(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メインエッチング及び前記オーバエッチングの各ステップのうち、前記第1の高周波電力が間欠的に印加されるステップにおいて、供給される前記処理ガスには、更に塩素Cl2,フルオロメタンCH3F又はフルオロホルムCHF3のいずれか1つが含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。また、圧力値については、1Torrを133.322Paとして換算可能である。
【0011】
[スペーサダブルパターニング法によるエッチング1]
まず、本発明の一実施形態に係るスペーサダブルパターニング法によるエッチング1について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係るスペーサダブルパターニング法によるエッチング工程を示した図である。
図2は、一実施形態に係るスペーサダブルパターニング法によるエッチング処理を示したフローチャートである。
【0012】
一実施形態に係るスペーサダブルパターニング法によるエッチングの被エッチング膜は、ポリシリコン膜である。
図1(a)には、半導体ウエハW(以下、単にウエハWという。)上にポリシリコン膜101が形成されている。ポリシリコン膜(Poly−Si)101上には、ラインパターンが形成されたシリコン酸化膜(SiO
2)102が形成されている。なお、シリコン酸化膜102は、シリコン含有酸化膜(SiOx)のマスクの一例である。
【0013】
また、以下に説明するメインエッチング(ME:Main Etching)工程及びオーバエッチング(OE:Over Etching)工程の前には、ブレークスルー(BT)工程が実行され、ポリシリコン膜101上に形成された自然酸化膜が除去されている。ブレークスルー工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
<ブレークスルー(BT)工程:プロセス条件>
圧力 10mTorr
高周波電力 HF(プラズマ励起用)/LF(バイアス用) 250/100W
ガス種/ガス流量 四フッ化メタンCF
4=100sccm
以上のブレークスルー工程後、
図2のステップS10に示したように、ウエハW上にシリコン酸化膜103が成膜される。
【0014】
ステップS10の成膜の結果、
図1(b)に示したように、ポリシリコン膜101及びシリコン酸化膜102上にシリコン酸化膜103が形成される。
【0015】
次に、
図2のステップS12に示したように、シリコン酸化膜102、103がエッチングされる。このエッチング工程では、シリコン酸化膜102と、シリコン酸化膜102の側壁部以外にあるシリコン酸化膜103とが除去され、
図1(c)に示したように、スペーサとなるシリコン酸化膜103が残存する。シリコン酸化膜103は、ラインパターンのマスクとして機能する。このようにして、スペーサダブルパターニング法で形成されるシリコン酸化膜103の先端は、カニ爪のように傾斜した形状103aを有する。
【0016】
次に、
図2のステップS14に示したように、ポリシリコン膜101のメインエッチング(ME)が行われ、その後、ステップS16に示したように、ポリシリコン膜101のオーバエッチング(OE)が行われる。メインエッチング工程及びオーバエッチング工程におけるプロセス条件は以下の通りである。
<メインエッチング(ME)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/100W
ガス種/ガス流量 臭化水素HBr/フルオロホルムCHF
3/酸素O
2=360/11/3sccm
<オーバエッチング(OE)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/100W
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2=360/11/3sccm
以上に説明したスペーサダブルパターニング法によれば、
図1(d)に示したように、ポリシリコン膜101が、シリコン酸化膜103のラインパターンにエッチングされる。ポリシリコン膜101のパターンは、シリコン酸化膜102のパターンに対して1/2に微細化されたパターンとなる。
【0017】
以上に説明したように、スペーサダブルパターニング法で形成されるシリコン酸化膜103の先端は、カニ爪の形状103aに傾斜している。このため、スペーサダブルパターニング法で形成されるマスクは、パターンの先端がフラットな通常のマスクよりもマスクの先端部まで消耗しないようにマスク選択比を通常のマスクよりも大きくする必要がある。
【0018】
[スペーサダブルパターニング法によるエッチング2]
