(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンテナを所定位置に積み付け保管する複数の蔵置レーンが設置された蔵置領域と、前記蔵置レーンを跨いで、タイヤにより路面を走行する走行装置を備えたタイヤ式門形クレーンと、を備えたコンテナターミナルにおいて、
前記タイヤ式門形クレーンの第一走行情報の基準となる第一走行情報基準部を、前記タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも一方側に設けると共に、第二走行情報送受信機から送信される信号を受信して、前記タイヤ式門形クレーンの第二走行情報を送信する第二走行情報応答装置を、前記タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも他方側に予め定めた間隔毎に設け、
前記タイヤ式門形クレーンに、前記第一走行情報基準部から前記第一走行情報を検知する第一走行情報検知装置と、前記タイヤ式門形クレーンが前記第二走行情報応答装置に近接すると、前記第二走行情報応答装置へ信号を送信し、前記第二走行情報応答装置から発信された前記第二走行情報を受信する前記第二走行情報送受信機と、前記第一走行情報と前記第二走行情報とに基づいて、前記走行装置を制御する走行自動化手段と、この走行自動化手段により前記タイヤ式門形クレーンが走行する際に、各前記走行装置に掛かる荷重が均等となる均等化位置に前記タイヤ式門形クレーンのトロリを移動する荷重均等化手段と、を備えたことを特徴とするコンテナターミナル。
前記第二走行情報送受信機が、前記タイヤ式門形クレーンの前記走行路のそれぞれに、前記タイヤ式門形クレーンの走行方向に対して互い違いに配置された請求項1又は2に記載のコンテナターミナル。
【背景技術】
【0002】
コンテナターミナルは岸壁に接岸する船舶に対してコンテナを荷積み又は荷卸し、陸上輸送用の外来シャーシでコンテナを搬出及び搬入する施設である。また、荷卸しされた又は搬入されたコンテナを一時的に保管する施設でもある。
【0003】
現在、国際航路におけるコンテナ輸送システムの急速な進展に伴い、コンテナターミナル内での荷役や蔵置作業の自動化や省力化が望まれている。すなわち船舶とコンテナターミナル間のコンテナの搬送およびコンテナターミナルでのコンテナの蔵置部分での自動化や高能率化、ならびに低コスト化などが重要になっている。
【0004】
そこで、蔵置レーンを岸壁に対して略直交する向きに延在させ、蔵置レーン間をスイッチバック走行する無人搬送台車を備え、岸壁側と反対側にゲートを設けて外来シャーシとヤードクレーンとが荷役を行う有人領域を設けたコンテナターミナル(例えば特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
このコンテナターミナルでは、蔵置領域に有人の外来シャーシが進入することがないため、蔵置面積率が上昇すると共に、コンテナターミナルの自動化を図ることができる。
【0006】
このコンテナターミナルを実用化するためには、各蔵置レーン上を、ヤードクレーンがコンテナを吊った状態で、自動走行することが必要となる。ヤードクレーンを自動走行させるためには、ヤードクレーンの直進性を向上することが不可欠であり、この課題を解決しなければコンテナターミナルの自動化を図ることは難しい。
【0007】
そのため、特許文献1に記載のコンテナターミナルのように、ヤードクレーンの荷役動作の自動化を図るコンテナターミナルでは、蔵置レーンを跨いで自動で走行するヤードクレーンとして、路面に敷設されたレール上を車輪により走行するRMG(Rail Mounted Gantry−crane;レール式ヤードクレーン)を用いている。RMGは走行の直進性に問題はなく、自動化走行を可能とする。
【0008】
しかしながら、既存のコンテナターミナルで、ヤードクレーンとして、RTG(Rubber Tired Gantry Crane;タイヤ式門形クレーン)を用いているコンテナターミナルでも、自動化を図るためには、RMGを導入することが必要となり、莫大なコストが掛かってしまう。
【0009】
