特許第6108258号(P6108258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108258
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】熱間鍛造用金型及び熱間鍛造方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/00 20060101AFI20170327BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20170327BHJP
   B21K 3/04 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   B21J5/00 B
   B21J13/02 A
   B21K3/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-575697(P2016-575697)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2016060732
(87)【国際公開番号】WO2016163307
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-77337(P2015-77337)
(32)【優先日】2015年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】光永尚史
(72)【発明者】
【氏名】福井毅
(72)【発明者】
【氏名】寺前俊哉
(72)【発明者】
【氏名】野々村敏明
(72)【発明者】
【氏名】松本英樹
(72)【発明者】
【氏名】下平栄史
(72)【発明者】
【氏名】古曵聡志
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−5056(JP,A)
【文献】 特開平7−185725(JP,A)
【文献】 特開昭56−1236(JP,A)
【文献】 特開昭55−136535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/00
B21J 13/02
B21K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の鍛造素材をラジアル鍛造により熱間鍛造するための熱間鍛造用金型であって、
前記熱間鍛造用金型は、前記鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部を有し、
前記各半割状押圧部は、前記鍛造素材を取り囲むように連続し、かつ連続する方向に垂直な断面が略半円状の凸形状をなし、
前記各半割状押圧部は、粗加工部と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部とを有することを特徴とする熱間鍛造用金型。
【請求項2】
前記各半割状押圧部は、粗加工部から仕上げ加工部に向かって、前記半割状押圧部の曲率半径が徐々に大きくなる徐変部を有することを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造用金型。
【請求項3】
前記仕上げ加工部の略半円状の凸形状の曲率半径は、前記粗加工部の略半円状の凸形状の曲率半径よりも10mm以上大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の熱間鍛造用金型。
【請求項4】
前記各半割状押圧部は、せぎり加工用であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の熱間鍛造用金型。
【請求項5】
前記せぎり加工用の押圧部が、前記鍛造素材の長手方向に複数個形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱間鍛造用金型。
【請求項6】
棒状の鍛造素材をラジアル鍛造により熱間鍛造する熱間鍛造方法であって、
前記熱間鍛造に用いる熱間鍛造用金型は、前記鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部を有し、
前記各半割状押圧部は前記鍛造素材を取り囲むように連続し、かつ連続する方向に垂直な断面が略半円状の凸形状をなし、
前記各半割状押圧部は、粗加工部と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部とを有し、
前記鍛造素材を熱間鍛造温度に加熱する鍛造素材加熱工程と、