そこで、次に説明するスペーサダブルパターニング法によるエッチング2では、マスクの選択比を改善するために、ポリシリコン膜101をオーバエッチングする際の各種ガスの比率を変えた。エッチング2におけるメインエッチング工程及びオーバエッチング工程でのプロセス条件は以下の通りである。
<メインエッチング(ME)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/100W
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2=360/11/3sccm
<オーバエッチング(OE)工程:プロセス条件>
(条件1)メインエッチングと同じプロセス条件である。
(条件2)メインエッチングと比べて、ガス比率のみが次のように異なるプロセス条件である。
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2=180/0/3sccm
(条件3)メインエッチングと比べて、高周波電力及びガス比率が次のように異なるプロセス条件である。
高周波電力 HF/LF 400/50W
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2=180/11/5sccm
以上のプロセス条件(条件1,2,3)の下でエッチングを行った結果を
図3に示す。
図3では、左から順にメインエッチング工程後の中央部の回路パターン(DRAMのメモリセル)のSEM画像、オーバエッチング工程後の中央部の回路パターン(条件1,条件2,条件3)のSEM画像が示されている。
【0019】
メインエッチング工程後のシリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、26.0nmであった。これに対して、メインエッチング工程と同じプロセス条件でオーバエッチング工程を行った条件1のSEM画像(左から2番目)を見ると、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)が、17.1nmであった。前述の通り、シリコン酸化膜103の先端はカニ爪に傾斜した形状103aであるため、先端部からのシリコン酸化膜103の高さは、20nm以上にする必要がある。よって、メインエッチング工程と同じプロセス条件でオーバエッチング工程を行うと、マスクの残量が足りなくなることがわかる。
【0020】
次に、条件2のプロセス条件でオーバエッチング工程を行った結果のSEM画像(左から3番目)を見ると、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)が、19.5nmになり、マスクの選択比が向上したことがわかる。
【0021】
更に、条件3のプロセス条件でオーバエッチング工程を行った結果のSEM画像(最右)を見ると、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)が、22.6nmになり、マスクの選択比が更に向上したことがわかる。
【0022】
以上の結果から、マスクの選択比の向上には、臭化水素HBr及び酸素O
2が寄与していること、及び臭化水素 HBrに対する酸素O
2の比率を上げると反応生成物の堆積が増加し、マスクの選択比が上がることが分かった。更に、バイアス用(LF)の高周波電力を下げると、イオンの叩き込みが低下するため、マスクの選択比が上がることが分かった。
【0023】
ところが、条件2、3では、マスクのクロージング(マスクの開口の閉塞)が発生した。このように堆積性のガスの比率を上げて処理ガスを供給すると、マスクの側壁にも反応生成物が堆積し、マスクのクロージングの原因となる。つまり、マスクの選択比を高めることと、マスクのクロージングを防止することとは、トレードオフの関係にある。
【0024】
以下では、マスクの選択比を高め、かつ、マスクのクロージングを防止して被エッチング膜のエッチング形状を良好にすることが可能なエッチング方法の一実施形態について、第1及び第2実施形態の順に説明する。
<第1実施形態>
[エッチング方法]
第1実施形態に係るエッチング方法においても、
図1及び
図2に示したスペーサダブルパターニング法によるエッチングが採用される。加えて、本実施形態に係るエッチング方法では、高周波電力(HF:プラズマ励起用)をメインエッチング工程及びオーバエッチング工程において間欠的、すなわちパルス状に印加する。
【0025】
第1実施形態に係るエッチング方法は、上部電極と下部電極との間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる容量結合型プラズマエッチング装置を用いて実施された。
