(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸と前記出力軸との間を連結し、前記回転軸から前記出力軸に伝達されるトルクが所定値を超えるときに前記出力軸と前記出力軸との間を相対的に変位させる連結部を備える
請求項15に記載の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るエンコーダ装置(エンコーダ)60の構成を示す断面図である。
図2は、エンコーダ装置60の外観を示す斜視図である。
図3は、エンコーダ装置60の外観を示す分解斜視図である。
【0016】
図1〜
図3に示すように、エンコーダ装置60は、第一エンコーダ61及び第二エンコーダ62を備えている。エンコーダ装置60は、駆動軸(回転軸)42及び出力軸27の回転情報を個別に検出可能である。
【0017】
図1及び
図3に示すように、駆動軸42は、円筒状に形成されており、中空部42aを有している。駆動軸42は、駆動部41に接続されている。駆動軸42は、駆動部41の駆動力により、この駆動軸42の中心軸となる軸線Cの周りに回転する。中空部42aには、軸受66(ベアリング部)の外輪が挿入されている。駆動軸42は、この駆動装置によって回転可能である。
【0018】
出力軸27は、円筒状に形成されている。出力軸27は、不図示の動力伝達機構を介して駆動軸42に連結されており、駆動軸42の回転の少なくとも一部を出力する。出力軸27は、駆動軸42の中空部42aを貫通して設けられている。出力軸27は、軸受66の内輪に挿入されている。出力軸27は、この軸受66により、駆動軸42と共通の軸線Cの周りに回転するように配置されると共に、駆動軸42に対して独立して回転可能である。出力軸27は、先端(図中上側の端部)27aが駆動軸42から突出している。
【0019】
第一エンコーダ61は、駆動軸42の回転位置を示す第一位置情報を検出する。第一エンコーダ61は、第一ディスク611(第一回転部)と、第一基板612と、この第一基板612に設置された発受光素子613及び磁気検出素子614と、磁石615(磁場発生部)とを備えている。第一エンコーダ61は、検出した位置情報を第一位置情報として出力する。
【0020】
第一ディスク611は、ネジ部68及び固定部材63を介して駆動軸42に固定されており、駆動軸42と一体的に回転する。第一ディスク611は、例えば駆動軸42における20ビットの分解能の絶対位置情報(回転位置情報)を得るための光反射パターン631(第一パターン)がこの第一ディスク611の回転方向に沿って形成されている。
【0021】
発受光素子613は、上述した第一ディスク611の光反射パターン631に対して光を照射すると共に、光反射パターン631において反射した光を読み取って第一位置検出信号を出力する。
【0022】
磁石615は、第一ディスク611に固定されている。磁石615は、例えばリング状に形成されている。磁石615は、第一ディスク611の回転方向に沿って駆動軸42の多回転量を検出するための磁気パターン632を形成する。
【0023】
磁気検出素子614は、第一基板612の検出面612aのうち磁石615に対応する位置に配置されている。磁気検出素子614は、磁石615から発生される磁場を読み取って多回転検出信号を出力する。
【0024】
第一ディスク611の−Z軸側の面には、バックヨーク616が配置されている。バックヨーク616は、例えば、軟磁性体を用いて形成されている。バックヨーク616は、駆動部41から第一エンコーダ61側へ作用する磁気のうち少なくとも一部を減衰させ、磁石615の磁気特性を安定させる。
【0025】
第一基板612は、第一ディスク611に向けられた検出面612aを有する。検出面612aには、発受光素子613及び磁気検出素子614が設けられている。第一基板612の中央部には、貫通孔612fが形成されている。貫通孔612fは、出力軸27を+Z軸方向(駆動部41とは反対側)へ貫通させる。第一基板612は、第一フレーム部材691に支持されている。第一フレーム部材691は、駆動部41の非回転面41aに支持されている。なお、非回転面41aは、駆動部41の筐体の一部に含まれ、Z軸方向視において円形に形成されている(
図3参照)。
【0026】
第一基板612は、
図3に示すように、円板の外周部に切り欠き部612cを有する。この切り欠き部612cは、例えば円周方向に120°おきに1箇所ずつ、計3箇所に設けられている。このため、第一基板612は、この切り欠き部612cに対して径方向に突出した突出部612dを有している。第一フレーム部材691は、第一基板612の各突出部612dをそれぞれ支持している。
【0027】
第一フレーム部材691は、非回転面41aの円周の形状に沿って湾曲している。各第一フレーム部材691は、第一ディスク611に対向する内面691aが円筒面の一部を構成している。各突出部612dは、ネジなどの固定部材612eにより、第一フレーム部材691と共に駆動部41の非回転面41aに固定されている。
【0028】
また、第二エンコーダ62は、出力軸27の回転位置を示す第二位置情報を検出する。第二エンコーダ62は、第二ディスク621(第二回転部)と、第二基板622と、この第二基板622に設置された発受光素子623とを備えている。
【0029】
第二ディスク621は、出力軸27のうち第一基板612から+Z軸方向に突出した部分に、スリーブ64を介して固定されている。スリーブ64は、ネジ部67を介してナット65で固定されている。このため、軸受66に与圧がかけられている。第二ディスク621には、例えば、第一ディスク611と同様に、20ビットの分解能の絶対位置情報(回転位置情報)を得るための光反射パターン641(第二パターン)がこの第二ディスク621の回転方向に沿って形成されている。
【0030】
発受光素子623は、上述した第二ディスク621の光反射パターン641を読み取って第二位置検出信号を出力する。このように、本実施形態におけるエンコーダ装置60は、同軸上に2段のディスク(第一ディスク611及び第二ディスク621)を配置する構成となっている。
【0031】
