(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性化合物が、(メタ)アクリル基、オキセタン基、ビニルエーテル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、カルボン酸無水物基の中から選ばれる基の少なくとも一つを有し、該基が反応して硬化する化合物である請求項1記載の硬化性組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック樹脂に代表される各種物品表面に、ハードコート剤を塗工し、硬化させることで、表面を保護し、新たな機能を付与することが非常に幅広い範囲で行われている。
【0003】
これらハードコート剤は、その用途の広がりに応じて、従来求められてきた硬度、耐摩耗性、耐薬品性、耐久性等に加え、防汚性、耐候性、滑り性、帯電防止性、防曇性、難焦性、反射防止性等の更なる高機能化が求められてきている。中でも汚れ防止性、汚れ拭き取り性、特に耐指紋性、指紋拭き取り性の向上が求められている。
【0004】
例えば、アクリル系硬化性組成物への防汚性の付与方法として、表面にフッ素系の化合物層をつくり、撥水撥油性を高めることで、水、油を含んだ汚れ成分を弾かせる試みが広くなされている。典型的な手法としては、側鎖にパーフルオロアルキル基を有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸含フッ素アルキルエステルやメタクリル酸含フッ素アルキルエステルから得られる重合体を組成物中に配合する方法が広く知られているが、近年では、より高度な特性を求めてフルオロポリエーテル基を有するアクリル化合物の配合なども検討されている。これらのフルオロポリエーテル基を有するアクリル化合物は、非フッ素化のアクリル化合物からなる硬化性組成物と混合され、塗工された際に、表面自由エネルギーを利用して表面に含フッ素基を浮かび上がらせ、フッ素含有率の高い最表面層を形成させる。本発明者も特開2010−53114号公報、特開2010−138112号公報、特開2010−285501号公報、特開2011−241190号公報(特許文献1〜4)などにおいて、フルオロポリエーテル基を有するアクリル化合物及びそれを用いた硬化性組成物についての発明を提案している。
【0005】
このような、フルオロポリエーテル基を有するアクリル化合物を配合したコーティング剤の有用な利用分野として特に期待されているのは、タッチパネルディスプレイの表面防汚コーティングである。
【0006】
タッチパネルディスプレイは、その用途が拡大するに従って、その操作方法は従来の単純にパネルの一点に指を接触させる「タップ」と呼ばれる操作に加え、払う「フリック」操作、引きずる「ドラッグ」操作、つまむ「ピンチ」操作など、指そのものと画面とが動的に接触することに大きな意味を持つ操作へと拡張されてきた。これに伴い、タッチパネルディスプレイのコーティングについても、従来の撥水性、撥油性、防汚性、耐指紋性、指紋拭き取り性といった特性に加え、指を滑らせたときの感触が極めて重要になってきた。
【0007】
フルオロポリエーテル基を有するアクリル化合物を配合したコーティング剤の場合、指を滑らせたときの滑り感は、アクリル基の反応によりコーティング層の表面にフルオロポリエーテル構造に固定されるため、その触感の向上には限界があった。
【0008】
これに対し、防汚性、耐指紋性、指紋拭き取り性といった性能に加え、より良い触感を得る方法としては、重合性基を持たないフルオロポリエーテル化合物をコーティング層の最表面に配置することが考えられる。最も単純な方法としては、一旦塗工したコーティング層の上に、更に無官能のフルオロポリエーテル化合物を塗工する方法であるが、この場合、塗工に倍の工程が必要となる。
【0009】
一方、無官能のフルオロポリエーテル化合物をそのままコーティング組成物に配合した場合、一般的な非フッ素化コーティング剤に可溶な低分子フルオロポリエーテル化合物の場合には十分な滑り感が得られず、滑り感を得るのに十分な長さのフルオロポリエーテルはコーティング組成物に溶解しないため、沈殿や濁りが発生してしまい、均一に塗工できないという問題があった。
【0010】
このため、防汚性能に加え、滑らかな触り心地を実現する硬化皮膜、及びそれを実現させるための硬化性組成物の開発が求められてきた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線照射及び/又は加熱により硬化する硬化性化合物を含有する硬化性組成物において、下記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物を含むことを特徴とするものである。
(X−Q)
a−Y−Z−Rf−Z−Y−(Q−X)
a (1)
〔式中、Rfは数平均分子量1,000〜40,000の2価の直鎖フルオロポリエーテル基であり、aは独立に1〜20の整数である。Xはそれぞれ独立に下記式
【化2】
(Rは構造中に(メタ)アクリル基、エポキシ基及び水酸基を含まない炭素数2〜30の1価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エポキシ基以外のエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、一部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表される基である。Qはそれぞれ独立に炭素数1〜20、好ましくは2〜15の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(−O−)又はエステル結合(−COO−)を含んでいてもよい。Yは独立に(a+1)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。Zは独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造あるいは不飽和結合を有する基であってもよい。〕
