(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セパレータ粒子は、表面がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂のうちから選択される一つ以上の材料で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【背景技術】
【0002】
半導体基板やガラス基板等の基板を用いて、半導体デバイスを製造する工程においては、通常、エッチングや洗浄、めっき、表面改質等の処理液に基板を浸漬して処理する表面処理工程が含まれている。このような工程においては、
図1に示すように、複数枚の基板11をキャリア又はカセットと呼ばれる基板収納容器12に同時に収納し、エッチング液や洗浄液、めっき浴や表面処理液等を保持した処理槽13に、基板収納容器12を基板11ごと浸漬する方法が一般的である。
【0003】
上記のような基板収納容器12を用いて基板11を処理する場合、基板収納容器12を処理槽13から引き上げる際に処理液の表面張力によって隣接する基板11同士が張り付いてしまうことがあった。この問題は、保持溝14の間隔が狭い場合や基板11が薄型の場合、隣接する基板11同士が接触しやすかったり、基板11がしなりやすかったりするため、特に顕著であった。
【0004】
このような基板の張り付きが生じると、基板間に処理液が残留してしまい処理ムラや乾燥むらが生じてしまうため好ましくない。このような基板同士が張り付くという問題に対し、例えば特許文献1では、キャリア内壁部と基板間に、基板張り付き防止用の支持部材を配置する方法を開示している。この方法を用いると基板同士の張り付きは低減されるが、洗浄処理中、張り付き防止用の支持部材が常に基板付近に存在するため、表面と裏面で処理ムラが不均一になってしまったり、支持部材に基板が張り付いてしまったりといった、従来同様の処理ムラや乾燥ムラが発生する問題を抱えていた。
【0005】
また、処理槽の底部に支持部を具備することによって、基板収納容器の保持溝に固定されている基板を一旦解放して、保持溝の間隔に再配置することにより、基板収納容器の引き上げ時に基板同士の張り付きを防止する方法が開示されている(特許文献2)。この方法を用いると、基板同士の張り付きは低減されるものの、全ての基板の張り付きを完全に防ぎ取り出すことはできず、歩留まりよく基板を回収することはできなかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
本発明の基板処理方法は、半導体基板やガラス基板等の基板に対する、エッチングや洗浄、めっき、表面改質等の処理液に基板を浸漬して処理する表面処理工程に適用される。
図1は、本発明の基板処理方法に用いる基板収納容器12及び処理槽13を処理対象となる複数の基板11とともに示す。基板収納容器12は、複数枚の基板11を同時に収納する。処理層13は、エッチング液や洗浄液、めっき浴や表面処理液等の処理に応じた処理液32を保持し、この処理層13が保持する液に基板収納容器12が基板11ごと浸漬される。
【0016】
基板収納容器12は、上記のような表面処理工程の前後の工程、例えば熱処理工程、印刷工程、膜堆積工程やフォトリソグラフィー工程等との基板の受け渡しにも兼用される。基板収納容器12の側部の内側には、基板11を保持する保持溝14が通常、一定間隔で複数設けられており、基板11の下端部に当接するように支持棒15を基板収納容器12に設けること等により、複数枚の基板11を略平行に配置させて処理するようになっている。
【0017】
図2は、本発明の基板処理方法に用いる基板収納容器12の断面図を収納された基板11とともに示す。基板収納容器12の下部には開口部12aが設けられ、基板11を保持した基板収納容器12を処理液32中に浸漬する際に、処理液32が容易に基板収納容器12内に流入して、基板11が均一に処理されるようにするとともに、導入管16から処理槽13の底板17に開口した孔を通って処理槽13に導入される処理液32が基板11に当たりやすいようになっている。
【0018】
図3はセパレータ粒子31が混合された処理液32から基板11を引き上げる際の概略図である。セパレータ粒子31を処理液32中に複数個混合することにより、基板11を処理液32から引き上げる際、セパレータ粒子31が基板11の間に入りこみ基板11同士の張り付きを妨害し、基板11同士の張り付きを防ぐことができる。
【0019】
図4(A)及び(B)はセパレータ粒子31の断面図の例を示す。セパレータ粒子31は、
図4(A)に示されるような略球状、もしくは
図4(B)に示されるような略楕円球状をしていることが好ましい。セパレータ粒子31が辺を持たない形状をしていることにより、基板11との接触面積を小さくし、処理液32とセパレータ粒子31との間に働く表面張力を極力小さくすることができる。これによりセパレータ粒子31自身が基板11に張り付くことを防ぐことができる。
【0020】
また、セパレータ粒子31は形状が略球状の時には直径が、略楕円球状の時には短径と直径が0.5mm以上6mm以下であることが好ましい。直径もしくは短径と長径が0.5mm以下だと例えば
図5のようにセパレータ粒子31が基板11−1と基板11−2の間に入りこんだとしても、基板間の距離を十分に確保することができず、処理液13の表面張力による基板11同士の張り付きを防止することができない。また、直径もしくは短径と長径が6mm以上になると、一般的に使用されている基板収納容器12の基板保持溝間隔よりも長くなってしまい、基板11間にセパレータ粒子31が入り込むことができなくなってしまうためセパレータ粒子31としての役割を果たせなくなってしまう。