第二基板622は、第二ディスク621に向けられた検出面622aを有する。検出面622aには、発受光素子623が設けられている。第二基板622は、第二フレーム部材692に支持されている。第二フレーム部材692は、駆動部41の非回転面41aに支持されている。
【0032】
図3に示すように、第二フレーム部材692は、第二基板622の外周に沿って形成された円筒部692mと、この円筒部692mから−Z軸方向に突出した突出部692nとを有する。円筒部692mは、第二ディスク621を囲うように設けられている。突出部692nは、第一フレーム部材691の間に挿入され、非回転面41aの周縁部に支持される。第二基板622は、ネジなどの固定部材622eにより、第二フレーム部材692の円筒部692m及び突出部692nを貫通するように駆動部41の非回転面41aに固定されている。
【0033】
図2に示すように、突出部692nが第一フレーム部材691の間に挿入された場合、第一フレーム部材691と突出部692nとの間が隙間無く接触するようになっている。円筒部692m及び突出部692nを含めた第二フレーム部材692は、内面692aが同一の円筒面となっている。
【0034】
図1及び
図3に示すように、駆動部41の非回転面41aには、不図示の接着剤などを介して位置基準部600が固定されている。位置基準部600は、リング状に形成されており、外周面600aが円筒面となっている。位置基準部600は、外周面600aの中心が軸線Cに一致するように配置されている。
【0035】
外周面600aには、第一フレーム部材691の内面691aが当接されている。本実施形態では、内面691aの径と外周面600aの径とが同一となっている。このため、内面691aを外周面600aに当接させることにより、第一フレーム部材691と位置基準部600とが位置決めされることとなる。
【0036】
また、外周面600aには、第二フレーム部材692の内面692aが当接されている。本実施形態では、内面692aの径と外周面600aの径とが同一となっている。このため、内面692aを外周面600aに当接させることにより、第二フレーム部材692と位置基準部600とが位置決めされることとなる。
【0037】
以上のように、第一フレーム部材691及び第二フレーム部材692は、同一の外周面600aを兼用することによって位置決めされている。したがって、外周面600aは、第一フレーム部材691と第二フレーム部材692との間で共通の基準位置となっている。
【0038】
また、
図1に示すように、第一基板612の検出面612aには、凹部612b(第一凹部)が設けられている。第一フレーム部材691の+Z軸側の面には、凸部691b(第一凸部)が設けられている。凸部691bは、凹部612bに挿入されている。凸部691bと凹部612bとが係合されることにより、第一基板612と第一フレーム部材691との間が位置決めされている。このように、凸部691b及び凹部612bにより、外周面600aに対する第一基板612の位置を調整する第一調整部651が構成される。第一調整部651は、第一基板612と第一フレーム部材691との間の並行方向へのずれと、回転方向へのずれとをそれぞれ規制可能な構成となっている。このような構成として、例えば凸部691b及び凹部612bの形状に回転方向の規制部を設けても良いし、第一フレーム部材691毎に複数設けられる構成としても良い。
【0039】
同様に、第二基板622の検出面622aには、凹部622b(第二凹部)が設けられている。第二フレーム部材692の+Z軸側の面には、凸部692b(第二凸部)が設けられている。凸部692bは、凹部622bに挿入されている。凸部692bと凹部622bとが係合されることにより、第二基板622と第二フレーム部材692との間が位置決めされている。このように、凸部692b及び凹部622bにより、外周面600aに対する第二基板622の位置を調整する第二調整部652が構成される。第二調整部652は、第一調整部651と動揺に、第二基板622と第二フレーム部材692との間の並行方向へのずれと回転方向へのずれとをそれぞれ規制可能な構成となっている。
【0040】
次に、上記のように構成されたエンコーダ装置60を組み立てる手順を説明する。
【0041】
図4は、エンコーダ装置60の組み立て手順を示すフローチャートである。エンコーダ装置60の組み立ては、
図4のST01〜ST06の工程に沿って行われる。
【0042】
まず、駆動部41の非回転面41aに位置決め部材を配置する(ST01)。この工程では、
図5に示すように、径方向の寸法が等しくなるようにリング状に形成された位置決め部材601を駆動軸42に嵌め込む。この位置決め部材601としては、外周面601aの径が位置基準部600の内周面600bの径に等しく、内周面601bの径が駆動軸42の外周面の径に等しくなるように形成されたものを用いる。これにより、位置決め部材601の外周面601aの中心が軸線Cに一致する。
【0043】
次に、駆動部41の非回転面41aに位置基準部600を固定する(ST02)。この工程では、
図6に示すように、位置決め部材601に位置基準部600を嵌め込む。位置決め部材601の外周面601aの径が位置基準部600の内周面600bの径に等しくなっているため、位置基準部600が位置決め部材601との間で隙間無く配置される。これにより、位置基準部600の中心が軸線Cに一致するように位置決めされる。その後、不図示の接着剤などを用いて位置基準部600を非回転面41aに固定する。位置基準部600を固定した後、
図7に示すように位置決め部材601を取り外す。
【0044】
次に、第一ディスク611を駆動軸42に固定する(ST03)。この工程では、ネジ部68及び固定部材63を介して第一ディスク611を駆動軸42に締結する。これにより、第一ディスク611が駆動軸42と一体的に回転するようになる。
【0045】
次に、第一基板612を非回転面41aに配置する(ST04)。この工程では、まず、第一基板612の凹部612bと第一フレーム部材691の凸部691bとを係合させた状態とし、固定部材612eによって仮固定する。固定部材612eは、
