(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄工程では、前記ケーキに含まれる水酸化スズ粉1kgに対して前記洗浄液として5〜20Lのイオン交換水を用いて洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載の水酸化スズ粉の製造方法。
前記洗浄工程では、超音波洗浄器による前記ケーキの撹拌洗浄と、当該撹拌洗浄後のろ過からなる操作を複数回繰り返すことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の水酸化スズ粉の製造方法。
電解終了後の前記電解液にアンモニア水を添加して、該電解液のpHを7.0〜9.0に調整してから、前記洗浄工程に移行することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の水酸化スズ粉の製造方法。
前記電解法による電解時に、前記硝酸アンモニウム水溶液の濃度を0.1〜1.0mol/L、pHを2.0〜4.0、液温を25〜50℃として、且つ電極電流密度を5〜15A/dm2の範囲に制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の水酸化スズ粉の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化スズ粉を作製する際における仮焼前物質となる水酸化スズ粉を生成するに際して、電解法の方が中和法よりも比較的低い設備費やランニングコストで、かつ安定した条件で水酸化スズ粉を製造することが可能となる。また、電解法によって生成される水酸化スズ粉を仮焼して得られる酸化スズ粉の平均粒径、見かけ密度等の諸特性の幅が非常に広くなり、さらに電解条件の選択によってこれら諸特性をきめ細かく制御できるので、スパッタリングターゲット用原料となる酸化スズ粉を製造する際には、水酸化スズ粉の生成に電解法が積極的に採用されている。
【0008】
しかしながら、電解法による水酸化スズ粉の製造方法では、電解によって生成された水酸化スズ粉を含むケーキを洗浄してから、洗浄液を脱水後に水酸化スズ粉を含む粉体混合物を乾燥炉内で乾燥すると、水酸化スズ粉が炉内で突沸することが問題となる。すなわち、水酸化スズ粉を生成する過程において、乾燥工程で水酸化スズ粉が炉内で突沸すると、生成された水酸化スズ粉が炉内に舞って炉壁を汚染すると同時に、水酸化スズ粉の収率が低下し、場合によっては、るつぼや炉壁等を破損するリスクがあった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電解法で水酸化スズ粉を製造する過程において、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を防止することの可能な、新規かつ改良された水酸化スズ粉の製造方法、及び水酸化スズ粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、硝酸アンモニウム水溶液を電解液に用いた電解法により水酸化スズ粉を生成する水酸化スズ粉の製造方法であって、
前記電解法により生成された電解スラリーを固液分離して得られたケーキを洗浄液で洗浄して、洗浄後の前記洗浄液の電気伝導度を500μS/m 以下とする洗浄工程と、前記洗浄工程で得られた洗浄スラリーから前記洗浄液を脱水して得られる粉体混合物を110℃以上150℃以下の乾燥温度で乾燥する乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様によれば、洗浄工程で水酸化スズ粉を含むケーキに残留する硝酸アンモニウムが所定量以下になるので、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を抑制できる。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、前記乾燥工程後の前記粉体混合物
を湯煎して得られた湯煎液に含まれる硝酸量が5000ppm以下、アンモニア量が1000ppm以下であることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、乾燥工程後の粉体混合物に残留する硝酸アンモニウムが所定量以下になるので、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を抑制できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記洗浄工程では、前記ケーキに含まれる水酸化スズ粉1kgに対して前記洗浄液として5〜20Lのイオン交換水を用いて洗浄することとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、洗浄工程後の水酸化スズ粉を含むケーキに残留する硝酸アンモニウムを所定量以下に低減できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記洗浄工程では、前記イオン交換水を40℃以上80℃以下にして、前記ケーキを洗浄することとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、洗浄工程でケーキに残留する硝酸アンモニウムが効率的に溶解されるので、当該硝酸アンモニウムの残留量を低減できる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記洗浄工程では、超音波洗浄器による前記ケーキの撹拌洗浄と、当該撹拌洗浄後のろ過からなる操作を複数回繰り返すこととしてもよい。
