(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る太陽電池の製造方法を図に基づき説明する。但し、本発明はこの方法で作製された太陽電池に限られるものではない。また、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法を例示するフローチャートである。
すなわち、
図1に表したように、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法は、溝の形成(ステップS101)、拡散源の形成(ステップS102)および熱処理(ステップS103)を含む。
【0032】
ステップS101に表した溝の形成では、シリコン基板の少なくとも第一表面に複数の溝を形成する。ステップS102に表した拡散源の形成では、第一表面に形成した複数の溝に、例えば第一ドーパントを含む第一拡散源を形成する。第一拡散源は、パターニングやスピンコートによって形成される。ステップS103に表した熱処理では、シリコン基板を所定の温度に加熱することで、第一拡散源の第一ドーパントをシリコン基板内に拡散させる。
【0033】
ここで、ステップS101に表した溝の形成では、シリコン基板の第一表面とは反対側の第二表面にも複数の溝を形成してもよい。また、ステップS102に表した拡散源の形成では、第二表面に形成された複数の溝に、第二ドーパントを含む第二拡散源を形成してもよい。第二拡散源は、パターニングやスピンコートによって形成される。また、ステップS103に表した熱処理では、シリコン基板を所定の温度に加熱することで、第二拡散源の第二ドーパントをシリコン基板内に拡散させてもよい。
【0034】
次に、具体的な太陽電池素子の製造方法の一例について説明する。
【0035】
[両面電極型太陽電池素子の製造方法]
ここでは、太陽電池の材料として単結晶シリコンの場合を例示するが、多結晶シリコンでも同様の効果を示す。
先ず、
図2に表したように、シリコン基板101を用意する。例えば、高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1Ω・cm以上5Ω・cm以下としたアズカット単結晶{100}p型シリコン基板を用意する。そして、シリコン基板101の表面のスライスダメージを除去する。例えば、濃度5質量%以上60質量%以下の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、または、ふっ酸と硝酸との混酸等を用いてシリコン基板101の表面をエッチングする。単結晶のシリコン基板101は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。シリコン基板101は、受光面101aと、受光面101aとは反対側の非受光面101bと、を有する。本実施形態において、受光面101aは第一表面であり、非受光面101bは第二表面である。
【0036】
次に、シリコン基板101の表面にテクスチャとよばれる微小な凹凸を形成する。テクスチャの形成は、太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ溶液(濃度1質量%以上10質量%以下、温度60℃以上100℃以下)中に10分以上30分以下程度浸漬することで作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0037】
テクスチャを形成した後、レーザやダイシング装置を用いて、シリコン基板101の受光面101aに複数の溝102を形成する。複数の溝102は、シリコン基板101の受光面101aに沿ってほぼ平行に形成される。
【0038】
溝102は、アルカリ溶液を主成分とするエッチングペーストをパターン状に印刷してシリコン基板101をパターン状にエッチングする方法や、RIE(Reactive Ion Etching)等によるドライエッチング法を利用して形成されてもよい。また、非受光面101bにも拡散パターンを形成する場合には、受光面101aだけでなく非受光面101bに溝102を形成してもよい。また、この溝102の形成は、テクスチャを形成する前に行ってもよい。
【0039】
図3(a)〜(d)は、溝の断面形状を例示する模式的断面図である。
図3(a)〜(d)には、溝102の延びる方向に見た模式的な断面図が表される。溝102の断面形状としては、
図3(a)に表したような円弧型、
図3(b)に表したようなV字型、
図3(c)に表したような矩形、
図3(d)に表したようなフラスコ型であることが好ましい。ここで、フラスコ型とは、溝102の底側の幅が、開口側の幅よりも広くなっている形状のことを言う。各断面形状は、実質的にそれぞれの断面形状になっていればよい。実質的とは、製造上の誤差を含んだ範囲で同一であることを意味する。
【0040】
溝102の断面形状は、特に、
図3(c)に表した矩形、または
図3(d)に表したフラスコ型であることが好ましい。後の工程で電極を形成した場合、同じ電極体積である場合には矩形またはフラスコ型にすることで電極とシリコン基板101とのコンタクト面積が広くなる。
【0041】
溝102の深さは、5μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上50μm以下である。溝102の深さが5μm以下の場合、溝102によるオートディフージョンの抑制力が小さく、R(n
+)のR(n
++)に対する比(R(n
+)/R(n
++))は小さいままとなる。ここで、以下の説明においては、n型の低濃度拡散層の抵抗を「R(n
+)」、n型の高濃度拡散層の抵抗を「R(n
++)」と呼ぶ。抵抗は、シート抵抗または拡がり抵抗である。一方、溝102の深さが100μm以上になると、シリコン基板101の強度が脆弱になる。
【0042】
