(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状に配置された複数のコアと、前記複数のコアにそれぞれ巻き回された巻線と、前記コアと前記巻線との間を絶縁するインシュレータとを備えたステータに、前記巻線に電流を集配電する環状の複数の集配電部材を保持する集配電部材の保持構造であって、
前記インシュレータには、前記複数の集配電部材を保持する保持部が形成されており、
前記複数の集配電部材のそれぞれは、金属導体をU字状に屈曲して形成されたU字部と、前記保持部の前記凹部に収容されて前記保持部に保持される被保持部と、前記U字部の両端と前記被保持部との間に径方向に延在して設けられた一対の延在部とを一体に有し、
前記U字部に前記巻線の端部が挿通された状態で、前記U字部を加締めることによって前記集配電部材と前記巻線とが電気的に接続されており、
前記一対の延在部は、前記U字部が前記巻線の端部に電気的に接続された状態で、互いに接触しない、
集配電部材の保持構造。
前記保持部は、前記複数の集配電部材を一括して前記ステータの軸方向に沿って支持する支持部と、前記支持部に対する前記複数の集配電部材の前記軸方向への移動を規制する規制部とを有する、
請求項1に記載の集配電部材の保持構造。
前記U相、V相、及びW相の巻線のうち少なくとも一部の巻線を前記第1乃至第3の集配電部材における前記ステータの軸方向の位置に応じて屈曲し、前記第1乃至第3の集配電部材との接続部位の位置を合わせる位置合わせ工程をさらに有する、
請求項14に記載の電動機の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
(電動機の全体構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る集配電リング4を備えた電動機1の概略の構成例を説明するために示す模式図である。
【0014】
この電動機1は、回転子であるロータ2と、固定子であるステータ3と、ステータ3に保持された第1乃至第4のバスリング41〜44からなる集配電リング4とを備えている。
【0015】
ロータ2は、図略の軸受によってステータ3と同軸上で回転可能に支持されたシャフト21と、シャフト21の外周面に固定された複数の磁極を有する円筒状の磁石22とを有している。
【0016】
ステータ3は、環状に配置された複数のコア31と、コア31の外周囲に巻き回された巻線32と、後述するインシュレータ33(
図2に示す)とを備えている。本実施の形態では、12個のコア31がステータ3の周方向に沿って配置されている。これら12個のコア31は、その位置によってU相のコア31U、V相のコア31V、及びW相のコア31Wに分類され、
図1に示すロータ2の回転方向Rに沿って、U相のコア31Uの隣にV相のコア31Vが、V相のコア31Vの隣にW相のコア31Wが、W相のコア31Wの隣にU相のコア31Uが、それぞれ配置されている。
【0017】
U相のコア31Uに巻き回された巻線32はU相の巻線32Uであり、V相のコア31Vに巻き回された巻線32はV相の巻線32Vであり、W相のコア31Wに巻き回された巻線32はW相の巻線32Wである。U相の巻線32Uは、第1のバスリング41によって集配電(集電及び配電)される。V相の巻線32Vは、第2のバスリング42によって集配電される。また、W相の巻線32Wは、第3のバスリング43によって集配電される。
【0018】
U相の巻線32Uの両端部のうち、一方の端部321Uは第1のバスリング41に電気的に接続され、他方の端部322Uは第4のバスリング44に電気的に接続されている。V相の巻線32Vの両端部のうち、一方の端部321Vは第2のバスリング42に電気的に接続され、他方の端部322Vは第4のバスリング44に電気的に接続されている。また、W相の巻線32Wの両端部のうち、一方の端部321Wは第3のバスリング43に電気的に接続され、他方の端部322Wは第4のバスリング44に電気的に接続されている。
【0019】
第1のバスリング41は本発明の第1の集配電部材の一態様であり、第2のバスリング42は本発明の第2の集配電部材の一態様である。また、第3のバスリング43は本発明の第3の集配電部材の一態様である。第4のバスリング44は、中性相の第4のバスリング44の一態様である。
【0020】
第1乃至第3のバスリング41〜43には、それぞれ給電端子410,420,430が接続され、この給電端子410,420,430を介して図略のインバータから120°ずつ位相がずれた正弦波状の駆動電流が供給される。この駆動電流によってステータ3に回転磁界が形成され、磁石22がこの回転磁界による吸引力及び反発力により回転力を受けてシャフト21をその回転軸線Oを中心として回転させる。第1乃至第3のバスリング41〜43は、後述する保持構造によってステータ3に固定されている。
【0021】
図2(a)は、ロータ2を省略してステータ3及び第1乃至第4のバスリング41〜44を示す斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)の一部拡大図である。
図3は、ステータ3及び第1乃至第4のバスリング41〜44をその中心軸方向から見た平面図である。
図4は、第1乃至第4のバスリング41〜44をステータ3から分離して示す分解斜視図である。なお、以下の説明において、ステータ3の軸方向,径方向,周方向を、単に「軸方向」,「径方向」,「周方向」ということがある。
【0022】
ステータ3は、複数の電磁鋼板310を積層してなるコア31にインシュレータ33を装着し、コア31の外周にインシュレータ33を介在させて巻線32を巻き回した複数のコア組立体30からなる。本実施の形態では、ステータ3が12個のコア組立体30を環状に配置したリング状である。
【0023】
インシュレータ33には、第1乃至第4のバスリング41〜44を保持する保持部33aが形成されている。第1乃至第4のバスリング41〜44は、軸方向に沿って同心状に並列し、保持部33aに保持されている。保持部33aの構成の詳細については後述する。
【0024】
保持部33aは、巻線32(U相の巻線32U,V相の巻線32V,及びW相の巻線32W)よりもステータ3の外周側に設けられ、巻線32の一方の端部321U,321V,321Wが径方向外側に延出されて第1乃至第3のバスリング41〜43に接続されている。巻線32の他方の端部322U,322V,322Wは、軸方向に沿ってインシュレータ33から引き出されて第4のバスリング44に接続される。
【0025】