【0019】
このようにすれば、水酸化スズ粉の洗浄効果が向上する上に、水酸化スズ粉の凝集を防止できる。
【0020】
また、本発明の一態様では、電解終了後の前記電解液にアンモニア水を添加して、該電解液のpHを7.0〜9.0に調整してから、前記洗浄工程に移行することとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、洗浄工程における洗浄水の供給量を適量に抑制した上で、水酸化スズ粉を含む電解スラリーに残留する硝酸アンモニウムを所定量以下に低減できる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記電解法による電解時に、前記硝酸アンモニウム水溶液の濃度を0.1〜1.0mol/L、pHを2.0〜4.0、液温を25〜50℃として、且つ電極電流密度を5〜15A/dm
2の範囲に制御することとしてもよい。
【0023】
このようにすれば、粒度分布幅が小さい粒径の揃った水酸化スズ粉を効率的に生成できるようになる。
【0024】
また、本発明の他の態様は
、水酸化スズ粉であって、
湯煎して得られた湯煎液に含まれる硝酸量が3500ppm以上5000ppm以下、アンモニア量が550ppm以上1000ppm以下であることを特徴とする。
【0025】
本発明の他の態様によれば、乾燥工程時における突沸を抑制した上で、粒度分布幅が狭く、スパッタリングターゲット用原料となる酸化スズの仮焼前物質として好適な原料となる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を抑制できるので、水酸化スズ粉の製造時における安全性の確保と、乾燥工程後の水酸化スズ粉の収率の向上を図れるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0029】
まず、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法の概略について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法の概略を示すフロー図である。
【0030】
本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法は、電気分解工程S11、電解液分離工程S12、洗浄工程S13、洗浄液脱水工程S14、及び乾燥工程S15を含む。そして、これらの工程S11乃至S15が
図1に示すフローで行われることによって、水酸化スズ粉が生成される。
【0031】
電気分解工程S11では、スズを含むアノードと、カソードとを電解液に浸漬させ、電解反応により水酸化スズ粉を生成する。本実施形態では、硝酸アンモニウム水溶液を電解液に用いた電解法により水酸化スズ粉を生成する。
【0032】
電解液分離工程S12では、電気分解工程S11により得られた電解スラリーから、電解液と水酸化スズ粉を含むケーキとを固液分離する。本実施形態では、電解液分離工程S12で電解スラリーから電解液を分離するために、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く、水酸化スズ粉の回収効率が高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。
【0033】
洗浄工程S13では、電解液分離工程S12で得られた水酸化スズ粉を含むケーキに電解液が含まれるため、当該ケーキにイオン交換水を供給して、水酸化スズ粉をリパルプ洗浄し、洗浄スラリーを得る。洗浄工程S13で行うリパルプ洗浄に使用する洗浄液は、不純物が少ない方が望ましいため、本実施形態では、洗浄液としてイオン交換水を用いる。
【0034】
洗浄液脱水工程S14では、洗浄工程S13で得られた洗浄スラリーから洗浄液を脱水し、水酸化スズ粉を含む粉体混合物を得る。本実施形態では、洗浄液脱水工程S14における脱水には、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く回収効率の高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。
【0035】
乾燥工程S15では、洗浄液脱水工程S14で得られた水酸化スズ粉を含む粉体混合物を乾燥する。乾燥工程S15では、水酸化スズ粉の乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレードライヤ、空気対流型乾燥炉、赤外線乾燥炉等の乾燥機を用いて乾燥することができる。本実施形態では、水酸化スズ粉を化学的に安定した状態で乾燥するために、乾燥工程S15での乾燥温度を110〜150℃とする。
