特許第6108734号(P6108734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6108734-電子部品素子収納用パッケージ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6108734
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】電子部品素子収納用パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20170327BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01L23/02 C
   H01L23/08 C
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-203887(P2012-203887)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60239(P2014-60239A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】西川 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】日高 明弘
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−126847(JP,A)
【文献】 特開平09−139439(JP,A)
【文献】 特開平06−037196(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/093456(WO,A1)
【文献】 特開平11−126837(JP,A)
【文献】 特開2003−110037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54
H01L 23/00−23/04
H01L 23/06−23/10
H01L 23/16−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のセラミック基体と、該セラミック基体の外周縁を含む上面外周部にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、該環状メタライズ膜上面に部分的に突出する前記高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、該突起状メタライズ膜を含む前記環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、該Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、前記AgCuろうで覆われる部分の前記Niめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、前記AgCuろうの前記セラミック基体の外周縁からの引き下がり幅aと、前記セラミック基体の外周側上面と前記環状金属枠体の外周側壁面との間に形成される前記AgCuろうメニスカスの前記セラミック基体上面のろう流れ幅bとの間の前記ろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなることを特徴とする電子部品素子収納用パッケージ。
【請求項2】
平板状のセラミック基体と、該セラミック基体の上面外周部に積層する窓枠状のセラミック枠体と、該セラミック枠体の外周縁を含む上面全面にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、該環状メタライズ膜上面に部分的に突出する前記高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、該突起状メタライズ膜を含む前記環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、該Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、前記AgCuろうで覆われる部分の前記Niめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、前記AgCuろうの前記セラミック枠体の外周縁からの引き下がり幅aと、前記セラミック枠体の外周側上面と前記環状金属枠体の外周側壁面との間に形成される前記AgCuろうメニスカスの前記セラミック枠体上面のろう流れ幅bとの間の前記ろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなることを特徴とする電子部品素子収納用パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビティ部に半導体素子や、圧電振動片等の電子部品素子を搭載し、金属製蓋体を接合して電子部品素子を中空状態で気密に封止して収納するための電子部品素子収納用パッケージであって、より詳細には、複数の個片体が平面的に縦横方向に隣接して多数個配列する母基板から分割溝で分割されてなる電子部品素子収納用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品素子収納用パッケージは、電子部品素子を搭載させた装置、例えば、携帯電話や、パソコン等の小型化、高信頼性化等の要求に伴い、ますます軽薄短小化、高信頼性化等への対応が求められている。