第1乃至第4のバスリング41〜44は、銅等の良導電性の金属からなる線状の中心導体(金属導体)400を樹脂からなる絶縁体401で被覆した絶縁電線を屈曲して形成されている。第1乃至第3のバスリング41〜43の両端部では、絶縁体401から中心導体400が露出し、この露出した中心導体400に給電端子410,420,430がそれぞれ圧着により接続されている。すなわち、第1乃至第3のバスリング41〜43のそれぞれは、線状導体としての中心導体400を環状に形成してなり、中心導体400の両端部が一つの端子(給電端子410,420,430)に接続されている。なお、本実施の形態では、中心導体400が単線からなるが、中心導体400は、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0026】
図4に示すように、第1のバスリング41は、U相の巻線32Uの一方の端部321Uに接続される接続部41aを周方向の4箇所に有している。第2のバスリング42は、V相の巻線32Vの一方の端部321Vに接続される接続部42aを周方向の4箇所に有している。また、第3のバスリング43は、W相の巻線32Wの一方の端部321Wに接続される接続部43aを周方向の4箇所に有している。これらの接続部41a,42a,43aでは、絶縁体401が除去され、中心導体400が露出している。本実施の形態では、第1乃至第3のバスリング41〜43が同一の形状である。
【0027】
第4のバスリング44は、保持部33aに第1乃至第3のバスリング41〜43と共に保持され、巻線32の他方の端部322U,322V,322Wに電気的に接続される接続部44aを周方向の12箇所に有している。この接続部44aでは、第1乃至第3のバスリング41〜43の接続部41a,42a,43aと同様に、絶縁体401が除去されて中心導体400が露出している。接続部44aは、径方向内方に開口するU字状である。
【0028】
(インシュレータ及びコア組立体の構成)
図5は、インシュレータ33及びコア31を示す斜視図である。
図6は、コア組立体30を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は斜視図である。
【0029】
インシュレータ33は、
図5に示すように、第1部材5と第2部材6とを組み合わせてなり、第1部材5及び第2部材6は、それぞれが射出成型によって形成された樹脂等の絶縁体からなる。第1部材5は、コア31と巻線32との間に介在する絶縁部50と、絶縁部50を径方向に挟んで対向する外壁部51及び内壁部52と、外壁部51からステータ3の外周側に向かって突出し、軸方向に対して直交する上面53aを有する外鍔部53と、外鍔部53の上面53aに立設された第1乃至第3の支持壁54〜56と、第2の支持壁55の先端部に設けられた突起57と、外鍔部53の外周側の周縁に沿って第1乃至第3の支持壁54〜56に径方向に向かい合うように設けられた周縁壁58と、外壁部51と外鍔部53との間の角部に設けられ、巻線32の端部が外鍔部53の上面53a側に引き出される引き出し部59とを一体に有している。
【0030】
第2部材6は、コア31と巻線32との間に介在する絶縁部60と、絶縁部60を径方向に挟んで対向する外壁部61及び内壁部62とを一体に有している。
【0031】
コア31は、第1部材5の絶縁部50と第2部材6の絶縁部60との間に挟まれて径方向に延在する延在部311と、径方向における延在部311の外側に連続して形成され、周方向に延びるバックヨーク部312とを一体に有している。バックヨーク部312は、周方向一側の端部に円弧状の凸部312aを有し、周方向他側の端部に凹部312bが形成されている。凸部312aは、隣接して配置される他のコア31の凹部312bに嵌合する。また、延在部311は、径方向における内側の端部が周方向に広がるように形成されている。
【0032】
第1部材5と第2部材6とは、ステータ3の軸方向に沿って絶縁部50,60の間にコア31の延在部311を挟むように組み合わされる。第1部材5と第2部材6とを組み合わせることにより、第1部材5の外壁部51と第2部材6の外壁部61とが連続した1枚の壁状となり、第1部材5の内壁部52と第2部材6の内壁部62とが同じく連続した1枚の壁状となる。
【0033】
図6に示すように、巻線32は、第1部材5及び第2部材6の外壁部51,61と内壁部52,62との間で、絶縁部50,60の外周側に巻き回される。第1部材5の外壁部51には、軸方向の端部から外鍔部53の上面53aに向かって軸方向に延びる切り欠き51aが形成され、この切り欠き51aからステータ3の外周側に向かって巻線32の一方の端部321が突出している。この一方の端部321は、コア組立体30の配置位置によって、U相の巻線32Uの一方の端部321U,V相の巻線32Vの一方の端部321V,W相の巻線32Wの一方の端部321Wの何れかとなる。
【0034】
また、引き出し部59からは、巻線32の他方の端部322が軸方向に沿って突出している。この他方の端部322は、コア組立体30の配置位置によって、U相の巻線32Uの他方の端部322U,V相の巻線32Vの他方の端部322V,W相の巻線32Wの他方の端部322Wの何れかとなる。
【0035】
第1乃至第3の支持壁54〜56は、周方向に並列し、第2の支持壁55が第1の支持壁54と第3の支持壁56との間に配置されている。第1の支持壁54及び第3の支持壁55は、外鍔部53における周方向の両端部に配置されている。複数のコア組立体30が周方向に配置されることにより、第1の支持壁54は、隣接する他のコア組立体30の第3の支持壁55に連続する。
【0036】
第2の支持壁55は、外鍔部53の上面53aからステータ3の軸方向に延在し、周方向の幅が切り欠き51aと引き出し部59との間隔よりも狭く形成されている。第2の支持壁55の幅方向(ステータ3の周方向)の両端部には、一対のガイド部551,552が形成されている。一対のガイド部551,552は、軸方向から見た場合にその形状が円弧状であり、第2の支持壁55の径方向外側の外表面は、一方のガイド部551から他方のガイド部552まで滑らかに連続して形成されている。
【0037】
第1の支持壁54は、第2の支持壁55との間に第1乃至第3のバスリング41〜43の接続部41a,42a,43aを挿入可能な間隔をあけて周方向に沿って配置されている。第1乃至第3のバスリング41〜43は、接続部41a,42a,43aが周方向に隣り合う第1の支持壁54と第2の支持壁55の間からステータ3の径方向内側に突出して配置されている。
【0038】