ここでは、隣り合う溝102同士の中央部の間隔をピッチと呼ぶ。隣り合う溝102のピッチは、0.2mm以上3.0mm以下であり、好ましくは0.5mm以上2.0mm以下である。溝102のピッチが0.2mm以下では、シリコン基板101の強度が脆弱になり、溝102のピッチが3.0mm以上では、シリコン基板101の横流れ抵抗の増大によりフィルファクタの低下を招く。
【0043】
溝102の深さが浅いと、R(n
+)のR(n
++)に対する比は比較的小さいが、溝102の深さを深くすると、R(n
++)は変化せずにR(n
+)が上昇するため、R(n
+)のR(n
++)に対する比は大きくなる。すなわち、溝102の深さが深くなるとオートディフージョンの抑制力が大きくなる。これにより、低濃度拡散層の不純物濃度は低下し、R(n
+)は高くなる。一方、高濃度拡散層の不純物濃度は変化せず、R(n
++)は低いまま維持される。よって溝102の深さと拡散温度とにより、R(n
+)とR(n
++)とを制御することができるようになる。
【0044】
溝102の幅は、50μm以上150μm以下であり、好ましくは70μm以上100μm以下である。溝102の幅が50μm以下では、ペーストの印刷が困難となる。一方、溝102の幅が150μm以上では、高濃度拡散層の占める面積が大きくなってしまい、セレクティブエミッタ化の優位性が失われる。
【0045】
溝102を形成した後、シリコン基板101の表面を塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上させるため、塩酸溶液中に、0.5%以上5%以下の過酸化水素を混合させ、60℃以上90℃以下に加温して洗浄してもよい。
【0046】
次に、シリコン基板101を洗浄した後、n型拡散層を形成する。n型拡散層の形成には、イオン注入法、熱拡散法、エピタキシャル成長、レーザドーピング等があり、いずれを用いてもよい。一例として熱拡散法について記述する。
【0047】
先ず、シリコン基板101の受光面101aに形成した溝102内に、例えばリン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペースト(第一拡散源)を例えばスクリーン印刷機によって印刷し、塗布する。なお、リン酸およびシリカゲルを含有した拡散源は、例えばスピンコートにより塗布してもよい。拡散ペーストは受光面101aの溝102内とともに溝102以外の表面に塗布されてもよい。溝102が形成されている部分には拡散ペーストが多く堆積するため、後述する工程でn型の高濃度層が形成される。
【0048】
次に、第一拡散源を形成したシリコン基板101を所定の温度で加熱する。これにより、第一拡散源に含まれるドーパントが熱拡散してn型拡散層が形成される。
【0049】
図4(a)〜(c)は、重ね合わせ基板のボートへの載置状態を例示する模式図である。
図4(a)及び(b)に示すように、2枚のシリコン基板101を用意し、互いの拡散ペースト201を塗布した面同士を向かい合わせにして重ね合わせる。そして、ボート302の1つの溝303に、重ね合わせた2枚のシリコン基板101を挿入する。
【0050】
2枚のシリコン基板101同士を密着状態にするため、ボート302の溝303の幅303dは、2枚のシリコン基板101を重ね合わせた厚さよりも20μm以上50μm以下程度広くしておくことが好ましい。
【0051】
また、
図4(c)に示すように、偶数枚(例えば、4枚)のシリコン基板101を重ね合わせ、ボート305の1つの溝306に、偶数枚のシリコン基板101を挿入してもよい。偶数枚のシリコン基板101同士を密着状態にするため、ボート305の1つの溝306の幅306dは、偶数枚のシリコン基板101を重ね合わせた厚さよりも20μm以上50μm以下程度広くしておくことが好ましい。
【0052】
次に、シリコン基板101を熱処理炉に入れて、例えば800℃以上1100℃以下 で1分以上90分以下の時間保持して拡散熱処理を行う。この熱処理によって、拡散ペースト201に含まれるドーパントがシリコン基板101に拡散して拡散層が形成される。この際、シリコン基板101の溝102の内壁側の部分には高濃度拡散層が形成され、シリコン基板101の溝102が形成されていない部分の表面側には低濃度拡散層が形成される。その後、シリコン基板101を熱処理炉から取り出す。
【0053】
熱処理後、シリコン基板101に付着したガラス成分を、ふっ酸等により洗浄する。ドーパントはn型であればどれでもよいが、特にリンを用いるのが好ましい。
【0054】
次に、p型拡散層を形成する。p型拡散層の形成には、イオン注入法、熱拡散法、エピタキシャル成長、レーザドーピング等があり、いずれを用いてもよい。一例として熱拡散法について記述する。シリコン基板101の非受光面(例えば、第二表面)にも拡散層のパターンを形成する場合には、シリコン基板101の非受光面101bに例えばホウ酸およびシリカゲルを含有した拡散ペースト(第二拡散源)を例えばスクリーン印刷機によって印刷し、塗布する。なお、ホウ酸およびシリカゲルを含有した拡散剤は、例えばスピンコートにより塗布してもよい。ここで、シリコン基板101の非受光面101bに溝102が形成されている場合には、溝102内にも拡散源が塗布される。溝102が形成されている部分に拡散源が多く堆積するため、後述する工程でp型の高濃度層が形成される。
【0055】
塗布後、800℃以上1100℃以下で1分以上90分以下の時間保持して拡散熱処理を行う。これにより、シリコン基板101の非受光面101bにp型拡散領域が形成される。熱処理後、シリコン基板101に付着したガラス成分をガラスエッチング等により洗浄する。ドーパントはp型であればどれでもよいが、特にボロンを用いるのが好ましい。
【0056】
続いて、再結合サイトの一つとなるダングリングボンドを減らすために、シリコン基板101上に酸化膜を形成する。酸化膜の形成には、熱酸化、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による酸化膜の堆積、硝酸あるいは塩酸を含むオゾン水等によるウエット酸化等がある。
