特許第6110519号(P6110519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6110519顕微鏡サンプルからサンプル表面層を改変する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6110519
(24)【登録日】2017年3月17日
(45)【発行日】2017年4月5日
(54)【発明の名称】顕微鏡サンプルからサンプル表面層を改変する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20170327BHJP
   G01N 1/30 20060101ALI20170327BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20170327BHJP
【FI】
   G01N1/28 F
   G01N1/28 J
   G01N1/30
   H01J37/20 Z
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-793(P2016-793)
(22)【出願日】2016年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-130733(P2016-130733A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】15150779.5
(32)【優先日】2015年1月12日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】トマース ヴィスタベール
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン フィリップ ジャン マクル ボットマン
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−133710(JP,A)
【文献】 特開2014−128871(JP,A)
【文献】 特開2005−303319(JP,A)
【文献】 特開2010−025656(JP,A)
【文献】 特開2013−011540(JP,A)
【文献】 特開2013−161647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
G01N 1/30
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子光学装置内のサンプルからサンプル表面層を改変する方法であって、当該方法は、真空内で実施され、且つ
1)マニピュレータに取付けられた顕微鏡サンプルを提供するステップと、
2)第1の温度における第1の液体を提供するステップと、
3)前記第1の液体内にステップ1)で提供された前記サンプルを浸漬し、それによりサンプル表面改変を生じるステップと、
4)前記第1の液体から前記サンプルを除去するステップと、
5)第2の温度における第2の液体を提供するステップと、
6)前記第2の液体内にステップ4)で得られた前記サンプルを浸漬するステップと、
7)前記第2の液体から前記サンプルを除去するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記サンプル表面改変は、サンプル表面粗さ、親水性、表面電荷、表面エネルギー、生体適合性、もしくは反応性の改変、官能基の追加、生体物質の追加、サンプル表面をメッキすること又はサンプル表面層の除去である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビーム誘起堆積を使用して溶接部を形成することにより、前記顕微鏡サンプルはマニピュレータに取付けられ、前記ビーム誘起堆積は、レーザービーム、電子ビームもしくはイオンビームにより誘起される、請求項1乃至2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルは、いずれの方向において10μm未満の寸法を有し、且つ前記第1の液体及び前記第2の液体は、体積1ピコリットル未満を有する液滴としてデポジットされる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは、半導体サンプルである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
マニピュレータに取付けられた顕微鏡サンプルを提供するステップ1)は、以下の:
・ワークピースを提供するステップと、
前記サンプルを前記マニピュレータに取付けるステップと、
・集束イオンビームを使用して、前記ワークピースから前記サンプルを切除するステップと
を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル表面改変は、エッチング、電気化学エッチング、無電解メッキもしくは電気メッキにより引き起こされ、前記電気メッキは、非仮想カソードを使用する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