図4に一実施形態に係る容量結合型プラズマエッチング装置1を模式的に示す。容量結合型プラズマエッチング装置1に設けられた第1の高周波電源15は、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程において100MHzの高周波電力(HF:第1の高周波電力に相当)をチャンバC(処理室)内の載置台2に間欠的に印加する。載置台2は、下部電極としても機能する。
【0026】
図4に示したように、高周波電力(HF)が間欠的に印加される場合、高周波電力(HF)が印加されている時間をTonとし、印加されていない時間をToffとする。高周波電力(HF)が印加されている時間Tonには、1/(Ton+Toff)の周波数のパルス状の高周波電力(HF)が下部電極に印加される。1/(Ton+Toff)の周波数は、5kHz〜90kHzである。
【0027】
デューティー比は、印加されている時間Ton及び印加されていない時間Toffの総時間に対する印加されている時間Tonの比率、すなわち、Ton/(Ton+Toff)で示される。デューティー比は、10%〜90%である。
【0028】
なお、高周波電力(HF)は、下部電極に印加されてもよいし、上部電極に印加されてもよい。第2の高周波電源26は、13.4MHzの高周波電力(LF:第2の高周波電力に相当)を下部電極に連続波として印加する。
【0029】
第1実施形態に係るエッチング方法で行われるブレークスルー工程、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程での各プロセス条件は以下の通りである。
<ブレークスルー(BT)工程:プロセス条件>
圧力 10mTorr
高周波電力 HF/LF 250/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 CF
4=100sccm
<メインエッチング(ME)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 800/100W
HF 間欠的に印加、周波数 50kHz、デューティー比 50%
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2(+O
2添加)=360/11/3(3)sccm
<オーバエッチング(OE)工程:プロセス条件>
メインエッチング工程のプロセス条件と同じである。
【0030】
一方、比較例1のエッチング方法では、高周波電力(HF)を連続して印加する。その場合のプロセス条件は以下の通りである。なお、比較例1のプロセス条件は、本実施形態に係るエッチング方法とほぼ同一のプロセス条件になるように高周波のパワー等が設定されている。
<ブレークスルー(BT)工程:比較例1のプロセス条件>
圧力 10mTorr
高周波電力 HF/LF 250/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 CF
4=100sccm
<メインエッチング(ME)工程:比較例1のプロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/CHF
3/O
2=360/11/3sccm
<オーバエッチング(OE)工程:比較例1のプロセス条件>
メインエッチング工程のプロセス条件と同じである。
(エッチング結果)
第1実施形態に係るエッチング方法と、比較例1に係るエッチング方法とを用いたスペーサダブルパターニング法によるポリシリコン膜101のエッチングの結果を
図5に示す。
図5の左側の列は、比較例1に係るエッチング方法を使用した場合、つまり、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程において高周波電力(HF)を連続して印加した場合の結果である。
図5の右側の列は、第1実施形態に係るエッチング方法を使用した場合、つまり、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程において高周波電力(HF)を間欠的に印加した場合の結果である。
【0031】
図5には、エッチング後のDRAMのメモリの中央部の回路パターン(Cell)のSEM画像及び周辺部の回路パターン(Peri)のSEM画像が示されている。
【0032】
図5の右枠Aの内部に示したように、DRAMのメモリは、中央部の回路パターン(Cell)と周辺部の回路パターン(Peri)の形状が異なる。中央部の回路パターンは、かに爪のように傾斜した形状103aのシリコン酸化膜103をマスクとしてポリシリコン膜101がエッチングされることで形成される。ここでは、シリコン酸化膜103の先端部のかに爪の形状103aの内側の間隔(シリコン酸化膜103の先端の傾斜の最も高い部分の間隔)をインナーCD(Inner)で示す。また、かに爪の形状103aの外側の間隔(先端の傾斜の最も低い部分の間隔)をアウターCD(Outer)で示す。また、シリコン酸化膜103の底部の幅をライン(Line)で示す。
