(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の新規化合物、本発明の担持体、及び該担持体を用いてなる光電変換素子について、好ましい実施形態に基づき説明する。
【0013】
まず、本発明の新規化合物について説明する。
上記一般式(1)におけるZが表す共役性の基はπ共役基であれば特に限定されず、置換基を有していてもよい。本発明において、π共役基とは、不飽和結合が連なって形成されていることを表し、Zが表すπ共役基の中でも、後に説明する光電変換素子の変換効率が高くなる点で、連なって形成されている不飽和結合の炭素数が4〜60であることが好ましく、4〜40であることが更に好ましい。
【0014】
Zが表す基としては、下記式(Z−1)〜(Z−10)で表される基から選ばれる基を1〜7個連結した基であることが好ましく、中でも(Z−7)で表される基を少なくとも1つ有していることが更に好ましく、(Z−7)のみから構成されることが特に好ましい。
【0015】
【化2】
(式中、Xは、S、O、NR6又はSiR6R7を表し、式中の水素原子(但し、窒素原子に直接結合する水素原子を除く)は、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、−OR6基、−SR6基、−NR6R7基、−SiR6R7R8基又は置換されていてもよい脂肪族炭化水素基で置換されていてもよく、R6、R7及びR8は、水素原子又は置換されていてもよい炭化水素基を表す。)
【0016】
上記式(Z−1)〜(Z−10)中の水素原子を置換する脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基等が挙げられ、これらの基は酸素原子及び/又は窒素原子が隣り合わない条件で−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−NH−、NHCO−で1〜4回中断されていてよい。該脂肪族炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基又はアミノ基により更に置換されていてもよい。
【0017】
上記R6及びR7が表す置換されていてもよい炭化水素基としては、脂肪族炭化水基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらが複数結合した基が挙げられ、脂肪族炭化水素基としては、(Z−1)〜(Z−10)中の水素原子を置換する脂肪族炭化水素基として上記で説明した基が挙げられ、脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル、ベンジル、フルオレニル、インデニル等が挙げられる。
上記R6及びR7が表す置換されていてもよい炭化水素基における置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、又はアミノ基が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)におけるR1について説明する。
炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、ターフェニル、フルオレイル、チオフェニルフェニル、フラニルフェニル、2'−フェニル−プロピルフェニル、ベンジル、ナフチルメチル等が挙げられ、これらの基はカルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基により少なくとも一つ置換されており、そのような基としては、2−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、2−シアノフェニル、3−シアノフェニル、4−シアノフェニル、2−アミノフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、フェニルアミド−4'−イル、2−ニトロアミド、3−ニトロアミド、4−ニトロアミド、3−カルボキシナフタレン、4−カルボキシナフタレン、5−カルボキシナフタレン、6−カルボキシナフタレン、6−カルボキシナフタレン−2−イル、3−シアノナフタレン、4−シアノナフタレン、5−シアノナフタレン、4−カルボキシフェニルメチル、4−シアノフェニルメチル等が挙げられる。
炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、(Z−1)〜(Z−10)中の水素原子を置換する脂肪族炭化水素基として上記で挙げたものと同様のものが挙げられ、これらの基はカルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基により少なくとも一つ置換されており、そのような基としては、シアノメチル、2−シアノエチル、2−シアノプロピル、3−シアノプロピル、カルボキシメチル、2−カルボキシエチル、2−カルボキシプロピル、3−カルボキシプロピル、メチルアミド、エチルアミド、ニトロメチル、2−ニトロエチル、3−ニトロプロピル等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基により置換された炭素原子数7〜20の芳香族炭化水素基としては、上記で挙げた芳香族炭化水素基を上記脂肪族炭化水素基で置換したものが挙げられ、これらの基はカルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基により少なくとも一つ置換されており、そのような基としては、2−カルボキシ−5−メチルフェニル、5−カルボキシ−2−メチルフェニル、4−カルボキシ−2,5−ジメチルフェニル、4−シアノ−2,5−ジメチルフェニル等が挙げられる。
