(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜5のいずれか一項に記載の研磨剤の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が前記砥粒及び液状媒体を含み、前記第2の液が前記高分子化合物、前記陽イオン性ポリマ及び液状媒体を含む、研磨剤セット。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット、及び、これらを用いた基体の研磨方法について詳細に説明する。
【0032】
<定義>
本明細書において、「研磨剤」(abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨剤」という語句自体は、研磨剤に含有される成分をなんら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨剤は砥粒(abrasive grain)を含有する。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive
particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は、一般的には固体粒子である。この場合、研磨時に、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)が有する化学的作用によって、除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、メカニズムはこれに限定されない。
【0033】
<研磨剤>
本実施形態に係る研磨剤は、例えばCMP用研磨剤である。具体的には、本実施形態に係る研磨剤は、液状媒体と、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、添加剤とを少なくとも含有し、前記添加剤として、芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物(以下、「芳香族ポリオキシアルキレン化合物」という。)と、陽イオン性ポリマとを少なくとも含有する。以下、必須成分、及び、任意に添加できる成分について説明する。
【0034】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨剤の砥粒は、4価金属元素の水酸化物を含む。「4価金属元素の水酸化物」は、4価の金属(M
4+)と、少なくとも一つの水酸化物イオン(OH
−)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO
3−、硫酸イオンSO
42−)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば硝酸イオン、硫酸イオン)を含んでいてもよい。前記4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、シリカ、アルミナ、セリア等からなる従来の砥粒と比較して、絶縁材料(例えば酸化珪素)との反応性が高く、絶縁材料を高研磨速度で研磨できる。
【0035】
4価金属元素は、希土類元素及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。4価金属元素としては、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、希土類元素が好ましい。4価を取りうる希土類元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられ、中でも、絶縁材料の研磨速度に更に優れる点でセリウムが好ましい。希土類元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とを併用してもよく、希土類元素の水酸化物から二種以上を選択して使用してもよい。
【0036】
4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素の塩と、塩基性化合物(アルカリ源)とを反応させることにより作製可能である。例えば、4価金属元素の水酸化物を作製する方法としては、4価金属元素の塩とアルカリ液とを混合する手法が使用できる。この方法は、例えば、「希土類の科学」〔足立吟也編、株式会社化学同人、1999年〕304〜305頁に説明されている。
【0037】
4価金属元素の塩としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、M(SO
4)
2、M(NH
4)
2(NO
3)
6、M(NH
4)
4(SO
4)
4(Mは希土類元素を示す。)、Zr(SO
4)
2・4H
2O等を挙げることができ、中でもM(NH
4)
2(NO
3)
6が好ましい。Mとしては、化学的に活性なセリウム(Ce)が好ましい。
【0038】
アルカリ液としては、従来公知のものを特に制限なく使用できる。アルカリ液中の塩基性化合物としては、イミダゾール、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、グアニジン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピロリジン、キトサン等の有機塩基;アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基などが挙げられる。これらのうち、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、アンモニア及びイミダゾールが好ましく、イミダゾールがより好ましい。前記方法で合成された4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、洗浄して金属不純物を除去できる。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒の洗浄では、遠心分離等で固液分離を数回繰り返す方法などが使用できる。遠心分離、透析、限外ろ過、イオン交換樹脂等によるイオンの除去などの工程で洗浄することもできる。
【0039】
前記で得られた4価金属元素の水酸化物を含む砥粒が凝集している場合、適切な方法で液状媒体(例えば水)中に分散させることが好ましい。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒を液状媒体に分散させる方法としては、通常の撹拌機による分散処理;ホモジナイザ、超音波分散機、湿式ボールミル等による機械的な分散;遠心分離、透析、限外ろ過、イオン交換樹脂等による夾雑イオンの除去などが挙げられる。分散方法及び粒径制御方法については、例えば、「分散技術大全集」〔株式会社情報機構、2005年7月〕第3章「各種分散機の最新開発動向と選定基準」に記述されている方法を用いることができる。前記の洗浄処理を行って、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒を含有する分散液の電気伝導度を下げる(例えば500mS/m以下)ことによっても、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒の分散性を高めることができるため、前記洗浄処理を分散処理として適用してもよく、前記洗浄処理と分散処理とを併用してもよい。
【0040】
なお、上記で説明したような砥粒の製造方法については、上記特許文献7に詳しく説明されており、その説明は本発明に引用される。
【0041】
本実施形態に係る研磨剤においては、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、他の砥粒とを併用してもよい。このような他の砥粒としては、シリカ、アルミナ、セリア等の粒子が挙げられる。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒として、4価金属元素の水酸化物とシリカとを含む複合粒子等を用いることもできる。
【0042】
4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨剤の調製が容易であると共に研磨特性に更に優れる観点から、前記砥粒が前記4価金属元素の水酸化物からなる(実質的に砥粒の100質量%が前記4価金属元素の水酸化物の粒子である)ことが最も好ましい。
【0043】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において、波長400nmの光に対して吸光度1.00以上を与えるものであることが好ましい。なお、砥粒の含有量を所定量に調整した「水分散液」とは、所定量の砥粒と水とを含む液を意味する。研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて、4価の金属(M
4+)、1〜3つの水酸化物イオン(OH
−)及び1〜3つの陰イオン(X
c−)からなるM(OH)
aX
b(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が砥粒の一部として生成するものと考えられる(なお、このような粒子も「4価金属元素の水酸化物を含む砥粒」である)。M(OH)
aX
bでは、電子吸引性の陰イオン(X
c−)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、M(OH)
aX
bの存在量が増加するに伴い研磨速度が向上するものと考えられる。そして、M(OH)
aX
bを含む粒子が波長400nmの光を吸光するため、M(OH)
aX
bの存在量が増加して波長400nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
【0044】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、M(OH)
aX
bだけでなく、M(OH)
4、MO
2等も含み得る。陰イオン(X
c−)としては、NO
3−、SO
42−等が挙げられる。
【0045】
なお、砥粒がM(OH)
aX
bを含むことは、砥粒を純水でよく洗浄した後にFT−IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で陰イオン(X
c−)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X-ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(X
c−)の存在を確認することもできる。
【0046】
前記砥粒は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において、波長290nmの光に対して吸光度1.000以上を与えるものであることが好ましい。このような研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物の製造条件等に応じて生成するM(OH)
aX
bを含む粒子は、計算上、波長290nm付近に吸収のピークを有し、例えばCe
4+(OH
−)
3NO
3−からなる粒子は波長290nmに吸収のピークを有する。そのため、M(OH)
aX
bの存在量が増加して波長290nmの光に対する吸光度が高くなるに伴い、研磨速度が向上するものと考えられる。
