(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の無電解めっき処理において、前処理工程で実施される粗面化処理はクロム化合物(クロム酸)が使用されており、また前処理の工程数が非常に多いなど、環境面やコスト面、煩雑な操作性などの種々の改善が求められている。
さらに近年、樹脂筐体の成形技術が向上し、綺麗な筐体面をそのままめっき化できる方法、特に電子回路形成の微細化及び電気信号の高速化に伴い、平滑基板への密着性の高い無電解めっきの方法が求められている。
そこで本発明はこうした課題に着目し、環境に配慮し、少ない工程数で簡便に処理でき、また低コスト化を実現できる、無電解めっきの前処理工程として用いられる新たな触媒インクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー、金属微粒子、アルコキシシラン、そして特定のビニルポリマー及び熱硬化性樹脂前駆体とを組み合わせて触媒インクとし、これを基材上に
塗布して得られる層が無電解金属めっきの下地層としてめっき性並びに密着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、第1観点として、無電解金属めっき膜の下地層を形成するための触媒インクであって、
(a)アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が500〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、
(b)金属微粒子、
(c)脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、若しくはエポキシ基を有するアルコキシシラン、又はそのオリゴマー、
(d)アミド構造を側鎖に有するビニルポリマー、及び
(e)熱硬化性樹脂前駆体
を含む触媒インクに関する。
第2観点として、前記(b)金属微粒子に、前記(a)ハイパーブランチポリマーのアンモニウム基が付着して複合体を形成している、第1観点に記載の触媒インクに関する。
第3観点として、前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーである、第1観点又は第2観点に記載の触媒インクに関する。
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R
2〜R
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20の直鎖状、枝分かれ状若しくは環状のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基又は−(CH
2CH
2O)
mR
5(式中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、mは2〜100の整数を表す。)を表す(該アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい。)か、R
2〜R
4のうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR
2〜R
4並びにそれらが結合する窒素原子が一緒になって環を形成してもよく、X
−は陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5〜100,000の整数を表し、A
1は式[2]で表される構造を表す。)
【化2】
(式中、A
2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y
1〜Y
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)
第4観点として、前記(a)ハイパーブランチポリマーが、式[3]で表されるハイパーブランチポリマーである、第3観点に記載の触媒インクに関する。
【化3】
(式中、R
1、R
2及びnは前記と同じ意味を表す。)
第5観点として、前記(b)金属微粒子が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)からなる群より選択される少なくとも一種の金属の微粒子である、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の触媒インクに関する。
第6観点として、前記(b)金属微粒子が、パラジウム微粒子である、第5観点に記載の触媒インクに関する。
第7観点として、前記(b)金属微粒子が、1〜100nmの平均粒径を有する微粒子である、第5観点又は第6観点に記載の触媒インクに関する。
第8観点として、前記(c)アルコキシシランが、式[4]で表される化合物である、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の触媒インクに関する。
【化4】
(式中、R
6は炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表し、R
7はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Lはエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、Zは脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、又はエポキシ基を表し、aは0又は1を表す。)
第9観点として、前記(d)ビニルポリマーが、ポリビニルピロリドンである、第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の触媒インクに関する。
第10観点として、前記(e)熱硬化性樹脂前駆体が、アミノ樹脂類、シアネート樹脂類、イソシアネート樹脂類、ポリイミド類、エポキシ樹脂類、ポリエステル類、アリル樹脂類及びキシレン樹脂類からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱硬化性樹脂の前駆体である、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の触媒インクに関する。
第11観点として、前記(e)熱硬化性樹脂前駆体が、ウレタン樹脂の前駆体である、第10観点に記載の触媒インクに関する。
第12観点として、第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の触媒インクを層形成して得られる、無電解めっき下地層に関する。
第13観点として、第12観点に記載の無電解めっき下地層に無電解めっきすることにより該下地層上に形成される、金属めっき膜に関する。
第14観点として、基材と、該基材上に形成された第12観点に記載の無電解めっき下地層と、該無電解めっき下地層上に形成された第13観点に記載の金属めっき膜とを具備する、金属被膜基材に関する。
第15観点として、下記A工程及びB工程を含む、金属被膜基材の製造方法。
A工程:第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の触媒インクを基材上に塗布し、下地層を具備する工程
B工程:下地層を具備した基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成する工程に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の触媒インクは、基材上に印刷(塗布)するだけで容易に無電解金属めっきの下地層を形成することができる。また、本発明の触媒インクは、基材との密着性に優れる下地層を形成することができる。さらに、本発明の触媒インクは、μmオーダーの細線を描くことができ、各種配線技術にも好適に使用することができる。
また本発明の触媒インクから形成された無電解金属めっきの下地層は、無電解めっき浴に浸漬するだけで、容易に金属めっき膜を形成でき、基材と下地層、そして金属めっき膜とを備える金属被膜基材を容易に得ることができる。
そして上記金属めっき膜は、下層の下地層との密着性に優れる。
すなわち、本発明の触媒インクを用いて基材上に下地層を形成することにより、いわば基材との密着性に優れた金属めっき膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の触媒インクは、(a)アンモニウム基を含有し且つ重量平均分子量が500〜5,000,000であるハイパーブランチポリマー、(b)金属微粒子、(c)脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、若しくはエポキシ基を有するアルコキシシラン、又はそのオリゴマー、(d)アミド構造を側鎖に有するビニルポリマー、及び(e)熱硬化性樹脂前駆体を含む触媒インクである。
本発明の触媒インクは基材上に無電解めっき処理により形成される金属めっき膜の下地層を形成するために好適に使用される。
【0010】
[触媒インク]
<(a)ハイパーブランチポリマー>
本発明の触媒インクに用いられるハイパーブランチポリマーは、アンモニウム基を分子末端に有し且つ重量平均分子量が500〜5,000,000であるポリマーであり、具体的には下記式[1]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化5】
