縮成形機で成形され、焼結炉に投入される。焼結は真空あるいは不活性ガス雰囲気中、通常900〜1,250℃、特に1,000〜1,100℃で行われる。
【0023】
ここで得られた焼結磁石は、正方晶R
2Fe
14B化合物を主相として60〜99体積%、特に好ましくは80〜98体積%含有し、残部は0.5〜20体積%のRに富む相、0〜10体積%のBに富む相及び不可避的不純物により生成した、あるいは添加による炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種あるいはこれらの混合物又は複合物からなる。
【0024】
得られた焼結ブロックは所定形状に研削される。その大きさは特に制限されないが、本発明において、磁石表面に塗着させたR
2のフッ化物を含有する粉末から磁石体に吸収されるR
2の量は磁石体の比表面積が大きい、即ち寸法が小さいほど多くなるので、上記形状の最大部の寸法が100mm以下、好ましくは50mm以下、特に好ましくは20mm以下で、かつ磁気異方性化した方向の寸法が10mm以下、好ましくは5mm以下、特に2mm以下であることが好ましい。より好ましくは磁気異方性化した方向の寸法が1mm以下である。なお、本発明では、後述する電着法により上記粉末を塗着させるものであるから、より大面積に対しても良好かつ短時間に処理することが可能であり、最大部の寸法が100mmを超えるもの、磁気異方性化した方向の寸法が10mmを超えるものであっても、良好に処理することが可能である。また、上記最大部の寸法及び磁気異方性化した方向の寸法の下限に特に制限はなく適宜選定されるが、通常は上記形状の最大部の寸法は0.1mm以上、磁気異方性化した方向の寸法は0.05mm以上とすることが好ましい。
【0025】
研削加工された磁石体表面にはR
2のフッ化物を含有する粉末を電着法により存在させる。この場合、R
2はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上で、R
2中10原子%以上、より好ましくは20原子%以上、特に40原子%以上のDy又はTbを含むことが好ましい。この場合、前記R
2に上記のように10原子%以上のDy及び/又はTbが含まれ、かつR
2におけるNdとPrの合計濃度が前記R
1におけるNdとPrの合計濃度より低いことが本発明の目的からより好ましい。
【0026】
磁石表面空間における粉末の存在量は高いほど吸収されるR
2量が多くなるので、本発明における効果をより確実に達成するために、上記粉末の存在量は、面密度で、10μg/mm
2以上であることが好ましく、更に好ましくは60μg/mm
2以上である。
【0027】
上記粉末の粒子径はR
2成分が磁石に吸収される際の反応性に影響を与え、粒子が小さいほど反応にあずかる接触面積が増大する。本発明における効果をより効果的に達成させるためには、存在させる粉末の平均粒子径は100μm以下、好ましくは10μm以下が望ましい。その下限は特に制限されないが1nm以上が好ましい。なお、この平均粒子径は、例えばレーザー回折法などによる粒度分布測定装置等を用いて質量平均値D
50(即ち、累積質量が50%となるときの粒子径又はメジアン径)などとして求めることができる。
【0028】
本発明におけるR
2のフッ化物とは、好ましくはR
2F
3であるが、これ以外のR
2F
n(nは任意の正数)や、金属元素によりR
2一部を置換したあるいは安定化されたもの等、本発明の効果を達成することができるR
2とフッ素を含むフッ化物を指す。
【0029】
この場合、磁石体表面に存在させる粉末は、R
2のフッ化物を含有し、この他にR
3(R
3はY及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上)の酸化物、酸フッ化物、炭化物、窒化物、水酸化物、水素化物のうち少なくとも1種あるいはこれらの混合物又は複合物を含んでもよい。更に、粉末の分散性や化学的・物理的吸着を促進するために、ホウ素、窒化ホウ素、シリコン、炭素等の微粉末やステアリン酸等の有機化合物を含むこともできる。本発明の効果を高効率に達成するには、R
2のフッ化物が粉末全体に対して10質量%以上、好ましくは20質量%以上含まれる。特には、主成分として、R
2のフッ化物が、粉末全体に対して50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含有することが推奨される。
【0030】
本発明では、粉末を磁石体表面に存在させる方法(粉末処理方法)として、上記粉末を水に分散させたスラリーからなる電着液中に上記焼結磁石体を浸漬し、電着法により焼結磁石体表面に上記粉末を塗着させる方法が採用される。
【0031】
