特許第6114157号(P6114157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6114157ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114157
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20170403BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20170403BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170403BHJP
   C08G 77/14 20060101ALI20170403BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
   G03F7/075 521
   H01L21/30 573
   C08G77/14
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-207169(P2013-207169)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-72329(P2015-72329A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
(72)【発明者】
【氏名】美谷島 祐介
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−040094(JP,A)
【文献】 特開2004−191386(JP,A)
【文献】 特開2007−178974(JP,A)
【文献】 特開2004−157469(JP,A)
【文献】 特開2000−356854(JP,A)
【文献】 特開平07−181688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)下記一般式(1)で示される化合物、及び(ii)下記式(1’−a)〜(1’−d)で示されるいずれかの化合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物を含むケイ素化合物(A−1)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、R、R、Rは置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の有機基、w=1、x=0、1、2又は3、y=0、1又は2、z=0、1、2又は3である。ま、7≧x+y+z≧1であり、(x,y,z)=(1,1,1)となる場合は含まない。)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、Rは前記と同様であり、Rは3級アルキル基である。)
【請求項2】
前記ケイ素含有化合物(A)が、前記ケイ素化合物(A−1)と1種以上の下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)との混合物を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
Si(OR) (2)
(式中、Rは前記と同様である。)
【請求項3】
さらに、1種以上の下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
Si(OR) (2)
(式中、Rは前記と同様である。)
【請求項4】
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜上に請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜にエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスク上に請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
前記被加工体として、半導体基板、もしくは該半導体基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、又は金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン又はこれらの合金であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記上層レジストパターンの形成の方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法、及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を用いることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト法に使用されるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。さらなる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、さらに微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256MB及び1GB以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。さらに、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの量産が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、Fリソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。このArF液浸リソグラフィーは、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入されている。これにより高速スキャンが可能となり、さらにNA1.3級のレンズを使用することで45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0003】
その次の微細加工技術である32nmノードのリソグラフィー技術として、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー技術が候補に挙げられている。この技術の問題点としては、レーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LER)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられており、現状、克服すべき問題が山積している。32nmノードのもう一つの候補として開発が進められていた高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。このように、汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0004】
