特許第6110136号(P6110136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6110136ウエーハのレーザー加工方法およびレーザー加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110136
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】ウエーハのレーザー加工方法およびレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20170327BHJP
   B23K 26/40 20140101ALI20170327BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170327BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   H01L21/78 M
   B23K26/40
   B23K26/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-287691(P2012-287691)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130910(P2014-130910A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】重松 孝一
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−240114(JP,A)
【文献】 特開2008−098348(JP,A)
【文献】 特開2005−118808(JP,A)
【文献】 特開2009−064905(JP,A)
【文献】 特開2009−125756(JP,A)
【文献】 特開2010−074129(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0032228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/00 − 26/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面に接着フィルムを装着するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
該分割溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの裏面を研削して裏面に該分割溝を表出させ、ウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハ分割工程と、
該ウエーハ分割工程が実施されたウエーハの裏面に接着フィルムを装着するとともに接着フィルム側にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持し、ウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハが貼着されたダイシングテープ側をレーザー加工装置の被加工物保持手段に保持し、ウエーハの表面側から該分割溝を通して該接着フィルムにレーザー光線を照射することにより、該接着フィルムを該分割溝に沿って分割する接着フィルム分割工程と、を含み、
該接着フィルム分割工程は、レーザー光線を照射した際に発するプラズマ光を検出し、デバイスにレーザー光線が照射されることによって発するプラズマ光を検出したときの座標値を記録する、
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に形成されたデバイスが該ストリートに沿った分割溝によって個々のデバイスに分割され裏面側にダイボンディング用の接着フィルムが装着されたウエーハを保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された該ウエーハの表面側から該分割溝に沿って該接着フィルムに対してレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に移動せしめる割り出し送り手段と、該被加工物保持手段のX軸方向位置を検出するX軸方向位置検出手段と、該被加工物保持手段のY軸方向位置を検出するY軸方向位置検出手段と、該被加工物保持手段に保持されたウエーハの加工すべき分割溝を撮像する撮像手段と、を具備しているレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段に保持された該ウエーハの該分割溝に沿って該接着フィルムにレーザー光線が照射されるとき、該ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出するプラズマ検出手段と、制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該プラズマ検出手段と該X軸方向位置検出手段および該Y軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいて該プラズマ検出手段によって検出されたプラズマ光が発生した座標値を記録するメモリを備えており、該プラズマ検出手段が該ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出した場合、該X軸方向位置検出手段および該Y軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいてプラズマ光が発生した座標値を求め、該プラズマ光が発生した座標値を加工不良座標値として該メモリに記録する、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に格子状に形成されたストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面に装着されたダイボンディング用の接着フィルムがデバイスの外周に沿って破断されているかを確認することができるウエーハのレーザー加工方法およびレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に形成された分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイスを形成し、該デバイスが形成された各領域をストリートに沿って分割することにより個々の半導体デバイスを製造している。半導体ウエーハを分割する分割装置としては一般にダイシング装置が用いられており、このダイシング装置は厚さが20μm程度の切削ブレードによって半導体ウエーハをストリートに沿って切削する。このようにして分割された半導体デバイスは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
