(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス排出路が前記キャリアガス供給源に接続され、前記ガス排出路の前記第2の接続部より前記キャリアガス供給源側に設けられる第2のマスフローコントローラを備え、前記連通路が前記第1のマスフローコントローラと前記第1の調整部との間の前記ガス供給路と、前記第2のマスフローコントローラと前記第2の調整部との間の前記ガス排出路とを連通させることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
前記連通路が、前記第1のマスフローコントローラと前記第1の接続部との間の前記ガス供給路と、前記第2のマスフローコントローラと前記第2の接続部間の前記ガス排出路とを連通させることを特徴とする請求項2記載の気相成長装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
なお、本明細書中では、気相成長装置が成膜可能に設置された状態での重力方向を「下」と定義し、その逆方向を「上」と定義する。したがって、「下部」とは、基準に対し重力方向の位置、「下方」とは基準に対し重力方向を意味する。そして、「上部」とは、基準に対し重力方向と逆方向の位置、「上方」とは基準に対し重力方向と逆方向を意味する。また、「縦方向」とは重力方向である。
【0016】
また、本明細書中、「プロセスガス」とは、基板上への成膜のために用いられるガスの総称であり、例えば、ソースガス、キャリアガス、分離ガス、補償ガス等を含む概念とする。
【0017】
また、本明細書中、「補償ガス」とは、反応室へソースガスを供給する前に、ソースガスと同一の供給路で反応室に供給されるソースガスを含まないプロセスガスである。成膜直前に補償ガスからソースガスへ切り替えることにより、反応室内の圧力、温度変化等の環境変化を極力抑制し、基板上への成膜を安定させる。
【0018】
また、本明細書中、「分離ガス」とは、気相成長装置の反応室内に導入されるプロセスガスであり、複数の原料ガスのプロセスガス間を分離するガスの総称である。
【0019】
(第1の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、反応室と、有機金属を供給する有機金属供給源と第1の接続部で接続され、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源に接続され、反応室に有機金属とキャリアガスを含むプロセスガスを供給するガス供給路と、有機金属供給源と第2の接続部で接続され、装置外に有機金属とキャリアガスを含むプロセスガスを排出するガス排出路と、ガス供給路の第1の接続部よりキャリアガス供給源側に設けられる第1のマスフローコントローラと、ガス供給路の第1の接続部より反応室側に設けられる第1の調整部と、ガス排出路の第2の接続部より装置外側に設けられる第2の調整部と、第1のマスフローコントローラと第1の調整部との間のガス供給路と、第2の調整部の装置外側と反対側のガス排出路とを連通させる連通路と、を備える。そして、第1の調整部と第2の調整部のいずれか一方がバックプレッシャーレギュレータであり、他方がマスフローコントローラである。
【0020】
本実施形態の気相成長装置は、上記構成を備えることにより、簡便な構成で、有機金属が流されるガス供給路とガス排出路の間の圧力を所望値の同一の圧力に維持することを可能にする。したがって、成膜の際に、ガス供給路から反応室へ供給される有機金属を含むプロセスガス(ソースガス)中の有機金属の量が安定する。よって、低コストで膜質の安定した成膜を実現できる。
【0021】
図1は、本実施形態の気相成長装置の構成図である。本実施形態の気相成長装置は、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いる縦型の枚葉型のエピタキシャル成長装置である。以下、主にGaN(窒化ガリウム)をエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0022】
気相成長装置は、ウェハ等の基板への成膜がその内部で行われる反応室10を備える。そして、反応室にプロセスガスを供給する、第1のガス供給路31、第2のガス供給路32、および、第3のガス供給路33を備えている。
【0023】
第1のガス供給路31は、反応室にIII族元素の有機金属とキャリアガスを含む第1のプロセスガスを供給する。第1のプロセスガスは、ウェハ上にIII−V族半導体の膜を成膜する際の、III族元素を含むガスである。
【0024】
III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、Al(アルミニウム)、In(インジウム)等である。また、有機金属は、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)等である。
【0025】
また、有機金属を貯留する第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57を備える。第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57は有機金属供給源の一例である。第1の有機金属貯留容器55には、例えば、TMGが、第2の有機金属貯留容器56には、例えば、TMAが、第3の有機金属貯留容器57には、例えば、TMIが、貯留される。
【0026】
また、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57は、有機金属をバブリングするためのキャリアガスを導入するキャリアガス供給源11に接続されている。キャリアガス供給源11は、例えば、水素ガスを供給する水素ガスラインである。さらに、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57に導入されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM7、M8、M9を備えている。
【0027】
第1のガス供給路31は、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57と、第1の接続部85a、86a、87aで接続される。第1の接続部85a、86a、87aは、例えば、四方バルブであり、有機金属の第1のガス供給路31への流入と遮断を制御する。四方バルブが開の場合、有機金属が第1のガス供給路31へ供給され、四方バルブが閉の場合、有機金属は第1のガス供給路31へ供給されない。
【0028】
第1のガス供給路31は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源11に接続される。
【0029】
また、第1のガス排出路54を備える。第1のガス排出路54は、気相成長装置が成膜時以外の状態にあるときに、第1のプロセスガスを装置外に排出するために設けられる。
【0030】
第1のガス排出路54は、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57と、第2の接続部85b、86b、87bで接続される。第2の接続部85b、86b、87bは、例えば、三方バルブであり、有機金属の第1のガス排出路54への流入と遮断を制御する。三方バルブが開の場合、有機金属が第1のガス排出路54へ供給され、三方バルブが閉の場合、有機金属は第1のガス排出路54へ供給されない。第1のガス排出路54は、反応室からガスを排出する経路59と接続されている。
