特許第6107671号(P6107671)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6107671新規メソゲン・ケイ素化合物共重合体、及び該共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6107671
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】新規メソゲン・ケイ素化合物共重合体、及び該共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/695 20060101AFI20170327BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   C08G63/695
   C08G63/78
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-126(P2014-126)
(22)【出願日】2014年1月6日
(65)【公開番号】特開2015-129205(P2015-129205A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
(72)【発明者】
【氏名】市岡 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀好
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−272022(JP,A)
【文献】 特開2011−084714(JP,A)
【文献】 特開昭54−065795(JP,A)
【文献】 特開平10−020531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63/00−63/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)で表される構造を有する重量平均分子量が450〜500,000のメソゲン・ケイ素化合物共重合体。
【化1】
(式中、R1、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。また、R2は下記式
【化2】
で示される構造から選ばれる2価の基である。pは0又は1である。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2である。但し、p=0の場合にq、rは同時に0ではない。l、mはそれぞれ1未満の正数を示し、n、oはそれぞれ0又は0.5以下の正数を示す。更にl、m、n、oはl+m+n+o=1を満たす。Z、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよいケイ素原子を含む2価の有機基を示す。)
【請求項2】
前記平均組成式(1)中、Zが下記一般式(2)で示される基であり、oが0であることを特徴とする請求項1に記載のメソゲン・ケイ素化合物共重合体。
【化3】
(式中、aは0〜60の整数であり、bは0〜60の整数である。R6及びR7はそれぞれ炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、相互に異なっていても同一でもよい。但し、R6、R7は同時にメチル基ではない。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法であって、下記一般式(3)で表される化合物、及び場合により下記一般式(4)で表される化合物を無水酢酸と反応させ、アセチル化した後に、それらと下記一般式(5)及び/又は下記一般式(6)で表される化合物とを脱酸重縮合反応させることを特徴とするメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法。
【化4】
【化5】
(式中、R2は下記式
【化6】
で示される構造から選ばれる2価の基である。pは0又は1である。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2である。但し、p=0の場合にq、rは同時に0ではない。)
【化7】
(式中、R1は同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。Zはケイ素原子を含む2価の有機基を示す。)
【化8】
(式中、R5は同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。Xはケイ素原子を含む2価の有機基を示す。但し、式(6)で表される化合物は、式(5)で表される化合物とは異なる化合物である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規メソゲン・ケイ素化合物共重合体、及び該共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの発展が著しいが、性能の向上に伴って発熱量が増大している。熱はデバイスに悪影響を与えるため、熱を外部に効率よく放出することが重要な課題となっている。その課題の解決法として、樹脂中への高熱伝導性の無機化合物粒子の充填が広く行われており、その結果、樹脂単体と比べて、より効率的に熱伝導を行えるようになる。しかし、一定量の樹脂に対して、無機化合物粒子の充填量には限界があるため、この方法では熱伝導性の向上に限界があった。更に無機化合物が高価という欠点もあった。
【0003】
このような背景から樹脂自体の熱伝導性向上が望まれていた。熱伝導性を向上させるには、樹脂中にメソゲン基と呼ばれる樹脂同士が重なり合いやすい部位を持たせることで達成できる。しかしながら、樹脂中のメソゲン基が多くなるほど融点の上昇、樹脂の溶媒への難溶化、といった取り扱いが悪化する欠点があった。そのため、メソゲン基を単純に増加させるだけでは、利用価値のある高熱伝導性樹脂を開発することはできなかった。
【0004】