個々に分割された半導体デバイスは、その裏面にポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂脂等で形成された厚さ20〜40μmのダイアタッチフィルム(DAF)と呼ばれる ダイボンディング用の接着フィルムが装着され、この接着フィルムを介して半導体デバイスを支持するダイボンディングフレームに加熱することによりボンディングされる。半導体デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する方法としては、半導体ウエーハの裏面に接着フィルムを貼着し、この接着フィルムを介して半導体ウエーハをダイシングテープに貼着した後、半導体ウエーハの表面に形成されたストリートに沿って切削ブレードにより接着フィルムと共に切断することにより、裏面に接着フィルムが装着された半導体デバイスを形成している。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
しかるに、特開2000−182995号公報に開示された方法によると、切削ブレードにより半導体ウエーハとともに接着フィルムを切断して個々の半導体デバイスに分割する際に、半導体デバイスの裏面に欠けが生じたり、接着フィルムに髭状のバリが発生してワイヤボンディングの際に断線の原因になるという問題がある。
【0005】
近年、携帯電話やパソコン等の電気機器はより軽量化、小型化が求められており、より薄い半導体デバイスが要求されている。より薄く半導体デバイスを分割する技術として所謂先ダイシング法と称する分割技術が実用化されている。この先ダイシング法は、半導体ウエーハの表面からストリートに沿って所定の深さ(半導体デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の切削溝を形成し、その後、表面に切削溝が形成された半導体ウエーハの裏面を研削して該裏面に切削溝を表出させ個々の半導体デバイスに分割する技術であり、半導体デバイスの厚さを50μm以下に加工することが可能である。
【0006】
しかるに、先ダイシング法によって半導体ウエーハを個々の半導体デバイスに分割する場合には、半導体ウエーハの表面からストリートに沿って所定の深さの切削溝を形成した後に半導体ウエーハの裏面を研削して該裏面に切削溝を表出させるので、ダイボンディング用の接着フィルムを前もって半導体ウエーハの裏面に装着することができない。従って、先ダイシング法によって半導体デバイスを支持するダイボンディングフレームにボンディングする際には、半導体デバイスとダイボンディングフレームとの間にボンド剤を挿入しながら行わなければならず、ボンディング作業を円滑に実施することができないという問題がある。
【0007】
このような問題を解消するために、先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割されたウエーハの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着し、この接着フィルムを介して半導体デバイスをダイシングテープに貼着した後、各半導体デバイス間の間隙に露出された該接着フィルムの部分に、半導体デバイスの表面側から上記間隙を通してレーザー光線を照射し、接着フィルムの上記間隙に露出された部分を除去するようにした半導体デバイスの製造方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−182995号公報
【特許文献2】特開2002−118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
而して、上記特許文献2に記載された加工方法においては、半導体デバイス間の間隙が不十分であったり、半導体デバイスが分割溝側に突出していると、レーザー光線が部分的に半導体デバイスに遮られ接着フィルムが切断されない個所が発生する。このため、ダイシングテープから半導体デバイスをピックアップする際に、接着フィルムとともに半導体デバイスをピックアップすることができない個所が生じてピックアップ工程を円滑に遂行できないという問題がある。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、デバイスの裏面に装着されたダイボンディング用の接着フィルムがデバイスの外周に沿って破断されているかを確認することができるウエーハのレーザー加工方法およびレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面に接着フィルムを装着するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
該分割溝形成工程が実施されたウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材貼着工程が実施されたウエーハの裏面を研削して裏面に該分割溝を表出させ、ウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハ分割工程と、
該ウエーハ分割工程が実施されたウエーハの裏面に接着フィルムを装着するとともに接着フィルム側にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持し、ウエーハの表面に貼着された保護部材を剥離するウエーハ支持工程と、
該ウエーハ支持工程が実施されたウエーハが貼着されたダイシングテープ側をレーザー加工装置の被加工物保持手段に保持し、ウエーハの表面側から該分割溝を通して該接着フィルムにレーザー光線を照射することにより、該接着フィルムを該分割溝に沿って分割する接着フィルム分割工程と、を含み、
該接着フィルム分割工程は、レーザー光線を照射した際に発するプラズマ光を検出し、デバイスにレーザー光線が照射されることによって発するプラズマ光を検出したときの座標値を記録する、
ことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域に形成されたデバイスが該ストリートに沿った分割溝によって個々のデバイスに分割され裏面側にダイボンディング用の接着フィルムが装着されたウエーハを保持する被加工物保持手段と、該被加工物保持手段に保持された該ウエーハの表面側から該分割溝に沿って該接着フィルムに対してレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、該被加工物保持手段と該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に相対的に移動せしめる割り出し送り手段と、該被加工物保持手段のX軸方向位置を検出するX軸方向位置検出手段と、該被加工物保持手段のY軸方向位置を検出するY軸方向位置検出手段と、該被加工物保持手段に保持されたウエーハの加工すべき分割溝を撮像する撮像手段と、を具備しているレーザー加工装置において、
