特許第6108468号(P6108468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6108468高屈折率クラッド材料及び電気光学ポリマー光導波路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108468
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】高屈折率クラッド材料及び電気光学ポリマー光導波路
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/061 20060101AFI20170327BHJP
   C08G 16/02 20060101ALI20170327BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   G02F1/061 501
   C08G16/02
   G02B6/12 371
   G02B6/12 363
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-529017(P2013-529017)
(86)(22)【出願日】2012年8月13日
(86)【国際出願番号】JP2012070627
(87)【国際公開番号】WO2013024840
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-177559(P2011-177559)
(32)【優先日】2011年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】横山 士吉
(72)【発明者】
【氏名】山本 和広
(72)【発明者】
【氏名】安井 圭
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大土井 啓祐
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−255566(JP,A)
【文献】 特開平06−118461(JP,A)
【文献】 特開2010−066325(JP,A)
【文献】 特開2010−139994(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/065395(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/061−1/065
G02F 1/361
G02B 6/12−6/14
C08G 16/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物とを含有し、
前記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物が、式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、光導波路のクラッド材料。
【化1】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、
式(2)中、Zは下記式(9)で表される一価の有機基を表し、Zは水素原子を表し、
式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)
【化2】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化3】
(式中、R53〜R57は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R78は水素原子を表す。)を表す。)
【請求項2】
前記非線形光学化合物が、トリシアノ結合フラン環を有する化合物である、請求項1に記載のクラッド材料。
【請求項3】
前記トリシアノ結合フラン環を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項2に記載のクラッド材料。
【化4】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、Arは下記式(Ar−a)又は式(Ar−b)で表される二価の有機基を
表す。)
【化5】
(式中、R〜R14はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。)
【請求項4】
前記繰り返し単位が式(13)で表される、請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載のクラッド材料。
【化6】
(式中、Z及びZは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項5】
コアと、その外周全体を取り囲む前記コアよりも屈折率の小さいクラッドからなる光導波路であって、前記クラッドが請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のクラッド材料より形成されてなる、光導波路。
【請求項6】
前記コアが、式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含む、請求項に記載の光導波路。
【化7】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、Arは下記式(Ar−a)又は式(Ar−b)で表される二価の有機基を表す。)
【化8】
(式中、R〜R14はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。)
【請求項7】
コアと、前記コアの周囲を取り囲み前記コアより屈折率の小さいクラッドとを有する請求項に記載の光導波路の製造方法であって、
下部クラッドを請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて形成する工程、
前記下部クラッド上に請求項に記載の式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
前記コア上に請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程を含み、
上部クラッドを形成する工程の前及び/又は後に、前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程を含む、
該光導波路を製造する方法。
【請求項8】
コアと、前記コアの周囲を取り囲み前記コアより屈折率の小さいクラッドとを有する請求項に記載の光導波路の製造方法であって、
下部クラッドを請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて形成する工程、
前記下部クラッド上に、紫外線に対し感光性を有するレジスト層を形成し、前記レジスト層の表面に、フォトマスクを介して紫外光を照射・現像して、コアのマスクパターンを形成し、該マスクパターンをマスクとして前記下部クラッドにコアパターンを転写し、レジスト層を除去する工程、
下部クラッド上に請求項に記載の式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
前記コア上に請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程を含み、
上部クラッドを形成する工程の前及び/又は後に、前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程を含む、
リッジ型光導波路を製造する方法。
【請求項9】
前記分極配向処理が、電極による電界印加処理であることを特徴とする、請求項又は請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。
【化9】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、
式(2)中、Zは式(9)で表される一価の有機基を表し、Zは水素原子を表し、
式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)
【化10】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化11】
(式中、R5357は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R78は水素原子を表す。)を表す。)
【請求項11】
前記繰り返し単位が式(13)で表される、請求項10に記載の高分子化合物。
【化12】
(式中、Z及びZは、前記と同じ意味を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチ、光変調などの光情報処理、光通信などに用いられる有機非線形光学化合物を含む光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光変調器、光スイッチなどのデバイスは、非線形光学効果、中でも電界によって屈折率が変化する電気光学効果を利用したものである。従来、この効果を示す非線形光学材料として、ニオブ酸リチウム、リン酸二水素カリウム等の無機材料が広く用いられてきたが、より高度な非線形光学性能及び製造コスト低減等の要求を満たすため、有機非線形光学材料が注目を集め、その実用化に向けた検討が活発化してきている。
