(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップb)の間、前記第1のマスクパターン領域(181、3181)の画像のみが前記第2の露光パターン領域(302、3302)の上に重畳される、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィまたは単純にリソグラフィとも呼ばれる)は、集積回路、液晶ディスプレイおよび他の微細構造デバイスを製造するための技術である。マイクロリソグラフィのプロセスは、エッチングのプロセスと共に、基板、例えばシリコンウェーハ上に形成された薄膜スタック中にフィーチャをパターン形成するために使用される。製造の各層において、最初に、遠紫外(DUV:Deep Ultraviolet)光などの放射線に感応性のある材料であるフォトレジストでウェーハがコーティングされる。次に、その上にフォトレジストを有するウェーハが投影露光装置内で投影光に曝露される。この装置は、パターンを含むマスクをフォトレジスト上に投影し、したがってフォトレジストは、マスクパターンによって決定される特定の位置においてのみ露光される。露光が終了すると、フォトレジストが現像され、マスクパターンに対応する画像が生成される。次に、エッチングプロセスによってウェーハ上の薄膜スタック中にパターンが転写される。最後にフォトレジストが除去される。異なるマスクを使用してこのプロセスが繰り返され、それにより多層微細構造コンポーネントが得られる。
【0003】
投影露光装置は、通常、マスクを照明するための照明システム、マスクを位置合わせするためのマスクステージ、投影対物レンズ、およびフォトレジストがコーティングされたウェーハを位置合わせするためのウェーハアライメントステージを含む。照明システムは、例えば矩形または湾曲したスリットの形を有することができるマスク上のフィールドを照明する。
現在の投影露光装置では、2つの異なるタイプの装置を区別することができる。1つのタイプでは、マスクパターン全体を1回でターゲット部分に露光することによってウェーハ上の各ターゲット部分が照射される。このような装置は、一般にウェーハステッパと呼ばれている。一般にステップアンドスキャン装置またはスキャナと呼ばれている他のタイプの装置では、マスクパターンを投影ビームの下でスキャン方向に沿って連続的にスキャンし、その一方でそれに同期して基板をこの方向に平行または反平行に移動させることによって各ターゲット部分が照射される。ウェーハの速度とマスクの速度の比率は、投影対物レンズの倍率に等しく、通常は1より小さく、例えば1:4である。
【0004】
「マスク」(またはレチクル)という用語は、パターニング手段として広義に解釈すべきことを理解されたい。広く使用されているマスクは、透過型パターンまたは反射型パターンを含み、また、例えばバイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフト、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトのマスクであっても、あるいは様々なハイブリッドマスクタイプであってもよい。しかしながら、能動マスク、例えばプログラマブルミラーアレイとして実現されるマスクもまた存在する。また、プログラマブルLCDアレイを能動マスクとして使用することも可能である。
微細構造デバイスを製造するための技術の進歩に伴い、照明システムに対する要求もこれまでになく増加している。理想的には、照明システムは、明瞭な放射照度および角分布を有する投影光でマスク上の被照明フィールドの各点を照明する。角分布という用語は、マスク平面内の特定の点に向かって収束する光束の総光エネルギーが、その光束を構成している光線の様々な方向の間でいかに分布するかを記述している。
マスクに入射する投影光の角分布は、通常、フォトレジスト上に投影されるパターンの種類に合わせて適合される。例えば比較的サイズが大きいフィーチャには、サイズが小さいフィーチャとは異なる角分布が必要となり得る。投影光の最も広く使用されている角分布は、慣用環状双極子照明設定および四極子照明設定と呼ばれる。これらの用語は、照明システムのひとみ平面内における放射照度分布を意味する。環状照明設定の場合、例えば環状領域のみがひとみ平面内で照明される。したがって微小範囲の角度のみが投影光の角分布中に存在し、したがってすべての光線が同じような角度でマスクに斜めに入射する。
【0005】