【0017】
上記式(1)中、Rfは、数平均分子量1,000〜40,000、好ましくは1,500〜20,000、特に好ましくは2,000〜12,000の2価の直鎖フルオロポリエーテル基である。数平均分子量が小さすぎるとRf基により与えられる滑り効果が低くなり、数平均分子量が大きすぎると非フッ素化のコーティング組成物に対する溶解性が低下する。なお、本発明において、分子量は、
1H−NMR及び
19F−NMRに基づく末端構造と主鎖構造との比率から算出される数平均分子量である。
【0018】
また、Rfは、構成単位として、−CF
2O−、−CF
2CF
2O−、−CF
2CF
2CF
2O−、−CF
2CF
2CF
2CF
2O−のいずれか、又はこれらのうちの複数の組み合わせによる繰り返し構造を有する直鎖型のフルオロポリエーテル基であることが好ましく、特に好ましくは以下で表される構造である。
−C
jF
2j(OCF
2CF
2)
m(OCF
2)
nOC
jF
2j−
(式中、jは1又は2であり、m+nは10〜70の整数であり、m/nは0.5〜1.5であり、各繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0019】
式(1)において、Qはそれぞれ独立に炭素数1〜20、好ましくは2〜15の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(−O−)又はエステル結合(−COO−)を含んでいてもよい。具体的には、下記構造のものが挙げられる。
−CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2−
−CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2−
【化3】
【0020】
式(1)において、Xはそれぞれ独立に下記式で表される基である。
【化4】
ここで、Rは構造中に(メタ)アクリル基、エポキシ基及び水酸基を含まない炭素数2〜30、特に炭素数4〜20の1価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エポキシ基以外のエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよく、一部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0021】
このようなRとして、特に好ましいものとしては、炭素数2〜20の非環状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェネチル基、ナフチル基、又は下記に示される構造の基が挙げられる。
【化5】
上記R基は、一分子中で1種単独でも、それぞれ独立した2種以上であってもよい。
【0022】
式(1)において、aは独立に1〜20の整数であり、好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。
【0023】
式(1)において、Yは独立に(a+1)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。このようなYの好ましいものとして、それぞれ(a+1)個のSi原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合わせからなる(a+1)価の連結基が挙げられる。特に好ましい構造として、具体的には、下記の構造が示される。
但し、aは上記式(1)のaと同じであり、独立に1〜20の整数であり、好ましくは1〜15の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。bは0以上の任意の正の整数であり、bの上限は20以下、特に10以下であることが好ましい。各ユニットの並びはランダムであり、(a+1)個の各ユニットの破線で示される結合手は、Z及びQのいずれか一方の基と結合する。
【0025】
ここで、Tは(a+1)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【化7】
【0026】
式(1)において、Zは独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また、環状構造あるいは不飽和結合を有する基であってもよい。このようなZとしては、下記に示すものが例示される。なお、式中、Phはフェニル基を示す。
【0029】
これらの中でも特に
【化10】
が好ましい。
【0030】
以上のような一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物を得る好適な方法としては、下記一般式(2)
(HO−Q)
a−Y−Z−Rf−Z−Y−(Q−OH)
a (2)
(式中、Rf、a、Q、Y、Zは上記と同じである。)
で示される両末端に多価アルコール基を有するフルオロポリエーテル化合物(i)と、下記一般式(3)
R−N=C=O (3)
(式中、Rは上記と同じである。)
で示される化合物(ii)とを反応させる方法が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)で示される両末端に多価アルコール基を有するフルオロポリエーテル化合物(i)は、例えば、次のような方法で合成することが可能である。