前記加熱された鍛造素材を回転させつつ、対向配置された2つの前記熱間鍛造用金型の前記各半割状押圧部で鍛造素材を押圧することにより、鍛造素材にせぎりを行う熱間鍛造工程、
を含むことを特徴とする熱間鍛造方法。
【請求項7】
前記棒状の鍛造素材がNi基超耐熱合金またはTi合金であることを特徴とする請求項6に記載の熱間鍛造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の熱間鍛造方法が、タービンブレード用の荒地の製造に用いられることを特徴とする熱間鍛造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間鍛造用金型及び熱間鍛造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、タービンブレードを製造するにあたっては、丸棒状の熱間鍛造素材を所望の直径まで鍛伸して、更に、続く型打ち鍛造でニアネットシェイプのタービンブレード素材となるように、タービンブレードの根部や翼部となる部分の体積を確保すべく、所望の丸棒形状の荒地を成形する。この荒地の形状については、例えば、特開昭63−238942号公報(特許文献1)の図2に、根部となる部分が太く(体積が大きく)、翼部先端に向けて次第に細くなる形状の荒地が示されている。
この荒地の具体的な製造方法としては、例えば、丸棒状の熱間鍛造素材を所望の直径までラジアル鍛造を行って長尺の丸棒材とし、所定の寸法に切断し、更に別な自由鍛造装置で所望の荒地形状に鍛造される。
【0003】
タービンブレードを型打ち鍛造する場合、根部、翼部となる部分や、ボス部と呼ばれる突起がタービンブレードの翼部に設けられることもあり、タービンブレード用の荒地では、体積と寸法の調整が重要となる。もし、体積や寸法の調整が不十分であると、型打ち鍛造時の型彫り面内に十分に荒地が満肉せず、型打ち鍛造後のニアネットシェイプのタービンブレード素材の一部が欠寸する問題が生じる。また、タービンブレードの材質はNi基の超耐熱合金や、Ti合金等の高価な合金であるため、型打ち鍛造後のニアネットシェイプのタービンブレード素材の一部が欠寸するような不良が起きると、その損害は小さくはない。
そのため、荒地の製造時に「せぎり」と呼ばれる加工溝を設けて、型打ち鍛造時の型彫り面内に十分満肉するように荒地成形時に加工を行うことが好ましい。しかしながら例えば、特開昭60−250843号公報(特許文献2)に示されるように、せぎりの形成は特別な治具を用意してプレス装置で順次丸棒状の素材に加工溝を設けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−238942号公報
【特許文献2】特開昭60−250843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で示されるせぎりを行う治具の形状は、その押圧部は平坦、且つ同じ幅で形成されており、難加工性材に所望の溝を形成するには不向きである。更に、せぎりで成形される溝は、幅が細く垂直に深い溝となっている。材料の深さ方向に垂直な溝が形成されると、鍛造素材をタービンブレード長さまで伸長する熱間鍛造時に、かぶり疵の発生が問題となる。
本発明の目的は、タービンブレードに使用される難加工性材であっても、ラジアル鍛造機を用いて容易にせぎりを行うことが可能な熱間鍛造用金型と熱間鍛造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、棒状の鍛造素材をラジアル鍛造により熱熱間鍛造するための熱間鍛造用金型であって、
前記熱間鍛造用金型は、前記鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部を有し、
前記各半割状押圧部は前記鍛造素材を取り囲むように連続し、かつ連続する方向に垂直な断面が略半円状の凸形状をなし、
前記各半割状押圧部は、粗加工部と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部とを有する熱間鍛造用金型である。
好ましくは、前記各半割状押圧部は、粗加工部から仕上げ加工部に向かって、前記半割状押圧部の曲率半径が徐々に大きくなる徐変部を有する熱間鍛造用金型である。
更に好ましくは、前記仕上げ加工部の略半円状の凸形状の曲率半径は、前記粗加工部の略半円状の凸形状の曲率半径よりも10mm以上大きい熱間鍛造用金型である。
前記各半割状押圧部は、せぎり加工用である熱間鍛造用金型である。
前記せぎり加工用の押圧部が、前記鍛造素材の長手方向に複数個形成されている熱間鍛造用金型である。
【0007】
また、本発明は、棒状の鍛造素材をラジアル鍛造により熱間鍛造する熱間鍛造方法であって、