フォトレジスト上に結像すべきマスクパターンが、構造配向、密度および/またはピッチに関して極めて異なっているように見える部分を含む場合、通常、最適画像品質ですべてのマスクパターン領域を結像するのに完全に適した特定の角光分布は存在しない。例えばX方向に沿って延びるフィーチャを含む第1のマスクパターン領域、および直交するY方向に延びるフィーチャを含む第2のマスクパターン領域が存在する場合、四極子照明設定またはCカッド(C−quad)照明設定は、次善の同じ画像品質ですべてのフィーチャを結像する。これは、各フィーチャの画像形成に寄与しているのは2つの極のみであり、他の2つの極が寄与しているのは背景照明であることによるものであり、コントラストを低下させる。理想的には、X方向に沿って延びるフィーチャは、Y双極子照明設定を使用して排他的に照明されることになり、また、Y方向に沿って延びるフィーチャは、X双極子照明設定を使用して照明されることになる。
【0006】
このような改良された照明、したがって改良された結像は、パターンが1回の露光でではなく、異なるフォトマスクを使用して2回(または3回以上)の個別の露光で感光性表面に転写される場合に達成することができる。第1のマスクは、X方向に沿って延びるすべてのフィーチャを含み、Y双極子照明設定を使用して照明される。第2のマスクは、Y方向に沿って延びるフィーチャを含み、X双極子照明設定を使用して、後続の露光で照明される。複雑なパターンの結像を2つの個別の露光の間で分散するこの手法は、一般に「二重露光」と呼ばれる。この手法が3つ以上の後続の露光に拡張されると、それは多重露光と呼ばれる。
マスクは速やかに交換することができるため、照明システムも、角光分布をマスクレベルでやはり速やかに変更することができなければならない。
【0007】
当分野では、マスク平面における投影光の角分布を修正し、それにより所望の照明設定を達成するための異なる手段が知られている。最も単純なケースでは、1つまたは複数の開口を備えた絞り(ダイヤフラム)が照明システムのひとみ平面内に配置される。ひとみ平面内の位置は、マスク平面などのフーリエ関連フィールド平面内の角度に変換するため、ひとみ平面内の開口のサイズ、形状および位置は、マスク平面レベルにおける角光分布を決定する。しかしながら照明設定を任意に変更するためには絞りの交換が必要である。絞りの交換には、サイズ、形状または位置がわずかに異なる開口を有する極めて多数の絞りが必要になるため、これは照明設定の微調整を困難にしている。さらに、絞りを不可避的に使用することによって光が損なわれ、装置のスループットを低下させる。
【0008】
したがって広く使用されている多くの照明システムは、ひとみ平面の照明を少なくともある程度まで連続的に変化させることができる調整可能な要素を備える。
最も一般的な手法は、ひとみ平面内の放射照度分布を画定する回折型光学素子を使用することである。回折型光学素子は、ほとんどすべての任意のファーフィールド放射照度分布を生成することができるように製造することができる。このような回折型光学素子は、コンピュータ生成ホログラム(CGH)としてしばしば実現される。ひとみ平面内の放射照度分布を変更することができるようにするために、複数の異なる回折型光学素子を交換ホルダ内に収納することができ、したがってこれらの回折型光学素子のうちの1つを投影光の光路中に速やかに挿入することができる。このような交換ホルダは、例えば回転軸周りで回転させることができる線形交換ホルダであっても、あるいはタレットホルダであってもよい。
回折型光学素子によって画定されるひとみ平面内の放射照度分布は、補足的に、ズーム光学系および一対のアキシコン素子の補助の下で修正することができる。ズーム光学系のレンズおよび/またはアキシコン素子を光学軸に沿って変位させることにより、放射照度分布をある限度内で連続的に修正することができる。
【0009】
しかしながら回折型光学素子の交換ならびにレンズおよび他の光学素子の光学軸に沿った変位は、比較的遅いプロセスであり、したがって装置のスループットを制限することがある。
照明システムのひとみ平面に異なる放射照度分布を生成するためのより柔軟で、かつ、より迅速な手法は、回折型光学素子の代わりにミラーアレイを使用している。