前記式[1]中、R
1は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
また、R
2〜R
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、又は−(CH
2CH
2O)
mR
5(式中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、mは2〜100の任意の整数を表す。)を表す。上記アルキル基及びアリールアルキル基は、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アンモニウム基、カルボキシル基又はシアノ基で置換されていてもよい。また、R
2〜R
4のうちの2つの基が一緒になって、直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表すか、又はR
2〜R
4並びにそれらが結合する窒素原子が一緒になって環を形成してもよい。
またX
−は陰イオンを表し、nは繰り返し単位構造の数であって、5〜100,000の整数を表す。
【0011】
上記R
2〜R
4における炭素原子数1〜20の直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられ、触媒インクが無電解めっき液に溶出しにくい点で、R
2〜R
4のうち少なくとも1つは炭素原子数8以上の基であることが好ましく、特にn−オクチル基が好ましい。枝分かれ状のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環構造を有する基等が挙げられる。
またR
2〜R
4における炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
さらに、R
2〜R
4のうちの2つの基が一緒になった直鎖状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等が挙げられる。枝分かれ状のアルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、炭素原子数3〜30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。これらアルキレン基は基中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいても良い。
そして、式[1]で表される構造でR
2〜R
4並びにそれらと結合する窒素原子が一緒になって形成する環は、環中に窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいても良く、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、ビピリジル環等が挙げられる。
またX
−の陰イオンとして好ましくはハロゲン原子、PF
6−、BF
4−又はパーフルオロアルカンスルホナートが挙げられる。
【0012】
上記式[1]中、A
1は下記式[2]で表される構造を表す。
【化6】
上記式[2]中、A
2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1〜30の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表す。
Y
1〜Y
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素
原子数1〜20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0013】
上記A
2のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等の枝分かれ状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素原子数3〜30の単環式、多環式及び架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素原子数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)〜(s)を示す。
【化7】
【0014】
また上記式[2]中のY
1〜Y
4の炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基、n−ペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ペンチルオキシ基等が挙げられる。Y
1〜Y
4としては、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0015】
なお、前記A
1は下記式[5]で表される構造であることが好ましい。
【化8】
【0016】
好ましくは、本発明に用いられるハイパーブランチポリマーとしては、下記式[3]で表されるハイパーブランチポリマーが挙げられる。
【化9】
前記式[3]中、R
1、R
2及びnは上記と同じ意味を表す。
【0017】
本発明で用いる上記アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、例えば、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーにアミン化合物を反応させることによって得ることができる。
なお、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーは、国際公開第2008/029688号パンフレットの記載に従い、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーより製造することができる。該ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは、市販品を用いることができ、日産化学工業(株)製のハイパーテック(登録商標)HPS−200等を好適に使用可能である。
【0018】
本反応で使用できるアミン化合物は、第一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン等の脂肪族アミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミン等のアラルキルアミン;アニリン、p−n−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−オクチルアニリン、p−n−デシルアニリン、p−n−ドデシルアニリン、p−n−テトラデシルアニリンなどのアニリン類、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどのナフチルアミン類、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセンなどのアミノアントラセン類、1−アミノアントラキノンなどのアミノアントラキノン類、4−アミノビフェニル、2−アミノビフェニルなどのアミノビフェニル類、2−アミノフルオレン、1−アミノ−9−フルオレノン、4−アミノ−9−フルオレノンなどのアミノフルオレン類、5−アミノインダンなどのアミノインダン類、5−アミノイソキノリンなどのアミノイソキノリン類、9−アミノフェナントレンなどのアミノフェナントレン類等の芳香族アミンが挙げられる。更に、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,2−エチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,3−プロピレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,4−ブチレンジアミン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−1,5−ペンタメチレンジアミン、N−
(tert−ブトキシカルボニル)−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N−(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N−(2−メトキシエチル)アミン、N−(2−エトキシエチル)アミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0019】