【0031】
第1のガス供給路31は、第1の接続部85a、86a、87aより、キャリアガス供給源11側に、マスフローコントローラM1(第1のマスフローコントローラ)を備える。
【0032】
第1のガス供給路31の第1の接続部85a、86a、87aより反応室10側には、第1の調整部91が設けられる。また、第1のガス排出路54の第2の接続部85b、86b、87b側には、第2の調整部92が設けられる。
【0033】
そして、第1の調整部91がバックプレッシャーレギュレータであり、第2の調整部92がマスフローコントローラである。バックプレッシャーレギュレータは、一次側、すなわち、バックプレッシャーレギュレータ上流側の圧力を一定値に維持する機能を備える。
【0034】
第1の調整部91をマスフローコントローラ、第2の調整部92をバックプレッシャーレギュレータとする構成とすることも可能である。しかし、マスフローコントローラの流量センサ部に、高温になる部分が存在することがあるため、反応室10に供給される有機金属の高温部による分解を避ける観点から、第1の調整部91がバックプレッシャーレギュレータであり、第2の調整部92がマスフローコントローラであることが望ましい。
【0035】
そして、マスフローコントローラM1(第1のマスフローコントローラ)と第1の調整部91との間の第1のガス供給路31と、第2の調整部92の装置外側と反対側の第1のガス排出路54との間を連通させる連通路58が設けられる。連通路58は、第2の接続部85bの上流側で第1のガス排出路54に接続される。
【0036】
第2のガス供給路32は、反応室にアンモニア(NH
3)を含む第2のプロセスガスを供給する。第2のプロセスガスは、ウェハ上にIII−V族半導体の膜を成膜する際の、V族元素、窒素(N)のソースガスである。第2のガス供給路32は、キャリアガス供給源11に接続される。第2のガス供給路32は、第2のガス供給路の32に供給されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM3を備えている。
【0037】
また、第2のガス排出路64を備える。第2のガス排出路64は、第2のプロセスガスを装置外に排出するために設けられる。第2のガス排出路64は、キャリアガス供給源11に接続される。第2のガス排出路64は、第2のガス排出路64に供給されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM4を備えている。第2のガス排出路64は、反応室からガスを排出する経路59と接続されている。
【0038】
そして、第2のガス供給路32および第2のガス排出路64に導入されるアンモニアの流量を制御するマスフローコントローラM6が設けられている。
【0039】
また、反応室10に第3のプロセスガスを供給する第3のガス供給路33が設けられている。第3のプロセスガスは、いわゆる分離ガスであり、反応室10内に第1のプロセスガスと第2のプロセスガスを噴出させる際に、両者の間に噴出させる。これにより、第1のプロセスガスと第2のプロセスガスとが噴出直後に反応することを抑制する。
【0040】
本実施形態では、第3のガス供給路33は、キャリアガス供給源11に接続される。そして、キャリアガス供給源11から分離ガスとなる水素ガスを供給する。第3のガス供給路33には、第3のガス供給路33に供給される水素ガスの流量を制御するマスフローコントローラM5が設けられている。
【0041】
図2は、本実施形態の気相成長装置の要部の模式断面図である。
【0042】
図2に示すように、本実施形態のエピタキシャル成長装置は、例えばステンレス製で円筒状中空体の反応室10を備えている。そして、この反応室10上部に配置され、反応室10内に、プロセスガスを供給するシャワープレート100を備えている。
【0043】
また、反応室10内のシャワープレート100下方に設けられ、半導体ウェハ(基板)Wを載置可能な支持部12を備えている。支持部12は、例えば、中心部に開口部が設けられる環状ホルダー、または、半導体ウェハW裏面のほぼ全面に接する構造のサセプタである。
【0044】
第1、第2および第3のガス供給路31、32、33は、シャワーヘッド100に接続される。シャワーヘッド100の反応室10側には、第1、第2および第3のガス供給路31、32、33から供給される第1、第2および第3のプロセスガスを、反応室10に噴出するための複数のガス噴出孔が設けられている。
【0045】
また、支持部12をその上面に配置し回転する回転体ユニット14、支持部12に載置されたウェハWを加熱する加熱部16としてヒーターを、支持部12下方に備えている。ここで、回転体ユニット14は、その回転軸18が、下方に位置する回転駆動機構20に接続される。そして、回転駆動機構20により、半導体ウェハWをその中心を回転中心として、例えば、数十rpm〜数千rpmで回転させることが可能となっている。
【0046】
円筒状の回転体ユニット14の径は、支持部12の外周径とほぼ同じにしてあることが望ましいなお、回転軸18は、反応室10の底部に真空シール部材を介して回転自在に設けられている。
【0047】
そして、加熱部16は、回転軸18の内部に貫通する支持軸22に固定される支持台24上に固定して設けられる。加熱部16には、図示しない電流導入端子と電極により、電力が供給される。この支持台24には半導体ウェハWを
支持部12から脱着させるための、例えば突き上げピン(図示せず)が設けられている。
【0048】
さらに、半導体ウェハW表面等でソースガスが反応した後の反応生成物および反応室10の残留ガスを反応室10外部に排出するガス排出部26を、反応室10底部に備える。なお、ガス排出部26は真空ポンプ(図示せず)に接続してある。ガス排出部26は、第1のガス排出路54、第2のガス排出路64が接続されている経路59に接続される(
図1)。
【0049】
なお、
図2に示した枚葉型エピタキシャル成長装置では、反応室10の側壁箇所において、半導体ウェハWを出し入れするための図示しないウェハ出入口およびゲートバルブが設けられている。そして、このゲートバルブで連結する例えばロードロック室(図示せず)と反応室10との間において、ハンドリングアームにより半導体ウェハWを搬送できるように構成される。ここで、例えば合成石英で形成されるハンドリングアームは、シャワープレート100とウェハ支持部12とのスペースに挿入可能となっている。
【0050】
本実施形態の気相成長装置は、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の間を、連通路58によって連通する。そして、連通することにより第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力を、バックプレッシャーレギュレータで略同一の所定の圧力に保つ。有機金属容器は、第1の接続部もしくは、第2の接続部のいずれかで、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aと第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aのいずれかに接続される。これにより、有機金属をバブリングする際のバブリング圧力を成膜時も成膜時以外も略一定に保つことが可能となる。また、III族のソースガスを第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aから、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aに切り替えた場合でも、連通路58を流れるガス流量がその分だけ変化し、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54に流れるガス流量は、ほとんど変化しない。そのために、III族のソースガスを切り替える際に、その流量とほぼ等しいガス流量を、III族のソースガスとは、反対の流路に流す、いわゆる補償ガスを流す必要が無い。したがって、III族のソースガス(第1のプロセスガス)中の有機金属量が安定し、膜質の安定した半導体膜の成膜を実現できる。