これに対応するために、電子部品素子収納用パッケージには、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック製からなるセラミック基体を用いている。そして、電子部品素子収納用パッケージは、セラミック基体の上面外周部に設けるタングステン(W)や、モリブデン(Mo)等の高融点金属からなる環状メタライズ膜の表面にNiめっき被膜を形成した後、間にAgCuろう材を介して加熱してろう付け接合する環状金属枠体を設けている。あるいは、電子部品素子収納用パッケージには、セラミック基体と、このセラミック基体と同じセラミック製からなるセラミック枠体との接合体を用いている。そして、電子部品素子収納用パッケージは、セラミック枠体の上面に設ける環状メタライズ膜の表面にNiめっき被膜を形成した後、間にAgCuろう材を介して加熱してろう付け接合する環状金属枠体を設けている。この環状金属枠体は、通常、下面にAgCuろう材がクラッドされており、この面を、表面にNiめっき被膜が施された環状メタライズ膜の上面に当接させ加熱してろう付け接合されるようになっている。これによって、環状金属枠体は、下面がNiめっき被膜の施された環状メタライズ膜の上面に接合されると共に、環状メタライズ膜の上面と環状金属枠体の壁面との間にAgCuろうメニスカスを形成して接合されるようになっている。また、Niめっき被膜は、AgCuろう材との濡れ性に優れ、環状メタライズ膜上に濡れ広がって環状金属枠体を接合させるために、通常、0.3μm以上の厚みが施されている。
【0003】
上記の電子部品素子収納用パッケージは、セラミック基体の上面と、環状金属枠体の内周側壁面、又はセラミック基体の上面と、セラミック枠体及び環状金属枠体の内周側壁面で形成されるキャビティ部に、電子部品素子が搭載された後、環状金属枠体の上面にシーム溶接で金属製蓋体を接合させる小型化であっても気密信頼性の高いパッケージとして用いている。このような電子部品素子収納用パッケージは、安価にすることが求められているので、従来から、個片体の電子部品素子収納用パッケージが縦横方向に隣接して配列するようにして母基板内に多数個を形成して作業の合理化を図っている。そして、母基板には、通常、焼成前の複数枚の大型のセラミックグリーンシートの積層体に多数個の個片体が縦横方向に配列する押圧溝を押圧刃で押圧して設け、焼成した後に個片体に分割できる分割溝とし、この分割溝で分割することでそれぞれが所定の大きさの安価な個片体の電子部品素子収納用パッケージになるようにしている。なお、上記のNiめっき被膜上に環状金属枠体をAgCuろう付けさせ、分割溝で分割する前の母基板には、外気中に露出する金属部分の酸化を防止するために、この金属部分に第2のNiめっき被膜と、更に第2のNiめっき被膜の上面にAuめっき被膜を形成している。
【0004】
上記の電子部品素子収納用パッケージは、母基板に縦、横方向に分割溝を挟んで隣接して配列するように形成されるので、分割溝で確実に分割されて個片体にすることが必要となっている。また、上記の電子部品素子収納用パッケージは、小型化によって、金属製蓋体をシーム溶接させて電子部品素子を中空状態で気密に封止のに必要な環状金属枠体を接合させるための環状メタライズ膜のシールパス幅が狭くなるので、個片体の外形となる分割溝からの環状メタライズ膜の引き下がり部分を設けることが難しくなっている。そこで、母基板には、隣接する焼成前の個片体の間の位置に、セラミックグリーンシートの積層体に設けられた環状メタライズ印刷膜の上面から押圧刃で押圧させて押圧溝を設け、焼成して、Niめっき被膜を形成した後に個片体に分割できるようにした分割溝を設けている。
【0005】
しかしながら、上記の従来の電子部品素子収納用パッケージは、環状金属枠体を0.3μm以上の厚みのあるNiめっき被膜を施した環状メタライズ膜に接合させるためのAgCuろう材の濡れ性がよく、環状メタライズ膜の端部まで延設してAgCuろうメニスカスを形成するので、接合時の熱応力で環状メタライズ膜の端部がセラミック基体や、セラミック枠体から剥離するという問題が発生し、電子部品素子を収納するパッケージとしての気密信頼性の低下をきたしている。
【0006】
そこで、熱応力での環状メタライズ膜の剥離を防止できるとして、従来の電子部品素子収納用パッケージには、絶縁基体の表面に設けた環状メタライズ膜に環状金属枠体をろう付けするとともに環状金属枠体に金属製蓋体を取着し、内部に電子部品素子を気密に収容するようになした電子部品素子収納用パッケージであって、環状金属枠体をろう付けするろう材の環状メタライズ膜に対する被着厚みが環状メタライズ膜の外周端からその内側0.3mmの範囲において30.0μm以下としたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、熱応力での環状メタライズ膜の剥離を防止できるとして、従来の電子部品素子収納用パッケージには、上面外周部に枠部を有するセラミック基板と、枠部上面に被着された枠状の環状メタライズ膜と、環状メタライズ膜にろう付けされた環状金属枠体と、環状金属枠体に溶接される金属製蓋体とからなり、内部に電子部品素子を気密に収容する電子部品素子収納用パッケージであって、環状メタライズ膜の外周辺より少なくとも30μmの幅の領域にろう材の非接触領域を形成したものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、上記のような電子部品素子収納用パッケージは、環状メタライズ膜の面積を大きくして環状メタライズ膜の外周端から所定の幅のろう材の被着厚みを薄くしたり、ろう材の非接触領域を形成したりするので、パッケージの外形寸法が大きくなり、パッケージの小型化に対応できなくなっている。また、ろう材の非接触領域を形成する電子部品素子収納用パッケージは、非接触領域の形成がカーボンインク、アルミナ粉末ペースト等の塗布でのろう材付着防止や、ろう材剥離液での付着したろう材除去によって行われるので、小型化したパッケージには、非常に難しい手間の掛かる作業が必要となり、電子部品素子収納用パッケージ自体のコストアップとなっている。