欧州特許第1262836(A1)号明細書では、ミラーアレイは、1000個を超える顕微鏡的ミラーを備えた微細電気機械システム(MEMS)として実現されている。ミラーの各々は、互いに直交する2つの異なる平面内で傾斜させることができる。したがってこのようなミラーデバイスに入射する放射は、半球の(実質的に)任意の所望の方向に反射させることができる。ミラーアレイとひとみ平面の間に配置された集光レンズが、ミラーによって生成される反射角をひとみ平面内の位置に変換する。この知られている照明システムによれば、複数のスポットを使用してひとみ平面を照明することができ、各スポットは1つの特定の顕微鏡的ミラーに結合され、また、このミラーを傾斜させることによってひとみ平面内全体を自由に移動させることができる。
【0010】
米国特許出願公開第2006/0087634号明細書、米国特許第7061582(B2)号明細書および国際公開第2005/026843号パンフレットによって同様の照明システムが知られている。
国際公開第2010/006687号パンフレットに開示されている照明システムは、角放射照度分布を決定するためだけでなく、マスク平面内の空間放射照度分布を決定するためにミラーアレイを使用している。そのために、ミラーは非常に小さいスポットを生成し、したがって異なる光パターンを光インテグレータの光入口ファセット上に生成することができる。これらの光入口ファセットは、マスク平面と光学的に共役であるため、光入口ファセット上に生成される特定の光パターンがマスク平面に直接結像される。マスク平面内で照明されるフィールドの幾何構造を変更するこの能力を使用することにより、照明システム内における調整可能ブレードの必要性を除去することができる。このようなブレードは、スキャン方向に沿った被照明フィールドを拡大または縮小するために、スキャナタイプの装置で、各スキャニングサイクルの開始時および終了時に使用される。また、所与の実例において、異なる光入口ファセットを異なる光パターンで照明することができ、したがって滑らかなプロファイルを有する空間放射照度分布を生成することができることも記述されている。
【0011】
また、非公開の国際特許出願第PCT/EP2011/000416号明細書は、所与の実例において、スキャンプロセスの間、異なる角光分布をマスク上の異なる部分に生成することができる照明システムを開示している。これも、光インテグレータの光入口ファセット上に異なる光パターンを生成することによって達成される。
【0012】
非公開の国際特許出願第PCT/EP2010/005317号明細書によれば、光インテグレータの近傍に配置される複数の変調器ユニットの補助の下で、異なる角光分布をマスク上の異なる部分に生成することができる。各変調器ユニットは、光インテグレータの単一の光チャネルに結合され、また、光を全く阻止することなく、各光チャネルの空間光分布および/または角光分布を変更可能に再分布する。
国際公開第2006/097135号パンフレットは、例えば光源によって放出されるパルス列の連続するパルスとパルスの間に、マスクレベルにおける角光分布を極めて速やかに変更することができる照明システムを開示している。これは、例えば回転ダイヤフラムによってひとみ平面の特定の部分を交互に遮蔽することによって、ひとみ平面内にLCD透過フィルタを使用することによって、あるいは回折型光学素子内の音響光学効果を使用することによって達成することができる。偏光の状態は、高速で回転する偏光素子の補助の下で、角光分布と同時に変更することができる。
【0013】
米国特許出願公開第2008/0013065号明細書は、やはりマスクレベルにおける角光分布を極めて速やかに変更することができる照明システムを開示している。そのために、照明システムは、それぞれ回折型光学素子、ズーム光学系および一対のアキシコン素子を含む第1および第2のひとみ画定ユニットを備える。投影光は、光インテグレータに入射する前に、適切な光切換えコンポーネントを使用して、第1または第2のひとみ画定ユニットのいずれかを介して案内される。
二重(または一般的には多重)露光が実施される場合、オーバレイ誤差は極めて重大な問題である。オーバレイ誤差という用語は、元々、微細構造デバイス内の隣接するパターン層の位置決めに関係している。互いに積み重ねて配置すべきフィーチャが横方向に変位すると、このオフセットはオーバレイ誤差と呼ばれる。その一方で、このオーバレイ誤差は、二重露光プロセスで構造化された層の中で生じることもあるため、オーバレイ誤差という用語は、単一の層内におけるフィーチャの相対変位を表すためにやはり使用されている。多くの微細構造デバイスは、隣接する層と層の間のオーバレイ誤差よりも単一の層内におけるオーバレイ誤差に対してより敏感である。そのため、二重露光プロセスで生成される単一の層内におけるオーバレイ誤差バジェットは、とりわけ小さいことがしばしばである。厳格すぎる仕様は、製造プロセスの歩留りを激烈に低減させる。そのため、最適角光分布を有する投影光を使用したフィーチャの照明に関連する明らかな利点にもかかわらず、二重露光は、依然としてそれほど広く使用されていない。