第1の支持壁54における第2の支持壁55側の端部には、ガイド部541が形成されている。このガイド部541は、第2の支持壁55の一対のガイド部551,552と同様に、軸方向から見た形状が円弧状である。
【0039】
第3の支持壁56は、第2の支持壁55との間に第4のバスリング44の接続部44aを挿入可能な隙間を挟んで周方向に並列している。第3の支持壁56における第2の支持壁55側の端部には、ガイド部561が形成されている。このガイド部561は、第2の支持壁55の一対のガイド部551,552と同様に、軸方向から見た形状が円弧状である。
【0040】
突起57は、第2の支持壁55におけるステータ3の軸方向の端部に設けられ、径方向に突出している。より詳細には、突起57は、第2の支持壁55の幅方向の中央部において、第2の支持壁55の外表面から径方向外側に向かって突出している。
【0041】
周縁壁58は、第1乃至第4のバスリング41〜44よりもステータ3の径方向外側に形成され、第1乃至第4のバスリング41〜44に径方向に対向する。この周縁壁58は、周方向の少なくとも一部において第1乃至第3の支持壁54〜56との間に第1乃至第4のバスリング41〜44を挟むように、ステータ3の周方向に沿って延在している。また、周縁壁58は、突起57及び引き出し部59の径方向外側にあたる部分が開口している。これにより、インシュレータ33の第1部材5の射出成型時において、突起57及び引き出し部59を成形するための金型を径方向に移動させることが可能となっている。
【0042】
第1乃至第3の支持壁54〜56、突起57、及び周縁壁58は、インシュレータ33の保持部33aを構成する。この保持部33a(第1乃至第3の支持壁54〜56、突起57、及び周縁壁58)は、インシュレータ33を形成するための金型により、絶縁部50、外壁部51、内壁部52、及び外鍔部53と同時に形成される。
【0043】
保持部33を構成する第1乃至第3の支持壁54〜56、突起57、及び周縁壁58のうち、第1乃至第3の支持壁54〜56は、それぞれが第1乃至第4のバスリング41〜44を一括してステータ3の軸方向に沿って支持する支持部として機能する。突起57は、この支持部(第1乃至第3の支持壁54〜56)に対する第1乃至第4のバスリング41〜44の軸方向への移動を規制する規制部として機能する。すなわち、保持部33aは、第1乃至第4のバスリング41〜44を一括してステータ3の軸方向に沿って支持する支持部と、この支持部に対するステータ3の軸方向への第1乃至第4のバスリング41〜44の移動を規制する規制部とを有している。また、周縁壁58は、第1乃至第4のバスリング41〜44の径方向外側への移動を規制する外周壁部として機能する。
【0044】
(第1乃至第4のバスリング41〜44の構成)
図7は、第1のバスリング41の接続部41aを示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【0045】
第1のバスリング41は、中心導体400をU字状に屈曲して形成されたU字部411と、保持部33aに保持される被保持部412と、U字部411の両端と被保持部412との間に径方向に延在して設けられた一対の延在部413とを一体に有している。第1のバスリング41における一対の延在部413のうち、一方の延在部413と他方の延在部413とは周方向に離間しており、一方の延在部413と他方の延在部413との間の隙間からU字部411にU相の巻線32Uの一方の端部321Uを挿通させることが可能となっている。
【0046】
第1のバスリング41において、被保持部412と延在部413とは折り曲げ部413aで折り曲げられている。一方の延在部413における折り曲げ部413aと他方の延在部413における折り曲げ部413aとは、周方向に離間している。本実施の形態では、折り曲げ部413aにおける折り曲げ角(被保持部412と延在部413とがなす角)が鈍角であり、一対の延在部413は、径方向内側ほど(U字部411に近づくほど)互いの間隔が狭くなっている。すなわち、一対の延在部413は、第1のバスリング41の径方向に対して傾斜しながら、径方向内方に向かって延在している。
【0047】
U字部411は、
図7(b)に示すように、円弧状の円弧部411aと、円弧部411aを挟んで周方向に対向し、軸方向に延びる一対の軸部411b,411cとからなる。第1のバスリング41は、U字部411にU相の巻線32Uの一方の端部321Uが挿通された状態で、U相の巻線32Uと電気的に接続される。
【0048】
また、
図4に示すように、第2のバスリング42の接続部42a、及び第3のバスリング43の接続部43aは、第1のバスリング41の接続部41aと同形状である。すなわち、第2及び第3のバスリング42,43の接続部42a,43aは、中心導体400をU字状に屈曲して形成されたU字部421,431と、保持部33aに保持される被保持部422,432と、U字部421,431の両端と被保持部422,432との間に径方向に延在して設けられた一対の延在部423,433とをそれぞれ一体に有している。
【0049】
第2のバスリング42における一対の延在部423のうち、一方の延在部423と他方の延在部423とは周方向に離間しており、一方の延在部423と他方の延在部423との間の隙間からU字部421にV相の巻線32Vの一方の端部321Vを挿通させることが可能となっている。また、第3のバスリング43における一対の延在部433のうち、一方の延在部433と他方の延在部433とは周方向に離間しており、一方の延在部433と他方の延在部433との間の隙間からU字部431にW相の巻線32Wの一方の端部321Wを挿通させることが可能となっている。
【0050】
第2のバスリング42は、U字部421にV相の巻線32Vの一方の端部321Vが挿通された状態で、V相の巻線32Vと電気的に接続される。第3のバスリング43は、U字部431にW相の巻線32Wの一方の端部321Wが挿通された状態で、W相の巻線32Wと電気的に接続される。
【0051】
第1の支持壁54と第2の支持壁55との間隔は、第1乃至第3のバスリング41〜43の接続部41a,42a,43aの周方向の幅に対応した間隔である。ここで、「対応した間隔」とは、第1の支持壁54と第2の支持壁55との間に一対の延在部413,423,433を配置可能であり、かつ一対の延在部413,423,433と第1の支持壁54のガイド部541及び第2の支持壁55のガイド部551との周方向の当接により、U字部411,421,431を切り欠き51aに対向する位置に位置決めすることが可能となる寸法関係を有していることをいう。