【0003】
特に従来の無機材料に比べ極めて高い電気光学特性を有する高分子材料の開発は、超高速変調デバイスの実現や低消費電力デバイス技術に向けた期待が高まっている。これらの高分子材料は、有機非線形光学化合物を高分子マトリクスに均一に分散、あるいは高分子側鎖に結合させ、化合物分子を配向させて電気光学特性を発現させる。非線形光学化合物はπ共役鎖の一方に電子供与性、他方に電子吸引性のプッシュ・プル型の化合物が用いられる。
【0004】
その手法としては、配向膜を表面に有する基板上に高分子材料を塗布し、配向膜の基板配向性を利用する方法、あるいは、ガラス転移温度付近又はそれ以上に加熱した状態の高分子材料を、一対の電極又は空気のコロナ放電による電圧印加によって配向させる電界ポーリング法などが知られている。このうち、電界ポーリング法は、装置の簡便さ、非線形光学化合物の配向度合いの高さの観点から好ましい。
【0005】
非線形光学材料を光伝搬型デバイスで用いる際に必要な光導波路は、非線形光学化合物を含む高分子コア部と、その上下或いは周囲に、コア部よりも屈折率の低いクラッド部が形成された積層構造として形成される。コア部に含まれる非線形光学化合物の非線形性能が高くなればなるほど、コア部の電気抵抗率は低くなる傾向にある。これにより、クラッド部はコア部よりも相対的に電気抵抗率が高くなりやすく、この結果、コア部に効率的な電圧印可ができず、十分な電気光学特性が発現できない。
【0006】
この問題を解決するため、特許文献1には、クラッド材料にアルキルアンモニウム基を有する高分子化合物を添加することにより、クラッド部の抵抗値を低下させ、ポーリング効率を向上させる方法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3477863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述に提案された方法では、依然として十分な配向特性が得られていなかった。また、電気光学素子製造に適するべく製造工程が簡便であり、しかも素子の消費電力低減化に寄与する大きな電気光学特性が得られ、薄膜化・積層化が可能である高分子クラッド材料、並びにそれを用いた光導波路の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、これまでコア部のみに含まれていた非線形光学化合物をクラッド部にも配合することにより、クラッドの抵抗値をコア部の抵抗値に比べて極めて低くすることができることを見出し、本発明を完成させた。
特に本発明は、主たる対象として、以下の[I]光導波路のクラッド材料及び[II]高分子化合物に係る発明を対象とする。
[I]
トリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物とを含有し、
前記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物が、式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、光導波路のクラッド材料。
【化29】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、
式(2)中、Zは下記式(9)で表される一価の有機基を表し、Zは水素原子を表し、
式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)
【化30】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化31】
(式中、R53〜R57は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、O
77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R78は水素原子を表す。)を表す。)[II]
式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。
【化32】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、
式(2)中、Zは式(9)で表される一価の有機基を表し、Zは水素原子を表し、
式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)
【化33】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化34】
(式中、R53〜R57は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表し、R78は水素原子を表す。)を表す。)
【0010】
すなわち本発明は、第1観点として、トリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物とを含有することを特徴とする、光導波路のクラッド材料に関する。
第2観点として、前記非線形光学化合物が、トリシアノ結合フラン環を有する化合物である、第1観点に記載のクラッド材料に関する。
第3観点として、前記トリシアノ結合フラン環を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である、第2観点に記載のクラッド材料に関する。
【化1】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、Arは下記式(Ar−a)又は式(Ar−b)で表される二価の有機基を表す。)
【化2】
(式中、R〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。)
第4観点として、前記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物が、式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する、第1観点に記載のクラッド材料に関する。
【化3】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、式(2)中、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は下記式(9)〜(12)で表される何れかの一価の有機基を表し(ただし、Z及びZが同時に前記アルキル基となることはない。)、式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化4】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化5】
(式中、R53〜R76は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、フェニル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77及びR78は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又はフェニル基を表す。)を表す。)
第5観点として、前記繰り返し単位が式(13)で表される、第4観点に記載のクラッド材料に関する。
【化6】
(式中、Z及びZは、前記と同じ意味を表す。)
第6観点として、前記Zが、前記式(9)で表される一価の有機基であり、前記Zが水素原子である、第5観点に記載のクラッド材料に関する。
第7観点として、コアと、その外周全体を取り囲む前記コアよりも屈折率の小さいクラッドからなる光導波路であって、前記クラッドが第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載のクラッド材料より形成されてなる、光導波路に関する。
第8観点として、前記コアが、式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含む、第7観点に記載の光導波路に関する。
【化7】
(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基、又はハロゲン原子を表し、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、Arは下記式(Ar−a)又は式(Ar−b)で表される二価の有機基を表す。)
【化8】
(式中、R〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。)
第9観点として、コアと、前記コアの周囲を取り囲み前記コアより屈折率の小さいクラッドとを有する第8観点に記載の光導波路の製造方法であって、
下部クラッドを第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて形成する工程、
前記下部クラッド上に第8観点に記載の式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
前記コア上に第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程を含み、
上部クラッドを形成する工程の前及び/又は後に、前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程を含む、
該光導波路を製造する方法に関する。
