(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
種結晶を含まない反応混合物を密閉下に80〜200℃の温度で予備加熱した後、種結晶を該反応混合物に添加し、更に該反応混合物を80〜200℃の温度で密閉下に加熱する請求項1に記載の製造方法。
【背景技術】
【0002】
合成ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、その結晶構造に起因するオングストロームサイズの均一な細孔を有している。この特徴を生かして、合成ゼオライトは、特定の大きさを有する分子のみを吸着する分子ふるい吸着剤や親和力の強い分子を吸着する吸着分離剤、又は触媒基剤として工業的に利用されている。
【0003】
ところでMAZとは、ゼオライトオメガが属する骨格構造種を表す名称である。MAZ型ゼオライトは、12員環及び8員環を有する大細孔を持ったゼオライトであり、アンモニアの吸着能が高く、またn−ヘキサンの異性化活性触媒としても有望なものである。従来、MAZ型ゼオライトは、テトラメチルアンモニウムイオン等の有機構造規定剤(以下「OSDA」と略称する。)として用いる方法によってのみ製造されてきた(特許文献1及び2並びに非特許文献1及び2参照)。そのため、MAZ型ゼオライトを得るためにはOSDAの使用は必須であると考えられてきた。また、合成されたMAZ型ゼオライトはOSDAを含んでいるため、その使用前に焼成してOSDAを除去して用いることも不可避と考えられてきた。
【0004】
MAZ型ゼオライトの合成法は例えば、上述した特許文献1及び2並びに非特許文献1及び2に記載されているとおりであり、一般的な方法はナトリウムイオンやカリウムイオンの共存下に、テトラメチルアンモニウムイオンをOSDAとして用いる方法である。しかしながら前記のOSDAは高価なものなので、工業的に用いるには有利とは言えない。また、生成するゼオライトの結晶中にOSDAが取り込まれるため、該ゼオライトを吸着剤や触媒として使用する場合には該ゼオライトを焼成してOSDAを除去する必要がある。その際に生じる排ガスは環境汚染の原因となり、また、OSDAの分解生成物を含む合成母液の無害化処理のためにも多くの薬剤を必要とする。このように、OSDAを用いるMAZ型ゼオライトの合成方法は高価であるばかりでなく、環境負荷の大きい製造方法であること。したがってOSDAを用いない製造方法及びその方法によって得られる本質的に有機物を含まないMAZ型ゼオライトの実現が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。本発明に従い合成されたMAZ型ゼオライトは、熱処理をしない状態で本質的に有機物を含まない。ここでいう有機物とは、OSDAとしてゼオライトの合成に用いられる第四級アンモニウム化合物等を主として包含する。アルミノシリケート骨格の四配位アルミニウムの負電荷と電荷補償して骨格外に存在するイオンは、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンであり、細孔内に存在するそれ以外のものは水又は少量の吸着ガスのみである。すなわち、本発明に従い合成されたMAZ型ゼオライトは、以下に記載するOSDAを用いない製造方法によって得られるので、本質的にOSDAを初めとする有機物を含んでいない。本発明に従い合成されたMAZ型ゼオライトにおけるアルミノシリケート骨格のSiO
2/Al
2O
3比は、好ましくは5〜10の範囲である。また、本発明に従い合成されたMAZ型ゼオライトのX線回折図は、これまで報告されている合成MAZ型ゼオライトのX線回折図と本質的に同等である。このことから、本発明に従い合成されたMAZ型ゼオライトの構造的特徴は、OSDAを用いて合成される従来のMAZ型ゼオライトと同じであると判断される。
【0012】
本発明の製造方法の特徴の一つは、有機化合物からなるOSDAを全く添加することなく、反応混合物を調製することである。すなわち、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含む水性アルミノシリケートゲルを反応混合物として用いる。水性アルミノシリケートゲルの反応混合物にナトリウムイオン及びカリウムイオンを存在させることが必須条件である。ナトリウムイオン及びカリウムイオン以外のアルカリ金属イオン、例えばリチウムイオンの存在は、本発明の製造方法においては必須ではない。ただし本発明の製造方法において、リチウムイオンを用いることは排除されない。