【0014】
二重露光プロセスにおけるオーバレイ誤差の重大な原因の1つは、2つの異なるマスクの画像が重畳されることに関連している。次に重大な原因は、オーバレイ誤差バジェットに寄与する2つのマスクのアライメント誤差だけでなく、2つのマスクが製造される場合に避けることができない製造公差である。マスクの製造は極めて精巧なプロセスであり、したがって他のマスクを製造している間、1つのマスクが製造された際に支配的であった条件を完全に再現することは不可能である。言い換えると、仮に第2の露光中におけるアライメント誤差をゼロに低減することができたとしても、2つのマスクが互いに完全に対応しないため、重大なオーバレイ誤差が依然として存在することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、多重露光プロセスで、リソグラフィによって感光性表面にパターンを転写する方法であって、オーバレイ誤差が低減される方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この目的は、
a)第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域を備えたマスクを提供するステップと、
b)マスク上に投影光を導き、それにより第1のマスクパターン領域の画像である第1の露光パターン領域、および第2のマスクパターン領域の画像である第2の露光パターン領域を感光性表面に生成するステップと、
c)第1のマスクパターン領域の画像が第2の露光パターン領域の上に重畳されるよう、同じマスクを使用してステップb)を繰り返すステップと
を含む方法によって達成され、第1のマスクパターン領域を照明する投影光は第1の角光分布を有し、また、第2のマスクパターン領域を照明する投影光は、第1の角光分布とは異なる第2の角光分布を有する。
本発明は、複数の異なるマスクではなく、単一のマスクのみを使用して多重露光プロセスが実施される場合、オーバレイ誤差を著しく小さくすることができるという概念に基づいている。これには、異なるマスクパターン領域が、特定のマスクパターン領域に適合される異なる角光分布を有する投影光で照明されることが必要である。言い換えると、二重露光プロセスに従来から使用されている2つの異なるマスクが単一のマスクに結合され、したがってこの単一のマスクが両方の露光に使用される。この方法によれば、すべてのマスクパターン領域が単一の製造プロセスで製造されるため、オーバレイ誤差に対する1つの重大な寄与、つまり2つのマスクを製造している間の製造公差が除去される。
【0017】
例えば、マスクを製造している間に微小スケールの変化が生じると、2つの異なるマスクは、それらのスケールに対して若干異なることになり、そのため、2つのマスクが二重露光プロセスに使用される場合、不可避的にオーバレイ誤差が生じることになる。本発明によれば、異なるマスクパターン領域は、必然的に同じスケールを有することになり、したがってスケールの変化が単一の層内におけるフィーチャのオーバレイを損なうことはあり得ない。
やはり本発明によれば、最適照明設定を使用して各マスクパターン領域を照明することができる。言い換えると、第1の角光分布は、通常、第1のマスクパターン領域に適合され、また、第2の角光分布は第2のマスクパターン領域に適合される。したがって第1および第2のマスクパターン領域は、実際、従来の二重(または一般的には多重)露光プロセスにおける2つの異なるマスクと同じ方法で設計される。
【0018】
第1および第2の角光分布は、従来の照明設定、環状照明設定および多重極照明設定からなるグループに含まれている照明設定と結合することができる。多重極照明設定は、スキャン方向双極子照明設定、交差スキャン方向双極子照明設定、四極子照明設定、Cカッド照明設定からなるグループに含めることができる。
【0019】