【0008】
そこで、熱応力での環状メタライズ膜の剥離を防止できると共に、小型化に対応できるとして、従来の電子部品素子収納用パッケージには、複数のセラミック層を積層してなり、上面に電子部品素子を収容するための凹部及びこの凹部を取り囲む略四角枠状の環状メタライズ膜を有する絶縁基体の環状メタライズ膜に略四角枠状の環状金属枠体をろう付けしてなる電子部品素子収納用パッケージであって、絶縁基体はその上面から外周側面にかけて曲率半径が略5〜50μmの丸み部を有しており、環状メタライズ膜はその外周縁が少なくとも丸み部の途中まで延在しているものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−160284号公報
【特許文献2】特開平11−126847号公報
【特許文献3】特開2002−299520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したような従来の電子部品素子収納用パッケージには、次のような問題がある。
【0011】
従来の複数の個片体が平面的に縦横方向に隣接して多数個配列する母基板から分割溝で分割されてなる電子部品素子収納用パッケージは、環状金属枠体を0.3μm以上の厚みのあるNiめっき被膜を施した環状メタライズ膜に接合させるためのAgCuろう材の濡れ性がよく、AgCuろう材が環状メタライズ膜の端部まで延設して分割溝部にろう材ブリッジを形成し、分割溝での正常な分割が困難となって、分割後のそれぞれの個片体にカケや、バリや、クラック等を発生させ、電子部品素子を収納して金属製蓋体で気密封止する電子部品素子収納用パッケージが極めて気密信頼性の低いものとなっている。
【0012】
また、従来の電子部品素子収納用パッケージは、これを実装する装置の小型化によって、環状メタライズ膜のシールパス幅が狭くなっている上に、環状メタライズ膜の上面と、環状金属枠体の下面とが平面同士であるので、その間のろう材溜まりを確保することができなく、環状金属枠体の接合強度が低いと共に、環状金属枠体に金属製蓋体を直接接合させるときの熱応力を吸収させるためのろう材溜まりがなく、環状メタライズ膜のセラミックからの剥離を防止することができなく、電子部品素子を収納して金属製蓋体で気密封止する電子部品素子収納用パッケージが極めて気密信頼性の低いものとなっている。
【0013】
更に、近年の電子部品素子収納用パッケージは、これを実装する装置の小型化に加え、装置の薄型化によって、電子部品素子収納用パッケージの薄型化が求められていることから、分割溝の深さが浅くなっており、環状金属枠体を0.3μm以上の厚みのあるNiめっき被膜を施した環状メタライズ膜に接合させるためのAgCuろう材の濡れ広がりで、容易に分割溝部にろう材ブリッジを形成し、分割溝での正常な分割が困難となって、分割後のそれぞれの個片体にカケや、バリや、クラック等を発生させ、極めて気密信頼性の低い電子部品素子収納用パッケージとなっている。
【0014】
特開2002−299520号公報で開示されるような電子部品素子収納用パッケージは、複数の個片体が平面的に縦横方向に隣接して多数個配列する母基板のそれぞれの個片体を区分する分割溝の丸み部に環状金属枠体接合時の溶融したAgCuろう材が流れ込み、分割溝を塞ぐようにしてろう材ブリッジを形成することとなり、分割溝での正常な分割が困難となって、分割後のそれぞれの個片体にカケや、バリや、クラック等を発生させ、電子部品素子を収納して金属製蓋体で気密封止する電子部品素子収納用パッケージが極めて気密信頼性の低いものとなっている。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、複数の個片体が平面的に縦横方向に隣接して多数個配列する母基板から分割溝で分割されてなる個片体に欠けや、バリの発生を防止すると共に、環状金属枠体の接合強度が高く、小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的に沿う本発明に係る電子部品素子収納用パッケージは、平板状のセラミック基体と、セラミック基体の外周縁を含む上面外周部にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、環状メタライズ膜上面に部分的に突出する高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、AgCuろうのセラミック基体の外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック基体の外周側上面と環状金属枠体の外周側壁面との間に形成されるAgCuろうメニスカスのセラミック基体上面のろう流れ幅bとの間のろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなる。
【0017】