図8に示すように、第一基板612に予め形成された開口部612hにそれぞれ挿入する。仮固定の後、第一基板612と第一フレーム部材691との位置関係を保持したまま、第一フレーム部材691の内面691aを位置基準部600の外周面600aに当接させ、第一フレーム部材691を位置決めする。
【0046】
なお、この開口部612hの位置、凹部612bの位置及び凸部691bの位置は、光反射パターン631及び磁気パターン632と、第一基板612に実装された発受光素子613及び磁気検出素子614との間が最適な位置になるように予め設定されている。このため、凹部612bと凸部691bとを係合させ、固定部材612eによって仮固定し、第一フレーム部材691を位置決めすることで、発受光素子613及び磁気検出素子614と光反射パターン631及び磁気パターン632との間が最適な状態に位置決めされる。この状態で、固定部材612eによって第一基板612及び第一フレーム部材691を本固定する。
【0047】
次に、第二ディスク621を出力軸27に固定する(ST05)。この工程では、出力軸27にスリーブ64が取り付けられた状態で第二ディスク621を取り付け、ネジ部67を介してこの第二ディスク621をナット65で固定する。これにより、第二ディスク621が出力軸27と一体的に回転するようになる。
【0048】
次に、第二基板622を非回転面41aに配置する(ST06)。この工程では、まず、第二基板622の凹部622bと第二フレーム部材692の凸部692bとを係合させた状態とし、固定部材622eによって仮固定する。固定部材622eは、第二基板622に予め形成された開口部622hにそれぞれ挿入する。この状態で、
図9に示すように、第二フレーム部材692の各突出部692nを第一フレーム部材691の間に挿入する。その後、各第二フレーム部材692の内面692aを位置基準部600の外周面600aに当接させ、第二フレーム部材692を位置決めする。
【0049】
なお、凹部622bの位置、この開口部622hの位置及び凸部692bの位置は、光反射パターン641と、第二基板622に実装された発受光素子623との間が最適な位置になるように予め設定されている。このため、凹部622bと凸部692bとを係合させ、固定部材622eによって仮固定し、第二フレーム部材692を位置決めすることで、発受光素子623と光反射パターン641との間が最適な状態に位置決めされる。その後、固定部材622eによって第二基板622及び第二フレーム部材692を本固定する。
【0050】
以上の工程により、光反射パターン631及び磁気パターン632を有する第一ディスク611を、所定の軸線Cの周りに回転する駆動軸42に固定する第一固定工程と、光反射パターン631及び磁気パターン632を検出する第一基板612を、位置基準部600に設定された所定の位置基準600aで位置決めされるように非回転面41aに配置する第一配置工程と、光反射パターン641を有する第二ディスク621を、所定の軸線Cの周りに回転し駆動軸42の回転の少なくとも一部を出力する出力軸27に固定する第二固定工程と、光反射パターン641を検出する第二基板622を、位置基準600aで位置決めされるように非回転面41aに配置する第二配置工程とを経てエンコーダ装置60が組み立てられる。これにより、信号検出を伴う位置合わせを行わなくても、第一ディスク611と第一基板612との間、第二ディスク621と第二基板622との間を、それぞれ予め設定した位置に位置決めすることができる。そのため、組み立て時の位置合わせが容易となる。これにより、容易に組み立て可能となる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るエンコーダ装置60は、軸線Cの周りに回転する駆動軸42に固定され光反射パターン631及び磁気パターン632を有する第一ディスク611と、非回転面41aに配置され光反射パターン631及び磁気パターン632を検出する第一基板612と、軸線Cの周りに回転し駆動軸42の回転の少なくとも一部を出力する出力軸27に固定され光反射パターンを有する第二ディスク621と、非回転面41aに配置され光反射パターン641を検出する第二基板622と、第一基板612と第二基板622とを共通の位置基準600aで位置決めする位置基準部600とを備えるので、組み立て時の位置合わせが容易となる。これにより、容易に組み立て可能となる。
【0052】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態では、上記第一実施形態に記載のエンコーダ装置60を、ロボット装置100及び駆動装置1に適用した場合について説明する。以下、第一実施形態と共通する構成は、同一の符号を付して説明する。
【0053】
図10は、本実施形態によるロボット装置100の構成を示す斜視図である。
図10に示すように、ロボット装置100は、第一アーム10、第二アーム20及び駆動装置1を備えている。第一アーム10及び第二アーム20は、連結部30において連結されている。連結部30には、駆動装置1が設けられている。駆動装置1は、回転機構40、トルク制限機構50、エンコーダ装置60及び制御部70を有し、連結部30を基準として第二アーム20を回転させる。
【0054】
第一アーム10は、基部11及び軸受部12を有している。基部11は、円柱状(中実)若しくは円筒状(中空)に形成されており、ロボット装置100の骨格の一部を構成する。基部11は、ロボット装置100の不図示の回転軸に取り付けられており、この回転軸を中心として所定方向に回転移動するように設けられている。
【0055】
軸受部12は、基部11の端面11aに設けられている。軸受部12は、例えば、第一軸受12a及び、第二軸受12bを有している。第一軸受12a、及び第二軸受12bは、一方向(例えばZ軸方向)に並んで配置されている。
【0056】
第一軸受12aは、端面11a上に直接設けられている。また、第二軸受12bは、第一軸受12aから端面11aの外側へ伸びた減速機43(例、ギヤ)を介して設けられている。
【0057】