前記熱間鍛造に用いる熱間鍛造用金型は、前記鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部を有し、
前記各半割状押圧部は前記鍛造素材を取り囲むように連続し、かつ連続する方向に垂直な断面が略半円状の凸形状をなし、
前記各半割状押圧部は、粗加工部と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部とを有し、
前記鍛造素材を熱間鍛造温度に加熱する鍛造素材加熱工程と、
前記加熱された鍛造素材を回転させつつ、対向配置された2つの前記熱間鍛造用金型の前記各半割状押圧部で鍛造素材を押圧することにより、鍛造素材にせぎりを行う熱間鍛造工程、
を含む熱間鍛造方法である。
好ましくは、前記棒状の鍛造素材がNi基超耐熱合金またはTi合金である熱間鍛造方法である。
本発明の熱間鍛造方法は、タービンプレード用の荒地製造に好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タービンブレードに使用される難加工性材であっても、ラジアル鍛造機を用いて容易にせぎりを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の熱間鍛造用金型の一例を示す模式図である。
図2】本発明の熱間鍛造用金型の一例を示す模式図である。
図3】伸長部の一例を示す模式図である。
図4】ラジアル鍛造機の模式図である。
図5】荒地の形状の一例を示す模式図である。
図6】本発明の熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造を行ったときの鍛造素材を押圧する場所の一例を示す模式図である。
図7】本発明の熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造を行ったときの鍛造素材を押圧する場所の一例を示す模式図である。
図8】伸長部の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述の特許文献2では、せぎりを行う対象物は連接棒と言う小さな製品である。一方で、タービンブレードは今後益々大型化が進み、その材質も難加工性材として知られるNi基超耐熱合金やTi合金である。特にこれらの合金の中には、熱間鍛造可能な温度の幅が僅かしかないものもあり、せぎり用の治具を用いて自由鍛造していては、鍛造素材の温度が低下してしまう。そのため、素材の重量にもよるが、例えば、40〜60インチのタービンブレード用の場合では7〜10回の再加熱を行わないといけなくなる。タービンブレードの大型化が進むと、再加熱の回数は更に増加してしまう。
この課題に対しては、ラジアル鍛造機を用いてせぎりを行うことができれば、非常に有効となるが、通常、ラジアル鍛造機は金敷と呼ばれる、押圧部が平坦な金型を使用しているため、従来の金敷を用いたラジアル鍛造機ではせぎりを行うことは不可能であった。
本発明は、これを可能とするもので、最大の特徴は、ラジアル鍛造機を用いて大型のタービンブレード用の荒地成形にも適用な、従来にない形状にある。以下に本発明で用いる熱間鍛造用金型について説明する。
【0011】
図1は本発明の熱間鍛造用金型1の側面模式図と熱間鍛造用金型1の仕上げ加工部断面図(A−A断面図)、粗加工面断面図(C−C断面図)及び前記仕上げ加工部と粗加工部の間に位置する断面図(B−B断面図)である。なお、本発明では、対向する2方向から押圧するラジアル鍛造機を用いるものである。図1では、C−C断面図で示す位置からB−B断面図で示す位置までは、断面図で示す半割状押圧部の曲率半径が徐々に広がって行き、B−B断面図からA−A断面図で示す位置(底部)までの曲率半径はほぼ同じとしている。なお、本発明で言う「仕上げ加工部」とは、前記のA−A断面図で示す位置(底部)を含んで、同じ曲率半径を有する場所を仕上げ加工部とする。
【0012】
図1に示す熱間鍛造用金型1は2つで一対となり、例えば、図4に示すように熱間鍛造用金型1が鍛造素材21を挟み込むように対向配置され、且つ、一対の2つの熱間鍛造用金型1が共働してせぎりを行う。具体的には、図1で示す熱間鍛造用金型が2つ1組(一対)となって、鍛造素材(図1では図示せず)を挟み込む半割状押圧部2を有しており、この半割状押圧部で鍛造素材を挟み込むように押圧する。ラジアル鍛造機に備えられた把持機構により、鍛造素材は把持されると共に鍛造素材の間欠的な回転が行われることになる。