【0047】
前記4価金属元素の水酸化物(例えばM(OH)
aX
b)は、波長450nm以上、特に波長450〜600nmの光を吸光しない傾向がある。従って、不純物を含むことにより研磨に対して悪影響が生じることを抑制して、更に優れた研磨速度で絶縁材料を研磨する観点で、前記砥粒は、該砥粒の含有量を0.0065質量%に調整した水分散液において、波長450〜600nmの光に対して吸光度0.010以下を与えるものであることが好ましい。
【0048】
前記砥粒は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、該砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において、波長500nmの光に対して光透過率50%/cm以上を与えるものであることが好ましい。このような研磨速度の向上効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は次のように考えている。すなわち、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒が有する砥粒としての作用は、機械的作用よりも化学的作用の方が支配的になると考えられる。そのため、砥粒の大きさよりも砥粒の数の方が、より研磨速度に寄与すると考えられる。
【0049】
砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において光透過率が低い場合、その水分散液に存在する砥粒は、粒子径の大きい粒子(以下「粗大粒子」という。)が相対的に多く存在すると考えられる。このような砥粒を含む研磨剤に添加剤を添加すると、粗大粒子を核として他の粒子が凝集する。その結果、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が減少し、被研磨面に接する砥粒の比表面積が減少するため、研磨速度が低下する場合があると考えられる。
【0050】
一方、砥粒の含有量を1.0質量%に調整した水分散液において光透過率が高い場合、その水分散液に存在する砥粒は、前記「粗大粒子」が少ない状態であると考えられる。このように粗大粒子の存在量が少ない場合は、研磨剤に添加剤を添加しても、凝集の核になるような粗大粒子が少ないため、砥粒同士の凝集が抑えられるか、又は、凝集粒子の大きさが小さくなる。その結果、単位面積当たりの被研磨面に作用する砥粒数(有効砥粒数)が維持され、被研磨面に接する砥粒の比表面積が維持されるため、研磨速度が低下し難くなり、絶縁材料の研磨速度が向上し易くなると考えられる。
【0051】
研磨剤に含まれる砥粒が、該砥粒の水分散液において与える吸光度及び光透過率は、例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)を用いて測定できる。具体的には例えば、砥粒の含有量を1.0質量%又は0.0065質量%に調整した水分散液を測定サンプルとして調製する。この測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、装置内にセルを設置する。次に、波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、得られたチャートから吸光度及び光透過率を判断する。
【0052】
研磨剤に含まれる砥粒が、該砥粒の水分散液において与える吸光度及び光透過率は、砥粒以外の固体成分、及び、水以外の液体成分を除去した後、所定の砥粒含有量の水分散液を調製し、該水分散液を用いて測定できる。研磨剤に含まれる成分によっても異なるが、固体成分又は液体成分の除去には、数千G以下の重力加速度をかけられる遠心機を用いた遠心分離、数万G以上の重力加速度をかけられる超遠心機を用いた超遠心分離等の遠心分離法;分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法;自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、限外ろ過等のろ過法;減圧蒸留、常圧蒸留等の蒸留法などを用いることができ、これらを適宜組み合わせてもよい。
【0053】
例えば、重量平均分子量が数万以上(例えば5万以上)の化合物を含む場合は、クロマトグラフィー法、ろ過法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過が好ましい。ろ過法を用いる場合は、研磨剤に含まれる砥粒は、適切な条件の設定により、フィルタを通過させることができる。重量平均分子量が数万以下(例えば5万未満)の化合物を含む場合は、クロマトグラフィー法、ろ過法、蒸留法等が挙げられ、ゲル浸透クロマトグラフィー、限外ろ過、減圧蒸留が好ましい。複数種類の砥粒が含まれる場合、ろ過法、遠心分離法等が挙げられ、ろ過法の場合はろ液に、遠心分離法の場合は液相に、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒がより多く含まれる。
【0054】
前記クロマトグラフィー法で砥粒を分離する方法として、例えば、下記条件によって、砥粒及び/又は他成分を分取できる。
【0055】
試料溶液:研磨剤100μL
検出器:株式会社日立製作所製、UV−VISディテクター、商品名「L−4200」、波長:400nm
インテグレータ:株式会社日立製作所製、GPCインテグレータ、商品名「D−2500」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−7100」
カラム:日立化成株式会社製、水系HPLC用充填カラム、商品名「GL−W550S」
溶離液:脱イオン水
測定温度:23℃
流速:1mL/分(圧力:40〜50kg/cm
2程度)
測定時間:60分
【0056】
なお、クロマトグラフィーを行う前に、脱気装置を用いて溶離液の脱気処理を行うことが好ましい。脱気装置を使用できない場合は、溶離液を事前に超音波等で脱気処理することが好ましい。
【0057】
研磨剤に含まれる成分によっては、上記条件では砥粒を分取できない可能性がある。この場合、試料溶液量、カラム種類、溶離液種類、測定温度、流速等を最適化することで分離できる。また、研磨剤のpHを調整することで、研磨剤に含まれる成分の留出時間を調整し、砥粒と分離できる可能性がある。研磨剤に不溶成分がある場合、必要に応じて、ろ過、遠心分離等で不溶成分を除去することが好ましい。
【0058】
研磨剤中の砥粒の平均粒径の下限は、絶縁材料に対する更に好適な研磨速度を得る観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、5nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、被研磨面に傷がつくことを更に抑制する観点から、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましく、200nm以下が更に好ましい。上記観点から、砥粒の平均粒径は、1nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0059】
砥粒の「平均粒径」とは、研磨剤中の砥粒の平均二次粒子径を意味する。砥粒の平均粒径の測定に際しては、例えば、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマンコールター社製、商品名:N5、又は、マルバーンインスツルメンツ社製、商品名:ゼータサイザー3000HSA)を使用できる。
【0060】
砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.04質量%以上が特に好ましい。砥粒の含有量の上限は、研磨剤の保存安定性を高くする観点から、研磨剤の全質量を基準として20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。上記観点から、前記砥粒の含有量は、研磨剤の全質量を基準として0.005質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
また、砥粒の含有量を更に少なくすることにより、コスト及び研磨傷を更に低減できる点で好ましい。従来、砥粒の含有量が少なくなると、絶縁材料等の研磨速度が低下する傾向がある。一方、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、少量でも所定の研磨速度を得ることができるため、研磨速度と、砥粒の含有量を少なくすることによる利点とのバランスをとりつつ、砥粒の含有量を更に低減できる。このような観点で、砥粒の含有量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましい。
【0062】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨剤は、添加剤を含有する。ここで「添加剤」とは、研磨速度、研磨選択性等の研磨特性;砥粒の分散性、保存安定性等の研磨剤特性などを調整するために、液状媒体及び砥粒以外に研磨剤が含有する物質を指す。
【0063】
[第1の添加剤:芳香族ポリオキシアルキレン化合物]
本実施形態に係る研磨剤は、第1の添加剤として芳香族ポリオキシアルキレン化合物(芳香環及びポリオキシアルキレン鎖を有する高分子化合物)を含有する。芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基をポリオキシアルキレン鎖の末端に導入した化合物である。芳香環は、ポリオキシアルキレン鎖に直接結合していてもよく、直接結合していなくてもよい。芳香環は、単環であってもよく、多環であってもよい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基を介して複数のポリオキシアルキレン鎖が結合する構造を有していてもよい。ポリオキシアルキレン鎖は、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖の構造単位数は、15以上が好ましい。
【0064】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、ストッパ材料の研磨速度が過度に高くなることを抑制する効果がある。また、芳香族ポリオキシアルキレン化合物を用いることにより、凸部パターン密度に依存することなく、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を向上させることもできる。これらの効果が生じる理由は、芳香族ポリオキシアルキレン化合物がストッパ材料を被覆することにより、ストッパ材料の研磨が抑制されるものと推測される。これにより、凸部パターン密度が小さい部分を研磨する場合であっても、砥粒によるストッパ材料の研磨の進行が緩和されて、凸部パターン密度の粗密依存性が抑制されるものと推測される。前記の各効果は、ストッパ材料がポリシリコンである場合に、より顕著に得られる。
【0065】
芳香環を有する置換基としては、芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の末端に位置する場合、アリール基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等の単環芳香族基;ナフチル基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スチレン基、芳香族基等が挙げられ、アルキル基及びスチレン基が好ましい。