【0033】
中央部の回路パターン(Cell)の「Post Etch」のSEM画像は、オーバエッチング工程後のシリコン酸化膜103の残量(R_Ox)を示す。これによれば、比較例1では、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、17.7nmであった。上記プロセス条件下では、目標とするシリコン酸化膜103の残量は20nm以上である。比較例1では、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、20nmよりも小さい値であり、マスクの選択比が足りないことがわかる。
【0034】
これに対して、メインエッチング工程とオーバエッチング工程にて高周波電力(HF)を間欠的に印加した本実施形態では、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、24.8nmであった。よって、第1実施形態では、目標とする残量20nmを上回る十分なマスクの選択比が得られたことがわかる。なお、ここでは、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、シリコン酸化膜103の底部からかに爪に傾斜された形状103aの最も高い部分までの高さである。
【0035】
中央部の回路パターン(Cell)の「Post DHF」のSEM画像は、フッ酸洗浄によりオーバエッチング工程後のシリコン酸化膜103(マスク)を除去した後の画像であり、ウエハWのポリシリコン膜101の形状だけを示す。これによれば、比較例1では、ポリシリコン膜101のライン(Line)、インナー(Inner)、アウター(Outer)のそれぞれは、21,9nm、13.3nm、13.0nmであった。これに対して、第1実施形態では、ポリシリコン膜101のライン(Line)、インナー(Inner)、アウター(Outer)のそれぞれは、22.3nm、12.8nm、12.8nmであった。
【0036】
この結果から、比較例1と第1実施形態のエッチング結果では、ライン、インナー及びアウターのいずれの値もほとんど変化はないことがわかる。つまり、両者ではエッチング形状はほとんど変わっていない。以上から、第1実施形態に係るエッチング方法によれば、エッチング形状が良好であって、かつ、マスクの選択比を向上させることができる。
【0037】
また、周辺部の回路パターン(Peri)について、比較例1と第1実施形態とのSEM画像を比較すると、比較例1では、エッチング形状のアングル(Angle)が76.4°であった。これに対して、第1実施形態では、エッチング形状のアングル(Angle)は81.4°であった。よって、第1実施形態の方が比較例1よりもエッチング側壁が垂直に近くなり、エッチング形状が良好であることがわかる。
【0038】
第1実施形態に係るエッチング方法では、高周波電力(HF)を間欠的に印加する場合に得られる以下の1〜3の効果により、マスクの選択比が高く、かつ、マスクのクロージングを防止しながらエッチング形状が良好である結果が得られると考えられる。
1.反応生成物を排気する効果
高周波電力(HF)が印加されている時間(Ton)には、プラズマの電子温度が上がるため、ガスの電離及び解離が促進されてプラズマの密度が高くなる。これにより、エッチングは促進され、ポリシリコン膜103のエッチング面には反応生成物が堆積する。これに対して、高周波電力(HF)が印加されていない時間(Toff)には、プラズマの電子温度が下がるため、プラズマ中のラジカルを所定の状態にコントロールすることができる。これにより、高周波電力(HF)が印加されていない時間(Toff)には、ラジカルの作用によりポリシリコン膜103のエッチング面に堆積された反応生成物を排気することができる。
2.チャージングをキャンセルする効果
エッチングが進行し、アスペクト比(AR:Aspect Ratio)が高くなるにつれて電子の多くは、ポリシリコン膜103のエッチングされた側壁に衝突し、底部まで到着しない可能性が高まる。これに対して、イオンの多くは、ポリシリコン膜103のエッチングされたパターンにほぼ垂直に入射し、その底部まで到着する。このため、ポリシリコン膜103のエッチングされたパターンの底部には正電荷が溜まる。このようにエッチングパターンの底部がチャージアップされた状態では、次に入射したイオンは、エッチングパターンの底部で反発し、跳ね返され、ポリシリコン膜103の側壁に衝突してノッチ等の形状異常を引き起こす。これが、チャージングダメージである。これに対して、高周波電力(HF)が印加されていない時間(Toff)には、イオンシースが消滅し、下部電極に印加されている高周波電力(LF:バイアス用)により、ポリシリコン膜103のエッチングパターンの底部に負イオンや電子が引き込まれ、その底部のチャージングをキャンセルすることができる。