第10観点として、コアと、前記コアの周囲を取り囲み前記コアより屈折率の小さいクラッドとを有する第8観点に記載の光導波路の製造方法であって、
下部クラッドを第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて形成する工程、
前記下部クラッド上に、紫外線に対し感光性を有するレジスト層を形成し、前記レジスト層の表面に、フォトマスクを介して紫外光を照射・現像して、コアのマスクパターンを形成し、該マスクパターンをマスクとして前記下部クラッドにコアパターンを転写し、レジスト層を除去する工程、
下部クラッド上に第8観点に記載の式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
前記コア上に第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載のクラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程を含み、
上部クラッドを形成する工程の前及び/又は後に、前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程を含む、
リッジ型光導波路を製造する方法に関する。
第11観点として、前記分極配向処理が、電極による電界印加処理であることを特徴とする、第9観点又は第10観点に記載の製造方法に関する。
第12観点として、式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に関する。
【化9】
(式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、下記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表し、式(2)中、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は下記式(9)〜(12)で表される何れかの一価の有機基を表し(ただし、Z及びZが同時に前記アルキル基となることはない。)、式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)
【化10】
(式中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)
【化11】
(式中、R53〜R76は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57、R58〜R64、R65〜R67、又はR68〜R76が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77及びR78は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R77及びR78が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)を表す。)
第13観点として、前記繰り返し単位が式(13)で表される、第12観点に記載の高分子化合物に関する。
【化12】
(式中、Z及びZは、前記と同じ意味を表す。)
第14観点として、前記Zが、前記式(9)で表される一価の有機基であり、前記Zが水素原子である、第13観点に記載の高分子化合物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクラッド材料は、非常に低い抵抗率を有することから、光導波路のクラッドとして用いることにより、コア部への簡便かつ効率的な電場印加が可能な光導波路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例において製造したリッジ型光導波路の作製プロセスを示す工程図を示す図である。
図2図2は、実施例において製造したリッジ型光導波路形状の概念図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、トリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物とを含有することを特徴とする、光導波路のクラッド材料を対象とする。また本発明は前記クラッド材料を用いて作製した光導波路、並びに該光導波路を製造する方法を対象とする。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0014】
[クラッド材料]
<トリアリールアミン構造を含む高分子化合物>
本発明において用いられる、トリアリールアミン構造を含む高分子化合物は特に限定されるものではないが、好ましくはトリアリールアミン骨格を分岐点として含有する下記式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物である。
【0015】
【化13】
【0016】
上記式(2)及び式(3)において、Ar〜Arは、それぞれ独立して、式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基を表す。
【0017】
【化14】
【0018】
上記式(4)〜(8)中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
ここで炭素原子数1〜5のアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜5のアルコキシ基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
上記Ar〜Arは、中でも式(4)で表される置換又は非置換のフェニレン基が好ましく、特にR19〜R22が全て水素原子を表すところのフェニレン基が好ましい。
【0020】
上記式(2)において、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は下記式(9)〜(12)で表される何れか一価の有機基を表す。ただし、Z及びZが同時に前記アルキル基となることはない。
ここで炭素原子数1〜5のアルキル基としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
【0021】
【化15】
【0022】
上記式(9)〜(12)中、R53〜R76は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、フェニル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基を表す。これらの式中、R77及びR78は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又はフェニル基を表す。
ここで炭素原子数1〜5のアルキル基としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシプロパン−2−イル基、2−ヒドロキシシクロプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、1−ヒドロキシシクロペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜5のハロアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基、3−ブロモ−2−メチルプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロシクロプロピル基、4−ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
【0023】
上記Z及びZは、それぞれ独立して水素原子、2−チエニル基、3−チエニル基、又は式(9)で表される置換又は非置換のフェニル基が好ましく、特に、Z及びZの何れか一方が水素原子で、他方が水素原子、2−チエニル基、3−チエニル基、又は式(9)で表される置換又は非置換のフェニル基、特にR53〜R57の何れか1つがヒドロキシアルコキシ基のヒドロキシアルコキシフェニル基がより好ましい。
【0024】
上記式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
ここで炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、及びハロゲン原子としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基としては、前記R53〜R76にて挙げたものと同じものが挙げられる。
【0025】
本発明において、上記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物は、中でも下記式(14)で表される4つの構造のうちの少なくとも1つの繰り返し単位を有することが望ましい。
【化16】
【0026】
なお、上記式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、すなわち好ましくは上記式(13)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、並びに上記式(14)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを有する高分子化合物も、本発明の対象である。