各半割状押圧部2は図1の側面模式図に示すように、前記鍛造素材を取り囲むように連続した、断面が略半円状の凸形状をなす。半割状とすることで共働する2つの熱間鍛造用金型の押圧部に鍛造素材を挟み込むものである。また、「鍛造素材を取り囲むように連続した」とは、図4に示すように鍛造素材21の周囲を粗加工部、仕上げ加工部で取り囲むような形状を言う。半割状押圧部2は平坦面を凹状に形成したように形成されており、その押圧部は側面(図1の側面模式図)から見ると円弧状に見える。そして、半割状押圧部2は、仕上げ加工部4と粗加工部3とを有している。仕上げ加工部4は凹状(円弧状)の底部辺りに形成されており、粗加工部3は、その仕上げ加工部の両側(凹状(円弧状)の両端側)に形成されている。そして、仕上げ加工部4の底部から両方の粗加工部3の端部に向かって粗加工部同士の間隔が広がって行き、2つの熱間鍛造用金型が鍛造素材を押圧したときに鍛造素材を連続した、略半円状の凸形状で押圧可能な形状となっている。この形状を有する熱間鍛造用金型1で鍛造素材を熱間鍛造すると、熱間鍛造用金型に形成された凸形状の粗加工部から鍛造素材に接触していき、せぎりに必要な溝を順次形成することができる。そのため、本発明で言う「断面が略半円状の凸形状」とは、上記の各断面図方向からみたときの形状を指す。つまり、鍛造素材の長手方向に垂直な方向から見たときの断面である。
【0013】
また、前記各半割状押圧部2は、粗加工部3と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部4とを有する。これは、鍛造素材が粗加工部から鍛造を開始するときに、難加工性の鍛造素材であっても所定の深さの溝が形成可能なように、鍛造の初期段階では接触面積を少なくして効率よく溝加工が行えるようにしたものである。そして、鍛造が進んで行くと、次第に仕上げ加工部に向かって順次押圧されて行き、溝の幅を広げると共に、せぎりの形状を整えていく。もっとも、仕上げ加工部での熱間鍛造であっても、せぎりの深さに到達しない場合も考えられるため、仕上げ加工部も断面が略半円状の押圧部を形成して、できる限り接触面積を小さくすることで効率よくせぎり形状を整えるものである。
つまり、本発明では、最初に曲率半径の小さな粗加工部3で効率よく溝加工を行い、その後、粗加工部3の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する仕上げ加工部4で最終形状に効率よく成形していくものである。そのため、粗加工部3に形成された略半円状の押圧部から次第に曲率半径を大きくしていき仕上げ加工部4では粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部に徐変する徐変部を形成することになる。
なお、実際の押圧部は、例えば肉盛溶接などで略半円状の凸部を形成したり、その後に手作業で形状を機械加工したりする場合もあるため、必ずしも同一曲率半径の凸部が形成されない場合がある。そのため、本発明でいう「略半円状」とは、肉盛溶接や機械加工による誤差を含み、曲率を持った凸状のものであれば良く、その曲率はおおよその形状から求めれば良い。また、鍛造素材を押圧する部分が曲率を持った凸状であればよく、その押圧する部分の曲率を本発明に従って構成すればよい。
【0014】
本発明の仕上げ加工部4の略半円状の凸形状の曲率半径は、粗加工部3の略半円状の凸形状の曲率半径よりも10mm以上大きいことが好ましい。これは、本発明の鍛造素材が大型のタービンブレード用の荒地となるものであり、粗加工部と仕上げ加工部の接触面積を広げておく方が、大型(長尺)のタービンブレード用荒地として好適になるためである。また、別な理由として、仕上げ加工部の略半円状の凸形状の曲率半径が大きいと幅の広い加工溝の形成が容易となる。せぎりの鍛造後に行う鍛造素材の伸長を行う鍛造時にせぎりを行った場所のかぶり疵防止のために、せぎりで形成する加工溝の幅を広げておく方が望ましいためである。何れも、仕上げ加工部と粗加工部との曲率半径の差が10mm未満では、十分にその効果が得られない場合があるため、仕上げ加工部4の略半円状の凸形状の曲率半径は、粗加工部の略半円状の凸形状の曲率半径よりも10mm以上大きいものとする。好ましくは15mm以上の差をもって形成するのが好ましい。
【0015】
上述したように、本発明の熱間鍛造用金型1はせぎり加工用に好適である。なお、図2に示すようにせぎり加工用の半割状押圧部2を鍛造素材の長手方向に複数個形成しても良い。これは、例えば、2ヶ所同時にせぎりによる加工溝を形成する場合、1つの金型に複数個のせぎり加工用の半割状押圧部2を形成しておく方が、生産性向上に有利であるからである。特に、タービンブレードに用いられる合金の材質は難加工性材であることから、熱間鍛造が可能な温度域内でできるだけ短時間で鍛造を終了させることが好ましいためである。この複数個所への同時せぎり加工は、タービンブレードの翼部に設けられるボス部となる部分に対して用いるのが有効である。