【0036】
本発明者らは、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸の原因が、水酸化スズ粉の製造方法による最終生成物である水酸化スズ粉を含む粉体混合物に残留する硝酸アンモニウムであることから、当該硝酸アンモニウムの残留量を削減することによって、水酸化スズ粉の突沸が抑制されることを見出した。
【0037】
具体的には、本発明者らは、洗浄工程S13で洗浄後の洗浄液の電気伝導度を所定の大きさ以下となるように、水酸化スズ粉を含むケーキをリパルプ洗浄することによって、乾燥工程S15での水酸化スズ粉の突沸を抑制できることを見出し、かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における各工程の詳細について、以下に説明する。
【0038】
(電気分解工程)
まず、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における電気分解工程の詳細について説明する。電気分解工程では、スズを含むアノードと、カソードとを硝酸アンモニウム水溶液からなる電解液に浸漬させた電解装置を用いて、電解反応により水酸化スズ粉を含む電解スラリーを生成する。
【0039】
アノードには、例えば金属スズ等を用いる。使用する金属スズ等は、特に限定されないが、メタスズ酸粉末や、水酸化スズ粉を焼成して得られる酸化スズ粉への不純物の混入を抑制するため、高純度のものが望ましい。金属スズとしては、純度99.9999%(通称6N品)が好適品として挙げることができる。
【0040】
アノードの厚みは、極間距離が電解時間中で著しく変わらない程度にすることが好ましく、その取扱い時の重量からみても、必要以上に厚くすることは好ましくない。アノードの大きさは、生産規模に応じて、又は目標の製造量に見合うように適宜決定してもよい。
【0041】
カソードとしては、導電性の金属やカーボン電極等が用いられ、例えば不溶性のチタンや白金を用いることができ、チタンを白金でコーティングしたものであってもよく、アノードと同じ材料を利用してもよい。カソードの厚みは、電解装置の大きさ等に応じて適宜変更することができ、カソードの大きさは、生産規模に応じて、又は目標の製造量に見合うように適宜決定してもよい。
【0042】
アノード及びカソードの電極間距離は、特に指定されないが、10〜50mmが望ましい。電極間距離が50mmより広くなると、電解液の抵抗による電圧降下が発生し、液温上昇を生じさせるため好ましくない。一方、電極間距離が10mmより狭くなると、電極間での接触やショートが発生しやすくなるため好ましくない。従って、アノード及びカソードの電極間距離は、10〜50mmが好ましい。
【0043】
アノード及びカソードの配置は、特に限定されず、一般的な電極の配置を採用することができる。例えば、電解装置では、両極が互いに平行となるよう交互に配置することが好ましい。
【0044】
また、本実施形態では、電解液の濃度は、0.1〜1.0mol/Lに調整することが好ましい。電解液の濃度が0.1mol/L未満である場合には、電解時の電圧上昇が大きくなり、通電部が発熱したり、電力コストが高くなったりする等の問題が生じるため好ましくない。一方、電解液の濃度が1.0mol/Lを超える場合には、電解によって水酸化スズ粉が粗大化し、粒径のばらつきが大きくなり、水酸化スズ粉への硝酸アンモニウム成分の混入量が多くなるため好ましくない。
【0045】
電解液のpHは、2.0〜4.0に調整することが好ましい。電解液のpHが2.0未満である場合には、水酸化スズ粉の沈澱が生じない。一方、電解液pHが4.0を超える場合には、水酸化スズ粉の析出する速度が速すぎて電解液の濃度不均一のまま沈澱が形成されるため、粒度分布幅が広くなり、粒度分布幅を狭く制御することができない。
【0046】
電流密度は、特に限定されないが、5〜15A/dm
2が望ましい。5A/dm
2以下だと、水酸化スズ粉の生成量が少なくなり、仮焼後の酸化スズ粉末の製造量が少なくなる。15A/dm
2以上だと、電解時の電圧上昇が大きくなり、通電部が発熱したり、電力コストが高くなる等の問題が生じる。
【0047】
電解液の温度は25〜50℃が望ましい。それ以下だと、生成する水酸化スズ粉の1次粒子径が微細化するため、凝集し、2次粒子径が粗大化してしまう。2次粒子径の大きな粉末を用いた場合、ターゲットの焼結密度が上がらないため、ビーズミル等で粉砕しなければならない。それ以上だと、液温度のため生成した水酸化スズ粉が溶解するため、1次粒子径が小さくなる。その結果、上述したように、2次粒子径の粗大化が起こってしまう。
【0048】
このように本実施形態では、電解法による電解時、すなわち電気分解工程において、電解液となる硝酸アンモニウム水溶液の濃度を0.1〜1.0mol/L、pHを2.0〜4.0、液温を25〜50℃として、且つ電極電流密度を5〜15A/dm