除去されたもしくは追加されたサンプル表面層の厚さは10nm未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の液体は、リンス用液体であり、及び前記第2の液体内に前記サンプルを浸漬するステップ6)は、前記サンプルをリンスする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルは繰り返しリンスされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
リンスの各ステップは、新しいリンス用液体において行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の液体は、生体物質を含有し、前記サンプル表面改変は、前記サンプルの表面に生体物質を提供するステップを有し、及び前記第2の液体は、前記サンプルの表面に前記生体物質を結合するステップを生じる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル表面改変は、酵素、ナノワイヤもしくはその他のナノ構造のデポジットにより生じた活性サイトを形成することにより、前記サンプルを官能化するステップを有し、及び
前記第2の液体は、前記活性サイトに材料を提供することを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
2つの液体は1つの表面上に提供され、前記マニピュレータは前記表面に対して移動可能である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプル表面層の改変の際及び/もしくは後、前記サンプル表面は荷電粒子のビームを使用して検査される、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の液体挿入システム及び第2の液体挿入システムを使用して、前記2つの液体が適用される、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の液体注入システム及び前記第2の液体注入システムは、1つの構造的液体注入システムに統合される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子光学装置(100)内のサンプル(120)からサンプル表面層を改変(modifying)する方法に関わる。当該方法は、真空内で実施される。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、SJ Randolph et al., ‘Capsule−free fluid delivery and beam−induced electrodeposition in a scanning electron microscope’, RSC Adv., 2013, p 20016−23から知られる。
【0003】
Randolphは、環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)の低真空チャンバ内のCuSO溶液の液滴をデポジット(deposit)するための液体注入システム(ナノキャピラリ)の使用を記載する。液体のキャピラリフローは、ナノキャピラリを基板と接触させることにより誘起される。次いで微小液滴が形成され、且つ液滴蒸発速度を基板温度で制御すること(ペルティエ加熱/冷却ステージ)により、及び真空チャンバ内に注入されたHO上記の圧力を制御することにより、安定化される(即ち:その体積はほぼ一定に保たれる)。集束電子ビームは、圧力制限アパチャ介して液滴に収容され(admitted)、その結果、走査電子顕微鏡の電子エミッタは、低真空チャンバ内の真空よりも良好な真空において動作可能である。アノードとしてキャピラリ、及び仮想カソードとしてESEMの電子ビームを使用することにより、水性Cu2+から固体,高純度,積Cuへの電気化学還元が達成され、導電性及び絶縁性両方の基板上に電着を可能にする。
【0004】
語句「粒子光学装置」は、電子顕微鏡(透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡、等)、集束イオンビーム装置(FIB)及びそれらの組合せを包含するように使用されることに留意する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、サンプル表面層を改変することについて、改善され且つより汎用性のある方法の提供を意図する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明の方法は、以下の:
・マニピュレータに取付けられた顕微鏡サンプルを提供するステップと、
・第1の温度における第1の液体を提供するステップと、
・前記第1の液体内にサンプルを浸漬し、それによりサンプル表面改変を生じるステップと、