【0066】
芳香環を有する置換基としては、芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の主鎖中に位置する場合、アリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等の単環芳香族基;ナフチレン基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スチレン基、芳香族基等が挙げられる。
【0067】
前記芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物、下記一般式(II)で表される化合物等が挙げられる。
R
11-O-(R
12-O)
m1-H …(I)
[式(I)中、R
11は、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
12は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、m1は、15以上の整数を表す。]
H-(O-R
23)
n1-O-R
21-R
25-R
22-O-(R
24-O)
n2-H …(II)
[式(II)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、R
23、R
24及びR
25は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、n1及びn2は、それぞれ独立に15以上の整数を表す。]
【0068】
ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性が更に向上する観点から、式(I)又は式(II)は下記条件の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
・R
11としては、芳香環を有する置換基として例示した上記のアリール基が好ましく、アルキル基又はスチレン基が置換基として導入されたフェニル基がより好ましい。
・R
21及びR
22としては、芳香環を有する置換基として例示した上記のアリーレン基が好ましい。
・R
12、R
23、R
24及びR
25としては、エチレン基、n−プロピレン基が好ましい。
・m1は、15以上が好ましく、30以上がより好ましく、45以上が更に好ましく、60以上が特に好ましい。
・m1は、2000以下が好ましく、900以下がより好ましく、600以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
・n1及びn2は、15以上が好ましく、30以上がより好ましい。
・n1及びn2は、2000以下が好ましく、900以下がより好ましく、600以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
【0069】
前記の中でも、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性が更に向上する観点から、前記式(I)で表される化合物が好ましい。同様の観点で、前記式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(IV)で表される化合物がより好ましく、下記一般式(III)で表される化合物が更に好ましい。
【0070】
【化1】
[式(III)中、R
31は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、m2は、1〜3の整数を表し、m3は、15以上の整数を表す。]
【0071】
【化2】
[式(IV)中、R
41は、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R
42は、置換基を有していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を表し、m4は、15以上の整数を表す。また、式(IV)中の芳香環は、置換基を更に有していてもよい。]
【0072】
ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性が更に向上する観点から、式(III)又は式(IV)は、下記条件の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
・R
31としては、エチレン基、n−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
・R
41としては、炭素数1〜40のアルキル基が好ましく、炭素数6〜20のアルキル基がより好ましい。
・R
42としては、エチレン基、n−プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
・m2は、1以上が好ましい。
・m3は、15以上が好ましく、30以上がより好ましく、45以上が更に好ましく、60以上が特に好ましい。
・m3は、2000以下が好ましく、900以下がより好ましく、600以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
・m4は、15以上が好ましく、30以上がより好ましく、45以上が更に好ましく、60以上が特に好ましい。
・m4は、2000以下が好ましく、900以下がより好ましく、600以下が更に好ましく、300以下が特に好ましい。
・式(IV)の芳香環がR
41以外に更に有する置換基としては、プロペニル基が好ましい。
【0073】
式(I)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、
ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルエーテル;
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(例えば、花王株式会社製、エマルゲンA−500;第一工業製薬株式会社製、ノイゲンEA−7シリーズ)等の前記式(III)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物;
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、エマルジットシリーズ)、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル(例えば、第一工業製薬株式会社製、アクアロンRNシリーズ)等の式(IV)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物;などが挙げられる。
【0074】
式(II)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係る研磨剤において、芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、研磨選択性及び平坦性等の研磨特性を調整する目的で、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。
【0076】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量の下限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性に優れる観点から、1000以上であり、1500以上が好ましく、2000以上がより好ましく、3000以上が更に好ましい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量の上限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性に更に優れる観点から、100000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、30000以下が更に好ましく、20000以下が特に好ましく、15000以下が極めて好ましく、10000以下が非常に好ましい。
【0077】
なお、芳香族ポリオキシアルキレン化合物の重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定できる。
使用機器:日立L−6000型〔株式会社日立製作所製〕
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440〔日立化成株式会社製 商品名、計3本〕
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L−3300RI〔株式会社日立製作所製〕
【0078】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量の下限は、研磨剤の全質量を基準として0.01質量%以上であることが好ましい。これにより、凸部パターン密度に依存することなく、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を向上させつつ、被研磨面における研磨傷の発生を更に抑制できる。同様の観点で、芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量の下限は、研磨剤の全質量を基準として0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.2質量%以上が特に好ましい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物の含有量の上限は、特に制限はないが、安定性及び生産性に優れる観点から、研磨剤の全質量を基準として10.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.0質量%以下が特に好ましく、1.0質量%以下が極めて好ましい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
【0079】
[第2の添加剤:陽イオン性ポリマ]
本実施形態に係る研磨剤は、前記第1の添加剤(芳香族ポリオキシアルキレン化合物)の他に、第2の添加剤として陽イオン性ポリマを含有する。「陽イオン性ポリマ」とは、カチオン基、又は、カチオン基にイオン化され得る基を主鎖又は側鎖に有するポリマとして定義される。カチオン基としては、アミノ基、イミノ基、シアノ基等が挙げられる。
【0080】
陽イオン性ポリマは、芳香族ポリオキシアルキレン化合物と併用することにより、ストッパ材料(例えばポリシリコン)の研磨速度が過度に高くなることを更に抑制する効果がある。また、陽イオン性ポリマは、芳香族ポリオキシアルキレン化合物がストッパ材料に加えて絶縁材料(例えば酸化珪素)を過度に被覆することにより絶縁材料の研磨速度が低下することを抑制可能である。また、絶縁材料の研磨速度を向上させる効果もある。そのため、芳香族ポリオキシアルキレン化合物と陽イオン性ポリマとを併用した場合、陽イオン性ポリマが芳香族ポリオキシアルキレン化合物と相互作用することにより、ストッパ材料の研磨速度を抑制できると共に、絶縁材料の研磨速度を向上させることができると考えられる。
【0081】