2の範囲に制御することによって、粒度分布幅が小さい粒径の揃った水酸化スズ粉を効率的に生成できるようにしている。このため、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法で生成された水酸化スズ粉は、スパッタリングターゲット用原料となる酸化スズの仮焼前物質として好適な原料となる。
【0049】
(電解液分離工程)
次に、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における電解液分離工程の詳細について説明する。電解液分離工程では、上述した電気分解工程により得られた電解スラリーから、電解液と水酸化スズ粉を含むケーキとを固液分離する。
【0050】
電解液分離工程で電解終了後の電解液にアンモニア水を添加して、pHを7.0〜9.0に調整することが好ましい。電解液のpHが7.0未満である場合には、硝酸の分離量が大きくなって、洗浄水の使用量が増加するとともに、洗浄液の処分のためのpH調整が更に必要となる。一方、電解液のpHが9.0を超える場合には、アンモニアの分離量が大きくなって、洗浄水の使用量が増加するとともに、洗浄液の処分のためのpH調整が更に必要となる。すなわち、本実施形態では、洗浄工程における洗浄水の供給量を適量に抑制した上で、水酸化スズ粉を含む電解スラリーに残留する硝酸アンモニウムを効率的に所定量以下に低減するために、洗浄工程に移行する前の電解液分離工程では、電解終了後の電解液にアンモニア水を添加して、当該電解液のpHを7.0〜9.0に調整する。
【0051】
電解液分離工程では、電解スラリーから電解液を分離するために、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く、水酸化スズ粉の回収効率が高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。ロータリーフィルタで使用するろ布は、水酸化スズ粉の回収率を高めるため、できるだけ通気度が小さい方が望ましい。特に、電解液分離工程では、通気度が0.3cm
3/sec/cm
2以下のものが好ましい。
【0052】
(洗浄工程)
次に、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における洗浄工程の詳細について説明する。電解液分離工程で得られた水酸化スズ粉を含むケーキには、電解液が含まれるため、本実施形態では、洗浄工程において水酸化スズ粉を含むケーキにイオン交換水を加えて水酸化スズ粉をリパルプ洗浄して、洗浄スラリーを得る。
【0053】
本実施形態では、リパルプ洗浄に使用する洗浄液は、不純物が少ない方が望ましいため、イオン交換水を用いる。洗浄工程では、特に、「JIS K0557」に規定されたA2グレード以上のイオン交換水であることが望ましい。A2グレード以下のイオン交換水を用いる場合には、シリカ等の不純物が混入し、生成された水酸化スズ粉を使用したスパッタリングターゲットを作製する際に問題となるため、好ましくない。
【0054】
リパルプ洗浄は、ケーキ中に含まれる水酸化スズ粉1kgに対して5L〜20Lのイオン交換水を用いて洗浄することが望ましい。使用するイオン交換水の量が5Lより少ない場合には、水酸化スズ粉内に、電解液成分である硝酸アンモニウム等が多く残留してしまい、水酸化スズ粉の乾燥時や、水酸化スズ粉を仮焼し、水酸化スズ粉を得る際に、火災が発生する危険性が高くなる。一方、リパルプ洗浄工程では、20Lのイオン交換水を使用すれば洗浄できるため、20Lよりも多くイオン交換水を使用すると、洗浄後の排水処理量が増加し、コストアップとなってしまう。すなわち、本実施形態では、洗浄工程後の水酸化スズ粉を含むケーキに残留する硝酸アンモニウムを所定量以下に効率的に低減するために、洗浄工程では、ケーキに含まれる水酸化スズ粉1kgに対して洗浄液として5〜20Lのイオン交換水を用いて洗浄する。
【0055】
リパルプ洗浄をする際には、撹拌洗浄を行うが、当該撹拌洗浄は、超音波洗浄器を使用するのが、更に好ましい。超音波洗浄器によるキャビテーションにより、イオン交換水自身の持っている湿潤、溶解、解離等化学的作用の相乗効果により、水酸化スズ粉の洗浄効果が向上し、水酸化スズ粉の凝集を防止することができる。また、本実施形態では、洗浄工程で超音波洗浄器による水酸化スズ粉を含むケーキの撹拌洗浄と、当該撹拌洗浄後のろ過からなる操作を複数回繰り返すことによって、水酸化スズ粉の洗浄効果を向上させた上に、水酸化スズ粉の凝集を防止する。なお、超音波洗浄器の構成及び周波数、出力、振幅、照射時間等の超音波条件は、一般的に用いられている超音波洗浄器及び超音波条件等を使用できる。
【0056】
このように洗浄工程では、リパルプ洗浄を行うことによって、水酸化スズ粉を含むケーキ中の電解液を除去でき、水酸化スズ粉を含むケーキを洗浄して、洗浄スラリーを得ることができる。リパルプ洗浄回数は、水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄後の洗浄液の電気伝導度500μS/m以下になるまで、複数回繰り返すことが更に好ましい。洗浄不足の場合、水酸化スズ粉に電解液である硝酸アンモニウムの残留により、後工程での乾燥工程で、当該硝酸アンモニウムが分解し、突沸が発生する。かかる突沸の発生によって、水酸化スズ粉が粉砕され、その粒度分布の広くなってしまい、また、水酸化スズ粉が乾燥炉内に飛散するため、その回収率が低下してしまう。なお、電気伝導度は、一般的に使用されている電気伝導率計等で測定される。