まず初めに、末端にオレフィン基を有する含フッ素化合物(a)に対して、多官能Si−H化合物(例えば、分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSi−H基を有するシロキサン、シルアルキレン、シルアリーレン又はこれらの2種以上の組み合わせからなる有機ケイ素化合物)(b)をSi−H基が大過剰の条件下でヒドロシリル化付加反応させ、含フッ素多官能Si−H化合物(c)を合成する。
【0032】
末端にオレフィン基を有する含フッ素化合物(a)としては、下記一般式
Z’−Rf−Z’
(式中、Rfは上記と同じである。Z’は独立に酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造あるいは不飽和結合を有する基であってもよい、末端に不飽和結合を有する1価の基である。)
で示される化合物が挙げられる。
【0033】
ここで、Z’としては、下記に示すものが例示される。なお、式中、Phはフェニル基を示す。
【化11】
【0035】
このような末端にオレフィン基を有する含フッ素化合物(a)として、特に好適なのは以下の式で示される構造である。
【化13】
(式中、j、m、nは上記と同じである。)
【0036】
また、化合物(b)としては、下記一般式で示されるものが例示できる。
Y−(H)
a+1
(式中、Y、aは上記と同じである。)
【0037】
このようなもののうち好ましい化合物(b)としては、以下のものが例示できる。
【化14】
【0038】
【化15】
(式中、a、bは上記と同じである。)
【0039】
以上のような化合物(a)及び化合物(b)を任意の組み合わせで、白金族金属系の付加反応触媒存在下、反応温度50〜150℃、好ましくは60〜120℃で付加反応を行うことで含フッ素多官能Si−H化合物(c)を得ることができる。
【0040】
上記の付加反応は、溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。このとき希釈溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど広く一般に用いられている有機溶剤を利用することができるが、沸点が目的とする反応温度以上でかつ反応を阻害せず、反応後に生成する化合物(c)が反応温度において可溶であるものが好ましい。例えば、m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特にm−キシレンヘキサフロライドが好ましい。
【0041】
付加反応触媒は、例えば白金、ロジウム又はパラジウムを含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。触媒の配合量は、化合物(a)に対し、含まれる金属量が0.1〜5,000質量ppmとなることが好ましく、より好ましくは1〜1,000質量ppmである。
【0042】
化合物(a)と化合物(b)は1:2の比率(モル比)で付加させることが望ましく、このためには、化合物(a)に対して化合物(b)を大過剰量で付加反応させることが好ましく、具体的には、化合物(a)1モルに対して化合物(b)を8〜20モル、とりわけ10〜16モルとする割合で付加反応を行うことが好ましい。また必要に応じて化合物(a)と化合物(b)の付加比率の異なるものが含まれる混合物から、分取クロマトグラフや分子蒸留等の手段により付加比率1:2の成分のみを取り出してもよい。
【0043】
付加反応において、各成分の仕込み順序は特に制限されないが、例えば化合物(a)、化合物(b)及び付加反応触媒の混合物を室温から徐々に付加反応温度まで加熱する方法、化合物(a)、化合物(b)及び希釈溶剤の混合物を目的とする反応温度にまで加熱した後に付加反応触媒を添加する方法、目的とする反応温度まで加熱した化合物(b)と付加反応触媒の混合物に化合物(a)を滴下する方法、目的とする反応温度まで加熱した化合物(b)に化合物(a)と付加反応触媒の混合物を滴下する方法等をとることができる。この中でも、化合物(a)、化合物(b)及び希釈溶剤の混合物を目的とする反応温度にまで加熱した後に付加反応触媒を添加する方法、あるいは、目的とする反応温度まで加熱した化合物(b)に化合物(a)と付加反応触媒の混合物を滴下する方法が特に好ましい。これらの方法は、各成分あるいは混合物を必要に応じて溶剤で希釈して用いることができる。上記反応は、乾燥雰囲気下で、空気あるいは不活性ガス(N
2、Ar等)中、反応温度50〜150℃、好ましくは60〜120℃で、反応時間0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間行うことが望ましい。
【0044】
ここで、得られる含フッ素多官能Si−H化合物(c)としては、下記一般式
(H)
a−Y−Z−Rf−Z−Y−(H)
a
(式中、Rf、a、Y、Zは上記と同じである。)
で示される化合物が挙げられる。
【化16】
【化17】
(式中、j、m、nは上記と同じである。)
【0045】
以上のようにして得られた含フッ素多官能Si−H化合物(c)のSi−H基と、一分子中に末端オレフィン基とアルコール性水酸基を有する化合物(d)との付加反応を行うことで、一般式(2)で示される両末端に多価アルコール基を有するフルオロポリエーテル化合物(i)を得ることができる。
【0046】
このような化合物(d)としては、特に以下のものが好ましい。これらの化合物(d)は、1種単独で又は任意の2種以上を組み合わせて用いることができる。
CH
2=CHCH
2OH
CH
2=CHCH
2CH
2OH
CH
2=CHCH
2CH
2CH