なお、この複数個所同時せぎり鍛造が可能となるのも、本発明の熱間鍛造用金型に形成する押圧部の接触面積が、小さな面積から次第に大きな面積となるようにして、それをラジアル鍛造機と組み合せて初めて実現できたものである。
この図2に示す構造の熱間鍛造用金型においても、E−E断面図で示す位置(底部)を含んで、同じ曲率半径を有する場所(F−F断面図の位置からE−E断面図の位置まで)を仕上げ加工部とする。
【0016】
なお、せぎり鍛造終了後には鍛造素材を伸長して所定の荒地形状とする。その場合に用いる熱間鍛造用金型11には鍛造素材を伸長する伸長部7を備えている。前記の伸長部7に設ける鍛伸用押圧部には、図3に示すように押圧部が平坦状(鍛造素材2の長手方向に沿って平坦状であり、鍛造素材2を挟み込むように曲がっている)に形成されている。鍛伸用の伸長部7は、鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部12を有し、各半割状押圧部12は鍛造素材を取り囲むように連続した凸形状をなし、各半割状押圧部12は、略平坦状の粗加工部13と、仕上げ加工部14とを有するものである。基本的な構成は前記のせぎり加工に適した熱間鍛造用金型と同じであり、図3に示す鍛伸用の熱間鍛造用金型11も2つで1組(一対)となる。鍛造素材の鍛伸は、1組の鍛伸用の熱間鍛造用金型11が共働して鍛造素材(図示せず)の直径を細くするように、ラジアル鍛造機に備えられた把持機構により鍛造素材は把持されると共に、鍛造素材の回転が行われることになる。また、この鍛造素材の回転と共に、把持された鍛造素材はその長手方向に移動して行き、鍛造素材の長手方向も伸長させる。
なお、この鍛伸用の熱間鍛造用金型の平坦状の押圧部も、鍛造の初期段階では接触部積を少なくして効率よく鍛伸して行き、その後、所定の形状に整えることが容易なように、粗加工部13に形成された略平坦状の押圧部の面幅を狭くしておき、前記仕上げ加工部14に形成された押圧部の面幅は前記粗加工部13よりも広くするのが好ましい。
前記のように、鍛伸用の熱間鍛造用金型11は、鍛造素材を長手方向に伸長しつつ、形状を整えるものであるため、その押圧部は平坦状となる。この平坦状の押圧部の幅(鍛造素材の長手方向における幅)を過度に広げると鍛造に要する圧力が大きくなってしまうことがある。そのため、1度の打撃で効率よく鍛伸できるように平坦状の押圧部の幅は接触面積を考慮し、鍛造機に適した幅を選択することが好ましい。
【0017】
次に、一例として、本発明の熱間鍛造用金型を用いて50インチのタービンブレード用の荒地の熱間鍛造方法について説明する。
図4はラジアル鍛造機の一例を示す模式図である。ラジアル鍛造機には図1で示す熱間鍛造用金型1が取り付けられている。熱間鍛造用金型1は、鍛造素材21を挟み込むために鍛造素材の対面にそれぞれ1つずつ設けられている。図4では既に鍛造素材21がラジアル鍛造機に把持されているが、鍛造素材は加熱炉(図示せず)にて所定の熱間鍛造温度に加熱され、ラジアル鍛造機に取り付けられたものである。
加熱温度は鍛造素材の材質によって異なり、例えば、Ni基超耐熱合金であれば950〜1150℃であり、Ti合金であれば800〜1000℃である。この他、析出強化型ステンレス鋼では900〜1200℃である。また、鍛造素材の形状は棒状である。棒状の鍛造素材は、鍛造装置やプレス装置で所定の形状に整えたものであれば良く、もし、丸棒状であれば、その直径はせぎりが行える熱間鍛造用金型1の粗加工部同士の幅と同等程度であることが好ましい。
そして、前述の鍛造素材のうち、所定の丸棒状鍛造素材をラジアル鍛造機に取り付けを行う。
【0018】
熱間鍛造は、加熱された鍛造素材21を回転させつつ、対向配置された2つの熱間鍛造用金型1を1組(一対)とし、前記各半割状押圧部で鍛造素材を押圧することにより、鍛造素材にせぎり加工を行う。せぎりを行う熱間鍛造用金型の形状は図1に示すものである。このせぎり加工時は、先ず熱間鍛造用金型1の粗加工部3から熱間鍛造が開始される。本発明の熱間鍛造用金型は、仕上げ加工部4から粗加工部3に向かって粗加工部同士の間隔が広がって行き、2つの熱間鍛造用金型が鍛造素材を押圧したときに鍛造素材を連続した、略半円状の凸形状で押圧可能な形状を有するものである。また、最初に行うせぎり加工は、鍛造素材はその場で回転する(鍛造素材の長手方向の移動は行わない)。
このせぎり加工時の加工方法としては2通りの方法がある。1つ目の方法として、せぎり加工終了後の形状重視の方法から説明する。