ステップb)の間、第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域に、異なる角光分布を有する投影光を同時に、または連続的に導くことができる、前者の場合、照明システムは、マスク上で照明されるフィールドの異なる部分に異なる角光分布を有する投影光を同時に生成することができなければならないことを暗に意味する。フィールド依存角光分布を生成することができる照明システムは、そういうものとして当分野で知られている。この文脈においては、いずれも上で簡単に説明した非公開国際特許出願第PCT/EP2011/000416号明細書およびPCT/EP2010/005317号明細書が参照されている。
【0020】
ステップb)の間に、異なる角光分布を有する投影光を使用して第1および第2のマスクパターン領域が同時に生成される場合、また、被照明フィールドが第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域上をスキャンするよう、ステップb)の間、マスクをスキャン方向に沿って移動させる場合、第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域は、スキャン方向およびマスク上の法線の両方に対して直交する交差スキャン方向に沿って隣り合わせに配置することができる。
第1のマスクパターン領域の画像を第2の露光パターン領域の上に重畳させるための最も単純な手法は、次に、ステップb)とc)の間に、適切な変位量、例えば交差スキャン方向に沿った被照明フィールドの長さの半分だけ感光性表面を横方向に変位させることである。ウェーハステッパタイプの装置にも同様の考察が適用される。
より複雑な手法は、第2の露光の実施に先立って、マスクをマスク上の法線周りで180°だけ回転させることであろう。それによりステップc)の間、第1のマスクパターン領域の画像を第2の露光パターン領域の上に重畳させることができるだけでなく、それと同時に第2のマスクパターン領域の画像を第1の露光パターン領域の上に重畳させることができる。
ステップb)の間、投影光が最初に第1のマスクパターン領域へ導かれ、引き続いて第2のマスクパターン領域へ導かれる場合、照明システムは、露光プロセスの間、角光分布を極めて速やかに変更することができなければならない。これをすることができる照明システムは、やはり上で簡単に説明した国際公開第2006/097135号パンフレットおよび米国特許出願公開第2008/0013065号明細書によって知られている。
【0021】
また、この手法は、ウェーハステッパを使用して実施することも可能である。その場合、例えば第1および第2の露光パターン領域が交互に配置される第1の行を生成することができる。次に第2の露光が実施され、他のマスクパターン領域の画像が各露光パターン領域の上に重畳される。
被照明フィールドが第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域上をスキャンするよう、ステップb)の間、マスクをスキャン方向に沿って移動させる場合、第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域は、マスク上のスキャン方向に沿って、縦に並べて配置することができる。それによりステップc)の間、第1のマスクパターン領域の画像を第2の露光パターン領域の上に重畳させることができるだけでなく、第2のマスクパターン領域の画像を第1の露光パターン領域の上に重畳させることができる。
【0022】
上で説明した、1つの同じマスクを使用して二重露光を実施する手法は、多重露光に容易に拡張することができる。例えばマスクは、補足的に第3のマスクパターン領域を備えることができ、また、第3のマスクパターン領域の画像は、第1の露光パターン領域および第2の露光パターン領域の上に重畳させることができ、第3のマスクパターン領域を照明する投影光は、第1の角光分布および第2の角光分布とは異なる第3の角光分布を有する。上で説明した実施形態と同様、投影光は、ステップb)の間、第1、第2および第3のマスクパターン領域に同時に、または連続的に導くことができる。
【0023】
同様に、マスクは、補足的に第4のマスクパターン領域を備えることができ、また、第4のマスクパターン領域の画像は、第1の露光パターン領域、第2の露光パターン領域および第3の露光パターン領域の上に重畳させることができ、第4のマスクパターン領域を照明する投影光は、第1の角光分布、第2の角光分布および第3の角光分布とは異なる第4の角光分布を有する。
【0024】