該被加工物保持手段に保持された該ウエーハの該分割溝に沿って該接着フィルムにレーザー光線が照射されるとき、該ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出するプラズマ検出手段と、制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該プラズマ検出手段と該X軸方向位置検出手段および該Y軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいて該プラズマ検出手段によって検出されたプラズマ光が発生した座標値を記録するメモリを備えており、該プラズマ検出手段が該ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出した場合、該X軸方向位置検出手段および該Y軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいてプラズマ光が発生した座標値を求め、該プラズマ光が発生した座標値を加工不良座標値として該メモリに記録する、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるウエーハの加工方法においては、所謂先ダイシング法によって個々のデバイスに分割されたウエーハの表面側から分割溝を通して接着フィルムにレーザー光線を照射することにより、接着フィルムを分割溝に沿って分割する接着フィルム分割工程は、レーザー光線を照射した際に発するプラズマ光を検出し、デバイスにレーザー光線が照射されることによって発するプラズマ光を検出したときの座標値を記録するので、記録された加工不良情報としての接着フィルムが切断されていない個所の座標値を次工程であるピックアップ工程で利用することにより、接着フィルムとともにデバイスをピックアップすることができないという不具合を解消することができる。
また、加工不良情報としての接着フィルムが切断されていない個所の座標値に基づいて、加工不良領域のデバイスを撮像して加工不良の原因を検査することができる。
【0014】
また、本発明によるレーザー加工装置は、被加工物保持手段に保持されたウエーハの分割溝に沿って該接着フィルムにレーザー光線が照射されるとき、ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出するプラズマ検出手段と、制御手段と、を具備し、制御手段が、プラズマ検出手段とX軸方向位置検出手段およびY軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいてプラズマ検出手段によって検出されたプラズマ光が発生した座標値を記録するメモリを備えており、プラズマ検出手段が該ウエーハに該レーザー光線が照射されたことによって発生するプラズマ光を検出した場合、X軸方向位置検出手段およびY軸方向位置検出手段からの検出信号に基づいてプラズマ光が発生した座標値を求め、プラズマ光が発生した座標値を加工不良座標値としてメモリに記録するので、メモリに記録された加工情報を次工程で利用することにより、次工程を円滑に遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるウエーハの加工方法によって加工される半導体ウエーハを示す斜視図。
図2】本発明によるウエーハの加工方法における分割溝形成工程の説明図。
図3】本発明によるウエーハの加工方法における保護部材貼着工程の説明図。
図4】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ分割工程の説明図。
図5】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の説明図。
図6】本発明によるウエーハの加工方法におけるウエーハ支持工程の第2の実施形態を示す説明図。
図7】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
図8図7に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段およびプラズマ検出手段のブロック構成図。
図9図7に示すレーザー加工装置に装備される制御手段の構成ブロック図。
図10図7に示すレーザー加工装置に装備されるチャックテーブルにウエーハ支持工程が実施されたウエーハが保持された状態の座標値を示す説明図。
図11】本発明によるウエーハの加工方法におけるフィルム分割工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるウエーハのレーザー加工方法およびレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0017】
図1には、ウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、例えば厚さが600μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aには複数のストリート21が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ2の表面2aには、格子状に形成された複数のストリート21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。この半導体ウエーハ2を先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割する手順について説明する。
【0018】
半導体ウエーハ2を先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割するには、先ず半導体ウエーハ2の表面2aに形成されたストリート21に沿って所定深さ(各デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の分割溝を形成する(分割溝形成工程)。この分割溝形成工程は、図示の実施形態においては図2の(a)に示す切削装置3を用いて実施する。図2の(a)に示す切削装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を切削する切削手段32と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない切削送り機構によって図2の(a)において矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0019】
上記切削手段32は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に支持された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322の先端部に装着された切削ブレード323を含んでおり、回転スピンドル322がスピンドルハウジング321内に配設された図示しないサーボモータによって矢印322aで示す方向に回転せしめられるようになっている。なお、切削ブレード323の厚みは、図示の実施形態においては30μmに設定されている。上記撮像手段33は、スピンドルハウジング321の先端部に装着されており、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0020】