3.プラズマの電子温度を下げ、ガスの解離性を制御する効果
高周波電力(HF)を連続して印加し、プラズマを生成し続けるとプラズマの電子温度が上昇する。これに対して、高周波電力(HF)を間欠的に印加すると、高周波電力(HF)が印加されていない時間(Toff)に、プラズマがリフレッシュされ、プラズマの密度が下がる。つまり、高周波電力(HF)が印加されていない時間(Toff)には、プラズマの電子温度が低下し、例えば、プラズマ中のラジカルを所定の状態にコントロールする等、ガスの解離性を制御することができる。
【0039】
なお、高周波電力(HF)を下部電極に間欠的に印加した場合だけでなく、上部電極に間欠的に印加した場合にも上記1〜3の効果が得られる。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態に係るエッチング方法によれば、上記効果によって、シリコン酸化膜101のマスクの選択比を向上させながら、マスクのクロージングを防止し、ポリシリコン膜103のエッチング形状を良好にすることができる。つまりマスクの選択比、マスクのクロージング及びポリシリコン膜101のエッチング形状という3つの要因についてのトレードオフを生じさせずにマスクの選択比の改善を図ることができる。
【0041】
本実施形態に係るエッチング方法において、処理ガスに含まれる臭化水素HBr及び酸素O
2の総流量に対する酸素O
2の流量の比率(=O
2/(HBr+O
2))は、0.3%〜5%が好ましい。マスクの選択比の向上には、臭化水素HBr及び酸素O
2が寄与している。また、臭化水素HBrに対する酸素O
2の比率を上げると反応生成物の堆積が増加し、マスクの選択比が上がる。したがって、処理ガスには、臭化水素HBrだけでなく酸素O
2が含まれる必要があり、前記比率は0.3%以上が好ましい。一方、臭化水素HBr及び酸素O
2の総流量に対する酸素O
2の流量の比率が高い方がマスクの選択比には有利であるが、酸素O
2の流量比率が高すぎるとマスクのクロージングが発生する。よって、マスクのクロージングが発生しないように、前記比率は5%以下が好ましい。
<第2実施形態>
[エッチング方法]
第2実施形態に係るエッチング方法においても、
図1及び
図2に示したスペーサダブルパターニング法によるエッチングが採用される。加えて、本実施形態では、
図4に示した第1の高周波電源15は、オーバエッチング工程において100MHzの高周波電力(HF)を下部電極に間欠的に印加し、メインエッチング工程では100MHzの高周波電力(HF)を連続して印加する。
【0042】
なお、第1実施形態と同様、高周波電力(HF)は、下部電極に印加されてもよいし、上部電極に印加されてもよい。また、第2の高周波電源26は、13.4MHzの高周波電力(LF)を下部電極に連続的に印加する。
【0043】
オーバエッチング工程のみ高周波電力(HF)を間欠的に印加する第2実施形態に係るエッチング方法で行われるブレークスルー工程、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程での各プロセス条件は以下の通りである。
<ブレークスルー(BT)工程:プロセス条件>
圧力 10mTorr
高周波電力 HF/LF 250/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 CF
4=100sccm
<メインエッチング(ME)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/150W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/O
2=220/5sccm
<オーバエッチング(OE)工程:プロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 1200/100W
HF 間欠的に印加、周波数 50kHz、デューティー比 50%
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/Cl
2/O
2=220/50/3sccm
一方、比較例2のエッチング方法では、高周波電力(HF)を連続して印加する。その場合のプロセス条件は以下の通りである。なお、比較例2のプロセス条件は、本実施形態に係るエッチング方法とほぼ同一のプロセス条件になるように高周波のパワー等が設定されている。
<ブレークスルー(BT)工程:比較例2のプロセス条件>
圧力 10mTorr
高周波電力 HF/LF 250/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 CF
4=100sccm