【0057】
リパルプ洗浄で使用する洗浄水となるイオン交換水の液温は、40〜80℃が好ましい。下記の表1に示すように、硝酸アンモニアの水に対する溶解度は、イオン交換水の液温の上昇により、増加すること確認されている。
【0059】
表1に示すように、40℃で硝酸アンモニウムを洗浄液で溶解して除去するのに必要な溶解度(297g/100g H
2O)を確保できるので、水酸化スズ粉の表面に付着した硝酸アンモニウムを洗浄するのに適していることがわかる。イオン交換水の液温を80℃以下とするのは、イオン交換水が蒸発して、系内の成分濃度が変化するのを回避するためである。すなわち、本実施形態では、リパルプ洗浄で使用するイオン交換水の液温を40℃以上80℃以下とすることによって、水酸化スズ粉を含むケーキに残留する硝酸アンモニウムを効率よく溶解するので、当該硝酸アンモニウムの残留量が低減できる。
【0060】
(洗浄液脱水工程)
次に、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における洗浄液脱水工程の詳細について説明する。洗浄液脱水工程では、リパルプ洗浄工程で得られた洗浄スラリーから洗浄液を脱水し、水酸化スズ粉を含む粉体混合物を得る。すなわち、洗浄液脱水工程が終了した時点では、水酸化スズ粉に電解液の成分等の不純物が含まれた粉体混合物となっている。脱水には、微細な粉末であっても目詰まりを起こし難く、回収効率の高いクロスフロー方式のロータリーフィルタを使用する。
【0061】
また、電解液や洗浄液を再利用する場合には、洗浄液脱水工程では、洗浄スラリーを脱水して得られた洗浄液を加熱して所定の時間減圧蒸留し、濃縮液を得る。次に、洗浄液脱水工程では、得られた濃縮液を電解液分離工程により分離された電解液と混合し、電気分解工程で使用した電解液11と同じ濃度やpH等になるように、純水を添加して調整する。その後、洗浄液脱水工程では、純水を添加して調整した電解液11を再び電解槽に供給する。
【0062】
その結果、電気分解工程では、洗浄液脱水工程において再生した電解液を用いて、新たな電解を行うことができる。また、電解液や洗浄液を再利用することで、電解液を廃液として廃棄することがなくなり、廃液処理に伴うコストを削減することができ、更に、電解液の損失を抑制できると共に、環境への負荷を抑制することができる。
【0063】
(乾燥工程)
次に、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法における乾燥工程の詳細について説明する。乾燥工程では、洗浄液脱水工程で得られた水酸化スズ粉を含む粉体混合物を乾燥する。
【0064】
前述したように、乾燥工程における水酸化スズ粉の乾燥方法は、特に限定されるものではなく、例えば、スプレードライヤ、空気対流型乾燥炉、赤外線乾燥炉等の乾燥機を用いて乾燥することができる。
【0065】
乾燥工程における水酸化スズ粉の乾燥条件は、水酸化スズ粉に含まれる水分を除去できれば特に限定されないが、乾燥温度を110〜150℃の範囲とすることが好ましい。乾燥温度が110℃よりも低い場合には、乾燥が不十分となり、150℃よりも高い場合には、水酸化スズ粉か酸化スズに変化してしまう。また、乾燥工程における水酸化スズ粉の乾燥時間は、温度により異なるが、約10〜24時間程度である。
【0066】
硝酸アンモニウムは、125℃の温度で、正方晶から立方晶への転移点が存在し、これに対応した吸熱ピークが見られることが知られている。水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸アンモニウム不純物の濃度が高い場合、乾燥条件が125℃前後において、硝酸アンモニウムの転移点に起因した突沸が発生するため、乾燥工程前の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸アンモニウム不純物の濃度を洗浄により低減する必要がある。すなわち、硝酸アンモニウムの結晶構造が正方晶から立方晶に転移する転移点が乾燥工程での乾燥温度110〜150℃の範囲内にある125℃であることから、乾燥工程での突沸を抑制するためには、乾燥させる水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸アンモニウムの残留量を削減する必要がある。
【0067】
このため、本実施形態では、洗浄工程で水酸化スズ粉を含むケーキ中の硝酸アンモニウムの残留量を所定量以下となるようにリパルプ洗浄して、乾燥工程後の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸量が5000ppm以下、アンモニア量が1000ppm以下となるように調整する。なお、リパルプ洗浄による製造コストを低減するために、乾燥工程後の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸量は、3500ppm以上5000ppm以下、アンモニア量が550ppm以上1000ppm以下の範囲となるように調整することが好ましい。また、その一環として、洗浄工程で水酸化スズ粉を含むケーキを洗浄液で洗浄した際に、洗浄後の洗浄液の電気伝導度を500μS/m 以下となるようにリパルプ洗浄を行う。