そこで、既存のArF液浸露光技術の限界解像度を超える加工寸法を得るための微細加工技術の開発が加速されている。その技術の一つとして、ダブルパターニング技術が提案されている。このダブルパターニング技術の一つとして、例えば、(1)第1の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔の第1のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて、第1の露光で得られたスペース部分にフォトレジスト膜の第2の露光と現像で第2のラインパターンを形成し続いてハードマスクをドライエッチングで加工し、第1パターンと第2パターンが交互に形成される。これにより、露光パターンの半分のピッチでラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、(2)第1の露光と現像でラインとスペースが3:1の間隔の第1のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に第2の露光にパターンを形成し、それをマスクとしてハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工して、露光パターンの半分のピッチのパターンが形成できる。(1)の方法では、ハードマスクを2回形成する必要があり、(2)の方法ではハードマスクの形成は1回で済むが、ラインパターンに比べて解像が困難なトレンチパターンを形成する必要がある。
【0005】
その他の方法として、(3)ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明を用いてX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト材料を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンのすきまよりホールパターンを形成する方法(非特許文献1)が提案されている。さらに、レジストパターン、パターン転写された有機ハードマスクやポリシリコン膜などをコアパターンとして、その周りを低温でシリコン酸化膜を形成した後、ドライエッチング等でコアパターンを除去するスペーサ技術を用いて、1回のパターン露光でピッチを半分にする方法も提案されている。
【0006】
このように上層レジストだけでは微細化が困難であり、上層レジストの下層に形成されているハードマスクを利用しなければ微細化プロセスが成立しなくなってきている。このような状況下、レジスト下層膜としてのハードマスクを利用する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜、例えばケイ素含有レジスト下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングによりレジスト下層膜にパターンを転写し、さらにレジスト下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板やスペーサプロセス用のコアとなる膜にパターンを転写する方法である。
【0007】
この様な多層レジスト法で使用されるものとして、ケイ素含有膜形成用組成物がよく知られている。例えば、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO膜(例えば、特許文献1等)やSiON膜(例えば、特許文献2等)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG(スピンオンガラス)膜(例えば、特許文献3等)や架橋性シルセスキオキサン膜(例えば、特許文献4等)等がある。
【0008】
これまで、多層膜レジスト法に使用できるレジスト下層膜について検討され、特許文献5や特許文献6などに示されているケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が開示されている。しかしながら、近年のArF液浸リソグラフィーの解像度の限界を超えた半導体装置製造プロセスでは、前述したダブルパターニング等の複雑なプロセスが提案されており、このようなプロセスではリソグラフィー工程数やドライエッチングによる加工工程数が加速度的に増加しており、これにより、各塗布膜におけるパターン転写の精度の向上が要求されている。このような状況下で、塗布膜中の欠陥(塗布欠陥)が存在することによるパターン転写の欠陥の発生と、それによる歩留まりの低下が問題となってきた。従って、より合理的な半導体装置製造プロセスの構築のため、現在実用化されている有機膜やケイ素含有膜に対して極限まで欠陥の少ない塗布膜を形成できる組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−183194号公報
【特許文献2】特開平7−181688号公報
【特許文献3】特開2007−302873号公報
【特許文献4】特表2005−520354号公報
【特許文献5】特許4716037号公報
【特許文献6】特許5038354号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Proc.SPIE Vol.5377 p255(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、極めて塗布欠陥が少なく、微細パターンにおける密着性やエッチング選択性に優れるレジスト下層膜を形成するためのケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、
1種以上の下記一般式(1)で示される化合物を含むケイ素化合物(A−1)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有するケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、R、R、Rは置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の有機基、w=0又は1、x=0、1、2又は3、y=0、1又は2、z=0、1、2又は3である。また、w=0のとき、5≧x+z≧1であり、(x,z)=(1,1)、(3,0)、(0,3)となる場合は含まない。また、w=1のとき、7≧x+y+z≧1であり、(x,y,z)=(1,1,1)となる場合は含まない。)
【0013】
このようなケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、極めて塗布欠陥が少なく、微細パターンにおける密着性やエッチング選択性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0014】
このうち、前記ケイ素含有化合物(A)が、前記ケイ素化合物(A−1)と1種以上の下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)との混合物を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるものであることが好ましい。
Si(OR) (2)
(式中、Rは前記と同様である。)
【0015】
このようなケイ素含有化合物を用いれば、微細パターンにおける密着性やエッチング選択性により優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0016】
また、前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物がさらに、1種以上の下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有するものであることが好ましい。
Si(OR) (2)
(式中、Rは前記と同様である。)
【0017】
このようなケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、微細パターンにおける密着性やエッチング選択性にさらに優れるレジスト下層膜を形成することができる。
【0018】
また、本発明は、
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜にエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスク上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0020】