また、上記のコンテナターミナルは、蔵置レーンを岸壁に対して略直交する向きに延在させること、及び各蔵置レーンの間に無人搬送台車の走行路を設ける必要があることなどから、大規模なレイアウト変更や、新たな設備の追加が多く必要となるため、既存のコンテナターミナルに適用することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ式門形クレーンが自走する際の直進性を向上し、タイヤ式門形クレーンが運搬物を吊具で吊った状態で自動走行することを可能にして、既存のコンテナターミナルでも、遠隔で操作する又は遠隔から指示した荷役作業を自動で行う無人領域と、運転手が搭乗して運転する外来シャーシが往来する有人領域とを区分して設けることにより、コンテナターミナルの荷役効率を向上することができるコンテナターミナルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を解決するための本発明のコンテナターミナルは、コンテナを所定位置に積み付け保管する複数の蔵置レーンが設置された蔵置領域と
、前記蔵置レーンを跨いで、タイヤにより路面を走行する走行装置を備えたタイヤ式門形クレーンと、
を備えたコンテナターミナルにおいて、前記タイヤ式門形クレーンの第一走行情報の基準となる第一走行情報基準部を、前記タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも一方側に設けると共に、第二走行情報送受信機から送信される信号を受信して、前記タイヤ式門形クレーンの第二走行情報を送信する第二走行情報応答装置を、前記タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも他方側に予め定めた間隔毎に設け、前記タイヤ式門形クレーンに、前記第一走行情報基準部から前記第一走行情報を検知する第一走行情報検知装置と、前記タイヤ式門形クレーンが前記第二走行情報応答装置に近接すると、前記第二走行情報応答装置へ信号を送信し、前記第二走行情報応答装置から発信された前記第二走行情報を受信する前記第二走行情報送受信機と、前記第一走行情報と前記第二走行情報とに基づいて、前記走行装置を制御する走行自動化手段と、
この走行自動化手段により前記タイヤ式門形クレーンが走行する際に、各前記走行装置に掛かる荷重が均等となる均等化位置に前記タイヤ式門形クレーンのトロリを移動する荷重均等化手段と、を備
えたことを特徴とする。
【0013】
なお、ここでいう第一走行情報基準部とは、タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも一方側の路面に敷設された磁性体のことをいい、第一走行情報検知装置とは、その磁性体を検知可能な磁気センサのことをいう。また、ここでいう第二走行情報応答装置とは、タイヤ式門形クレーンの走行路の少なくとも他方側に埋設されたトランスポンダであり、第二走行情報送受信機(リーダ)が近接すると、リーダからの発信された信号を受信し、予め記憶させておいた第二走行情報などの情報をリーダに返信する装置である。
【0014】
第一走行情報及び第二走行情報は、タイヤ式門形クレーンの現在の位置情報、走行方向のずれ量、及び目標位置までの移動距離などの情報のうちどれかを含む情報である。これらの複数の情報に基づいて、タイヤ式門形クレーンの走行の直進性を図ることができればよく、第一走行情報及び第二走行情報は、走行を制御する方法に応じた必要な情報であればよい。
【0015】
但し、第一走行情報基準部から検知される第一走行情報として、走行方向のずれ量を検知し、第二走行情報応答装置から送信される第二走行情報として、第二走行情報応答装置の位置情報を受信し、その位置情報からタイヤ式門形クレーンの現在位置や停車位置などを得るように、構成すると、第一走行情報と第二走行情報の互いに異なる情報を用いて、タイヤ式門形クレーンの自動走行の直進性を向上することができるため、好ましい。
【0016】
例えば、第一走行情報基準部を走行路の一方側に磁気ベルト(帯状の磁性体)を敷設すると共に、少なくとも二つの第一走行情報検知装置をタイヤ式門形クレーンの走行方向の前後に設けると、前後の第一走行情報検知装置がこの磁気ベルトを検知することで、第一走行情報としてタイヤ式門形クレーンの走行方向のずれ量を計測することを可能とする。これにより、タイヤ式門形クレーンの直進性を向上する。
【0017】