対向する2方向からの熱間鍛造が開始されると、図6(A)に示すように、先ず、粗加工部3から鍛造素材の所定の位置の押圧が開始される。粗加工時の鍛造素材21と熱間鍛造用金型の接触(鍛造)位置を矢印で示している。そうすると、対向する2方向からの熱間鍛造でありながら、鍛造初期は共働して鍛造する2つ熱間鍛造用金型に形成された粗加工部が押圧を開始することから、鍛造開始時に鍛造素材を押圧している箇所は4ヶ所である。この4ヶ所が同時にせぎり加工を開始すると、接触面積が小さいため効率よく溝加工を行っていく。そして、順次仕上げ加工部に向かって熱間鍛造を行い、一対の熱間鍛造用金型に形成された仕上げ加工部で所定の形状に整えられていくことになる。仕上げ加工の最終段階では、図6(B)で示すように、鍛造素材21を仕上げ加工部の底部で熱間鍛造を行うときは押圧箇所は2ヶ所である。つまり、せぎり加工の初期段階では一対の熱間鍛造用金型を用いて4ヶ所の鍛造(せぎり加工)を行い、最後の形状調整時は一対の熱間鍛造用金型を用いて2ヶ所の鍛造により、形状を整えることができる。また、粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部4で最終形状に効率よく成形することができる。しかも、矢印で示した仕上げ加工部の底部の形状で最終的な形状に整えることか可能であるため、最終仕上げ形状を重視する場合には好都合である。
【0019】
もう一つの方法は、加工時間を短時間とする場合に適用する方法である。
対向する2方向からの熱間鍛造が開始されると、図7(A)に示すように、先ず、粗加工部3から鍛造素材の所定の位置の押圧が開始される。粗加工時の鍛造素材21と熱間鍛造用金型の接触(鍛造)位置を矢印で示している。そうすると、対向する2方向からの熱間鍛造でありながら、鍛造初期は共働して鍛造する2つ熱間鍛造用金型に形成された粗加工部が押圧を開始することから、鍛造開始時に鍛造素材を押圧している箇所は4ヶ所である。この4ヶ所が同時にせぎり加工を開始すると、接触面積が小さいため効率よく溝加工を行っていく。そして、順次仕上げ加工部に向かって熱間鍛造を行い、一対の熱間鍛造用金型に形成された仕上げ加工部4で所定の形状に整えられていくことになる。
前述のように、B−B断面図からA−A断面図で示す位置(底部)までの曲率半径はほぼ同じとしていることから、仕上げ加工部の底部まで使用する仕上げ加工は行わず、図7(B)に示すように、仕上げ加工時も押圧する箇所を4ヶ所として仕上げ加工を終了させる。この場合であっても、粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部4で最終形状に効率よく成形することができ、且つ、押圧箇所を4ヶ所とすることで短時間でせぎり加工が行える。そのため、鍛造時間を短時間としたい場合には好都合である。
なお、この鍛造時間重視の方法を用いる場合、仕上げ加工部の底部(A−A断面図で示す位置)の曲率半径(図7で示す鍛造素材の長手方向に垂直方向から見たときの曲率半径)をせぎり加工した後の直径の曲率半径よりも小さく小さくしすることが重要である。但し、仕上げ加工部の底部は曲面形状としておき、熱間鍛造時に過度な応力集中を避けるようにすると良い。
【0020】
前記のせぎり加工が終了すると、熱間鍛造用金型1を鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型11に交換する。この熱間鍛造用金型の交換時においては、鍛造素材を再度所定の鍛造温度に再加熱する。
交換した熱間鍛造用金型11は、前記鍛造素材を伸長する鍛伸用押圧部を有する伸長部7が設けられている。鍛伸用押圧部は、図3に示す形状を有するものである。この鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型11の、鍛造素材の長手方向から見た押圧部の形状も、図6(A)に示す前記せぎり加工を行った熱間鍛造用金型1と同様であるため、対向する2方向からの熱間鍛造が開始されると、先ず、粗加工部13から鍛造素材の所定の位置の押圧が開始される。そうすると、対向する2方向からの熱間鍛造でありながら、鍛伸(鍛造)初期は共働して鍛造する2つ(一対)の熱間鍛造用金型に形成された粗加工部が押圧を開始することから、鍛造開始時に鍛造素材を押圧している箇所は4ヶ所である。この4ヶ所が同時に鍛伸を開始すると、接触面積が小さいため効率よく鍛造素材を伸長していく。そして、鍛造素材はラジアル鍛造機によって間欠回転しつつ鍛造素材の長手方向に順次移動されて、順次仕上げ加工部に向かって熱間鍛造を行い、一対の熱間鍛造用金型に形成された仕上げ加工部で所定の形状に整えられていくことになる。
つまり、仕上げ加工の最終段階では、図6(B)で示すように、仕上げ加工部14で熱間鍛造を行うときは押圧箇所は2ヶ所である。この仕上げ加工部の底部の形状で最終的な形状に整える方法は、最終仕上げ形状を重視する場合には好都合である。