R1に必ず含まれるカルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基は1〜3個であり、好ましくは1又は2個であり、特に好ましくは1個である。カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基の中でも、カルボキシル基、シアノ基が好ましく、更に好ましくはカルボキシル基である。
【0019】
上記一般式(1)におけるR2が表す炭素原子数1〜20の置換されていてもよい炭化水素基としては、R6が表す置換されていてもよい炭化水素基として挙げた基のうち、炭素原子数が1〜20のものが挙げられる。R30、R31、R32、R33、R40、R41、R42、R43及びR44が表す置換されていてもよい炭化水素基としては、R6が表す置換されていてもよい炭化水素基として挙げた基と同様の基が挙げられる。
【0020】
R30とR31、R40とR41、R41とR42、R42とR43、R33とR44はそれぞれ連結して環を形成してもよく、形成される環の例としては、ベンゼン環、ジオキセン環などが挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)において、R5がシアノ基であるか又はR11が上記部分構造式(11−1)で表される基でありnが1若しくは2である化合物が好ましく、R5がシアノ基でありR11が上記部分構造式(11−1)で表される基でありnが1又は2である化合物がより好ましい。
【0022】
また、上記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることも好ましい。
【0023】
【化3】
(式中、Z、R1、R11、R2、R30、R31、R32、R40、R41、R42、R43及びR5は上記一般式(1)と同じである。)
【0024】
上記一般式(1)で表される新規化合物の具体例としては、以下のNo.1〜42の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。尚、式中Hexはヘキシル基を表す。
【0029】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、公知或いは周知一般の反応を利用した方法で得ることができ、その合成方法には特に限定されない。代表的な合成方法の一例を挙げると、カルボン酸基を有する共役体のカルボン酸(10)を酸クロリド(11)へ変換した後、カルボキシル基を保護した2級アミン化合物(12)を反応させることにより、アミド体(13)を合成し、トリフルオロ酢酸により脱保護することで、上記一般式(1)で表される化合物(以下の例では、R11が上記部分構造式(11−1)で表される化合物である下記一般式(1’)で表される化合物)を合成することができる。尚、反応に用いる試薬は必要に応じて変更してもよい。
【0030】
【化5】
(式中、Z、R1、R2、R30、R31、R32、R33、R40、R41、R42、R43、R44、R5及びnは上記一般式(1)と同じである。)
【0031】
本発明の新規化合物は、後で説明するように、担体に担持させて担持体の形態として、光電変換素子等の用途に好適に用いることができる。本発明の新規化合物は、その他に、光学記録材料、医薬品、農薬、香料、染料等の合成中間体;各種機能性材料、各種ポリマー原料;光電気化学電池、非線形光学装置、エレクトロクロミックディスプレイ、ホログラム、有機半導体、有機EL;ハロゲン化銀写真感光材料、光増感剤;印刷インキ、インクジェット、電子写真カラートナー、化粧料、プラスチック等に用いられる着色剤;タンパク質用染色剤、物質検出のための発光染料;合成石英原料、塗料、合成触媒、触媒担体、表面コート薄膜材料、シリコーンゴム架橋剤、粘結剤等の用途に用いることもできる。
【0032】
次に、本発明の担持体について説明する。
本発明の担持体に用いられる材料(担体)としては、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物、酸化ケイ素、ゼオライト、活性炭等が挙げられ、表面が多孔質であるものが好ましい。担持させる化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物であることを特徴としている。該化合物を担体に担持させる方法としては、公知の気層吸着、液層吸着等の方法を用いることが可能であるが、例えば、液層吸着の例として、本発明の化合物を溶媒に溶解し、その溶液に上記担体を浸漬することで吸着させる方法が挙げられる。
【0033】
上記担体の形状は、特に制限されず、例えば、膜状、粉状、粒状等の形状から、担持体の用途によって適宜選択すればよい。また、上記担体の大きさ及び本発明の担持体における本発明の化合物の担持量についても、特に制限されず、担持体の用途によって適宜選択すればよい。
【0034】
本発明の新規化合物を担持した本発明の担持体は、以下で説明する光電変換素子に好適に用いられるほか、触媒、トナー等にも用いることができる。
【0035】
次に、本発明の光電変換素子について説明する。