<メインエッチング(ME)工程:比較例2のプロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/150W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/(+O
2添加)=270/(5)sccm
<オーバエッチング(OE)工程:比較例2のプロセス条件>
圧力 15mTorr
高周波電力 HF/LF 400/100W
HF 連続して印加
LF 連続して印加
ガス種/ガス流量 HBr/Cl
2/O
2=220/50/3sccm
(エッチング結果)
本実施形態に係るエッチング方法と、比較例2に係るエッチング方法とを用いたスペーサダブルパターニング法によるポリシリコン膜101のエッチングの結果を
図6に示す。
図6の左側の列は、比較例2の場合、つまり、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程において高周波電力(HF)を連続して印加した場合の結果である。
図6の右側の列は、第2実施形態に係るエッチング方法を使用した場合、つまり、メインエッチング工程において高周波電力(HF)を連続して印加し、オーバエッチング工程において高周波電力(HF)を間欠的に印加した場合の結果である。
【0044】
図6には、オーバエッチング後のDRAMのメモリの中央部の回路パターン(Cell)のSEM画像が示されている。中央部の回路パターン(Cell)の「Post DHF」のSEM画像は、オーバエッチング工程後のシリコン酸化膜103(マスク)を除去した後のウエハWのポリシリコン膜101の形状だけを示す。これによれば、比較例2及び第2実施形態のエッチング結果では、エッチング形状はほとんど変わっていない。
【0045】
中央部の回路パターン(Cell)の「Post Etch」のSEM画像は、オーバエッチング工程後のシリコン酸化膜103の残量を示す。これによれば、比較例2では、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、32.2nmであった。なお、第1実施形態とプロセス条件が異なるため、目標とするシリコン酸化膜103の残量は第1実施形態の20nmとは異なる。
【0046】
これに対して、オーバエッチング工程にて高周波電力(HF)を間欠的に印加した第2実施形態では、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)は、44.8nmであり、マスクの選択比が比較例2よりも向上したことがわかる。
【0047】
以上から、第2実施形態に係るエッチング方法においても、マスクの選択比を高め、かつ、マスクのクロージングを防止してポリシリコン膜のエッチング形状を良好にすることができることがわかった。特に、第2実施形態に係るエッチング方法では、メインエッチング工程では高周波電力(HF)を連続して印加する。このため、メインエッチング工程においてエッチングレートを高め、かつポリシリコン膜103をより垂直にエッチングすることができる。これにより、エッチング工程全体のスループットを高めながら、高周波電力(HF)を間欠的に印加するオーバエッチング工程にてマスクの選択比を高め、かつ、マスクのクロージングを防止することができる。
【0048】
なお、第1及び第2実施形態では、300mmのウエハWに対してオーバエッチング工程後、その中央から外側に向けて径方向にセンタ、ミドル、エッジ、エクストラエッジ(最外周)と分割した際の各エリアのシリコン酸化膜103の残量をそれぞれ計測する。その4つの計測値の平均値が、シリコン酸化膜103の残量(R_Ox)として示されている。
【0049】
また、第1及び第2実施形態で示したライン(Line)、インナー(Inner)、アウター(Outer)の数値は、選択された6本のシリコン酸化膜103のラインパターンの計測値の平均値を算出したものである。
【0050】
[エッチング装置の全体構成]
最後に、上記各実施形態係るエッチング方法を用いてメインエッチング工程及びオーバエッチング工程を行うエッチング装置の一例について、
図7及び
図8を参照しながら説明する。
図7は、一実施形態に係る容量結合型プラズマエッチング装置の全体構成を示した縦断面図である。
図8は、一実施形態に係るダイポールリング磁石を示した横断面図である。
【0051】
一実施形態に係る容量結合型プラズマエッチング装置1は、マグネトロン反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)型のプラズマエッチング装置として構成されている。プラズマエッチング装置1は、例えばアルミニウム又はステンレス鋼等の金属よりなるチャンバCを有している。
【0052】