上記電着液中の粉末の分散量に特に制限はないが、良好かつ効率的に粉末を塗着させるために分散量が質量分率1%以上、特に10%以上、更には20%以上のスラリーとすることが好ましい。なお、分散量が多すぎても均一な分散液が得られないなどの不都合が生じるため、上限は質量分率70%以下、特に60%以下、更には50%以下とすることが好ましい。この場合、分散剤として界面活性剤を電着液に添加して上記粉末の分散性を高めることができる。
【0032】
電着法による上記粉末の塗着操作は公知の方法に従って行なえばよく、例えば
図1に示したように、上記粉末を分散させた電着液1中に焼結磁石体2を浸漬すると共に、1又は複数の対極3を配置し、焼結磁石体2を陰極(カソード)若しくは正極(アノード)、対極3を正極(アノード)若しくは陰極(カソード)として直流の電気回路を構成し、所定の直流電圧を印加することにより電着を行なうことができる。なお、
図1では、焼結磁石体2を陰極(カソード)、対極3を正極(アノード)としているが、使用する電着粉の極性は界面活性剤により変化するため、それに応じて上記焼結磁石体2及び対極3の極性が設定される。
【0033】
この場合、上記対極は、特に制限はなく公知の材料から適宜選定して用いることができ、例えばステンレススチール板を好適に用いることができる。また、通電条件も適宜設定すればよく、特に制限されるものではないが、通常は焼結磁石体2と対極3との間に1〜300V、特に5〜50Vの電圧を、1〜300秒、特に5〜60秒印加することができる。なお、電着液の温度も適宜調整され特に制限はないが、通常は10〜40℃とすることができる。
【0034】
このように、R
2のフッ化物を含有する粉末を電着法により磁石表面に塗着して磁石表面に当該粉末を存在させた状態で、この磁石と粉末は真空あるいはアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)等の不活性ガス雰囲気中で熱処理される(以後、この処理を吸収処理と称する)。吸収処理温度は磁石体の焼結温度以下である。処理温度の限定理由は以下のとおりである。
【0035】
即ち、当該焼結磁石の焼結温度(T
S℃と称する)より高い温度で処理すると、(1)焼結磁石の組織が変質し、高い磁気特性が得られなくなる、(2)熱変形により加工寸法が維持できなくなる、(3)拡散させたRが磁石の結晶粒界面だけでなく内部にまで拡散してしまい残留磁束密度が低下する、等の問題が生じるために、処理温度は焼結温度以下、好ましくは(T
S−10)℃以下とする。なお、温度の下限は適宜選定されるが、通常350℃以上である。吸収処理時間は1分〜100時間である。1分未満では吸収処理が完了せず、100時間を超えると、焼結磁石の組織が変質する、不可避的な酸化や成分の蒸発が磁気特性に悪い影響を与えるといった問題が生じやすい。より好ましくは5分〜8時間、特に10分〜6時間である。
【0036】
以上のような吸収処理により、磁石内の希土類に富む粒界相成分に、磁石表面に存在させた粉末に含まれていたR
2が濃化し、このR
2がR
2Fe
14B主相粒子の表層部付近で置換される。また、R
2のフッ化物のフッ素は、その一部がR
2と共に磁石内に吸収されることにより、R
2の粉末からの供給と磁石の結晶粒界における拡散を著しく高めることができる。
【0037】
ここで、R
2のフッ化物に含まれる希土類元素は、Y及びScを含む希土類元素から選ばれる1種又は2種以上であるが、上記表層部に濃化して結晶磁気異方性を高める効果の特に大きい元素はDy、Tbであるので、上述のように、粉末に含まれている希土類元素としてはDy及びTbの割合が合計で10原子%以上であることが好適である。更に好ましくは20原子%以上である。また、R
2におけるNdとPrの合計濃度が、R
1のNdとPrの合計濃度より低いことが好ましい。
【0038】
この吸収処理の結果、残留磁束密度の低減をほとんど伴わずにR−Fe−B系焼結磁石の保磁力が効率的に増大される。
【0039】
上記吸収処理は、上述した電着法により焼結磁石体表面に上記R
2のフッ化物を含む粉末を塗着させ、該焼結磁石体表面に上記粉末を付着させた状態で熱処理することによって行うことができ、この場合、上記吸収処理において、磁石は粉末に覆われ、磁石同士は離れて存在するので、高温での熱処理であるにもかかわらず、吸収処理後に磁石同士が溶着することがない。更に、粉末も熱処理後に磁石に固着することもないため、熱処理用容器に大量に磁石を投入して処理することが可能であり、本発明による製造方法は生産性にも優れている。
【0040】
