【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明の方法は、以下の:
・マニピュレータに取付けられた顕微鏡サンプルを提供するステップと、
・第1の温度における第1の液体を提供するステップと、
・前記第1の液体内にサンプルを浸漬し、それによりサンプル表面改変を生じるステップと、
・前記第1の液体からサンプルを除去するステップと、
・第2の温度における第2の液体を提供するステップと、
・前記第2の液体内にサンプルを浸漬するステップと、
・前記第2の液体からサンプルを除去するステップと
、
を有する。
【0007】
発明者らは、真空における液体の使用は、仮想カソードを使用する電着に有用であるだけでなく、サンプルが第1の液体内に浸漬され、次に第2の液体内に浸漬されるとき、サンプル表面の湿潤処理用途について全く新しい領域を開くことに気付いた。サンプル表面のこのような改変とは、粗さ、親水性、表面電荷、表面エネルギー、生体適合性、もしくは反応性の改変、官能基の追加、生体物質の追加、サンプル表面をメッキすること又はサンプル表面層の除去である。
【0008】
第1の液体内にサンプルを浸漬することにより、(湿潤)処理時間の制御が達成される。これはRandolphの方法では達成されない。第2の液体内にサンプルを浸漬することにより、サンプルは例えばリンス可能であり、又はさらなる湿潤処理ステップを追加してよい。
【0009】
好ましくは、第1の温度及び第2の温度は、制御された温度である。真空内の液体の温度は、その蒸発速度に、及び従ってその
中に液体が存在する真空の劣化に強く影響する。
【0010】
Randolphは、真空内の液滴及び電気メッキの使用について開示するけれども、Randolphは液体内にサンプルを浸漬することについては沈黙することに留意する。また、Randolphは、サンプル(表面)上に液滴を形成し、且つ電子ビームが狙う位置にデポジットを局所的に形成することを目指すが、Randolphはメッキ以外の使用について沈黙する。それとは反対に、本願発明は、全サンプル表面の、又は少なくとも液体内に沈められた全サンプル表面の表面改変を目指す。
【0011】
第1の液体及び第2の液体は、1つの表面(「基板」)上に形成可能であるが、2つの異なる表面(「基板」)上に形成されてもよいことに留意する。後者の場合、2つの表面は、(異なる液体の蒸発速度を制御するための)温度又は(例えば、異なる液体について異なる湿潤特性を示す)構成において異なってよい。
【0012】
好ましくは、サンプルは、ビーム誘起堆積を使用する溶接を形成することにより、マニピュレータに取付けられる。ビーム誘起堆積は、レーザービーム、電子ビームもしくはイオンビームにより誘起される。
【0013】
一実施形態において、サンプルは、いずれの方向において10μm
未満の寸法を有し、且つ第1の液体及び第2の液体は、体積1ピコリットル未満、より具体的には1フェムトリットル未満を有する液滴としてデポジットされ
る。
【0014】
液体が真空に曝露されるとき、液体の蒸発が生じることに留意する。この蒸発は、装置の真空を劣化させ、且つ液体の量を減らす。蒸発のコントロールは、液滴の温度を制御する(コントロールする)ことにより、及び周囲真空の分圧により、並びに液体のアプリケータ(キャピラリ、等)からの流れにより生じる。これら全てのファクタは、液滴及び液滴体積を安定化するのに必要とされる。
【0015】
例えばSEMもしくはFIB内に普通存在するステージの表面上の液滴の使用は、液体を提供する1つの形態であるけれども、提供のその他の形態も同様に使用してよいことに留意する。このようなその他の形態は、以下のものを包含してよい:
・例えばステージの凹部における小体積の(温度制御された)液体を提供し、使用後、液体の温度、及び従って蒸発速度を下げるステップ、
・使用しないときは、真空から密閉される、小体積の液体を提供するステップ、
・ステージ内の小さいチャネルを介して液体を提供するステップ、
・表面上に液滴をエレクトロスプレーするステップ、