【0052】
また、第3の支持壁56と第2の支持壁55との間隔は、第4のバスリング44の接続部44aの周方向の幅に対応した間隔である。ここで、「対応した間隔」とは、第3の支持壁56と第2の支持壁55との間に接続部44aを配置可能であり、かつ第2の支持壁55のガイド部552及び第3の支持壁56のガイド部561と接続部44aとの当接により、接続部44aを引き出し部59に対向する位置に位置決めすることが可能となる寸法関係を有していることをいう。
【0053】
図8(a)は、集配電リング4の一部を軸方向から見た平面図である。
図8(b)は、コア組立体30の平面図である。
【0054】
図8(a),(b)に示すように、第1のバスリング41の接続部41aの周方向の幅をW
U、第4のバスリング44の接続部44aの周方向の幅をW
N、第1の支持壁54と第2の支持壁55との間隔をD
1、第3の支持壁56と第2の支持壁55との間隔をD
2とすると、間隔D
1は幅W
Uよりも僅かに大きく、間隔D
2は幅W
Nよりも僅かに大きい。間隔D
1は、例えば幅W
Uの1.01以上1.1倍以下である。また、間隔D
2は、例えば幅W
Nの1.01以上1.1倍以下である。
【0055】
これにより、第1のバスリング41の接続部41aを第1の支持壁54と第2の支持壁55との間に嵌め込むことで接続部41aを位置決めすることができ、U字部411に巻線32Uの一方の端部321Uを挿通させることが容易となる。また、第4のバスリング44の接続部44aを第3の支持壁56と第2の支持壁55との間に嵌め込むことで接続部44aを位置決めすることができ、接続部44aにU相の巻線32Uの他方の端部322Uを挿通させることが容易となる。
【0056】
なお、間隔D
1は、第1の支持壁54と第2の支持壁55との間の最少間隔(第1の支持壁54のガイド部541の周方向端部と第2の支持壁55のガイド部551の周方向端部との間の間隔)であり、間隔D
2は、第3の支持壁56と第2の支持壁55との間の最少間隔(第3の支持壁56のガイド部561の周方向端部と第2の支持壁55のガイド部552の周方向端部との間の間隔)である。また、第1のバスリング41の接続部41aの周方向の幅W
Uは、第1の支持壁54のガイド部541の周方向端部と第2の支持壁55のガイド部551の周方向端部との間における一対の延在部413の周方向の幅であり、第4のバスリング44の接続部44aの周方向の幅W
Nは、第3の支持壁56のガイド部561の周方向端部と第2の支持壁55のガイド部552の周方向端部との間における接続部44aの周方向の幅である。
【0057】
また、
図8(a)では、例として第1のバスリング41の接続部41aを示しているが、第2及び第3のバスリング42,43の接続部42a,43aの周方向の幅は、第1のバスリング41の接続部41aの周方向の幅W
Uと同じであり、第2及び第3のバスリング42,43の接続部42a,43aを第1の支持壁54と第2の支持壁55との間に嵌め込むことで接続部42a,43aを同様に位置決めすることができる。
【0058】
(第1乃至第4のバスリング41〜44の保持構造)
図9は、コア組立体30の断面を示し、(a)は
図8(b)のA−A線断面の第1の支持壁54側を見た断面図、(b)は
図8(b)のA−A線断面の第3の支持壁56側を見た断面図である。
図9(a)及び(b)では、インシュレータ33の保持部33aに保持される第1乃至第4のバスリング41〜44の被保持部412,422,432を二点鎖線で示している。
【0059】
第1乃至第4のバスリング41〜44は、周縁壁58の内側に配置され、第1乃至第3の支持壁54〜56における径方向外側に保持される。インシュレータ33の保持部33aに保持された第1乃至第4のバスリング41〜44は、軸方向に並んで配置され、第3のバスリング43が外鍔部53の上面53aに接触し、第3のバスリング43に接して第2のバスリング42が、第2のバスリング42に接して第1のバスリング41が、また第1のバスリング41に接して第4のバスリング44が、それぞれ配置される。
【0060】
第1乃至第4のバスリング41〜44は、保持部33aに対する軸方向の相対移動によって第2の支持壁55の先端部に設けられた突起57を越えて保持部33aに保持される。つまり、第1乃至第4のバスリング41〜44は、第1乃至第3の支持壁54〜56と周縁壁58との間に、第1乃至第3の支持壁54〜56の先端部側から外鍔部53の上面53aに向かって軸方向に順次挿入されて保持部33aに保持され、この挿入の際に突起57を乗り越える。
【0061】
第1乃至第4のバスリング41〜44の被保持部412,422,432が突起57を乗り越える際、第2の支持壁55は弾性変形して外壁部51側に湾曲する。第1乃至第4のバスリング41〜44が保持されると、突起57は第4のバスリング44を係止して、第4のバスリング44の抜け出しを抑止する。これにより、第1乃至第3のバスリング41〜43も、保持部33aからの抜け出しが抑止される。
【0062】
(電動機1の製造方法)
次に、電動機1の製造方法について説明する。なお、以下に述べる製造方法は、電動機1の製造方法の具体的な一例として示すものであり、この手順によらなくとも電動機1を製造することが可能である。
【0063】
電動機1の製造方法は、コア31にインシュレータ33を装着してインシュレータ33の絶縁部50,60に巻線32を巻き回した複数のコア組立体30を製造するコア組立体製造工程と、複数のコア組立体30を環状に配置してステータ3を形成する配置工程と、U相、V相、及びW相の巻線32U,32V,32Wのうち、少なくとも一部の巻線をステータ3の軸方向における第1乃至第3のバスリング41〜43の位置に応じて屈曲し、第1乃至第3のバスリング41〜43との接続部位の位置を合わせる位置合わせ工程と、インシュレータ33の保持部33aに第1乃至第4のバスリング41〜44を保持する保持工程と、U相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wの一方の端部321U,321V,321Wと第1乃至第3のバスリング41〜43とを接続する第1の接続工程と、U相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wの他方の端部322U,322V,322Wと第4のバスリング44とを接続する第2の接続工程とを有する。
【0064】
図10(a)〜(c)は、保持工程及び位置合わせ工程を説明するための説明図である。本実施の形態では、保持工程と位置合わせ工程とを同時に行う。