【0057】
熱酸化の場合は、拡散層を形成したシリコン基板101を酸素雰囲気下で700℃以上1100℃以下、30分以上120分以下で熱処理して、パッシベーション膜となるシリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜の膜厚は3nm以上30nm以下が好ましい。
【0058】
次に、シリコン基板101の受光面101aに反射防止膜を形成する。また、シリコン基板101の非受光面101bに適宜パッシベーション膜を形成してもよい。反射防止膜及びパッシベーション膜としては窒化珪素膜を使用してもよい。反射防止膜の膜厚は、70nm以上100nm以下が好ましい。膜の形成には、プラズマCVD法、熱CVD法、Cat(Catalytic)−CVD法等、いずれを用いてもよい。
【0059】
プラズマCVD法の場合は、反応ガスとして、モノシラン及びアンモニアを混合して用いることが多い。なお、アンモニアの代わりに窒素を用いてもよい。また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0060】
CVDの反応ガスの励起方法としては、前述のプラズマによるもののほか、熱CVDや光CVD等を用いてもよい。他の反射防止膜及びパッシベーション膜として、酸化珪素、二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜、酸化スズ膜、酸化タンタル膜、酸化ニオブ膜、フッ化マグネシウム膜、酸化アルミニウム膜等で代替してもよい。また、形成方法も上記以外にコーティング法、真空蒸着法等があるが、経済的な観点から、上記窒化珪素膜をプラズマCVD法によって形成するのが好適である。
【0061】
次いで、電極を形成する。電極形成には、蒸着、印刷法、めっき等があり、いずれを用いてもよい。ここでは印刷法について記述する。スクリーン印刷装置等を用い、シリコン基板の受光面、非受光面の両面に、例えば銀を主成分とする電極ペーストを、スクリーン印刷装置を用いて形成する。
【0062】
図5(a)及び(b)は、電極ペーストの形成状態を例示する模式的断面図である。
図5(a)及び(b)に表したように、シリコン基板101の溝102の内壁側には高濃度拡散層405、410が形成される。シリコン基板101の溝102以外の表面側には低濃度拡散層404、409が形成される。
【0063】
電極を形成するには、先ず、溝102の内部(p型拡散層及びn型拡散層の高濃度拡散層405、410上)に、例えば銀を主成分とする電極ペースト402、407を印刷し、乾燥させる。また、高濃度拡散層405、410と直交する方向に集電電極としてバスバーを2本以上5本以下程度形成する場合には、溝102と直交する方向に電極ペースト402、407を印刷する。
【0064】
電極ペースト402、407には、ガラスフリットと呼ばれるシリコン基板101と電極との接着強度を向上させるための成分が含有される。p型拡散層とn型拡散層で必要なガラスフリットの種類および量は異なるため、p型電極とn型電極では電極ペースト402、407を分けて印刷してもよい。この場合、一度目の印刷時に例えばp型電極を印刷するときのスクリーンパターンと、二度目の印刷時にn型電極印刷するときのスクリーンパターンとを別に用意しておく必要がある。
【0065】
これらの印刷の後、焼成炉において、500℃以上900℃以下で1分以上30分以下の間、焼成を行い、窒化珪素膜に銀粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンとを導通させる。これにより、両面電極型太陽電池素子が完成する。
【0066】
本実施形態によれば、シリコン基板の表面に形成した溝内に拡散源を形成し、熱処理によって拡散させることから、溝の位置及び深さによって拡散層の位置及び濃度を正確に設定することができるようになる。すなわち、シリコン基板の表面に濃度差のある拡散層を容易かつ安定して形成することができる。これにより、オーミックコンタクトを得ながら、受光面や非受光面の電極以外の部分での表面再結合およびエミッタ内の再結合が抑制される。したがって、光電変換効率を向上させた太陽電池を、簡便かつ容易な方法により安価に製造することができる。
【0067】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法を例示するフローチャートである。
すなわち、
図6に表したように、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法は、溝の形成(ステップS201)、第一拡散源及び第二拡散源の形成(ステップS202)及び熱処理(ステップS203)を含む。
【0068】
ステップS201に表した溝の形成では、シリコン基板の第一表面に複数の溝を形成する。ステップS202に表し第一拡散源及び第二拡散源の形成では、第一表面に形成された複数の溝に、第一ドーパントを含む第一拡散源と、第二ドーパントを含む第二拡散源と、を交互に形成する。ステップS203に表し熱処理では、シリコン基板を所定の温度に加熱することで、第一拡散源の第一ドーパント及び第二拡散源の第二ドーパントをシリコン基板内に拡散させる。
【0069】
ここで、シリコン基板の第一表面の溝を形成した部分以外を平坦化する工程をさらに備えていてもよい。
【0070】
また、複数の溝は、交互に配置された第一溝と第二溝とを含んでいてもよい。第一溝は、第一幅を有し、第二溝は、第一幅よりも広い第二幅を有する。
【0071】
次に、具体的な太陽電池素子の製造方法の一例について説明する。
【0072】
[バックコンタクト型太陽電池素子の製造方法]
ここでは、太陽電池の材料として単結晶シリコンの場合を例示するが、多結晶シリコンでも同様の効果を示す。