第二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル−n−プロピルアミン、メチル−n−ブチルアミン、メチル−n−ペンチルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−ブチルアミン、エチル−n−ペンチルアミン、メチル−n−オクチルアミン、メチル−n−デシルアミン、メチル−n−ドデシルアミン、メチル−n−テトラデシルアミン、メチル−n−ヘキサデシルアミン、メチル−n−オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル−n−オクチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ヘキサデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン等の脂肪族アミン;ジシクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ジベンジルアミン等のアラルキルアミン;ジフェニルアミン等の芳香族アミン;フタルイミド、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。更に、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−プロポキシエチル)アミン等が挙げられる。
【0020】
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−オクチルアミン、ジエチル−n−デシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン、ジメチル−n−テトラデシルアミン、ジメチル−n−ヘキサデシルアミン、ジメチル−n−オクタデシルアミン、ジメチル−n−エイコシルアミン、ジメチル−n−ドデシルアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、1−メチルイミダゾール、4,4’−ビピリジル、4−メチル−4,4’−ビピリジル等の窒素含有複素環式化合物が挙げられる。
【0021】
これらの反応で使用できるアミン化合物の使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.1〜20モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、より好ましくは1〜5モル当量であればよい。
【0022】
分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物との反応は、水又は有機溶媒中で、塩基の存在下又は非存在下で行なうことができる。使用する溶媒は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能なものが好ましい。さらに、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーとアミン化合物を溶解可能であるが、分子末端にアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶解しない溶媒であれば、単離が容易となりさらに好適である。
本反応で使用できる溶媒としては、本反応の進行を著しく阻害しないものであれば良く、水;イソプロパノール等のアルコール類;酢酸等の有機酸類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン[THF]、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン[MEK]、メチルイソブチルケトン[MIBK]、シクロヘキサノン等のケトン類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化物;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド[DMF]、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン[NMP]等のアミド類が使用できる。これらの溶媒は1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーの質量に対して0.2〜1,000倍質量、好ましくは1〜500倍質量、より好まし
くは5〜100倍質量、最も好ましくは10〜50倍質量の溶媒を使用することが好ましい。
【0023】
好適な塩基としては一般に、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム)、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物(例えば酸化リチウム、酸化カルシウム)、アルカリ金属水素化物及びアルカリ土類金属水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム)、アルカリ金属アミド(例えばナトリウムアミド)、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム)、アルカリ金属重炭酸塩(例えば重炭酸ナトリウム)等の無機化合物、並びにアルカリ金属アルキル、アルキルマグネシウムハロゲン化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、ジメトキシマグネシウム等の有機金属化合物が使用される。特に好ましいのは、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムである。また、使用量は、分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーのハロゲン原子1モルに対して0.2〜10モル当量、好ましくは0.5〜10モル当量、最も好ましくは1〜5モル当量の塩基を使用することが好ましい。
【0024】
この反応では反応開始前に反応系内の酸素を十分に除去することが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性気体で系内を置換するとよい。反応条件としては、反応時間は0.01〜100時間、反応温度は0〜300℃から、適宜選択される。好ましくは反応時間が0.1〜72時間で、反応温度が20〜150℃である。
【0025】
第三級アミンを用いた場合、塩基の存在/非存在に関わらず、式[1]で表されるハイパーブランチポリマーを得ることができる。
塩基の非存在下で、第一級アミン又は第二級アミン化合物と分子末端にハロゲン原子を有するハイパーブランチポリマーを反応させた場合、それぞれに対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。また、塩基を用いて反応を行った場合においても、有機溶媒中で塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等の酸の水溶液と混合することにより、対応するハイパーブランチポリマーの末端第二級アミン及び第三級アミンがプロトン化されたアンモニウム基末端のハイパーブランチポリマーが得られる。
【0026】
前記ハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500〜5,000,000であり、好ましくは1,000〜1,000,000であり、より好ましくは2,000〜500,000であり、最も好ましくは3,000〜200,000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0〜7.0であり、好ましくは1.1〜6.0であり、より好ましくは1.2〜5.0である。
【0027】
<(b)金属微粒子>
本発明の触媒インクに用いられる金属微粒子としては特に限定されず、金属種としては鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、スズ(Sn)、白金(Pt)及び金(Au)が挙げられ、これらの金属の1種類でもよいし2種以上の合金でも構わない。中でも好ましい金属微粒子としてはパラジウム微粒子が挙げられる。なお、金属微粒子として、前記金属の酸化物を用いてもよい。
【0028】
前記金属微粒子は、例えば金属塩の水溶液を高圧水銀灯により光照射する方法や、該水溶液に還元作用を有する化合物(所謂還元剤)を添加する方法等により、金属イオンを還元することによって得られる。例えば、上記ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射したり、或いは、該溶液に金属塩の水溶液
及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することにより、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体を形成させながら、ハイパーブランチポリマー及び金属微粒子を含む触媒インクを調製することができる。
【0029】
前記金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化スズ、塩化第一白金、塩化白金酸、Pt(dba)
2[dba=ジベンジリデンアセトン]、Pt(cod)
2[cod=1,5−シクロオクタジエン]、Pt(CH
3)
2(cod)、塩化パラジウム、酢酸パラジウム(Pd(OC(=O)CH
3)
2)、硝酸パラジウム、Pd
2(dba)
3・CHCl
3、Pd(dba)
2、Ni(cod)
2等が挙げられる。