前記目的に沿う本発明に係る他の電子部品素子収納用パッケージは、平板状のセラミック基体と、セラミック基体の上面外周部に積層する窓枠状のセラミック枠体と、セラミック枠体の外周縁を含む上面全面にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、環状メタライズ膜上面に部分的に突出する高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、AgCuろうのセラミック枠体の外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック枠体の外周側上面と環状金属枠体の外周側壁面との間に形成されるAgCuろうメニスカスのセラミック枠体上面のろう流れ幅bとの間のろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなる。
【発明の効果】
【0018】
上記の電子部品素子収納用パッケージは、平板状のセラミック基体と、セラミック基体の外周縁を含む上面外周部にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、環状メタライズ膜上面に部分的に突出する高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、AgCuろうのセラミック基体の外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック基体の外周側上面と環状金属枠体の外周側壁面との間に形成されるAgCuろうメニスカスのセラミック基体上面のろう流れ幅bとの間のろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなるので、厚みが0.3μmを下まわるNiめっき被膜によって、AgCuろうの濡れ性が抑制され、AgCuろうメニスカスの先端であるAgCuろうのセラミック基体の外周縁からの引き下がり幅aが、セラミック基体の外周縁から環状金属枠体の壁面までの距離(a+b)に対して40%以上にでき、複数の個片体が平面的に縦横方向に分割溝を介して隣接して多数個配列する母基板の個片体間の分割溝に形成されるろう材ブリッジを防止して、母基板から分割溝で分割されてなる個片体に欠けや、バリの発生を防止できると共に、Niめっき被膜が施された突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面の突起状メタライズ膜と当接する環状金属枠体との間にろう材溜まりを設けて環状金属枠体を強固に接合できる小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することができる。また、この電子部品素子収納用パッケージは、金属製蓋体をシーム溶接で直接接合させるときの熱応力をろう材溜まりで緩和させ、環状メタライズ膜のセラミック基体からの剥離の発生を回避させることができる小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することができる。
【0019】
上記の他の電子部品素子収納用パッケージは、平板状のセラミック基体と、セラミック基体の上面外周部に積層する窓枠状のセラミック枠体と、セラミック枠体の外周縁を含む上面全面にW、又はMoの高融点金属からなる環状メタライズ膜と、環状メタライズ膜上面に部分的に突出する高融点金属からなる突起状メタライズ膜と、突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面にNiめっき被膜と、Niめっき被膜の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体を有し、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわると共に、AgCuろうのセラミック枠体の外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック枠体の外周側上面と環状金属枠体の外周側壁面との間に形成されるAgCuろうメニスカスのセラミック枠体上面のろう流れ幅bとの間のろう流れ幅bの割合(/a+b)×100が0%以からなるので、厚みが0.3μmを下まわるNiめっき被膜によって、AgCuろうの濡れ性が抑制され、AgCuろうメニスカスの先端であるAgCuろうのセラミック枠体の外周縁からの引き下がり幅aが、セラミック枠体の外周縁から環状金属枠体の壁面までの距離(a+b)に対して40%以上にでき、複数の個片体が平面的に縦横方向に分割溝を介して隣接して多数個配列する母基板の個片体間の分割溝に形成されるろう材ブリッジを防止して、母基板から分割溝で分割されてなる個片体に欠けや、バリの発生を防止できると共に、Niめっき被膜が施された突起状メタライズ膜を含む環状メタライズ膜の上面の突起状メタライズ膜と当接する環状金属枠体との間にろう材溜まりを設けて環状金属枠体を強固に接合できる小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することができる。また、この電子部品素子収納用パッケージは、金属製蓋体をシーム溶接で直接接合させるときの熱応力をろう材溜まりで緩和させ、環状メタライズ膜のセラミック枠体からの剥離の発生を回避させることができる小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することができる。しかも、この電子部品素子収納用パッケージは、セラミック基体と、セラミック枠体の接合体によって、比較的キャビティ部を深くできる小型で気密信頼性に優れる電子部品素子収納用パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る電子部品素子収納用パッケージの断面視する説明図、A部拡大縦断面図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る他の電子部品素子収納用パッケージの断面視する説明図、B部拡大縦断面図である。