先ず、シリコン基板101を用意する。例えば、高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1Ω・cm以上5Ω・cm以下としたアズカット単結晶{100}p型シリコン基板を用意する。そして、シリコン基板101の表面のスライスダメージを除去する。例えば、濃度5質量%以上60質量%以下の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、または、ふっ酸と硝酸の混酸等を用いてシリコン基板の表面をエッチングする。単結晶のシリコン基板101は、CZ法、FZ法いずれの方法によって作製されてもよい。シリコン基板101は、受光面101aと、受光面101aとは反対側の非受光面101bと、を有する。本実施形態において、非受光面101bは第一表面である。
【0073】
次に、シリコン基板101の表面にテクスチャを形成する。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ溶液(濃度1質量%以上10質量%以下、温度60℃以上100℃以下)中に10分以上30分以下程度浸漬することで作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0074】
テクスチャを形成した後、レーザやダイシング装置を用いて、シリコン基板の非受光面101bに複数の溝102を形成する。この溝102は、複数の溝102は、シリコン基板101の非受光面101bに沿ってほぼ平行に形成される。
【0075】
また、
図7に示すように、幅の狭い第一溝102aと、幅の広い第二溝102bとを交互に等間隔で配列してもよい。第一溝102aは、第一幅を有する。第二溝102bは、第一溝よりも広い第二幅を有する。なお、以下の説明で、第一溝102a及び第二溝102bを総称して溝102と呼ぶことにする。
【0076】
溝102は、アルカリ溶液を主成分とするエッチングペーストをパターン状に印刷してシリコン基板101をパターン状にエッチングする方法や、RIE等によるドライエッチング法を利用して形成されてもよい。また、この溝102の形成は、テクスチャを形成する前に行ってもよい。
【0077】
溝102の断面形状は、
図3(a)に表したような円弧型、
図3(b)に表したようなV字型である。特に
図2(c)に表したような矩形、
図3(d)に表したようなフラスコ型であることが好ましい。後の工程で電極を形成した場合、同じ電極体積である場合には矩形またはフラスコ型にすることで電極とシリコン基板101とのコンタクト面積が広くなる。
【0078】
溝102の深さは、20μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上70μm以下である。溝102の深さが20μm以下では、後の工程の研磨時に溝形成部以外だけでなく溝形成部分も多く研磨されてしまう可能性がある。この場合、電極の直列抵抗が大きくなり、フィルファクタの低下を招く。一方、溝の深さが100μm以上では、基板の強度が脆弱になる。
【0079】
ここでは、第一溝102aと第一溝102a同士、あるいは第二溝102bと第二溝102b同士の間隔を溝のピッチと呼ぶ。溝のピッチは、0.4mm以上6.0mm以下であり、好ましくは1.0mm以上4.0mm以下である。溝のピッチが0.4mm以下ではシリコン基板101の強度が脆弱になる。溝のピッチが6.0mm以上では、エレクトリックシャドウの増大により短絡電流が大きく低下する。
【0080】
第一溝102aの幅(第一幅)は、50μm以上2000μm以下であり、好ましくは100μm以上1000μm以下である。第一溝102aの幅が50μm以下では、BSF(Back Surface Field)領域が小さくフィルファクタの低下を招く。第一溝102aの幅が2000μm以上では、エレクトリックシャドウ増大により短絡電流の低下を招く。
【0081】
第二溝102bの幅(第二幅)は、200μm以上5000μm以下であり、好ましくは500μm以上3000μm以下である。第二溝102bの幅が200μm以下では、エミッタ層が小さくなり、短絡電流や開放電圧の低下を招く。第二溝102bの幅が5000μm以上では、シリコン基板101の横流れ抵抗及びエミッタ層の横流れ抵抗が大きくなり、フィルファクタの低下を招く。
【0082】
溝102を形成した後、シリコン基板101の表面を塩酸、硫酸、硝酸、ふっ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上させるため、塩酸溶液中に、0.5%以上5%以下の過酸化水素を混合させ、60℃以上90℃以下に加温して洗浄してもよい。
【0083】
次に、シリコン基板101の非受光面101bの第二溝102bにエミッタ層を、第一溝102aにBSFを形成する。拡散層の形成には、イオン注入法、熱拡散法、エピタキシャル成長、レーザドーピング等があり、いずれを用いてもよい。一例として熱拡散法について記述する。
【0084】
先ず、リン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペースト201を例えばスクリーン印刷機によって幅の広い第二溝102b内に印刷し、塗布する。一方、ホウ酸およびシリカゲルを含有した拡散ペースト201を例えばスクリーン印刷機によって幅の狭い第一溝102a内に印刷し、塗布する。また、受光面101a側にFSF(Front Surface Field)を形成する場合には、受光面101a側にホウ酸およびシリカゲルを含有した低濃度の拡散塗布剤を例えばスピンコートによって塗布する。
【0085】
次に、
図4に示すように、2枚のシリコン基板101を用意し、互いの拡散ペースト201を塗布した面同士を互いに向かい合わせにして重ね合わせる。そして、ボート302の1つの溝303に、重ね合わせた2枚のシリコン基板101を挿入する。
【0086】