上述した切削装置3を用いて分割溝形成工程を実施するには、図2の(a)に示すようにチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2の裏面2b側を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に保持する。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、表面2aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り機構によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0021】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のストリート21に沿って分割溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート21と、切削ブレード323との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート21に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0022】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削領域の切削開始位置に移動する。そして、切削ブレード323を図2の(a)において矢印322aで示す方向に回転しつつ下方に移動して切り込み送りを実施する。この切り込み送り位置は、切削ブレード323の外周縁が半導体ウエーハ2の表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば、50μm)に設定されている。このようにして、切削ブレード323の切り込み送りを実施したならば、切削ブレード323を回転しつつチャックテーブル31を図2の(a)において矢印Xで示す方向に切削送りすることによって、図2の(b)に示すようにストリート21に沿って幅が20μmでデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば、50μm)の分割溝210が形成される(分割溝形成工程)。
【0023】
上述した分割溝形成工程を実施することにより半導体ウエーハ2の表面2aにストリート21に沿って所定深さの分割溝210を形成したら、図3の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2a(デバイス22が形成されている面)に、保護テープ4を貼着する(保護テープ貼着工程)。
【0024】
次に、保護テープ4が貼着された半導体ウエーハ2の裏面2bを研削し、分割溝210を裏面2bに表出させて半導体ウエーハ2を個々のデバイス22に分割するウエーハ分割工程を実施する。このウエーハ分割工程は、図4の(a)に示す研削装置5を用いて実施する。図4の(a)に示す研削装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研削するための研削砥石52を備えた研削手段53を具備している。この研削装置5を用いて上記ウエーハ分割工程を実施するには、チャックテーブル51上に半導体ウエーハ2の保護テープ4側を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2をチャックテーブル51上に保持する。従って、チャックテーブル51に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにして、チャックテーブル51上に半導体ウエーハ2を保持したならば、チャックテーブル51を矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段53の研削砥石52を矢印52aで示す方向に例えば6000rpmで回転しつつ半導体ウエーハ2の裏面2bに接触せしめて研削し、図4の(b)に示すように分割溝210が裏面2bに表出するまで研削する。このように分割溝210が表出するまで研削することによって、図4の(c)に示すように半導体ウエーハ2は個々のデバイス22に分割される。なお、分割された複数のデバイス22は、その表面に保護テープ4が貼着されているので、バラバラにはならず半導体ウエーハ2の形態が維持されている。
【0025】
上述したウエーハ分割工程を実施したならば、個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bにダイボンディング用の接着フィルムを装着するとともに該接着フィルム側にダイシングテープを貼着しダイシングテープの外周部を環状のフレームによって支持し、半導体ウエーハ2の表面に貼着された保護部材を剥離するウエーハ支持工程を実施する。このウエーハ支持工程における第1の実施形態においては、図5の(a)および(b)に示すように個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bに接着フィルム(DAF)を装着する(接着フィルム装着工程)。このとき、80〜200°Cの温度で加熱しつつ接着フィルム(DAF)を半導体ウエーハ2の裏面2bに押圧して装着する。なお、接着フィルム(DAF)は、エポキシ系樹脂で形成されており、厚さが20μmのフィルム材からなっている。このようにして半導体ウエーハ2の裏面2bに接着フィルム(DAF)を装着したならば、図5の(c)に示すように接着フィルム(DAF)が装着された半導体ウエーハ2の接着フィルム(DAF)側を環状のフレームFに装着された伸張可能なダイシングテープTに貼着する。従って、半導体ウエーハ2の表面2aに貼着された保護テープ4は上側となる。そして、半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ4を剥離する。なお、図5の(a)乃至(c)に示す実施形態においては、環状のフレームFに装着されたダイシングテープTに接着フィルム(DAF)が装着された半導体ウエーハ2の接着フィルム(DAF)側を貼着する例を示したが、接着フィルム(DAF)が装着された半導体ウエーハ2の接着フィルム(DAF)側にダイシングテープTを貼着するとともにダイシングテープTの外周部を環状のフレームFに同時に装着してもよい。
【0026】
上述したウエーハ支持工程の他の実施形態について、図6を参照して説明する。
図6に示す実施形態は、ダイシングテープTの表面に予め接着フィルム(DAF)が貼着された接着フィルム付きのダイシングテープを使用する。即ち、図6の(a)、(b)に示すように環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープTの表面に貼着された接着フィルム(DAF)に、個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bを装着する。このとき、80〜200°Cの温度で加熱しつつ接着フィルム(DAF)を半導体ウエーハ2の裏面2bに押圧して装着する。なお、上記ダイシングテープTは、図示の実施形態においては厚さが95μmのポリオレフィンシートからなっている。このように接着フィルム付きのダイシングテープを使用する場合には、ダイシングテープTの表面に貼着された接着フィルム(DAF)に半導体ウエーハ2の裏面2bを装着することにより、接着フィルム(DAF)が装着された半導体ウエーハ2が環状のフレームFに装着されたダイシングテープTによって支持される。そして、図6の(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ4を剥離する。なお、図6の(a)、(b)に示す実施形態においては、環状のフレームFに外周部が装着されたダイシングテープTの表面に貼着された接着フィルム(DAF)に半導体ウエーハ2の裏面2bを装着する例を示したが、半導体ウエーハ2の裏面2bにダイシングテープTに貼着された接着フィルム(DAF)を装着するとともにダイシングテープTの外周部を環状のフレームFに同時に装着してもよい。