このようなパターン形成方法であれば、ケイ素含有レジスト下層膜に塗布欠陥が少なく、またパターン密着性やエッチング選択性が優れるため、微細なパターンを欠陥なく被加工体に転写することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0021】
このとき、前記被加工体として、半導体基板、もしくは該半導体基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、又は金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0022】
また、前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン又はこれらの合金であることが好ましい。
【0023】
本発明では、このようなものを被加工体として用い、パターンを形成することができる。
【0024】
このとき、前記上層レジストパターンの形成の方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法、及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
【0025】
このような方法であれば、上層レジスト膜上に微細なパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いれば、極微細な半導体装置の製造工程のエッチング工程において、極めて塗布欠陥の少なく、かつ、パターン密着性やエッチング選択性の優れたケイ素含有レジスト下層膜、即ち、エッチング後のパターン転写の欠陥数の少ないケイ素含有レジスト下層膜を形成することができる。このようなケイ素含有レジスト下層膜を用いるパターン形成方法であれば、最終的に、上層レジストパターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をエッチングマスクとして有機下層膜又は有機ハードマスクを加工し、さらにこれをエッチングマスクとして被加工体を無欠陥、高精度で加工することができ、歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
従来、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に含まれるケイ素含有化合物の原料の一つとして、下記一般式で示される構造のケイ素含有モノマーが用いられ、特にリソグラフィー工程における反射防止のため、有機基(R)として芳香環を含む化合物を光吸収化合物として使用されている。
R−Si(OR’)
(Rは有機基、R’は炭化水素基)
【0028】
しかしながら、実際のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に含まれるケイ素含有化合物として、上記の化合物は、単独で使用されることはまれであり、通常は、有機基(R)としてアルキル基、ラクトンやエステル、エポキシなど反応性基を含有する有機基を含むモノマーやテトラアルコキシシランとの混合物を加水分解縮合反応して得られる加水分解縮合物を用いている。しかし、この際にそれぞれのモノマーの反応性の違いや生成物の安定性などの影響により、下記で示されるようなかご型化合物が生成されてしまい、この生成は確率的に不可避であった。
【化2】
【0029】
上記のようなかご型化合物は、従来のケイ素含有化合物を製造する際にも極微量生成され、微小な塗布欠陥として存在しており、これまでの半導体装置製造工程においては、歩留まり低下を顕在化させることはなかった。しかし、半導体装置製造工程の微細化が進むにつれて、上記のようなかご型化合物が微小な塗布欠陥として塗布膜内に存在することで、エッチングによるパターン転写において、欠陥が発生し、エッチング後の歩留まり低下に影響を与えることが顕在化してきた。
【0030】
本発明者らは、このようなかご型化合物が生成しないようなケイ素含有化合物、及びそれを使用することにより、極微細な半導体装置の製造工程のエッチング工程において歩留まりの低下が発生することのないケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物について鋭意検討し、特定の構造を持つケイ素含有化合物であれば、かご形化合物、即ち塗布欠陥を極めて小さくできることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
即ち、本発明は、
1種以上の下記一般式(1)で示される化合物を含むケイ素化合物(A−1)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有するケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物である。
【化3】
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、R、R、Rは置換又は非置換の炭素数1〜30の1価の有機基、w=0又は1、x=0、1、2又は3、y=0、1又は2、z=0、1、2又は3である。また、w=0のとき、5≧x+z≧1であり、(x,z)=(1,1)、(3,0)、(0,3)となる場合は含まない。また、w=1のとき、7≧x+y+z≧1であり、(x,y,z)=(1,1,1)となる場合は含まない。)
【0032】
ケイ素含有化合物(A
本発明で使用されるケイ素含有化合物(A)は、上記一般式(1)で示される化合物を含むケイ素化合物(A−1)をモノマーとして用いる。上記一般式(1)で示される化合物として、具体的には、下記に列挙される一般式で示される構造のものを例示できる。この時ケイ素上には加水分解性基:ORがケイ素の原子価分結合することが可能であり、具体的なRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基を含んでいるものを使用できる。尚、下記一般式中のRは3級アルキル基である。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
【化8】
【0038】
本発明で用いるケイ素含有化合物(A)は、上記のような化合物を含むケイ素化合物(A−1)を主なモノマーとする。このようなケイ素化合物は、かご型化合物の生成を抑制しながら、ポリマー化することができるため、得られるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を成膜した際に、極めて塗布欠陥が小さいものとすることができる。
【0039】
また、ケイ素含有化合物(A)は、さらに、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)をモノマーとすることができる。
Si(OR) (2)
(式中、Rは前記と同様である。)
【0040】
上記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシランなどを例示できる。このようなケイ素化合物をさらに加えて反応させることで、パターン密着性やエッチング選択性をより優れたものとすることができる。
【0041】
ケイ素含有化合物(A
本発明では、さらに、1種以上の上記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行うことにより得られるケイ素含有化合物(A)を含有することができる。即ち、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有化合物(A)を含有するものとすることができる。このケイ素含有化合物(A)は、上記一般式(2)で示されるケイ素化合物(A−2)をモノマーとすることができ、具体的なものとしては、前述と同様のものを例示できる。