また、この鍛伸用押圧部による熱間鍛造においても、熱間鍛造時間を短時間にするには図7のように、熱間鍛造初期から熱間鍛造の最終段階まで押圧箇所を4ヶ所とすることで短時間で鍛造素材を伸長することができる。
【0021】
また、前記の鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型において、図8に示す形状とすることができる。図8に示す熱間鍛造用金型11は、その仕上げ加工部14の幅(鍛造素材の長手方向における幅)内の底部から粗加工部に向かって凹部8が形成され、前記凹部8により、前記仕上げ加工部の押圧部が2ヶ所に分かれている。凹部は仕上げ加工部14の幅内に1つ以上形成し、仕上げ加工部の押圧部を2つ以上にすることで鍛伸時の鍛造用素材の曲りをより確実に防止することができる。図8に示す熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造していくと、A−A断面で示す仕上げ加工部の底部にて最終段階の鍛造が行える。鍛造用素材が押圧された瞬間においては、仕上げ加工部によって押圧されている部分と、その仕上げ加工部によって押圧されている部分に隣り合う部分は押圧されいない部分が生じている。押圧された部分の肉が押圧されていない部分に流れ、その肉が流れることにより、僅かであるが鍛造用素材の断面が楕円となることがある。楕円となった鍛造素材は鍛造中に曲りを生じやすくなる。しかし、図8の熱間鍛造用金型の構造によれば、凹部によって押圧部(仕上げ加工部)が分けられていることから、最初に押圧した場所がラジアル鍛造によって鍛造素材が間欠的に回転して、次の押圧部によって仕上げ鍛造される。このとき、図8の構造では、合計4ヶ所で押圧されているため、上述のとおり次の押圧部によって楕円を矯正しつつ曲りも矯正できるものである。なお、凹部の形成箇所は仕上げ加工部の底部(図8のA−Aで示す直線が接している箇所)を含むように形成することで曲り防止の効果を最大限発揮できる。
このようにして、せぎりから鍛伸へと同じラジアル鍛造機を用いて連続して鍛造素材を所定の荒地形状に熱間鍛造が行えるため、従来のようにせぎり用の治具を用いた後に、別な鍛造機であらためて鍛伸を行うと言った、煩雑な工程を省略できる。そのため、再加熱回数を低減できるにもかかわらず、精度の高いタービンブレード用の荒地を製造することが可能となる。
【0022】
本発明によれば、タービンブレードに使用される難加工性材であっても、ラジアル鍛造機を用いて容易にせぎりを行うことができる。また、前例のないラジアル鍛造機を用いた熱間鍛造方法によれば、鍛造材の再加熱の回数を飛躍的に低減させることができ、生産性を向上させ、省エネルギーにも極めて有効となる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
図2に示す本発明の熱間鍛造用金型1を用意した。
用意したせぎり加工用の熱間鍛造用金型1のせぎり部5は、前記鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部を有し、前記各半割状押圧部は前記鍛造素材を取り囲むように連続した、断部が略半円状の凸形状をなし、前記各半割状押圧部は、粗加工部と、該粗加工部よりも曲率半径が大きい凸形状の仕上げ加工部とを有するものである。粗加工部13の略半円状の凸形状の曲率半径は30mmとし、仕上げ加工部14の略半円状の凸形状の曲率半径は50mmに徐変するものであった。
また、せぎり加工後に鍛造素材を伸長する熱間鍛造用金型11の伸長部7に設けられた鍛伸用押圧部は、押圧部が平坦状に形成されたものであり、その形状は図3に示すものである。鍛伸用の伸長部7は、鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部12を有し、各半割状押圧部12は鍛造素材を取り囲むように連続した凸形状をなし、各半割状押圧部12は、略平坦状の粗加工部13と、仕上げ加工部14とを有するものである。鍛伸用押圧部の幅は粗加工部13を50mmとし、仕上げ加工部14を100mmに除変するものであり、最終形状を重視した形状を有する熱間鍛造用金型を用いて行った。
上記の熱間鍛造用金型を2つ1組で一対としてラジアル鍛造機に取り付けて熱間鍛造の準備を行った。
【0024】
50インチタービンブレード用の鍛造素材を950℃に加熱された加熱炉で加熱を行った。鍛造素材はチタン合金であり、その寸法は直径がφ200mm、長さが1100mmであった。
鍛造素材を加熱炉から取り出して、ラジアル鍛造機で熱間鍛造を開始した。なお、鍛造素材は、マニプレータで把持して操作した。