第二アーム(アーム)20は、基部21、軸受部22及び出力軸27を有している。基部21は、第一アーム10の基部11と同様、円柱状(中実)若しくは円筒状(中空)に形成されており、ロボット装置100の骨格の一部を構成する。軸受部22は、基部21の端面21aに設けられている。軸受部22は、第三軸受22a及び第四軸受22bを有している。第三軸受22a及び第四軸受22bは、一方向(例えば、Z軸方向)に並んで配置されている。
【0058】
第三軸受22a及び第四軸受22bは、端面21a上に直接設けられている。第二アーム20の第三軸受22a及び第四軸受22bは、トルク制限機構50が設置可能なように、互いの間に所定の間隔を空けて配置されている。
【0059】
出力軸27は、回転機構40による回転力が伝達されることで回転する軸である。出力軸27は、第三軸受22aの+Z軸側にこの第三軸受22aと一体的に設けられている。出力軸27は、例えば円柱状又は円筒状に形成されており、軸線方向がZ軸方向に平行になるように配置されている。
【0060】
回転機構40は、第二軸受12bを介して減速機43に連結されている。回転機構40は、駆動部41及び駆動軸42(
図11)を有しており、駆動軸42を回転させて、出力軸27を回転させることにより、第二アーム20を駆動する。
【0061】
エンコーダ装置60としては、例えば第一実施形態に記載のエンコーダ装置を用いることができる。エンコーダ装置60は、例えば、回転機構40に結合され、出力軸27及び後述する駆動軸42の回転位置情報(例えば、角度位置)を検出する。例えば、エンコーダ装置60は、第二アーム20の三次元的な位置及び姿勢を検出する。
【0062】
トルク制限機構50は、例えば、第二アーム20の第三軸受22a及び第四軸受22bに配置される。トルク制限機構50は、第二アーム20が接続される出力軸27に駆動軸42の回転力を伝達するように、駆動軸42と出力軸27とを連結する。トルク制限機構50は、所定のトルク許容値以上のトルクが駆動軸42と出力軸27との間に生じた場合に、駆動軸42と出力軸27とに対して相対的な変位(例、すべり)を生じさせることが可能である。一例として、トルク制限機構50は、駆動軸42と出力軸27との間に所定のトルク許容値以上のトルクが発生した場合に、駆動軸42と出力軸27との間に相対的な変位を生じさせる。トルク制限機構50としては、例えばカップリング型やフランジ型、非接触型、直線型など、公知の構成のトルク制限機構(トルクリミッター)を用いることができる。
【0063】
制御部70は、駆動装置1、すなわち回転機構40、トルク制限機構50、及びエンコーダ装置60を統括的に制御する。
【0064】
次に、本実施形態における駆動装置1の構成について説明する。
図11及び
図12は、駆動装置1の構成を示すブロック図である。
図11及び
図12において、
図10と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図11及び
図12に示すように、駆動装置1は、回転機構40、トルク制限機構50、エンコーダ装置60、及び制御部70を備えている。
【0066】
本実施形態において、一例として、駆動軸42は、一端が第一エンコーダ61に接続され、他端が減速機43を介してトルク制限機構50に連結される。また、駆動軸42は、中空状に形成された中空駆動軸である。また、出力軸27の一部である出力軸27は、中空駆動軸(駆動軸42)の内側に少なくとも一部が配置され、一端が第二アーム20及びトルク制限機構50に連結され、他端が第二エンコーダ62に接続されている。
【0067】
回転機構40の駆動部41(回転駆動源)は、中空駆動軸である駆動軸42を回転させる。また、駆動部41によって生成された回転力は、減速機43を介してトルク制限機構50に伝達される。
【0068】
減速機43(動力伝達部)は、例えば、駆動軸42の回転数を50分の1に減速するギヤである。減速機43は、駆動軸42の回転を減速し、伝達軸26を介してトルク制限機構50に伝達する。この実施形態において、減速機43は、例えば、駆動軸42が50回転した場合に、伝達軸26及び出力軸27が1回転するように回転を減速する。
【0069】
トルク制限機構50は、上述したように第二アーム20が接続される出力軸27に駆動軸42の回転力を伝達し、所定のトルク許容値が駆動軸42と出力軸27との間に生じた場合に、すべり(相対的な変位)を生じさせる。すなわち、トルク制限機構50は、駆動軸42と出力軸27とのうち少なくとも一方に所定の許容値以上のトルクが発生した場合に、相対的な変位(例、すべり)を生じさせる。なお、本実施形態では、出力軸27は、例えば、ボルト25によって、第二アーム20に固定されている。
【0070】
図12に示すように、第一エンコーダ61(第一検出部)は、発受光素子613、磁気検出素子614、第一位置検出部617(第一検出部)、及び補正値記憶部618を備えている。
【0071】
発受光素子613は、第一ディスク611(
図1)に形成されたパターンを検出して、駆動軸42の絶対位置(回転位置)を示す信号である第一位置検出信号を出力する。
【0072】
磁気検出素子614は、例えば、ホール素子であり、第一ディスク611の内側に備えられている磁石615の磁気を検出して電気信号に変換する。ここでは、磁気検出素子614は、磁石615の磁気を検出して駆動軸42の多回転量(回転数)を検出するための多回転検出信号を出力する。
【0073】
補正値記憶部618は、第一エンコーダ61が検出する第一位置情報を補正する所定の補正値を記憶している。この所定の補正値は、後述するトルク制限機構50によるすべりを解消する復帰処理において、制御部70によって変更される。
【0074】
第一位置検出部617は、発受光素子613が出力する第一位置検出信号と、磁気検出素子614が出力する多回転検出信号とに基づいて、駆動軸42の絶対位置(回転位置)の情報を示す第一位置情報を算出する。第一位置検出部617は、算出した第一位置情報を制御部70に出力する。なお、第一位置検出部617は、この第一位置情報を算出する際に、算出した位置情報を補正値記憶部618に記憶されている所定の補正値に基づいて補正を行い、補正した位置情報を第一位置情報として出力する。また、第一エンコーダ61は、多回転に対応しているため、第一位置情報は、多回転に対応した位置情報である。第一位置検出部617及び補正値記憶部618は、例えば、第一基板612(非回転部)上に設けられている。