具体的には、本発明の対象とする高分子化合物は、前記式(2)又は式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であって、該高分子化合物は、式(2)及び式(3)中、Ar〜Arは、それぞれ独立して、前記式(4)〜(8)で表される何れかの二価の有機基(式(4)〜(8)中、R19〜R52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。)を表し;式(2)中、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、又は前記式(9)〜(12)で表される何れかの一価の有機基(式(9)〜(12)中、R53〜R76は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R53〜R57、R58〜R64、R65〜R67、又はR68〜R76が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基、OR77、COR77、COOR77、又はNR7778基(これらの式中、R77及びR78は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R77及びR78が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。)を表す。)を表し(ただし、Z及びZが同時に前記アルキル基となることはない。);式(3)中、R15〜R18は、それぞれ独立して、水素原子(ただし、R15〜R18が同時に水素原子となることはない。)、又は炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基を表すものである。
ここで、各基の具体例は前述したものが挙げられる。
【0027】
本発明に用いる上記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物の平均分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000〜2,000,000であることが好ましい。当該高分子化合物の重量平均分子量が1,000以上であると、クラッド材として用いる際、薄膜を形成したときの膜質をより均一にすることができ、2,000,000以下であると、溶媒に対する溶解性が著しく低下せずに、取り扱いが容易となる。重量平均分子量はより好ましくは2,000〜1,000,000である。
尚、本発明における重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0028】
<トリアリールアミン構造を含む高分子化合物の製造>
上記高分子化合物は、トリアリールアミン化合物と、アルデヒド化合物とを、酸性条件下で重縮合することによって得られる。
【0029】
上記トリアリールアミン構造を含む高分子化合物の製造に用いられるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、3−メチル−2−ブテナール、ヘキシルアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類;チオフェンアルデヒド等のヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ヒドロキシメチルベンズアルデヒド、トリフルオロメチルベンズアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、アセチルベンズアルデヒド、ホルミル安息香酸、ホルミル安息香酸メチル、アミノベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントリルアルデヒド等の芳香族アルデヒド類などが挙げられる。
【0030】
また、上記高分子化合物の製造時に用いられる酸触媒としては、硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類;p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物等の有機スルホン酸類;ギ酸、シュウ酸等のカルボン酸類などを用いることができる。
酸触媒の使用量は、その種類によって種々選択されるが、通常、トリアリールアミン化合物100質量部に対して、0.001〜10,000質量部、好ましくは、0.01〜1,000質量部、より好ましくは、0.1〜100質量部である。
【0031】
上記の縮合反応は、無溶媒でも行えるが、通常溶媒を用いて行われる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができ、たとえば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;イソブチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられる。これら溶媒は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。特に、環状エーテル類が好ましい。
【0032】
縮合時の反応温度は通常40〜200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分間から50時間程度である。
以上のようにして得られる高分子化合物の重量平均分子量は、前述のとおり、通常1,000〜2,000,000、好ましくは2,000〜1,000,000である。
【0033】
<非線形光学化合物>
本発明に用いられる非線形光学化合物は、π共役鎖の一方の端に電子供与性基、他方の端に電子吸引性基を有するπ共役系化合物であり、分子超分極率βの大きいものが望ましい。電子供与性基としてはジアルキルアミノ基、電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、フルオロアルキル基を挙げることができる。
中でも、本発明において用いられる非線形光学化合物としては、トリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物が挙げられ、具体的には下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
【化17】
【0035】
上記式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。
ここで炭素原子数1〜10のアルキル基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、1−アダマンチル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
炭素原子数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記置換基としては、アミノ基;ヒドロキシ基;メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基等のシリルオキシ基;ハロゲン原子などが挙げられる。
【0036】
上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜10のアリールオキシ基、炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基、又はハロゲン原子を表す。
ここで炭素原子数1〜10のアルキル基としては、前記と同じものが挙げられる。
炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネトキシ基等が挙げられる。
炭素原子数2〜11のアルキルカルボニルオキシ基としては、分岐構造、環状構造を有していても良く、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、シクロプロパンカルボニルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、2−メチルブタノイルオキシ基、3−メチルブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、3,3−ジメチルブタノイルオキシ基、シクロペンタンカルボニルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、シクロヘキサンカルボニルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、1−アダマンタンカルボニルオキシ基、フェニルアセトキシ基、3−フェニルプロパノイルオキシ基等が挙げられる。
炭素原子数6〜10のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフタレン−2−イルオキシ基、フラン−3−イルオキシ基、チオフェン−2−イルオキシ基等が挙げられる。
炭素原子数7〜11のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、フラン−2−カルボニルオキシ基、チオフェン−3−カルボニルオキシ基等が挙げられる。
炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はフェニル基を有するシリルオキシ基としては、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基等のシリルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
【0037】
上記式(1)中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のハロアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。
ここで炭素原子数1〜5のアルキル基としては、前記R19〜R52にて挙げたものと同じものが挙げられる。
炭素原子数1〜5のハロアルキル基としては、前記R53〜R76にて挙げたものと同じものが挙げられる。
炭素原子数6〜10のアリール基としては、前記R、Rにて挙げたものと同じものが挙げられる。
またR、Rの具体的な組合せとしては、メチル基−メチル基、メチル基−トリフルオロメチル基、トリフルオロメチル基−フェニル基が好ましい。
【0038】
上記式(1)中、Arは下記式(Ar−a)又は式(Ar−b)で表される二価の有機基を表す。
【0039】
【化18】
【0040】
上記式中、R〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良い炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基を表す。
なお、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、並びに置換基の具体例は上記に例示したものが挙げられる。
【0041】
本発明に用いられる非線形光学化合物に該当する化合物として、発達したπ共役鎖と非常に強い電子吸引性基であるトリシアノヘテロ環構造を持ち、極めて強い分子超分極率βを有する非線形光学化合物として、以下のような化合物が報告されている(非特許文献1:Chem.Mater.2001,13,3043−3050)。
【化19】
【0042】
さらに、上記構造において電子供与性基であるジアルキルアニリノ部位を種々の構造に変換することによって、分子超分極率βを更に大きくすることが出来る(非特許文献2:J.Polym.Sci.Part A.2011,Vol.49,p47)。
【化20】
【0043】
<配合割合>
本発明のクラッド材料において、トリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物との配合割合は、後述のコアの抵抗値よりも低い抵抗値となるように適宜調整されるが、通常、高分子化合物100質量部に対して、非線形光学化合物の配合量は0.1〜50質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。
【0044】
<その他配合可能な成分>
本発明のクラッド材料には、光導波路のクラッド材料としての性能に影響を及ばさない範囲において、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定化剤等を配合することができる。
【0045】
架橋剤としては、汎用のものを使用することができるが、イソシアネート類(ブロックイソシアネートを含む)を用いることが好ましい。
汎用のイソシアネート類としては、例えば、コロネート(登録商標)2507、同2513、同APステープル(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)、タケネート(登録商標)B−882N、同B−830、同B−815N、同B−842N、同B−846N、同B−870N、同B−874N(以上、三井化学(株)製)、バーノック(登録商標)D−500、同D−550、同B3−867(以上、DIC(株)製)、デュラネート(登録商標)MF−B60X、同MF−K60X(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、エラストロン(登録商標)BN−P17、同BN−04、同BN−08、同BN−44、同BN−45(以上、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
これら架橋剤は、単独で用いても、2種以上を組合わせて用いても良い。
【0046】
[光導波路]
本発明の光導波路は、コアと、その外周全体を取り囲む前記コアよりも屈折率の小さいクラッドからなる光導波路であって、前記クラッドが前述のトリアリールアミン構造を含む高分子化合物と非線形光学化合物とを含有するクラッド材料より形成されてなることを特徴とするものである。
【0047】
<コア>
本発明の光導波路において、コアは、形成したクラッドの屈折率よりも大きな屈折率を有する材料で形成されていれば良い。
例えばコアは、二次の非線形光学効果を示す有機非線形光学化合物が、高分子マトリクス中に分散した形態で含まれてなるか、或いは高分子化合物の側鎖に結合した形態で含むものであることが好ましい。
上記有機非線形光学化合物としては、例えば前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物であることが好ましい。
【0048】
前記非線形光学化合物を高分子マトリクス中に分散させる場合、該非線形光学化合物をマトリクス中に高濃度で且つ均一に分散させる必要があることから、高分子マトリクスとしては該非線形光学化合物と高い相溶性を示すことが好ましい。また、光導波路のコアとして用いられることからみて、優れた透明性と成形性を持つことが好ましい。
こうした高分子マトリクス材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等の樹脂が挙げられる。
高分子マトリクス中に分散させる手法としては、非線形光学化合物とマトリクス材料を適切な比率で有機溶媒等に溶解させ、基板上に塗布・乾燥して薄膜を形成する方法が挙げられる。
【0049】
また、高分子化合物の側鎖に非線形光学化合物を結合させる場合には、高分子化合物の側鎖に、非線形光学化合物との間に共有結合を形成できる官能基を有している必要があり、こうした官能基としては、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ハロゲン化アリル基、ハロゲン化アシル基等が挙げられる。
これらの官能基は、上記前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物のヒドロキシ基等と共有結合を形成することが出来る。
なお、高分子化合物の側鎖に非線形光学化合物を結合させる場合、非線形光学化合物の含有量を調整するために、コアは、前述の高分子マトリクスの単位構造と、非線形高分子化合物を結合させた高分子化合物の単位構造とがいわば共重合してなる形態にあって良い。
【0050】
上記コアにおける非線形光学化合物の配合割合は、電気光学特性を大きくする必要から適宜調整されるが、通常、高分子化合物100質量部に対して、非線形光学化合物の配合量は1〜1,000質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0051】
[光導波路の製造方法]
本発明の光導波路は、
下部クラッドを前述のクラッド材料を用いて形成する工程、
前記下部クラッド上に前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
前記コア上に前述のクラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程を含み、
上部クラッドを形成する工程の前及び/又は後に、前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程を含みて、製造される。
【0052】
より具体的には、例えばリッジ型の光導波路を製造する場合、下記工程を経て製造される。またスラブ型の光導波路を製造する場合には、工程(2)を経ずに、工程(1)に続いて工程(3)が実施される。
(1)下部クラッドを前記クラッド材料を用いて形成する工程、
(2)前記下部クラッド上に、紫外線に対し感光性を有するレジスト層を形成し、前記レジスト層の表面に、フォトマスクを介して紫外光を照射・現像して、コアパターンを形成し、該コアパターンをマスクとして前記下部クラッドにコアパターンを転写し、レジスト層を除去する工程、
(3)下部クラッド上に前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する工程、及び、
(4)前記コア上に前記クラッド材料を用いて上部クラッドを形成する工程。
そして、(4)工程の前及び/又は後に、下記(5)工程を含む。
(5)前記コアに含まれる非線形光学化合物又はその誘導体を分極配向処理する工程。
以下、光導波路の製造方法について、詳述する。
【0053】
<(1)下部クラッドを形成する工程>
まず前記クラッド材料を用いて、下部クラッドとなる薄膜を形成する。
具体的には、前述のクラッド材料を適宜有機溶媒に溶解又は分散させてワニス(膜形成材料)の形態とし、これをスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凸版、平板、スクリーン印刷等)等の塗布方法を用いて適当な基板上に塗布・乾燥する方法が挙げられる。上記塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