【0013】
本発明の製造方法の別の特徴は、種結晶を使用することである。種結晶としては、従来法、すなわちOSDAを用いた方法で製造されたMAZ型ゼオライトを焼成し、有機物を除去したものを使用することができる。従来法に従うMAZ型ゼオライトの合成方法は、例えば上述した特許文献1及び2並びに非特許文献1及び2に記載されており、当業者によく知られている。従来法に従うMAZ型ゼオライトの合成方法において、使用するOSDAの種類は限定されない。一般に、OSDAとしてテトラメチルアンモニウムイオンを用いると、MAZ型ゼオライトを首尾良く製造することができる。
【0014】
種結晶の合成においては、アルミナ源及びシリカ源にOSDAを添加するのと同時にアルカリ金属イオンを添加することが好ましい。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオンを用いることが好ましい。このようにしてMAZ型ゼオライトが合成されたら、これを種結晶として使用する前に、例えば空気中で500℃以上の温度で焼成し、結晶中に取り込まれているOSDAを除去する。OSDAを除去しない種結晶を使用して本発明の方法を実施すると、反応終了後の排液中に有機物が混入することとなる。また生成するMAZ型ゼオライトにOSDAが含まれる可能性もあり、本発明の趣旨に反する。
【0015】
本発明の製造方法においては、本発明に従い得られたMAZ型ゼオライトを種結晶として用いることもできる。本発明で得られるMAZ型ゼオライトは本質的に有機化合物を含んでいないので、これを種結晶として使用する場合には、前もって焼成処理する必要がないという利点がある。
【0016】
従来法に従い得られたMAZ型ゼオライトを用いる場合及び本発明に従い得られたMAZ型ゼオライトを用いる場合のいずれであっても、種結晶のSiO
2/Al
2O
3比は5〜10の範囲、好ましくは6〜8の範囲である。種結晶のSiO
2/Al
2O
3比を5以上とすることで、MAZ型ゼオライトの結晶化速度を十分に速くすることができる。一方、SiO
2/Al
2O
3比を10以下にすることで、MAZ型ゼオライトを容易に合成することができる。
【0017】
種結晶の添加量は、前記の反応混合物中のシリカ成分に対して0.1〜30重量%の範囲、好ましくは1〜20重量%の範囲である。添加量がこの範囲内であることを条件として種結晶の添加量は少ない方が好ましく、反応速度や不純物の抑制効果などを考慮して添加量が決定される。
【0018】
種結晶の平均粒子径は0.1μm以上とし、好ましくは0.1〜2μm、更に好ましくは0.2〜1.0μmとする。合成によって得られるゼオライトの結晶の大きさは、一般的に均一ではなく、ある程度の粒子径分布を持っている、その中で最大頻度を有する結晶粒子径を求めることは困難ではない。平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡による観察における最大頻度の結晶の粒子直径を指す。0.1μm未満の粒子を合成するためには特別な工夫が必要な場合が多く、高価なものとなってしまう。したがって、本発明では平均粒子径が0.1μm以上のMAZ型ゼオライトを種結晶として用いる。種結晶の平均粒子径の大きさによって、結晶化速度や生成結晶の大きさに影響が生じる場合があるものの、種結晶の平均粒子径の違いが、MAZ型ゼオライトの合成に本質的な支障をきたすことはない。
【0019】
種結晶を添加する反応混合物は、以下に示すモル比で表される組成となるように、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、及び水を混合して得られる。反応混合物の組成がこの範囲外であると、後述する比較例の結果から明らかなように、目的とするMAZ型ゼオライトを得ることができず、代わりに他のゼオライト、例えばモルデナイトなどが生成してしまう。・SiO
2/Al
2O
3=24〜60
・(Na
2O+K
2O)/SiO
2=0.25〜0.5
・K
2O/(Na
2O+K
2O)=0.1〜0.5
・H
2O/SiO
2=5〜50
【0020】
更に好ましい反応混合物の組成の範囲は以下のとおりである。
・SiO
2/Al