4つのすべてのマスクパターン領域の画像を感光性表面に重畳させるための手法の1つは、ステップb)の間、第1の露光パターン領域の生成と同時に第2の露光パターン領域を感光性表面に生成することを暗に示すことがある。第3のマスクパターン領域の画像である第3の露光パターン領域の生成と同時に、第4のマスクパターン領域の画像である第4の露光パターン領域が感光性表面に生成される。ステップc)の間に、第1の露光パターン領域の上に第3のマスクパターン領域の画像を重畳させ、それにより第1のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域の組合せを生成するのと同時に、第2の露光パターン領域の上に第4のマスクパターン領域の画像が重畳され、それにより第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域の組合せを生成する。他のステップd)で、交互に第1のマスクパターン領域の画像が第2のマスクパターン領域と第4のマスクパターン領域の組合せの上に重畳され、それにより第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域の組合せを生成し、また、第3のマスクパターン領域の画像が第2のマスクパターン領域と第4のマスクパターン領域の組合せの上に重畳され、それにより第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域の組合せを生成する。他のステップd)で、交互に第1のマスクパターン領域の画像が第2のマスクパターン領域、第3のマスクパターン領域および第4のマスクパターン領域の組合せの上に重畳され、それにより第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域の組合せを生成し、また、第3のマスクパターン領域の画像が第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域の組合せの上に重畳され、それにより他の第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域を生成する。
【0025】
本発明による方法は、遠紫外光(DUV)、真空紫外光(VUV:Vacuum Ultraviolet)または極紫外光(EUV:Extreme Ultraviolet)を生成する光源を使用している露光装置に等しく使用することができることに留意されたい。
【0026】
角光分布を極めて速やかに変更することができる照明システムは、本発明によれば、連続投影光パルスの列を放出するように構成される光源を備えることができ、パルス列は、f>1kHzの平均パルス周波数を有する。照明システムは、ひとみ平面と、第1の部分および第2の部分を含む回折型光学素子とをさらに備える。第1の部分は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布をひとみ平面内に生成する。第2の部分は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面内に生成する。回折型光学素子を回転軸周りで回転させるように構成される駆動装置が提供される。回折型光学素子の第1の回転位置では、第1の部分は光パルスによって照明され、また、第1の回転位置とは異なる回折型光学素子の第2の回転位置では、第2の部分は光パルスによって照明される。パルス列の2つの光パルスの間、好ましくはパルス列の5つの連続する光パルスの間、より好ましくは2つの連続する光パルスの間に、第1の回転位置と第2の回転位置の間の変化が生じるように光源を制御するように構成される制御ユニットが提供される。
【0027】
本発明の照明システムは、例えば円板またはリングの形状を有することができる回折型光学素子を回転軸周りで極めて高速で回転させることができる知覚に基づいているが、それにもかかわらず高い角精度を有しており、したがって回折型光学素子の特定の部分を、所望の回転位置に、所定の時間に正確に配置することができる。次に、回折型光学素子の異なる部分を光パルスのビーム経路内に極めて頻繁に配置することができ、したがって単純に光パルスの放出と回折型光学素子の回転を適切に同期させることによって所望の部分を選択することができる。
【0028】