また、第二走行情報として位置情報を記憶した第二走行情報応答装置を走行路の他方側に埋設し、第二走行情報送受信機を備えたタイヤ式門形クレーンが、第二走行情報応答装置に近接し、第二走行情報応答装置から送信された第二走行情報を受信するように構成すると、第二走行情報応答装置の埋設位置を取得し、その埋設位置からタイヤ式門形クレーンが現在位置情報と停止位置情報を得ることができる。この第二走行情報送受信機には、第二走行情報応答装置の埋設位置を2cmの精度で読めるものがあり、そのような第二走行情報送受信機を備えれば、走行方向のずれ量も取得可能になり、第一走行情報から得られる走行方向のずれ量を補正することができ、さらなる直進性の向上が見込める。
【0018】
この第二走行情報応答装置は、タイヤ式門形クレーンの走行路の両側に設けると、より精度の高い第二走行情報を受信することができるため、好ましい。さらに、両側に設けた第二走行情報応答装置の配置を一方側の配置に対して、他方側の配置をずらして設けると、タイヤ式門形クレーンに設けた第二走行情報送受信機のどちらか一方側が必ず第二走行情報応答装置の応答可能範囲に入るため、常に走行制御の補正が可能となり、制御の精度が向上する。その上、この第二走行情報応答装置を蔵置レーンに隣接して設けられた防護柵(フェンス)に設けると、岸壁に敷設する作業が不要なため、既存のコンテナターミナルに容易に設けることができる。
【0019】
その上、例えば、この第二走行情報応答装置に、その第二走行情報応答装置が応答可能な範囲内の岸壁の路面情報などを記憶させて、第二走行情報にその路面情報を付加して送信するように構成すると、タイヤ式門形クレーンの各走行装置に掛かる荷重のバランスを考慮して走行することができ、直進走行の精度をより向上することができる。
【0020】
前述した構成によれば、第一走行情報と第二走行情報との両方で、特に第一走行情報として走行方向のずれ量を検知し、第二走行情報として現在位置や停車位置を受信することにより、タイヤ式門形クレーンが自走する際の直進性が向上するので、タイヤ式門形クレーンが搬送台車と衝突することを防止して安全性を確保した上で、タイヤ式門形クレーンが運搬物を吊具で吊った状態で自動走行することを可能とする。
【0021】
これにより、タイヤ式門形クレーンが運搬物を吊具で吊り下げた状態で、自動で走行することが可能となるので、コンテナターミナル内を遠隔で操作する又は遠隔から指示した荷役作業を自動で行う無人領域と、運転手が搭乗して運転する外来シャーシが往来する有人領域とに区分でき、安全性を確保しながら、コンテナターミナルの荷役効率を向上することができる。
【0022】
従来のコンテナターミナルでは、第一走行情報基準部である磁性体から現在位置や停車位置を検知して、タイヤを駆動するモータトルクやタイヤの回転などから走行方向のずれ量を算出して、直進走行を行なっていた。しかし、本発明は、第二走行情報応答装置から位置情報などの第二走行情報を受信することを可能とするので、蔵置レーンに沿って直線上に敷設される磁性体から形成される第一走行情報基準部から、走行方向のずれ量を検知可能になり、従来の走行制御と比較して、より直進性を向上することができる。
【0023】
また、前述した構成によれば、大幅なレイアウト変更や、大規模な装置の追加を必要としないため、コストの上昇を抑えて、従来のコンテナターミナルにも適用することができ
る。
【0024】
加えて、搬出搬入移載領域まで走行可能に構成された搬送台車を無人化すると共に、各蔵置レーン間の領域には、無人化された前記搬送台車が走行する搬送台車走行路を設けて、各蔵置レーンが設けられる蔵置領域を、前記有人領域を除いて無人領域として構成する、若しくは、各蔵置レーンの搬出搬入端部の反対側の荷積荷卸端部に隣接する領域には、それぞれ荷積荷卸移載領域が設けられ、荷積荷卸移載領域は、タイヤ式門形クレーンと搬送台車とが荷役を行う有人領域、又は無人領域とし、各蔵置レーンが設けられる蔵置領域の、搬出搬入移載領域と荷積荷卸移載領域との間を無人領域として構成すると、コンテナターミナルを無人領域と有人領域に区分することで、有人領域の安全性を向上することができ、且つ荷役作業のほとんどを自動化して、荷役効率を向上することができる。
【0025】