【0051】
そして、第1のガス供給路31から反応室10に供給されるIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量は、マスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御され、略一定に保たれる。マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガス流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値に制御される。これにより、反応室10へのIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の供給が保たれる。
【0052】
特に、本実施形態のように、有機金属供給源が複数あったとしても、1個のバックプレッシャーレギュレータと1個のマスフローコントローラを、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54とに設けるという簡便な構成で、有機金属のバブリング圧力と、反応室10に供給するIII族のソースガスの流量を安定にすることが可能となる。
【0053】
本実施形態の気相成長装置によれば、簡便な構成でIII族のソースガス中の有機金属の量を安定化させる気相成長装置を提供することが可能となる。
【0054】
本実施形態の気相成長方法は、
図1および
図2の枚葉型エピタキシャル成長装置を用いる。そして、反応室に基板を搬入し、キャリアガスをガス供給路およびガス排出路に流入させ、有機金属のガス供給路への流入を遮断した状態で、有機金属をガス排出路に流入させ、連通路で連通させることによりガス供給路内とガス排出路内の圧力を略同一にするとともに、バックプレッシャーレギュレータにより圧力を所望の圧力に制御し、有機金属のガス排出路への流入を遮断し、有機金属をガス供給路に流入させ、圧力を所望の圧力に維持した状態で、反応室に、有機金属とキャリアガスを供給して、基板表面に半導体膜を成膜する。
【0055】
以下、本実施形態の気相成長方法について、GaNをエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0056】
反応室10にキャリアガスが供給され、図示しない真空ポンプを作動して反応室10内のガスをガス排出部26から排気して、反応室10を所定の圧力に制御している状態で、反応室10内の支持部12に半導体ウェハWを載置する。ここで、例えば、反応室10のウェハ出入口のゲートバルブ(図示せず)を開きハンドリングアームにより、ロードロック室内の半導体ウェハWを反応室10内に搬入する。そして、半導体ウェハWは例えば突き上げピン(図示せず)を介して支持部12に載置され、ハンドリングアームはロードロック室に戻され、ゲートバルブは閉じられる。
【0057】
ここで、支持部12に載置した半導体ウェハWは、加熱部16により所定温度に予備加熱している。
【0058】
キャリアガス供給源11から水素ガスが、第1のガス供給路31および第1のガス排出路54に流入される。第1のガス供給路31に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御される。また、第1のガス排出路54に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラである第2の調整部92によって制御される。そのため、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガス流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値になる。
【0059】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、TMGを貯留する第1の有機金属貯留容器55に、TMGのバブリングのために供給される。第1の有機金属貯留容器55に供給される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM7によって制御される。
【0060】
成膜前の段階では、バブリングされた有機金属の第1のガス供給路31への流入を遮断した状態で、TMGを第1のガス排出路54に流入させる。この
際、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側は、連通路58により連通した状態となっている。したがって、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は略同一になる。また、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は、バックプレッシャーである第1の調整部91により、所望の圧力に制御されている。
【0061】
ここで、第1のガス供給路31から反応室10へは、水素ガスが供給されている。
【0062】
第1のガス供給路31から反応室に供給される水素ガスの流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御される。そのため、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガス流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値になる。これにより、反応室10へのキャリアガス(水素ガス)の供給が保たれる。
【0063】
反応室10に供給されないTMGおよび水素ガスを含むソースガス(第1のプロセスガス)は、第1の排出路54により排出されている。
【0064】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、第2のガス供給路32および第2のガス排出路64に流入される。第2のガス供給路32に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM3によって制御される。また、第2のガス排出路64に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM4によって制御されている。
【0065】
成膜前の段階では、アンモニア(第2のプロセスガス)は、第2のガス排出路64に流入される。この際、第2のガス供給路32へのアンモニアの流入は遮断されている。アンモニアは、第2のガス排出路64から排出されている。
【0066】
一方、反応室10には、第2のガス供給路32を介して水素ガスが供給されている。