・前記第1の液体からサンプルを除去するステップと、
・第2の温度における第2の液体を提供するステップと、
・前記第2の液体内にサンプルを浸漬するステップと、
前記第2の液体からサンプルを除去するステップと
を有する。
【0007】
発明者らは、真空における液体の使用は、仮想カソードを使用する電着に有用であるだけでなく、サンプルが第1の液体内に浸漬され、次に第2の液体内に浸漬されるとき、サンプル表面の湿潤処理用途について全く新しい領域を開くことに気付いた。サンプル表面のこのような改変とは、粗さ、親水性、表面電荷、表面エネルギー、生体適合性、もしくは反応性の改変、官能基の追加、生体物質の追加、サンプル表面をメッキすること又はサンプル表面層の除去である。
【0008】
第1の液体内にサンプルを浸漬することにより、(湿潤)処理時間の制御が達成される。これはRandolphの方法では達成されない。第2の液体内にサンプルを浸漬することにより、サンプルは例えばリンス可能であり、又はさらなる湿潤処理ステップを追加してよい。
【0009】
好ましくは、第1の温度及び第2の温度は、制御された温度である。真空内の液体の温度は、その蒸発速度に、及び従ってそのに液体が存在する真空の劣化に強く影響する。
【0010】
Randolphは、真空内の液滴及び電気メッキの使用について開示するけれども、Randolphは液体内にサンプルを浸漬することについては沈黙することに留意する。また、Randolphは、サンプル(表面)上に液滴を形成し、且つ電子ビームが狙う位置にデポジットを局所的に形成することを目指すが、Randolphはメッキ以外の使用について沈黙する。それとは反対に、本願発明は、全サンプル表面の、又は少なくとも液体内に沈められた全サンプル表面の表面改変を目指す。
【0011】
第1の液体及び第2の液体は、1つの表面(「基板」)上に形成可能であるが、2つの異なる表面(「基板」)上に形成されてもよいことに留意する。後者の場合、2つの表面は、(異なる液体の蒸発速度を制御するための)温度又は(例えば、異なる液体について異なる湿潤特性を示す)構成において異なってよい。
【0012】
好ましくは、サンプルは、ビーム誘起堆積を使用する溶接を形成することにより、マニピュレータに取付けられる。ビーム誘起堆積は、レーザービーム、電子ビームもしくはイオンビームにより誘起される。
【0013】
一実施形態において、サンプルは、いずれの方向において10μm未満の寸法を有し、且つ第1の液体及び第2の液体は、体積1ピコリットル未満、より具体的には1フェムトリットル未満を有する液滴としてデポジットされる。
【0014】
液体が真空に曝露されるとき、液体の蒸発が生じることに留意する。この蒸発は、装置の真空を劣化させ、且つ液体の量を減らす。蒸発のコントロールは、液滴の温度を制御する(コントロールする)ことにより、及び周囲真空の分圧により、並びに液体のアプリケータ(キャピラリ、等)からの流れにより生じる。これら全てのファクタは、液滴及び液滴体積を安定化するのに必要とされる。
【0015】
例えばSEMもしくはFIB内に普通存在するステージの表面上の液滴の使用は、液体を提供する1つの形態であるけれども、提供のその他の形態も同様に使用してよいことに留意する。このようなその他の形態は、以下のものを包含してよい:
・例えばステージの凹部における小体積の(温度制御された)液体を提供し、使用後、液体の温度、及び従って蒸発速度を下げるステップ、
・使用しないときは、真空から密閉される、小体積の液体を提供するステップ、
・ステージ内の小さいチャネルを介して液体を提供するステップ、
・表面上に液滴をエレクトロスプレーするステップ、
・(チャネル内に小蒸気バブルを形成するステップ、又はピエゾ結晶を使用してチャネルの変形をして、液滴を絞り出すステップを包含する)インクジェットテクニックを使用して液滴を適用するステップ、等。
【0016】
当該方は、半導体サンプルの表面を改変するのに、特に好適であって、必要とされる厚さまで表面をエッチングし、及び又は薄い保護層、例えばプラチナの層でサンプルをメッキする。
【0017】
当該方法はまた、例えば米国特許第5,270,552号(Hitachi)から知られるように、集束イオンビームを使用して、ワークピース(例えばウエハもしくは生体サンプル)からサンプルを切除するのに良く適している。
【0018】
表面改変の好ましい実施形態は、エッチング、電気化学エッチング、無電解メッキもしくは非仮想カソードを使用する電気メッキである。
これらの実施形態において、第1の液体は、エッチング液(etchant)もしくはメッキ液である。エッチ除去は、エッチング液化学物質(chemical)、沈没時間(浸漬時間)、液体濃度、及び液体温度(及び電気化学エッチングの場合は電流)のパラメータを制御することにより制御可能である。
同様に、メッキ厚さは、メッキ化学物質、沈没時間(浸漬時間)、液体濃度、及び液体温度(及び電気メッキの場合は電流)のパラメータを制御することにより制御可能である。