陽イオン性ポリマとしては、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の単量体成分を重合させることにより得られる重合体(アリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体、ビニルアミン重合体、エチレンイミン重合体)、並びに、キトサン及びキトサン誘導体等の多糖類などが挙げられる。
【0082】
アリルアミン重合体は、アリルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。アリルアミン誘導体としては、アルコキシカルボニル化アリルアミン、メチルカルボニル化アリルアミン、アミノカルボニル化アリルアミン、尿素化アリルアミン等が挙げられる。
【0083】
ジアリルアミン重合体は、ジアリルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。ジアリルアミン誘導体としては、メチルジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルメチルエチルアンモニウム塩、アシル化ジアリルアミン、アミノカルボニル化ジアリルアミン、アルコキシカルボニル化ジアリルアミン、アミノチオカルボニル化ジアリルアミン、ヒドロキシアルキル化ジアリルアミン等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウムクロリド、アンモニウムアルキルサルフェイト(例えばアンモニウムエチルサルフェイト)等が挙げられる。ジアリルアミン重合体としては、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体が好ましい。
【0084】
ビニルアミン重合体は、ビニルアミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。ビニルアミン誘導体としては、アルキル化ビニルアミン、アミド化ビニルアミン、エチレンオキサイド化ビニルアミン、プロピレンオキサイド化ビニルアミン、アルコキシ化ビニルアミン、カルボキシメチル化ビニルアミン、アシル化ビニルアミン、尿素化ビニルアミン等が挙げられる。
【0085】
エチレンイミン重合体は、エチレンイミン又はその誘導体を重合させることにより得られる重合体である。エチレンイミン誘導体としては、アミノエチル化アクリル重合体、アルキル化エチレンイミン、尿素化エチレンイミン、プロピレンオキサイド化エチレンイミン等が挙げられる。
【0086】
陽イオン性ポリマは、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン及びこれらの誘導体以外の単量体成分由来の構造単位を有していてもよく、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、マレイン酸又は二酸化硫黄等に由来する構造単位を有していてもよい。
【0087】
陽イオン性ポリマは、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミンの単独重合体(ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン)であってもよく、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、アリルアミンの単独重合体(ポリアリルアミン)が好ましい。
【0088】
陽イオン性ポリマは、アリルアミン、ジアリルアミン、ビニルアミン、エチレンイミン又はこれらの誘導体由来の構造単位を有する共重合体であってもよい。共重合体において構造単位の配列は任意である。例えば、(a)それぞれ同種の構造単位が連続したブロック共重合の形態、(b)構造単位A及び構造単位Bが特に秩序なく配列したランダム共重合の形態、(c)構造単位A及び構造単位Bが交互に配列した交互共重合の形態等の任意の形態をとり得る。
【0089】
前記共重合体としては、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、アクリルアミドを単量体成分として含む組成物を重合させて得られる共重合体が好ましく、ジアリルジメチルアンモニウム塩とアクリルアミドとを単量体成分として含む組成物を重合させて得られる共重合体がより好ましく、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体が更に好ましい。
【0090】
キトサン誘導体としては、キトサンピロリドンカルボン酸塩、カチオン化キトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、キトサン乳酸塩、グリセリル化キトサン、グリコールキトサン、カルボキシメチルキトサン(CM−キトサン)、カルボキシメチルキトサンサクシナミド等が挙げられる。
【0091】
前記陽イオン性ポリマの中でも、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点、及び、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、アリルアミン、ジアリルアミン又はビニルアミンを重合させることにより得られる重合体であるアミンポリマが好ましい。陽イオン性ポリマは、研磨選択性及び平坦性等の研磨特性を調整する目的で、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。
【0092】
陽イオン性ポリマの重量平均分子量の下限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、100以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。陽イオン性ポリマの重量平均分子量の上限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性を更に向上させる観点から、1000000以下が好ましく、600000以下がより好ましく、300000以下が更に好ましい。なお、陽イオン性ポリマの重量平均分子量は、第1の添加剤の重量平均分子量と同様の方法により測定できる。
【0093】
陽イオン性ポリマの含有量の下限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性、及び、平坦性を更に向上させる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.0008質量%以上が特に好ましい。陽イオン性ポリマの含有量の上限は、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性に更に優れる観点から、研磨剤の全質量を基準として5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.05質量%以下が非常に好ましく、0.01質量%以下が特に好ましく、0.005質量%以下が更に好ましい。なお、陽イオン性ポリマとして複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。陽イオン性ポリマの含有量は、絶縁材料の研磨速度、ストッパ材料に対する絶縁材料の研磨選択性、及び、平坦性を更に向上させる観点から、絶縁材料の作製方法(種類及び膜付け条件)に応じて適宜調整することが好ましい。
【0094】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る研磨剤は、研磨特性を調整する目的で、前記第1の添加剤及び前記第2の添加剤の他に、その他の添加剤を更に含有していてもよい。その他の添加剤としては、カルボン酸、アミノ酸、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)、並びに、後述するpH調整剤及び緩衝剤等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。
【0095】
その他の添加剤を使用する場合、その含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ添加剤の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.0001質量%以上10質量%以下が好ましい。なお、これらの添加剤として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
【0096】
カルボン酸は、pHを安定化させると共に絶縁材料の研磨速度を更に向上させる効果がある。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸等が挙げられる。
【0097】
アミノ酸は、砥粒(特に、前記4価金属元素の水酸化物を含む砥粒)の分散性を向上させ、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる効果がある。アミノ酸としては、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、グリシン、アラニン、β−アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン等が挙げられる。
【0098】
水溶性高分子は、平坦性、面内均一性、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)、ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/ポリシリコンの研磨速度)等の研磨特性を調整する効果がある。ここで、「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。なお、第1の添加剤及び第2の添加剤に該当する高分子は「水溶性高分子」に含まれないものとする。
【0099】
前記水溶性高分子の具体例としては、特に制限はなく、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等のグリセリン系ポリマ;などが挙げられる。水溶性高分子は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用できる。
【0100】
水溶性高分子を使用する場合、水溶性高分子の含有量の下限は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。水溶性高分子の含有量の上限は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨剤の全質量を基準として10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。前記水溶性高分子として複数の化合物を用いる場合、各化合物の含有量の合計が前記範囲を満たしていることが好ましい。
【0101】
(液状媒体)
本実施形態に係る研磨剤における液状媒体は、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨剤の残部でよく、特に限定されない。
【0102】
(研磨剤の特性)