さらに、タイヤ式門形クレーンが、タイヤ式門形クレーンが走行するときに、トロリと吊具と運搬物の重量などにより定められる均等化位置にトロリを横行させ、タイヤ式門形クレーンの重量バランスを調節し、タイヤ式門形クレーンの各走行装置に掛かる荷重を均等化する荷重均等化手段を備えると、あるいは、トロリと吊具と運搬物の重量などにより定められるタイヤ式門形クレーンの各走行装置に掛かる荷重から、各走行装置のそれぞれに掛かる負荷を算出し、その負荷に応じて前述した走行自動化手段を補正する荷重補正手段を備えると、一方の走行装置に荷重が掛かり過ぎて、タイヤの変形量が各走行装置で異なることを防止することができ、タイヤ式門形クレーンの直進性を向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第一走行情報と第二走行情報との両方で、特に第一走行情報として走行方向のずれ量を検知し、第二走行情報として現在位置や停車位置を受信することにより、タイヤ式門形クレーンが自走する際の直進性が向上するので、タイヤ式門形クレーンが搬送台車と衝突することを防止して安全性を確保した上で、タイヤ式門形クレーンが運搬物を吊具で吊った状態で走行することができる。
【0027】
これにより、タイヤ式門形クレーンが運搬物を吊具で吊り下げた状態で、自動で走行することを可能とするので、コンテナターミナル内を遠隔で操作する又は遠隔から指示した荷役作業を自動で行う無人領域と、運転手が搭乗して運転する外来シャーシが往来する有人領域とに区分でき、安全性を確保しながら、コンテナターミナルの荷役効率を向上することができる。
【0028】
また、大幅なレイアウト変更や、大規模な装置の追加を必要としないため、コストの上昇を抑えて、従来のコンテナターミナルにも適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態のコンテナターミナルについて、図面を参照しながら説明する。なお、
図1、及び
図7に関しては、その違いが分り易いように、搬送台車のヘッド部分を塗り潰し、外来シャーシを白抜きで表現した。また、運搬されているコンテナは×を入れ区別した。また、搬送台車については、第一及び第三の実施の形態では、有人の搬送台車とし、一方、第二の実施の形態では、無人の搬送台車を用いることとする。
【0031】
また、
図1における岸壁に沿う方向で、タイヤ式門形クレーンが走行する方向をx方向とし、x方向に直交する海陸方向をy方向とする。
【0032】
加えて、以下の実施の形態では、蔵置レーンがx方向に延在するコンテナターミナルに適用したものを例として説明するが、本発明はこれに限定されず、例えば、蔵置レーンがy方向に延在するコンテナターミナルに適用できることはいうまでもない。
【0033】
まず、
図1〜
図3を参照しながら、本発明に係る第一の実施の形態のコンテナターミナルについて説明する。
図1に示すコンテナターミナル1は、コンテナ(運搬物)Cを所定位置に積み付け保管する複数の蔵置レーン2がその長手方向がx方向になるように配置されたコンテナヤード(蔵置領域)3と、岸壁に接岸した船舶Sに対してコンテナCの荷役を行う岸壁クレーン4が設置された岸壁エプロン領域5とを備える。なお、ここでは蔵置レーン2の数をx方向に二つ、y方向に四つの計六レーン設けたが、このレーン数はあくまで一例である。
【0034】
また、このコンテナターミナル1では、岸壁エプロン領域5を走行すると共に、コンテナヤード3まで走行する複数の有人の搬送台車6a及び6b(例えば、40フィートのコンテナCを運搬する搬送台車を6a、20フィードのコンテナCを運搬する搬送台車を6bとする)と、コンテナヤード3から外部にコンテナCを搬出すると共に、外部からコンテナヤード3にコンテナCを搬入する外来シャーシ7a及び7bと、これらの搬送台車6a及び6bとのコンテナCの荷役を行うと共に、各蔵置レーン2を跨いで、タイヤにより路面をx方向に走行するRTG(Rubber Tired Gantry Crane;タイヤ式門形クレーン)10と、がコンテナを荷役している。
【0035】
加えて、このコンテナターミナル1は、各蔵置レーン2がフェンス(防護柵)8で囲われると共に、コンテナターミナル1でも荷役作業の管理と制御を行うTOS(ターミナルオペレーティングシステム;制御装置)9を備える。
【0036】