2OH
CH
2=CHCH
2OCH
2CH
2OH
CH
2=CHCH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OH
CH
2=CHCH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OH
【化18】
【0047】
化合物(c)と化合物(d)の付加反応は、前述した化合物(a)と化合物(b)の付加反応と同様の手法で行うことができる。即ち、上述した付加反応触媒存在下、乾燥雰囲気下で、空気あるいは不活性ガス(N
2、Ar等)中、反応温度50〜150℃、好ましくは60〜100℃で、反応時間0.5〜96時間、好ましくは1〜48時間、必要に応じて希釈を行い、任意の添加順序での反応を実施することができる。
【0048】
化合物(c)に対する化合物(d)の配合量は任意の量を用いることができるが、化合物(c)のSi−H基1モルに対して、化合物(d)の末端オレフィン基を等モルもしくは過剰量、具体的には、化合物(c)のSi−H基1モルに対して、化合物(d)の末端オレフィン基を1.0〜5.0モル、好ましくは1.0〜2.0モル用いて付加反応を行うことが望ましく、反応を行った後に、未反応の化合物(d)を減圧留去等により除去することが望ましい。
【0049】
このようにして得られる一般式(2)で示される両末端に多価アルコール基を有するフルオロポリエーテル化合物(i)として、特に好ましい構造としては、例えば以下のものを例示できる。
【化19】
(式中、j、m、nは上記と同じである。)
【0050】
一般式(2)で示される化合物(i)と一般式(3)で示される化合物(ii)の反応は、乾燥雰囲気下で、空気あるいは不活性ガス(N
2、Ar等)中、反応温度0〜120℃、好ましくは20〜100℃で、反応時間0.5〜48時間、好ましくは1〜4時間の条件下で両者を混合することで進行させることができる。化合物(i)と化合物(ii)の反応は、それぞれ1種類でも、複数を組み合わせることでも反応を行うことができる。
【0051】
一般式(2)で示される化合物(i)と一般式(3)で示される化合物(ii)の反応割合は、化合物(i)の水酸基のすべてに化合物(ii)のイソシアネート基を反応させるため、化合物(i)の水酸基のモル数と等モルもしくはそれより過剰なモル数のイソシアネート基量となるように化合物(ii)を用いることが好ましく、よって、反応系内に含まれる化合物(i)の水酸基量を1モルとしたとき、化合物(ii)のイソシアネート基量を1.0〜3.0モル、特に1.0〜2.0モルとする割合で反応を行うことが好ましい。未反応の化合物(ii)が残存する際には、減圧留去等の公知の手法によりこれを除去してもよい。
【0052】
上記反応において、反応の速度を増加するために適切な触媒を加えてもよい。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクタン酸第1錫などのアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムキレート化合物等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。これらの触媒を反応物総質量に対して、0.01〜2質量%、好ましくは0.05〜1質量%加えることにより、反応速度を増加させることができる。
【0053】
また、必要に応じて適当な溶剤で希釈して反応を行ってもよい。このような溶剤としては、イソシアネート基及び水酸基と反応しない溶剤であれば特に制限なく用いることができるが、具体的には、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。
【0054】
このようにして得られる一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物として、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化20】
(式中、R、j、m、nは上記と同じである。)
【0055】
以上のような反応で得られる一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物は、濃縮、カラム精製、蒸留、抽出等の精製単離操作を行い、また反応溶液をそのまま一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物を含む混合物として、あるいは有機溶剤等で更に希釈して使用することもできる。
【0056】
本発明の硬化性組成物において、一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物は、該組成物の固形分100質量部中に0.005〜20質量部含むものであり、好ましくは0.005〜10質量部含むものであり、より好ましくは0.05〜5質量部含むものである。一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物が少なすぎるとフッ素成分が少なくなり、硬化物表面を覆うことが困難となり、多すぎるとフルオロポリエーテル化合物に由来する成分量が多くなりすぎ、硬化物としての物性を損なってしまう。
【0057】
本発明の硬化性組成物は、上記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物が配合されてなるものである。硬化性組成物の主剤(ベースポリマー)となる硬化性化合物は、上記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物を混合し、硬化皮膜が形成可能であれば、いかなるものであっても使用することができるが、特に(メタ)アクリル基、オキセタン基、ビニルエーテル基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、カルボン酸無水物基の中から選ばれる基の少なくとも一つを有し、該基が反応して硬化する化合物であることが好ましい。