【0067】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、第3のガス供給路33に流入されている。この水素ガスが反応室10に供給されている。第3のガス供給路33に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM5によって制御されている。
【0068】
その後、加熱部16の加熱出力を上げて半導体ウェハWを所定の温度、例えば、1150℃程度のベーク温度に昇温させる。
【0069】
そして、上記真空ポンプによる排気を続行すると共に、回転体ユニット14を所定の速度で回転させながら、成膜前のベークを行う。このベークにより、例えば、半導体ウェハW上の自然酸化膜が除去される。
【0070】
ベークの際には、水素ガスが第1のガス供給路31、第2のガス供給路32、および、第3のガス供給路33を通って、反応室10に供給される。
【0071】
所定の時間、ベークを行った後に、例えば、加熱部16の加熱出力を下げて半導体ウェハWをエピタキシャル成長温度、例えば、1100℃に降温させる。
【0072】
ここで、第2の接続部85bを閉にし、第1の接続部85aを開にすることにより、第1のガス供給路31から、水素ガスをキャリアガスとするTMG(第1のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。また、接続部89bを
開にし、接続部89aを
閉にすることにより第2のガス供給路32から、アンモニア(第2のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。また、第3のガス供給路33から、水素ガス(第3のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。これにより、半導体ウェハW上にGaN膜をエピタキシャル成長させる。
【0073】
第1のガス供給路31からTMGを含むIII族のソースガス(第1のプロセスガス)を反応室10に流入させる際、III族のソースガスの第1のガス排出路54への流入を第2の接続部85bを閉にすることで遮断する。そして、III族のソースガスを第1の接続部85aを開にすることで第1のガス供給路31に流入させる。そして、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54内の圧力を所望の圧力に維持した状態で、反応室10に、水素ガスをキャリアガスとするTMGを供給する。第1のガス排出路54には、水素ガスが流れ、排出される。
【0074】
TMGの供給先を第1のガス排出路54から第1のガス供給路31に切り換える際、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は略同一に維持されている。したがって、切り替えの前後でTMGのバブリング圧力が一定に保たれるため、III族のソースガス(第1のプロセスガス)中のTMGの量が大きな変化をせず安定する。
【0075】
第2のガス供給路32からアンモニア(第2のプロセスガス)を、反応室10に流入させる際、アンモニアの第2のガス排出路64への流入を遮断し、アンモニアを第2のガス供給路32に流入させ、反応室10に、アンモニアを供給する。第2のガス排出路64には、水素ガスが流れ、排出される。
【0076】
そして、エピタキシャル成長終了時には、III族のソースガスの第1のガス供給路31への流入を第1の接続部85aを閉にすることで遮断する。そして、III族のソースガスを第2の接続部85bを開にすることで第1のガス排出路54に流入させることにより、GaN単結晶膜の成長が終了する。加熱部16の加熱出力を下げて半導体ウェハWの温度を下げ、所定の温度まで半導体ウェハWの温度が低下した後、接続部89bを閉にし、接続部89aを開にすることにより第2のガス供給路32から反応室10へのアンモニア供給を停止する。
【0077】
この成膜終了時には、TMGの第1のガス供給路31への流入が遮断され、TMGは第1のガス排出路54に流れるように切り替えられる。そして、反応室10へは第1のガス供給路31を介して水素ガスが供給される。
【0078】
また、アンモニアの第2のガス供給路32への流入が遮断され、アンモニアは第2のガス排出路64に流れるように切り替えられる。そして、反応室10へは第2のガス供給路32を介して水素ガスが供給される。
【0079】
ここで、例えば、回転体ユニット14の回転を停止させ、単結晶膜が形成された半導体ウェハWを支持部12に載置したままにして、加熱部16の加熱出力を初めに戻し、予備加熱の温度に低下するよう調整する。
【0080】
次に、例えば突き上げピンにより半導体ウェハWを支持部12から脱着させる。そして、再びゲートバルブを開いてハンドリングアームをシャワーヘッド100および支持部12の間に挿入し、その上に半導体ウェハWを載せる。そして、半導体ウェハWを載せたハンドリングアームをロードロック室に戻す。
【0081】
以上のようにして、一回の半導体ウェハWに対する成膜が終了し、例えば、引き続いて他の半導体ウェハWに対する成膜が上述したのと同一のプロセスシーケンスに従って行うことも可能である。
【0082】
本実施形態の気相成長方法では、有機金属の流れを第1のガス排出路54から第1のガス供給路31へと切り替える際に、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力が略同一に保たれる。また、反応室10に供給される有機金属を含む第1のプロセスガスの流量は、第1のマスフローコントローラM1、および、第1の調整部91、第2の調整部92により所望の流量に保たれる。したがって、第1のプロセスガス中の有機金属の量が安定し、第1のプロセスガスの流量も安定する。よって、半導体ウェハW表面に均一な単結晶半導体膜を成膜することが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態では、成膜の開始前後で、第1のガス供給路31から反応室10に供給されるキャリアガス(水素ガス)およびIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量は、マスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御され、略一定に保たれる。第2の調整部92の流量は、マスフローコントロ―ラM1の流量より小さく、マスフローコントロ―ラM7、M8、M9の流量の和より大きい値に制御される。これにより、反応室10へのキャリアガス(水素ガス)およびIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の供給が保たれる。第2の調整部92の流量がマスフローコントロ―ラM1の流量より大きいと、不足分のガスが、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aに流したIII族ガスの一部が連通路58を通って、第1のガス排出路54に流れてしまう。また、第2の調整部92の流量がマスフローコントロ―ラM7、M8、M9の流量の和より小さいと、第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aに流したガスの一部が、連通路58を通って、第1のガス供給路31に流れてしまう。
【0084】