2O
3=26〜55
・(Na
2O+K
2O)/SiO
2=0.28〜0.45
・K
2O/(Na
2O+K
2O)=0.15〜0.4
・H
2O/SiO
2=10〜30
【0021】
前記のモル比を有する反応混合物を得るために用いられるシリカ源としては、シリカそのもの及び水中でケイ酸イオンの生成が可能なケイ素含有化合物が挙げられる。具体的には、湿式法シリカ、乾式法シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルなどが挙げられる。これらのシリカ源は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのシリカ源のうち、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが、不要な副生物を伴わずに目的とするゼオライトを得ることができる点で好ましい。
【0022】
アルミナ源としては、例えば水溶性アルミニウム含有化合物や粉末状アルミニウムを用いることができる。水溶性アルミニウム含有化合物としては、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。また、水酸化アルミニウムも好適なアルミナ源の一つである。これらのアルミナ源は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのアルミナ源のうち、粉末状アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウムを用いることが、不要な副生物(例えば硫酸塩や硝酸塩等)を伴わずに目的とするゼオライトを得ることができる点で好ましい。
【0023】
アルカリ源としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いることができる。なお、シリカ源としてケイ酸カリウムを用いた場合やアルミナ源としてアルミン酸ナトリウムを用いた場合、そこに含まれるアルカリ金属成分であるナトリウムやカリウムは同時にNaOH及びKOHとみなされ、アルカリ成分でもある。したがって、前記のNa
2O及びK
2Oは反応混合物中のすべてのアルカリ成分の和として計算される。なお、先に述べたとおり、アルカリ源として用いられるアルカリ金属としては、ナトリウム及びカリウムを用いることが必須であり、それら以外のアルカリ金属イオン、例えばリチウムイオンは、本発明の製造方法においては必須ではない。
【0024】
反応混合物を調製するときの各原料の添加順序は、均一な反応混合物が得られ易い方法を採用すれば良い。例えば、室温下、アルミナ源とアルカリ源とを水に添加して溶解させ、次いでシリカ源を添加して撹拌混合することにより、均一な反応混合物を得ることができる。種結晶は、シリカ源を添加する前に加えるか、又はシリカ源と混合した後に加える。その後、種結晶が均一に分散するように撹拌混合する。反応混合物を調製するときの温度にも特に制限はない。
【0025】
特に、種結晶を含まない前記反応混合物を密閉容器中に入れて自生圧力下に予備加熱した後に種結晶を添加すると、目的とするMAZ型ゼオライトが首尾良く得られるので好ましい。とりわけ、反応混合物を予備加熱した後に急冷し、該反応混合物が室温まで冷却された後に種結晶を添加すると、目的とするMAZ型ゼオライトが一層首尾良く得られるので好ましい。これらいずれの場合であっても、反応混合物の調製は、アルミナ源とアルカリ源を含む液に、シリカ源を添加するという手順で行うことが好ましい。また、反応混合物の予備加熱の温度及び時間は特に限定されない。具体的には、予備加熱の温度は80〜200℃とすることが好ましく、100〜200℃とすることが更に好ましい。予備加熱の時間は、予備加熱の温度がこの範囲内であることを条件として、0.5〜24時間、特に1〜20時間とすることが好ましい。予備加熱の温度と種結晶を添加した後の結晶化温度は同じでも、また異なる温度でも良く、特に限定されない。加熱時間との組み合わせにおいて効率よく結晶化が進行する条件を設定すれば良い。
【0026】
予備加熱を行ったか又は予備加熱を行わない反応混合物に種結晶を添加し、種結晶を含む該反応混合物を密閉容器中に入れて加熱して反応させ、自生圧力下にMAZ型ゼオライトを結晶化する。この反応混合物にOSDAは含まれていない。種結晶は、上述した特許文献1若しくは2又は非特許文献1若しくは2に記載の方法で得られたものを、焼成等の操作に付して、OSDA等の有機物を含まない状態で用いることができる。