このように、ケイ素含有化合物(A)をさらに含有することで、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を成膜した際のパターン密着性やエッチング選択性をさらに優れたものとすることができる。
【0042】
上記に示されるモノマーを1種以上選択して、反応前又は反応中に混合して反応原料とし、ケイ素含有化合物(A,A)を製造することができる。
【0043】
ケイ素含有化合物は、モノマーを無機酸、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、加水分解縮合を行うことで製造することができる。
このとき使用される酸触媒は、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー1モルに対して10−6〜10モルが好ましく、より好ましくは10−5〜5モル、さらに好ましくは10−4〜1モルである。
【0044】
これらのモノマーから加水分解縮合によりケイ素含有化合物を得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜100モルが好ましく、より好ましくは0.05〜50モル、さらに好ましくは0.1〜30モルを添加することが好ましい。100モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的である。
【0045】
操作方法としては、例えば、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、モノマーを有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜80℃である。モノマーの滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0046】
触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0047】
これらの溶剤の中でより好ましいものは水溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0048】
尚、有機溶剤の使用量は、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましく、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が1,000ml以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0049】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0050】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で発生したアルコールなどの種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールなどの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールなどのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0051】
次に、反応混合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水とケイ素含有化合物を混合し、ケイ素含有化合物を有機溶剤で抽出する方法を例示できる。このとき使用する有機溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0052】
さらに、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。例えばメタノール+酢酸エチル、エタノール+酢酸エチル、1−プロパノール+酢酸エチル、2−プロパノール+酢酸エチル、ブタンジオールモノメチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル+酢酸エチル、ブタンジオールモノエチルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル+酢酸エチル、ブタンジオールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+酢酸エチル、メタノール+メチルイソブチルケトン、エタノール+メチルイソブチルケトン、1−プロパノール+メチルイソブチルケトン、2−プロパノール+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル+メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル+メチルイソブチルケトン、メタノール+シクロペンチルメチルエーテル、エタノール+シクロペンチルメチルエーテル、1−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、2−プロパノール+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル+シクロペンチルメチルエーテル、メタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−プロパノール+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル+プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の組み合わせが好ましいが、組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0053】
尚、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部、さらに好ましくは2〜100質量部である。
【0054】
続いて、中性水で洗浄してもよい。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、ケイ素含有化合物溶液1Lに対して、0.01〜100Lが好ましく、より好ましくは0.05〜50L、さらに好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法では、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
その他に酸触媒を除去する方法として、イオン交換樹脂による方法や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物で中和したのち除去する方法を挙げることができる。これらの方法は、反応に使用された酸触媒に合わせて適宜選択することができる。
【0055】
このときの水洗操作により、ケイ素含有化合物の一部が水層に逃げ、実質的に分画操作と同等の効果が得られている場合があるため、水洗回数や洗浄水の量は触媒除去効果と分画効果を鑑みて適宜選択すればよい。
【0056】
酸触媒が残留しているケイ素含有化合物及び酸触媒が除去されたケイ素含有化合物溶液、いずれの場合においても、最終的な溶剤を加え、減圧で溶剤交換することでケイ素含有化合物溶液を得ることができる。このときの溶剤交換の温度は、除去すべき反応溶剤や抽出溶剤の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0057】