前記還元剤としては、特に限定されるものではなく、種々の還元剤を用いることができ、得られる触媒インクに含有させる金属種等により還元剤を選択することが好ましい。用いることができる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素金属塩;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウム、水素化アルミニウムセシウム、水素化アルミニウムベリリウム、水素化アルミニウムマグネシウム、水素化アルミニウムカルシウム等の水素化アルミニウム塩;ヒドラジン化合物;クエン酸及びその塩;コハク酸及びその塩;アスコルビン酸及びその塩;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリオール等の第一級又は第二級アルコール類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン[TMEDA]、エチレンジアミン四酢酸[EDTA]等の第三級アミン類;ヒドロキシルアミン;トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエトキシホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[DPPE]、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[DPPP]、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン[DPPF]、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル[BINAP]等のホスフィン類などが挙げられる。
【0030】
前記金属微粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましい。その理由としては、該金属微粒子の平均粒径が100nmを超えると、表面積が減少し触媒活性が低下するためである。平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、1〜30nmが特に好ましい。
【0031】
本発明の触媒インクにおける上記(a)ハイパーブランチポリマーの添加量は、上記(b)金属微粒子100質量部に対して50〜2,000質量部が好ましい。50質量部未満であると、上記金属微粒子の分散性が不充分であり、2,000質量部を超えると、有機物含有量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、100〜1,000質量部である。
【0032】
<(c)アルコキシシラン、又はそのオリゴマー>
本発明の触媒インクに用いられるアルコキシシラン、又はそのオリゴマー(以下、本明細書において単に「アルコキシシラン」とも称する)としては、脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、若しくはエポキシ基を有するアルコキシシラン、又はそのオリゴマーであれば特に限定されない。
前記脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基を有するアルコキシシランとしては、一分子中に脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基を1個以上有し、アルコキシシリル基を有するシラン化合物が挙げられる。
またエポキシ基を有するアルコキシシランとしては、一分子中にエポキシ基を1個以上有し、アルコキシシリル基を有するシラン化合物が挙げられる。
【0033】
好ましくは、本発明の触媒インクに用いられるアルコキシシランとして、下記式[4]で表される化合物が挙げられる。
【化10】
上記式[4]中、R
6は炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表し、R
7はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Lはエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基を表し、Zは脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、又はエポキシ基を表し、aは0又は1を表す。
【0034】
R
6における炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
その中でも、メチル基が好ましい。
【0035】
Lにおけるエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、2−オキサブタン−1,4−ジイル基、2−オキサペンタン−1,5−ジイル基、3−オキサペンタン−1,5−ジイル基、2−オキサヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
その中でも、エチレン基、トリメチレン基、2−オキサペンタン−1,5−ジイル基が好ましい。
【0036】
Zにおける脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、2−アミノエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基、3−トリエトキシシリルプロピルアミノ基、1−メチルペンチリデンアミノ基等が挙げられる。
その中でも、アミノ基、2−アミノエチルアミノ基、3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基が好ましい。
【0037】
このようなアルコキシシランとしては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピル(ジメトキシ)(メチル)シラン、3−アミノプロピル(ジエトキシ)(メチル)シラン、3−アミノプロピル(ジエトキシ)(エチル)シラン、3−(1−メチルペンチリデンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル(ジメトキシ)(メチル)シラン、ビス[3−トリメトキシシリルプロピル]アミン等のアミノ基を有するアルコキシシラン類;3−(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(グリシジルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、ジメトキシ(3−(グリシジルオキシ)プロピル)(メチル)シラン、ジエトキシ(3−(グリシジルオキシ)プロピル)(メチル)シラン、ジエトキシ(エチル)(3−(グリシジルオキシ)プロピル)シラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン類;アミノ基/メチル基含有メトキシシランオリゴマー、エポキシ基/メチル基含有メトキシシランオリゴマー等の上記アルコキシシランのオリゴマーなどが挙げられる。これらアルコキシシランは一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の触媒インクにおける(c)アルコキシシランの添加量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、1〜2,000質量部が好ましい。1質量部以上とすることで、より優れた基材密着性を得ることができ、2,000質量部以下とすることで、より優れためっき性を得ることができる。より好ましくは5〜1,000質量部である。
【0039】
<(d)ビニルポリマー>
本発明の触媒インクに用いられるビニルポリマーは、アミド構造を側鎖に有するビニルポリマーであれば特に限定されない。このようなビニルポリマーとしては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリ(アルキル)アクリルアミド等のアクリルアミド系ポリマー、ポリN−ビニルホルムアミド、ポリN−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系ポリマー、2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム及びそのアルキル誘導体等のラクタムN−ビニル誘導体から得られるビニルラクタム系ポリマーなどが挙げられ、中でもN−ビニル−2−ピロリドンの重合体であるポリビニルピロリドンが好ましい。
上記ビニルポリマーを配合することで、インクの粘度やレオロジー特性を調整することができるとともに、インク中の金属粒子の凝集を抑制し、金属分散剤としても作用することができる。
【0040】
前記ビニルポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500〜5,000,000であることが好ましい。
また、本発明の触媒インクにおける(d)ビニルポリマーの添加量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、1〜10,000質量部が好ましい。1質量部以上とすることで、インク粘度をより適切に調整することができ、10,000質量部以下とすることで、より優れためっき性を得ることができる。より好ましくは10〜6,000質量部であり、さらに好ましくは100〜3,000質量部である。