(第2の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、反応室と、有機金属を供給する有機金属供給源と第1の接続部で接続され、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源に接続され、反応室に有機金属とキャリアガスを含むプロセスガスを供給するガス供給路と、有機金属供給源と第2の接続部で接続され、キャリアガス供給源と接続され、装置外に有機金属とキャリアガスを含むプロセスガスを排出するガス排出路と、ガス供給路の第1の接続部よりキャリアガス供給源側に設けられる第1のマスフローコントローラと、ガス排出路の第2の接続部よりキャリアガス供給源側に設けられる第2のマスフローコントローラと、ガス供給路の第1の接続部より反応室側に設けられる第1の調整部と、ガス排出路の第2の接続部より装置外側に設けられる第2の調整部と、第1のマスフローコントローラと第1の調整部との間のガス供給路と、第2のマスフローコントローラと第2の調整部との間のガス排出路とを連通させる連通路と、を備える。そして、第1の調整部と第2の調整部のいずれか一方がバックプレッシャーレギュレータであり、他方がマスフローコントローラである。
【0085】
本実施形態の気相成長装置は、上記構成を備えることにより、簡便な構成で、有機金属が流されるガス供給路とガス排出路の間の圧力を所望値の同一の圧力に維持することを可能にする。したがって、成膜の際に、ガス供給路から反応室へ供給される有機金属を含むプロセスガス(ソースガス)中の有機金属の量が安定する。よって、低コストで膜質の安定した成膜を実現できる。
【0086】
図3は、本実施形態の気相成長装置の構成図である。本実施形態の気相成長装置は、MOCVD法(有機金属気相成長法)を用いる縦型の枚葉型のエピタキシャル成長装置である。以下、主にGaN(窒化ガリウム)をエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0087】
気相成長装置は、ウェハ等の基板への成膜がその内部で行われる反応室10を備える。そして、反応室にプロセスガスを供給する、第1のガス供給路31、第2のガス供給路32、および、第3のガス供給路33を備えている。
【0088】
第1のガス供給路31は、反応室にIII族元素の有機金属とキャリアガスを含む第1のプロセスガスを供給する。第1のプロセスガスは、ウェハ上にIII−V族半導体の膜を成膜する際の、III族元素を含むガスである。
【0089】
III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、Al(アルミニウム)、In(インジウム)等である。また、有機金属は、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)等である。
【0090】
また、有機金属を貯留する第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57を備える。第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57は有機金属供給源の一例である。第1の有機金属貯留容器55には、例えば、TMGが、第2の有機金属貯留容器56には、例えば、TMAが、第3の有機金属貯留容器57には、例えば、TMIが、貯留される。
【0091】
また、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57は、有機金属をバブリングするためのキャリアガスを導入するキャリアガス供給源11に接続されている。キャリアガス供給源11は、例えば、水素ガスを供給する水素ガスラインである。さらに、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57に導入されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM7、M8、M9を備えている。
【0092】
第1のガス供給路31は、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57と、第1の接続部85a、86a、87aで接続される。第1の接続部85a、86a、87aは、例えば、四方バルブであり、有機金属の第1のガス供給路31への流入と遮断を制御する。四方バルブが開の場合、有機金属が第1のガス供給路31へ供給され、四方バルブが閉の場合、有機金属は第1のガス供給路31へ供給されない。
【0093】
第1のガス供給路31は、キャリアガスを供給するキャリアガス供給源11に接続される。
【0094】
また、第1のガス排出路54を備える。第1のガス排出路54は、気相成長装置が成膜時以外の状態にあるときに、第1のプロセスガスを装置外に排出するために設けられる。
【0095】
第1のガス排出路54は、第1、第2、第3の有機金属貯留容器55、56、57と、第2の接続部85b、86b、87bで接続される。第2の接続部85b、86b、87bは、例えば、三方バルブであり、有機金属の第1のガス排出路54への流入と遮断を制御する。三方バルブが開の場合、有機金属が第1のガス排出路54へ供給され、三方バルブが閉の場合、有機金属は第1のガス排出路54へ供給されない。第1のガス排出路54は、反応室からガスを排出する経路59と接続されている。
【0096】
第1のガス供給路31は、第1の接続部85a、86a、87aより、キャリアガス供給源11側に、マスフローコントローラM1(第1のマスフローコントローラ)を備える。
【0097】
第1のガス排出路54は、第2の接続部85b、86b、87bよりキャリアガス供給源11側に設けられるマスフローコントローラM2(第2のマスフローコントローラ)を備える。
【0098】
第1のガス供給路31の第1の接続部85a、86a、87aより反応室10側には、第1の調整部91が設けられる。また、第1のガス排出路54の第2の接続部85b、86b、87b側には、第2の調整部92が設けられる。
【0099】
そして、第1の調整部91がバックプレッシャーレギュレータであり、第2の調整部92がマスフローコントローラである。バックプレッシャーレギュレータは、一次側、すなわち、バックプレッシャーレギュレータ上流側の圧力を一定値に維持する機能を備える。
【0100】
第1の調整部91をマスフローコントローラ、第2の調整部92をバックプレッシャーレギュレータとする構成とすることも可能である。しかし、マスフローコントローラの流量センサ部に、高温になる部分が存在することがあるため、反応室10に供給される有機金属の高温部による分解を避ける観点から、第1の調整部91がバックプレッシャーレギュレータであり、第2の調整部92がマスフローコントローラであることが望ましい。
【0101】
そして、マスフローコントローラM1(第1のマスフローコントローラ)と第1の調整部91との間と、マスフローコントローラM2(第2のマスフローコントローラ)と第2の調整部92との間を連通させる連通路58が設けられる。
【0102】
連通路58は、マスフローコントローラM1(第1のマスフローコントローラ)と第1の接続部85aの間と、マスフローコントローラM2(第2のマスフローコントローラ)と第2の接続部85bの間を連通するよう設けられることが望ましい。有機金属を含むガスが第1のガス供給路31と第1のガス排出路54との間を行き来し、ガス中の有機金属の量が変化することを抑制するためである。
【0103】
さらに、連通路58のガスの通過と遮断を制御する制御バルブ93を、備えることが望ましい。例えば、装置のメンテナンス時に第1のガス供給路31と第1のガス排出路54との間を遮断することが可能となるからである。
【0104】
第2のガス供給路32は、反応室にアンモニア(NH