・(チャネル内に小蒸気バブルを形成するステップ、又はピエゾ結晶を使用してチャネルの変形をして、液滴を絞り出すステップを包含する)インクジェットテクニックを使用して液滴を適用するステップ、等。
【0016】
当該方
法は、半導体サンプルの表面を改変するのに、特に好適であって、必要とされる厚さまで表面をエッチングし、及び
/又は薄い保護層、例えばプラチナの層でサンプルをメッキする。
【0017】
当該方法はまた、例えば米国特許第5,270,552号(Hitachi)から知られるように、集束イオンビームを使用して、ワークピース(例えばウエハもしくは生体サンプル)からサンプルを切除するのに良く適している。
【0018】
表面改変の好ましい実施形態は、エッチング、電気化学エッチング、無電解メッキもしくは非仮想カソードを使用する電気メッキである。
これらの実施形態において、第1の液体は、エッチング液(etchant)もしくはメッキ液である。エッチ除去は、エッチング液
化学物質(chemical)、沈没時間(浸漬時間)、液体濃度、及び液体温度(及び電気化学エッチングの場合は電流)のパラメータを制御することにより制御可能である。
同様に、メッキ厚さは、メッキ
化学物質、沈没時間(浸漬時間)、液体濃度、及び液体温度(及び電気メッキの場合は電流)のパラメータを制御することにより制御可能である。
これにより、エッチ除去もしくはメッキ厚さについて微細な制御が達成可能であって、当該方法を、厚さ10nm未満を有する表面層を除去もしくは追加するのによく適したものにする。
電気メッキ及び電
解エッチングの場合、液体に対して、サンプルにバイアスをかける。当該液体は、例えばそれが置かれている表面から、その電位を導出する。
【0019】
好ましい一実施形態において、第2の液体はリンス液である。リンス液は、先行するステップ、例えばエッチングもしくはメッキを終わらせ、及びまた、第1の液体内に存在するいずれの物質から表面を清める。リンス液に数回、又は異なる体積のリンス液(異なる液滴、等)内に繰り返しサンプルを浸漬することにより、リンスステップを数回繰り返してよい。
【0020】
別の一実施形態において、第1の液体は生体物質を含有し、それにより生体物質をサンプルに適用する。第2の液体は、サンプルの表面に生体物質を結合するステップを生じるか、又は生体物質を固定もしくは染色するための定着剤(fixative)もしくはステインであり得る。このような定着剤/ステインの例は、例えばホルムアルデヒド,グルタルアルデヒド,四酸化オスミウム,四酸化ルテニウム(rutheen)である。
【0021】
さらに別の一実施形態において、表面改変は、酵素、ナノワイヤもしくはその他のナノ構造のデポジットにより生じた活性サイトを形成することにより、サンプルを官能化するステップを有し、及び
第2の液体は、前記活性サイトに材料を提供することを有す
る。
【0022】
これらのテクニックは、大気条件下、
現場外で(ex−situ)生体サンプルを調製している当業者に知られている。現在、真空内
のその場で(in−situ
)これらのテクニックをそこに適用することにより、適用性並びにその使用しやすさが強化される。
【0023】
さらに別の一実施形態において、2つの液体が1つの表面上に提供され、マニピュレータは前記表面に対して移動可能である。
【0024】
この表面は、サンプルステージの表面であり得る。
【0025】
好ましい一実施形態において、サンプル表面層の改変の際及び/もしくは後、サンプル表面は荷電粒子のビームを使用して検査される。
【0026】
さらに別の一実施形態において、第1の液体注入システム及び第2の液体注入システムを使用して、2つの液体(the liquids)が適用される。
【0027】
さらなる一実施形態において、第1の液体注入システム及び第2の液体注入システムは、1つの構造的液体注入システムに統合される。
【0028】
この実施形態は、2つの液体注入システムを位置決めするの
を回避するのに、特に有用である。なぜならば、これは、1つのシステムだけを位置決めするのであって、処理時間の節約になるからだ。