なお、硬化性組成物の硬化方法としては、紫外線、電子線などの活性エネルギー線照射、加熱硬化等任意の方法を取ることができる。また、硬化は、紫外線照射と加熱等の複数の方法の組み合わせで行ってもよい。
【0058】
本発明の硬化性組成物としては、
(A)上記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物、
(B)1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物
を含有する紫外線硬化型組成物(I)が好適に用いられる。
【0059】
紫外線硬化型組成物(I)において、(B)1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物は、該組成物の主剤であり、該1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物としては特にその構造に制限はないが、好ましくはアクリレート類であり、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(ポリ)エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これら(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸又はアルキルで変性した変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、アクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等が挙げられる。また更にウレタンアクリレート類、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリオールに過剰のジイソシアネートを反応させて得られるポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものが挙げられ、中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレート、並びにこれらアクリレートのポリ(エチレンオキシド)変性品から選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類を含むものが好ましい。更に(メタ)アクリル基で修飾された中空、非中空の無機又は有機化合物の微粒子を用いることもできる。これら(B)成分に相当する化合物は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。また、未硬化、硬化後の組成物の物性調整のため、1官能のアクリレート類を配合することもできる。
【0060】
(B)成分である1分子中に(メタ)アクリル基を2個以上有する化合物の配合量は、紫外線硬化型組成物(I)の固形分100質量部中に80〜99.995質量部、特に90〜99質量部であることが好ましい。(B)成分の配合量が少なすぎると硬化不良が発生し、硬化物層を形成できなくなる場合がある。なお、紫外線硬化型組成物(I)において、本発明の目的である表面特性を発現させるには、(B)成分の他に、(A)成分を前述の量の範囲内で含む必要がある。
【0061】
紫外線硬化型組成物(I)には、光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤としては、紫外線照射により(B)成分の(メタ)アクリル化合物を硬化させることができれば特に限定されないが、好適なものとして、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。光重合開始剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0062】
光重合開始剤の使用量は、上記(B)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、特に1〜5質量部であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が少なすぎると十分な開始反応が行われず、硬化不良が発生する場合があり、多すぎると開始剤由来成分の残存により硬化物に欠損などの不均一部分が発生する場合がある。
【0063】
本発明の硬化性組成物としては、
(A)上記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物、
(C)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物、
(D)1分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物
を含有する硬化性組成物(II)も好適に用いられる。
【0064】
硬化性組成物(II)において、(C)1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物としては特にその構造に制限はないが、多官能イソシアネート化合物が好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、2,4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−テトラメチルキシリデンジイソシアネート、1,4−テトラメチルキシリデンジイソシアネート、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