本発明の光電変換素子は、色素増感型光電変換素子であり、色素として本発明の新規化合物を用いる点以外は、従来の色素増感型光電変換素子と同様とすることができる。以下、本発明の光電変換素子の代表的な構成例について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0036】
図1は、本発明の光電変換素子の一例の断面構成を模式的に表すものであり、
図2は、
図1に示した光電変換素子の主要部を抜粋し拡大して表すものである。
図1及び
図2に示した光電変換素子は、いわゆる色素増感型太陽電池の主要部である。この光電変換素子は、作用電極10と対向電極20とが電解質含有層30を介して対向配置されたものであり、作用電極10及び対向電極20のうちの少なくとも一方は、光透過性を有する電極である。
【0037】
作用電極10は、例えば、導電性基板11と、その一方の面(対向電極20の側の面)に設けられた金属酸化物半導体層12と、金属酸化物半導体層12に担持された色素13とを有している。本発明の光電変換素子においては、色素13が、上記一般式(1)で表される本発明の新規化合物であり、色素としての本発明の新規化合物と、それを担持する金属酸化物半導体層12との複合体が、本発明の担持体である。
作用電極10は、外部回路に対して、負極として機能するものである。導電性基板11は、例えば、絶縁性の基板11Aの表面に導電層11Bを設けたものである。
【0038】
基板11Aの材料としては、例えば、ガラス、プラスチック等の絶縁性材料が挙げられる。プラスチックは、例えば透明ポリマーフィルムの形態で用いられ、透明ポリマーフィルムを形成するプラスチックとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィンあるいはブロム化フェノキシ等が挙げられる。
【0039】
導電層11Bとしては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの(FTO:F−SnO
2)等を含む導電性金属酸化物薄膜や、金(Au)、銀(Ag)あるいは白金(Pt)等を含む金属薄膜及び金属メッシュ、導電性高分子等で形成されたもの等が挙げられる。
【0040】
なお、導電性基板11は、例えば、導電性を有する材料によって単層構造となるように構成されていてもよく、その場合、導電性基板11の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物あるいは酸化スズにフッ素をドープしたもの等の導電性金属酸化物や、金、銀あるいは白金等の金属や、導電性高分子等が挙げられる。
【0041】
金属酸化物半導体層12は、色素13を担持する担体であり、例えば、
図2に示したように多孔質構造を有している。金属酸化物半導体層12は、緻密層12Aと多孔質層12Bとから形成されている。緻密層12Aは、導電性基板11との界面において形成され、緻密で空隙の少ないものであることが好ましく、膜状であることがより好ましい。多孔質層12Bは、電解質含有層30と接する表面において形成され、空隙が多く、表面積の大きな構造であることが好ましく、特に、多孔質の微粒子が付着している構造であることがより好ましい。なお、金属酸化物半導体層12は、例えば、膜状の単層構造となるように形成されていてもよい。本発明において、担持とは、色素13が、多孔質層12Bと化学的、物理的又は電気的に結合又は吸着している状態である。
【0042】
金属酸化物半導体層12に含まれる材料(金属酸化物半導体材料)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウムあるいは酸化マグネシウム等が挙げられる。中でも、金属酸化物半導体材料としては、高い変換効率が得られるため、酸化チタン及び酸化亜鉛が好ましい。また、これらの金属酸化物半導体材料は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を複合(混合、混晶、固溶体、表面被覆等)させて用いてもよく、例えば、酸化チタン及び酸化亜鉛等の組み合わせで使用することもできる。
【0043】
多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12の形成方法としては、例えば、電解析出法や、塗布法や、焼成法等が挙げられる。電解析出法により金属酸化物半導体層12を形成する場合には、金属酸化物半導体材料の微粒子を含む電解浴液中において、導電性基板11の導電層11B上にその微粒子を付着させると共に金属酸化物半導体材料を析出させる。塗布法により金属酸化物半導体層12を形成する場合には、金属酸化物半導体材料の微粒子を分散させた分散液(金属酸化物スラリー)を導電性基板11の上に塗布したのち、分散液中の分散媒を除去するために乾燥させる。焼結法により金属酸化物半導体層12を形成する場合には、塗布法と同様にして金属酸化物スラリーを導電性基板11の上に塗布、乾燥したのち、焼成する。中でも、電解析出法あるいは塗布法により金属酸化物半導体層12を形成すれば、基板11Aとして耐熱性が低いプラスチック材料やポリマーフィルム材料を用いることができるため、フレキシブル性の高い電極を作製することができる。
【0044】
また、金属酸化物半導体層12は、有機塩基、尿素誘導体、環状糖鎖を用いて処理してもよい。有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等の有機塩基が挙げられる。該処理は、下記で説明する色素13を吸着させる前でも後でもよい。処理方法としては浸漬処理が挙げられ、処理剤が固体の場合、有機溶媒に溶解した上で浸漬処理すればよい。