このとき、溶剤が変わることによりケイ素含有化合物が不安定になる場合がある。これは最終的な溶剤とケイ素含有化合物との相性により発生するが、これを防止するため、安定剤として特開2009−126940号公報の[0181]〜[0182]段落に記載されている環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを加えてもよい。加える量としては溶剤交換前の溶液中のケイ素含有化合物100質量部に対して0〜25質量部が好ましく、より好ましくは0〜15質量部、さらに好ましくは0〜5質量部であるが、添加する場合は0.5質量部以上が好ましい。溶剤交換前の溶液に必要であれば、環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加して溶剤交換操作を行えばよい。
【0058】
ケイ素含有化合物は、0.1〜20質量%の濃度であることが好ましい。20質量%以下の範囲で濃縮をすれば、適度な濃度の溶液状態にしておくことが可能であり、縮合反応が進行し有機溶剤に対して再溶解不可能な状態に変化してしまう恐れがないため好ましい。また、0.1質量%以上であれば、溶剤の量が過大となることがないため経済的である。
【0059】
ケイ素含有化合物溶液に加える最終的な溶剤として好ましいものはアルコール系溶剤であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオールなどのモノアルキルエーテル誘導体である。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0060】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加する事も可能である。この補助溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなどを例示できる。
【0061】
また、別の反応操作としては、モノマー又はモノマーの有機溶液に、水又は含水有機溶剤を添加し、加水分解反応を開始させる方法を挙げることができる。このとき触媒はモノマー又はモノマーの有機溶液に添加してもよいし、水又は含水有機溶剤に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0062】
有機溶剤を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0063】
有機溶剤の使用量は、前記の量と同様でよい。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、ケイ素含有化合物を得ることができる。
【0064】
ケイ素含有化合物は、モノマーを塩基性触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造することができる。このとき使用される塩基触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して10−6モル〜10モルが好ましく、より好ましくは10−5モル〜5モル、さらに好ましくは10−4モル〜1モルである。
【0065】
これらのモノマーから加水分解縮合によりケイ素含有化合物を得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.1〜50モルを添加することが好ましい。50モル以下の添加であれば、反応に使用する装置が過大になることがないため経済的である。
【0066】
操作方法として、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行っても良い。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは5〜80℃である。モノマーの滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0067】
塩基触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶媒としては、酸触媒水溶液に加えることのできるものとして例示した有機溶剤と同様のものが好ましく用いられる。尚、有機溶媒の使用量は、経済的に反応を行えるため、モノマー1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。
【0068】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合反応で生成したアルコールを減圧除去し、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒で使用された塩基性物質に対して0.1〜2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0069】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0070】
次に加水分解縮合に使用した触媒を除去するため、ケイ素含有化合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルな及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0071】
次に加水分解縮合に使用した塩基触媒を除去するため、ケイ素含有化合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。
さらに、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0072】
塩基触媒を除去する際に用いられる有機溶剤の具体例は、酸触媒を除去する際に用いられるものとして具体的に例示した上述の有機溶剤や、水溶性有機溶剤と水難性有機溶剤の混合物と同様のものを用いることができる。
【0073】
尚、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは1〜500質量部、さらに好ましくは2〜100質量部である。
【0074】
続いて、中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、ケイ素含有化合物溶液1Lに対して、0.01〜100Lが好ましく、より好ましくは0.05〜50L、さらに好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0075】
洗浄済みのケイ素含有化合物溶液に最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することでケイ素含有化合物溶液を得ることができる。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、さらに好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、さらに好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0076】
ケイ素含有化合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのモノアルキルエーテルである。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなどが好ましい。
【0077】
また、別の反応操作としては、モノマーまたはモノマーの有機溶液に、水または含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマーまたはモノマーの有機溶液に添加しても良いし、水または含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0078】
有機溶媒を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0079】