【0075】
また、
図12に示すように、第二エンコーダ62は、発受光素子623、第二位置検出部624、及び補正値記憶部625を備えている。
【0076】
発受光素子623は、第二ディスク621(
図1)に形成されたパターンを検出して、出力軸27の絶対位置(回転位置)を示す信号である第二位置検出信号を出力する。補正値記憶部625は、第二エンコーダ62が検出する第二位置情報を補正する所定の補正値を予め記憶している。
【0077】
第二位置検出部624は、発受光素子623が出力する第二位置検出信号に基づいて、出力軸27の絶対位置(回転位置)の情報を示す第二位置情報を算出する。第二位置検出部624は、算出した第二位置情報を制御部70に出力する。なお、第二位置検出部624は、この第二位置情報を算出する際に、算出した位置情報を補正値記憶部625に記憶されている所定の補正値に基づいて補正を行い、補正した位置情報を第二位置情報として出力する。第二位置検出部624及び補正値記憶部625は、例えば、第二基板622上に設けられている。
【0078】
制御部70は、上述したように、回転機構40、トルク制限機構50、及びエンコーダ装置60を統括的に制御する。例えば、制御部70は、外部のロボット装置100を制御する制御装置から供給された制御指令に基づいて、回転機構40の回転を制御する。また、例えば、制御部70は、エンコーダ装置60が検出した位置情報(例えば、第一位置情報、第二位置情報など)を外部の制御装置に出力する。
図12に示すように、制御部70は、すべり判定部71、及び駆動制御部72を備えている。
【0079】
すべり判定部71は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報、及び第二エンコーダ62が検出した第二位置情報に基づいて、上述のトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)の有無を判定する。ここで、トルク制限機構50によるすべりは、駆動軸42と出力軸27とのうち少なくとも一方に所定の許容値以上のトルクが発生した場合に生じる。例えば、第二アーム20に物体が接触した場合に、このトルク制限機構50によるすべりが発生する。
【0080】
また、すべり判定部71は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報と、第二エンコーダ62が検出した第二位置情報とに基づいて、相対的な変位の有無を判定する。一例として、すべり判定部71は、第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報と、第二エンコーダ62が検出した第二位置情報とを比較し、この2つの位置情報の差が所定の閾値以上になった場合に、トルク制限機構50によるすべりが発生したと判定する。すべり判定部71は、トルク制限機構50による相対的な変位(例、すべり)の有無を判定した判定結果を駆動制御部72に出力する。
【0081】
駆動制御部72は、外部の制御装置から供給された制御指令と、エンコーダ装置60が検出した第一位置情報又は第二位置情報とに基づいて、回転機構40の制御を行う。また、駆動制御部72は、すべり判定部71がトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)が生じたと判定した場合に、回転機構40による駆動軸42の回転を制御する制御処理、及び、トルク制限機構50によるすべりを解消する復帰処理を実行する。また、駆動制御部72は、回転制御部73を含んでいる。
【0082】
回転制御部73は、駆動部41を駆動する不図示のドライブ回路(駆動回路)を含んでいる。回転制御部73は、外部の制御装置から供給された制御指令と、エンコーダ装置60が検出した第一位置情報又は第二位置情報とに基づいて、回転機構40の駆動部41の回転を制御する。回転制御部73は、回転機構40を制御することにより、第二アーム20の位置、及び姿勢を制御する。
【0083】
また、回転制御部73は、すべり判定部71がトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)が生じたと検出した場合に、回転機構40による駆動軸42の回転を制御する制御処理を行う。この制御処理とは、例えば、回転機構40に対して駆動軸42の回転を停止させる処理である。すなわち、回転制御部73は、第二アーム20に物体が接触又は衝突した場合に、物体やロボット装置100に損傷を与えないように、動作を停止する制御を行う。
【0084】
また、この制御処理は、トルク制限機構50によるすべりを解消する復帰処理(変位復帰処理)を含んでいる。例えば、回転制御部73は、すべり判定部71がトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)が生じたと検出した場合に、第一エンコーダ61と第二エンコーダ62との間にトルク制限機構50のすべりにより生じた位置ずれを解消する復帰処理(変位復帰処理)を実行する。
【0085】
一例として、回転制御部73は、復帰処理として、第二エンコーダ62が第二位置情報から推定した駆動軸42の推定位置情報に、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報が一致するように、補正値記憶部618に記憶されている所定の補正値を変更する処理を行う。回転制御部73は、第一エンコーダ61が補正に使用するオフセット値を第一位置情報と第二位置情報とが一致するように変更する。これにより、回転制御部73は、トルク制限機構50のすべりにより生じた位置ずれを解消する。
【0086】
次に、駆動装置1及びロボット装置100の動作について説明する。駆動装置1及びロボット装置100を動作させる場合、制御部70の回転制御部73は、外部の制御装置から供給された制御指令と、エンコーダ装置60が検出した第一位置情報又は第二位置情報とに基づいて、回転機構40の駆動部41の回転を制御し、駆動軸42を回転させる。