【0045】
色素13は、金属酸化物半導体層12に対して、例えば吸着しており、光を吸収して励起されることにより、電子を金属酸化物半導体層12へ注入することが可能な1種あるいは2種以上の色素(増感色素)を含んでいる。本発明の光電変換素子において、上記一般式(1)で表される本発明の新規化合物が色素13に該当するものである。色素13として本発明の新規化合物を用いると、色素13全体として、照射された光量に対する金属酸化物半導体層12への電子注入量の割合が高くなるため、変換効率が向上する。
【0046】
色素13は、上記一般式(1)で表される本発明の新規化合物を少なくとも一種含んでいればよく、他の色素を含んでいてもよい。他の色素としては有機色素(以下、他の有機色素という)及び有機金属錯体化合物が挙げられ、好ましくは、金属酸化物半導体層12(担体)に吸着できる基を有する色素が好ましい。
【0047】
他の有機色素としては、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ローダミンB 、ピロガロール、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB(エリスロシンは登録商標) 、フルオレシン、マーキュロクロム、シアニン系色素、メロシアニンジスアゾ系色素、トリスアゾ系色素、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェニルメタン系色素、トリメチルメタン系色素、キノリン系色素、ベンゾフェノン系色素、ナフトキノン系色素、ペリレン系色素、フルオレノン系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、ペリノン系色素、キナクリドン系色素、無金属フタロシアニン系色素、無金属ポルフィリン系色素又は無金属アザポルフィリン系色素等が挙げられる。
有機金属錯体化合物としては、芳香族複素環内にある窒素アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子又はカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物や、酸素アニオン又は硫黄アニオンと金属カチオンとで形成されるイオン性の配位結合と、窒素原子又はカルコゲン原子と金属カチオンとの間に形成される非イオン性配位結合の両方を有する有機金属錯体化合物等が挙げられる。具体的には、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、コバルトフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、鉄フタロシアニン等の金属フタロシアニン系色素、金属ナフタロシアニン系色素、金属ポルフィリン系色素、金属アザポルフィリン系色素ならびにルテニウム、鉄、オスミウムを用いたビピリジル金属錯体、ターピリジル金属錯体、フェナントロリン金属錯体、ビシンコニン酸金属錯体、アゾ金属錯体あるいはキノリノール金属錯体等のルテニウム錯体等が挙げられる。
【0048】
また、色素13は、上記した色素の他に、1種あるいは2種以上の添加剤を含んでいてもよい。この添加剤としては、例えば、色素中の化合物の会合を抑制する会合抑制剤が挙げられ、具体的には、化学式(14)で表されるコール酸系化合物等である。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0049】
【化6】
(式中、R91は酸性基又はアルコキシシリル基を有するアルキル基である。R92は化学式中のステロイド骨格を構成する炭素原子の何れかに結合する基を表し、水酸基、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、アシル基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、オキソ基、酸性基あるいはアルコキシシリル基又はそれらの誘導体であり、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい。tは1以上5以下の整数である。化学式中のステロイド骨格を構成する炭素原子と炭素原子との間の結合は、単結合であってもよいし、二重結合であってもよい。)
【0050】
対向電極20は、例えば、導電性基板21に導電層22が設けられたものであり、外部回路に対して正極として機能するものである。導電性基板21の材料としては、例えば、作用電極10の導電性基板11の基板11Aの材料と同様のものが挙げられる。導電層22は、1種あるいは2種以上の導電材と、必要に応じて結着材を含んで構成されている。導電層22に用いられる導電材としては、例えば、白金、金、銀、銅(Cu)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)あるいはインジウム(In)等の金属、炭素(C)、又は導電性高分子等が挙げられる。また、導電層22に用いられる結着材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマー又はポリイミド樹脂等が挙げられる。なお、対向電極20は、例えば、導電層22の単層構造であってもよい。
【0051】