【0068】
すなわち、洗浄後の洗浄液の電気伝導度が500μS/m 以下となるようにリパルプ洗浄することによって、洗浄工程での水酸化スズ粉を含むケーキ中の硝酸アンモニウムの残留量が、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を抑制可能な所定量以下となるように調整できる。このため、水酸化スズ粉を生成する過程において、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を未然に防止するように、容易に制御できる。
【0069】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法を適用することによって、乾燥時の水酸化スズ粉の突沸を抑制できるので、生成された水酸化スズ粉が炉内に舞って炉壁を汚染するリスクや炉壁等を破損するリスクが低減され、水酸化スズ粉の生成時における安全性を確保できる。また、乾燥時の水酸化スズ粉の突沸を抑制することによって、乾燥工程で生成された水酸化スズ粉が炉内で飛散するリスクが低減されるので、水酸化スズ粉の収率が向上する。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法の実施例及び比較例を用いて、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法について、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
(1)電気分解工程
実施例1における電気分解工程では、電解装置を用いて水酸化スズ粉を生成した。電解装置は、縦100cm、横40cm、深さ50cmの200Lの電解槽を備えている。
【0072】
電解槽には、その槽内に、複数のアノード(陽極)とカソード(陰極)とがそれぞれ配置されている。実施例1では、アノードには、純度99.99%のスズ金属を巾26cm、高さ40cm、厚み8mmの板状に成型したものを4枚準備し、カソードには、巾26cm、高さ40cm、厚み4mmのチタン金属板を5枚準備した。
【0073】
電解槽内には、5枚のカソードと4枚のアノードとを、垂直にして両極が互いに平行となるよう交互に配置し、カソードとアノードと間の距離を2.0cmに調節した。そして、実施例1では、5枚のカソードと4枚のアノードを、導線で電気的に接続した。
【0074】
電解装置には、電解液として、1.0mol/Lの硝酸アンモニウム水溶液40Lが投入されている。実施例1では、硝酸アンモニウム水溶液に対し1N硝酸を添加し、水素イオン濃度指数pHを3.0に調整した。電解液の温度を35℃に維持した。
【0075】
電解装置では、電極電流密度を10A/dm
2に調節し、電解を6時間継続した。この電解により、電気分解工程では、水酸化スズ粉を含む電解スラリーが得られた。
【0076】
(2)電解液分離工程
次に、実施例1における電解液分離工程では、電解終了後の電解液に、アンモニア水を添加して、pHを8.0に調整した。
【0077】
pH調整後の水酸化インジウム粉を含む電解スラリーの固液分離を行った。電解液分離工程では、水酸化スズ粉を含む電解スラリーの固液分離を行うに際して、ロータリーフィルタ(寿工業(株)製、RFU−02B)と、ろ布(KE−022、通気度0.1cm
3/sec/cm
2)を使用した。その結果、電解液分離工程では、固液分離により、水酸化スズ粉ケーキと、分離された電解液とが得られた。
【0078】
(3)洗浄工程
次に、実施例1における洗浄工程では、電解液分離工程で得られた水酸化スズ粉ケーキをリパルプ洗浄した。洗浄工程では、水酸化スズ粉ケーキに対して、10倍のイオン交換水(電気伝導度100μS/m、液温60℃)を加えてステンレス容器内で、再分散、30分間、機械撹拌洗浄を行った。その後、洗浄工程では、電解液分離工程と同様にして固液分離操作を行い、再び水酸化スズ粉を含むケーキと、分離された洗浄液とが得られた。更に、かかる分離された洗浄液の電気伝導度が500μS/m 以下になるまで、リパルプ洗浄を3回繰り返した。
【0079】
(4)洗浄液脱水工程
次に、実施例1における洗浄液脱水工程では、減圧蒸留装置(日鉄住友環境株式会社製、エコプリマ)を使用して、濃縮加熱用ヒーター釡(容量1m
3)に、洗浄工程で得られた洗浄液100Lを仕込み、電気ヒーター100kW/hrで4時間減圧蒸留を実施し、濃縮液を得た。
【0080】
次に、洗浄液脱水工程では、得られた濃縮液を、電解液分離工程で得られた電解液と混合し、電気分解工程で使用した電解液の濃度やpH等と同じになるよう純水を添加して調整した後、再び電解槽に供給し、新たな電解を行った。なお、洗浄液脱水工程までの各工程において、電解液は、廃液として廃棄されることはなかった。
【0081】
(5)乾燥工程