得られるケイ素含有化合物の分子量は、モノマーの選択だけでなく、重合時の反応条件制御により調整することができるが、100,000以下、より好ましくは200〜50,000、さらには300〜30,000のものを用いることが好ましい。重量平均分子量が100,000以下のものを用いれば、異物の発生や塗布斑が生じることないため好ましい。尚、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0080】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、前述のように、ケイ素化合物(A−1)、又はケイ素化合物(A−1)とケイ素化合物(A−2)との混合物を加水分解もしくは縮合、又はその両方を行って得られるケイ素含有化合物(A)をベースポリマーとして含有するが、さらに、ケイ素化合物(A−2)のみをモノマーとして得られるケイ素含有化合物(A)をベースポリマーとして加えてもよい。
【0081】
従来、パターン密着性や光学性能を最適化するため、3官能ケイ素化合物(加水分解性基をケイ素原子1個当たり3個有するケイ素化合物)が広く使用されていた。しかしながら、3官能ケイ素化合物は、前述のように塗布欠陥の原因物質と考えられているかご型化合物を形成することが知られており、根本的に塗布欠陥を抑制するためには、3官能ケイ素化合物を使用せずに、パターン密着性や光学性能を最適化しなければならない。ジシロキサン化合物(本発明におけるw=0)を反応原料として製造された組成物としては、特開2004−191386号公報や特開2004−157469号公報が開示されているが、塗布欠陥に関する記載もなく、本発明で用いるケイ素化合物(特に、ケイ素化合物(A−1))とは異なる物質を用いていることから本発明のように塗布欠陥の低減及びパターン密着性や光学性能の両立は期待できなかった。
【0082】
本発明では、3官能ケイ素化合物以外のケイ素化合物、即ち、ケイ素化合物(A−1)を主なモノマーとして用いることにより、組成物中にかご型化合物が生成されるのを抑制することができ、極めて塗布欠陥が少ないケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を得ることができる。
【0083】
また、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、所望により、上記のポリマー以外にもパターン密着性やエッチング選択性をさらに向上させるポリマーを含有してもよい。さらに、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の諸特性を向上させるために、下記に例示される成分を添加してもよい。
【0084】
[その他の成分]
本発明では、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に熱架橋促進剤を添加してもよい。本発明で使用される熱架橋促進剤として、具体的には、特開2007−302873号公報に記載されている材料を挙げることができる。
【0085】
尚、上記熱架橋促進剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱架橋促進剤の添加量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜40質量部である。
【0086】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させるため、炭素数が1〜30の1価又は2価以上の有機酸を添加することが好ましい。このとき添加する酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クエン酸等を例示することができる。特にシュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等が好ましい。また、安定性を保つため、2種以上の酸を混合して使用してもよい。添加量はベースポリマーに含まれるケイ素100質量部に対して0.001〜25質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。
あるいは、上記有機酸を組成物のpHに換算して、好ましくは0≦pH≦7、より好ましくは0.3≦pH≦6.5、さらに好ましくは0.5≦pH≦6となるように配合することがよい。
【0087】
本発明では、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に水を添加してもよい。水を添加すると、ケイ素含有化合物が水和されるため、リソグラフィー性能が向上する。組成物の溶剤成分における水の含有率は0質量%を超え50質量%未満が好ましく、特に好ましくは0.3〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。それぞれの成分は、水の含有率が50質量%未満であれば、塗布膜の均一性が悪くなることや最悪の場合はじきが発生してしまうことがないため好ましい。
水を含む全溶剤の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して100〜100,000質量部が好ましく、特に200〜50,000質量部が好適である。
【0088】
本発明では、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に光酸発生剤を添加してもよい。本発明で使用される光酸発生剤として、具体的には、特開2009−126940号公報の[0160]から[0179]段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0089】
さらに、安定剤として環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加するとケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させることができる。このような安定剤として、具体的には、特開2009−126940号公報の[0126]から[0127]段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0090】
さらに、本発明では、必要に応じて界面活性剤を配合することが可能である。このような界面活性剤として、具体的には、特開2009−126940号公報の[0129]段落に記載されている材料を挙げることができる。
【0091】
このようなケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、極めて塗布欠陥が少なく、また、パターン密着性やエッチング選択性に優れたケイ素含有レジスト下層膜を形成することができる。
【0092】
パターン形成方法
上記のようにして作製したケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いた本発明のパターン形成方法の一態様として、
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜にエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0093】
また、本発明のパターン形成方法の別の態様として、
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスク上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に上層レジスト膜組成物を用いて上層レジスト膜を形成し、該上層レジスト膜に上層レジストパターンを形成し、該上層レジストパターンをマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を挙げることができる。
【0094】
ここで、被加工体は、半導体基板、半導体基板上に被加工層(被加工部分)として、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、又は金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの等を用いることができる。