2枚のシリコン基板10同士を密着状態にするため、ボート302の溝303の幅303dは、2枚のシリコン基板101を重ね合わせた厚さよりも20μm以上50μm以下程度広くしておくことが好ましい。
【0087】
また、
図4(c)に示すように、偶数枚(例えば、4枚)のシリコン基板101を重ね合わせ、ボート305の1つの溝306に、偶数枚のシリコン基板101を挿入してもよい。偶数枚のシリコン基板101同士を密着状態にするため、ボート305の1つの溝306の幅306dは、偶数枚のシリコン基板101を重ね合わせた厚さよりも20μm以上50μm以下程度広くしておくことが好ましい。
【0088】
次に、シリコン基板101を熱処理炉に入れて、例えば800℃以上1100℃以下 で1分以上90分以下の時間保持して拡散熱処理を行う。この熱処理によって、拡散ペースト201に含まれるドーパントがシリコン基板101に拡散して拡散層が形成される。この際、シリコン基板101の溝102の内壁側の部分には高濃度拡散層が形成され、シリコン基板101の溝102が形成されていない部分の表面側には低濃度拡散層が形成される。その後、シリコン基板101を熱処理炉から取り出す。
【0089】
熱処理後、シリコン基板101の非受光面101bの溝形成部以外を平坦化する。平坦化により、凹凸減少による再結合サイトの抑制、および、p−n接合の分離がなされる。
【0090】
平坦化には、化学機械平坦化(CMP)、ラップ研磨、スピンエッチング、レーザエッチング等が用いられる。平坦化の方法は、溝形成部以外を優先的にエッチングするものであればいずれであってもよい。
【0091】
一例としてCMPについて記述する。一般的なCMP技術(例えば、米国特許第5245794号明細書、米国特許第4944836号明細書参照)およびCMP装置(例えば、米国特許第4193226号明細書、米国特許第3841031号明細書参照)を使用する。フラットテーブル上の研磨パッドにシリコン基板101を配置し、研磨パッドの回転および研磨液のエッチングにより非受光面101bの主に溝形成部以外の研磨を行う。平坦化処理後、拡散処理時にシリコン基板101に付いたガラス成分や平坦化時の研磨残留物をふっ酸、RCA洗浄等により洗浄する。
【0092】
続いて、再結合サイトの一つとなるダングリングボンドを減らすために、シリコン基板101上に酸化膜を形成する。酸化膜の形成には、熱酸化、CVD法による酸化膜の堆積、硝酸あるいは塩酸を含むオゾン水等によるウエット酸化等がある。
【0093】
熱酸化の場合は、拡散層を形成したシリコン基板101を酸素雰囲気下で700℃以上1100℃以下、30分以上120分以下で熱処理して、パッシベーション膜となるシリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜の膜厚は3nm以上30nm以下が好ましい。
【0094】
次に、シリコン基板101の受光面101aに反射防止膜を形成する。また、シリコン基板101の非受光面101bに適宜パッシベーション膜を形成してもよい。反射防止膜及びパッシベーション膜としては窒化珪素膜を使用してもよい。反射防止膜の膜厚は、70nm以上100nm以下が好ましい。膜の形成には、プラズマCVD法、熱CVD法、Cat−CVD法等、いずれを用いてもよい。
【0095】
プラズマCVD法の場合は、反応ガスとして、モノシラン及びアンモニアを混合して用いることが多い。なお、アンモニアの代わりに窒素を用いてもよい。また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0096】
CVDの反応ガスの励起方法としては、前述のプラズマによるもののほか、熱CVDや光CVD等を用いてもよい。他の反射防止膜及びパッシベーション膜として、酸化珪素、二酸化チタン膜、酸化亜鉛膜、酸化スズ膜、酸化タンタル膜、酸化ニオブ膜、フッ化マグネシウム膜、酸化アルミニウム膜等で代替してもよい。また、形成方法も上記以外にコーティング法、真空蒸着法等があるが、経済的な観点から、上記、窒化珪素膜をプラズマCVD法によって形成するのが好適である。
【0097】
バスバーを設ける場合には、シリコン基板101の非受光面101bの拡散層上に絶縁体膜を形成してもよい。絶縁体のパターンを形成するには、スクリーン印刷と加熱によるシロキサン等を形成する方法や、熱酸化膜を所望部分以外除去する方法等があり、いずれを用いてもよい。例えばシロキサン前駆体ペーストをスクリーン印刷機によって後の工程でバスバーを設けたい箇所に印刷し、ホットプレート等により加熱しシロキサンを形成してもよい。
【0098】
また、シリコン基板101の端部にバスバーを設ける場合には、
図8に示すような、第一溝102aおよび第二溝102bの少なくとも一方をシリコン基板101の端部に寄せて形成しておく。寄り度合いの長さ604は、200μm以上5000μm以下が好ましい。
【0099】
次いで、電極を形成する。電極形成には、蒸着、印刷法、めっき等があり、いずれを用いてもよい。ここでは印刷法について記述する。スクリーン印刷装置等を用い、シリコン基板の非受光面に、例えば銀を主成分とする電極ペースト402、407を、スクリーン印刷装置を用いて形成する。
図5(a)及び(b)に表したように、電極ペースト402、407は、溝102の内部(p型拡散層及びn型拡散層の高濃度拡散層405、410上)に印刷塗布される。その後、電極ペースト402、407を乾燥させる。また、シリコン基板101の両端や絶縁体を形成した箇所に、ほぼ直線状に集電電極としてバスバーを2本以上5本以下程度形成してもよい。
【0100】
電極ペースト402、407中には、ガラスフリットと呼ばれるシリコン基板101と電極との接着強度を向上させるための成分が含有される。p型拡散層とn型拡散層で必要なガラスフリットの種類および量は異なるため、p型電極とn型電極では電極ペースト402、407を分けて印刷してもよい。この場合、一度目の印刷時に例えばp型電極を印刷するときのスクリーンパターンと、二度目の印刷時にn型電極印刷するときのスクリーンパターンとを別に用意しておく必要がある。