【0065】
保持工程では、第3のバスリング43、第2のバスリング42、第1のバスリング41、及び第4のバスリング44を、この順序で順次各インシュレータ33の第1乃至第3の支持壁54〜56と周縁壁58との間の収容空間Sに挿入する。そして、第4のバスリング44が突起57に係止されることにより、第1乃至第4のバスリング41〜44が各インシュレータ33の保持部33aに保持される。
【0066】
第3のバスリング43、第2のバスリング42、第1のバスリング41を収容空間Sに挿入する際、U相、V相、及びW相の巻線32U,32V,32Wの一方の端部321U,321V,321Wと第1乃至第3のバスリング41〜43の接続部41a,42a,43aとの位置合わせが行われる。つまり、第1乃至第3のバスリング41〜43を収容空間Sに挿入する前の状態では、
図9(a)に示すように、巻線32の一方の端部321がその先端部ほど外鍔部35の上面35aから離間するように径方向に対して傾斜しているが、第3のバスリング43を収容空間Sに挿入することにより、
図10(a)に示すように、巻線32Wの一方の端部321Wが接続部43aのU字部431に挿通された状態で、W相の巻線32Wが第3のバスリング43の下方(上面35a側)への移動に伴って下方に屈曲される。
【0067】
また、
図10(b)に示すように、第3のバスリング43上に第2のバスリング42を配置することにより、巻線32Vの一方の端部321Vが接続部42aのU字部421に挿通された状態で、V相の巻線32Vが第2のバスリング42の下方への移動に伴って下方に屈曲される。またさらに、
図10(c)に示すように、第2のバスリング41上に第1のバスリング41を配置することにより、巻線32Uの一方の端部321Uが接続部41aのU字部411に挿通される。なお、本実施の形態では、第1のバスリング41を収容空間Sに挿入する際には、巻線32Uが屈曲されないように、コア組立体30における巻線32の一方の端部321の位置及び傾き角度が設定されている。
【0068】
図11は、第4のバスリング44を示す平面図であり、(a)は保持工程を行う前の状態を、(b)は保持工程において第4のバスリング44を収容空間Sに挿入する際の状態を、それぞれ示す。
【0069】
第4のバスリング44は、
図11(a)に示すように、1本の絶縁電線を屈曲してリング状に成形されている。この絶縁電線の両端部44b,44cは、互いに連結されることなく、それぞれが自由端となっている。
【0070】
第4のバスリング44を収容空間Sに挿入する際には、
図11(b)に示すように、周方向の一部が径方向にオーバーラップするように全体を弾性的に縮径させ、複数のインシュレータ33の収容空間Sに順次挿入する。
図11(b)に示す例では、第4のバスリング44の一方の端部44bが他方の端部44cよりも外周側にあるので、一方の端部44bから他方の端部44cに向かって、各接続部44aの間における複数の被保持部442を複数のインシュレータ33のそれぞれの収容空間Sに順次挿入する。
【0071】
縮径された第4のバスリング44は、その復元力によって拡径するが、各被保持部442の径方向外方への移動は、インシュレータ33の周縁壁58によって規制される。また、前述のように、巻線32の他方の端部322U,322V,322Wは、軸方向に沿ってインシュレータ33の引き出し部59から引き出されているので、縮径された第4のバスリング44が復元力によって拡径することにより、巻線32の他方の端部322U,322V,322WがU字状に形成された接続部44aの径方向の奥側の位置に配置される。
【0072】
つまり、第4のバスリング44は、弾性的に縮径した状態でU相、V相、及びW相の巻線32U,32V,32Wの他方の端部322U,322V,322Wが接続部44aに挿通され、この端部322U,322V,322Wは、第4のバスリング44の復元に伴う拡径によって接続部44aの奥側に配置される。その後、U相、V相、及びW相の巻線32U,32V,32Wの他方の端部322U,322V,322Wが挿通された状態の接続部44aを加締めることによって、U相、V相、及びW相の巻線32U,32V,32Wと第4のバスリング44とが電気的に接続される。
【0073】
図12は、第1の接続工程を説明するための模式図であり、(a)は第1の接続工程を行う前の第1のバスリング41のU字部411及びU相の巻線32Uの一方の端部321Uを、(b)は第1の接続工程を行った後の第1のバスリング41のU字部411及びU相の巻線32Uの一方の端部321Uを示している。なお、
図10では、例として第1のバスリング41のU字部411にU相の巻線32Uの一方の端部321Uを接続する際の状態を示しているが、第2及び第3のバスリング42,43のU字部421,431とV相及びW相の巻線32V,32Wの一方の端部321V,321Wとの接続も、同様に行うことができる。
【0074】
第1乃至第3のバスリング41〜43とU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wとは、各巻線の一方の端部321U,321V,321Wが挿通された状態のU字部411,421,431を加締めることによって電気的に接続される。
【0075】
より具体的に、本実施の形態では、この接続を熱加締め(ヒュージング)によって行う。すなわち、各巻線の一方の端部321U,321V,321Wが挿通された状態のU字部411,421,431を加熱しながら加締めることによって第1乃至第3のバスリング41〜43とU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wとを電気的に接続する。U字部411,421,431には予め錫メッキが施され、加熱によってメッキされた錫が溶融することにより、電気的な接続がより確実となる。
【0076】
この熱加締めは、
図12(a)に示すように、正電極71をU字部411の軸部411bに接触させると共に、負電極72をU字部411の軸部411cに接触させ、軸部411b,411cを正電極71及び負電極72によってU相の巻線32Uの一方の端部321Uに押し付けながら、正電極71と負電極72との間に直流電圧を印加する。すると、この正電極71から、U字部411の軸部411b、巻線32Uの一方の端部321U、U字部431の軸部411cを介して負電極72に直流電流が流れ、そのジュール熱によって先ずメッキされた錫が溶融し、続いてU字部411の軸部411b,411cならびに端部321Uの一部が溶融する。これにより、第1のバスリング41のU字部411とU相の巻線32Uの一方の端部321Uとが電気的に接続される。