3)を含む第2のプロセスガスを供給する。第2のプロセスガスは、ウェハ上にIII−V族半導体の膜を成膜する際の、V族元素、窒素(N)のソースガスである。第2のガス供給路32は、キャリアガス供給源11に接続される。第2のガス供給路32は、第2のガス供給路の32に供給されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM3を備えている。
【0105】
また、第2のガス排出路64を備える。第2のガス排出路64は、第2のプロセスガスを装置外に排出するために設けられる。第2のガス排出路64は、キャリアガス供給源11に接続される。第2のガス排出路64は、第2のガス排出路64に供給されるキャリアガスの流量を制御するマスフローコントローラM4を備えている。第2のガス排出路64は、反応室からガスを排出する経路59と接続されている。
【0106】
そして、第2のガス供給路32および第2のガス排出路64に導入されるアンモニアの流量を制御するマスフローコントローラM6が設けられている。
【0107】
また、反応室10に第3のプロセスガスを供給する第3のガス供給路33が設けられている。第3のプロセスガスは、いわゆる分離ガスであり、反応室10内に第1のプロセスガスと第2のプロセスガスを噴出させる際に、両者の間に噴出させる。これにより、第1のプロセスガスと第2のプロセスガスとが噴出直後に反応することを抑制する。
【0108】
本実施形態では、第3のガス供給路33は、キャリアガス供給源11に接続される。そして、キャリアガス供給源11から分離ガスとなる水素ガスを供給する。第3のガス供給路33には、第3のガス供給路33に供給される水素ガスの流量を制御するマスフローコントローラM5が設けられている。
【0109】
なお、本実施形態の気相成長装置の要部については第1の実施形態と同様であるので記述を省略する。
【0110】
本実施形態の気相成長装置は、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の間を、連通路58によって連通する。そして、連通することにより第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力を、バックプレッシャーレギュレータで略同一の所定の圧力に保つ。有機金属容器は、第1の接続部もしくは、第2の接続部のいずれかで、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aと第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aのいずれかに接続される。これにより、有機金属をバブリングする際のバブリング圧力を成膜時も成膜時以外も略一定に保つことが可能となる。また、III族のソースガスを第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aから、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aに切り替えた場合でも、連通路58を流れるガス流量がその分だけ変化し、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54に流れるガス流量は、ほとんど変化しない。そのために、III族のソースガスを切り替える際に、その流量とほぼ等しいガス流量を、III族のソースガスとは、反対の流路に流す、いわゆる補償ガスを流す必要が無い。したがって、III族のソースガス(第1のプロセスガス)中の有機金属量が安定し、膜質の安定した半導体膜の成膜を実現できる。
【0111】
そして、第1のガス供給路31から反応室10に供給されるIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量は、マスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御され、略一定に保たれる。マスフローコントローラである第2の調整部92の流量は、マスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値に制御される。これにより、反応室10へのIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の供給が保たれる。
【0112】
特に、本実施形態のように、有機金属供給源が複数あったとしても、1個のバックプレッシャーレギュレータと1個のマスフローコントローラを、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54とに設けるという簡便な構成で、有機金属のバブリング圧力と、反応室10に供給するIII族のソースガスの流量を安定にすることが可能となる。
【0113】
本実施形態の気相成長装置によれば、簡便な構成でIII族のソースガス中の有機金属の量を安定化させる気相成長装置を提供することが可能となる。
【0114】
本実施形態の気相成長方法は、
図3および
図2の枚葉型エピタキシャル成長装置を用いる。そして、反応室に基板を搬入し、キャリアガスをガス供給路およびガス排出路に流入させ、有機金属のガス供給路への流入を遮断した状態で、有機金属をガス排出路に流入させ、連通路で連通させることによりガス供給路内とガス排出路内の圧力を略同一にするとともに、バックプレッシャーレギュレータにより圧力を所望の圧力に制御し、有機金属のガス排出路への流入を遮断し、有機金属をガス供給路に流入させ、圧力を所望の圧力に維持した状態で、反応室に、有機金属とキャリアガスを供給して、基板表面に半導体膜を成膜する。
【0115】
以下、本実施形態の気相成長方法について、GaNをエピタキシャル成長させる場合を例に説明する。
【0116】
反応室10にキャリアガスが供給され、図示しない真空ポンプを作動して反応室10内のガスをガス排出部26から排気して、反応室10を所定の圧力に制御している状態で、反応室10内の支持部12に半導体ウェハWを載置する。ここで、例えば、反応室10のウェハ出入口のゲートバルブ(図示せず)を開きハンドリングアームにより、ロードロック室内の半導体ウェハWを反応室10内に搬入する。そして、半導体ウェハWは例えば突き上げピン(図示せず)を介して支持部12に載置され、ハンドリングアームはロードロック室に戻され、ゲートバルブは閉じられる。
【0117】
ここで、支持部12に載置した半導体ウェハWは、加熱部16により所定温度に予備加熱している。
【0118】
キャリアガス供給源11から水素ガスが、第1のガス供給路31および第1のガス排出路54に流入される。第1のガス供給路31に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御される。また、第1のガス排出路54に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラである第2の調整部92によって制御される。そのため、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガス流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値になる。
【0119】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、TMGを貯留する第1の有機金属貯留容器55に、TMGのバブリングのために供給される。第1の有機金属貯留容器55に供給される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM7によって制御される。