また、本発明では、上記粉末を上述した電着法により焼結磁石体表面に塗着するため、印加電圧や印加時間を調節することにより容易に粉末の塗着量をコントロールすることができ、必要量の粉末を無駄なく確実に磁石体表面に供給することができる。更に、膜厚のバラツキが小さく緻密で塗着ムラの少ない粉末の塗膜を確実に磁石体表面に形成することができるため、最小限の粉末で保磁力の増大が飽和に達するまでの吸収処理を行なうことができ、非常に効率的かつ経済的である上、短時間で良好な粉末の膜を大面積にわたって形成することができる。また更に、電着法により形成される粉末の塗膜は、浸漬法やスプレー塗布による膜よりも密着性に優れ、作業性よく確実に上記吸収処理を行なうことができ、この点からも本発明の方法は非常に効率的である。なお、本発明では、電着法により上記粉末を磁石体に塗着させる際の電着液として、溶媒に水を用いた水系の電着液を用いるので、アルコール等の有機溶媒を用いた電着液を用いる場合に比べて、塗膜が形成される速度が速い、有機溶剤を使用することでの引火・爆発の危険性や作業者の健康被害などの危険性が無いなどの利点もある。
【0041】
本発明の製造方法では、特に制限されるものではないが、上記吸収処理の後、時効処理を施すことが好ましい。この時効処理としては、吸収処理温度未満、好ましくは200℃以上で吸収処理温度より10℃低い温度以下、更に好ましくは350℃以上で吸収処理温度より10℃低い温度以下であることが望ましい。また、その雰囲気は真空あるいはAr、He等の不活性ガス中であることが好ましい。時効処理の時間は1分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、特に30分〜2時間である。
【0042】
なお、上記電着法により粉末を焼結磁石体に存在させる前の上述した焼結磁石体の研削加工時において、研削加工機の冷却液に水系のものを用いる、あるいは加工時に研削面が高温に曝される場合、被研削面に酸化膜が生じやすく、この酸化膜が粉末から磁石体へのR
2成分の吸収反応を妨げることがある。このような場合には、アルカリ、酸あるいは有機溶剤のいずれか1種以上を用いて洗浄する、あるいはショットブラストを施して、その酸化膜を除去することで適切な吸収処理ができる。
【0043】
アルカリとしては、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム等、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸等、有機溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を使用することができる。この場合、上記アルカリや酸は、磁石体を浸食しない適宜濃度の水溶液として使用することができる。
【0044】
更には、上記焼結磁石体の表面層を上記粉末を焼結磁石体に存在させる前にショットブラストで除去することもできる。
【0045】
また、上記吸収処理あるいはそれに続く時効処理を施した磁石に対して、アルカリ、酸あるいは有機溶剤のいずれか1種以上により洗浄したり、実用形状に研削することもできる。更には、かかる吸収処理、時効処理、洗浄又は研削後にメッキ又は塗装を施すこともできる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の具体的態様について実施例をもって詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、下記例で、フッ化Tbの磁石体表面に対する面密度は、粉末処理後の磁石質量増とその表面積から算出した。
【0047】
[実施例1]
Ndが14.5原子%、Cuが0.2原子%、Bが6.2原子%、Alが1.0原子%、Siが1.0原子%、Feが残部からなる薄板状の合金を、純度99質量%以上のNd、Al、Fe、Cuメタル、純度99.99質量%のSi、フェロボロンを用いてAr雰囲気中で高周波溶解した後、銅製単ロールに注湯するいわゆるストリップキャスト法により薄板状の合金とした。得られた合金を室温にて0.11MPaの水素化に曝して水素を吸蔵させた後、真空排気を行ないながら500℃まで加熱して部分的に水素を放出させ、冷却してから篩いにかけて、50メッシュ以下の粗粉末とした。
【0048】
上記粗粉末を、高圧窒素ガスを用いたジェットミルで粉末の重量中位粒径5μmに微粉砕した。得られたこの混合微粉末を窒素雰囲気下15kOeの磁界中で配向させながら、約1ton/cm
2の圧力でブロック状に成形した。この成形体をAr雰囲気の焼結炉内に投入し、1,060℃で2時間焼結して磁石ブロックを得た。この磁石ブロックをダイヤモンドカッターを用いて全面研削加工した後、アルカリ溶液、純水、硝酸、純水の順で洗浄し乾燥させて、17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)のブロック状磁石体を得た。
【0049】
次いで、平均粉末粒径が0.2μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%で水と混合し、フッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