本実施形態に係る研磨剤のpHは、研磨剤の保存安定性及び絶縁材料の研磨速度に更に優れる観点から、3.0以上12.0以下が好ましい。なお、pHは、液温25℃におけるpHと定義する。研磨剤のpHは、主に研磨速度に影響する。pHの下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、4.0以上がより好ましく、4.5以上が更に好ましく、5.0以上が特に好ましい。pHの上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、11.0以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましく、9.0以下が特に好ましく、8.0以下が極めて好ましく、7.0以下が非常に好ましい。
【0103】
研磨剤のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール等のアルカリ成分などのpH調整剤によって調整可能である。pHを安定化させるため、緩衝剤を用いてもよく、緩衝剤として緩衝液(緩衝剤を含む液)を用いてもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0104】
本実施形態に係る研磨剤のpHは、pHメータ(例えば、電気化学計器株式会社製の型番PHL−40)で測定できる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH4.01)と中性リン酸塩pH緩衝液(pH6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定する。このとき、標準緩衝液と研磨剤の液温は共に25℃とする。
【0105】
本実施形態に係る研磨剤は、前記砥粒と、前記第1の添加剤と、前記第2の添加剤と、液状媒体とを少なくとも含む一液式研磨剤として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨剤となるように前記研磨剤の構成成分をスラリと添加液とに分けた二液式の研磨剤セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒及び液状媒体を少なくとも含む。添加液は、例えば、第1の添加剤、第2の添加剤及び液状媒体を少なくとも含む。第1の添加剤、第2の添加剤、及び、その他の添加剤は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。なお、前記研磨剤の構成成分は、三液以上に分けた研磨剤セットとして保存してもよい。
【0106】
前記研磨剤セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨剤が作製される。また、一液式研磨剤は、液状媒体の含有量を減じた研磨剤用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。二液式の研磨剤セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0107】
一液式研磨剤の場合、研磨定盤上への研磨剤の供給方法としては、研磨剤を直接送液して供給する方法;研磨剤用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;研磨剤用貯蔵液及び液状媒体をあらかじめ混合させて供給する方法等を用いることができる。
【0108】
スラリと添加液とに分けた二液式の研磨剤セットとして保存する場合、これら二液の配合比を任意に変えることにより研磨速度の調整ができる。研磨剤セットを用いて研磨する場合、研磨定盤上への研磨剤の供給方法としては、下記に示す方法がある。例えば、スラリと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流、混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流、混合させて供給する方法;スラリ及び添加液をあらかじめ混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体をあらかじめ混合させて供給する方法等を用いることができる。また、前記研磨剤セットにおけるスラリと添加液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法を用いることもできる。この場合、研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて得られる研磨剤を用いて被研磨面が研磨される。
【0109】
なお、本実施形態に係る研磨剤セットは、上記必須成分を少なくとも含有する研磨剤と、酸化剤(例えば過酸化水素)等の任意成分を少なくとも含む添加液とに分けた態様であってもよい。この場合、研磨剤及び添加液が混合されて得られた混合液(当該混合液も「研磨剤」に相当する)を用いて研磨が行われる。また、本実施形態に係る研磨剤セットは、三液以上に分けた研磨剤セットとして、上記必須成分の一部を少なくとも含有する液と、上記必須成分の残部を少なくとも含有する液と、任意成分を少なくとも含む添加液とに分けた態様であってもよい。研磨剤セットを構成する各液は、液状媒体の含有量を減じた貯蔵液として保存されてもよい。
【0110】
<基体の研磨方法>
本実施形態に係る基体の研磨方法は、前記研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨する研磨工程を備えていてもよい。研磨工程では、例えば、被研磨材料を有する基体の該被研磨材料を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、前記研磨剤を被研磨材料と研磨パッドとの間に供給すると共に、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨材料を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨材料の少なくとも一部を研磨により除去する。
【0111】
本実施形態に係る基体の研磨方法は、前記研磨剤セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨する研磨工程を備えていてもよい。この場合、基体の研磨方法は、研磨工程の前に、スラリと添加液とを混合して研磨剤を得る工程を更に備えていてもよい。また、研磨工程において、前記研磨剤セットにおけるスラリと添加液とを被研磨材料と研磨パッドとの間に供給して、スラリと添加液とが混合されて得られる研磨剤を用いて基体の被研磨面を研磨してもよい。
【0112】
研磨対象である基体としては、基板等が挙げられ、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基板が挙げられる。被研磨材料としては、酸化珪素等の絶縁材料;ポリシリコン、窒化珪素等のストッパ材料などが挙げられる。被研磨材料の形状は特に限定されないが、例えば膜状(被研磨膜)である。被研磨膜は、単一の膜であってもよく、複数の膜であってもよい。複数の膜が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨膜とみなすことができる。
【0113】
このような基板上に形成された被研磨材料(例えば酸化珪素等の絶縁材料)を前記研磨剤で研磨し、余分な部分を除去することによって、被研磨材料の表面の凹凸を解消し、被研磨材料の表面全体にわたって平滑な面とすることができる。本実施形態に係る研磨剤は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。
【0114】
本実施形態では、少なくとも表面に酸化珪素を含む絶縁膜(例えば酸化珪素膜)と、絶縁膜の下層に配置されたストッパ膜と、ストッパ膜の下に配置された半導体基板とを有する基体における絶縁膜を研磨できる。ストッパ膜は、例えば、絶縁膜よりも研磨速度が低い膜であり、ポリシリコン膜、窒化珪素膜等が好ましい。このような基体では、ストッパ膜が露出した時に研磨を停止させることにより、絶縁膜が過剰に研磨されることを防止できるため、絶縁膜の研磨後の平坦性を向上させることができる。
【0115】
本実施形態に係る研磨剤により研磨される被研磨膜の作製方法としては、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等に代表されるCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
【0116】
酸化珪素膜は、低圧CVD法を用いて、例えば、モノシラン(SiH
4)と酸素(O
2)を熱反応させることにより得られる。また、酸化珪素膜は、準常圧CVD法を用いて、例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC
2H
5)
4)とオゾン(O
3)を熱反応させることにより得られる。その他の例として、テトラエトキシシランと酸素をプラズマ反応させることにより、同様に酸化珪素膜が得られる。
【0117】
酸化珪素膜は、回転塗布法を用いて、例えば、無機ポリシラザン、無機シロキサン等を含む液体原料を基板上に塗布し、炉体等で熱硬化反応させることにより得られる。
【0118】
ポリシリコン膜の製膜方法としては、モノシランを熱反応させる低圧CVD法、モノシランをプラズマ反応させるプラズマCVD法等が挙げられる。
【0119】
以上のような方法で得られた酸化珪素膜、ポリシリコン膜等の膜質を安定化させるために、必要に応じて200〜1000℃の温度で熱処理をしてもよい。以上のような方法で得られた酸化珪素膜には、埋込み性を高めるために微量のホウ素(B)、リン(P)、炭素(C)等が含まれていてもよい。
【0120】
以下、絶縁膜が形成された半導体基板の研磨方法を一例に挙げて、本実施形態に係る研磨方法を更に説明する。本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する半導体基板等の基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。前記ホルダー及び前記研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexion等を使用できる。
【0121】
前記研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)、アラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂などの樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、優れた研磨速度及び平坦性が得られ易い観点から、発泡ポリウレタン、非発泡ポリウレタンが好ましい。研磨パッドには、研磨剤がたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0122】
研磨条件に制限はないが、定盤の回転速度は、半導体基板が飛び出さないように200min
−1以下が好ましく、半導体基板にかける研磨圧力(加工荷重)は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、100kPa以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的に研磨剤を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨剤で覆われていることが好ましい。