【0095】
半導体基板としては、シリコン基板が一般的に用いられるが、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α−Si)、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられてもよい。
また、被加工体(半導体基板を含む)を構成する金属としては、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、又はモリブデンのいずれか、あるいはこれらの合金を用いることができ、このような金属を含む被加工層としては、例えば、Si、SiO、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が用いられ、通常、50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成し得る。
【0096】
本発明のパターン形成方法では、被加工体上に、有機下層膜、又は有機ハードマスクを形成することができる。このうち、有機下層膜は塗布型有機下層膜材料から回転塗布法等を用いて形成することができ、有機ハードマスクは炭素を主成分とする有機ハードマスクの材料からCVD法を用いて形成することができる。このような有機下層膜及び有機ハードマスクとしては、特に限定されないが、上層レジスト膜が露光によりパターン形成を行う場合は、十分な反射防止膜機能を発現するものが好ましい。このような有機下層膜又は有機ハードマスクを形成することで、サイズ変換差を生じさせることなく上層レジスト膜で形成されたパターンを被加工体上に転写することができる。
【0097】
本発明のパターンの形成方法に使用されるケイ素含有レジスト下層膜は、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物からスピンコート法等で被加工体上に作製することが可能である。スピンコート法で形成する場合、スピンコート後、溶剤を蒸発させ、上層レジスト膜とのミキシング防止を目的として、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は50〜500℃の範囲内が好ましく、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。このとき、製造されるデバイスの構造にもよるが、デバイスへの熱ダメージを少なくするため、400℃以下が特に好ましい。
【0098】
また、本発明のパターン形成方法では、上層レジスト膜にパターンを形成する方法として、波長が300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィー法、電子線直接描画法、誘導自己組織化法(所謂、DSA法)及びナノインプリンティングリソグラフィー法のいずれかの方法を好適に用いることができる。このような方法を用いることで、レジスト上層膜上に微細なパターンを形成することができる。
【0099】
上層レジスト膜組成物としては、上記の上層レジスト膜にパターンを形成する方法に応じて適宜選択することができる。例えば、300nm以下の光又はEUV光を用いたリソグラフィーを行う場合、上層レジスト膜組成物としては、化学増幅型のフォトレジスト膜材料を用いることができる。このようなフォトレジスト膜材料としては、フォトレジスト膜を形成して露光を行った後に、アルカリ現像液を用いて露光部を溶解することによりポジ型パターンを形成するものや、有機溶媒からなる現像液を用いて未露光部を溶解することによりネガ型パターンを形成するものを例示できる。
【0100】
例えば、本発明における露光工程を、ArFエキシマレーザー光による露光プロセスとする場合、上層のフォトレジスト膜としては、通常のArFエキシマレーザー光用レジスト組成物はいずれも使用可能である。このようなArFエキシマレーザー光用レジスト組成物は多数の候補がすでに公知であり、すでに公知の樹脂を大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA(Cyclo Olefin Maleic Anhydride)系、COMA−(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP(Ring Opening Methathesis Polymerization)系、ポリノルボルネン系等があるが、このうち、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は、側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能は、他の樹脂系に比較して優れており、好ましく用いることができる。
【0101】
本発明のパターン形成方法は、ケイ素含有レジスト下層膜の塗布欠陥が極めて少なく、また上層レジスト膜とのパターン密着性や上層レジスト膜及び有機膜(有機下層膜、有機ハードマスク等)に対するエッチング選択性に優れているため、上層レジスト膜に形成された微細なパターンを欠陥なく、かつサイズ変換差なく下層に転写し、最終的にパターン転写の欠陥なく被加工体を加工することができ歩留まりを向上させることができる。
【実施例】
【0102】
以下、合成例、製造例、比較製造例、実施例、及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。尚、下記例で%は質量%を示し分子量測定はGPCによった。
【0103】
ケイ素化合物(A−1)の合成
【0104】
[合成例1]ケイ素化合物1の合成
温度計、ガラス製ジムロート冷却器、メカニカルスターラー及び滴下ロートを備えた500mlのガラス製4ツ口フラスコにヘキサメトキシジシロキサン30g、テトラヒドロフラン(THF)100mlを加え、窒素雰囲気中、フェニルマグネシウムクロライド13gを含むTHF100ml溶液をフラスコ内温が45℃になるように滴下速度を調整しながら加え、滴下終了後、攪拌しながら1時間加熱還流した。その後常温に戻してヘキサン200gを加え、析出した塩を濾過にて除去し、低沸点分を留去した。残留物をさらに蒸留で精製し、下記に示すケイ素化合物1を20g得た(収率70%)。
【化9】
【0105】
[合成例2]ケイ素化合物2の合成
温度計、ガラス製ジムロート冷却器、メカニカルスターラー及び滴下ロートを備えた2000mlのガラス製4ツ口フラスコにテトラメトキシジシロキサン120g、トルエン600ml及び塩化白金酸5gを加え、窒素雰囲気中、5−ノルボルネン−2−カルボン酸ターシャリーブチル120gをフラスコ内温が70℃から80℃になるように滴下速度を調整しながら加え、滴下終了後、さらに80℃、1時間撹拌を続け、反応を完結させ、下記に示すケイ素化合物を得た。
【化10】
【0106】
次に、このフラスコ内温を30℃まで下げたところで、メタノール30gを加え、そのままの温度で1時間撹拌した。得られた反応混合物を蒸留精製し、下記に示すケイ素化合物2を150g得た(収率60%)。
【化11】
【0107】
ケイ素含有化合物の製造
[製造例1]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物にケイ素化合物1を7.6g及びテトラメトキシシラン68.5gの混合物を添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)300gを加え、副生アルコールを減圧で留去してケイ素含有化合物1−1のPGEE溶液320g(化合物濃度10%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,900であった。
【0108】