また、硬化性組成物(II)において、(D)1分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物としては特にその構造に制限はないが、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)−ビス−シクロヘキサノール、1,2,3−プロパントリオール、1,1,1−トリメチノールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン、1,2,4−トリヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
また、上記のような多官能アルコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、二量体又は三量体脂肪酸、テレフタル酸ジメチルエステル及びテレフタル酸ビスグリコールエステル等の酸又は酸誘導体と反応させることで得られるポリエステルポリオール及びその反応混合物も使用できる。
更に、上記の多官能アルコールで、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−及びδ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、3,5,5−及び3,3,5−トリメチルカプロラクトン又はこれらラクトンの混合物を開環させたポリエステルポリオール、上記多官能アルコールとジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート又はホスゲンと反応させて製造することができるポリカーボネートジオール)、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート)又はホスゲンと反応させて製造することができるポリカーボネートジオールエチレンオキシド、更に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルの6−ヘキサノリド付加重合物、グリセリル(メタ)アクリレート、グリセリル−1−(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタンプロピレンオキシド等を共重合成分として含むアクリルポリオール類、テトラヒドロフランの重合体によって得られるポリエーテルグリコール類等を用いることもできる。
これら(D)成分は、1種単独で用いても混合物として用いてもよい。
【0066】
(C)成分及び(D)成分の配合量は、硬化性組成物(II)の固形分100質量部中に(C)成分と(D)成分の合計で80〜99.995質量部、特に95〜99質量部であることが好ましい。(C),(D)成分の配合量が少なすぎると硬化不良が発生し、硬化物層を形成できなくなる場合がある。なお、硬化性組成物(II)において、本発明の目的である表面特性を発現させるには、(C)成分と(D)成分の他に、(A)成分を前述の量の範囲内で含む必要がある。
【0067】
また、硬化性組成物(II)において、(C)成分と(D)成分の配合比は、NCO/OH((C)成分に含まれるイソシアネート基のモル当量/(D)成分に含まれる水酸基のモル当量)の当量比が、0.5〜2.0、特に0.6〜1.5の割合になるように混合して用いることが好ましい。上記当量比が0.5より小さいと、塗膜の架橋密度が低くなり、耐溶剤性、耐水性、耐候性が不良となる場合がある。一方、2.0を超えてイソシアネート基が過剰になると、塗膜が脆くなり耐候性が低下するばかりでなく、乾燥性において満足しうる結果が得られない場合がある。
【0068】
更に、硬化性組成物(II)としては、上記多官能イソシアネートと多官能ヒドロキシ化合物とを反応させることで得られるいわゆるウレタンプレポリマーを使用することもできる。
【0069】
これら硬化性組成物(II)には、硬化速度を制御するために、適当な触媒を配合することができる。触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクタン酸第1錫などのアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムキレート化合物等が例示される。これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
これらの触媒を(C),(D)成分の合計質量に対して、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1質量%加えることにより反応速度を増加させることができる。
【0070】
また、本発明の硬化性組成物には、必要に応じて種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。このような添加剤としては、例えば、硬化促進剤、フィラー、反応性無機微粒子、反応性ポリマー微粒子、染顔料、レベリング剤、反応性希釈剤、非反応性高分子樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、帯電防止剤、チキソトロピー付与剤等が挙げられる。
【0071】
本発明の硬化性組成物は、任意の溶剤で希釈して使用することもできる。特に好ましい溶剤としては、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類などが挙げられる。