これにより、エッチ除去もしくはメッキ厚さについて微細な制御が達成可能であって、当該方法を、厚さ10nm未満を有する表面層を除去もしくは追加するのによく適したものにする。
電気メッキ及び電エッチングの場合、液体に対して、サンプルにバイアスをかける。当該液体は、例えばそれが置かれている表面から、その電位を導出する。
【0019】
好ましい一実施形態において、第2の液体はリンス液である。リンス液は、先行するステップ、例えばエッチングもしくはメッキを終わらせ、及びまた、第1の液体内に存在するいずれの物質から表面を清める。リンス液に数回、又は異なる体積のリンス液(異なる液滴、等)内に繰り返しサンプルを浸漬することにより、リンスステップを数回繰り返してよい。
【0020】
別の一実施形態において、第1の液体は生体物質を含有し、それにより生体物質をサンプルに適用する。第2の液体は、サンプルの表面に生体物質を結合するステップを生じるか、又は生体物質を固定もしくは染色するための定着剤(fixative)もしくはステインであり得る。このような定着剤/ステインの例は、例えばホルムアルデヒド,グルタルアルデヒド,四酸化オスミウム,四酸化ルテニウム(rutheen)である。
【0021】
さらに別の一実施形態において、表面改変は、酵素、ナノワイヤもしくはその他のナノ構造のデポジットにより生じた活性サイトを形成することにより、サンプルを官能化するステップを有し、及び
第2の液体は、前記活性サイトに材料を提供することを有する。
【0022】
これらのテクニックは、大気条件下、現場外で(ex−situ)生体サンプルを調製している当業者に知られている。現在、真空内のその場で(in−situこれらのテクニックをそこに適用することにより、適用性並びにその使用しやすさが強化される。
【0023】
さらに別の一実施形態において、2つの液体が1つの表面上に提供され、マニピュレータは前記表面に対して移動可能である。
【0024】
この表面は、サンプルステージの表面であり得る。
【0025】
好ましい一実施形態において、サンプル表面層の改変の際及び/もしくは後、サンプル表面は荷電粒子のビームを使用して検査される。
【0026】
さらに別の一実施形態において、第1の液体注入システム及び第2の液体注入システムを使用して、2つの液体(the liquids)が適用される。
【0027】
さらなる一実施形態において、第1の液体注入システム及び第2の液体注入システムは、1つの構造的液体注入システムに統合される。
【0028】
この実施形態は、2つの液体注入システムを位置決めするの回避するのに、特に有用である。なぜならば、これは、1つのシステムだけを位置決めするのであって、処理時間の節約になるからだ。
【0029】
蒸発速度を制御するため、液体の温度は、好ましくは良く制御されなければならないことに留意する。一例として: 4℃における水の蒸気圧は、8.14hPaであり、20℃において23.4hPaである。両方の荷電粒子装置の真空システムは、蒸発した液体の量を取扱い可能であるべきで、且つ全処理時間中液体が存在するように、液体量は十分に大きくあるべきである。低い温度(融点のすぐ上)は、システム内の圧力及び液体の蒸発にとって好ましいが、高い温度は、高い反応速度をもたらす。使用される化学及び得られる効果(サンプル表面粗さ、親水性、表面電荷、表面エネルギー、生体適合性、もしくは反応性の改変、官能基の追加、生体物質の追加、サンプル表面をメッキすること又はサンプル表面層の除去)に依存して、最適な温度が選択される。
【0030】
集束イオンビームを使用して細らせてあるケイ素ラメラは、表面上にガリウム注入(implantation)、並びに結晶格子損傷を受ける。例えばJ. Mayer et al., ‘TEM Sample Preparation and FIB−Induced Damage’, MRS BULLETIN, Vol. 32 (May 2007), p. 400−407を参照。解決策は、ラメラから例えば10nm未満の薄い層をエッチングすることである。サンプルとマニピュレータとの間の溶接部が、その2つを接続するのに使用されるならば、当該処理、溶接部の完全な除去をもたらさないように注意すべきである。なぜならば溶接部の完全な除去は、サンプルとマニピュレータとの間の切断(disconnect)を、及び従ってサンプルの損失可能性をもたらしてしまうからである。溶接材料と液体との良い組み合わせを使用することにより、又は液体内にサンプルをもっぱら部分的に浸漬し、溶接部を液体のない状態に保つ(必要な場合、サンプルの表面の液体湿潤を心がける)ことにより、これは達成され得る。また、溶接部の厚さは典型的には約1μmであるので、溶接部の除去はあり得ない。もっと薄い厚さ(例えば10nm未満、もしくは50nm未満)ならばサンプルから除去される。典型的には集束イオンビームで加工された半導体サンプルの表面層の除去の場合、10nm未満の層が除去されることに言及することは意義がある。
【0031】
改変のために使用される化学物質は、サンプル材料及び改変のタイプに強く依存する。エッチング液の例は以下の通り。:
表1: 異なるサンプル材料の場合のエッチング液。