図3】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る電子部品素子収納用パッケージ、他の電子部品素子収納用パッケージを形成するための母基板の平面図、A−A’線拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施するための形態について説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る電子部品素子収納用パッケージ10は、気密信頼性の高い平面視して略矩形状の1枚、又は複数枚のセラミック基板からなる平板状のセラミック基体11を有している。このセラミック基体11は、特に、その材料を限定するものではないが、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性や、電気的特性に優れるセラミックを用いている。
【0022】
上記の電子部品素子収納用パッケージ10は、セラミック基体11の外周縁を含む上面外周部に窓枠形状からなる環状メタライズ膜12を有している。この環状メタライズ膜12は、焼成前のセラミック基板であるセラミックグリーンシートにスクリーン印刷で形成した環状メタライズ印刷膜が還元性雰囲気中でセラミックグリーンシートと同時焼成が可能なタングステン(W)、又はモリブデン(Mo)の高融点金属からなっている。
【0023】
また、電子部品素子収納用パッケージ10は、環状メタライズ膜12の幅方向の一部分に上面から突出して長さ方向に延設する突起状メタライズ膜13を有している。この突起状メタライズ膜13は、環状メタライズ膜12を構成するために用いられるメタライズ材料と同じ材料であるタングステン、又はモリブデンの高融点金属を用いている。なお、突起状メタライズ膜13は、特に、その形状を限定するものではなく、平面視して、連続する、あるいは断続する直線状や、蛇行状であってよい。
【0024】
電子部品素子収納用パッケージ10は、突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面にNiめっき被膜14を有している。このNiめっき被膜14は、通常、Niめっき液や、NiCoめっき液からなるめっき浴中で通電する電解めっき法や、突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面を活性化させめっき浴中で通電することなくめっき被膜を形成する無電解めっき法で形成している。
【0025】
更に、電子部品素子収納用パッケージ10は、Niめっき被膜14の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体15を有している。この環状金属枠体15は、セラミックと熱膨張係数が近似するKV(Fe−Ni−Co系合金、商品名「Kover(コバール)」)や、42アロイ(Fe−Ni系合金)等の金属板をエッチング加工や、打ち抜き加工等で窓枠状に形成したものを用いている。そして、環状金属枠体15は、Niめっき被膜14で被覆された突起状メタライズ膜13の頂部に、下面が水平になるように溶融ろう材を介して当接させ、Niめっき被膜14で被覆された環状メタライズ膜12の上面との間に溶融ろう材を固化してできるろう材溜まり16を設けると共に、Niめっき被膜14で被覆された環状メタライズ膜12の上面と外周側壁面との間にAgCuろうメニスカス17を設けて、壁面が略垂直になるようにろう付け接合している。なお、環状金属枠体15は、Niめっき被膜14の上面に載置された箔状のAgCuろう材の上面に載置した後、加熱して接合している。あるいは、環状金属枠体15には、予め、箔状のAgCuろう材をクラッドさせておいて、Niめっき被膜14の上面に載置して加熱して接合することもある。
【0026】
上記の電子部品素子収納用パッケージ10は、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜14の厚みが0.3μmを下まわるようになっている。これと共に、この電子部品素子収納用パッケージ10は、AgCuろうのセラミック基体11の外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック基体11の外周側上面と環状金属枠体15の外周側壁面との間に弓なり形状に形成されるAgCuろうメニスカス17のセラミック基体11上面のろう流れ幅bとの間の引き下がり幅aの割合、即ち(a/a+b)×100が40%以上からなっている。本発明者は、鋭意研究の結果、Niめっき被膜14が施された環状メタライズ膜12上を濡れ広がるAgCuろうのAgCuろうメニスカス17のろう流れ幅bがNiめっき被膜14の厚みによって異なり、Niめっき被膜14の厚みが厚いほど、ろう流れ幅bが大きくなることを見極めた。これに伴い、AgCuろうメニスカス17のセラミック基体11の外周縁からの引き下がり幅aの環状金属枠体15の外周側壁面からセラミック基体11の外周縁までの距離に対する割合は、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜14の厚みを0.3μmを下まわるようにすることで40%以上を確保できることを突き止めた。
【0027】
次いで、図2(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る他の電子部品素子収納用パッケージを説明する。