【0087】
回転制御部73は、回転機構40の駆動部41を作動させる。この動作により、駆動部41の回転が減速機43によって減速され、伝達軸26を介してトルク制限機構50に伝達される。この回転は、トルク制限機構50の許容値を超えない範囲で出力軸27に伝達され、出力軸27が外周面の周方向に回転する。このようにして、駆動軸42の回転力が出力軸27に伝達される。これにより、第二アーム20が駆動される。
【0088】
次に、駆動装置1が、トルク制限機構50によって駆動軸42と出力軸27との間に生じたすべり(相対的な変位)を検出する動作について説明する。例えば、第二アーム20に物体が接触又は衝突して、トルク制限機構50における所定のトルク許容値以上のトルクが駆動軸42と出力軸27との間に加えられた場合に、トルク制限機構50には、駆動軸42と出力軸27との間にすべりが発生する。
【0089】
図13は、本実施形態における駆動装置1のすべり検出の一例を示す図である。
【0090】
図13において、グラフの左側の縦軸は第一エンコーダ61の位置情報Pi(第一位置情報)を示し、右側の縦軸は第二エンコーダ62の位置情報Po(第二位置情報)を示している。また、グラフの横軸は、時間tを示している。
【0091】
また、波形W1は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報Piの変位を示し、波形W2は、第二エンコーダ62が検出した第二位置情報Poの変位を示している。ここで、第二位置情報Poは、減速機43のギヤ比nによって、(Po=Pi/n)の関係が成り立つ。なお、本実施形態では、一例として、減速機43のギヤ比nは、“50”である。
【0092】
図13では、時刻t1において、第二アーム20に物体が接触又は衝突して、トルク制限機構50における所定のトルク許容値以上のトルクが駆動軸42と出力軸27との間に加えられた一例である。時刻t1において、波形W2が示すように、第二アーム20が物体に接触しているため、出力軸27の位置情報である第二位置情報Poは、変化しない状態となる。一方で、波形W1が示すように、トルク制限機構50によるすべりが発生しているため、駆動軸42の位置情報である第一位置情報Piは、接触又は衝突の前の状態と同様に変化し続ける。
【0093】
すべり判定部71は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報、及び第二エンコーダ62が検出した第二位置情報に基づいて、上述のトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)の有無を判定する。例えば、すべり判定部71は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報Piから推定した出力軸27の推定位置情報(Pi/n)と、第二エンコーダ62が検出した第二位置情報Poとを比較する。すべり判定部71は、第二位置情報Poと出力軸27の推定位置情報(Pi/n)との差が所定の閾値以上になった場合に、トルク制限機構50によるすべりが発生したと判定する(時刻t2参照)。また、すべり判定部71は、この判定結果を駆動制御部72の回転制御部73に供給する。
【0094】
また、時刻t2において、すべり判定部71がトルク制限機構50によるすべり(相対的な変位)が生じたと判定し、回転制御部73は、この判定結果に基づいて、この判定結果をフィードバックすることによって回転機構40における駆動軸42の回転を制御する制御処理を行う。ここでは、一例として、回転制御部73は、回転機構40に対して駆動軸42の回転を停止させる処理を制御処理として行う。すなわち、回転制御部73は、第二アーム20に物体が接触又は衝突した場合に、物体やロボット装置100に損傷を与えないように、第二アーム20の動作を停止する制御を行う。
【0095】
また、回転制御部73は、制御処理としてトルク制限機構50によるすべりを解消する復帰処理(変位復帰処理)を行う。すなわち、回転制御部73は、時刻t2において、第一エンコーダ61と第二エンコーダ62との間にトルク制限機構50のすべりにより生じた位置ずれを解消する復帰処理(変位復帰処理)を実行する。一例として、回転制御部73は、復帰処理として、第二エンコーダ62が第二位置情報から推定した駆動軸42の推定位置情報(n・Po)に、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報Piが一致するように、補正値記憶部618に記憶されている所定の補正値を変更する処理を行う。回転制御部73は、まず、駆動軸42の推定位置情報(n・Po)と第一位置情報Piとに基づいて、すべり量ΔP(=Pi−n・Po)を算出する。回転制御部73は、算出したすべり量ΔPを所定の補正値として、補正値記憶部618に記憶させる。
【0096】
これにより、駆動軸42と出力軸27との間のすべりが解消され、駆動軸42と出力軸27との間の相対的な位置関係が修復される(時刻t3参照)。
【0097】
以上説明したように、本実施形態における駆動装置1は、回転機構40が回転駆動軸を回転させ、第一エンコーダ61が駆動軸42の回転位置を示す第一位置情報を検出し、第二エンコーダ62が出力軸27の回転位置を示す第二位置情報を検出する。また、トルク制限機構50は、駆動軸42と出力軸27とに対して相対的な変位(すべり)を生じさせることが可能である。また、制御部70(すべり判定部71)は、第一エンコーダ61が検出した第一位置情報、及び第二エンコーダ62が検出した第二位置情報に基づいて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する。
【0098】
これにより、駆動装置1は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことを適切に検出することができる。本実施形態における駆動装置1は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことにより、接触した物体やロボット装置100が損傷を受けることを低減することができる。