特許文献1(特開2011−84714号公報)には、メソゲン基とスペーサーとを共重合させた熱可塑性樹脂が開示されている。該高分子化合物はメソゲンのスタッキングにより、熱伝導性に優れることが記載されている。しかしながら、メソゲン基を持つ樹脂はメソゲン基のスタッキングにより、固くて脆くなり、更に溶媒に難溶化することが知られており、上記の樹脂も例外ではない。このような樹脂は脆いために利用箇所が限定されたり、溶媒に溶けづらくなるために押出成型のような無溶媒での使用に限られてきたりするのが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−84714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、例えば放熱材料、又は半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に使用することができる新規なメソゲン・ケイ素化合物共重合体、及び該共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記方法によって製造し得る、下記平均組成式(1)で表される構造を有する重量平均分子量が450〜500,000の新規なメソゲン・ケイ素化合物共重合体が、熱伝導性に優れ、更に汎用されている溶媒への溶解性が顕著に優れることから、放熱材料、又は半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に使用し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記新規メソゲン・ケイ素化合物共重合体及び該共重合体の製造方法を提供する。
〔1〕
下記平均組成式(1)で表される構造を有する重量平均分子量が450〜500,000のメソゲン・ケイ素化合物共重合体。
【化1】
(式中、R1、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。また、R2は下記式
【化2】
で示される構造から選ばれる2価の基である。pは0又は1である。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2である。但し、p=0の場合にq、rは同時に0ではない。l、mはそれぞれ1未満の正数を示し、n、oはそれぞれ0又は0.5以下の正数を示す。更にl、m、n、oはl+m+n+o=1を満たす。Z、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよいケイ素原子を含む2価の有機基を示す。)
〔2〕
前記平均組成式(1)中、Zが下記一般式(2)で示される基であり、oが0であることを特徴とする〔1〕に記載のメソゲン・ケイ素化合物共重合体。
【化3】
(式中、aは0〜60の整数であり、bは0〜60の整数である。R6及びR7はそれぞれ炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、相互に異なっていても同一でもよい。但し、R6、R7は同時にメチル基ではない。)
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載のメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法であって、下記一般式(3)で表される化合物、及び場合により下記一般式(4)で表される化合物を無水酢酸と反応させ、アセチル化した後に、それらと下記一般式(5)及び/又は下記一般式(6)で表される化合物とを脱酸重縮合反応させることを特徴とするメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法。
【化4】
【化5】
(式中、R2は下記式
【化6】
で示される構造から選ばれる2価の基である。pは0又は1である。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2である。但し、p=0の場合にq、rは同時に0ではない。)
【化7】
(式中、R1は同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。Zはケイ素原子を含む2価の有機基を示す。)
【化8】
(式中、R5は同一でも異なっていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基及びアラルキレン基より選ばれる炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。Xはケイ素原子を含む2価の有機基を示す。但し、式(6)で表される化合物は、式(5)で表される化合物とは異なる化合物である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規なメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、熱伝導性に優れ、更に汎用されている溶媒への溶解性が顕著に優れることから、放熱材料、又は半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られた樹脂(1)の1H−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、下記平均組成式(1)で表される構造を有し、重量平均分子量が450〜500,000のものである。
【化9】
(式中、R1、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい炭素原子数1〜20の2価炭化水素基を示す。また、R2は下記式
【化10】
で示される構造から選ばれる2価の基である。pは0又は1である。R3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2である。但し、p=0の場合にq、rは同時に0ではない。l、mはそれぞれ1未満の正数を示し、n、oはそれぞれ0又は0.5以下の正数を示す。更にl、m、n、oはl+m+n+o=1を満たす。Z、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよいケイ素原子を含む2価の有機基を示す。)
【0012】
上記式(1)中、R1、R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、直鎖状、分岐状又は環状の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、アラルキレン基や、これらの2種又はそれ以上が結合した基等の炭素原子数1〜20、特に1〜16の2価炭化水素基であり、原料入手の面から炭素原子数2〜10の2価炭化水素基が好ましい。R1、R5として、具体的には、