【0120】
成膜前の段階では、バブリングされた有機金属の第1のガス供給路31への流入を遮断した状態で、TMGを第1のガス排出路54に流入させる。この際、制御バルブ93を開いた状態にすることで、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側は、連通路58により連通した状態となっている。したがって、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は略同一になる。また、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は、バックプレッシャーである第1の調整部91により、所望の圧力に制御されている。
【0121】
ここで、第1のガス供給路31から反応室10へは、水素ガスが供給されている。
【0122】
第1のガス供給路31から反応室に供給される水素ガスの流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御される。そのため、マスフローコントローラである第2の調整部92の流量は、上流側のマスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値に制御される。これにより、反応室10へのキャリアガス(水素ガス)の供給が保たれる。
【0123】
反応室10に供給されないTMGおよび水素ガスを含むソースガス(第1のプロセスガス)は、第1の排出路54により排出されている。
【0124】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、第2のガス供給路32および第2のガス排出路64に流入される。第2のガス供給路32に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM3によって制御される。また、第2のガス排出路64に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM4によって制御されている。
【0125】
成膜前の段階では、アンモニア(第2のプロセスガス)は、第2のガス排出路64に流入される。この際、第2のガス供給路32へのアンモニアの流入は遮断されている。アンモニアは、第2のガス排出路64から排出されている。
【0126】
一方、反応室10には、第2のガス供給路32を介して水素ガスが供給されている。
【0127】
また、キャリアガス供給源11から水素ガスが、第3のガス供給路33に流入されている。この水素ガスが反応室10に供給されている。第3のガス供給路33に流入される水素ガスの流量は、マスフローコントローラM5によって制御されている。
【0128】
その後、加熱部16の加熱出力を上げて半導体ウェハWを所定の温度、例えば、1150℃程度のベーク温度に昇温させる。
【0129】
そして、上記真空ポンプによる排気を続行すると共に、回転体ユニット14を所定の速度で回転させながら、成膜前のベークを行う。このベークにより、例えば、半導体ウェハW上の自然酸化膜が除去される。
【0130】
ベークの際には、水素ガスが第1のガス供給路31、第2のガス供給路32、および、第3のガス供給路33を通って、反応室10に供給される。
【0131】
所定の時間、ベークを行った後に、例えば、加熱部16の加熱出力を下げて半導体ウェハWをエピタキシャル成長温度、例えば、1100℃に降温させる。
【0132】
ここで、第2の接続部85bを閉にし、第1の接続部85aを開にすることにより、第1のガス供給路31から、水素ガスをキャリアガスとするTMG(第1のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。また、接続部89bを
開にし、接続部89aを
閉にすることにより第2のガス供給路32から、アンモニア(第2のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。また、第3のガス供給路33から、水素ガス(第3のプロセスガス)を、シャワーヘッド100を介して反応室10に供給する。これにより、半導体ウェハW上にGaN膜をエピタキシャル成長させる。
【0133】
第1のガス供給路31からTMGを含むIII族のソースガス(第1のプロセスガス)を反応室10に流入させる際、III族のソースガスの第1のガス排出路54への流入を第2の接続部85bを閉にすることで遮断する。そして、III族のソースガスを第1の接続部85aを開にすることで第1のガス供給路31に流入させる。そして、第1のガス供給路31と第1のガス排出路54内の圧力を所望の圧力に維持した状態で、反応室10に、水素ガスをキャリアガスとするTMGを供給する。第1のガス排出路54には、水素ガスが流れ、排出される。
【0134】
TMGの供給先を第1のガス排出路54から第1のガス供給路31に切り換える際、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力は略同一に維持されている。したがって、切り替えの前後でTMGのバブリング圧力が一定に保たれるため、III族のソースガス(第1のプロセスガス)中のTMGの量が大きな変化をせず安定する。
【0135】
第2のガス供給路32からアンモニア(第2のプロセスガス)を、反応室10に流入させる際、アンモニアの第2のガス排出路64への流入を遮断し、アンモニアを第2のガス供給路32に流入させ、反応室10に、アンモニアを供給する。第2のガス排出路64には、水素ガスが流れ、排出される。
【0136】
そして、エピタキシャル成長終了時には、III族のソースガスの第1のガス供給路31への流入を第1の接続部85aを閉にすることで遮断する。そして、III族のソースガスを第2の接続部85bを開にすることで第1のガス排出路54に流入させることにより、GaN単結晶膜の成長が終了する。加熱部16の加熱出力を下げて半導体ウェハWの温度を下げ、所定の温度まで半導体ウェハWの温度が低下した後、接続部89bを閉にし、接続部89aを開にすることにより第2のガス供給路32から反応室10へのアンモニア供給を停止する。
【0137】
この成膜終了時には、TMGの第1のガス供給路31への流入が遮断され、TMGは第1のガス排出路54に流れるように切り替えられる。そして、反応室10へは第1のガス供給路31を介して水素ガスが供給される。
【0138】
また、アンモニアの第2のガス供給路32への流入が遮断され、アンモニアは第2のガス排出路64に流れるように切り替えられる。そして、反応室10へは第2のガス供給路32を介して水素ガスが供給される。
【0139】
ここで、例えば、回転体ユニット14の回転を停止させ、単結晶膜が形成された半導体ウェハWを支持部12に載置したままにして、加熱部16の加熱出力を初めに戻し、予備加熱の温度に低下するよう調整する。
【0140】
次に、例えば突き上げピンにより半導体ウェハWを支持部12から脱着させる。そして、再びゲートバルブを開いてハンドリングアームをシャワーヘッド100および支持部12の間に挿入し、その上に半導体ウェハWを載せる。そして、半導体ウェハWを載せたハンドリングアームをロードロック室に戻す。
【0141】
以上のようにして、一回の半導体ウェハWに対する成膜が終了し、例えば、引き続いて他の半導体ウェハWに対する成膜が上述したのと同一のプロセスシーケンスに従って行うことも可能である。