【0072】
また、本発明の硬化性組成物は、必要な成分が既に配合された、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの組成物からなる塗料、ハードコート剤として市販されている材料に、上記一般式(1)で示されるフルオロポリエーテル化合物を配合して硬化性組成物としてもよい。
【0073】
以上のようにして得られる本発明の硬化性組成物は、例えば、各種基材の表面保護のコーティング剤として基材表面に付与することで、防汚性、指紋拭き取り性に加え、操作性の高い滑らかな感触を与えることができる。これによって、基材表面は指紋、皮脂、汗等の人脂、化粧品等により汚れ難くなり、汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れた表面を与える。このため、本発明の硬化性組成物は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に施与される塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用されるハードコート剤として特に有用である。
【0074】
このような本発明の硬化性組成物の硬化皮膜が形成されてなる物品としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションプロジェクションディスプレイ、CRT、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示操作機器;特に具体的な用途としては、PC、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話等の情報端末、携帯用メディアプレイヤー、携帯ゲーム機、ゲーム機のコントローラ、電子ブックリーダー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯用GPS端末、腕時計、各種電子機器のコントロール端末、自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、電子掲示板、電子看板、電子案内板、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、各種自動販売機、電子レジスター、表示及びその操作を行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置等、携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機等の筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石等の塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計等が挙げられる。
【0075】
硬化皮膜を形成する方法としては、どのような方法を取ることもできるが、本発明の硬化性組成物を物品に直接塗工し硬化させる方法、硬化性組成物をフィルム等の基材に塗工・硬化してから目的とする物品に貼り付ける方法、硬化性組成物をフィルム等の基材に塗工したものを、該物品をなす樹脂と共に硬化・成形する方法、硬化性組成物皮膜を物品表面に転写させる方法などが挙げられる。
【0076】
本発明の硬化性組成物を物品表面に塗工する場合、その塗工方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、バーコート、スクリーン印刷等が挙げられる。また、本発明の硬化性組成物を物品表面に転写する場合、その転写方法としては、例えば、ロール式熱転写、アップダウン式熱転写、真空プレス転写、インモールド転写、水圧転写等が挙げられる。
【0077】
本発明の硬化性組成物の硬化条件としては特に制限されないが、活性エネルギー線照射による硬化の場合、線照射装置の光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、UV無電極ランプ、UV−LED等が挙げられる。照射エネルギーは、活性エネルギー線の種類や配合組成に応じて任意に設定できるが、例えば高圧水銀ランプを使用する場合を挙げると、UV−A領域の照射エネルギーで10〜10,000mJ/cm
2が好ましく、100〜5,000mJ/cm
2がより好ましい。
また、加熱硬化の場合、好ましくは室温(25℃)〜200℃で5秒〜240時間、特に好ましくは60〜120℃で、10分〜8時間が望ましい。
【実施例】
【0078】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0079】
[合成例1]
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2,000ml三つ口フラスコに、下記式
CH
2=CH−CH
2−O−CH
2−Rf’−CH
2−O−CH
2−CH=CH
2
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
p(OCF
2)
qOCF
2−
(p/q=0.9、p+q≒45)
で表される両末端にα−不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル500g[0.125モル]と、m−キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361g[1.50モル]を投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10