【0077】
なお、この熱加締めによって、
図12(b)に示すように一対の軸部411b,411c間の距離が狭くなるが、この軸部411b,411c間の距離の変化は、接続部41a一対の延在部413の傾きが変化することによって吸収される。つまり、第1の接続工程では、巻線32Uの一方の端部321Uが第1のバスリング41のU字部411に挿通された状態でU字部411の周方向の両側から加締められ、この端部321UをU字部411の一対の軸部411b,411c間に挟んだ状態とし、電気的に接続する。この接続後において、一対の延在部413同士、及び折り曲げ部413a同士は互いに接触せず、加締めによって第1のバスリング41が縮径してしまうことが抑制されている。
【0078】
なお、第2及び第3のバスリング41,42においても、一対の延在部423,433は、第1のバスリング41と同様に、U字部421,431が巻線32V,32Wの一方の端部321V,321Wに接続された状態で、互いに接触しない。
【0079】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0080】
(1)第1乃至第4のバスリング41〜44がインシュレータ33に形成された保持部33aに保持されるので、例えばモールド成形された樹脂によって第1乃至第4のバスリング41〜44を一体化する必要がなく、集配電リング4ひいては電動機1の製造コストを低減することが可能となる。
【0081】
(2)第1乃至第4のバスリング41〜44は、第1乃至第3の支持壁54〜56に支持され、かつ突起57によって軸方向移動が規制されて抜け止めされているので、第1乃至第4のバスリング41〜44を保持部33aに確実に保持することができる。
【0082】
(3)第1乃至第4のバスリング41〜44は、第2の支持壁55の軸方向の端部に設けられた突起57を越えて保持部33aに保持されるので、一旦収容空間Sに挿入された第1乃至第4のバスリング41〜44の被保持部412,422,432,442が容易に収容空間Sから抜け出すことが抑制される。また、第1乃至第4のバスリング41〜44は、前述のようにそれぞれ互いに接触しているので、第1乃至第4のバスリング41〜44のうち、最も上方(外鍔部53の上面53aから離間する方向)に位置する第4のバスリング44に接触する突起57を形成することにより、第1乃至第4のバスリング41〜44を抜け止めすることができ、第1乃至第3のバスリング41〜43をそれぞれ抜け止めする抜け止め機構が不要となる。
【0083】
(4)第1乃至第3の支持壁54〜56は、ステータ3の軸方向に延在し、第1乃至第4のバスリング41〜44は、第1乃至第3の支持壁54〜56におけるステータ3の径方向外側に保持されるので、U字部411,421,431の加締めによって第1乃至第3のバスリング41〜43が縮径しても、その縮径によって被保持部412,422,432が第1乃至第3の支持壁54〜56に押し付けられ、より確実に第1乃至第3のバスリング41〜43が保持部33aに保持される。
【0084】
(5)第1乃至第4のバスリング41〜44は、第1乃至第3の支持壁54〜56と周縁壁58との間に挟まれて保持されるので、例えば第4のバスリング44の周方向の一部が径方向外側に膨らんで突起57を乗り越えて抜け出してしまうことが抑制され、第1乃至第4のバスリング41〜44の保持部33aへの保持をより確実に行うことができる。
【0085】
(6)第1乃至第3のバスリング41〜43は、それぞれ一本の絶縁電線を屈曲してU字部411,421,431、被保持部412,422,432、及び延在部413,423,433が形成され、U相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wの一方の端部321U,321V,321WがU字部411,421,431に挿通された状態で電気的に接続されるので、例えば接続端子によって第1乃至第3のバスリング41〜43とU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wとを接続する必要がなく、製造効率を高めて集配電リング4ひいては電動機1の製造コストを低減することが可能となる。
【0086】
(7)第1乃至第3のバスリング41〜43とU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wとは、U字部411,421,431の熱加締めによって接続されるので、強固に接続することが可能となる。
【0087】
(8)U字部411,421,431には、予め錫メッキが施されているので、熱加締めにおける加熱によってメッキされた錫が溶融することにより、電気的な接続がより確実となる。
【0088】
(9)第1乃至第3の支持壁54〜56は、ステータ3の周方向に沿って間隔をあけて配置されているので、第1の支持壁54と第2の支持壁55との間、及び第3の支持壁56と第2の支持壁55との間から接続部41a,42a,43a,44aを径方向内方に突出させ、巻線32の一方の端部321及び他方の端部322に容易に接続することが可能となる。
【0089】
(10)第1の支持壁54と第2の支持壁55との間隔、及び第3の支持壁56と第2の支持壁55との間隔は、第1乃至第3のバスリング41,42,43の接続部41a,42a,43aの周方向の幅に対応した幅であるので、U字部411,421,431を切り欠き51aに対向する位置、すなわちU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wの一方の端部321U,321V,321Wを挿通させる位置に位置決めすることが可能となり、組み付け性が向上する。
【0090】
(11)第1乃至第3のバスリング41〜43は、同一の形状であり、V相及びW相の巻線32V,32Wの一方の端部321V,321Wは、径方向における接続部42a,43aの位置に応じて屈曲されるので、集配電リング4及び電動機1における部品の種類の数を削減することができ、また誤組み付けによる不良品の発生も抑制することができると共に、第1乃至第3のバスリング41〜43と各相の巻線32U,32V,32Wとの電気的な接続を確実に行うことができる。
【0091】
