(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6114538
(24)【登録日】2017年3月24日
(45)【発行日】2017年4月12日
(54)【発明の名称】光電式絶対位置検出器、及び、その取付方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/36 20060101AFI20170403BHJP
【FI】
G01D5/36 W
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-265802(P2012-265802)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109565(P2014-109565A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】川床 修
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−237231(JP,A)
【文献】
特開2008−261701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチが異なるパターンの複数のトラックを持つスケールと、
光源、及び、前記複数のトラックに対応した複数の受光素子アレイを含む受光素子を持つ検出器を備えた光電式絶対位置検出器において、
前記検出器の、前記複数の受光素子アレイの間の前記スケールの隣り合う粗いピッチと細かいピッチのパターンのトラックの境界に対応する位置に、前記複数の受光素子アレイと平行に、該複数の受光素子アレイのいずれか一つと同一の構成の受光素子アレイを追加配置し、
該追加した受光素子アレイの信号振幅から、前記検出器のスケールに対するラテラル方向の変位を検出することを特徴とする光電式絶対位置検出器。
【請求項2】
前記追加した受光素子アレイ内の受光素子の配設ピッチが、前記スケールの粗いピッチ用の受光素子アレイ内の受光素子の配設ピッチと同一であることを特徴とする請求項1に記載の光電式絶対位置検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電式絶対位置検出器の取付に際して、前記追加した受光素子アレイの信号振幅から検出される、前記検出器のスケールに対するラテラル方向のずれが解消されるように、前記スケールと検出器の位置合わせを行なうことを特徴とする光電式絶対位置検出器の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式絶対位置検出器、及び、その取付方法に係り、特に、スケールと検出器が別体とされたセパレート型の光電式絶対位置検出器や、リニヤゲージ、デジタルインジケータ等に用いるのに好適な、スケールと検出器の位置合わせを容易に行なうことが可能な光電式絶対位置検出器、及び、その取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出器の方式として、相対変位のみを検出するインクリメンタル方式と、絶対位置を検出するアブソリュート方式がある。このうち、インクリメンタル方式の光電式位置検出器では、ピッチ方向(測定方向)と垂直なラテラル方向への位置ずれに対する感度が無いため、組立時、ラテラル方向へのオフセット(位置検出のためのスケールと検出器の相対移動方向と垂直なラテラル方向において、スケールと受光素子の位置ずれ量)を管理する必要が無かった。
【0003】
一方、工作機械等で使用されるフィードバック用位置検出器では、電源投入時に絶対位置の検出が可能なアブソリュート方式の位置検出器(絶対位置検出器と称する)が一般的である。この絶対位置検出器では、測定方向と垂直なラテラル方向に2トラック以上の複数トラックが存在するため、ラテラル方向のずれは、信号のクロストークを生じさせ、結果的に絶対位置合成の許容範囲を減少させてしまう。これは、絶対位置合成の信頼性を悪化させ、結果として絶対位置検出ができなくなるので、スケールと検出器の位置関係を正確に調整する必要がある。
【0004】
特に透過型の光電式位置検出器の場合、光源、スケール、受光素子が同一光軸上に並ぶので、目視でのスケールと受光素子の位置合わせが難しいという問題がある。
【0005】
例えば3トラック構成の絶対位置検出器の場合、
図1に示すように、検出器20(
図1(A))とスケール10(
図1(B))の両方に、それぞれ対応するインクリメンタル用トラック11(INC用トラックと称する)、アブソリュート用狭ピッチトラック12(M1用トラックと称する)、及びアブソリュート用広ピッチトラック13(M2用トラックと称する)と、検出器20用の受光素子アレイ21〜23がある。図において、31〜33はアンプ、40は、AD変換や位置演算を行なうための信号処理部、42はカウンタ機器、44は表示機器である。
【0006】
図1のような構成で正常な位置検出を行なうためには、
図2のように、スケール10のトラック11〜13と検出器20の受光素子アレイ21〜23が正しい状態で向き合うことが必要である。これに対して、
図3に例示するように、スケール10と検出器20の位置関係が例えばラテラル方向(
図3では上方向)にずれていると、受光素子アレイ21〜23が正しい位置を検出することができない。
【0007】
しかしながら従来の位置検出器は、主信号を得るための受光素子アレイ21〜23が、ラテラル方向の変動に対して感度が無く、ラテラルオフセットを検出することができなかった。
【0008】
そこで、特にスケールと検出器が別々の構成のセパレート型位置検出器においては、装置に組み付ける際にスケールと検出器の位置関係を正しく設定するため、検出器の取付面の加工精度を上げたり、あるいは、特許文献1に記載されているように、トラック毎に設けられた位置検出用受光素子アレイ間の読取値の検出器の傾きによる違いを検出して、スケールに対する検出器の傾き(ヨーイング)による誤差を補正することが提案されている。
【0009】
又、出願人は、特許文献2で、スケール側にも傾き検出用コイルを配置することにより、検出器の傾き方向を検出して補正することを提案している。
【0010】
更に、出願人は、特許文献3で、ラテラル方向にラインセンサを設けてずれ量を検出することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−324948号公報
【特許文献2】特開2008−64498号公報