図2に示すように、このRTG10は、クレーン本体11が門形に形成され、その脚部12に設けたラバータイヤ13を有する走行装置14によって蔵置レーン2を跨いでx方向に走行する。また、RTG10は、クレーン本体11の上部のガーダ15上をy方向に横行するトロリ16を備えると共に、トロリ16上の機械室17に設けたドラムから引き出した複数のワイヤロープ(以下、ロープという)Wによりスプレッダ(吊具)18を吊り下げている。なお、符号19は、RTG10の動力装置が収納された動力室を示している。
【0037】
さらに、このコンテナターミナル1は、
図1に示すように、各蔵置レーン2の搬出搬入端部の外側に隣接する領域のそれぞれに、搬出搬入移載領域20を、RTG10と外来シャーシ7a及び7bとが荷役を行う有人領域として設ける。
【0038】
以上の構成は、周知の技術のコンテナターミナルの構成であり、この第一の実施の形態のコンテナターミナル1は、上記の構成に加えて、
図2及び
図3に示すように、RTG10の第一走行情報の基準となる磁気ベルト(第一走行情報基準部)30を、RTG10の走行路L1の少なくとも一方側に設けると共に、リーダ(第二走行情報送受信機)33から送信される信号を受信して、RTG10の第二走行情報を送信するトランスポンダ(第二走行情報応答装置)31を、RTG10の走行路L1の少なくとも他方側に予め定めた間隔D1毎に設けて構成される。
【0039】
且つ、RTG10に、磁気ベルト30から第一走行情報を検知する磁気センサ(第一走行情報検知装置)32と、RTG10がトランスポンダ31に近接すると、そのトランスポンダ31へ信号を送信し、トランスポンダ31から発信された第二走行情報を受信するリーダ33と、を備えると共に、RTG10に、第一走行情報と第二走行情報とに基づいて走行装置14を制御する走行自動化手段M1と、を備えて構成される。
【0040】
そして、このコンテナターミナル1は、上記の構成により、RTG10の荷役作業を自動化して、少なくとも各蔵置レーン2上を無人領域として構成される。
【0041】
このRTG10は、RTG10の現在の位置、走行方向、及び目標位置までの移動距離などの第一走行情報と第二走行情報に基づいて、RTG10の走行を制御するクレーンである。この実施の形態では、磁気ベルト30から検知される第一走行情報として、x方向のずれ量を検知するように、並びに、トランスポンダ31から送信される第二走行情報として、トランスポンダ31の埋設位置情報を受信し、その埋設位置情報からRTG10の現在位置や停車位置などを得るように構成し、走行自動化手段M1が、検知されたx方向のずれ量と、受信した埋設位置情報から得られる現在位置や停車位置から、各走行装置14を制御する。
【0042】
加えて、このRTG10は、上記の走行自動化手段M1の他に、トロリ16とスプレッダ18とコンテナCの重量などにより定められる均等化位置P1にトロリ16を横行させ、RTG10の重量バランスを調節し、RTG10の各走行装置14、又はタイヤ13に掛かる荷重を均等化する荷重均等化手段M2を備える。
【0043】
図3に示すように、磁気ベルト30は、RTG10の走行路L1のどちらか一方側に敷設され、磁性体から形成された磁気ベルトである。また、この磁気ベルト30は、蔵置レーン2に沿うように、直線状の帯で形成される。
【0044】
この磁気ベルト30を、
図2に示すRTG10のx方向の前後に設けた少なくとも二つの磁気センサ32が検知することで、RTG10は、その二つの磁気センサ32の検知した情報からx方向のずれ量を計測し、そのずれ量に基づいて走行自動化手段M1が各走行装置14を制御することで、RTG10の直進性を向上することができる。
【0045】
トランスポンダ31は、RFID(Radio Frequency IDentification)トランスポンダとも呼ばれ、トランスポンダ31とRTG10に設けたリーダ33とが近接したときに、リーダ33との誘導結合が可能な範囲になると、その誘導結合により電波の送受信が可能になり、リーダ33との間で無線通信が行われ、自身に記憶された自身の埋設位置情報を含む第二走行情報をリーダ33に送信する装置である。また、このトランスポンダ31は、RTG10の走行路L1の前述した磁気ベルト30が敷設されていない他方側に、予め定めた間隔D1毎に埋設される。
【0046】