【0101】
これらの印刷の後、焼成炉において、500℃以上900℃以下で1分以上30分以下の間、焼成を行い、窒化珪素膜に銀粉末を貫通させ(ファイアースルー)、電極とシリコンとを導通させる。これにより、バックコンタクト型太陽電池素子が完成する。
【0102】
本実施形態によれば、シリコン基板の表面に形成した溝内に拡散源を形成し、熱処理によって拡散させることから、溝の位置及び深さによって拡散層の位置及び濃度を正確に設定することができるようになる。すなわち、シリコン基板の表面に濃度差のある拡散層を容易かつ安定して形成することができる。これにより、オーミックコンタクトを得ながら、受光面や非受光面の電極以外の部分での表面再結合およびエミッタ内の再結合が抑制される。また、受光面の電極をなくしシャドーロスをなくすことができる。したがって、光電変換効率を向上させた太陽電池を、簡便かつ容易な方法により安価に製造することができる。
【0103】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。例えば、上述の例ではp型基板を使用したが、n型基板を使用してもよく、この場合は例えばエミッタ層の形成にはホウ素系拡散剤を、BSFの形成にはリン系拡散剤を使用すればよい。
【実施例】
【0104】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は本実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の有効性を確認するため、基板受光面に溝を有する両面電極型太陽電池を拡散ペーストを用いて以下に示す条件で作製し、評価を行った。
【0105】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmのガリウムドープ{100}p型アズカットシリコン基板を60枚用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。次に、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。
【0106】
次いで、受光面側に溝を形成した。ダイサーにより平行で等間隔な溝のパターンを切削により形成した。溝間隔は1.0mm、溝幅は100μm、溝の深さは30μm、溝の形状は矩形とした。溝形成後、80℃に保った1%の塩酸と1%の過酸化水素の水溶液中に5分浸漬し、純水で5分リンス後、クリーンオーブンにて乾燥させた。
【0107】
次に、n型拡散層の形成を行った。詳しくは、リン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペーストをスクリーン印刷機によって溝内に印刷し、シリコン基板2枚を
図4に示したように溝が合わさるように受光面同士で重ねあわせた状態で、酸素を1.0vol%窒素中に混合させたガス雰囲気の中に配置し、900℃で30分熱処理を行った。続いて、シリコン基板の表面に形成されたリンガラスをふっ酸で除去した。
【0108】
次いで、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、基板両面に熱酸化膜を20nm形成した。
【0109】
引き続き、熱酸化膜上に窒化珪素膜からなる反射防止膜を成膜した。このときプラズマCVD法を用い、反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は80nm、屈折率は2.0とした。
【0110】
次に、非受光面全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。この後、受光面に櫛歯状のパターンで銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。アルミニウムペーストは、粒径数〜数十nmのアルミニウム微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。また、銀ペーストは、粒径数〜数十nmの銀微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。最後に、800℃の空気雰囲気下で10秒程度熱処理し、アルミニウムおよび銀を焼結させて太陽電池を完成させた。
【0111】
[実施例2]
本発明の有効性を確認するため基板受光面に溝を有する両面電極型太陽電池をスピンコート法を用いて以下に示す条件で作製し、評価を行った。
【0112】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmのガリウムドープ{100}p型アズカットシリコン基板を60枚用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。次に、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。
【0113】
次いで、受光面側に溝を形成した。ダイサーにより平行で等間隔な溝のパターンを切削により形成した。溝間隔は1.0mm、溝幅は100μm、溝の深さは30μm、溝の形状は矩形とした。溝形成後、80℃に保った1%の塩酸と1%の過酸化水素の水溶液中に5分浸漬し、純水で5分リンス後、クリーンオーブンにて乾燥させた。
【0114】
次に、n型拡散層の形成を行った。詳しくは、リン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペーストをスピンコートによって塗布し、シリコン基板2枚を
図4に示したように溝が合わさるように受光面同士で重ねあわせた状態で、酸素を1.0vol%窒素中に混合させたガス雰囲気の中に配置し、900℃で30分熱処理を行った。続いて、シリコン基板の表面に形成されたリンガラスをふっ酸で除去した。