【特許文献3】特開2011−237231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、検出器取付面の加工精度を上げても、取付調整を容易にすることはできず、各トラックで検出される信号を見ながら、機械的に最適な位置に合わせる必要があり、正しい状態になっているか、又、どちらにずらせば良いか不明であるため、手間がかかっていた。
【0013】
一方、特許文献1、2の技術は、いずれも、検出器の位置関係(角度)が変動しても検出器側で補正を行ない、厳密な位置関係の調整を不要とすることを目的としている。従って、いずれの技術も、取付調整を容易とするものではなく、更に、スケールに対する検出器のヨーイングによる誤差を補正することはできるかもしれないが、ラテラル方向のずれによる誤差を補正することはできないという問題点を有していた。
【0014】
又、特許文献2に記載の技術では、スケール側にも位置検出とは別の傾き検出用コイルを配置しなければならないという問題もあった。
【0015】
又、特許文献3に記載の技術では、別体のラインセンサをラテラル方向に設ける必要があるという問題があった。
【0016】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、
別体のラインセンサをラテラル方向に設けることなく、スケールと検出器の相対的な位置関係を簡単に把握して、取付調整を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ピッチが異なるパターンの複数のトラックを持つスケールと、光源、及び、前記複数のトラックに対応した複数の受光素子アレイを含む受光素子を持つ検出器を備えた光電式絶対位置検出器において、前記検出器の、
前記複数の受光素子アレイの間の前記スケールの隣り合う粗いピッチと細かいピッチのパターンのトラックの境界に対応する位置に
、前記複数の受光素子アレイと平行に、該複数の受光素子アレイのいずれか一つと同一の構成の受光素子アレイを追加配置し、該追加した受光素子アレイの信号振幅から、前記検出器のスケールに対するラテラル方向の変位を検出することにより、前記課題を解決したものである。
【0018】
ここで、前記追加した受光素子アレイ
内の受光素子の
配設ピッチを、前記スケールの粗いピッチ
用の受光素子アレイ内の受光素子の配設ピッチと同一であることができる。
【0020】
本発明は、又、前記の光電式絶対位置検出器の取付に際して、前記追加した受光素子アレイの信号振幅から検出される、前記検出器のスケールに対するラテラル方向のずれが解消されるように、前記スケールと検出器の位置合わせを行なうようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、
別体のラインセンサをラテラル方向に設けることなく、組立段階で受光素子アレイからの信号によりラテラルオフセット量を確認することができるので、相対的な位置関係を簡単に把握できる。従って、位置検出器組立時に、ラテラル方向への変位信号を見ながら、スケールと受光素子の位置を調整できるので、取付調整を容易に行なうことができ、直行率(できた製品数に対する良品数の割合)を向上することができる。又、調整機構を入れないで、部品精度だけで位置が決まる設計の場合も、検査工程での使用が可能なので、品質を管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】3トラック構成の絶対位置検出器の(A)検出器と(B)スケールの構成を模式的に示す平面図
【
図2】同じくスケールに対して検出器が正しく調整されている状態を示す平面図
【
図3】同じくスケールと検出器の位置関係がラテラル方向にずれた状態を示す平面図
【
図4】本発明の実施形態の構成を示す(A)検出器(受光素子部分)と(B)スケールの平面図及び(C)ラテラルオフセット量と信号振幅の関係の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の要部構成を
図4に示す。
図1とは90°展開した状態となっており、図の上下方向が測定方向となっている。
【0025】
本実施形態は、
図4(A)、(B)に示す如く、検出器20のINC用受光素子アレイ21とM1用受光素子アレイ22の間の、スケール10のINC用トラック11とM1用トラック12の境界に対応する位置に、M1用受光素子アレイ22と同じピッチの受光素子アレイ22’を追加したものである。
【0026】
具体的には、M1の1スケールピッチ内に配設された、例えばA相、B相、AB相、BB相用の4個のフォトダイオード(PD)A、B、AB、BBと同じピッチで同じ大きさのA相、B相、AB相、BB相用の4個のフォトダイオード(PD)A、B、AB、BBが配設されている。
【0027】
ここで、追加した受光素子アレイ22’から出力される信号Iの振幅Iampは、フォトダイオードAの光起電流をIa、フォトダイオードBの光起電流をIb、フォトダイオードABの光起電流Iab、フォトダイオードBBの光起電流をIbbとすると、次式に示す如くとなる。
Iamp=√{(Ia−Iab)
2+(Ib−Ibb)
2} …(1)
【0028】
従って、各PDの振幅計算を行なうことで、
図4(C)に示す如く、ラテラルオフセット量に従って変化するM1’振幅信号が得られる。
【0029】
ここで、M1用トラック12に比べINC用トラック11のピッチは十分に小さいので、M1ピッチのPDには、ほとんど直流レベルの信号しか入らない。従って、この追加した受光素子アレイの出力から、
図4(C)に示した如く、検出器のスケールに対するラテラル方向の変位を知ることができる。
【0030】
本実施形態においては、追加したM1’用受光素子アレイ22’のピッチを隣りのM1用受光素子アレイ22のピッチと同一としているので、形成が容易である。なお、M1用トラック12とM2用トラック13の配置を入れ替えて、追加した受光素子アレイ22’のピッチをM2用受光素子アレイ23のピッチと同じとしても良い。又、インクリメンタル用トラック11のピッチに比べて十分大きいものであれば、追加したM1’用受光素子アレイ22’のピッチを隣りの受光素子アレイのピッチと変えることもできる。受光素子アレイを構成する素子もPDに限定されない。
【0031】
なお、前記実施形態においては、本発明が、直線型の絶対位置検出器に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、円弧エンコーダやロータリエンコーダにも同様に適用できる。トラックの数も3に限定されず、2又は4以上でも構わない。
【符号の説明】
【0032】
10…スケール
11、12、13…スケールトラック
20…検出器
21、22、23…受光素子アレイ
22’…追加した受光素子アレイ