電解質含有層30は、例えば、酸化還元対を有するレドックス電解質を含んで構成されている。レドックス電解質としては、例えば、I
-/I
3-系、Br
-/Br
3-系、キノン/ハイドロキノン系、Co錯体系又はニトロキシラジカル化合物系等が挙げられる。具体的には、ヨウ化物塩とヨウ素単体とを組み合わせたもの、又は臭化物塩と臭素単体とを組み合わせたもの等のハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたもの等である。このハロゲン化物塩としては、ハロゲン化セシウム、ハロゲン化四級アルキルアンモニウム類、ハロゲン化イミダゾリウム類、ハロゲン化チアゾリウム類、ハロゲン化オキサゾリウム類、ハロゲン化キノリニウム類あるいはハロゲン化ピリジニウム類等が挙げられる。具体的には、ヨウ化物塩としては、例えば、ヨウ化セシウムや、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラペンチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラへプチルアンモニウムヨージドあるいはトリメチルフェニルアンモニウムヨージド等の四級アルキルアンモニウムヨージド類や、3−メチルイミダゾリウムヨージドあるいは1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド等のイミダゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−2−チアゾリウムヨージド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチルチアゾリウムヨージドあるいは3−エチル−2−メチルベンゾチアゾリウムヨージド等のチアゾリウムヨージド類や、3−エチル−2−メチル−ベンゾオキサゾリウムヨージド等のオキサゾリウムヨージド類や、1−エチル−2−メチルキノリニウムヨージド等のキノリニウムヨージド類や、ピリジニウムヨージド類等が挙げられる。また、臭化物塩としては、例えば、四級アルキルアンモニウムブロミド等が挙げられる。ハロゲン化物塩とハロゲン単体とを組み合わせたものの中でも、上記したヨウ化物塩のうちの少なくとも1種とヨウ素単体との組み合わせが好ましい。
【0052】
また、レドックス電解質は、例えば、イオン性液体とハロゲン単体とを組み合わせたものでもよい。この場合には、さらに上記したハロゲン化物塩等を含んでいてもよい。イオン性液体としては、電池や太陽電池等において使用可能なものが挙げられ、例えば、「Inorg.Chem」1996,35,p1168〜1178、「Electrochemistry」2002,2,p130〜136、US5728487A、又はUS5683832A等に開示されているものが挙げられる。中でも、イオン性液体としては、室温(25℃)より低い融点を有する塩、又は室温よりも高い融点を有していても他の溶融塩等と溶解することにより室温で液状化する塩が好ましい。このイオン性液体の具体例としては、以下に示したアニオン及びカチオン等が挙げられる。
【0053】
イオン性液体のカチオンとしては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、オキサゾリウム、チアゾリウム、オキサジアゾリウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、トリアジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、カルバゾリウム、インドリウム、又はそれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。具体的には、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムあるいは1−エチル−3−メチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0054】
イオン性液体のアニオンとしては、AlCl
4-あるいはAl
2Cl
7-等の金属塩化物や、PF
6-、BF
4-、CF
3SO
3-、N(CF
3SO
2)
2-、F(HF)
n-あるいはCF
3COO
-等のフッ素含有物イオンや、NO
3-、CH
3COO
-、C
6H
11COO
-、CH
3OSO
3-、CH
3OSO
2-、CH
3SO
3-、CH
3SO
2-、(CH
3O)
2PO
2-、N(CN)
2-あるいはSCN
-等の非フッ素化合物イオンや、ヨウ化物イオンあるいは臭化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いられてもよい。中でも、このイオン性液体のアニオンとしては、ヨウ化物イオンが好ましい。
【0055】
電解質含有層30には、上記したレドックス電解質を溶媒に対して溶解させた液状の電解質(電解液)を用いてもよいし、電解液を高分子物質中に保持させた固体高分子電解質を用いてもよい。また、電解液とカーボンブラック等の粒子状の炭素材料とを混合して含む擬固体状(ペースト状)の電解質を用いてもよい。なお、炭素材料を含む擬固体状の電解質では、炭素材料が酸化還元反応を触媒する機能を有するため、電解質中にハロゲン単体を含まなくてもよい。このようなレドックス電解質は、上記したハロゲン化物塩やイオン性液体等を溶解する有機溶媒のいずれか1種あるいは2種以上を含んでいてもよい。この有機溶媒としては、電気化学的に不活性なものが挙げられ、例えば、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリドン、ペンタノール、キノリン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドあるいは1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0056】