実施例1では、洗浄液脱水工程により得られた水酸化スズ粉スラリーをアルミナるつぼに入れて、乾燥炉で110℃、15時間の乾燥を行い、突沸の有無を確認した。その後、得られた水酸化スズ粉に含まれる硝酸量、アンモニア量を測定した。測定は、一定量の粉末を熱湯で湯煎したのち、湯煎液に含まれる硝酸イオン量、アンモニウムイオン量をイオンクロマト法にて行った。その結果を表2に示した。
【0082】
[実施例2〜9及び比較例1〜8]
実施例2〜9及び比較例1〜8は、電解時のpH、固液分離時のpH、洗浄水温度、機械撹拌/超音波洗浄、洗浄回数、乾燥温度を表2に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして、水酸化スズ粉を作製した。
【0083】
以下の表2には、洗浄液の電気伝導度、乾燥後の硝酸イオンの濃度を示す硝酸量、乾燥後のアンモニウムイオンの濃度を示すアンモニア量、突沸の有無、及び乾燥工程後の収率を示した。
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示すように、実施例1〜9では、リパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が500μS/m 以下であり、かつ乾燥時に突沸が発生しなかった。また、乾燥後の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸量が5000ppm以下であり、アンモニア量が1000ppm以下の粉体混合物が得られた。すなわち、不純物となる硝酸アンモニウムの濃度が低く、水酸化スズ粉の純度が高い粉体混合物が得られた。また、乾燥後の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸量が5000ppm以下、かつ、アンモニア量が1000ppm以下であれば、当該粉体混合物中の硝酸量が3500ppm以上、かつ、アンモニア量が550ppm以上であっても、乾燥工程時における突沸の発生を抑制して、乾燥工程後の高い収率を確保できることが分かった。特に、洗浄工程で超音波洗浄を行った実施例8では、洗浄液の電気伝導度、乾燥後の水酸化スズ粉を含む粉体混合物中の硝酸量、アンモニア量がそれぞれ各実施例中の最小値となることから、硝酸アンモニウムの削減効果が大きいことが分かった。また、実施例1〜9では、乾燥工程後の収率が何れも99.8〜100.0%と極めて高い数値となった。
【0086】
一方、比較例1では、固液分離時のpHを3.0とした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例1では、硝酸の分離によってリパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が1400μS/mと高くなり、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。また、当該突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が69.2%まで下がった。
【0087】
一方、比較例2では、固液分離時のpHを10.0とした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例2では、アンモニアの分離により、リパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が700μS/mと高くなり、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。また、当該突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が78.5%まで下がった。
【0088】
一方、比較例3では、乾燥温度を90℃にした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例3では、乾燥した水酸化スズ粉を得ることができなかった。
【0089】
一方、比較例4では、乾燥温度を170℃にした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例4では、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。また、酸化スズが析出していることが確認された。すなわち、乾燥温度を150℃より大きくすることによって、水酸化スズの一部が酸化スズまで酸化されてしまうことが確認された。
【0090】
一方、比較例5では、洗浄水温度を20℃にした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例5では、洗浄が不十分になり、リパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が880μS/mと高く、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。すなわち、洗浄水温度を40℃よりも低くすると、リパルプ洗浄による水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄が不十分となり、硝酸アンモニウムの除去が十分に行われないことが確認された。また、乾燥時における突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が75.0%まで下がった。