【表1】
【0032】
これらのエッチング液のための第1の液体が異なるので(この例において、エタノール系もしくは水系のいずれか)、使用される第2の液体はそれにマッチするように選択されるべきである(この例において、リンスのために使用される)。温度は、改変の要求(例えば反応速度)及び許容可能な蒸発速度にマッチするように選択されるべきである。蒸発速度は、液体注入器/サプライからの最大フローにより制限され得るなぜなら、高い蒸発速度において、又は荷電粒子装置のポンピングスピード(pumping speed)により、溶解した化学物質の濃度に変化が生じ得るためである
使用に依存して、第1の液体及び第2の液体は、同一の(制御された)温度もしくは異なる(制御された)温度を有し得る。
同様に、メッキ用(化学もしくは電気化学)化学物質及び溶媒が、当業者に知られる。
【0033】
溶解された生体物質を有する水もしくはアルコールの第1の液体を使用すると、第2の材料は、例えば蛍光タンパク質、蛍光マーカー、高電子密度マーカー(例えば、直径5乃至25nmを有する銀もしくは金粒子)を有し、生体物質の特定のサイトにそれら自身が付着する。
【0034】
ここで使用されるような蛍光マーカーの定義は、有機染料及び無機蛍光マーカー(量子ドット)を包含することに留意する。
【0035】
酵素、ナノワイヤもしくはその他のナノ構造を有する第1の液体は、サンプルを官能化する(例えば、サンプル上に活性サイトを形成する)のに使用され得る。前記活性サイトには、第2の液体内の生体物質が結合できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
今度は、本発明は、図面を使用して説明される。図面において同一の符号は、対応する図面を示す。そのため:
図1図1は、本発明によるSEMを概略的に表す。
図2図2は、本発明によるSEMの詳細を概略的に表す。
図3図3は、本発明によるSEMの別の構成の詳細を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面の詳細な説明
図1は、本発明によるSEMを概略的に表す。
【0038】
SEMカラム100は、排出可能なサンプルチャンバ130上に搭載される。SEMカラムは、0.2乃至30keVで選択可能なエネルギーを有する高エネルギー(energetic)電子のビーム104を生成する電子エミッタ102を有する。電子のビームは、レンズ106A,106B,106Cにより操作され、且つデフレクタ108A,108Bにより偏向される。レンズ及びデフレクタは、本質的に静電性もしくは磁性であってよく、且つレンズ及びデフレクタの数は、異なり得る。ビームは、絞りの開口を通過し(図示せず)、それによりビームの直径を制限し、並びにSEMカラムの真空内へガスの流入を制限する。
【0039】
SEMカラムを出ていく電子ビームは、SEMのサンプルステージ112へ向けられる。ステージは、典型的には3つの方向に並進運動(translation)可能であり、2つもしくは3つの軸の周りで傾斜可能である。サンプルを検査する前に、マニピュレータ116の先端(distal end)118に取付けられたサンプル120は、第1の液体122の液滴に浸漬される。第1の液体液滴は、液体インジェクタ110Aから得ることができる。同様に、第2の液滴は、液体インジェクタ110Bから得ることができる。
【0040】
第1の液体及び第2の液体内にサンプルを浸漬後、サンプルは、電子ビームがステージと交差する位置へ移送される。ビームがサンプルと当たるとき、例えばEverhart−Thornley検出器114により検出されるべき2次電子が放出され、かくしてサンプルの検査が可能である。
【0041】
液体の蒸発速度を制御するため、ペルティエヒータ/クーラー124がステージに取付けられる。液体を冷却し、最終的には凍結することは、液体の蒸気圧、及び従って(真空内での)その蒸発速度を下げる。
【0042】
コントローラ126は、(デフレクタを包含する)カラムを制御し、検出器114からのシグナルのためのシグナル/イメージプロセッサとして作動し、そしてマニピュレータ,液体インジェクタ及び真空ポンプ(後者は図示されない)を制御する。
【0043】
液体注入システムは当業者に知られ、且つ例えばKleindiek Nanotechnik GmbH, Reutlingen, Germanyから商業的に入手可能であることに留意する。http://www.nanotechnik.com/mis−em.htmlを参照。その他のインジェクタは、改変したガス注入システム(GISses)に、又はインクジェットプリンタから誘導されるテクニック(例えば、米国特許第8,919,902号,Ricoh Company Ltd.において考察されるようなピエゾ−エキスペラ(piezo−expellers)を使用する、もしくは米国特許第8,919,938号,Hewlett Packard Development Company L.P.において考察されるような熱バブルエキスペラ)を使用するインジェクタに基づいても、又はニードルからの電子スプレイに基づいてよい。