【0021】
セパレータ粒子31は処理液32から基板11を引き上げる際に基板間に入り込むことにより、基板11同士の張り付きを防ぐ。このためセパレータ粒子31は処理液32上部に配備されていることが好ましく、セパレータ粒子31は比重が0.9以上、1.3以下であることが好ましい。これは、比重が0.9以下だとセパレータ粒子31が軽すぎ、基板11を処理液32から引き上げる際、基板11の間に入り込むことができないことがあるためであり、比重が1.3以上になるとセパレータ粒子31が自重により処理槽13の底部に留まってしまうためである。
【0022】
一般的な基板処理は、処理槽13の底部から処理液32を流入させ、オーバーフローさせた処理液32を循環させることにより行われる。これは処理槽13内における処理液32の不均一性をなくすためである。このように処理液32は常に流動しているため、比重が1以上であっても処理液32の流動によりセパレータ粒子31が処理槽13の底部に留まることはない。
【0023】
前述したような処理液32を循環させる基板処理方法を用いる際には、例えば
図6に示したような処理槽13上部の外周部に通流口62を有したガード63を設けることが望ましい。ガード63は、セパレータ粒子31が槽外に流出しないようにしつつ、処理液32のみを通流口62を通じて排出することを可能とする。これにより処理液32のみ外に流れてセパレータ粒子31は処理槽13内に留まらせることができる。ガード63の流通口62はセパレータ粒子31が通らない大きさの孔であればいかなる形態でもかまわない。例えば、
図6に示したように、処理槽13の外周をメッシュにより覆って形成されてもよいし、処理槽13の上端部に貫通孔を設けることにより形成されてもよい。通常このような処理液32の循環はベローズポンプを用いて行われる。ガード63はセパレータ粒子31のベローズポンプへの流入を防ぐとともに、ガード63があることで処理液を循環させながら常に一定量のセパレータ粒子31を処理液中に留めておくことができる。
【0024】
また、セパレータ粒子31は処理液32中に混合させて使用される。このため、表面が耐熱性、耐薬品性に優れた材質で形成されていることが望ましく、好ましくは表面が撥水性を有すことが望ましい。これはセパレータ粒子31の表面が撥水性を有することで、セパレータ粒子31自身が基板11への張り付つくことを低減することができるためである。
【0025】
このような耐熱性、耐薬品性、撥水性に優れた物質にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等といった材料があり、これらを用いてセパレータ粒子31を形成するか、もしくは例えば金属を主原料として骨格を作製し、表面のみこれらの材料で被覆したものを用いてもよい。
【0026】
更に、セパレータ粒子31を用いて洗浄処理を行うには、処理液32は処理液32に対し10vol%以上、50vol%以下がセパレータ粒子31で充填されていることが望ましい。
【0027】
処理液32の10vol%以上をセパレータ粒子31で満たしておくことにより、処理32の液面にセパレータ粒子31で完全に覆われた領域を設けることができる。これにより、基板11を処理液32から引き上げる際、基板11はセパレータ粒子31で満たされた処理液32の層を通過することになり、セパレータ粒子31が確実に基板11の間に入り込むことができる。
【0028】
一方、セパレータ粒子31を処理液32の50vol%以上混入して処理すると、処理液32による十分な基板処理を施せなくなってしまうため、セパレータ粒子31は処理液32に対し50vol%以下の充填率で用いることが望ましい。
【0029】
以上より、本発明によれば、特別な動作や工程を加えることなく、更には装置やキャリアの形状を変更することなく、処理液32中にセパレータ粒子31を混合するだけで、基板11の張り付きを防止することができる。
【0030】
本発明の基板処理方法は太陽電池の作製において有効に利用できる。本発明の基板処理方法を用いた太陽電池の作製方法の一例を、
図7を参照して以下に説明する。ただし、本発明の利用はこの方法で作製された太陽電池に限られるものではない。
【0031】
図7(A)〜(E)は、本発明の基板処理方法を用いた太陽電池の作製方法の工程を示す概略断面図である。以下、各工程について詳細に説明する。
【0032】
高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのような3族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}P型シリコン基板71の表面のスライスダメージを、濃度5〜60%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、ふっ酸と硝酸の混酸などを用いてエッチングする[
図7(A)]。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。
【0033】
引き続き、基板表面にランダムピラミット構造を有するテクスチャの形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ溶液(濃度1〜10%、温度60〜100℃)中に10分から30分程度浸漬することで形成される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。テクスチャを形成後は、純水でリンス洗浄し次工程に移る。
【0034】