【0142】
本実施形態の気相成長方法では、有機金属の流れを第1のガス排出路54から第1のガス供給路31へと切り替える際に、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側と第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側の圧力が略同一に保たれる。また、反応室10に供給される有機金属を含む第1のプロセスガスの流量は、第1のマスフローコントローラM1、第2のマスフローコントローラM2、および、第1の調整部91、第2の調整部92により所望の流量に保たれる。したがって、第1のプロセスガス中の有機金属の量が安定し、第1のプロセスガスの流量も安定する。よって、半導体ウェハW表面に均一な単結晶半導体膜を成膜することが可能となる。
【0143】
なお、本実施形態では、成膜の開始前後で、第1のガス供給路31から反応室10に供給されるキャリアガス(水素ガス)およびIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量は、マスフローコントロ―ラM1、M2、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第2の調整部92で制御されるガスの流量との差分により制御され、略一定に保たれる。第2の調整部92の流量は、マスフローコントロ―ラM1の流量より小さく、マスフローコントロ―ラM7、M8、M9の流量の和より大きい値に制御される。これにより、反応室10へのキャリアガス(水素ガス)およびIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の供給が保たれる。第2の調整部92の流量がマスフローコントロ―ラM1の流量より大きいと、不足分のガスが、第1のガス供給路31の第1の調整部91の上流側31aに流したIII族ガスの一部が連通路58を通って、第1のガス排出路54に流れてしまう。また、第2の調整部92の流量がマスフローコントロ―ラM7、M8、M9の流量の和より小さいと、第1のガス排出路54の第2の調整部92の上流側54aに流したガスの一部が、連通路58を通って、第1のガス供給路31に流れてしまう。
【0144】
(第3の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、第1の調整部91をマスフローコントローラ、第2の調整部92をバックプレッシャーレギュレータであること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0145】
本実施形態では、第1の調整部91がマスフローコントロ―ラであるため、反応室10に供給される有機金属を含む第1のプロセスガスの流量が直接制御される。したがって、III族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量がより安定し、膜質の安定した半導体単結晶膜の成膜を実現できる。
【0146】
本実施形態では、第1のガス供給路31から反応室10に供給されるIII族のソースガス(第1のプロセスガス)の流量は、マスフローコントロ―ラM
1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量と、マスフローコントローラである第1の調整部91で制御されるガスの流量との差分により制御され、略一定に保たれる。マスフローコントローラである第1の調整部91で制御されるガス流量は、マスフローコントロ―ラM1、M7、M8、M9で制御されるキャリアガスの流量の和より小さい値に制御される。
【0147】
(第4の実施形態)
本実施形態の気相成長装置は、連通路58が、第1の接続部86aと第1の接続部87aとの間の第1のガス供給路3
1と、第2の接続部86bと第2の接続部87bとの間の第2のガス排出路54とを連通させること以外は、第2の実施形態と同様である。したがって、第2の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0148】
本実施形態においても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態の気相成長装置で半導体膜を成膜する場合、特に、第1のガス排出路54から有機金属を含むガスが、連通路58を通って第1のガス供給路31に逆流することを回避する観点から、成膜前は、キャリアガスが連通路58を、第1のガス供給路31から第1のガス排出路54に流れるようキャリアガスの流量を制御することが望ましい。また、成膜中は第1のガス供給路31に供給される有機金属の量を安泰させるために、キャリアガスが連通路58を、第1のガス排出路54から第1のガス供給路31からに流れるようキャリアガスの流量を制御することが望ましい。
【0149】
なお、連通路58は、第1の接続部85aと第1の接続部86aとの間の第1のガス供給路3
1と、第2の接続部85bと第2の接続部86bとの間の第2のガス排出路54とを連通させる構成とすることも可能である。また、連通路58は、第1の接続部87aと第1の調整部91との間の第1のガス供給路3
1と、第2の接続部87bと第2の調整部92との間の第2のガス排出路54とを連通させる構成とすることも可能である。
【0150】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記、実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0151】
例えば、実施形態では、GaN(窒化ガリウム)の単結晶膜を成膜する場合を例に説明したが、例えば、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)等、その他のIII−V族の窒化物系半導体の単結晶膜等の成膜にも本発明を適用することが可能である。また、GaAs等のIII−V族の半導体にも本発明を適用することが可能である。
【0152】
また、有機金属がTMG1種の場合を例に説明したが、2種以上の有機金属をIII族元素のソースとして用いる場合であっても、本実施形態は簡便な構成で、2種以上の有機金属のバブリング圧力と、反応室10へのIII族元素のソースガス流量を安定化させることが可能となる。有機金属は、III族元素以外の元素でもかまわない。
【0153】
また、キャリアガスとして水素ガス(H
2)を例に説明したが、その他、窒素ガス(N
2)、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)、あるいは、それらのガスの組み合わせをキャリアガスとして適用することが可能である。
【0154】
また、実施形態では、ウェハ1枚毎に成膜する縦型の枚葉式のエピタキシャル装置を例に説明したが、気相成長装置は、枚葉式のエピタキシャル装置に限られるものではない。例えば、自公転する複数のウェハに同時に成膜するプラネタリー方式のCVD装置や、横型のエピタキシャル装置等にも、本発明を適用することが可能である。
【0155】
実施形態では、装置構成や製造方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や製造方法等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての気相成長装置および気相成長方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。