【0027】
上述したウエーハ支持工程を実施したならば、ウエーハ支持工程が実施された半導体ウエーハ2が貼着されたダイシングテープ側をレーザー加工装置の被加工物保持手段に保持し、半導体ウエーハ2の表面側から分割溝210を通して接着フィルム(DAF)にレーザー光線を照射することにより、接着フィルム(DAF)を分割溝210に沿って分割する接着フィルム分割工程を実施する。この接着フィルム分割工程は、図7に示すレーザー加工装置を用いて実施する。図7に示すレーザー加工装置6は、静止基台60と、該静止基台60に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構7と、静止基台60に上記矢印Xで示す方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構8と、該レーザー光線照射ユニット支持機構8に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット9とを具備している。
【0028】
上記チャックテーブル機構7は、静止基台60上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール71、71と、該案内レール71、71上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設された第一の滑動ブロック72と、該第1の滑動ブロック72上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック73と、該第2の滑動ブロック73上に円筒部材74によって支持されたカバーテーブル75と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル76を具備している。このチャックテーブル76は多孔性材料から形成された吸着チャック761を具備しており、吸着チャック761上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル76は、円筒部材74内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル76には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ762が配設されている。
【0029】
上記第1の滑動ブロック72は、その下面に上記一対の案内レール71、71と嵌合する一対の被案内溝721、721が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に形成された一対の案内レール722、722が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック72は、被案内溝721、721が一対の案内レール71、71に嵌合することにより、一対の案内レール71、71に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構7は、第1の滑動ブロック72を一対の案内レール71、71に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動させるための加工送り手段77を具備している。この加工送り手段77は、上記一対の案内レール71と71の間に平行に配設された雄ネジロッド771と、該雄ネジロッド771を回転駆動するためのパルスモータ772等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド771は、その一端が上記静止基台60に固定された軸受ブロック773に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ772の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド771は、第1の滑動ブロック72の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ772によって雄ネジロッド771を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック72は案内レール71、71に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動せしめられる。
【0030】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル76の加工送り量即ちX軸方向位置を検出するためのX軸方向位置検出手段774を備えている。X軸方向位置検出手段774は、案内レール71に沿って配設されたリニアスケール774aと、第1の滑動ブロック72に配設され第1の滑動ブロック72とともにリニアスケール774aに沿って移動する読み取りヘッド774bとからなっている。このX軸方向位置検出手段774の読み取りヘッド774bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル76の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出する。なお、上記加工送り手段77の駆動源としてパルスモータ772を用いた場合には、パルスモータ772に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル76の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。また、上記加工送り手段77の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル76の加工送り量即ちX軸方向の位置を検出することもできる。
【0031】