原理的には、スキャンサイクルの間、2つの連続する光パルスの間の時間間隔が常に等しくなるよう、光パルスを完全に規則的に放出することと見なすことが可能である。しかしながら、その場合、照明設定が変化すると回折型光学素子の角速度を変化させることが必要になる。これを達成することは困難であり、とりわけパルス列の2つの連続する光パルスの間でこれを達成することは困難であるため、回折型光学素子の角速度は、本発明によれば一定を維持することが好ましい。したがって制御ユニットは、回折型光学素子が一定の角速度で回転軸の周りを回転している間、特定の光パルスが時間シフトに応じて第1の部分または第2の部分のいずれかを照明するよう、単一のパルス列内における各光パルスの放出時間を少なくとも1/10f、好ましくは1/5f、より好ましくは1/2fの時間シフトだけ修正するように構成される。この方法によれば、回折型光学素子の部分が所望の放射照度分布を生成する光路中に挿入される正にその瞬間に光パルスが回折型光学素子に入射するよう、時間領域における光パルスを特定の量だけ単純にシフトさせることにより、ひとみ平面内における所望の放射照度分布を選択することができる。
回転している回折型光学素子を照明する投影光ビームの典型的な寸法、およびf>1kHzのパルス周波数を仮定することにより、駆動装置は、回折型光学素子の円周が10m/秒を超える接線速度、好ましくは100m/秒を超える接線速度、より好ましくは200m/秒を超える接線速度で移動するように回折型光学素子を回転させるように構成することができる。パルス周波数が高く、また、回折型光学素子に入射する際の投影光ビームの交差セクションが大きい場合、さらには超音速が必要になることがある。
【0029】
いくつかの実施形態では、回折型光学素子の回転周波数は平均パルス周波数fに等しい。この場合、2つの連続する光パルスの間の時間は、回折型光学素子の完全な回転のためには十分である(少なくとも平均において)。
上で言及したように、一般的には、第1の回転位置と第2の回転位置の間の変化は、パルス列の2つの連続する光パルスの間に生じることが好ましい。しかしながら、回転位置の変化の間に少数の光パルスを浪費することも可能である。浪費される光パルスは、例えば回折型光学素子を支持している回転サポートの吸収領域に入射させることができる。特定の数の光パルスの浪費を許容することにより、回転位置を変更するための追加時間が提供される。
【0030】
また、回折型光学素子は、複数の第1の部分および複数の第2の部分を備えており、各第1の部分は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布をひとみ平面内に生成し、また、各第2の部分は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面内に生成する。この場合、第1の部分および第2の部分を回折型光学素子の円周に沿って交互に配置すると、回折型光学素子の角周波数を低くすることができる。例えば回折型光学素子がn>2個の第1の部分およびn>2個の第2の部分を備える場合、回折型光学素子の回転周波数は、f/nまで低くすることができる。
【0031】
当然のこととして、回折型光学素子は、m=3、4、5...であるm個の部分を備えることも可能であり、m個の部分の各々は、光パルスによって照明されると、他のすべての部分によってひとみ平面内に生成される放射照度分布とは異なる放射照度分布をひとみ平面内に生成する。
他の実施形態では、制御ユニットは、回折型光学素子の360°の1回の回転の間に、第1の部分および第2の部分が光パルスによって照明されるように駆動装置および/または光源を制御するように構成される。この場合、2つの異なる放射照度分布がひとみ平面内に交互に生成され、それにより、最終的に、回折型光学素子の第1および第2の部分に結合される2つの照明設定の組合せであるスキャン統合照明設定が得られる。
【0032】
第1の部分および第2の部分は、回転軸と同心である円形リング内に含めることができる。光パルスによって照明された場合、リングによって生成される回折効果が、回折型光学素子が回転している間、連続的に変化するとすれば、光パルスの放出時間を慎重に変更することによってひとみ平面内の放射照度分布を微調整することができる。
一実施形態では、照明システムは静止回折型光学素子を備えており、この静止回折型光学素子は、ひとみ平面内の放射照度分布が、少なくとも実質的に、静止回折型光学素子によって生成される放射照度分布と、それぞれ第1の部分および第2の部分によって生成される第1または第2の放射照度分布との畳込みであるように固定して配置される。