【0029】
蒸発速度を制御するため、液体の温度は、好ましくは良く制御されなければならないことに留意する。一例として: 4℃における水の蒸気圧は、8.14hPaであり、20℃において23.4hPaである。両方の荷電粒子装置の真空システムは、蒸発した液体の量を取扱い可能であるべきで、且つ全処理時間中液体が存在するように、液体量は十分に大きくあるべきである。低い温度(融点のすぐ上)は、システム内の
圧力及び液体の蒸発にとって好ましいが、高い温度は、高い反応速度をもたらす。使用される化学及び得られる効果(サンプル表面粗さ、親水性、表面電荷、表面エネルギー、生体適合性、もしくは反応性の改変、官能基の追加、生体物質の追加、サンプル表面をメッキすること又はサンプル表面層の除去)に依存して、最適な温度が選択される。
【0030】
集束イオンビームを使用して細らせてあるケイ素ラメラは、表面上にガリウム注入(implantation)、並びに結晶格子損傷を受ける。例えばJ. Mayer et al., ‘TEM Sample Preparation and FIB−Induced Damage’, MRS BULLETIN, Vol. 32 (May 2007), p. 400−407を参照。解決策は、ラメラから例えば10nm未満の薄い層をエッチングすることである。サンプルとマニピュレータとの間の溶接部が、その2つを接続するのに使用されるならば、
当該処理
が、溶接部の完全な除去をもたらさ
ないように注意すべきである。なぜならば、
溶接部の完全な除去は、サンプルとマニピュレータとの間の
切断(disconnect)を、及び従ってサンプルの損失
可能性をもたら
してしまうからである。溶接材料と液体との良い組み合わせを使用することにより、又は液体内にサンプルをもっぱら部分的に浸漬し、溶接部を液体のない状態に保つ(必要な場合、サンプルの表面の液体湿潤を心がける)ことにより、これは達成され得る。また、溶接部の厚さは典型的には約1μmであるので、溶接部の除去はあり得ない。もっと
薄い厚さ(例えば10nm未満、もしくは50nm未満)ならばサンプルから除去される。典型的には
、集束イオンビームで加工された半導体サンプルの表面層の除去の場合、10nm未満の層が除去されること
に言及することは
意義がある。
【0031】
改変のために使用される
化学物質は、サンプル材料及び改変のタイプに強く依存する。エッチング液の例は以下の通り。:
表1: 異なるサンプル材料の場合のエッチング液。
【表1】
【0032】
これらのエッチング液のための第1の液体が異なる
ので(この例において、エタノール系もしくは水系のいずれか)、使用される第2の液体はそれにマッチするように選択されるべきである(この例において、リンスのために使用される)。温度は、改変の要求(例えば反応速度)及び許容可能な蒸発速度にマッチするように選択されるべきである。蒸発速度は、液体注入器/サプライからの最大フローにより制限され得る
。なぜなら、高い蒸発速度において、又は荷電粒子装置のポン
ピングスピード(pumping speed)により、溶解した
化学物質の濃度に変化が生じ得る
ためである。
使用に依存して、第1の液体及び第2の液体は、
同一の(制御された)温度もしくは異なる(制御された)温度を有し得る。
同様に、メッキ用(化学もしくは電気化学)
化学物質及び溶媒が、当業者に知られる。
【0033】
溶解された生体物質を有する水もしくはアルコールの第1の液体を使用すると、第2の材料は、例えば蛍光タンパク質、蛍光マーカー、高電子密度マーカー(例えば、直径5乃至25nmを有する銀もしくは金粒子)を有し、生体物質の特定のサイトにそれら自身が付着する。
【0034】
ここで使用されるような蛍光マーカーの定義は、有機染料及び無機蛍光マーカー(量子ドット)を包含することに留意する。
【0035】
酵素、ナノワイヤもしくはその他のナノ構造を有する第1の液体は、サンプルを官能化する(例えば、サンプル上に活性サイトを形成する)のに使用され得る。前記活性サイトには、第2の液体内の生体物質が結合できる。