【0123】
研磨終了後の半導体基板は、流水中でよく洗浄して、基板に付着した粒子を除去することが好ましい。洗浄には、純水以外に希フッ酸又はアンモニア水を用いてもよく、洗浄効率を高めるためにブラシを用いてもよい。洗浄後は、スピンドライヤ等を用いて、半導体基板に付着した水滴を払い落としてから、半導体基板を乾燥させることが好ましい。
【0124】
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、STIの形成に好適に使用できる。STIを形成するためには、ストッパ材料(例えばポリシリコン)に対する絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度比は、100以上であることが好ましい。前記研磨速度比が100未満であると、ストッパ材料の研磨速度に対する絶縁材料の研磨速度の大きさが小さく、STIを形成する際に所定の位置で研磨を停止しにくくなる傾向がある。一方、前記研磨速度比が100以上であれば、研磨の停止が容易になり、STIの形成に更に好適である。前記研磨速度比は、300以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましく、1000以上であることが特に好ましい。
【0125】
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、プリメタル絶縁膜の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁膜の構成材料(プリメタル絶縁材料)としては、酸化珪素の他、例えば、リン−シリケートガラス、ボロン−リン−シリケートガラスが使用され、更に、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等も使用できる。
【0126】
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、酸化珪素膜のような絶縁膜以外の膜にも適用できる。このような膜としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率膜;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体膜;GeSbTe等の相変化膜;ITO等の無機導電膜;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂膜などが挙げられる。
【0127】
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ又はプラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0128】
本実施形態に係る研磨剤、研磨剤セット及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置の製造に用いることができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0130】
<4価金属元素の水酸化物の合成>
350gのCe(NH
4)
2(NO
3)
650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、製品名:CAN50液)を7825gの純水に溶解して溶液を得た。次いで、この溶液を攪拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液)を5mL/分の速度で滴下して、セリウムの水酸化物を含む沈殿物を得た。
【0131】
セリウムの水酸化物を含む沈殿物を遠心分離(4000min
−1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。また、得られた粒子10gと水990gを混合し、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、スラリ用貯蔵液(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0132】
ベックマンコールター社製、商品名:N5を用いてスラリ用貯蔵液における粒子の平均粒径を測定したところ、25nmであった。測定法は下記のとおりである。まず、1.0質量%のセリウム水酸化物粒子を含む測定サンプル(水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れた後、N5内にセルを設置した。測定サンプルの屈折率を1.333、測定サンプルの粘度を0.887mPa・sに調整した後、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0133】
スラリ用貯蔵液を適量採取し、粒子の含有量が0.0065質量%となるように水で希釈して測定サンプル(水分散液)を得た。測定サンプルを1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長290nmの光に対する吸光度と、波長450〜600nmの光に対する吸光度とを測定した。波長290nmの光に対する吸光度は1.192であり、波長450〜600nmの光に対する吸光度は0.010未満であった。
【0134】
スラリ用貯蔵液(粒子の含有量:1.0質量%)を1cm角のセルに約4mL入れ、株式会社日立製作所製の分光光度計(装置名:U3310)内にセルを設置した。波長200〜600nmの範囲で吸光度測定を行い、波長400nmの光に対する吸光度と、波長500nmの光に対する光透過率とを測定した。波長400nmの光に対する吸光度は2.25であり、波長500nmの光に対する光透過率は92%/cmであった。
【0135】
スラリ用貯蔵液を適量採取し、真空乾燥して砥粒を単離した。純水で充分に洗浄して得られた試料について、FT−IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオンに基づくピークの他に、硝酸イオン(NO
3−)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N−XPS)測定を行ったところ、NH
4+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、上記スラリ用貯蔵液に含まれる砥粒は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。
【0136】
<CMP用研磨剤の調製>
[実施例1]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−207D、重量平均分子量:4500〕2質量%、イミダゾール0.08質量%、酢酸0.05質量%及び水97.87質量%を含有する添加液用貯蔵液100gと、前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水820gと、陽イオン性ポリマとして0.1質量%ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体〔ニットーボーメディカル株式会社製PAS−J−81、重量平均分子量:200000〕を含有する水溶液30gとを混合することにより、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.2質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0137】
[実施例2]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体の含有量以外は実施例1と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.0015質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0138】
[実施例3]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体の含有量以外は実施例2と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0139】
[実施例4]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、イミダゾール及び酢酸の含有量以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを1.0質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0140】
[実施例5]
イミダゾールの含有量以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0141】
[実施例6]
イミダゾールの含有量以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0142】
[実施例7]
陽イオン性ポリマの種類と含有量以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ポリアリルアミン〔ニットーボーメディカル株式会社製PAA−01、重量平均分子量:1600〕を0.001質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0143】
[実施例8]
陽イオン性ポリマの種類以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体〔ニットーボーメディカル株式会社製PAS−H−10L、重量平均分子量:200000〕を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0144】
[実施例9]
陽イオン性ポリマの種類以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体〔ニットーボーメディカル株式会社製PAS−J−81L、重量平均分子量:10000〕を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0145】
[実施例10]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の種類を変更した以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製エマルジット49、重量平均分子量:3000〕を0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0146】
[比較例1]
前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水940gと、1質量%イミダゾール水溶液10gとを混合し、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0147】
[比較例2]
ポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕5質量%、イミダゾール0.08質量%、酢酸0.05質量%及び水94.87質量%を含有する添加液用貯蔵液100gと、前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水850gとを混合し、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0148】
[比較例3]
ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−207D、重量平均分子量:4500〕5質量%、イミダゾール0.08質量%、酢酸0.05質量%及び水94.87質量%を含有する添加液用貯蔵液100gと、前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水850gとを混合し、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0149】
[比較例4]
ポリビニルアルコール〔株式会社クラレ製PVA−403、平均重合度:300、ケン化度:80モル%、重量平均分子量:14000〕5質量%、イミダゾール0.08質量%、酢酸0.05質量%及び水94.87質量%を含有する添加液用貯蔵液100gと、前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水850gとを混合し、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリビニルアルコールを0.5質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0150】
[比較例5]
陽イオン性ポリマとしてポリアリルアミン〔ニットーボーメディカル株式会社製PAA−01、重量平均分子量:1600〕を加えた以外は比較例4と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリビニルアルコールを0.5質量%、ポリアリルアミンを0.0001質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0151】
[比較例6]
陽イオン性ポリマとしてポリアリルアミン〔ニットーボーメディカル株式会社製PAA−08、重量平均分子量:8000〕を加えた以外は比較例4と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリビニルアルコールを0.5質量%、ポリアリルアミンを0.0008質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0152】
[比較例7]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕を用いた以外は実施例2と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.0015質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0153】
[比較例8]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕を用いた以外は実施例4と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを1.0質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0154】
[比較例9]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕を用いた以外は実施例5と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0155】
[比較例10]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕を用いた以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0156】
[比較例11]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#600、重量平均分子量:600〕を用いた以外は実施例6と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0157】
[比較例12]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリエチレングリコール〔ライオン株式会社製PEG#4000、重量平均分子量:4000〕を用いた以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリエチレングリコールを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0158】
[比較例13]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−137、重量平均分子量:700〕を用いた以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0159】
[比較例14]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリオキシエチレンラウリルエーテル〔花王株式会社製エマルゲン130K〕を用いた以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0160】
[比較例15]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにアセチレンジオールのEO(エチレンオキサイド)付加物〔日信化学工業株式会社製サーフィノール465〕を用いた以外は実施例3と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、アセチレンジオールのEO付加物を0.5質量%、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体を0.003質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0161】
[比較例16]
ポリグリセリン〔阪本薬品工業株式会社製ポリグリセリン#750、重量平均分子量:750〕5質量%、イミダゾール0.08質量%、酢酸0.05質量%及び水94.87質量%を含有する添加液用貯蔵液100gと、前記で得たスラリ用貯蔵液50gと、水830gと、陽イオン性ポリマとして0.1質量%ポリアリルアミン〔ニットーボーメディカル株式会社製PAA−01、重量平均分子量:1600〕を含有する水溶液20gとを混合することにより、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリグリセリンを0.5質量%、ポリアリルアミンを0.002質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0162】
[比較例17]
芳香族ポリオキシアルキレン化合物の代わりにポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル〔阪本薬品工業株式会社製SC−E2000、重量平均分子量:2000〕を用いた以外は実施例7と同様にして、セリウムの水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルを0.5質量%、ポリアリルアミンを0.001質量%含有するCMP用研磨剤を調製した。
【0163】
<研磨剤物性評価>
前記で得られたCMP用研磨剤のpH、及び、CMP用研磨剤中の砥粒の平均粒径を下記の条件で評価した。
【0164】
(pH)
測定温度:25±5℃
測定装置:電気化学計器株式会社製、型番PHL−40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP用研磨剤に入れて、2分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0165】
(砥粒の平均粒径)
ベックマンコールター社製、商品名:N5を用いてCMP用研磨剤中の砥粒の平均粒径を測定した。測定法は下記のとおりである。まず、CMP用研磨剤を1cm角のセルに約1mL入れた後、N5内にセルを設置した。測定サンプルの屈折率を1.333、測定サンプルの粘度を0.887mPa・sに調整した後、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0166】
<CMP評価>
前記CMP用研磨剤のそれぞれを用いて下記研磨条件で被研磨基板を研磨した。但し、比較例1については、パターンウエハの研磨を行わなかった。
【0167】
(CMP研磨条件)
・研磨装置:Reflexion(APPLIED MATERIALS社製)
・CMP用研磨剤流量:200mL/分
・被研磨基板:下記「パターンなしウエハ」及び「パターンウエハ」
・研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、型番IC1010)
・研磨圧力:16.5kPa(2.4psi)
・基板と研磨定盤との相対速度:85m/分
・研磨時間:ブランケットウエハは、1分間研磨を行った。パターンウエハは、ストッパ膜であるポリシリコン膜が露出するまで研磨を行った。また、ポリシリコン膜が露出するまでにかかった研磨時間と同じ時間更に削り込んでポリシリコン膜の膜厚差の広がり度合いの確認を行った。
・洗浄:CMP処理後、超音波水による洗浄を行った後、スピンドライヤで乾燥させた。
【0168】
[パターンなしウエハ]
パターンが形成されていないブランケットウエハとして、厚さ1μmの酸化珪素膜をシリコン基板上にプラズマCVD法で形成した基板と、厚さ0.2μmのポリシリコン膜をシリコン基板上にCVD法で形成した基板とを用いた。
【0169】
[パターンウエハ]
模擬パターンが形成されたパターンウエハとして、SEMATECH社製、764ウエハ(商品名、直径:300mm)を用いた。該パターンウエハは、ストッパ膜としてポリシリコン膜をシリコン基板上に積層後、露光工程においてトレンチを形成し、ポリシリコン膜及びトレンチを埋めるようにシリコン基板及びポリシリコン膜の上に絶縁膜として酸化珪素膜(SiO
2膜)を積層することにより得られたウエハであった。酸化珪素膜は、HDP(High Density Plasma)法により成膜されたものであった。
【0170】
前記パターンウエハとしては、ライン&スペースが100μmピッチ、且つ、凸部パターン密度が20%、30%、50%、80%である部分を有するものを使用した。パターンウエハは、模擬的なパターンとして、ポリシリコン膜でマスクされたActive部(凸部)と、溝が形成されたTrench部(凹部)とが交互に並んだパターンを有している。例えば、「ライン&スペースが100μmピッチ」とは、ライン部とスペ−ス部との幅の合計が、100μmであることを意味する。また、例えば、「ライン&スペースが100μmピッチ、且つ、凸部パターン密度が20%」とは、凸部幅20μmの凸部と幅80μmの凹部とが交互に並んだパターンを意味する。
【0171】
前記パターンウエハにおいて、酸化珪素膜の膜厚は、シリコン基板及びポリシリコン膜のいずれの上においても600nmであった。具体的には、