上記第2の滑動ブロック73は、その下面に上記第1の滑動ブロック72の上面に設けられた一対の案内レール722、722と嵌合する一対の被案内溝731、731が設けられており、この被案内溝731、731を一対の案内レール722、722に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構7は、第2の滑動ブロック73を第1の滑動ブロック72に設けられた一対の案内レール722、722に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第1の割り出し送り手段78を具備している。この第1の割り出し送り手段78は、上記一対の案内レール722と722の間に平行に配設された雄ネジロッド781と、該雄ネジロッド781を回転駆動するためのパルスモータ782等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド781は、その一端が上記第1の滑動ブロック72の上面に固定された軸受ブロック783に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ782の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド781は、第2の滑動ブロック73の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ782によって雄ネジロッド781を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック73は案内レール722、722に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0032】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック73の割り出し加工送り量即ちY軸方向位置を検出するためのY軸方向位置検出手段784を備えている。このY軸方向位置検出手段784は、案内レール722に沿って配設されたリニアスケール784aと、第2の滑動ブロック73に配設され第2の滑動ブロック73とともにリニアスケール784aに沿って移動する読み取りヘッド784bとからなっている。このY軸方向位置検出手段784の読み取りヘッド784bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル76の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段78の駆動源としてパルスモータ782を用いた場合には、パルスモータ782に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル76の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。また、上記第1の割り出し送り手段78の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル76の割り出し送り量即ちY軸方向の位置を検出することもできる。
【0033】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構8は、静止基台60上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール81、81と、該案内レール81、81上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台82を具備している。この可動支持基台82は、案内レール81、81上に移動可能に配設された移動支持部821と、該移動支持部821に取り付けられた装着部822とからなっている。装着部822は、一側面に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール823、823が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構8は、可動支持基台82を一対の案内レール81、81に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第2の割り出し送り手段83を具備している。この第2の割り出し送り手段83は、上記一対の案内レール81、81の間に平行に配設された雄ネジロッド831と、該雄ねじロッド831を回転駆動するためのパルスモータ832等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド831は、その一端が上記静止基台60に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ832の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド831は、可動支持基台82を構成する移動支持部821の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ832によって雄ネジロッド831を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台82は案内レール81、81に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0034】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット9は、ユニットホルダ91と、該ユニットホルダ91に取り付けられたレーザー光線照射手段92を具備している。ユニットホルダ91は、上記装着部822に設けられた一対の案内レール823、823に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝911、911が設けられており、この被案内溝911、911を上記案内レール823、823に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0035】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット9は、ユニットホルダ91を一対の案内レール823、823に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段93を具備している。集光点位置調整手段93は、一対の案内レール823、823の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ932等の駆動源を含んでおり、パルスモータ932によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ91およびレーザー光線照射手段92を案内レール823、823に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ932を正転駆動することによりレーザー光線照射手段92を上方に移動し、パルスモータ932を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段92を下方に移動するようになっている。
【0036】
図示のレーザー光線照射手段92は、上記ユニットホルダ91に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング921を含んでいる。このレーザー光線照射手段92について、図8を参照して説明する。
図示のレーザー光線照射手段92は、上記ケーシング921内に配設されたパルスレーザー光線発振手段922と、該パルスレーザー光線発振手段922によって発振されたパルスレーザー光線の出力を調整する出力調整手段923と、該出力調整手段923によって出力が調整されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル76の保持面に保持された被加工物Wに照射する集光器924を具備している。
【0037】