【0044】
上記例は、電子ビームについて述べているにすぎないが、同様にイオンを有する荷電粒子ビームを生成する装置は知られていることに、さらに留意する。イオンは、例えばガス放電源、液体金属イオン源から形成可能である。イオンは、正に荷電したイオンもしくは負に荷電したイオンであり得、及び多荷電イオンもしくは単一荷電イオンであり得る。また、荷電クラスターが生成され得る。
【0045】
図2は、本発明によるSEMの詳細を概略的に表す。
【0046】
図2は、液滴が形成されるエリアの拡大図を概略的に表す。サンプル118は、液滴122A内に浸漬されるのが分かる。これは、サンプルマニピュレータ116及びステージ112を互いに動かすことにより、即ち、マニピュレータもしくはステージのいずれかを動かすことにより、達成され得る。第1の液滴122Aの温度は、ヒータ124により制御され、且つ第2の液滴122Bの温度と同一である必要はない。液滴の体積は、それぞれ液体注入システム110A及び110Bを介する液体の供給、液滴の温度、及び液滴周囲の真空内の残存ガスの組成により制御され得る。
【0047】
当業者には明らかなように、サンプル表面の改変のスピードは、液体の組成(材料の濃度等)、サンプルが液体内に浸漬される温度及び時間の関数である。液滴内部でのサンプルの動き(それにより、サンプルが液滴内に浸漬される間、サンプルの表面近くの化学物質の濃度に影響する)は、処理スピードに影響する。これは、例えば液滴の(超)音波励起を使用することにより、有利に使用され得る(例えば、代替案として共鳴ピエゾアクチュエータ上に液滴を置くことにより、振動する先端(extremity)としてサンプルが取り付けられるマニピュレータの先端(extremity)を形成するか、又は(超)音波励起子(excitator)の上にマニピュレータ全体を置く)。また、ステージは液体を動かすように取り付け可能である。
【0048】
図3は、本発明によるSEMの別の構成の詳細を概略的に表す。
【0049】
図3は、液滴が使用されない代わりに、小さいコンテナ300A,300Bが使用される一実施形態を表す。連続蒸発を避けるため、これらのコンテナは、アクチュエータ(図示せず)により可動の蓋302A,302Bにより閉じることが可能である。これら蓋のアクチュエータは、ピエゾアクチュエータ、又はその他の手段を使用してよい。液体が「使用中」でない場合、蒸発を回避するため、迅速な温度制御を使用してよい。
【0050】
コンテナのサイズ(直径)は、サンプルがコンテナ内に浸漬可能なように十分に大きくあるべきである。
【0051】
サンプルステージ112の表面から液体の表面が十分に除去される場合、高温の液体は、低温のチャネルと組み合わされることが可能であり、チャネルの壁上に蒸気が凝縮するので、減少した蒸発速度をもたらすことに留意する。
【0052】
当業者ならば、2つより多い液体が使用可能であること、及びまた液体内にサンプルを浸漬する前、その間、もしくはその後に、サンプルが検査され、ガスに曝露され、例えばBID(イオンビーム,電子ビームもしくはレーザービームのいずれかを使用するビーム誘導堆積)に曝露され、プラズマ等に曝露されてよいことを認識する。当該方法は、in−situでのサンプルの湿潤処理を可能にし、それにより(サンプルは、真空チャンバから取り出される必要がないので)スピードを増強し、及び/もしくはサンプルの引き続く変化/汚染、例えば酸化等を回避する。
当該方法は、(ガリウム)FIBでラメラを加工した後、そのラメラをエッチングするのに特に有用であり、ガリウム注入が行われた、もしくは結晶格子が乱れている(disturbed)表面層を除去する。
【0053】
本書で引用される文献。
[1] SJ Randolph et al., ‘Capsule−free fluid delivery and beam−induced electrodeposition in a scanning electron microscope’, RSC Adv., 2013, p 20016−23.
[2] 米国特許第5,270,552号,Hitachi.
[3] J. Mayer et al., ‘TEM Sample Preparation and FIB−Induced Damage’, MRS BULLETIN, Vol. 32 (May 2007), p. 400−407.
[4] http://www.nanotechnik.com/mis−em.html
[5] 米国特許第8,919,902号,Ricoh Company Ltd.
[6] 米国特許第8,919,938号,Hewlett Packard Development Company L.P.
【符号の説明】
【0054】
104 荷電粒子のビーム
110A 第1の液体注入システム
110B 第2の液体注入システム
112 サンプルステージ
116 マニピュレータ
118 先端
120 サンプル
122A 第1の液体
122B 第2の液体
124 ヒータ/クーラー
図1
図2
図3