−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−、
−(CH26−、−(CH28−、−(CH210−、−(CH215−、
−(CH220−、−CH(CH3)−、−C(CH3)(CH3)−、
−CH2−CH(CH3)−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH=CH−、
−C≡C−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、
−CH2−CH(CH3)−CH(CH3)−、−CH2−CH(CH2CH2CH3)−、
−CH2−C(CH2CH2CH3)(CH2CH2CH3)−、
−CH2−C(CH2CH(CH3)CH3)(CH2CH2CH3)−、
−CH2−C(CH2CH(CH3)CH3)(CH2C(CH3)(CH3)CH3)−、
【化11】
(式中、波線は結合手を示す。)
等が例示できる。
【0013】
また、R2は下記式
【化12】
で示される構造から選ばれる2価の基である。
pは0又は1である。
【0014】
3及びR4はそれぞれ炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、アルコキシ基又は(メタ)アクリル基であり、相互に異なっていても同一でもよい。R3及びR4の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、メタリル基等のアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等のアルコキシ基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。これらの中でもメトキシ基、エトキシ基、アリル基、メタリル基が熱硬化性を付与する官能基の導入の点から好ましい。また、q、rはそれぞれ0、1又は2であり、好ましくは0又は1である。但し、pが0の場合にq、rは同時に0ではない。
【0015】
lは1未満の正数、好ましくは0.1〜0.7の正数、更に好ましくは0.2〜0.5の正数であり、mは1未満の正数、好ましくは0.1〜0.7の正数、更に好ましくは0.2〜0.5の正数であり、nは0又は0.5以下の正数、好ましくは0.05〜0.4の正数であり、oは0又は0.5以下の正数、好ましくは0.05〜0.2の正数である。但し、l、m、n、oはl+m+n+o=1を満たす。
【0016】
Z、Xはそれぞれ同一でも異なっていてもよいケイ素原子を含む直鎖状又は分岐状の2価の有機基であり、例えば、下記一般式(2)で示される基が挙げられる。
【化13】
(式中、aは0〜60の整数であり、bは0〜60の整数である。R6及びR7はそれぞれ炭素原子数1〜20の1価炭化水素基であり、相互に異なっていても同一でもよい。但し、R6、R7は同時にメチル基ではない。)
【0017】
上記式(2)中、R6、R7はそれぞれ炭素原子数1〜20、好ましくは1〜6の1価炭化水素基である。1価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、デシル基、フェニル基が耐熱性の観点から好ましい。但し、R6、R7は同時にメチル基ではない。
aは0〜60の整数、好ましくは1〜10の整数であり、bは0〜60の整数、好ましくは0〜10の整数である。
【0018】
式(2)で示される基としては、以下のものが挙げられる。
【化14】
(式中、Meはメチル基である。)
【0019】
本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、テトラヒドロフランを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が450〜500,000、好ましくは1,000〜200,000、更に好ましは2,000〜100,000である共重合体である。重量平均分子量が小さすぎると樹脂が脆く、取り扱い性に難が出ることがあり、大きすぎると溶媒への溶解性が悪化する。
【0020】
上記式(1)で表される繰返し単位を含有するメソゲン・ケイ素化合物共重合体において、各単位はランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよいが、ランダム構造であることが好ましい。
このようなメソゲン・ケイ素化合物共重合体としては、以下のものが挙げられる。
【0021】
【化15】
【0022】
【化16】
(式中、Meはメチル基である。)
【0023】
次に、本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法を示すが、この限りではない。
本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、下記一般式(3)、下記一般式(4)、下記一般式(5)、下記一般式(6)で表される化合物から選択される化合物を用いて、以下に示す方法により、製造することができる。なお、前記式(1)において、nが0のときは下記式(4)で表わされる化合物、oが0のときは下記式(6)で表わされる化合物を用いることなく製造される。
【0024】
下記一般式(3)及び下記一般式(4)で表される化合物を無水酢酸等の低級脂肪酸の無水物と反応させ、アセチル化した後に、それらと下記一般式(5)及び/又は下記一般式(6)で表される化合物とを脱酸(酢酸)重縮合反応させることで、本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体を製造することができる。
【化17】
【化18】
(式中、R2、R3、R4、p、q、rは上記と同じである。)
【0025】
このような式(4)で表される化合物の例として、以下のものが挙げられる。
【化19】
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基である。)
【0026】
【化20】
(式中、R1、Zは上記と同じである。)
【0027】
【化21】
(式中、R5、Xは上記と同じである。)
但し、式(6)で表される化合物は、式(5)で表される化合物とは異なる化合物である。
【0028】
このような式(5)、(6)で表される化合物の例として、以下のものが挙げられる。
【化22】
【0029】
【化23】
(式中、Meはメチル基である。)
【0030】