-6モルを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。
1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去した。その後活性炭処理を行い、下記式で表される無色透明の液状化合物(I)498gを得た。
【化21】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
p(OCF
2)
qOCF
2−
(p/q=0.9、p+q≒45)
【0080】
乾燥空気雰囲気下で、上記で得られた化合物(I)50.0g[Si−H基量0.0669モル]に対して、2−アリルオキシエタノール7.05g[アリル基量0.0690モル]、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10
-7モルを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。
1H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰の2−アリルオキシエタノールを減圧留去し、活性炭処理を行い、下記式で示される淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物(II)55.2gを得た。
【化22】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
p(OCF
2)
qOCF
2−
(p/q=0.9、p+q≒45)
【0081】
[合成例2]
乾燥空気雰囲気下で、合成例1で得られた化合物(II)50.0g[水酸基量0.0589モル]に対して、メチルエチルケトン(MEK)50.0gとイソシアン酸m−トリル9.89g[イソシアネート基量0.0743モル]を混合し、50℃に加熱した。そこにジオクチル錫ジラウレート0.05gを添加し、35℃下で4時間攪拌した。加熱終了後、120℃、0.27kPaで減圧留去を行い、淡黄色のペースト状物質57.1gを得た。
1H−NMR及びIRの結果から下記式で示される化合物(III)であることを確認した。
【化23】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
p(OCF
2)
qOCF
2−
(p/q=0.9、p+q≒45)
【化24】
【0082】
【表1】
【0083】
[合成例3]
乾燥空気雰囲気下で、合成例1で得られた化合物(II)50.0g[水酸基量0.0589モル]に対して、MEK50.0gとイソシアン酸シクロヘキシル9.3g[イソシアネート基量0.0743モル]を混合し、50℃に加熱した。そこにジオクチル錫ジラウレート0.05gを添加し、35℃下で4時間攪拌した。加熱終了後、120℃、0.27kPaで減圧留去を行い、淡黄色のペースト状物質56.8gを得た。
1H−NMR及びIRの結果から下記式で示される化合物(IV)であることを確認した。
【化25】
Rf’:−CF
2(OCF
2CF
2)
p(OCF
2)
qOCF
2−
(p/q=0.9、p+q≒45)
【化26】
【0084】
【表2】
【0085】
[実施例1,2、比較例1〜3]
ハードコート組成物(A)における評価
合成例1で得られた化合物(II)、本発明の化合物である合成例2で得られた化合物(III)及び合成例3で得られた化合物(IV)、更に下記式
【化27】
(式中Rf’は前記と同じ。)
で示される比較化合物(V)の四種類の化合物を、各々、表3に示す組成で配合した溶液(ハードコート組成物)を調製した。なお、ブランクとして添加剤を含まない溶液(ハードコート組成物)も調製した。
【0086】
【表3】
【0087】
次いで、各溶液をガラス板上にスピンコートし、80℃で2分間乾燥させた後に、窒素雰囲気中でコンベア型紫外線照射装置(パナソニック電工社製)により1.6J/cm
2の紫外線を照射して硬化膜を形成した。得られた硬化膜について、下記の方法で評価し、結果を表4に示した。なお、化合物(II)に関しては、上記組成で濁りが発生し、平滑な硬化表面を得ることができなかったため、以下の評価を行っていない。
【0088】
水接触角:
協和界面科学社製接触角計により測定した。
【0089】
マジックはじき性:
ゼブラ社製ハイマッキー太字によるはじきやすさを目視観察した。
【0090】
マジック拭き取り性:
ゼブラ社製ハイマッキー太字で書かれたインクを記入から5分後、ティッシュペーパーによる拭き取りで除去できたかどうかを評価した。
【0091】
触感:
年齢性別の異なる被験者6名が硬化膜表面に対して、
1.指先で叩く、
2.指先で払う、
3.指先で引きずる、
4.2本の指先をつまむように滑らせて閉じる、
5.閉じた2本の指先を滑らせて開く
の5動作を実施し、被験者が操作しやすく感じた順に各サンプルに2ポイント、1ポイント、0ポイントの評価を与え、6名のポイントの合計で比較した。
【0092】
【表4】
【0093】
[実施例3、比較例4〜6]
ハードコート組成物(B)における評価
合成例1で得られた化合物(II)、本発明の化合物である合成例3で得られた化合物(IV)、及び上記比較例2で使用した化合物(V)の三種類の化合物を、各々、表5に示す組成で配合した溶液(ハードコート組成物)を調製した。なお、ブランクとして添加剤を含まない溶液(ハードコート組成物)も調製した。
【0094】
【表5】
【0095】
次いで、得られた各溶液をガラス板上にギャップ24μmのワイヤーバーで塗工し、120℃で2時間加熱した。加熱終了後、室温に戻し、硬化した塗工表面の特性を実施例1と同様の方法で評価し、結果を表6に示した。
【0096】
【表6】