溶媒の乾燥法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させれば良い。これにより、均一な成膜面を有する薄膜を得ることが可能である。乾燥温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。
【0054】
ここで膜形成材料に用いる有機溶媒としては、クラッド材料を溶解・分散させることができる溶媒であれば特に限定されない。
このような有機溶媒の具体例としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジブロモメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、ブチルメチルケトン、ジアセトンアルコール、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチルブタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−メチルペンタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等のグリコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても、2種以上を組合わせて用いても良い。
【0055】
また、下部クラッドを形成する基板としては、特に限定されないが、平坦性の優れたものが好ましい。例えば、金属基板、シリコン基板、透明基板等が挙げられ、光導波路の形態によって適宜選択可能である。金属基板の好ましい例としては、金、銀、銅、白金、アルミ、クロム等が挙げられ、透明基板の好ましい例としては、ガラスやプラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)等の基板が挙げられる。
【0056】
また、基板と下部クラッドの間に下部電極を配する場合、電極には公知の電極を用いることができる。下部電極としては金属蒸着層や透明電極層であって良い。蒸着する金属の好ましい例としては、金、銀、銅、白金、アルミ、クロム等が挙げられる。また、透明電極層の好ましい例としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)、アンチモンドープスズ酸化物等が挙げられる。
【0057】
<(2)コアパターンを転写する工程>
次に、下部クラッド上に、紫外線に対し感光性を有するレジスト層を形成し、前記レジスト層の表面に、フォトマスクを介して紫外光を照射・現像するフォトリソグラフィー法によって、コアのマスクパターンを形成する。
ここでレジスト層としては、上記フォトリソグラフィー法によって微小パターンが感光・現像できる材料で、該工程で使用する溶媒が前記下部クラッドを溶出しない材料であれば特に限定されないが、ポジ型又はネガ型のフォトレジスト材料が好ましい。パターン形成の光源には、水銀ランプ、KrFレーザ、ArFレーザ等が用いられる。
次に、レジスト層のコアのマスクパターンをマスクとして、ガスを用いたドライエッチングをすることにより、下部クラッドにコアパターンを転写する。このドライエッチングには、レジストと下部クラッドのエッチング特性から適宜選択されるガス種、通常、CHF、O、Ar、CF等を用いた反応性イオンエッチングが好ましく用いられる。
ドライエッチング後、マスクに用いたレジスト層を溶媒により除去する。
【0058】
<(3)コアを形成する工程>
次に、コアパターンを形成した下部クラッド上に、前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物又はその誘導体を含むコアを形成する。
具体的には、前述の<コア>において説明したように、前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物と高分子マトリクス材料を、適切な比率で適当な有機溶媒に溶解させてワニスの形態とし、基板上に塗布・乾燥して薄膜を形成する方法、或いは、上記前記式(1)で表されるトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物の誘導体を側鎖に有する高分子化合物を適当な有機溶媒に溶解させてワニスの形態とし、基板上に塗布・乾燥して薄膜を形成する方法が挙げられる。
上記ワニスの塗布方法や乾燥条件、有機溶媒は前述の<(1)下部クラッドを形成する工程>で挙げたものを使用可能である。
なお、コア形成時に下部クラッドを溶出させないように、有機溶媒は下部クラッドを溶解しないものを選択する。
【0059】
<(4)上部クラッドを形成する工程>
そして前記クラッド材料を用いて、<(1)下部クラッドを形成する工程>と同様に上部クラッドとなる薄膜を形成する。
【0060】
<(5)分極配向処理する工程>
上部クラッドを形成する前及び/又は後に、コアに含まれる非線形光学化合物に対して電界を印加する電界ポーリング法によって、分極配向処理を行う。分極配向処理は、コアのガラス転移温度付近又はそれ以上の温度において行われ、電界印加によって非線形光学化合物の分極を電界印加方向に配向させ、温度を常温に戻した後もその配向を保持することによって、コア及び光導波路に電気光学特性を付与することができる。
電界印加には、積層構造上下に配した電極間への直流電圧印加方法や、コア表面へのコロナ放電を利用した方法が用いられるが、配向処理の簡便さや均一性から、電極による電界印加処理が好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0062】
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 KF−804L + KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:RI
(2)H NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
内部標準:テトラメチルシラン
(3)示差走査熱量計
装置:NETZSCH製 DSC 204F1 Phoenix(登録商標)
昇温速度:30℃/分
測定温度:25〜300℃
(4)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(5)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 ND−2
(6)屈折率
装置:ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
(7)抵抗率
電源装置:(株)エヌエフ回路設計ブロック製 HSA4052
測定装置:(株)エーディーシー製 8340A型デジタル超高抵抗/微小電流計
【0063】
[実施例1]トリアリールアミン構造を有する高分子化合物(1)の合成
窒素雰囲気にて100mL反応フラスコにトリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]8.52g(34.7mmol)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]11.54g(69.5mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]1.32g(6.95mmol)を仕込み、1,4−ジオキサン20gを加えて溶解させた。85℃に昇温し、撹拌を行って重合を開始した。5時間30分間反応を行った後、溶液を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン60g、28質量%アンモニア水溶液4.72g(77.7mmol)を加えて撹拌を行った。この反応液をメタノール500gに滴下して再沈殿を行った。析出した淡黄色固体を真空乾燥したのち、テトラヒドロフラン67gに溶解し、28質量%アンモニア水溶液4.72g、メタノール450g、及びイオン交換水50gの混合液に滴下して再沈殿を行った。得られた無色固体を乾燥して、下記[A]の繰り返し単位を有する高分子化合物(1)6.88gを得た。この高分子化合物(1)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは32,800、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は3.70であった。
【化21】
【0064】
[実施例2]トリアリールアミン構造を有する高分子化合物(2)の合成
窒素雰囲気にて100mL反応フラスコにトリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]10.0g(40.8mmol)、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]13.6g(81.5mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.78g(4.08mmol)を仕込み、1,4−ジオキサン24gを加えて溶解させた。85℃に昇温し、撹拌を行って重合を開始した。3時間30分間反応を行った後、溶液を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン70g、28質量%アンモニア水溶液9.90g(163mmol)を加えて撹拌を行った。この反応液をメタノール510gに滴下して再沈殿を行った。析出した淡黄色固体を真空乾燥したのち、テトラヒドロフラン60gに溶解し、28質量%アンモニア水溶液9.90g、メタノール450g、及びイオン交換水50gの混合液に滴下して再沈殿を行った。得られた無色固体を乾燥して、下記[B]の繰り返し単位を有する高分子化合物(2)7.90gを得た。この高分子化合物(2)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、分散度:Mw/Mnは2.54であった。