【0115】
次いで、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、基板両面に熱酸化膜を20nm形成した。
【0116】
引き続き、熱酸化膜上に窒化珪素膜からなる反射防止膜を成膜した。このときプラズマCVD法を用い、反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は80nm、屈折率は2.0とした。
【0117】
次に、非受光面全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。この後、受光面に櫛歯状のパターンで銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。アルミニウムペーストは、粒径数nm〜数十nmのアルミニウム微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。また、銀ペーストは、粒径数nm〜数十nmの銀微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。最後に、800℃の空気雰囲気下で10秒程度熱処理し、アルミニウムおよび銀を焼結させて太陽電池を完成させた。
【0118】
[比較例1]
比較のため、溝を形成しない従来の両面電極型太陽電池を以下に示す条件で作製し、評価を行った。
【0119】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ250μm、比抵抗1Ω・cmのガリウムドープ{100}p型アズカットシリコン基板を60枚用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。次に、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。その後、80℃に保った1%の塩酸と1%の過酸化水素の水溶液中に5分浸漬し、純水で5分リンス後、クリーンオーブンにて乾燥させた。
【0120】
次に、n型拡散層の形成を行った。詳しくは、リン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペーストをスクリーン印刷機によって印刷し、シリコン基板2枚を受光面同士で重ねあわせた状態で、酸素を1.0vol%窒素中に混合させたガス雰囲気の中に配置し、900℃で30分熱処理を行った。続いて、シリコン基板の表面に形成されたリンガラスをふっ酸で除去した。
【0121】
次いで、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、基板両面に熱酸化膜を20nm形成した。
【0122】
引き続き、熱酸化膜上に窒化珪素膜からなる反射防止膜を成膜した。このときプラズマCVD法を用い、反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は80nm、屈折率は2.0とした。
【0123】
次に、非受光面全面にアルミニウムペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。この後、受光面に櫛歯状のパターンで銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。アルミニウムペーストは、粒径数nm〜数十nmのアルミニウム微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。また、銀ペーストは、粒径数nm〜数十nmの銀微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。最後に、800℃の空気雰囲気下で10秒程度熱処理し、アルミニウムおよび銀を焼結させて太陽電池を完成させた。
【0124】
(評価方法)
以上のようにして得られた太陽電池のサンプルについて、山下電装社製ソーラーシミュレータを用いてAM1.5スペクトル、照射強度100mW/cm
2、25℃の条件下で、太陽電池特性を測定した。得られた結果の平均値を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
以上の結果、実施例1あるいは実施例2の太陽電池は、受光面に溝を形成し、R(n
+)のR(n
++)に対する比(R(n
+)/R(n
++))が大きくなるようにしたので、比較例1よりも短絡電流および開放電圧が増加し、変換効率も向上した。
【0127】
[実施例3]
本発明の有効性を確認するため基板受光面に溝を有するバックコンタクト型太陽電池を以下に示す条件で作製し、評価を行った。
【0128】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ150μm、比抵抗3Ω・cmのリンドープ{100}n型アズカットシリコン基板を60枚用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。次に、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、テクスチャ形成を行った。
【0129】
次に、非受光面側に溝を形成した。ダイサーにより平行で等間隔なピッチ1.5mmで幅250μmの狭い溝のパターンを切削により形成した。その後ダイサーにより狭い溝の中間に平行で等間隔なピッチ1.5mmで幅1000μmの広い溝のパターンを切削により形成した。溝の深さは30μmで、溝の形状は矩形とした。溝形成後、80℃に保った1%の塩酸と1%の過酸化水素の水溶液中に5分浸漬し、純水で5分リンス後、クリーンオーブンにて乾燥させた。
【0130】