【0041】
<(e)熱硬化性樹脂前駆体>
本発明の触媒インクに用いられる熱硬化性樹脂前駆体(以下、硬化性プレポリマーとも称する)としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、ユリア樹脂等のアミノ樹脂類;シアネート樹脂類;ウレタン樹脂等のイソシアネート樹脂類;ポリイミド類;エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂等のエポキシ樹脂類;不飽和ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂等のポリエステル類;ジアリルフタレート樹脂等のアリル樹脂類;キシレン樹脂などの樹脂の前駆体が挙げられる。中でもイソシアネート樹脂の前駆体が好ましく、特にウレタン樹脂の前駆体が好ましい。
【0042】
前記ウレタン樹脂の前駆体としては、ポリイソシアネート類と硬化剤としてのポリオール類との組み合わせを使用し得る。
前記ポリイソシアネート類としては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート[HDI]、ジフェニルメタンジイソシアネート[MDI]、トリレンジイソシアネート[TDI]、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート[LDI:2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート]、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、イソホロンジイソシアネート[IPDI]、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート[水添MDI]、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。またこれらの変性物として、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI)、ウレタン変性TDI、ビューレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI、イソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物等が挙げられる。
さらにこれらのポリイソシアネート類の活性イソシアネート基をブロックしたブロック型ポリイソシアネートであってもよい。ここでブロック剤としては、加熱により解離(脱ブロック化)し活性イソシアネート基を再生できるものであれば特に限定されないが、例えば、フェノール、o−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、o−、m−又はp−クレゾール等のフェノール類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エトキシヘキサノール、2−N,N−ジメチルアミノエタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン基含有化合物;アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;ε−カプロラクタム等のラクタム類;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール等のピラゾール類;ドデカンチオール、ベンゼンチオール等のチオール類などが挙げられる。
これらポリイソシアネート類の市販品としては、例えば、デュラネート(登録商標)シリーズ[旭化成ケミカルズ(株)製]、バーノック(登録商標)シリーズ[DIC(株)製]、タケネート(登録商標)シリーズ、オレスター(登録商標)シリーズ[以上、三井化学(株)製]、コロネート(登録商標)シリーズ、ミリオネート(登録商標)シリーズ[以上、日本ポリウレタン工業(株)製]等が挙げられる。
これらポリイソシアネート類は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0043】
また前記ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の直鎖状ジオール類;プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−若しくは2,3−ブタンジオール等の分岐鎖を有するジオール類;シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−又はp−キシリレングリコール等の環状基を有するジオール類;ビスフェノールA等の2価フェノール類;グリセリン、多価グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール類;ショ糖、メチルグルコシド、ソルビトール等の糖類及びその誘導体;ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等の高分子ポリオール類などが挙げられる。これらポリオール類の市販品としては、例えば、デュラノール(登録商標)シリーズ[旭化成ケミカルズ(株)製]、バーノック(登録商標)シリーズ、ポリライト(登録商標)シリーズ、アクリディック(登録商標)シリーズ、フルオネート(登録商標)シリーズ[以上、DIC(株)製]、クラレポリオールシリーズ[(株)クラレ製]、タケラック(登録商標)シリーズ[三井化学(株)製]、ニッポラン(登録商標)シリーズ[日本ポリウレタン工業(株)製]等が挙げられる。
これらポリオール類は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の触媒インクにおける(e)熱硬化性樹脂前駆体の添加量は、後述する前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、1〜10,000質量部が好ましい。1質量部以上とすることで、より優れためっき浴中での基材密着性を得ることができ、10,000質量部以下とすることで、より優れためっき性を得ることができる。より好ましくは10〜6,000質量部であり、さらに好ましくは100〜3,000質量部である。
【0045】
<触媒インク>
本発明の触媒インクは、前記(a)アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー、(b)金属微粒子、(c)脂肪族基で置換されていてもよいアミノ基、若しくはエポキシ基を有するアルコキシシラン、又はそのオリゴマー、(d)アミド構造を側鎖に有するビニルポリマー、及び(e)熱硬化性樹脂前駆体とを含むものであり、このとき、前記ハイパーブランチポリマーと前記金属微粒子が複合体を形成していることが好ましい。
ここで複合体とは、前記ハイパーブランチポリマーの末端のアンモニウム基の作用により、金属微粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、前記ハイパーブランチポリマーのアンモニウム基が金属微粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
従って、本発明における「複合体」には、上述のように金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属微粒子とハイパーブランチポリマーが結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
【0046】
アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体の形成は、ハイパーブランチポリマーと金属微粒子を含む触媒インクの調製時に同時に実施され、その方法としては、低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子を合成した後にハイパーブランチポリマーにより配位子を交換する方法や、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーの溶液中で、金属イオンを直接還元することにより複合体を形成する方法がある。また、上述のように、上記ハイパーブランチポリマーを溶解した溶液に金属塩の水溶液を添加してこれに紫外線を照射したり、或いは、該溶液に金属塩の水溶液及び還元剤を添加するなどして、金属イオンを還元することによっても複合体を形成できる。
【0047】
配位子交換法において、原料となる低級アンモニウム配位子によりある程度安定化した金属微粒子は、Jounal of Organometallic Chemistry 1996,520,143−162等に記載の方法で合成することができる。得られた金属微粒子の反応混合溶液に、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶解し、室温(およそ25℃)又は加熱撹拌することにより目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