図2(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る他の電子部品素子収納用パッケージ10aは、気密信頼性の高い平面視して略矩形状の1枚、又は複数枚のセラミック基板からなる平板状のセラミック基体11と、このセラミック基体11の上面外周部に積層する上記のセラミック基体11と同じセラミックからなる窓枠状のセラミック枠体11aを有している。このセラミック基体11及びセラミック枠体11aは、上記の電子部品素子収納用パッケージ10の場合のセラミック基体11と同様に、特に、その材料を限定するものではないが、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性や、電気的特性に優れるセラミックを用いている。
【0028】
電子部品素子収納用パッケージ10aは、セラミック枠体11aの外周縁を含む上面全面に環状メタライズ膜12を有している。この環状メタライズ膜12は、焼成前のセラミック枠体であるセラミックグリーンシートにスクリーン印刷で形成した環状メタライズ印刷膜が還元性雰囲気中でセラミックグリーンシートと同時焼成が可能なタングステン(W)、又はモリブデン(Mo)の高融点金属からなっている。
【0029】
また、電子部品素子収納用パッケージ10aは、電子部品素子収納用パッケージ10と同様に、環状メタライズ膜12の幅方向の一部分に上面から突出して長さ方向に延設する突起状メタライズ膜13を有している。この突起状メタライズ膜13は、環状メタライズ膜12を構成するために用いられるメタライズ材料と同じ材料であるタングステン、又はモリブデンの高融点金属を用いている。なお、突起状メタライズ膜13は、特に、その形状を限定するものではなく、平面視して、連続する、あるいは断続する直線状や、蛇行状であってよい。
【0030】
電子部品素子収納用パッケージ10aは、電子部品素子収納用パッケージ10と同様に、突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面にNiめっき被膜14を有している。このNiめっき被膜14は、通常、Niめっき液や、NiCoめっき液からなるめっき浴中で通電してめっき被膜を形成する電解めっき法や、めっき浴中で通電することなくめっき被膜を形成する無電解めっき法で形成している。
【0031】
更に、電子部品素子収納用パッケージ10aは、電子部品素子収納用パッケージ10と同様に、Niめっき被膜14の上面にAgCuろうでろう付け接合される環状金属枠体15を有している。この環状金属枠体15は、セラミックと熱膨張係数が近似するKV(Fe−Ni−Co系合金、商品名「Kover(コバール)」)や、42アロイ(Fe−Ni系合金)等の金属板をエッチング加工や、打ち抜き加工等で窓枠状に形成したものを用いている。そして、環状金属枠体15は、Niめっき被膜14で被覆された突起状メタライズ膜13の頂部に、下面が水平になるように溶融ろう材を介して当接させ、Niめっき被膜14で被覆された環状メタライズ膜12の上面との間に溶融ろう材を固化してできるろう材溜まり16を設けると共に、Niめっき被膜14で被覆された環状メタライズ膜12の上面と外周側壁面との間にAgCuろうメニスカス17を設けて、壁面が略垂直になるようにろう付け接合されている。なお、環状金属枠体15は、Niめっき被膜14の上面に載置された箔状のAgCuろう材の上面に載置した後、加熱して接合している。あるいは、環状金属枠体15には、予め、箔状のAgCuろう材をクラッドさせておいて、Niめっき被膜14の上面に載置して加熱して接合することもある。
【0032】
上記の電子部品素子収納用パッケージ10aは、電子部品素子収納用パッケージ10と同様に、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜14の厚みが0.3μmを下まわるようになっている。これと共に、この電子部品素子収納用パッケージ10aは、AgCuろうのセラミック枠体11aの外周縁からの引き下がり幅aと、セラミック枠体11aの外周側上面と環状金属枠体15の外周側壁面との間に弓なり形状に形成されるAgCuろうメニスカス17のセラミック枠体11a上面のろう流れ幅bとの間の引き下がり幅aの割合、即ち(a/a+b)×100が40%以上からなっている。本発明者は、鋭意研究の結果、Niめっき被膜14が施された環状メタライズ膜12上を濡れ広がるAgCuろうのAgCuろうメニスカス17のろう流れ幅bがNiめっき被膜14の厚みによって異なり、Niめっき被膜14の厚みが厚いほど、ろう流れ幅bが大きくなることを見極めた。これに伴い、AgCuろうメニスカス17のセラミック枠体11aの外周縁からの引き下がり幅aの環状金属枠体15の外周側壁面からセラミック枠体11aの外周縁までの距離に対する割合は、AgCuろうで覆われる部分のNiめっき被膜14の厚みを0.3μmを下まわるようにすることで40%以上を確保できることを突き止めた。
【0033】
なお、上記のこれらの電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、特に、環状メタライズ膜12のメタライズ厚みを限定するものではないが、通常、8〜40μm、好ましくは、10〜30μmとなるようにしている。なお、環状メタライズ膜12のメタライズ厚みは、8μmを下まわる場合には、環状メタライズ膜12をセラミック基体11、又はセラミック枠体11aの焼成前のセラミックグリーンシートに埋め込んで強固に接合させるアンカー効果が小さく、Niめっき被膜14が施された突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面に、ろう付け接合する環状金属枠体15に、金属製蓋体(図示せず)を溶接接合させるときの熱応力で環状メタライズ膜12のセラミック基体11、又はセラミック枠体11aからの剥離が発生するようになる。