【0027】
種結晶を含む反応混合物を用いてMAZ型ゼオライトを結晶化するときには、熟成をした後に加熱すると、結晶化が進行し易いので好ましい。熟成とは、反応温度よりも低い温度で一定時間その温度に保持する操作をいう。熟成においては、一般的には、撹拌することなしに静置する。熟成を行うことで、不純物の副生を防止すること、不純物の副生なしに撹拌下での加熱を可能にすること、反応速度を上げることなどの効果が奏されることが知られているが、作用機構は必ずしも明らかではない。熟成の温度と時間は、前記の効果が最大限に発揮されるように設定される。本製造方法では、好ましくは20〜80℃、更に好ましくは20〜60℃で、好ましくは2〜24時間の範囲で熟成が行われる。
【0028】
種結晶を含む反応混合物を加熱して結晶化をさせている間、該反応混合物の温度の均一化を図るために、該反応混合物を撹拌しても良い。撹拌は、撹拌羽根による混合や、容器の回転によって行うことができる。撹拌強度や回転数は、温度の均一性や不純物の副生具合に応じて調整すれば良い。常時撹拌ではなく、間歇撹拌でも良い。
【0029】
静置状態下に結晶化を行う場合及び撹拌状態下に結晶化を行う場合のいずれでも、加熱は密閉下に行う。加熱温度は80〜200℃の範囲であり、好ましくは120〜200℃、更に好ましくは140〜200℃の範囲である。この加熱は自生圧力下でのものである。80℃未満の温度では結晶化速度が極端に遅くなるのでMAZ型ゼオライトの生成効率が悪くなる。一方、200℃超の温度では、高耐圧強度のオートクレーブが必要となるため経済性に欠けるばかりでなく、不純物の発生速度が速くなる。加熱時間は本製造方法において臨界的ではなく、結晶性の十分に高いMAZ型ゼオライトが生成するまで加熱すれば良い。一般に2〜150時間程度の加熱によって、満足すべき結晶性のMAZ型ゼオライトが得られる。
【0030】
前記の加熱によってMAZ型ゼオライトの結晶が得られる。加熱終了後は、生成した結晶粉末をろ過によって母液と分離した後、水又は温水で洗浄して乾燥する。乾燥したままの状態で実質的に有機物を含んでいないので焼成の必要はなく、脱水を行えば吸着剤などとして使用可能である。また、固体酸触媒として使用する際は、例えば結晶内のNa
+イオンやK
+イオンをNH
4+イオンに交換した後、焼成することによってH
+型として使用することができる。
【0031】
本製造方法で得られたMAZ型ゼオライトは、例えば石油化学工業におけるオレフィン合成用触媒等の各種触媒や、種々の工業分野における吸着分離剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。なお、以下の実施例及び比較例で用いた分析機器は以下のとおりである。
【0033】
粉末X線回折装置:マック サイエンス社製、粉末X線回折装置 MO3XHF
22、Cukα線使用、電圧40kV、電流30mA、スキャンステップ0.02°、スキャン速度2°/min
走査型電子顕微鏡:(株)日立ハイテクノロジーズ社製、電界放出型走査電子顕微鏡 S−4800
組成分析装置:(株)バリアン製、ICP−AES LIBERTY SeriesII
窒素吸着特性測定装置:(株)カンタクローム インスツルメンツ社製、AUTOSORB−1
アンモニア昇温脱離(Temperature−Programmed Deosprtion、TPD)装置:日本ベル製、BEL−CAT
【0034】
〔実施例1〕
(1)種結晶の合成
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドをOSDAとして用い、アルミン酸ナトリウムをアルミナ源、コロイダルシリカ(LUDOX、HS−40)をシリカ源、水酸化ナトリウムをアルカリ源とする従来公知の方法(非特許文献1)により反応混合物を調製した。この反応混合物を3日間室温で熟成した後、23ccのステンレス製密閉容器に入れて100℃で7日間、静置加熱を行ってゼオライトオメガ(MAZ型ゼオライト)の結晶を合成した。このゼオライトオメガを電気炉中で空気を流通しながら550℃で20時間焼成して、有機物を含まないゼオライトオメガの結晶を製造した。この結晶を走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒子径は0.85μmであった。組成分析の結果、SiO