このトランスポンダ31に記憶された第二走行情報を、RTG10がリーダ33で読み取ることで、RTG10は、トランスポンダ31の埋設位置情報を受信し、その埋設位置情報からRTG10の現在位置や停車位置を得る。そして、走行自動化手段M1が、現在位置や停車位置に基づいて、残りの走行距離や停車するタイミングなどを算出して、各走行装置14を制御することで、RTG10の走行を自動化するができる。
【0047】
加えて、このトランスポンダ31は、予め定めた間隔D1毎に設けられる。この実施の形態では、この間隔D1は、蔵置レーン2に蔵置された各コンテナCの蔵置位置情報が得られるように、設定される。なお、このトランスポンダ31とリーダ33の誘導結合可能な応答可能範囲、つまりトランスポンダ31からリーダ33に第二走行情報を送信可能な応答可能範囲は、トランスポンダ31及びリーダ33に設けられたコイルから発する信号を調節すれば、その範囲を所定の値に設定することができるため、その応答可能範囲が広い場合は、間隔D1を広くしてもよい。
【0048】
さらに、このリーダ33は、トランスポンダ31の埋設位置情報を2cmの精度で読めるものであり、高精度で現在位置情報を得ることができるので、x方向のずれ量も取得可能になり、第一走行情報から得られるx方向のずれ量を補正することができ、さらなる直進性の向上を図っている。
【0049】
このトランスポンダ31の配置の他の例について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4に示す配置の第二例のように、トランスポンダ31を走行路L1の両方に埋設すると共に、走行路L1の一方側に設けたトランスポンダ31の配置に対して、他方側に設けたトランスポンダ31の配置をずらして配置すると、RTG10に設けたリーダ33のどちらか一方が必ずトランスポンダ31、又はトランスポンダ31と応答可能となるため、常にRTG10が、トランスポンダ31から第二走行情報を得ることができるので、RTG10の現在位置からRTG10の走行制御することができる。
【0050】
一方、
図5に示す配置の第三例のように、蔵置レーン2を囲うフェンス8にトランスポンダ31を設けると共に、RTG10に設けたリーダ33をフェンス8側に向けるように構成してもよい。この場合は、トランスポンダ31を岸壁に敷設せずに、フェンス8に設けるので、敷設のための作業が不要となるので、従来のコンテナターミナルにも容易に設置することが可能となる。また、この第三例では、さらに磁気ベルト30も走行路L1の両方に敷設して、直進性を向上させている。
【0051】
なお、この第一の実施の形態では、リーダ33をRTG10の脚部12に各一つずつ設けたが、本発明はこれに限定されず、それ以上の数を設けてもよい。例えば、RTG10の四隅にリーダ33を設けると、多くの第二走行情報を得ることが可能となり、RTG10の現在の位置を正確に検知することが可能となる。
【0052】
また、このトランスポンダ31に、そのトランスポンダ31が送信可能な範囲のRTG10の走行路L1の路面情報などを記憶させ、第二走行情報と共に送信してもよい。例えば、路面が一方に傾いていると、その路面を走行したときに、RTG10の走行方向は路面に沿って傾く。そのような路面情報をトランスポンダ31に記憶させておくことで、次回の走行時の補正がより正確になり、直進性を向上することができる。
【0053】
走行自動化手段M1は、走行装置14を駆動するモータやインバータなどが収納されている動力室19に設けられた制御手段であり、磁気ベルト30から検知されたx方向のずれ量を含む第一走行情報と、トランスポンダ31から受信された埋設位置情報を含む第二走行情報に基づいて、走行装置14の制御する手段である。例えば、この走行自動化手段M1はインバータを制御する制御装置に組み込まれたプログラムである。
【0054】
この実施の形態では、磁気センサ32が検知した第一走行情報であるx方向のずれ量に基づいて、一方側の走行装置14の各ラバータイヤ13の回転数と、他方側の走行装置14の各ラバータイヤ13の回転数を制御して、そのずれ量を修正し、RTG10の走行の直進性を確保する。そして、リーダ33が受信した、トランスポンダ31の埋設位置情報から、RTG10の現在位置情報とRTG10が向う先である停車位置情報を得て、RTG10の走行を維持する、あるいは停車動作を開始するなどの走行装置14の駆動の維持、又は停止を制御して、RTG10の自動走行を図る。
【0055】