また、環状メタライズ膜12のメタライズ厚みが40μmを超える場合には、この厚みをスクリーン印刷で確保するのに複数回の重ね刷りが必要となり、パターン精度が低下すると共に、電子部品素子収納用パッケージ10、10aのコストアップとなっている。一方、上記の電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、特に、突起状メタライズ膜13のメタライズ厚みを限定するものではないが、環状メタライズ膜12と同程度の厚みであれば、Niめっき被膜14が施された突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面にAgCuろうで環状金属枠体15を強固にろう付け接合するためのろう材量からなるろう材溜まり16を確保すると共に、金属製蓋体を溶接接合させるときの熱応力をろう材溜まり16で緩和させ、環状メタライズ膜12のセラミック基体11からの剥離の発生を回避させることができる。
【0034】
これらの電子部品素子収納用パッケージ10、10aには、環状金属枠体15をAgCuろう付けした後に、分割溝で分割する前の母基板の外気中に露出する金属部分の酸化を防止するために、この金属部分に第2のNiめっき被膜18と、更に第2のNiめっき被膜18の上面にAuめっき被膜19が施されている。従って、電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、AgCuろうで覆われる部分以外の環状メタライズ膜12上のNiめっきの被膜厚さがNiめっき被膜14の厚みに、第2のNiめっき被膜18の厚みが加算された厚さとなっている。そして、これらの電子部品素子収納用パッケージ10、10aには、セラミック基体11の上面と、環状金属枠体15の内周側壁面、及び/又はセラミック枠体11aの内周側壁面とで形成されるキャビティ部20に、半導体素子や、水晶振動子や、圧電素子等の電子部品素子21が収納されるようになっている。また、これらの電子部品素子収納用パッケージ10、10aには、キャビティ部20に電子部品素子21が実装された後、環状金属枠体15の上面には、KVや、42アロイ等からなる金属製蓋体がシーム溶接や、レーザ溶接等で直接接合されて電子部品素子21がキャビティ部20内に中空状態で気密に封止されるようになっている。
【0035】
電子部品素子21を収納したこれらの電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、それぞれ携帯電話等の小型の電子装置に組み込まれて用いられるので、それぞれの電子部品素子収納用パッケージ10、10aには、平面視して略四角形状のパッケージサイズをできるだけ小型化にすると共に、安価にすることが必要となっている。上記の電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、小型化に対応するために、例えば、環状金属枠体15の内周側壁面とNiめっき被膜14で被覆された環状メタライズ膜12との間に内周側のAgCuろうメニスカスを設けないようにしたり、小さな内周側のAgCuろうメニスカスにしてキャビティ部20のエリアを確保している。また、上記の電子部品素子収納用パッケージ10、10aは、小型化や、安価に対応するために、それぞれの複数の個片体の電子部品素子収納用パッケージ10、10aが平面的に縦横方向に分割溝31(図3(A)〜(C)参照)を介して多数個が隣接して配列する母基板30、30a(図3(A)〜(C)参照)から分割溝31で分割されて一度に多数個が得られるようにしている。
【0036】
ここで、図3(A)〜(C)を参照しながら上記の電子部品素子収納用パッケージ10、10aの母基板30、30aからの製造方法を簡単に説明する。
図3(A)〜(C)に示すように電子部品素子収納用パッケージ10、10aを形成するための母基板30、30aは、これらを形成するためのセラミックグリーンシートのセラミック基材が特に限定されるものではないが、通常、アルミナや、窒化アルミニウム等が用いられている。例えば、セラミック基材にアルミナを用いる場合には、先ず、酸化アルミニウム粉末にマグネシア、シリカ、カルシア等の焼結助剤を適当量加えた粉末に、ジオクチフタレート等の可塑剤と、アクリル樹脂等のバインダー、及びトルエン、キシレン、アルコール類等の溶剤を加え、十分に混練して脱泡し、粘度2000〜40000cpsのスラリーを作製し、ドクターブレード法等によって所望の厚み、例えば、0.25mmのシート状に乾燥させ、所望の大きさの矩形状に切断してセラミックグリーンシートを形成している。そして、これらのセラミックグリーンシートは、図3(B)に示すように、例えば、電子部品素子収納用パッケージ10の場合では、セラミック基体11用の複数枚のセラミックグリーンシートとして用いている。また、これらのセラミックグリーンシートは、図3(C)に示すように、例えば、電子部品素子収納用パッケージ10aの場合では、セラミック基体11用及びセラミック枠体11a用の複数枚のセラミックグリーンシートとしても用いている。
【0037】
次に、セラミック基体11用や、セラミック枠体11a用のそれぞれのセラミックグリーンシートには、上下層の配線導体を電気的に導通させるビアや、スルーホール導体を形成するための、あるいは、このセラミック枠体11a用のそれぞれのセラミックグリーンシートには、キャビティ部20を形成するための貫通孔を打ち抜きプレスや、パンチングマシーン等を用いて形成している。そして、貫通孔が形成されたそれぞれのセラミックグリーンシートには、スクリーン印刷機を用いてタングステンや、モリブデン等からなるメタライズペーストで環状メタライズ膜12用や、種々の配線導体パターン用や、ビアや、スルーホール導体用等の導体印刷パターンを形成している。なお、環状メタライズ膜12用の導体印刷パターンは、隣接する個片体用の環状メタライズ膜12が接するようにして形成されている。また、上記のキャビティ部20用の貫通孔は、環状メタライズ膜12用の導体印刷パターンを形成した後に、打ち抜いて形成する場合がある。