本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体の製造方法としては、式(3)、(4)で表される化合物を、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸等の低級脂肪酸の無水物を用いてそれぞれ個別に、又は一括して酢酸エステルとした後、別の反応槽又は同一の反応槽で、式(5)、(6)で表される化合物と脱酸(酢酸)重縮合反応させる方法が挙げられる。なお、上述したように、式(4)で表される化合物と式(6)で表される化合物は用いても用いなくてもよい。
【0031】
式(4)で表される化合物を使用する場合の導入量は、式(3)及び(4)で表される化合物の合計添加量の内、5〜50mol%であることが好ましく、より好ましくは10〜30mol%である。式(4)で表される化合物の導入量が少ない場合は官能基導入量が減少し、官能基導入による物性の変化が表れにくいおそれがあり、式(4)で表される化合物の導入量が多い場合は熱伝導率が低下することがある。
【0032】
式(5)、(6)で表される化合物の導入量は、式(3)及び(4)で表される化合物と等モルとなるように添加すればよく、式(3)及び式(4)で表される化合物と式(5)及び式(6)で表される化合物とのモル比[式(3)+式(4)]/[式(5)+式(6)]は、0.90〜1.10であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.05である。式(3)+式(4)で表される化合物と式(5)+式(6)で表される化合物の導入量のモル比が異なりすぎると、高分子量の樹脂が得られない可能性がある。
なお、上記式(5)及び式(6)で表される化合物は、式(3)及び式(4)で表される化合物と低級脂肪酸の無水物とを反応させる前に添加していてもよい。
【0033】
低級脂肪酸の無水物の使用量は、上記式(3)及び式(4)で表される化合物中のフェノール性水酸基の合計に対し、1.01〜1.50倍当量であることが好ましく、より好ましくは1.02〜1.20倍当量である。
【0034】
上記式(3)及び式(4)で表される化合物と低級脂肪酸の無水物との反応は、通常100〜180℃、更には130〜150℃の温度で、0.5〜2時間、特に1〜1.5時間行われることが好ましい。反応温度が高すぎると低級脂肪酸の無水物が揮発してしまう場合があり、低すぎると反応の進行が極度に遅くなる場合がある。
【0035】
また、反応は無溶媒条件もしくは溶媒存在下で行うのが好ましく、使用溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロホルム、四塩化炭素、エチルシクロヘキサン、イソドデカン、イソノナン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンタノン、酢酸エチル、アセトン等が例示できる。また、反応温度を上げるために無溶媒条件で行うのが特に好ましい。
【0036】
上記製造方法において、脱酸(酢酸)重縮合反応には、触媒を用いてもよく、触媒としては、例えば、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、シュウ酸第一スズ、酢酸第一スズ、アルキルスズ酸化物、ジアリールスズ酸化物等のスズ化合物、二酸化チタン、チタンアルコオキシド類、アルコオキシチタンケイ酸塩のようなチタン化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸第一鉄のような有機酸の金属塩、BF3、AlCl3のようなルイス酸類、アミン類、アミド類、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。触媒量は適宜調整すればよいが、通常、用いる総樹脂に対し0.1〜10mol%、好ましくは0.5〜5mol%用いられる。
【0037】
重縮合反応は、通常50〜350℃、好ましくは240〜350℃の温度で、窒素等の不活性ガスの存在下、常圧又は減圧下に、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜5時間行われる。減圧下での到達真空度は1kPa以下が好ましく、0.6kPa以下がより好ましく、0.3kPa以下が特に好ましい。
【0038】
一般的に、メソゲンを多く保有する樹脂は、メソゲンのスタッキングにより溶媒に難溶性を示す。しかしながら、本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、汎用されている溶媒への溶解性が顕著に優れている。具体的に、溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、スチレン、フェノール、クロロホルム、四塩化炭素、ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、イソドデカン、イソノナン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンタノン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸エチル、アセトン等が例示できる。
【0039】
本発明のメソゲン・ケイ素化合物共重合体は、例えば放熱材料、又は半導体装置及び電子部品のための樹脂材料として好適に用いることができる。樹脂材料としての使用態様は、例えば、半導体装置の製造に使用される封止剤あるいは接着剤;ダイオード、トランジスタ、IC、及びLSI等の電子部品表面の保護膜材料、例えば、半導体素子表面のジャンクションコート膜、パッシベーション膜及びバッファーコート膜;LSI等のα線遮蔽膜;多層配線の層間絶縁膜;プリントサーキットボードのコンフォーマルコート;イオン注入マスク;太陽電池の表面保護膜などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示す。また、下記例中の樹脂はランダム共重合体である。
【0041】
実施例において使用した化合物を以下に示す。
【化24】
【0042】