上記パルスレーザー光線発振手段922は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振器922aと、パルスレーザー光線発振器922aが発振するパルスレーザー光線の繰り返し周波数を設定する繰り返し周波数設定手段922bとから構成されている。上記出力調整手段923は、パルスレーザー光線発振手段922から発振されたパルスレーザー光線の出力を所定の出力に調整する。これらパルスレーザー光線発振手段922のパルスレーザー光線発振器922a、繰り返し周波数設定手段922bおよび出力調整手段923は、図示しない後述する制御手段によって制御される。
【0038】
上記集光器924は、パルスレーザー光線発振手段922から発振され出力調整手段923によって出力が調整されたパルスレーザー光線をチャックテーブル76の保持面に向けて方向変換する方向変換ミラー924aと、該方向変換ミラー924aによって方向変換されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル76に保持された被加工物Wに照射する集光レンズ924bを具備している。このように構成された集光器924は、図7に示すようにケーシング921の先端に装着される。
【0039】
上記レーザー光線照射手段92を構成するケーシング921の先端部には、図7に示すようにレーザー光線照射手段92によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段95が配設されている。この撮像手段95は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段等で構成されており、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0040】
図8を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置6は、レーザー光線照射ユニット9を構成するレーザー光線照射手段92のケーシング921に取り付けられ、レーザー光線照射手段92からチャックテーブル76に保持された被加工物にレーザー光線が照射されることによって発生するプラズマを検出するプラズマ検出手段96を備えている。このプラズマ検出手段96は、レーザー光線照射手段92の集光器924から照射されるレーザー光線がチャックテーブル76に保持された被加工物Wに照射されることによって発生するプラズマを受光するプラズマ受光手段961と、該プラズマ受光手段961によって受光されたプラズマ光のうち設定された物質(例えばシリコン(Si))のプラズマの波長(251nm)に対応して波長が245〜255nmの光だけを通過させるバンドパスフィルター962と、該バンドパスフィルター962を通過した光を受光して光強度信号を出力するホトデテクター963とからなっている。上記プラズマ受光手段961は、集光レンズ961aと、該961aを収容するレンズケース961bとからなり、レンズケース961bが図8に示すようにレーザー光線照射手段92のケーシング921に取り付けられる。このように構成されたプラズマ検出手段96のホトデテクター963は、受光した光の強度に対応する電圧信号を後述する制御手段に出力する。
【0041】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、図9に示す制御手段10を具備している。制御手段10はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)101と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)102と、後述する制御マップや被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)103と、入力インターフェース104および出力インターフェース105とを備えている。制御手段10の入力インターフェース104には、上記X軸方向位置検出手段774、Y軸方向位置検出手段784、撮像手段95、プラズマ検出手段96のホトデテクター963等からの検出信号が入力される。そして、制御手段10の出力インターフェース105からは、上記パルスモータ772、パルスモータ782、パルスモータ832、パルスモータ932、レーザー光線照射手段92のパルスレーザー光線発振手段922を構成するパルスレーザー光線発振器922aと繰り返し周波数設定手段922bおよび出力調整手段923、表示手段100等に制御信号を出力する。なお、ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、被加工物における加工不良個所の座標値を格納する加工不良情報格納領域103aを備えている。
【0042】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置6は以上のように構成されており、このレーザー加工装置6を用いて上記ウエーハ支持工程が実施された半導体ウエーハ2の裏面に装着されている接着フィルム(DAF)を分割溝210に沿って分割する接着フィルム分割工程について説明する。
ウエーハ支持工程が実施され環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持された半導体ウエーハ2は、図7に示すレーザー加工装置6のチャックテーブル76上にダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2は、ダイシングテープTを介してチャックテーブル76上に吸引保持される。従って、半導体ウエーハ2は、表面を上側にして保持される。また、環状のフレームFは、クランプ762によって固定される。
【0043】
上述したように半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル76は、加工送り手段77によって撮像手段95の直下に位置付けられる。チャックテーブル76が撮像手段95の直下に位置付けられると、チャックテーブル76上の半導体ウエーハ2は、図10に示す座標位置に位置付けられた状態となる。この状態で、撮像手段95を作動するとともに加工送り手段77および第1の割り出し送り手段78を作動してチャックテーブル76を移動して、チャックテーブル76に保持された半導体ウエーハ2に形成されている全ての分割溝210を検出し、制御手段10は上記X軸方向位置検出手段774およびY軸方向位置検出手段784からの検出信号に基いて全ての分割溝210の座標値をランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納する(アライメント工程)。
【0044】
次に、図11の(a)に示すようにチャックテーブル76にダイシングテープTを介して吸引保持されている半導体ウエーハ2を集光器924が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割溝210を集光器924の直下に位置付ける。次に、制御手段10は、レーザー光線照射手段92に制御信号を出力して集光器924から接着フィルム(DAF)に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ、チャックテーブル76を図11の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめるように加工送り手段77を制御する。そして、分割溝210の他端が図11の(b)に示すように集光器924の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル76の移動を停止する。この結果、パルスレーザー光線が所定の分割溝210を通して接着フィルムDAFに照射され、接着フィルムDAFには図11の(c)に示すように分割溝210に沿って切断溝Gが形成される(接着フィルム分割工程)。