【化22】
【0065】
[実施例3]トリアリールアミン構造を有する高分子化合物(3)の合成
窒素雰囲気にて100mL反応フラスコにジフェニルメチルアミン[東京化成工業(株)製]3.00g(16.4mmol)、トリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]2.01g(8.19mmol)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]8.16g(49.11mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.47g(2.46mmol)を仕込み、1,4−ジオキサン13gを加えて溶解させた。85℃に昇温し、撹拌を行って重合を開始した。3時間30分間反応を行った後、溶液を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン63g、28質量%アンモニア水溶液1.49g(24.5mmol)を加えて撹拌を行った。この反応液をメタノール400gに滴下して再沈殿を行った。析出した淡黄色固体を真空乾燥したのち、テトラヒドロフラン63gに溶解し、28質量%アンモニア水溶液1.49g、メタノール400g、及びイオン交換水100gの混合液に滴下して再沈殿を行った。得られた無色固体を乾燥して、下記[C]の2種の繰り返し単位を有する高分子化合物(3)5.58gを得た。この高分子化合物(3)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは12,600、分散度:Mw/Mnは2.10であった。
【化23】
【0066】
[実施例4]トリアリールアミン構造を有する高分子化合物(4)の合成
窒素雰囲気にて100mL反応フラスコにジフェニルメチルアミン[東京化成工業(株)製]9.00g(49.1mmol)、トリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]6.02g(24.6mmol)、3−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]24.5g(147mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]1.40g(7.37mmol)を仕込み、1,4−ジオキサン39.5gを加えて溶解させた。85℃に昇温し、撹拌を行って重合を開始した。70分間反応を行った後、溶液を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン120g、28質量%アンモニア水溶液8.95g(147mmol)を加えて撹拌を行った。この反応液をメタノール560gに滴下して再沈殿を行った。析出した淡黄色固体を真空乾燥したのち、テトラヒドロフラン220gに溶解し、28質量%アンモニア水溶液8.95g、メタノール400g、及びイオン交換水200gの混合液に滴下して再沈殿を行った。得られた無色固体を乾燥して、下記[D]の2種の繰り返し単位を有する高分子化合物(4)17.6gを得た。この高分子化合物(4)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは28,000、分散度:Mw/Mnは4.14であった。
【化24】
【0067】
[比較合成例1]トリアリールアミン構造を持たない高分子化合物(5)の合成
還流塔を付した300mLの反応フラスコに、ビニルナフタレン[新日鐵化学(株)製]37.0g(0.240mol)、メタクリル酸グリシジル[東京化成工業(株)製]8.53g(0.060mol)を入れ、ジメチルアセトアミド68gを加えて溶解させた。これに2,2’−アゾビスイソ絡酸ジメチル[和光純薬工業(株)製]1.11g(4.80 mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。70℃にて8時間撹拌を行い、室温まで放冷した。反応溶液にテトラヒドロフラン43gを加えて希釈し、この溶液をメタノール930gに滴下して再沈殿を行い、得られた淡黄色固体を濾過により回収した。これをテトラヒドロフラン140gに再度溶解し、メタノール900gに滴下して再沈殿を行った。得られた淡黄色固体を40℃にて6時間真空乾燥して、下記[E]の2種の繰り返し単位を有する高分子化合物(5)23.4gを得た。この高分子化合物(5)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは22,400、分散度:Mw/Mnは3.18であった。
【化25】
【0068】
[比較合成例2]トリアリールアミン構造を有し架橋部位を持たない高分子化合物(6)の合成
窒素雰囲気にて50mL反応フラスコにジフェニルメチルアミン[東京化成工業(株)製]2.00g(10.9mmol)、トリフェニルアミン[東京化成工業(株)製]1.34g(5.46mmol)、ベンズアルデヒド[東京化成工業(株)製]3.47g(32.7mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物[純正化学(株)製]0.31g(1.64mmol)を仕込み、1,4−ジオキサン7gを加えて溶解させた。85℃に昇温し、撹拌を行って重合を開始した。3時間反応を行った後、溶液を室温まで冷却し、テトラヒドロフラン60g、28質量%アンモニア水溶液2.98g(49.2mmol)を加えて撹拌を行った。この反応液をメタノール440gに滴下して再沈殿を行った。析出した淡黄色固体を真空乾燥したのち、THF60gに溶解し、28質量%アンモニア水溶液2.98g、メタノール400g、及びイオン交換水100gの混合液に滴下して再沈殿を行った。得られた無色固体を乾燥して、下記[F]の2種の繰り返し単位を有する高分子化合物(6)2.96gを得た。この高分子化合物(6)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは63,000、分散度:Mw/Mnは9.34であった。
【化26】
【0069】
[合成例1]非線形光学化合物の合成
トリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物として、下記[G]に示す化合物を用いた。本化合物は、X.Zhangら、Tetrahedron.lett.,51,p5823(2010)に開示される方法に準じて合成した。
【化27】
【0070】
<トリアリールアミン構造を有する高分子化合物の耐クラック性>
[実施例5]
実施例1で得られた高分子化合物(1)を、20質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解し、高分子化合物(1)に対して10質量%となるように2,4−トリレンジイソシアネート[東京化成工業(株)製]を加えた。スピンコート法によりガラス基板に成膜し、150℃で10分間熱処理を行い硬化させた。得られた膜の膜厚は2.39μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックのない均一な膜が得られたことが確認された。
【0071】
[実施例6]
実施例2で得られた高分子化合物(2)を、20質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解し、高分子化合物(2)に対して10質量%となるように2,4−トリレンジイソシアネート[東京化成工業(株)製]を加えた。スピンコート法によりガラス基板に成膜し、150℃で10分間熱処理を行い硬化させた。得られた膜の膜厚は3.00μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックのない均一な膜が得られたことが確認された。
【0072】
[実施例7]
実施例3で得られた高分子化合物(3)を、20質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解させた。この溶液をガラス基板上にスピンコート法により成膜し、150℃で10分間乾燥した。得られた膜の膜厚は2.51μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックのない均一な膜が得られたことが確認された。
【0073】
[実施例8]
実施例4で得られた高分子化合物(4)を、20質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解させた。この溶液をガラス基板上にスピンコート法により成膜し、150℃で10分間乾燥した。得られた膜の膜厚は2.28μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックのない均一な膜が得られたことが確認された。