【0099】
また、本実施形態において、制御部70(回転制御部73)は、相対的な変位(すべり)が生じた場合に、回転機構40による駆動軸42の回転をフルクローズド制御する制御処理を行う。これにより、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触した場合に、回転機構40が適切に制御される。よって、本実施形態における駆動装置1は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことにより、接触した物体やロボット装置100が損傷を受けることを低減することができる。
【0100】
また、本実施形態において、制御処理は、相対的な変位(すべり)を解消する復帰処理(変位復帰処理)を含む。これにより、本実施形態における駆動装置1は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことを検出した後に、ロボット装置100の動作を再開(復帰)するフルクローズド制御を行うことができる。
【0101】
また、本実施形態において、第一エンコーダ61は、検出した位置情報を所定の補正値に基づいて補正した位置情報を第一位置情報として出力する。制御部70(回転制御部73)は、復帰処理(変位復帰処理)として、第二位置情報から推定した駆動軸42の推定位置情報に第一位置情報が一致するように、所定の補正値を変更する処理を行う。これにより、所定の補正値を変更することにより、相対的な変位(すべり)を解消することができる。この場合、相対的な変位(すべり)を解消するために、回転機構40を逆回転させる等の処理を必要しない。そのため、本実施形態における駆動装置1は、ロボット装置100の動作を再開するまでの時間を短縮することができる。
【0102】
また、本実施形態において、制御部70(すべり判定部71)は、第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報と、第二位置情報とに基づいて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する。これにより、本実施形態における駆動装置1は、第一エンコーダ61と第二エンコーダ62とを用いて簡易な判定手段により、正確に駆動軸42と出力軸27との間のすべり(相対的な変位)を判定することができる。
【0103】
また、本実施形態において、駆動軸42は、一端が第一エンコーダ61に接続され、他端が減速機43(動力伝達部)を介してトルク制限機構50に連結される。また、駆動軸42は、中空状に形成された中空駆動軸である。出力軸27は、中空駆動軸(駆動軸42)の内側に少なくとも一部が配置され、一端が被駆動体(例えば、第二アーム20)及びトルク制限機構50に連結され、他端が第二エンコーダ62に接続される。これにより、回転機構40が配置される駆動軸42側に、第一エンコーダ61及び第二エンコーダ62を配置することができるため、第一エンコーダ61及び第二エンコーダ62と、回転機構40とを一体構造にすることが可能である。そのため、駆動装置1を小型化することができる。
【0104】
また、駆動部41とは反対側に第二エンコーダ62が配置されるため、第二エンコーダ62は、駆動部41がさらされる油や汚れ等による誤検出を考慮する必要がない。例えば、中空駆動軸を用いて駆動部41とは反対側(第一エンコーダ61と同じ側)に第二エンコーダ62を配置する場合、第二エンコーダ62は第一エンコーダ61と同様にアームや駆動装置の中に収納して一体構造で存在させることが可能となる。ここで、アームや駆動装置の中は、シール等によって外界の油や汚れに対して切り離されている構成であるため、第二エンコーダ62も油や汚れ等による誤検出を考慮する必要がなくなる。そのため、本実施形態における駆動装置1は、第二エンコーダ62に光検出式のエンコーダを適用することができる。本実施形態における駆動装置1は、高精度に出力軸27の位置情報を検出することができる。
【0105】
また、本実施形態において、ロボット装置100は、駆動装置1を備えている。これにより、本実施形態におけるロボット装置100は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことを適切に検出することができる。したがって、本実施形態におけるロボット装置100は、被駆動体(例えば、第二アーム20)が物体と接触したことにより、接触した物体やロボット装置100が損傷を受けることを低減することができる。
【0106】
また、本実施形態において、駆動装置1は、第一エンコーダ61、及び第二エンコーダ62を備えている。2つのエンコーダにより、駆動軸42及び出力軸27の位置情報を正確に検出することができるため、本実施形態における駆動装置1は、トルク制限機構50によるすべりの検出だけでなく、出力軸27の振動、反り、速度ムラなどを正確に検出することができる。
【0107】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0108】
例えば、上記実施形態においては、位置基準部600の外周面600aを位置基準とする構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、位置基準部600の内周面600bを位置基準とする構成としても良い。
【0109】
また、外周面600aと内周面600bとが共に軸線Cを中心とする円筒面であれば、例えば第一フレーム部材691及び第二フレーム部材692の一方が位置基準部600の外周面600aに当接されることで位置決めされ、他方が内周面600bに当接されることで位置決めされる構成としても良い。この場合、位置基準は、軸線Cとなる。
【0110】