【0038】
次に、全てのセラミックグリーンシートは、所定の位置になるように重ね合わせて上、下方向から温度と、圧力を掛けて接着し、積層体を形成している。次に、この積層体には、環状メタライズ膜12用の導体印刷パターンの上方から15〜50°程度の刃先角度、0.2〜0.8mm程度の刃厚の押圧刃を押し当てて分割溝31用の焼成する前の押圧溝を形成している。この押圧刃によって形成される押圧溝は、隣接する個片体用の環状メタライズ膜12用の導体印刷パターンを切断するようにしてセラミックグリーンシートを押し広げて内部にまで入り込んで形成されることで、それぞれの個片体用の環状メタライズ膜12が電気的に絶縁状態になるようにしている。次に、押圧溝を設けた上記の積層体の環状メタライズ膜12用の導体印刷パターン上面には、幅方向の一部分に、突起状メタライズ膜13用の導体印刷パターンを形成した後、積層体を還元雰囲気中でセラミックと導体を同時焼成して環状メタライズ膜12の上面に突起状メタライズ膜13を有する焼成体を形成している。
【0039】
次に、焼成体の外部に露出する金属部分には、厚みが0.3μmを下まわるNiや、NiCoからなるNiめっき被膜14を形成している。そして、Niめっき被膜14で被覆された突起状メタライズ膜13を含む環状メタライズ膜12の上面には、KVや、42アロイ等の窓枠状金属板からなる環状金属枠体15をAgCuろう等でろう付け接合している。このろう付け接合では、表面にNiめっき被膜14の形成された突起状メタライズ膜13によって、環状金属枠体15の下面が当接すると共に、環状金属枠体15の下面と、表面にNiめっき被膜14の形成された環状メタライズ膜12の上面との間にろう材溜まり16が形成されている。また、このろう付け接合では、厚みが0.3μmを下まわるNiめっき被膜14によって、分割溝31からの引き下がり幅aの割合が分割溝31から環状金属枠体15の外周側壁面までの距離a+bに対して40%以上になるようにAgCuメニスカス17が形成されている。なお、このろう付け接合は、複数の個片体が平面的に縦横方向に分割溝31を介して隣接して多数個配列する母基板30、30aの個片体間の分割溝31に形成されるろう材ブリッジを防止して、母基板30、30aから分割溝31で分割されてなる個片体に欠けや、バリの発生を防止することができる。
【0040】
そして、最後に、環状金属枠体15が接合された焼成体の外部に露出する金属部分には、第2のNiめっき被膜18、及び第2のNiめっき被膜18の上面にAuめっき被膜19を形成し、母基板30、30aを形成している。そして、母基板30、30aは、分割溝31が設けられた分割位置で分割することで、欠けや、バリの発生を防止して気密信頼性が高く、小型化で、安価な複数の個片体の電子部品素子収納用パッケージ10、10aが得られるようになっている。また、母基板30、30aは、分割溝31が設けられた分割位置で分割した個片体に金属製蓋体を接合する時の熱応力が、上記の環状金属枠体15のろう付け接合に形成されるろう材溜まり16によって緩和でき、環状金属枠体15の環状メタライズ膜12への接合信頼性を向上させることができると共に、環状メタライズ膜12のセラミックへの接合信頼性を向上させることができるようになっている。
【実施例】
【0041】
本発明者は、それぞれの個片体の電子部品素子収納用パッケージの外形サイズを2.5mm×2.0mm、環状金属枠体の外形サイズを2.36mm×1.86mmとし、a+bが70μmにできて、小型化に対応できる個片体を配列する母基板で、それぞれの個片体の環状メタライズ膜に施すNiめっき被膜の厚みを0.1μm、0.3μm、0.5μmとする各サンプル10pcを準備した。そして、それぞれの厚みのNiめっき被膜を施した環状メタライズ膜に環状金属枠体をAgCuろう付けし、パッケージ外周縁、すなわち、分割溝からの引き下がり幅aの割合を測定すると共に、分割溝でのAgCuろうブリッジの発生率を測定した。それぞれの結果を表1、表2に示す。
【0042】
【表1】

【表2】
【0043】
表1に示すように、分割溝からの引き下がり幅aの割合、(a/a+b)×100は、Niめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわる場合に40%以上からなることが確認できた。また、表2に示すように、分割溝でのAgCuろうブリッジの発生率は、Niめっき被膜の厚みが0.3μmを下まわる場合に無くなることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の電子部品素子収納用パッケージは、半導体素子や、水晶振動子や、圧電素子等の電子部品を実装させて、小型で、高信頼性が要求される、例えば、携帯電話や、ノートブック型のパソコン等の電子装置に組み込まれて用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10、10a:電子部品素子収納用パッケージ、11:セラミック基体、11a:セラミック枠体、12:環状メタライズ膜、13:突起状メタライズ膜、14:Niめっき被膜、15:環状金属枠体、16:ろう材溜まり、17:AgCuろうメニスカス、18:第2のNiめっき被膜、19:Auめっき被膜、20:キャビティ部、21:電子部品素子、30、30a:母基板、31:分割溝
図1
図2
図3