【0045】
上記接着フィルム分割工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4パルススレーザー
波長 :355nmのパルスレーザー
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :2W
集光スポット径 :φ10μm
加工送り速度 :300mm/秒
【0046】
上記接着フィルム分割工程を実施する際に、半導体ウエーハ2に形成された分割溝210の間隙が不十分であったり、デバイス22が分割溝210側に突出していると、レーザー光線が部分的にデバイス22に遮られ接着フィルム(DAF)が切断されない個所が発生する。この接着フィルム(DAF)が切断されない個所を把握するために、制御手段10は接着フィルム分割工程を実施している際に上記プラズマ検出手段96が作動する。この接着フィルム分割工程において、制御手段10はプラズマ検出手段96のホトデテクター963から光強度信号を入力している。接着フィルム分割工程において集光器924から照射されるパルスレーザー光線が分割溝210を通して接着フィルム(DAF)に照射されている際には、接着フィルム(DAF)にパルスレーザー光線が照射されることによって発するプラズマ光の波長はプラズマ受光手段961によって受光されるがバンドパスフィルター962を通過する245〜255nm以外であるため、バンドパスフィルター962を通過することができない。一方、デバイス22が分割溝210側に突出していてパルスレーザー光線がデバイス22に照射されると、デバイス22がシリコンによって形成されているので波長が251nmのプラズマ光が発生する。このため、プラズマ受光手段961によって受光された波長が251nmのプラズマ光はバンドパスフィルター962を通過してホトデテクター963に達するので、ホトデテクター963は受光した光強度に対応した電圧信号を制御手段10に送る。制御手段10はホトデテクター963から送られた信号がシリコンウエーハからなるデバイス22のプラズマに基づくものであると判断する。そして、制御手段10は、上記X軸方向位置検出手段774およびY軸方向位置検出手段784からの検出信号に基いて、ホトデテクター963から受光した光強度に対応した電圧信号が出力されている間の座標値を加工不良座標値としてランダムアクセスメモリ(RAM)103に格納する(加工不良座標値検出工程)。
【0047】
上述したようにパルスレーザー光線を所定の方向に形成された全ての分割溝210を通して接着フィルム(DAF)に照射し、接着フィルム(DAF)に分割溝210に沿って切断溝Gを形成する接着フィルム分割工程を実施したならば、制御手段10は第1の割り出し送り手段78を作動して、チャックテーブル76を図7において矢印Yで示す方向に移動し隣接する分割溝210を集光器924の直下に位置付けて上記接着フィルム分割工程を実施する。このようにして所定方向に形成された分割溝210を通して接着フィルム(DAF)にパルスレーザー光線を照射する接着フィルム分割工程を実施したならば、チャックテーブル76を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に形成された分割溝210を通して接着フィルム(DAF)にパルスレーザー光線を照射する接着フィルム分割工程を実施する。このようにして半導体ウエーハ2に形成された全ての分割溝210を通して接着フィルム(DAF)にパルスレーザー光線を照射する接着フィルム分割工程を実施している際に、上述したように加工不良座標値検出工程が実施され、接着フィルム(DAF)が切断されていない個所の座標値がランダムアクセスメモリ(RAM)103の加工不良情報格納領域103aに格納される。また、ランダムアクセスメモリ(RAM)103の加工不良情報格納領域103aに格納された接着フィルム(DAF)が切断されていない個所の座標値は、加工不良情報として表示手段100に表示される。
【0048】
以上のようにして表示手段100に表示された加工不良情報としての接着フィルム(DAF)が切断されていない個所の座標値は、次工程であるピックアップ工程で利用することにより、接着フィルムとともにデバイスをピックアップすることができないという不具合を解消することができる。
また、表示手段100に表示された加工不良情報としての接着フィルム(DAF)が切断されていない個所の座標値に基づいて、該加工不良領域のデバイスを撮像して加工不良の原因を検査することができる。
【0049】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上記実施形態におけるプラズマ検出手段は、被加工物Wにレーザー光線が照射されることによって発生するプラズマを受光するプラズマ受光手段961と、設定された波長のプラズマの光だけを通過させるバンドパスフィルター962と、該バンドパスフィルター962を通過した光を受光して光強度信号を出力するホトデテクター963とからなる例を示したが、以下の検出方法を用いてもよい。
(1)上記バンドパスフィルターを用いずに、ホトデテクターによって検出されるプラズマの光強度が所定値に達したら異常と判定する。
(2)上記(1)の方法では照射するレーザーの発振波長が邪魔になるので、照射するレーザーの波長(例えば355nm)のみをブロックするフィルターの後にホトデテクターを配設してプラズマを検出する。
(3)照射するパルスレーザーのパルスの発振タイミングとずらしてプラズマを検出する。なお、この方法においては照射するレーザーの影響は軽減されるが、照射するレーザーの波長(例えば355nm)のみをブロックするフィルターをホトデテクターの前に配設することが望ましい。
【符号の説明】
【0050】
2:半導体ウエーハ
21:ストリート
22:デバイス
210:分割溝
3:切削装置
31:切削装置のチャックテーブル
32:切削手段
33:撮像手段
4:保護テープ
5:研削装置
51:研削装置のチャックテーブル
52:研削砥石
6:レーザー加工装置
7:チャックテーブル機構
76:チャックテーブル
77:加工送り手段
78:第1の割り出し送り手段
8:レーザー光線照射ユニット支持機構
82:可動支持基台
83:第2の割り出し送り手段
9:レーザー光線照射ユニット
92:レーザー光線照射手段
922:パルスレーザー光線発振手段
923:出力調整手段
924:集光器
95:撮像手段
96:プラズマ検出手段
961:プラズマ受光手段
962:バンドパスフィルター
963:ホトデテクター
10:制御手段
DAF:接着フィルム
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11