【0050】
図1のように、このスラリー1中に上記磁石体2を浸漬すると共に、この磁石体2と20mmの間隔をもって一対のステンレススチール板(SUS304)を対極3として配置し、磁石体2をカソード、対極3をアノードとして電気回路を構成し、直流電圧10Vを10秒間印加して電着を行なった。電着液(スラリー)から引き上げた磁石体を直ちに熱風により乾燥させ、磁石体表面に上記フッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度は100μg/mm
2であった。
【0051】
この表面にフッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した磁石体をAr雰囲気中、900℃で5時間熱処理して吸収処理を施し、更に500℃で1時間時効処理して急冷することにより磁石体を得た。得られた磁石体は、吸収処理によって720kA/mの保磁力増大が認められた。
【0052】
[比較例1]
実施例1と同様に17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)の磁石体を用意した。また、平均粉末粒径が0.2μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%でエタノールと混合しフッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
【0053】
図1のように、このスラリー1中に上記磁石体2を浸漬すると共に、この磁石体2と20mmの間隔をもって一対のステンレススチール板(SUS304)を対極3として配置し、磁石体2をカソード、対極3をアノードとして電気回路を構成し、直流電圧10Vを10秒間印加して電着を行なった。電着液(スラリー)から引き上げた磁石体を直ちに熱風により乾燥させ、磁石体表面に上記フッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度は40μg/mm
2であった。
【0054】
この表面にフッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した磁石体をAr雰囲気中、900℃で5時間熱処理して吸収処理を施し、更に500℃で1時間時効処理して急冷することにより磁石体を得た。得られた磁石体は、吸収処理によって450kA/mの保磁力増大が認められた。
【0055】
[比較例2]
実施例1と同様に17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)の磁石体を用意した。また、平均粉末粒径が0.2μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%でエタノールと混合しフッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
【0056】
図1のように、このスラリー1中に上記磁石体2を浸漬すると共に、この磁石体2と20mmの間隔をもって一対のステンレススチール板(SUS304)を対極3として配置し、磁石体2をカソード、対極3をアノードとして電気回路を構成し、直流電圧10Vを30秒間印加して電着を行なった。電着液(スラリー)から引き上げた磁石体を直ちに熱風により乾燥させ、磁石体表面に上記フッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度は100μg/mm
2であった。
【0057】
この表面にフッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した磁石体をAr雰囲気中、900℃で5時間熱処理して吸収処理を施し、更に500℃で1時間時効処理して急冷することにより磁石体を得た。得られた磁石体は、吸収処理によって720kA/mの保磁力増大が認められた。
【0058】
次に、参考としてフッ化テルビウム粉末の粒径と保磁力との関係を示す以下の実験を行なった。以下に参考例1〜3を示す。
【0059】
[参考例1]
Ndが14.5原子%、Cuが0.2原子%、Bが6.2原子%、Alが1.0原子%、Siが1.0原子%、Feが残部からなる薄板状の合金を、純度99質量%以上のNd、Al、Fe、Cuメタル、純度99.99質量%のSi、フェロボロンを用いてAr雰囲気中で高周波溶解した後、銅製単ロールに注湯するいわゆるストリップキャスト法により薄板状の合金とした。得られた合金を室温にて0.11MPaの水素化に曝して水素を吸蔵させた後、真空排気を行ないながら500℃まで加熱して部分的に水素を放出させ、冷却してから篩いにかけて、50メッシュ以下の粗粉末とした。
【0060】