チャンバCの内部には、例えばウエハWを載置するための載置台2が設けられている。載置台2は、例えばアルミニウムからなり、絶縁部材3を介して導体よりなる支持部4に支持されている。載置台2の上面の周囲には、例えばシリコンや石英よりなるフォーカスリング5が配置されている。載置台2の上面には、ウエハWを静電吸着力により保持するための静電チャック6が設けられている。載置台2及び支持部4は、ボールネジ7を含む昇降機構により昇降可能となっており、支持部4の下方に設けられる昇降駆動部(図示せず)は、ステンレス鋼よりなるベローズ8で覆われている。ベローズ8の外側にはベローズカバー9が設けられている。フォーカスリング5の下面はバッフル板10に接続されており、フォーカスリング5は、バッフル板10、支持部4及びベローズ8を介してチャンバCと導通している。チャンバCは接地されている。
【0053】
チャンバCは、上部チャンバ1aと、上部チャンバ1aより径が大きい下部チャンバ1bとを有する。下部チャンバ1bの側壁には排気口11が形成されている。排気口11には排気管を介して排気装置12が接続されている。排気装置12の真空ポンプを作動させることにより、チャンバC内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。下部チャンバ1bの側壁には、また、ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ13が取り付けられている。
【0054】
載置台2には、整合器14を介してプラズマ生成および反応性イオンエッチング(RIE)用の第1の高周波電源15が電気的に接続されている。第1の高周波電源15は、プラズマ生成用の高周波電力(HF)として、例えば100MHzの周波数を有する高周波電力を載置台2に供給する。
【0055】
載置台2には、また、整合器25を介して第2の高周波電源26が電気的に接続されている。第2の高周波電源26は、バイアス用の高周波電力(LF)として、例えば13.4MHzの周波数を有する高周波電力を載置台2に重畳的に供給する。
【0056】
チャンバCの天井部には、後述するシャワーヘッド20が接地電位に保持された上部電極として設けられている。従って、第1の高周波電源15からの高周波電力(HF)は、載置台2とシャワーヘッド20との間に供給される。
【0057】
静電チャック6は、導電膜よりなる電極6aを一対の絶縁シート6bの間に挟み込んだものである。電極6aには直流電圧源16が電気的に接続されている。ウエハWは、直流電圧源16からの直流電圧による静電引力によって、静電チャック6に静電吸着される。
【0058】
載置台2の内部には、例えば円周方向に延在する冷媒室17が設けられている。冷媒室17には、外付けのチラーユニット(図示せず)より配管17a、17bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。載置台2上のウエハWは、循環する冷媒の温度によって所定の処理温度に制御される。
【0059】
更に、ガス導入機構18からの伝熱ガス、たとえばHeガスが、ガス供給ライン19を介して静電チャック6の上面とウエハWの裏面との間に供給される。ガス導入機構18は、エッチング加工のウエハ面内均一性を高めるため、ウエハ中心部とウエハ周縁部とでガス圧つまり背圧を独立的に制御できるようになっている。
【0060】
天井部のシャワーヘッド20は、載置台2の上面と平行に対向する下面に多数のガス吐出口22を有している。ガス吐出面の内側にはバッファ室21が設けられている。バッファ室21のガス導入口20aには、ガス供給配管23aを介してガス供給源23が接続されている。ガス供給源23からは、処理ガスが供給される。
【0061】
上部チャンバ1aの周囲には、環状または同心状に延在するダイポールリング磁石24が配置されている。ダイポールリング磁石24は、
図8の横断面図に示すように、リング状の磁性体からなるケーシング32内に、複数個例えば16個の異方性セグメント柱状磁石31を周方向に一定間隔で配列してなる。
図8において、各異方性セグメント柱状磁石31の中に示す矢印は磁化の方向を示しており、図示のように各異方性セグメント柱状磁石31の磁化の方向を周方向に沿って少しずつずらすことで、全体として一方向に向う一様な水平磁界Bを形成することができる。
【0062】
従って、載置台2とシャワーヘッド20との間の空間には、第1の高周波電源15からの高周波電力により鉛直方向にRF電界が形成されるとともに、ダイポールリング磁石24により水平方向に磁界が形成される。これらの直交電磁界を用いるマグネトロン放電により、載置台2の表面近傍には高密度のプラズマが生成される。