使用する溶媒としては、金属微粒子とアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーとを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン[THF]、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属微粒子の反応混合液と、アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは、室温(およそ25℃)乃至60℃の範囲である。
なお、配位子交換法において、アミン系分散剤(低級アンモニウム配位子)以外にホスフィン系分散剤(ホスフィン配位子)を用いることによっても、あらかじめ金属微粒子をある程度安定化することができる。
【0048】
直接還元方法としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や、ヘキサカルボニルクロム[Cr(CO)
6]、ペンタカルボニル鉄[Fe(Co)
5]、オクタカルボニルジコバル
ト[Co
2(CO)
8]、テトラカルボニルニッケル[Ni(CO)
4]等の金属カルボニル錯体が使用できる。また金属オレフィン錯体や金属ホスフィン錯体、金属窒素錯体等の0価の金属錯体も使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、エタノール、プロパノール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができる。
【0049】
また、直接還元方法として、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを溶媒に溶解し、熱分解反応させることにより、目的とする金属微粒子複合体を得ることができる。
ここで用いられる金属イオン源としては、上述の金属塩や金属カルボニル錯体やその他の0価の金属錯体、酸化銀等の金属酸化物が使用できる。
使用する溶媒としては、金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを必要濃度以上に溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン[THF]、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類など及びこれらの溶媒の混合液が挙げられ、好ましくはトルエンが挙げられる。
金属イオンとアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーを混合する温度は、通常0℃乃至溶媒の沸点の範囲を使用することができ、好ましくは溶媒の沸点近傍、例えばトルエンの場合は110℃(加熱還流)である。
【0050】
こうして得られるアンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子の複合体は、再沈殿等の精製処理を経て、粉末などの固形物の形態とすることができる。
【0051】
本発明の触媒インクは、前記(a)アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと(b)金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)と前記(c)アルコキシシラン(又はそのオリゴマー)と(d)アミド構造を側鎖に有するビニルポリマーと(e)熱硬化性樹脂前駆体とを含むものであって、後述する[無電解めっき下地層]の形成時に用いるワニスの形態であってもよい。
【0052】
<その他添加剤>
本発明の触媒インクは、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに界面活性剤、各種表面調整剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0053】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビ
タンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレノニオン系界面活性剤;エフトップ(登録商標)EF−301、同EF−303、同EF−352[以上、三菱マテリアル電子化成(株)製]、メガファック(登録商標)F−171、同F−173、同R−08、同R−30[以上、DIC(株)製]、Novec(登録商標)FC−430、同FC−431[以上、住友スリーエム(株)製]、アサヒガード(登録商標)AG−710[旭硝子(株)製]、サーフロン(登録商標)S−382[AGCセイミケミカル(株)製]等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0054】
また、上記表面調整剤としては、信越シリコーン(登録商標)KP−341[信越化学工業(株)製]等のシリコーン系レベリング剤;BYK(登録商標)−302、同307、同322、同323、同330、同333、同370、同375、同378[以上、ビックケミー・ジャパン(株)製]等のシリコーン系表面調整剤などが挙げられる。
【0055】
これら添加剤は一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。添加剤の使用量は、前記ハイパーブランチポリマーと金属微粒子より形成された複合体100質量部に対して、0.001〜50質量部が好ましく、0.005〜10質量部がより好ましく、0.01〜5質量部がより一層好ましい。
【0056】
[無電解めっき下地層]
上述の本発明の触媒インクは、基材上に層形成(塗布)することにより、無電解めっき下地層を形成することができる。この無電解めっき下地層も本発明の対象である。
【0057】
前記基材としては特に限定されないが、非導電性基材又は導電性基材を好ましく使用できる。
非導電性基材としては、例えばガラス、セラミック等;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、PEN(ポリエチレンナフタラート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタラート)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂等;紙などが挙げられる。これらはシートあるいはフィルム等の形態にて好適に使用され、この場合の厚さについては特に限定されない。
また導電性基材としては、例えばITO(スズドープ酸化インジウム)や、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、また各種ステンレス鋼、アルミニウム並びにジュラルミン等のアルミニウム合金、鉄並びに鉄合金、銅並びに真鍮、燐青銅、白銅及びベリリウム銅等の銅合金、ニッケル並びにニッケル合金、そして、銀並びに洋銀等の銀合金などの金属等が挙げられる。
さらに上記非導電性基材上にこれらの導電性基材で薄膜が形成された基材も使用可能である。
また、上記基材は、三次元成形体であってもよい。
【0058】
上記前記アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子とアルコキシシランとビニルポリマーと熱硬化性樹前駆体とを含む触媒インクより無電解めっき下地層を形成する具体的な方法としては、まず上記前記アンモニウム基を有するハイパーブランチポリマーと金属微粒子(好ましくはこれらよりなる複合体)とアルコキシシランとビニルポリマーと熱硬化性樹脂前駆体とを適当な溶媒に溶解又は分散してワニスの形態とし、該ワニスを金属めっき被膜を形成する基材上に、活版印刷、フレキソ印刷、樹脂凸版印刷、コンタクトプリンティング、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)、ナノインプリンティングリソグラフィー(NIL)、ナノトランスファープリンティング(nTP)などの凸版印刷法;グラビア印刷、エングレービングなどの凹版印刷法;平版印刷法;
スクリーン印刷、謄写版などの孔版印刷法;オフセット印刷法等の印刷技術を用いて塗布し、その後、溶媒を蒸発・乾燥させることにより、薄層を形成する。
これらの塗布方法の中でもグラビア印刷、スクリーン印刷等が好ましい。
【0059】
またここで用いられる溶媒としては、上記複合体及びアルコキシシラン、ビニルポリマー及び熱硬化性樹脂前駆体を溶解又は分散するものであれば特に限定されないが、たとえば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類;プロピレングリコールモノメチルエーテル[PGME]、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート[PGMEA]等のグリコールエステル類;テトラヒドロフラン[THF]、メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン[MEK]、メチルイソブチルケトン[MIBK]、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;N−メチル−2−ピロリドン[NMP]、N,N−ジメチルホルムアミド[DMF]、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシドなどが使用できる。これら溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合してもよい。さらに、ワニスの粘度を調整する目的で、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール類を添加してもよい。