また、電解質含有層30には、光電変換素子の発電効率向上、耐久性向上等の目的で、非円環状糖類(特開2005−093313号公報)、ピリジン系化合物(特開2003−331936号公報)、尿素誘導体(特開2003−168493号公報)、層状粘土鉱物(US2007/0275546A1)、ジベンジリデン−D−ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス−(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N−オクチル−D−グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム誘導体等を添加してもよい。
【0057】
この光電変換素子では、作用電極10に担持された色素13に対して光(太陽光又は、太陽光と同等の紫外光、可視光あるいは近赤外光)が照射されると、その光を吸収して励起した色素13が電子を金属酸化物半導体層12へ注入する。その電子が隣接した導電層11Bに移動したのち外部回路を経由して、対向電極20に到達する。一方、電解質含有層30では、電子の移動に伴い酸化された色素13を基底状態に戻す(還元する)ように、電解質が酸化される。この酸化された電解質が上記対向電極20に到達した電子を受け取ることによって還元される。このようにして、作用電極10及び対向電極20の間における電子の移動と、これに伴う電解質含有層30における酸化還元反応とが繰り返される。これにより、連続的な電子の移動が生じ、定常的に光電変換が行われる。
【0058】
本発明の光電変換素子は、例えば、以下のように製造することができる。
【0059】
まず、作用電極10を作製する。最初に、導電性基板11の導電層11Bが形成されている面に多孔質構造を有する金属酸化物半導体層12を電解析出法や焼成法により形成する。電解析出法により形成する場合には、例えば、金属酸化物半導体材料となる金属塩を含む電解浴を、酸素や空気によるバブリングを行いながら、所定の温度とし、その中に導電性基板11を浸漬し、対極との間で一定の電圧を印加する。これにより、導電層11B上に、多孔質構造を有するように金属酸化物半導体材料を析出させる。この際、対極は、電解浴中において適宜運動させるようにしてもよい。また、焼成法により形成する場合には、例えば、金属酸化物半導体材料の粉末を分散媒に分散させることにより調製した金属酸化物スラリーを導電性基板11に塗布して乾燥させたのち焼成し、多孔質構造を有するようにする。続いて、有機溶媒に上記一般式(1)で表される本発明の新規化合物を含む色素13を溶解した色素溶液を調製する。この色素溶液に金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を浸漬することにより、金属酸化物半導体層12に色素13を担持させる。
【0060】
上記色素溶液における本発明の新規化合物の濃度は、1.0×10
-5〜1.0×10
-3mol/dm
3が好ましく、5.0×10
-5〜5.0×10
-4mol/dm
3がより好ましい。上記色素溶液に用いる有機溶媒は、本発明の新規化合物を溶解できるものであれば特に制限はなく、具体例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、t−ブタノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類;アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられ、これらの有機溶媒を任意に混合してもよい。好ましくは、トルエン、アセトニトリル、アルコール類であり、更に好ましくはアセトニトリル、アルコール類である。
【0061】
次に、導電性基板21の片面に導電層22を形成することにより、対向電極20を作製する。導電層22は、例えば、導電材をスパッタリングすることにより形成する。
【0062】
最後に、作用電極10の色素13を担持した面と、対向電極20の導電層22を形成した面とが所定の間隔を保つと共に対向するように、封止剤等のスペーサ(図示せず)を介して貼り合わせ、例えば、電解質の注入口を除いて全体を封止する。続いて、作用電極10と対向電極20との間に、電解質を注入したのち注入口を封止することにより、電解質含有層30を形成する。これにより
図1及び
図2に示した光電変換素子が完成する。
【0063】
本発明の光電変換素子では、色素13が上記一般式(1)で表される本発明の化合物を含むため、本発明の化合物とは異なる化合物を用いた場合と比較して、色素13を担持させた担体(金属酸化物半導体層12)から色素13が電解質含有層30へ溶出することが抑制できる。ついては、金属酸化物半導体層12に担持した色素13の量が低下しないため、色素13から金属酸化物半導体層12への電子注入量が低下しない。このような効果により、本発明の光電変換素子の耐久性を向上させることができる。
【0064】