また、上記の実施形態において、制御部70(すべり判定部71)は、第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報と、第二位置情報とに基づいて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する形態を説明したが、これに限定されない。例えば、制御部70(すべり判定部71)は、第二位置情報から推定した駆動軸42の推定位置情報と、第一位置情報とに基づいて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する形態でもよい。これにより、駆動装置1は、第一エンコーダ61と第二エンコーダ62とを用いて簡易な判定手段により、正確に駆動軸42と出力軸27との間のすべり(相対的な変位)を判定することができる。
【0111】
また、制御部70(すべり判定部71)は、上述の第二位置情報から推定した駆動軸42の推定位置情報を用いる判定方法と、第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報を用いる判定方法との両方の方法を組み合わせて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する形態でもよい。
【0112】
また、上記の実施形態において、制御部70(すべり判定部71)は、第一位置情報Piと第二位置情報Poに基づいて算出されたすべり量ΔP(=Pi−n・Po)によって、相対的な変位(すべり)の有無を判定する形態を説明したが、第一位置情報Piと第二位置情報Poとの比などの演算結果に基づいて、相対的な変位(すべり)の有無を判定する形態でもよい。
【0113】
また、上記の実施形態において、制御部70(回転制御部73)は、復帰処理(変位復帰処理)として、第二位置情報から推定した駆動軸の推定位置情報に第一位置情報が一致するように、所定の補正値を変更する処理を行う形態を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、制御部70(回転制御部73)は、復帰処理として、第一位置情報から推定した出力軸27の推定位置情報に第二位置情報が一致するように、第二エンコーダ62の所定の補正値を変更する処理を行う形態でもよい。
【0114】
また、上記の実施形態においては、トルク制限機構50の少なくとも一部が第二アーム20に接続された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、トルク制限機構50が外部の接続部に接続された状態であり、第二アーム20とは独立して設けられた形態であってもよい。
【0115】
また、上記の実施形態において、駆動軸42が減速機43を介してトルク制限機構50に結合される形態を説明したが、減速機43を備えない形態でもよい。また、第一エンコーダ61は、減速機43を介して減速された駆動軸42に接続され、減速機43を介して減速された回転位置情報を検出する形態でもよい。
【0116】
また、上記の実施形態において、第一エンコーダ61及び第二エンコーダ62は、発受光素子(613、623)を用いた光学式のエンコーダである場合を説明したが、他の方式(例えば、磁気式等)のエンコーダを備える形態でもよい。
【0117】
また、上記の実施形態において、第一位置検出部617及び補正値記憶部618は、第一基板612上に設けられている形態を説明したが、制御部70と同様に外部に設けられている形態でもよい。また、制御部70が、第一位置検出部617及び補正値記憶部618と一緒に、第一基板612上に設けられている形態でもよい。
【0118】
また、上記の実施形態において、第二位置検出部624及び補正値記憶部625は、第二基板622上に設けられている形態を説明したが、制御部70と同様に外部に設けられている形態でもよい。また、制御部70が、第二位置検出部624及び補正値記憶部625と一緒に、第二基板622上に設けられている形態でもよい。
【0119】
上述の制御部70は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した制御部70の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがこのプログラムを実行するようにしてもよい。
【0120】
また、ロボットや工作機械といったアームを有するもの(以下、ロボット装置と呼称)は、ロボット装置の作業特性から先端側アームを狭い領域へ入れることがあるため、できるだけアームを細く小型化したいという要望がある。例えば、出力側エンコーダ(例、第二エンコーダ)のような追加的部品を搭載する場合は、通常は、追加的部品が出力側エンコーダであるという特性から出力側に取り付けなければならず、ロボット装置のアームにとって出力側は先端側であることから出力側エンコーダは先端側アームに取り付ける必要があるため、先端側アームの体積の肥大化を回避することができず小型化はできない。しかし、本実施形態のように中空状に形成された中空駆動軸を用いることによって第一エンコーダ61と同じ側である根本側アームに第二エンコーダ62を配置できるようになる(第二エンコーダ62の検出部は根本側アームに固定されることで先端側アームと共に回転しない)ため、先端側アームには第二エンコーダ62が搭載されなくなり、先端側アームの体積肥大化を低減した状態でダブルエンコーダ構成にすることが可能となる。
【0121】
更に、通常、出力側エンコーダは、先端側アームに取り付けられつつ、出力側の回転角度を検出するために先端側アームと共に回転しないように先端側アームの外部に取付けられるので、出力側エンコーダの検出部は外部環境に曝される。ロボット装置の使用環境は決して塵や油が飛散しないような環境とは限らないことを考えると、上記の出力側エンコーダの検出部は汚れやすいという状況になるが、本実施形態の構造によれば、出力側エンコーダは入力側エンコーダと同じく根本側アームに取り付けることが可能になる。ここで、入力側エンコーダが取り付けられる根本側アームはその関節の土台として存在することから根本側アームは回転しないので、出力側エンコーダは入力側エンコーダと同様に出力側エンコーダをアームの内部に収納され外部の塵や油から検出部を保護できるようになる。したがって、本実施形態の出力側エンコーダは、入力側エンコーダと同様に汚れにくくなるので、汚れ等に対する耐性を高めることができる。