【0063】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部40によって、統括的に制御される。制御部40は、CPU41(Central Processing Unit),ROM42(Read Only Memory)、RAM43(Random Access Memory)を有する。CPU41は、RAM43等の記憶領域に格納された各種レシピに従ってプラズマ処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する装置の制御情報であるプロセス時間、処理室内温度(上部電極温度、処理室の側壁温度、ESC温度など)、圧力(ガスの排気)、高周波電力や電圧、処理ガスの流量、伝熱ガスの流量などが記載されている。
【0064】
このように構成されたプラズマエッチング装置1において、プラズマエッチングを行うには、先ずウエハWが、ゲートバルブ13からチャンバC内に搬入され、載置台2の上に載置される。
図1(c)に示されるように、搬入されるウエハWは、ウエハW直上のポリシリコン膜101に、スペーサダブルパターニング法によりパターニングされたシリコン酸化膜103が形成されている状態である。
【0065】
次いで、ウエハWが載置された載置台2を図示の高さ位置まで上昇させ、排気装置12の真空ポンプにより排気口11を介してチャンバC内を排気する。そして、ガス供給源23より処理ガスを所定の流量でチャンバC内に導入し、チャンバC内の圧力を設定値にする。更に、第1の高周波電源15及び第2の高周波電源26から所定の高周波電力(HF,LF)が載置台2に印加される。また、直流電源16より直流電圧を静電チャック6の電極6aに印加し、ウエハWを載置台2に固定する。シャワーヘッド20から導入された処理ガスはマグネトロン放電により電離又は解離してプラズマが生成される。
【0066】
上記第1及び第2実施形態では、ガス供給源23から臭化水素HBrと酸素O
2とを含む処理ガスが供給される。そして、処理ガスから生成されたプラズマにより、ウエハWに形成されたポリシリコン膜101が、スペーサダブルパターニング法によりパターニングされたシリコン酸化膜103のマスクパターンにエッチングされる。
【0067】
また、第1及び第2実施形態では、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程の各ステップのうち、第1の高周波電力が間欠的に印加されるステップにおいて、臭化水素HBrと酸素O
2とを含む処処理ガスには、更に塩素Cl
2,フルオロメタンCH
3F、フルオロホルムCHF
3のいずれか1つが含まれてもよい。
【0068】
また、第1及び第2実施形態では、メインエッチング工程及びオーバエッチング工程の各ステップのうち、第1の高周波電力が間欠的に印加されるステップにおいて、第1の高周波電源15のパワーは、400W〜2400Wの範囲のいずれかに制御されてもよい。
【0069】
なお、上部電極として機能するシャワーヘッド20は、第1の電極に相当する。また、載置台2は、被処理体を載置する第2の電極に相当する。また、第1又は第2の電極のいずれかに印加する高周波電力(HF)は、第1の高周波電力に相当する。第2の電極に印加する第1の高周波電力より低い高周波電力(LF)は、第2の高周波電力に相当する。
【0070】
以上、エッチング方法を第1及び第2実施形態により説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明に係るエッチング方法の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。また、上記各実施形態を矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0071】
例えば、スペーサとなるシリコン酸化膜103の成膜は、例えば、ラジアルラインスロットアンテナを用いたCVD装置、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)装置、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance Plasma)装置等を用いることができる。
【0072】
また、シリコン酸化膜102、103のエッチング、及びポリシリコン膜101のメインエッチング(ME)及びオーバエッチング(OE)は、
図7の容量結合型プラズマエッチング装置1の他、ラジアルラインスロットアンテナを用いたプラズマ装置、誘導結合型プラズマ装置、ヘリコン波励起型プラズマ装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマECR装置等を用いることができる。
【0073】
本発明において処理を施される被処理体は、300mmのウエハWに限られず、450mmのウエハや、フラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display)用、EL素子又は太陽電池用の基板にも適用できる。