なお、上記した光電変換素子では、作用電極10と対向電極20との間に電解質含有層30を設けた場合について説明したが、電解質含有層30に代えて固体電荷移動層を設けてもよい。この場合、固体電荷移動層は、例えば、固体中のキャリアー移動が電気伝導にかかわる材料を有している。この材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料等が好ましい。
【0065】
正孔輸送材料としては、芳香族アミン類や、トリフェニレン誘導体類等が好ましく、例えば、オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレンあるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレン)あるいはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)あるいはその誘導体、ポリチエニレンビニレンあるいはその誘導体、ポリチオフェンあるいはその誘導体、ポリアニリンあるいはその誘導体、ポリトルイジンあるいはその誘導体等の有機導電性高分子等が挙げられる。
【0066】
また、正孔輸送材料としては、例えば、p型無機化合物半導体を用いてもよい。このp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに、2.5eV以上であることがより好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、作用電極10のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、そのイオン化ポテンシャルは、4.5eV以上5.5eV以下の範囲内であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下の範囲内であることがより好ましい。
【0067】
p型無機化合物半導体としては、例えば、1価の銅を含む化合物半導体等が挙げられる。1価の銅を含む化合物半導体の一例としては、CuI、CuSCN、CuInSe
2、Cu(In,Ga)Se
2、CuGaSe
2、Cu
2O、CuS、CuGaS
2、CuInS
2、CuAlSe
2等がある。このほかのp型無機化合物半導体としては、例えば、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi
2O
3、MoO
2又はCr
2O
3等が挙げられる。
【0068】
このような固体電荷移動層の形成方法としては、例えば、作用電極10の上に直接、固体電荷移動層を形成する方法があり、そののち対向電極20を形成付与してもよい。
【0069】
有機導電性高分子を含む正孔輸送材料は、例えば、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法又は光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、例えば、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法又は電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。このように形成される固体電荷移動層(特に、正孔輸送材料を有するもの)の一部は、金属酸化物半導体層12の多孔質構造の隙間に部分的に浸透し、直接接触する形態となることが好ましい。
【0070】
本発明の化合物は、電解質含有層30に代えて固体電荷移動層を設けた光電変換素子においても、電解質含有層30を設けた場合と同様に、変換効率を向上させることができる。
【0071】
本発明の光電変換素子の使用用途は、前述した太陽電池の用途に限らず、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、光センサ等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の新規化合物の合成例、合成例で合成した化合物を用いた担持体(作用電極)の実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0073】
以下の合成例により、上記化合物No.1〜No.4、No.22、No.33〜No.42を合成した。尚、前駆体であるカルボン酸体及びアミン化合物は、購入又は公知の方法により合成した。
【0074】
(合成例1)化合物No.1の合成
MK−2 Dye(シグマアルドリッチ製、0.11mmol、100mg)、ジメチルホルムアミド(0.1ml)、クロロホルム(2ml)をフラスコに仕込み、塩化オキサリル(0.12mmol、15mg)を加え1時間撹拌した。その後、0℃でイミノ二酢酸ジターシャリーブチル(0.12mmol、28mg)、ジイソプロピルエチルアミン(0.31mmol、41mg)を加えて、1時間撹拌した。反応液に水(10ml)およびクロロホルム(10ml)を加え、油水分液を行った。得られた有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム)により精製することで、紫色固体を30mg(収率24%)得た。この固体をジクロロメタン(10ml)に溶解させ、0℃まで冷却した後、トリフルオロ酢酸(0.08mmol、9mg)を加えて1時間撹拌した。その後室温まで昇温し、更に14時間撹拌した。溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:メタノール=5:1)により精製することで、赤色固体を14mg(収率52%)得た。得られた固体が、化合物No.1であることをUV−VIS(λmax)、