[実施例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置、ディーン・スターク装置及び還流冷却器を具備した500mLフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物50.00g(0.269モル)、上記式(S−2)で示される化合物74.75g(0.296モル)、及び無水酢酸57.57g(0.564モル)を加えた後、窒素ガス雰囲気で150℃に加温し、1時間撹拌を行った。その後、240℃まで加温し、更に2時間撹拌を行って、理論酢酸生成量の9割程度の酢酸を留出させた後、240℃のまま減圧し、溶融重合を1.5時間行った。その結果、得られた樹脂を樹脂(1)とした。この樹脂をGPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、樹脂(1)の重量平均分子量は2,500であった。このものを1H−核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR分析)、赤外吸収スペクトル分析(IR分析)を行った結果、下記平均組成式で示される構造を有する化合物であることがわかった。1H−NMRスペクトルを図1に示す。
【化25】
【0043】
[実施例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置、ディーン・スターク装置及び還流冷却器を具備した500mLフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物50.00g(0.269モル)、上記式(S−2)で示される化合物93.44g(0.336モル)、上記式(S−3)で示される化合物20.69g(0.067モル)、及び無水酢酸71.96g(0.705モル)を加えた後、窒素ガス雰囲気で150℃に加温し、1時間撹拌を行った。その後、240℃まで加温し、更に2時間撹拌を行って、理論酢酸生成量の9割程度の酢酸を留出させた後、240℃のまま減圧し、溶融重合を1.5時間行った。その結果、得られた樹脂を樹脂(2)とした。この樹脂をGPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、樹脂(2)の重量平均分子量は3,000であった。このものを1H−核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR分析)、赤外吸収スペクトル分析(IR分析)を行った結果、下記平均組成式で示される構造を有する化合物であることがわかった。
【化26】
【0044】
[実施例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置、ディーン・スターク装置及び還流冷却器を具備した500mLフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物50.00g(0.269モル)、上記式(S−2)で示される化合物93.44g(0.336モル)、上記式(S−4)で示される化合物23.52g(0.067モル)、及び無水酢酸71.96g(0.705モル)を加えた後、窒素ガス雰囲気で150℃に加温し、1時間撹拌を行った。その後、240℃まで加温し、更に2時間撹拌を行って、理論酢酸生成量の9割程度の酢酸を留出させた後、240℃のまま減圧し、溶融重合を1.5時間行った。その結果、得られた樹脂を樹脂(3)とした。この樹脂をGPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、樹脂(3)の重量平均分子量は3,600であった。このものを1H−核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR分析)、赤外吸収スペクトル分析(IR分析)を行った結果、下記平均組成式で示される構造を有する化合物であることがわかった。
【化27】
【0045】
[実施例4]
撹拌機、温度計、窒素置換装置、ディーン・スターク装置及び還流冷却器を具備した500mLフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物50.00g(0.269モル)、上記式(S−2)で示される化合物59.80g(0.215モル)、上記式(S−5)で示される化合物34.48g(0.054モル)、及び無水酢酸57.57g(0.564モル)を加えた後、窒素ガス雰囲気で150℃に加温し、1時間撹拌を行った。その後、240℃まで加温し、更に2時間撹拌を行って、理論酢酸生成量の9割程度の酢酸を留出させた後、240℃のまま減圧し、溶融重合を1.5時間行った。その結果、得られた樹脂を樹脂(4)とした。この樹脂をGPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、樹脂(4)の重量平均分子量は2,500であった。このものを1H−核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR分析)、赤外吸収スペクトル分析(IR分析)を行った結果、下記平均組成式で示される構造を有する化合物であることがわかった。
【化28】
【0046】
[実施例5]
撹拌機、温度計、窒素置換装置、ディーン・スターク装置及び還流冷却器を具備した500mLフラスコ内に、上記式(S−1)で示される化合物50.00g(0.269モル)、上記式(S−6)で示される化合物216.70g(0.296モル)、及び無水酢酸57.57g(0.564モル)を加えた後、窒素ガス雰囲気で150℃に加温し、1時間撹拌を行った。その後、240℃まで加温し、更に2時間撹拌を行って、理論酢酸生成量の9割程度の酢酸を留出させた後、240℃のまま減圧し、溶融重合を1.5時間行った。その結果、得られた樹脂を樹脂(5)とした。この樹脂をGPCカラム TSKgel Super HZM−H(東ソー社製)を用い、流量0.6ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したところ、樹脂(5)の重量平均分子量は4,900であった。このものを1H−核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR分析)、赤外吸収スペクトル分析(IR分析)を行った結果、下記平均組成式で示される構造を有する化合物であることがわかった。
【化29】
【0047】
[溶解性試験]
上記実施例で得られた樹脂を各々細かく砕き、それらを表1に示す各溶媒100質量部に50質量部加え、撹拌装置(株式会社シンキー製 自転公転方式スーパーミキサー ARE−250)により、2,000rpmで20分間、室温(23℃)にて撹拌を行い、その溶解性を目視により調べた。結果を表1に示す。
◎:溶解 ○:分散
【0048】
【表1】
図1