また上記溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、ワニス中の固形分濃度(溶媒以外の濃度)は0.05〜90質量%であり、好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは1〜50質量%である。
【0060】
溶媒の乾燥法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する下地層を得ることが可能である。焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。
【0061】
溶媒の乾燥に続いてこの下地層を加熱処理することにより、より基材密着性に優れ、めっき液中でも剥離することのない強固な下地層が形成される。
この加熱処理の条件としては、使用する熱硬化性樹脂前駆体を硬化できる温度であれば特に制限はないが、通常40〜300℃、好ましくは60〜250℃、より好ましくは100〜200℃の範囲の中から適宜選択された加熱温度が採用される。
【0062】
[無電解めっき処理、金属めっき膜、金属被膜基材]
上記のようにして得られた基材上に形成された無電解めっき下地層を無電解めっきすることにより、無電解めっき下地層の上に金属めっき膜が形成される。こうして得られる金属めっき膜、並びに、基材上に無電解めっき下地層、金属めっき膜の順にて具備する金属被膜基材も本発明の対象である。
無電解めっき処理(工程)は特に限定されず、一般的に知られている何れの無電解めっき処理にて行うことができ、例えば、従来一般に知られている無電解めっき液を用い、該めっき液(浴)に基材上に形成された無電解めっき下地層を浸漬する方法が一般的である。
【0063】
前記無電解めっき液は、主として金属イオン(金属塩)、錯化剤、還元剤を主に含有し、その他用途に合わせてpH調整剤、pH緩衝剤、反応促進剤(第二錯化剤)、安定剤、界面活性剤(めっき膜への光沢付与用途、被処理面の濡れ性改善用途など)などが適宜含まれてなる。
ここで無電解めっきで形成される金属めっき膜に用いられる金属としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、銀、スズ、白金、金及びそれらの合金が挙げられ、目的に応じて適宜選択される。
また上記錯化剤、還元剤についても金属イオンに応じて適宜選択すればよい。
また無電解めっき液は市販のめっき液を使用してもよく、例えばメルテックス(株)製の無電解ニッケルめっき薬品(メルプレートNIシリーズ)、無電解銅めっき薬品(メルプレートCUシリーズ)、奥野製薬工業(株)製の無電解ニッケルめっき液(ICPニコロンシリーズ)、無電解銅めっき液(OPC−700無電解銅M−K、ATSアドカッパーIW)、無電解スズめっき液(サブスターSN−5)、無電解金めっき液(フラッシュゴールド330、セルフゴールドOTK−IT)、小島化学薬品(株)製の無電解パラジウムめっき液(パレットII)、無電解金めっき液(ディップGシリーズ、NCゴールドシリーズ)、佐々木化学薬品(株)製の無電解銀めっき液(エスダイヤAG−40)、日本カニゼン(株)製の無電解ニッケルめっき液(シューマー(登録商標)シリーズ、シューマー(登録商標)カニブラック(登録商標)シリーズ)、無電解パラジウムめっき液(S−KPD)等を好適に用いることができる。
【0064】
上記無電解めっき工程は、めっき浴の温度、pH、浸漬時間、金属イオン濃度、撹拌の有無や撹拌速度、空気・酸素の供給の有無や供給速度等を調節することにより、金属被膜の形成速度や膜厚を制御することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。実施例において、試料の物性測定は、下記の条件のもとで下記の装置を使用して行った。
【0066】
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標) GPC KF−804L +
GPC KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)、RI
(2)
1H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−L400
溶媒:CDCl
3
内部標準:テトラメチルシラン(0.00ppm)
(3)
13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
3
緩和試薬:トリスアセチルアセトナートクロム(Cr(acac)
3)
基準:CDCl
3(77.0ppm)
(4)ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)
装置:(株)島津製作所製 ICPM−8500
(5)TEM(透過型電子顕微鏡)画像
装置:(株)日立ハイテクノロジーズ製 H−8000
(6)粘度
装置A(実施例、比較例1、3、4):東機産業(株)製 ビスコメーターTVE−25H
装置B(比較例2):東機産業(株)製 ビスコメーターTVE−22L
(7)スクリーン印刷
装置:ニューロング精密工業(株)製 手刷り卓上印刷機 HP−320
(8)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 デジタルホットプレート ND−2
(9)電子顕微鏡画像
装置:(株)キーエンス製 デジタルマイクロスコープVHX−2000
【0067】
また使用した略号は以下のとおりである。
HPS:ハイパーブランチポリスチレン[日産化学工業(株)製 ハイパーテック(登録商標)HPS−200]
APMS:3−アミノプロピルトリメトキシシラン[東京化成工業(株)製]
EC:エチルセルロース[ダウ ウォルフ セルロース社製 エトセル(登録商標)スタンダード300]
PVP:ポリビニルピロリドン[東京化成工業(株)製 ポリビニルピロリドンK90、粘度平均分子量630,000]
A817:イソシアネート硬化用アクリル樹脂[DIC(株)製 アクリディック(登録商標)A−817]
HXLV:ポリイソシアネート[日本ポリウレタン工業(株)製 コロネート(登録商標)HXLV]
SBN:ブロック型ポリイソシアネート[旭化成ケミカルズ(株)製 デュラネート(登録商標)SBN−70D]
PI:ポリイミド
IPA:イソプロパノール
IPE:ジイソプロピルエーテル
MEK:メチルエチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
【0068】
[合成例1]HPS−Clの製造
【化11】
500mLの反応フラスコに、塩化スルフリル[キシダ化学(株)製]27g及びクロロホルム50gを仕込み、撹拌して均一に溶解させた。この溶液を窒素気流下0℃まで冷却した。
別の300mLの反応フラスコに、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーHPS15g及びクロロホルム150gを仕込み、窒素気流下均一になるまで撹拌した。
前述の0℃に冷却されている塩化スルフリル/クロロホルム溶液中に、窒素気流下、HPS/クロロホルム溶液が仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、送液ポンプを用いて、該溶液を反応液の温度が−5〜5℃となるように60分間かけて加えた。添加終了後、反応液の温度を−5〜5℃に保持しながら6時間撹拌した。
さらにこの反応液へ、シクロヘキセン[東京化成工業(株)製]16gをクロロホルム50gに溶かした溶液を、反応液の温度が−5〜5℃となるように加えた。添加終了後、この反応液をIPA1,200gに添加してポリマーを沈殿させた。この沈殿をろ取して得られた白色粉末をクロロホルム100gに溶解し、これをIPA500gに添加してポリマーを再沈殿させた。この沈殿物を減圧ろ過し、真空乾燥して、塩素原子を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−Cl)8.5gを白色粉末として得た(収率99%)。
得られたHPS−Clの
1H NMRスペクトルを
図1に示す。ジチオカルバメート基由来のピーク(4.0ppm、3.7ppm)が消失していることから、得られたHPS−Clは、HPS分子末端のジチオカルバメート基がほぼ全て塩素原子に置換されていることが明らかとなった。また、得られたHPS−ClのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは14,000、分散度Mw/Mnは2.9であった。
【0069】
[合成例2]HPS−NOct
3Clの製造
【化12】