1H−NMR、IR、TOF−MSを用いて確認した。データを[表1]〜[表4]に示す。
【0075】
(合成例2〜15)化合物No.2〜No.4、No.22、No.33〜No.42の合成
目的化合物に対応したカルボン酸を有する化合物及びアミン化合物を用いた以外は合成例1と同様の手法で化合物No.2〜No.4、No.22、No.33〜No.42を合成した。得られた化合物の外観及び収率を〔表1〕に示す。合成した化合物が目的化合物であることは、合成例1と同様に確認した。データを〔表1〕〜〔表4〕に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
上記で合成した化合物を用いて、本発明の担持体を以下の手順により作製した。
【0081】
(実施例1)化合物No.1を用いた担持体(作用電極)
まず、縦2.0cm×横1.5cm×厚さ1.1mmの導電性ガラス基板(F−SnO
2)よりなる導電性基板11を用意した。続いて、導電性基板11に、縦0.5cm×横0.5cmの四角形を囲むように厚さ70μmのマスキングテープを貼り、この四角形の部分に金属酸化物スラリー3cm
3を一様の厚さとなるように塗布して乾燥させた。金属酸化物スラリーとしては、10重量%となるように酸化チタン粉末(TiO
2、Solaronix社製Ti−NanoxideD)を、水に懸濁したものを用いた。続いて、導電性基板11上のマスキングテープを剥がし取り、この基板を電気炉により450℃で焼成し、厚さ約5μmの金属酸化物半導体層12を形成した。続いて、化合物No.1を3×10
-4mol/dm
3の濃度になるようにトルエンに溶解させて、色素溶液を調製した。続いて、金属酸化物半導体層12が形成された導電性基板11を上記の色素溶液に浸漬し、色素13を担持させた作用電極10を作製した。
作製した作用電極10を以下の条件1及び条件2で剥離液に浸漬した。
剥離液浸漬前の色素担持量(色素のλmaxにおけるAbs.)を100としたときの、剥離液浸漬後の色素担持量の割合を、耐剥離性として〔表5〕及び〔表6〕に示した。上記の剥離後の色素担持量の割合が100に近いほど耐剥離性が高いといえる。ここで、色素のλmaxにおけるAbs.は、UVスペクトルメータ(日立ハイテク社製U3010、スリット幅1nm)により、作用電極10の金属酸化物半導体層12の表面の吸収スペクトル(測定波長は300nm〜800nmの範囲)を測定することにより求めた。
<条件1>剥離液:アセトニトリル、浸漬条件:85℃、6時間
<条件2>剥離液:0.5M 4−t−ブチルピリジン アセトニトリル:水=9:1(容量比)、浸漬条件:25℃、8時間
【0082】
(実施例2〜9及び比較例1〜2)
化合物No.1を〔表5〕及び〔表6〕の化合物に替えた以外は実施例1と同様の操作により、各化合物を担持させた作用電極10を作製し、色素の耐剥離性を求めた。結果を〔表5〕及び〔表6〕に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【化7】
【0086】
〔表5〕及び〔表6〕の耐剥離性の結果の通り、上記一般式(1)で表される本発明の化合物は、吸着耐久性が高い。
【0087】
次に、本発明の光電変換素子の実施例及び光電変換素子の変換効率評価を示す。
(実施例10〜25及び比較例3及び4)
図1に示すように、上記実施例1と同様に作製した担持体(作用電極)を用いた作用電極10と、導電性基板21としてITO電極(西野田電工(株)製)上に黒鉛微粒子(導電層22)をコーティングして作製した対向電極20とを、スペーサー(63μm)を介して対向させ、それらの間に電解質含有層30を配し、これらをクリップで固定し、電解質含有層30に電解液〔アセトニトリルに対して、4−t−ブチルピリジン(0.5mol/dm
3)、ヨウ化リチウム(0.5mol/dm
3)、ヨウ素(0.05mol/dm
3)を、それぞれ所定の濃度になるように混合したもの〕を浸透させ、光電変換素子を作製した。セル上部を開口部1cm
2のマスクで覆い、作用電極10と対向電極20をポテンシオスタットの作用極側及び対極側に結線し、分光計器社製ハイパーモノライトシステムSM−250で測定し、短絡電流密度(Jsc、単位:mA/cm
2)及び開放電圧(Voc、単位:V)を得た。得られた短絡電流密度及び開放電圧の値から、光電変換素子の変換効率(%)を求めた。
結果を、〔表7〕に示す。ただし、実施例21〜25及び比較例4においては、酸化チタン粉末の代わりに酸化亜鉛粉末(平均粒径20nm、堺化学工業社製FINEX−50)を金属スラリーにして作製したZnO電極を作用電極10として用いた。
【0088】
【表7】
【0089】
【化8】
【0090】
上記光電変換素子の変換効率測定結果より、ジカルボン酸化合物を用いた実施例11〜21及び比較例3を比較すると、本発明の特定の構造を有する新規化合物を用いることで、高い変換効率が得られている。また、実施例21〜25及び比較例4を比較すると、本発明の新規化合物が高い変換効率を示すことが明らかである。
【0091】
以上の結果より、本発明の担持体は、耐剥離性及び耐光性に優れ、更に光電変換素子として用いた場合には、高い変換効率を示すことが明らかなため有用である。