【0091】
一方、比較例6では、洗浄水温度を90℃にした以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例6では、イオン交換水の蒸発により、水酸化スズ粉を含む粉体混合物中に硝酸アンモニウムが残留してしまい、当該残留された硝酸アンモニウムにより、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。すなわち、洗浄水の温度を80℃よりも高くすると、洗浄液の蒸発により、リパルプ洗浄による水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄が不十分となり、硝酸アンモニウムの除去が十分に行われないことが確認された。また、乾燥時における突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が85.2%まで下がった。
【0092】
一方、比較例7では、洗浄工程で、撹拌を行わなかった以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例7では、水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄が不十分になり、リパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が1200μS/mと高くなり、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。すなわち、撹拌を行わないと、リパルプ洗浄による水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄が不十分となり、硝酸アンモニウムの除去が十分に行われないことが確認された。また、乾燥時における突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が58.9%まで下がった。
【0093】
一方、比較例8では、洗浄工程でリパルプ洗浄を1回繰り返した以外は、実施例1と同様にして水酸化スズ粉を作製した。その結果、比較例7では、洗浄が不十分になり、リパルプ洗浄後の洗浄液の電気伝導度が600μS/mと高くなり、水酸化スズ粉の乾燥時に突沸が発生した。すなわち、リパルプ洗浄が1回のみだと、水酸化スズ粉を含むケーキの洗浄が不十分となり、硝酸アンモニウムの除去が十分に行われないことが確認された。また、乾燥時における突沸の発生に伴い、乾燥工程後の収率が80.1%まで下がった。
【0094】
以上の結果から、本発明の一実施形態に係る実施例の水酸化スズ粉は、硝酸アンモニウム電解液を用いた電解法を用いて、水酸化スズ粉を含む粉体混合物の洗浄後の洗浄液の電気伝導度を500μS/m以下とすることにより、110℃以上150℃以下の乾燥温度で実施される乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を抑制することができることが分かった。そして、乾燥時の水酸化スズ粉の突沸を抑制することによって、水酸化スズ粉の生成時における安全性の確保と、乾燥工程後の水酸化スズ粉の収率の向上を図ることができることが分かった。
【0095】
また、以下の表3には、各実施例及び各比較例の水酸化スズ粉の製造方法により作製された水酸化スズ粉の最小径と最大径の値をそれぞれ記載して粒度分布を示した。
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示すように、水酸化スズ粉が生成されなかった比較例3及び4を除く各比較例の粒径が0.1〜6.0μmの数値範囲であったのに対して、実施例1〜9では、水酸化スズ粉の粒径が0.3〜3.4μmの数値範囲内に収まっていた。このことから、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法を適用することによって、生成される水酸化スズ粉の粒度分布幅が小さくなるので、スパッタリングターゲット用原料となる酸化スズの仮焼前物質として好適な原料となることが分かった。すなわち、本発明の一実施形態に係る水酸化スズ粉の製造方法を適用することによって、乾燥工程での水酸化スズ粉の突沸を防止した上で粒度分布幅の小さい水酸化スズ粉が生成できることが分かった。
【0098】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0099】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、水酸化スズ粉の製造方法の動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。