テクスチャ形成後は、塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で基板の洗浄を行う。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。その後基板は純水にてリンスし、基板を乾燥することにより太陽電池用基板が得られる。
【0035】
ここで本願記載の基板処理方法を用いることができる。例えば、加熱したアルカリ溶液中にセパレータ粒子を混合することにより、アルカリ溶液からリンス槽へ処理が移る際、セパレータ粒子が基板間に入り込むことにより、基板同士の表面張力による張り付きが防止され、張り付きによる処理ムラを劇的に低減することができる。また、酸性溶液による洗浄処理においても同様の効果を期待することができる。また、洗浄後の純水リンス槽にセパレータを混合することも、乾燥前の基板の張り付きを防止することができ、処理ムラの低減に有効である。これにより、基板同士の張り付きがなくなり、歩留まりよく太陽電池用基板を得ることができる。
【0036】
上記基板71の一方の面上に、リンを含有させた0.5〜5ミリリットルの塗布剤を、毎分1000〜5000回転の速度でスピンコーターを用いて塗布する。この基板を800〜1000℃の温度雰囲気中で熱処理してリンを基板中に拡散させ表面近傍にのみ薄いn型の拡散層72を形成する[
図7(B)]。
【0037】
拡散工程の後、表面に形成したリンガラスを数%〜数十%のふっ酸等で除去する。リンガラスを取り除いた後薬液を除去のため、純水でリンスし一旦基板を乾燥させる。この工程においても本願記載の基板処理方法を用いることができる。上述した通り、この工程において本願記載の基板処方法を用いることで、基板同士の張り付きが低減され、高い歩留まりで目的の基板を得ることができる。
【0038】
その後、受光面の反射防止膜73の形成を行う[
図7(C)]。製膜にはプラズマCVD装置を用いSiNx膜を約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH
4)及びアンモニア(NH
3)を混合して用いることが多いが、NH
3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、さらには、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0039】
次に、裏面のほぼ全面に、Al粉末を有機物バインダで混合したペーストを、スクリーン印刷法などで印刷し裏面電極となるAl層74を製膜する[
図7(D)]。印刷後、5〜30分間700〜850℃の温度で焼成して裏面電極が形成される。裏面電極形成は製造コスト観点からは印刷法による方が好ましいが、蒸着法、スパッタ法等で作製することも可能である。
【0040】
受光面電極75も蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷法いずれかの方法で形成される[
図7(E)]。スクリーン印刷法の場合は、Ag粉末とガラスフリットを有機物バインダと混合したAgペーストをスクリーン印刷した後、熱処理によりSiNx膜にAg粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンを導通させる。なお、工数の削減という観点から、裏面電極及び受光面電極の焼成は一度に行うことも可能であり、望ましい。
【0041】
このように作製された太陽電池は、上述のように基板同士の張り付きが生じないため、歩留まりが大きく改善され、コストを大幅に低減することができる。
【実施例】
【0042】
本発明の有効性を確認するため、本願記載の基板処理方法を用いて、太陽電池基板の洗浄を行い、実際に太陽電池を作製した。その際、セパレータ粒子をエッチング処理及び洗浄処理する全ての処理液層に混合し、基板処理を行い太陽電池を50枚作成した。なお、セパレータ粒子は
図4に示したような略円形をした、全体がポリテトラフルオロエチレンでできた直径が4〜6mmのものを用いた。各処理液には上記セパレータ粒子を処理液に対し30vol%ずつ充填させ、基板処理を行った。その際、処理液はベローズポンプを用いて30L/minの流量で循環させ、処理槽上部の外周部には、
図6に示したようなネット状のガードを具備させて処理した。
【0043】
太陽電池用基板は縦×横が15cm×15cm、厚さが200μmのものを用いた。基板収納容器は、保持溝の幅が2mm、保持溝間の距離が4mmのものを用いた。その結果、エッチング工程及び洗浄工程、どちらの工程においても隣接する太陽電池基板同士が張り付いた状態で取り出されることがなく、処理ムラ、外観ムラが一切ない太陽電池用基板が得られた。
【0044】
一方で、セパレータ粒子を一切混合しない処理液を用いて、実施例と同様の条件でエッチング工程及び洗浄工程において太陽電池用基板50枚を処理した。その結果、エッチング工程後において4枚の太陽電池基板において張り付き起因による処理ムラが発生した。また、洗浄工程後においては2枚の太陽電池基板の張り付きが起因による処理ムラが発生した。
【0045】
更に、これら実施例及び比較例記載の方法によって得られた基板を用いて太陽電池を作製した。作製された太陽電池について25℃、100mW/cm
2、スペクトルAM1.5グローバルの擬似太陽光照射の条件下で電気特性を測定した結果(30枚の平均値)を表1に示す。
【0047】
本願記載の基板処理方法を適用したことにより張り付きが低減され、歩留まりが改善しただけでなく、開放電圧も3mV改善された。これは、張り付きが低減したことにより汚染物質が含まれたリンス水の持ち出しが少なくなり、基板が汚染されづらくなったためである。
【0048】
以上の通り、本願記載の基板処理方法を太陽電池作製工程で用いると、歩留まりが改善されるだけでなく、太陽電池の特性も向上する。