熱間鍛造は、まず、加熱された鍛造素材21を回転させつつ、対向配置された2つの熱間鍛造用金型1の前記各半割状押圧部で鍛造素材を押圧することにより、鍛造素材にせぎり加工を行った。最初に行うせぎり加工は、鍛造素材はその場で回転(鍛造素材の長手方向の移動は行わない)しつつ、所定の形状に熱間鍛造した。図2に示すように1つの金型に複数個のせぎり加工用の半割状押圧部2を形成された金型を使用し、2ヶ所同時にせぎりを行った。
前記のせぎり加工の終了後、鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型11に交換した。このとき、鍛造素材はラジアル鍛造機から取り外して、再度所定の鍛造温度に再加熱行った。鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型11に交換終了後に再度鍛造素材をラジアル鍛造機に取り付けて鍛伸用押圧部による熱間鍛造を行った。鍛造素材はラジアル鍛造機によって間欠回転しつつ長手方向に順次移動されて、所定の形状に整えて荒地形状に熱間鍛造した。熱間鍛造後の荒地22は、根部、翼部、ボス部の成形に好適な図7に示すような形状であった。熱間鍛造後の荒地には、特にかぶり疵等の問題も発生しなかった。
【0025】
(実施例2)
実施例2として、図8の熱間鍛造用金型の効果を確認した。用いたせぎり用の熱間鍛造用金型は前記の実施例1と同じである。
実施例2として、図8の熱間鍛造用金型11の効果を確認した。図8に示す熱間鍛造用金型は、鍛伸用の伸長部7は、鍛造素材を挟み込むための一対の半割状押圧部12を有し、各半割状押圧部12は鍛造素材を取り囲むように連続した凸形状をなし、各半割状押圧部12は、略平坦状の粗加工部13と、仕上げ加工部14とを有するものである。鍛伸用押圧部の幅は粗加工部13を50mmとし、仕上げ加工部14を100mmに除変するものであり、その仕上げ加工部の中央に幅が80mmの凹部を形成し、仕上げ加工部の押圧部を2つにしたものである。なお、2つに分けた押圧部の幅はそれぞれ270mmであった。また、用いたせぎり用の熱間鍛造用金型は前述の実施例1と同じである。
【0026】
50インチタービンブレード用の鍛造素材を950℃に加熱された加熱炉で加熱を行った。鍛造素材はチタン合金であり、その寸法は直径がφ200mm、長さが1100mmであった。
鍛造素材を加熱炉から取り出して、ラジアル鍛造機で熱間鍛造を開始した。なお、鍛造素材は、マニプレータで把持して操作した。
熱間鍛造は、まず、加熱された鍛造素材21を回転させつつ、対向配置された2つの熱間鍛造用金型1の前記各半割状押圧部で鍛造素材を押圧することにより、鍛造素材にせぎり加工を行った。最初に行うせぎり加工は、鍛造素材はその場で回転(鍛造素材の長手方向の移動は行わない)しつつ、所定の形状に熱間鍛造した。図3に示すように1つの金型に複数個のせぎり加工用の半割状押圧部12を形成された金型を使用し、2ヶ所同時にせぎりを行った。
前記のせぎり加工の終了後、鍛伸用押圧部を有する図3の熱間鍛造用金型11に交換した。このとき、鍛造素材はラジアル鍛造機から取り外して、再度所定の鍛造温度に再加熱行った。鍛伸用押圧部を有する熱間鍛造用金型11に交換終了後に再度鍛造素材をラジアル鍛造機に取り付けて鍛伸用押圧部による熱間鍛造を行った。鍛造素材はラジアル鍛造機によって間欠回転しつつ長手方向に順次移動されて、所定の形状に整えて荒地形状に熱間鍛造した。最後に、図8に示す熱間鍛造用金型11に交換して鍛造用素材に対して10パスのラジアル鍛造による仕上げ加工を行った。熱間鍛造後の荒地22は、根部、翼部、ボス部の成形に好適な図5に示すような形状であった。熱間鍛造後の荒地には、特にかぶり疵等の問題も発生しなかった。全長が約1500mmの荒地の曲りについては実施例1で得られた荒地と比較して、約5mm程度の曲りの抑制が確認された。
本発明の製造方法により、タービンブレード等に使用される難加工性材であっても、ラジアル鍛造機を用いて容易に鍛伸することが可能であった。また、せぎり加工をラジアル鍛造機を用いて所定の荒地形状に熱間鍛造が行えるため、従来のようにせぎり用の治具を用いるといった、煩雑な工程を省略できた。そのため、再加熱回数を低減できるにもかかわらず、精度の高いタービンブレード用の荒地を製造することが可能となった。
【符号の説明】
【0027】
1 熱間鍛造用金型
2 半割状押圧部
3 粗加工部
4 仕上げ加工部
5 せぎり部
7 伸長部
8 凹部
11 熱間鍛造用金型(鍛伸用)
12 半割状押圧部(鍛伸用)
13 粗加工部(鍛伸用)
14 仕上げ加工部(鍛伸用)
21 鍛造素材
22 荒地
31 熱間鍛造用金型

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8