[製造例2]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物にケイ素化合物2を52.8g及びテトラメトキシシラン38.1gの混合物を添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、PGEE500gを加え、副生アルコールを減圧で留去してケイ素含有化合物1−2のPGEE溶液530g(化合物濃度10%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,700であった。
【0109】
[比較製造例1]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物にフェニルトリメトキシシランを5.0g及びテトラメトキシシラン72.3gの混合物を添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、PGEE300gを加え、副生アルコールを減圧で留去してケイ素含有化合物1−3のPGEE溶液320g(化合物濃度10%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,000であった。
【0110】
[比較製造例2]
メタノール200g、メタンスルホン酸0.1g及び脱イオン水60gの混合物に下記に示すケイ素化合物3を39.6g及びテトラメトキシシラン57.1gの混合物を添加し、12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、PGEEを500g加え、副生アルコールを減圧で留去してケイ素含有化合物1−4のPGEE溶液530g(化合物濃度10%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,000であった。
【化12】
【0111】
ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の製造及びケイ素含有レジスト下層膜の形成
[実施例1]
ケイ素含有化合物1−1の10重量%PGEE溶液160g、PGEE640g及び脱イオン水80gを加え、撹拌均一化した後、目開きが2nmのポリエチレン製のフィルターで毎分10mlの流速で30時間循環ろ過し、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を製造した。次に、この組成物を清浄な容器に充填し、続いて東京エレクトロン社製クリーントラックACT12を用いてシリコンウエハーに1500rpmで回転塗布し、240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmの塗布膜を作製した。この塗布膜の表面欠陥(塗布欠陥)をKLA−Tencor社製暗視野欠陥検査装置SP−2で60nm以上の塗布欠陥数を測定した。その結果を表1に示す。
【0112】
[実施例2]
ケイ素含有化合物1−2の10重量%PGEE溶液160gを使用した以外は実施例1と全く同じ方法で塗布膜を作製した。この塗布欠陥を実施例1と同様の方法で塗布欠陥数を測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
[比較例1]
ケイ素含有化合物1−3の10重量%PGEE溶液160gを使用した以外は実施例1と全く同じ方法で塗布膜を作製した。この塗布欠陥を実施例1と同様の方法で塗布欠陥数を測定した。その結果を表1に示す。
【0114】
[比較例2]
ケイ素含有化合物1−4の10重量%PGEE溶液160gを使用した以外は実施例1と全く同じ方法で塗布膜を作製した。この塗布欠陥を実施例1と同様の方法で塗布欠陥数を測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
ケイ素化合物(A−1)を用いて製造された実施例1,2のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を成膜した場合は、同化合物を用いていない比較例1,2と比較すると極めて塗布欠陥が少ないことがわかった。
【0117】
ポジ型現像によるパターニング試験
シリコンウエハー上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)を膜厚200nmで形成した。その上に実施例1と比較例1のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜を作製した。続いて、表2に記載のポジ現像用ArFレジスト溶液(PR−1)を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト層を形成した。さらにフォトレジスト膜上に表3に記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
次いで、これらをArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、50nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た後、このラインアンドスペースパターンをマスクにして加工を条件(1)でドライエッチングしてケイ素含有レジスト下層膜にパターンを転写した。
【0118】
【表2】
【0119】
ArFレジストポリマー1:
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化13】
【0120】
酸発生剤:PAG1
【化14】
【0121】
塩基:Quencher
【化15】
【0122】
【表3】
【0123】
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化16】
【0124】
(1)CHF/CF系ガスでのエッチング条件
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(1):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 40sec
【0125】
上記で得られたパターンをKLA−Tencor社製明視野欠陥検査装置KLA2800で観測しパターン欠陥数を表4に示す(パターン欠陥)。
【表4】
【0126】
エッチング試験
次いで条件(2)でドライエッチングしスピンオンカーボン膜にパターンを転写した。得られたパターンの断面形状パターン欠陥を観測した欠陥を表5に示す(エッチング後のパターン欠陥)。
【0127】
(2)O/N系ガスでのエッチング条件
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(2):
チャンバー圧力 2Pa
Upper/Lower RFパワー 1000W/300W
ガス流量 300ml/min
ガス流量 100ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 30sec
【0128】
エッチング後のパターン欠陥数
【表5】
【0129】
塗布欠陥の少ない実施例1のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いたパターン形成であれば、比較例1に比べてパターン欠陥が極めて少なく、また、ドライエッチング後においてもスピンオンカーボン膜のパターン欠陥が極めて少ないことが明らかになった。
【0130】
上記の結果から、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物であれば、極めて塗布欠陥が少ないレジスト下層膜を形成できることが明らかになり、このようなレジスト下層膜であれば、従来よりもパターン欠陥が低減された状態で被加工体を加工できることが示めされた。
【0131】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。