上記粗粉末を、高圧窒素ガスを用いたジェットミルで粉末の重量中位粒径5μmに微粉砕した。得られたこの混合微粉末を窒素雰囲気下15kOeの磁界中で配向させながら、約1ton/cm
2の圧力でブロック状に成形した。この成形体をAr雰囲気の焼結炉内に投入し、1,060℃で2時間焼結して磁石ブロックを得た。この磁石ブロックをダイヤモンドカッターを用いて全面研削加工した後、アルカリ溶液、純水、硝酸、純水の順で洗浄し乾燥させて、17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)のブロック状磁石体を得た。
【0061】
次いで、平均粉末粒径が0.2μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%でエタノールと混合し、フッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
【0062】
図1のように、このスラリー1中に上記磁石体2を浸漬すると共に、この磁石体2と20mmの間隔をもって一対のステンレススチール板(SUS304)を対極3として配置し、磁石体2をカソード、対極3をアノードとして電気回路を構成し、直流電圧40Vを10秒間印加して電着を行なった。電着液(スラリー)から引き上げた磁石体を直ちに熱風により乾燥させ、磁石体表面に上記フッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度は100μg/mm
2であった。また、
図2で示す磁石体の磁石中央部、及び端部の9点について、上記フッ化テルビウム粉末の薄膜の膜厚を測定した結果を表1に示す。表1のとおり、最大で30μm、最小で25μmであった。
【0063】
次に、この表面にフッ化テルビウム粉末の薄膜を形成した磁石体をAr雰囲気中、900℃で5時間熱処理して吸収処理を施し、更に500℃で1時間時効処理して急冷することにより磁石体を得た。得られた磁石体について、
図2に示された上記の9点の場所から2mm×2mm×2mmに磁石体を切り出し、その保磁力を測定した。結果を表2に示す。表2に示されているように、最大で720kA/m、最小で700kA/mの保磁力の増大が認められた。
【0064】
[参考例2]
参考例1と同様にして、17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)のブロック状磁石体を得た。
次いで、平均粉末粒径が4μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%でエタノールと混合し、フッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
この電着液を用いて、参考例1と同じ方法で、磁石体表面に上記フッ化テルビウム粉末の薄膜を形成させた。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度を測定すると100μg/mm
2であった。
【0065】
参考例1と同じ方法で、その膜厚分布、及び、保磁力分布を測定した。その結果を表1、表2に示す。表1及び表2に示されているように、膜厚は最大で220μm、最小で130μm保磁力は最大で720kA/m、最小で590kA/mの保磁力増大が得られた。
【0066】
[参考例3]
参考例1と同様にして、17mm×17mm×2mm(磁気異方性化した方向)のブロック状磁石体を得た。
次いで、平均粉末粒径が5μmのフッ化テルビウム(TbF
3)を質量分率40%でエタノールと混合し、フッ化テルビウムの粉末をよく分散させてスラリーとし、このスラリーを電着液とした。
この電着液を用いて、参考例1と同じ方法で、磁石体表面に上記酸化テルビウム粉末の薄膜を形成させた。磁石体表面のフッ化テルビウムの面密度を測定すると100μg/mm
2であった。
【0067】
参考例1と同じ方法で、その膜厚分布、及び、保磁力分布を測定した。その結果を表1、表2に示す。表1及び表2に示されているように、膜厚は最大で270μm、最小で115μm、保磁力は最大で720kA/m、最小で500kA/mの保磁力増大が得られた。
【0068】
【表1】
単位はμm
【0069】
【表2】
単位はkA/m
【0070】
参考例1〜3から、フッ化テルビウム粉末の粒径が小さい程、得られる薄膜に厚みのばらつきが少なく均一な薄膜となり、ばらつきの少ない均一な保磁力の増大が得られることが確認された。このように均一性の観点から、フッ化テルビウム粉末の粒径4μm以下、特に0.2μm以下であることが好ましく、下限に制限はないが1nm以上であることが好ましい。
【0071】
更に上記参考例1〜3では、スラリーの調製にエタノールを用いたが、これに限定されず水やその他の有機溶媒を用いることも可能である。