図1に示すように、シリコン基板1上のポリシリコン膜2の膜厚は150nmであり、酸化珪素膜3の凸部の膜厚は600nmであり、酸化珪素膜3の凹部の膜厚は600nmであり、酸化珪素膜3の凹部深さは500nm(トレンチ深さ350nm+ポリシリコン膜厚150nm)であった。
【0172】
パターンウエハの研磨評価に際しては、セルフストップ性(模擬パターンの残段差が小さくなると研磨速度が低下する特性)が得られる公知のCMP用研磨剤を用いて前記ウエハを研磨し、残段差が100nm以下の状態のウエハを用いた。具体的には、日立化成株式会社製HS−8005−D4と、日立化成株式会社製HS−7303GPと、水とを2:1.2:6.8の比率で配合した研磨剤を用いて、100μmピッチ且つ凸部パターン密度50%の部分における凸部の酸化珪素膜厚を100nmまで研磨した状態のウエハを用いた。
【0173】
(研磨品評価)
[ブランケットウエハ研磨速度]
前記条件で研磨及び洗浄した被研磨基板について、各被研磨膜(酸化珪素膜、ポリシリコン膜)の研磨速度(酸化珪素膜の研磨速度:SiO
2RR、ポリシリコン膜の研磨速度:p−SiRR)を次式より求めた。なお、研磨前後での各被研磨膜の膜厚差は、光干渉式膜厚装置(フィルメトリクス社製、商品名:F80)を用いて求めた。
(研磨速度:RR)=(研磨前後での各被研磨膜の膜厚差(nm))/(研磨時間(分))
【0174】
[研磨傷]
前記条件で研磨及び洗浄した被研磨基板(ブランケットウエハ)を0.5質量%のフッ化水素の水溶液に15秒間浸漬した後に、60秒間水洗した。続いて、PVAブラシで被研磨膜表面を、水を供給しながら1分間洗浄した後に、乾燥させた。APPLIED MATERIALS製Complusを用いて、被研磨膜表面の0.2μm以上の欠陥を検出した。更に、Complusで得られた欠陥検出座標とAPPLIED MATERIALS製SEM Visionを用いて、被研磨膜表面を観測したところ、被研磨膜表面における0.2μm以上の研磨傷の個数は、実施例1〜10及び比較例1〜17のいずれにおいても0〜3(個/ウエハ)程度であり、研磨傷の発生が充分に抑制されていた。
【0175】
[パターンウエハ評価]
凸部パターン密度が異なる各部分について、前記条件で研磨及び洗浄したパターンウエハの凸部におけるポリシリコン膜の残膜厚を測定した。ポリシリコン膜厚の凸部パターン密度に対する依存性を評価するため、凸部パターン密度が異なる各部分について測定して得られたポリシリコン膜厚における最大値と最小値の差を次式より求めた。なお、研磨前後での各被研磨膜の膜厚は、光干渉式膜厚装置(ナノメトリクス社製、商品名:Nanospec AFT−5100)を用いて求めた。
ポリシリコン膜厚の差(nm)=(ポリシリコン膜厚の最大値(nm))−(ポリシリコン膜厚の最小値(nm))
【0176】
なお、酸化珪素膜が除去しきれず、ポリシリコン膜が露出しなかった部分については、その部分において残った酸化珪素の膜厚を測定した(表中では、*付きの数字が酸化珪素の残膜厚を示す)。この場合、ポリシリコン膜厚の差は測定していない。
【0177】
実施例1〜10及び比較例1〜17で得られた各測定結果を表1〜表5に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
*は酸化珪素膜残り量(nm)を示す。
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
なお、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−207D、重量平均分子量:4500〕は、上記式(I)及び式(III)に該当する下記の化合物である。
・R
11:スチレン化フェニル基
・R
12、R
31:エチレン基
・m1、m3:100
・m2:1〜3
【0184】
また、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル〔第一工業製薬株式会社製エマルジット49、重量平均分子量:3000〕は、上記式(I)及び式(IV)に該当する下記の化合物である。
・R
11:アルキルフェニル基
・R
12、R
42:エチレン基
・R
41:ノニル基
・m1、m4:70
【0185】
以下、表1〜表5に示す結果について詳しく説明する。
【0186】
実施例1〜10において、パターンなしウエハ(ブランケットウエハ)評価では、酸化珪素の研磨速度が良好であり、ポリシリコンの研磨速度が抑制され、ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨速度比が極めて高い結果が得られた。
【0187】
実施例1において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は5nmであり、更に25秒多く削り込んでも6nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0188】
実施例2において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に33秒多く削り込んでも5nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0189】
実施例3において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に25秒多く削り込んでも5nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0190】
実施例4において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は4nmであり、更に23秒多く削り込んでも9nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0191】
実施例5において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に22秒多く削り込んでも3nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0192】
実施例6において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に21秒多く削り込んでも2nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0193】
実施例7において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に30秒多く削り込んでも4nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0194】
実施例8において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は2nmであり、更に25秒多く削り込んでも4nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0195】
実施例9において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は3nmであり、更に24秒多く削り込んでも9nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0196】
実施例10において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は4nmであり、更に25秒多く削り込んでも9nmであり、比較例より凸部パターン密度に依存することなくポリシリコン膜の研磨が抑制されている結果が得られた。
【0197】
比較例1において、SiO
2RRは163nm/分、p−SiRRは62nm/分、研磨速度比は3であった。
【0198】
比較例2において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は5nmであり、更に30秒多く削り込んだ時点では14nmであった。
【0199】
比較例3において、パターンウエハ評価では、パターン密度50%及び80%の部分において、凸部の酸化珪素膜を60秒で除去することができなかった。
【0200】
比較例4において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は9nmであり、更に30秒多く削り込んだ時点では31nmであった。
【0201】
比較例5において、パターンウエハ評価では、パターン密度50%及び80%の部分において、凸部の酸化珪素膜を30秒で除去することができなかった。
【0202】
比較例6において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は11nmであり、更に21秒多く削り込んだ時点では54nmであった。
【0203】
比較例7において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は13nmであり、更に27秒多く削り込んだ時点では33nmであった。
【0204】
比較例8において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は18nmであり、更に22秒多く削り込んだ時点では21nmであった。
【0205】
比較例9において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は19nmであり、更に28秒多く削り込んだ時点では41nmであった。
【0206】
比較例10において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は25nmであり、更に17秒多く削り込んだ時点では30nmであった。
【0207】
比較例11において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は10nmであり、更に30秒多く削り込んだ時点では13nmであった。
【0208】
比較例12において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は8nmであり、更に21秒多く削り込んだ時点では14nmであった。
【0209】
比較例13において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は5nmであり、更に23秒多く削り込んだ時点では20nmであった。
【0210】
比較例14において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は8nmであり、更に21秒多く削り込んだ時点では21nmであった。
【0211】
比較例15において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は16nmであり、更に23秒多く削り込んだ時点では36nmであった。
【0212】
比較例16において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は25nmであり、更に15秒多く削り込んだ時点では41nmであった。
【0213】
比較例17において、パターンウエハ評価では、ポリシリコン膜が露出した時点のポリシリコン膜厚差は22nmであり、更に30秒多く削り込んだ時点では45nmであった。