2/Al
2O
3比は6.8であった。焼成した後のゼオライトオメガのX線回折図を
図1に示す。この有機物を含まないゼオライトオメガの結晶を、以下に述べる実施例及び比較例において、種結晶として使用した。この種結晶をNH
4+イオンに交換し、焼成することによってH
+型とした後、液体窒素温度において窒素吸脱着等温線(
図4)を測定した。この等温線から細孔特性を評価した結果、ミクロ孔表面積:236m
2/g、ミクロ孔容積:0.093cc/gであった。また、このH
+型試料のアンモニアTPDの脱離曲線(
図5(a))から求めた固体酸量は0.93mmol/gであった。
【0035】
(2)MAZ型ゼオライトの合成
純水6.751gに、アルミン酸ナトリウム0.157gと50%水酸化カリウム0.490g及び36%水酸化ナトリウム溶液1.309gを溶解して水溶液を得た。この水溶液に粉末状シリカ(Cab−O−Sil、M5)1.316gを添加して均一に混合して表1に記載した組成のゲルを得た。この反応混合物を23ccのステンレス製密閉容器に入れて、撹拌することなしに140℃で5時間予備加熱した。その後、密閉容器を急冷した後、有機物を含まないゼオライトオメガの種結晶0.263gを反応混合物に添加して均一に混合した。次に密閉容器を再度140℃で24時間、自生圧力下で静置加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末を得た。この生成物のX線回折測定の結果、この生成物は
図2に示すように不純物を含まないMAZ型ゼオライトであることが確認された。
【0036】
〔実施例2ないし10〕
表1に示す条件を採用した以外は実施例1と同様にしてMAZ型ゼオライトを得た。ただし、表1に示すとおり、MAZ型ゼオライトに加えて副生成物としてゼオライトTの生成が観察される場合があった。MAZ型ゼオライトのみが生成した実施例3について測定したX線回折図を
図3に示す。実施例3で得られた結晶をNH
4+イオンに交換し、焼成することによってH
+型とした後、液体窒素温度において窒素吸脱着等温線(
図4)を測定した。この等温線から細孔特性を評価した結果、ミクロ孔表面積:392m
2/g、ミクロ孔容積:0.15cc/gであった。またこのH
+型試料のアンモニアTPDの脱離曲線(
図5(b))から求めた固体酸量は1.14mmol/gであった。
【0037】
この結果から、細孔特性及び固体酸特性の評価において、実施例3で得られたMAZ型ゼオライトは、実施例1で種結晶として使用したゼオライトオメガ(MAZ型ゼオライト)よりも優れていることが判る。
【0038】
〔比較例1〕
純水7.407gに、アルミン酸ナトリウム0.220gと50%水酸化カリウム0.312g及び36%水酸化ナトリウム溶液0.710gを溶解して水溶液を得た。この水溶液に粉末状シリカ(Cab−O−Sil、M5)1.352gと有機物を含まないゼオライトオメガの種結晶0.268gを添加して均一に混合して、表2に示す組成のゲルを得た。この反応混合物を23ccのステンレス製密閉容器に入れて、撹拌することなしに140℃で48時間、自生圧力下で静置加熱した。密閉容器を冷却後、生成物をろ過、温水洗浄して白色粉末を得た。この生成物のX線回折測定の結果、この生成物はモルデナイトであった。
【0039】
〔比較例2ないし4〕
表2に示す条件を採用した以外は比較例1と同様の操作を行った。比較例2及び3では、生成物が確認されたが、その同定はできなかった。比較例4ではアモルファス物質の生成が確認された。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1と表2との対比から明らかなとおり、特定のMAZ型ゼオライトを種結晶として用い、これを特定の組成を有する反応混合物に添加して結晶化を行うことで、MAZ型ゼオライトが得られることが判る。反応混合物における(Na
2O+K
2O)/SiO
2の値が低い場合(比較例1)にはモルデナイトが生成してしまい、またSiO
2/Al
2O
3の値が低い場合(比較例2及び3)には、同定不能な物質が生成してしまった。更に、アルカリ源としてナトリウムのみを用い、カリウムを用いない場合(比較例4)には、アモルファス物質が生成してしまう。