また、この走行自動化手段M1は、磁気センサ32が磁気ベルト30から第一走行情報を検知した時と、リーダ33がトランスポンダ31から第二走行情報を受信した時の両方のタイミングで行われるRTG10を自動で走行させる手段である。一方、第一走行情報を基準として走行装置14を制御し、第二走行情報を補正値として走行装置14の制御を補正する手段でもある。第一走行情報と第二走行情報をどのように使用する場合でも、第一走行情報と第二走行情報のどちらか一方を常に検知及び受信するように、磁気ベルト30とトランスポンダ31を配置するとよい。
【0056】
荷重均等化手段M2は、トロリ16の駆動装置やスプレッダ18を駆動するドラムなどが収納されたRTG10の上部に設けられた機械室17に設けられた制御手段であり、トロリ16とスプレッダ18とコンテナCの重量などにより定められる均等化位置P1にトロリ16を横行させ、RTG10の重量バランスを調節し(例えば、動力室19が左右で重量が異なる場合なども調節可能である)、RTG10の各走行装置14、又はタイヤ13に掛かる荷重を均等化する手段である。例えば、この荷重均等化手段M2は、制御装置に設けられたプログラムである。
【0057】
RTG10の左右の重量バランスは初期設定値であり、最初から記憶されている値であるが、例えば、RTG10が走行して燃料など増減がある場合は、その増減分を補正してもよい。また、コンテナCの重量は、TOS9から送られてくる荷役情報に組み込まれた値を用いることができる。加えて、スプレッダ18にロードセルなどの検出器を設けて、コンテナCの重量を検出してもよく、各走行装置14に検出器を設けて、実際に各走行装置14、又はタイヤ13に掛かる荷重を検知してもよい。
【0058】
スプレッダ18がコンテナCを掴むと、各種の情報から均等化位置P1が算出され、その均等化位置P1にトロリ16を横行させる。よって、この荷重均等化手段M2では、必ずしもトロリ16がRTG10の中央部に配置されるわけではない。また、走行路L1の路面状況に応じて、均等化位置P1の位置を代えて、路面によるタイヤ13の変位量をコントロールしてもよい。
【0059】
なお、この荷重均等化手段M2を設けない代わりに、トロリ16とスプレッダ18の位置から、各走行装置14に掛かる荷重を算出し、その走行装置14に掛かる荷重に基づいて、各ラバータイヤ13の回転の制御を補正する荷重補正手段を、前述した走行自動化手段M1に組み込んでもよい。
【0060】
次に、この第一の実施の形態のコンテナターミナル1の動作について、
図3に示す第一例を例に説明する。なお、この例では、荷役対象となるコンテナCを掴んでから目標位置に向けて移動する制御を説明するが、RTG10が荷役対象となるコンテナCまで移動する動作なども略同様の動作となるため、その説明は省略する。
【0061】
まず、TOS9から指示された荷役対象となるコンテナCをスプレッダ18が掴むと、荷重均等化手段M2が、TOS9から送信された荷役対象となるコンテナCの重量と、RTG10の重量バランスなどの初期値を含む荷重均等化パラメータを読み込む。次に、荷重均等化手段M2が、各走行装置14に掛かる荷重が均等となるトロリ16の均等化位置P1を算出する。次に、荷重均等化手段M2がトロリ16を均等化位置P1に横行させる。
【0062】
これにより、各走行装置14に掛かる荷重を均等化することができるので、各走行装置14に設けた各タイヤ13の変化量を同じにすることで、RTG10の直進性を向上することができる。
【0063】
次に、走行自動化手段M1が各走行装置14を駆動させて、TOS9から指示された目標位置へ移動を開始する。RTG10の移動が開始されると、次に、磁気センサ32が磁気ベルト30から第一走行情報を検知する。次に、走行自動化手段M1は、第一走行情報に含まれるx方向のずれ量に基づいて、各走行装置14を制御して、RTG10の走行方向を調節する。
【0064】
次に、リーダ33がトランスポンダ31から送信された第二走行情報を受信する。次に、走行自動化手段M1は、第二走行情報に含まれるトランスポンダ31の埋設位置情報から得られるRTG10の現在位置情報と停車位置情報に基づいて、目標位置までの移動距離及び移動方向を算出し、各走行装置14の駆動を制御する。
【0065】
磁気ベルト30から検知される第一走行情報に基づく各走行装置14の制御と、トランスポンダ31から送信される第二走行情報に基づく各走行装置14の制御を繰り返して、RTG10は目標位置まで移動する。