(12)一対の延在部413,413,433は、U字部411,421,431が巻線32U,32V,32Wの一方の端部321U,321V,321Wに接続された状態において互いに接触しないので、第1乃至第3のバスリング41〜43とU相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wとの接続時において、一対の延在部413,413,433同士の接触によってU字部411,421,431の加締めが妨げられることなく、確実に接続を行えると共に、U字部411,421,431の加締めによって第1乃至第3のバスリング41〜43が縮径してしまうことを抑制することができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、巻線32の一方の端部321を予め上方(外鍔部53の上面53aから離間する方向)に突出させ、ステータ3の軸方向における第1乃至第3のバスリング41〜43の位置に応じて外壁部51から突出した巻線32を下方に屈曲させる場合について説明したが、これとは逆に、巻線32の一方の端部321を予め下方に突出させ、第1乃至第3のバスリング41〜43の位置に応じて上方に屈曲させてもよい。すなわち、U相,V相,及びW相の巻線32U,32V,32Wのうち少なくとも一部の巻線をステータ3の軸方向における第1乃至第3のバスリング41〜43の位置に応じて屈曲させれば、第1乃至第3のバスリング41〜43を同一の形状として本実施の形態の効果を得ることができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0094】
図13は、第2の実施の形態に係るインシュレータ33の第2の支持壁55A及びその周辺部を拡大して示す断面図である。本実施の形態に係るインシュレータ33は、その第2の支持壁55Aの形状が第1の実施の形態に係る第2の支持壁55の形状と異なる他は、第1の実施の形態と同様であるので、第1の実施の形態について説明した構成要素と共通する構成要素については、第1の実施の形態で用いた符号と同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0095】
本実施の形態に係る第2の支持壁55Aは、その外周面550に第1乃至第3の突部553〜555が形成されている。外周面550からの第1乃至第3の突部553〜555の径方向の突出量は、突起57の外周面550からの径方向の突出量よりも小さい。これにより、第1乃至第3のバスリング41〜43が第1乃至第3の突部553〜555を乗り越えるために必要な軸方向の押圧力は、第1乃至第4のバスリング41〜44が突起57を乗り越えるために必要な軸方向の押圧力よりも小さくなっている。
【0096】
第1乃至第4のバスリング41〜44が保持部33aに保持されたとき、第1の突部553は第1のバスリング41と第4のバスリング44との間に位置し、第2の突部554は、第2のバスリング42と第1のバスリング41との間に位置する。また、第3の突部555は、第3のバスリング43と第2のバスリング42との間に位置する。
【0097】
本実施の形態によれば、第1乃至第3のバスリング41〜43が保持部33aから抜け出す軸方向の力を受けた場合でも、その力が第1乃至第3の突部553〜555に作用し、第1乃至第3のバスリング41〜43が第1乃至第3の突部553〜555から受ける反力によって保持部33aからの抜け出しが抑制される。
【0098】
なお、第1乃至第3の突部553〜555は、第2の支持壁55Aの幅方向(周方向)の全体に亘って形成してもよく、幅方向の一部のみに形成してもよい。また、
図13では、第1乃至第3の突部553〜555の断面形状が台形状である場合について例示したが、第1乃至第3の突部553〜555の断面形状に特に限定はなく、例えば半円状であってもよい。またさらに、第1乃至第3の突部553〜555のうち、一部の突部を省略してもよい。
【0099】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0100】
[1]環状に配置された複数のコア(31)と、前記複数のコア(31)にそれぞれ巻き回された巻線(32)と、前記コア(31)と前記巻線(32)との間を絶縁するインシュレータ(33)とを備えたステータ(3)に、前記巻線(32)に電流を集配電する環状の複数の集配電部材(41〜44)を保持する集配電部材(41〜44)の保持構造であって、前記インシュレータ(33)には、前記複数の集配電部材(41〜44)を保持する保持部(33a)が形成されており、前記複数の集配電部材(41〜44)が前記保持部(33a)に保持された、集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0101】
[2]前記保持部(33a)は、前記複数の集配電部材(41〜44)を一括して前記ステータ(3)の軸方向に沿って支持する支持部(54〜56)と、前記支持部(54〜56)に対する前記複数の集配電部材(41〜44)の前記軸方向への移動を規制する規制部(57)とを有する、前記[1]に記載の集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0102】
[3]前記規制部(57)は、前記支持部(54〜56)の前記軸方向の端部に設けられて前記ステータ(3)の径方向に突出する突起(57)であり、前記複数の集配電部材(41〜44)は、前記保持部(33a)に対する軸方向の相対移動によって前記突起(57)を越えて前記保持部(33a)に保持される、[2]に記載の集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0103】
[4]前記支持部(54〜56)は、前記ステータ(3)の軸方向に延在し、前記複数の集配電部材(41〜44)は、前記支持部(54〜56)における前記ステータ(3)の径方向外側に保持される、前記[2]又は[3]に記載の集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0104】
[5]前記保持部(33a)は、前記複数の集配電部材(41〜44)よりも前記ステータ(3)の径方向外側に形成されて前記複数の集配電部材(41〜44)に対向する外周壁部(58)をさらに有する、[4]に記載の集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0105】