次にp型拡散層およびn型拡散層の形成を行った。リン酸およびシリカゲルを含有した拡散ペーストをスクリーン印刷機によって狭い溝内に印刷した。さらにホウ酸およびシリカゲルを含有した拡散ペーストをスクリーン印刷機によって広い溝内に印刷した。印刷したシリコン基板2枚を溝が合わさるように非受光面同士で重ねあわせた状態で、酸素を1.0vol%窒素中に混合させたガス雰囲気の中に配置し、1000℃で30分熱処理を行った。その後、非受光面の溝形成部以外をCMPにより平坦化した。フラットテーブル上の研磨パッドに基板を配置し、研磨パッド(定盤)の回転および研磨液のエッチングにより非受光面の主に溝形成部以外の研磨を行った。定盤の回転速度は100rpmで、研磨液は砥粒、分散剤、ポリアクリル酸化合物、界面活性剤、pH調整剤、リン酸化合物、水を含むものを使用した。平坦化処理後、拡散処理時にシリコン基板表面に形成したガラス成分と平坦化時の研磨残留物をふっ酸およびRCA洗浄により洗浄した。
【0131】
次いで、これらのシリコン基板を酸素雰囲気中、1000℃で10分間処理することで熱酸化を行い、基板両面に熱酸化膜を20nm形成した。
【0132】
引き続き、熱酸化膜上に窒化珪素膜からなる反射防止膜を成膜した。このときプラズマCVD法を用い、反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は80nm、屈折率は2.0とした。
【0133】
次に、非受光面に櫛歯状のパターンで銀ペーストをスクリーン印刷し、乾燥した。また、銀ペーストは、粒径数nm〜数十nmの銀微粒子を有機溶媒中に分散させたものである。最後に、800℃の空気雰囲気下で10秒程度熱処理し、銀を焼結させて太陽電池を完成させた。
【0134】
[比較例2]
比較のため、溝を形成しない従来のバックコンタクト型太陽電池を以下に示す条件で作製し、評価を行った。
【0135】
(作製手順及び条件)
まず、半導体基板として、縦横100×100mm、厚さ150μm、比抵抗3Ω・cmのリンドープ{100}n型アズカットシリコン基板を60枚用意し、加熱した水酸化カリウム水溶液により該シリコン基板のダメージ層を除去した。その後、80℃に保った1%の塩酸と1%の過酸化水素の水溶液中に5分浸漬し、純水で5分リンス後、クリーンオーブンにて乾燥させた。
【0136】
次に、常圧CVD法によりシリコン基板両面に第1拡散マスクとして酸化珪素を400nm形成した。リン酸を含有するエッチングペーストにより櫛型に印刷、加熱処理を行ないパターンエッチングした。そして加熱処理を終えたシリコン基板を、洗剤を含んだ超音波水洗を10分間、純水のみの超音波洗浄を20分間、流水洗浄を5分間の順で洗浄し、エッチングペーストの増粘剤などの残渣を除去し、2%程度のふっ酸で洗浄し、第1拡散マスクの窓開けを行なった。
【0137】
次に、三臭化ホウ素を用いた気相拡散により櫛型にp
++型拡散領域を形成した。拡散は、1000℃で、60分間行なった。p
++型拡散領域形成後、基板表面に形成されたガラスと第1拡散マスクをふっ酸により除去した。
【0138】
次いで、常圧CVD法によりシリコン基板両面に第2拡散マスクとして酸化珪素を400nm形成した。リン酸を含有するエッチングペーストにより櫛型に印刷、加熱処理を行ないパターンエッチングした。そして加熱処理を終えたシリコン基板を、洗剤を含んだ超音波水洗を10分間、純水のみの超音波洗浄を20分間、流水洗浄を5分間の順で洗浄し、ペーストの増粘剤などの残渣を除去し、2%程度のふっ酸で洗浄し、第2拡散マスクの窓開けを行なった。
【0139】
次に、塩化ホスホリルを用いた気相拡散により櫛型にn
++型拡散領域を形成した。拡散は、900℃で、60分間行なった。n
++型拡散領域形成後、基板表面に形成されたガラスと第2拡散マスクをふっ酸により除去した。
【0140】
次に、常圧CVD法によってシリコン基板の非受光面にテクスチャエッチングマスクとして膜厚800nmの酸化珪素膜を形成した。次に、水酸化カリウム・2−プロパノール水溶液中に浸漬し、受光面にテクスチャを形成した。その後、テクスチャエッチングマスクはふっ酸によって除去した。そして、シリコン基板を900℃、30分間ドライ酸化を行ない、基板両面に熱酸化膜を形成した。
【0141】
次いで、受光面側にはプラズマCVD法によって窒化珪素膜を形成した。反応ガスとしてはモノシラン及びアンモニアの混合ガスを用い、膜厚は80nm、屈折率は2.0とした。その後リン酸を含有するエッチングペーストを用いて、p
++型拡散領域とn
++型拡散領域上に幅100μm程度の櫛型のパターンを形成した。そして、銀などの電極材料を印刷し、500℃で焼成することによりp型電極、n型電極を形成した。
【0142】
(評価方法)
以上のようにして得られた太陽電池のサンプルについて、山下電装社製ソーラーシミュレータを用いてAM1.5スペクトル、照射強度100mW/cm
2、25℃の条件下で、太陽電池特性を測定した。得られた結果の平均値を表2に示す。
【0143】
【表2】
【0144】
以上の結果、実施例3の太陽電池は、非受光面に溝を形成し、溝形成部以外を平坦化したため、非受光面での表面再結合が減少し、シャントが抑制された。そのため、実施例3の太陽電池は比較例2よりも短絡電流および開放電圧が増加し、変換効率も向上した。
【0145】
本発明によれば、簡便かつ容易な方法により安価にシリコン基板表面に濃度差のあるパターンの拡散層が形成される。また、基板のドーパント濃度の差を制御することができ、太陽電池の変換効率の向上が達成される。さらに、裏面を平坦化する場合、裏面再結合速度が低減するため、開放電圧が増加する。また、光閉じ込め作用が強まるため、短絡電流も増加する。その結果、太陽電池の性能が大幅に向上する。
【0146】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明したが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。