【0066】
この動作によれば、磁気ベルト30から検知できる第一走行情報とトランスポンダ31から送信される第二走行情報の両方で、特に、磁気ベルト30から検知される第一走行情報として、x方向のずれ量を検知し、トランスポンダ31から送信される第二走行情報として、トランスポンダ31の埋設位置情報を受信し、その埋設位置情報からRTG10の現在位置や停車位置などを得るので、走行自動化手段M1による自動化されたRTG10の走行制御が常に行われることにより、直進性が向上するので、RTG10が搬送台車6a及び6bと衝突することを防止して安全性を確保した上で、RTG10がコンテナCをスプレッダ18で吊った状態で、且つ自動で走行することを可能にする。
【0067】
このRTG10の走行の自動化は、大幅なレイアウト変更や、大規模な装置の追加を必要としないため、コストの上昇を抑えて、従来のコンテナターミナルにも適用することができる。
【0068】
このコンテナターミナル1は、上記の作用効果を得ることができるので、以下のレイアウトを可能とする。
図1に示すように、このコンテナターミナル1は、RTG10を遠隔で操作する又は遠隔から指示した荷役作業を自動で行う無人領域3aと、運転手が搭乗して運転する外来シャーシが往来する有人領域20とに区分でき、安全性を確保しながら、無人領域3aでの荷役作業を自動化して、コンテナターミナル1の荷役効率を向上することができる。
【0069】
次に、本発明に係る第二の実施の形態のコンテナターミナル40について、
図6を参照しながら説明する。このコンテナターミナル40は、第一の実施の形態の搬送台車6a及び6bに代えて、
図6に示すように、搬出搬入移載領域20まで走行可能に構成された搬送台車41a及び41bを無人化すると共に、各蔵置レーン2間の領域には、無人搬送台車41a及び42bが走行する搬送台車走行路L2を設けて、各蔵置レーン2が設けられるコンテナヤード3を、搬出搬入移載領域20を除いて無人領域3aとして構成される。
【0070】
無人搬送台車41a及び41bとは、周知の技術のAVG(Automated Guided Vehicle)などのことであり、岸壁エプロン領域5とRTG10の走行路L1に隣接する搬送台車走行路L2を周回してコンテナCを運搬する台車である。
【0071】
この構成によれば、無人搬送台車41a及び41bが、遠隔指示による自動走行でRTG10まで、又はRTG10からコンテナCを運搬することができ、且つRTG10が上記に記載のように、直進性が向上した走行を可能とするので、遠隔で操作される又は遠隔から指示された荷役作業を自動で行うことができる。
【0072】
これにより、コンテナターミナル40を無人領域3aと有人領域である搬出搬入移載領域20に区分することが可能となり、有人領域20の安全性を向上することができ、且つ荷役作業のほとんどを自動化して、荷役効率を向上することができる。
【0073】
次に、本発明に係る実施の形態のコンテナターミナル50について、
図7を参照しながら説明する。このコンテナターミナル50は、第一の実施の形態のRTG10の走行路L1に隣接する搬送台車6a及び6bの搬送台車走行路L2を無くした代わりに、
図7に示すように、各蔵置レーン2の搬出搬入端部の反対側の荷積荷卸端部に隣接する領域には、それぞれ荷積荷卸移載領域51が設けられ、荷積荷卸移載領域51は、RTG10と搬送台車6a及び6bとが荷役を行う有人領域とし、各蔵置レーン2が設けられるコンテナヤード3の、搬出搬入移載領域20と荷積荷卸移載領域51との間を無人領域3aとして構成される。
【0074】
なお、この第三の実施の形態では、搬送台車6a及び6bを運転手が搭乗して運転する有人の搬送台車としたが、この第三の実施の形態はこの構成に限定されず、搬送台車6a及び6bを無人搬送台車で形成してもよい。その場合は、荷積荷卸移載領域51も無人領域3aとすることができる。
【0075】
この構成によれば、コンテナヤード3を完全に有人領域の搬出搬入移載領域20及び荷積荷卸移載領域51と、無人領域3aとに区分することができる。これにより、有人領域の搬出搬入移載領域20及び荷積荷卸移載領域51の安全性を向上すると共に、無人領域3aでの荷役作業を自動化して、荷役効率を向上することができる。