[6]前記集配電部材(41〜43)は、金属導体(400)をU字状に屈曲して形成されたU字部(411,421,431)と、前記保持部(33a)に保持される被保持部(412,422,432)と、前記U字部(411,421,431)の両端と前記被保持部(412,422,432)との間に径方向に延在して設けられた一対の延在部(413,423,433)とを一体に有し、前記U字部(411,421,431)に前記巻線(32)の端部(321)が挿通された状態で、前記集配電部材(41〜43)と前記巻線(32)とが電気的に接続された、前記[1]乃至[5]の何れか1項に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0106】
[7]前記集配電部材(41〜43)と前記巻線(32)とが、前記巻線(32)の端部(311)が挿通された状態の前記U字部(411,421,431)を加締めることによって電気的に接続された、前記[6]に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0107】
[8]前記U字部(411,421,431)には錫メッキが施され、前記集配電部材(41〜43)と前記巻線(32)とが、前記巻線(32)の端部が挿通された状態の前記U字部(411,421,431)を熱加締めすることによって電気的に接続された、前記[6]に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0108】
[9]前記一対の延在部(413,423,433)は、前記U字部(411,421,431)が前記巻線(32)の端部に電気的に接続された状態で、互いに接触しない、前記[7]又は[8]に記載の集配電部材(41〜44)の保持構造。
【0109】
[10]前記ステータ(3)には、複数の前記支持部(54〜56)が前記ステータ(3)の周方向に沿って間隔をあけて配置され、前記集配電部材(41〜43)は、前記巻線(32)に接続される接続部(41a,42a,43a)が前記ステータ(3)の周方向に隣り合う一対の前記支持部(54,55)の間から前記ステータ(3)の径方向内側に突出して配置されている、前記[4]又は[5]に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0110】
[11]前記ステータ(3)の周方向に隣り合う一対の前記保持部(54,55)間の間隔が、前記接続部(41a,42a,43a)の周方向の幅(W
U)に対応した間隔である、前記[10]に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0111】
[12]前記複数の集配電部材(41〜43)は、同一の形状である、前記[1]乃至[11]の何れか1つに記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0112】
[13]前記複数の巻線(32)のうち少なくとも一部の巻線(32)は、前記ステータ(3)の軸方向における前記複数の集配電部材(41〜43)の位置に応じて屈曲された、前記[12]に記載の集配電部材(41〜43)の保持構造。
【0113】
[14]環状に配置された複数のコア(31)、前記コア(31)に巻き回されたU相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)、及び前記コア(31)と前記巻線(32U,32V,32W)との間を絶縁するインシュレータ(33)を備えたステータ(3)と、前記U相の巻線(32U)に電流を集配電する環状の第1の集配電部材(41)と、前記V相の巻線(32V)に電流を集配電する環状の第2の集配電部材(42)と、前記W相の巻線(32W)に電流を集配電する環状の第3の集配電部材(44)とを備え、前記インシュレータ(33)は、前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)を保持する保持部(33a)を有し、前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)が前記保持部(33a)に保持された、電動機(1)。
【0114】
[15]前記保持部(33a)に前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)と共に保持され、前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)に接続される中性相の環状の第4の集配電部材(44)をさらに備え、前記第4の集配電部材(44)は、径方向内方に開口するU字状の複数の接続部(44a)を有し、前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)の端部(322U,322V,322W)が挿通された状態の前記第4の集配電部材(44)の前記接続部(44a)を加締めることによって、前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)に電気的に接続された、前記[14]に記載の電動機(1)。
【0115】
[16]前記[14]又は[15]に記載の電動機(1)の製造方法であって、前記保持部(33a)に前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)を保持する保持工程と、前記U相、V相、及びW相(32U,32V,32W)の巻線と前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)とを接続する接続工程とを有する、電動機(1)の製造方法。
【0116】
[17]前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)のうち少なくとも一部の巻線(32)を前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)における前記ステータ(3)の軸方向の位置に応じて屈曲し、前記第1乃至第3の集配電部材(41〜43)との接続部位(411,421,431)の位置を合わせる位置合わせ工程をさらに有する、前記[16]に記載の電動機(1)の製造方法。
【0117】
[18]前記[15]に記載の電動機(1)の製造方法であって、前記第4の集配電部材(44)は、弾性的に縮径した状態で前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)の端部(322U,322V,322W)が前記接続部(44a)に挿通され、前記U相、V相、及びW相の巻線(32U,32V,32W)の端部(322U,322V,322W)は、前記第4の集配電部材(44)の復元に伴う拡径によって前記接続部(44a)の奥側に配置される、電動機(1)の製造方法。