【0074】
[比較例1]
比較合成例1で得られた高分子化合物(5)を、30質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させた。この溶液をガラス基板上にスピンコート法により成膜し、150℃で10分間乾燥した。得られた膜の膜厚は4.81μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックの発生が確認された。
【0075】
[比較例2]
比較合成例2で得られた高分子化合物(6)を、20質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解させた。この溶液をガラス基板上にスピンコート法により成膜し、150℃で10分間乾燥した。得られた膜の膜厚は2.37μmであった。顕微鏡観察を行ったところ、クラックの発生が確認された。
【0076】
<トリアリールアミン構造を有する高分子化合物の屈折率測定>
高分子化合物(1)〜(6)を10質量%となるようにシクロヘキサノンに溶解させた。この溶液をシリコン基板上にスピンコート法により成膜し、150℃で10分間乾燥した。得られた膜の633nmにおける屈折率を、分光エリプソメトリーにより測定した。得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
<クラッド材料の抵抗値の測定>
[実施例9]
実施例1で得られたトリアリールアミン構造を有する高分子化合物(1)0.51g及びブロックイソシアネート[旭化成ケミカルズ(株)製、デュラネート(登録商標)MF−K60X]0.06gをシクロペンタノン2.4gに溶解させた溶液に、合成例1で合成した非線形光学化合物0.03gを混合して撹拌した。この溶液を孔径0.20μmのフィルタで濾過後、ITOガラス基板(膜厚150nm、表面抵抗10Ω/□:三谷真空工業(株)製)上にスピンコートした。その後150℃のホットプレートで30分間加熱し、乾燥及び架橋を行った。得られた硬化膜の膜厚は1.7μmであった。この上に金をスパッタリング法により100nmの厚さで上部電極として成膜し、抵抗値測定用サンプル(1)とした。
【0079】
[比較例3]
非線形光学化合物を配合しなかった以外は実施例9と同様に操作し、抵抗値測定用サンプル(2)を併せて作製した。得られた硬化膜の膜厚は1.7μmであった。
【0080】
上記各抵抗値測定用サンプルをヒーター上に設置し、20℃及び130℃において120Vの電圧を印加し電流値を測定することで抵抗率を算出した。得られた結果を表2に示す。
表2に示すように、非線形光学化合物の添加により20℃及び130℃双方で抵抗率が大きく低下した。
【0081】
【表2】
【0082】
<電気光学定数の測定>
クラッドの抵抗率の低下によるコアの電界配向処理への効果確認のため、クラッド上に電気光学特性を有するコアを積層して電界配向処理を施し、電気光学定数の測定を行った。
【0083】
[合成例2]コア材料の合成
コアには、高分子化合物側鎖にトリシアノ結合フラン環を有する非線形光学化合物が結合した、下記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマーを用いた。本ポリマーは、X.Piaoら、J.Polym.Sci.A,49,p47(2011)に開示される方法に準じて合成した。得られたポリマーのUV−Visスペクトルから求めたポリマー中の非線形光学化合物(下記[H]中のR部分)の割合は、40質量%であった。
【化28】
【0084】
なお、上記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマーで形成したコアの抵抗率を、前記<クラッド材料の抵抗値の測定>に倣って測定したところ、3.5×1011[Ω・m](20℃、100V)、2.7×10[Ω・m](130℃、100V)であった。すなわち、実施例9に示したクラッドの抵抗率よりも、該コアの抵抗率が高くなり、電界配向処理時にコアへの電圧印可が効率的に行えることが期待される。
【0085】
[実施例10]クラッド/コア積層膜の作製
実施例1で得られたトリアリールアミン構造を有する高分子化合物(1)0.51g及びブロックイソシアネート[旭化成ケミカルズ(株)製、デュラネート(登録商標)MF−K60X]0.06gをシクロペンタノン2.4gに溶解させた溶液に、合成例1で合成した非線形光学化合物0.03gを混合して撹拌した。この溶液を孔径0.20μmのフィルタで濾過後、ITOガラス基板にスピンコートした。その後150℃のホットプレートで30分間加熱し、乾燥及び架橋を行い、クラッドとした。
この上に、合成例2で得られた上記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマー0.45gを、シクロペンタノン2.6gに溶解させた溶液をスピンコートし、減圧下、80℃で6時間乾燥させ、コアを作製した。
さらにコア上に、金をスパッタリング法により100nmの厚さで上部電極として成膜した。
【0086】
このクラッド/コア積層膜における電気光学定数を、波長1.31μmの半導体レーザを光源として、C.C.Tengら、Appl.Phys.Lett.56,p1734(1990)及びY.Shutoら、J.Appl.Phys.77,p4632(1995)に記載の手法に準じて測定した。具体的には、ヒーター上に試料を設置し、コアのガラス転移温度付近である130℃まで加熱した後、電極間に電圧を300Vまで印加し電界配向処理を行いながら、電気光学定数を測定した。電気光学定数が最大値を示した段階で温度を室温(およそ25℃)にまで降温させた後、電圧印加を解除し、測定値が安定した段階をもって、この試料の電気光学定数とした。得られた結果を表3に示す。
【0087】
表中のr1はクラッド/コア積層構造で得られた実測での電気光学定数であり、r2は非線形光学化合物とトリアリールアミン構造を有する高分子化合物(1)を含むクラッドの厚みを考慮して、上記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマーで形成されたコアに変調電圧がすべて印加されているとして算出した電気光学定数である。
今回用いた上記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマーは、単体で100pm/Vの電気光学定数を示すため、表3に示す結果(r2=94pm/V)より、非線形光学化合物を導入したクラッドを用いることにより、積層構造においてもコアに効率的に電圧が印加されていることがわかる。
【0088】
【表3】
【0089】
<リッジ型光導波路の作製>
図1に示す作製プロセスによりリッジ型光導波路素子を作製した。
まずシリコン基板1上に5nmのクロム層、ひきつづき100nmの金層を真空蒸着により成膜し下部電極2とした(図1:(a))。
下部電極2上に、前記<電気光学定数の測定>にてクラッドの形成に用いた材料を用いて下部クラッド3を形成した。すなわち、実施例1で得られたトリアリールアミン構造を有する高分子化合物(1)0.51g及びブロックイソシアネート[旭化成ケミカルズ(株)製、デュラネート(登録商標)MF−K60X]0.06gをシクロペンタノン2.4gに溶解させた溶液に、合成例1で合成した非線形光学化合物0.03gを混合して撹拌し、この溶液を孔径0.20μmのフィルタで濾過後、下部電極2上にスピンコートした。その後150℃のホットプレートで30分間加熱し、乾燥及び架橋を行い、下部クラッド3を作製した(図1:(a))。
クラッド3の上にフォトレジスト4[日本ゼオン(株)製、ZPN1150−90]を成膜し(図1:(b))、4μm幅の直線状マスクを通し露光、現像することでリッジ型導波路パターンを形成した(図1:(c))。
このレジストパターンをマスクとして、CHFガスによる反応性イオンエッチングにより、下部クラッド3にパターンを転写した。このときのリッジ(図中、Hで表示)の高さは500nm程度とした(図1:(d))。
フォトレジストをフォトレジスト溶媒(アセトン/エタノール混合溶媒)にて除去後(図1:(e))、この上部に前記<電気光学定数の測定>にてコアの形成に用いた材料を用いてコア5を形成した。すなわち、合成例2で得られた上記[H]に示す繰り返し単位を有するポリマー0.45gをシクロペンタノン2.6gに溶解させた溶液をスピンコートし、減圧下、80℃で6時間乾燥させ、コア5を作製した(図1:(f))。
さらに、下部クラッド3と同じ材料、手法にて、コア5上に上部クラッド6を形成した(図1:(g))。
そして、上部クラッド6上に金を真空蒸着し、上部電極7として形成した(図1:(h))。
最後にシリコン基板を結晶面にそってへき開することで光入出射端面とし、リッジ型光導波路とした。
【0090】
作製した光導波路8(コア/クラッド)の形状を図2に示す。なお図2においては、下部電極2及び上部電極7を省略した。
図2中、D1、D2、D3はそれぞれ下部クラッドの厚さ、コアの厚さ、上部クラッドの厚さを示し、Hはリッジ部の高さ、Wは導波路幅を示す。
【符号の説明】
【0091】
1・・・基板
2・・・下部電極
3・・・下部クラッド
4・・・フォトレジスト
5・・・コア
6・・・上部クラッド
7・・・上部電極
8・・・光導波路
D1・・・下部クラッドの厚さ
D2・・・コアの厚さ
D3・・・上部クラッドの厚さ
H・・・リッジ部の高さ
W・・・導波路幅
図1
図2