還流塔を付した100mLの反応フラスコに、合成例1で製造したHPS−Cl4.6g(30mmol)、トリオクチルアミン[純正化学(株)製]10.6g(30mmol)及びクロロホルム45gを仕込み、窒素置換した。この混合物を、撹拌しながら48時間加熱還流した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣を、クロロホルム150gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE3,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、40℃で真空乾燥して、トリオクチルアンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS−NOct
3Cl)9.6gを淡黄
色粉末として得た。
得られたHPS−NOct
3Clの
13C NMRスペクトルを
図2に示す。塩素原子が結合したメチレン基と、アンモニウム基が結合したメチレン基のピークから、得られたHPS−NOct
3Clは、HPS−Cl分子末端の塩素原子の71%がアンモニウム基に置換されていることが明らかとなった。また、HPS−ClのMw(14,000)及びアンモニウム基導入率(71%)から算出されるHPS−NOct
3Clの重量平均分子量Mwは37,000となった。
【0070】
[合成例3]Pd[HPS−NOct
3Cl]の製造
1Lの二つ口フラスコに、酢酸パラジウム[川研ファインケミカル(株)製]4.3g及びクロロホルム200gを仕込み、均一になるまで撹拌した。この溶液へ、合成例2に従って製造したHPS−NOct
3Cl18.0gをクロロホルム200gに溶解させた溶液を、滴下ロートを使用して加えた。この滴下ロート内を、エタノール100gを使用して前記反応フラスコへ洗い込んだ。この混合物を60℃で17時間撹拌した。
液温30℃まで冷却後、溶媒を留去した。得られた残渣をTHF300gに溶解し、0℃に冷却した。この溶液を0℃のIPE6,000gに添加して再沈精製した。析出したポリマーを減圧ろ過し、60℃で真空乾燥して、アンモニウム基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーとPd粒子の複合体(Pd[HPS−NOct
3Cl])19.9gを黒色粉末として得た。
ICP発光分析の結果から、得られたPd[HPS−NOct
3Cl]のPd含有量は11質量%であった。また、TEM(透過型電子顕微鏡)画像から、そのPd粒子径はおよそ2〜4nmであった。
【0071】
[参考例1]無電解ニッケルめっき液の調製
1Lのフラスコに、メルプレート(登録商標、以下同様)NI−6522LF1[メルテックス(株)製]50mL、メルプレートNI−6522LF2[メルテックス(株)製]150mL及びメルプレートNI−6522LFアディティブ[メルテックス(株)製]5mLを仕込み、さらに純水を加えて溶液の総量を1Lとした。この溶液へ10体積%硫酸水溶液を加えて溶液のpHを4.6に調整し、無電解めっき液とした。
【0072】
[実施例1]
SBN0.25g及びA817 1.2gをMEK4.0gに溶解し、硬化性プレポリマー溶液を得た。この溶液に、合成例3で製造したPd[HPS−NOct
3Cl]0.1g、APMS0.5g及び増粘剤としてPVP1.5gをn−プロパノール1.5gに溶解した溶液を加えた。これを均一になるまで撹拌し、固形分濃度(溶液中の溶質成分(溶媒であるMEK及びn−プロパノール以外)の割合)39質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は3.6×10
3mPa・sであった。
このインクを、ピペットを使用してPIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)200EN]上にキャストした。このフィルムを、80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、さらに150℃のホットプレートで30分間加熱し、無電解めっき下地層を具備したPIフィルムを得た。
得られたフィルムを、80℃に加熱した参考例1で調製した無電解めっき液中に180秒間浸漬した。その後、取り出したフィルムを水洗し、金属めっき膜の形成状態を以下の基準に従って目視で評価した。結果を表1に示す。
【0073】
<めっき形成状態の評価>
A:下地層を形成した部分のみに金属光沢のある金属めっき膜がムラ無く析出している
B:一部金属めっき膜が析出しているがフィルムから剥離している
C:金属めっき膜が形成されていない
【0074】
[実施例2]
硬化性プレポリマーとしてSBNに替えてHXLV0.3gを使用し、MEKの使用量を5.7gに変更した以外は実施例1と同様に操作し、固形分濃度33質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は3.1×10
3mPa・sであった。
また、得られたインクを実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0075】
[比較例1]
増粘剤としてPVPに替えてEC1.5gを使用し、MEKの使用量を12gに変更した以外は実施例1と同様に操作し、固形分濃度21質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は3.7×10
3mPa・sであった。
また、得られたインクを実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0076】
[比較例2]
増粘剤としてPVPを添加しなかった以外は実施例1と同様に操作し、固形分濃度27質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は3mPa・sであった。
また、得られたインクを実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0077】
[比較例3]
硬化性プレポリマーとしてSBN及びA817を添加しなかった以外は実施例1と同様に操作し、固形分濃度28質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は1.9×10
3mPa・sであった。
また、得られたインクを実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0078】
[比較例4]
硬化性プレポリマーとしてSBN及びA817を添加しなかった以外は比較例1と同様に操作し、固形分濃度13質量%の触媒インクを調製した。得られたインクの粘度は2.4×10
3mPa・sであった。
また、得られたインクを実施例1と同様に評価した。結果を表1に併せて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示されるように、硬化性プレポリマー及び増粘剤としてPVPを含む本発明の触媒インクを用いて下地層を形成し無電解めっきを行った場合(実施例1,2)、下地層を形成した部分のみに選択的に金属めっき膜が析出した。
これに対し、増粘剤としてECを添加した場合(比較例1,4)や、PVPを添加しなかった場合(比較例2)では、下地層上に金属めっき膜が析出しなかった。また、硬化性
プレポリマーを添加しなかった場合(比較例3)では、析出した金属めっき膜が無電解めっき処理中に基材(PIフィルム)から剥離し、基材上に金属めっき膜を形成できなかった。
以上の結果より、熱硬化性樹脂前駆体(硬化性プレポリマー)及び増粘剤としてPVPを含む本発明の触媒インクは、基材上に塗布し下地層を形成した部分に選択的に、かつ、基材から剥離することなく金属めっき膜を得る上で有利であることが明らかとなった。
【0081】
[実施例3]
実施例1で調製した触媒インクを、ライン&スペースパターン(L/S=100/100μm)のスクリーンマスク[(株)ソノコム製、640メッシュ、線径15μm]を使用して、PIフィルム[東レ・デュポン(株)製 カプトン(登録商標)200EN]上にスクリーン印刷した。このフィルムを、80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、さらに150℃のホットプレートで30分間加熱し、ライン&スペースパターンの無電解めっき下地層を具備したPIフィルムを得た。
得られたフィルムを、80℃に加熱した参考例1で調製した無電解めっき液中に180秒間浸漬した。その後、取り出した基板を水洗し、80℃のホットプレートで5分間乾燥することで金属めっき配線が形成されたフィルムを得た。得られたフィルム上の金属めっき配線の電子顕微鏡画像を
図3に示す。
【0082】
[実施例4]
実施例2で調製した触媒インクを使用した以外は実施例3と同様に操作し、金属めっき配線が形成されたフィルムを得た。得られたフィルム上の金属めっき配線の電子顕微鏡画像を
図4に示す。
【0083】
[実施例5]
実施例2で調製した触媒インク及びL/S=70/70μmのスクリーンマスクを使用した以外は実施例3と同様に操作し、金属めっき配線が形成されたフィルムを得た。得られたフィルム上の金属めっき配線の電子顕微鏡画像を
図5に示す。
【0084】
得られたフィルム上の金属めっき膜を観察したところ、直線状に形成した下地層上全面に金属光沢のある金属めっき膜がムラ無く析出し、均一に金属めっき膜が形成できていることが確認された。