これは、静止回折型光学素子がひとみ平面内の放射照度分布の基本構成を生成する場合にとりわけ有利である。この場合、回転している回折型光学素子の異なる部分を使用してこの放射照度分布を修正することができる。この修正は、放射照度分布の位置および/またはサイズ、あるいはひとみ平面内におけるその部分の変更を含むことができる。この方法によれば、例えば静止回折型光学素子によって画定される照明設定のテレセントリシティ(telecentricity)または極平衡を変更可能に調整することができる。
また、静止回折型光学素子を使用することにより、それぞれ、f>1kHzの平均パルス周波数を有する連続する投影光パルスの列を放出するように構成されている第1および第2の光源を使用することができる。第1および第2の光源によって生成される光パルスは、異なる方向から、静止している回折型光学素子または高速で回転している回折型光学素子のいずれかに入射する。この場合、回転している回折型光学素子の第1および第2の部分は、光ビームを傾斜させるように構成することができ、この傾斜した光ビームは、回折型光学素子のうちの1つに斜めに入射する。したがって斜め入射に関連する傾斜は、回折型光学素子を高速で回転させることによって補償している。
【0033】
第1および第2の光源が光パルスを交互に放出するように構成される場合、2fの平均パルス周波数を有する有効パルス列を得ることができる。
また、異なる平均パルス周波数を有する光源を使用することも可能である。この場合、回折型光学素子の他の構造の第1および第2の部分が必要である。
【0034】
また、本発明の主題は、
a)f>1kHzの平均パルス周波数を有する連続する投影光パルスの列を生成するステップと、
b)回折型光学素子を回転軸周りで同時に回転させる(好ましくは一定の角速度で)ステップであって、前記回折型光学素子が第1の部分および第2の部分を備え、第1の部分が、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布を照明システムのひとみ平面内に生成し、また、第2の部分が、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面内に生成する、ステップと、
c)1つの光パルスが第1の部分を照明し、また、他の光パルス、好ましくは同じパルス列のすぐ後に連続する光パルスが第2の部分を照明するよう、ステップa)における光パルスの放出および/またはステップb)における回折型光学素子の回転を制御するステップと
を含む、マイクロリソグラフィ投影露光装置を動作させる方法である。
【0035】
本発明の照明システムに関する上記の所見は、ここでは、必要な変更を加えてやはり適用される。
詳細には、回折型光学素子は、回折型光学素子が一定の角速度で回転軸の周りを回転している間、特定の光パルスが時間シフトに応じて第1の部分または第2の部分のいずれかを照明するよう、一定の角速度で回転軸周りで回転させることができ、また、光パルスの放出時間は、少なくとも1/10f、好ましくは少なくとも1/5f、より好ましくは少なくとも1/2fの時間シフトだけ単一のパルス列内で修正することができる。
【0036】
回折型光学素子の円周は、10m/秒を超える接線速度、好ましくは100m/秒を超える接線速度、より好ましくは200m/秒を超える接線速度で移動させることができる。放出時間は、単一のパルス列の間、第1の部分および第2の部分が交互に照明されるように制御することができる。
第1の部分および第2の部分は、例えばテレセントリシティ誤差を補償するために、静止回折型光学素子によってひとみ平面内に生成される放射照度分布を反対方向に沿って横方向にシフトさせることができる。
光パルスは、ひとみ平面内の放射照度分布が、少なくとも実質的に、それぞれ第1の部分および第2の部分によって生成される第1または第2の放射照度分布中における、静止回折型光学素子によって生成される放射照度分布の畳込みであるように固定して配置される静止回折型光学素子を補足的に通過することができる。
光パルスの列は、連続する投影光パルスの第1の列を放出する第1の光源、および連続する投影光パルスの第2の列を放出する第2の光源によって生成することができ、第1のパルス列および第2のパルス列は交互配置される。
第1の部分は、第1のパルス列の光パルスによってのみ照明することができ、第2の部分は、第2のパルス列の光パルスによってのみ照明される。この場合、第1の部分および第2の部分は、第1および第2の光源から回折型光学素子のうちの1つに異なる方向から入射する投影光パルスの傾きを補償する。1つの回折型光学素子は静止回折型光学素子であることが好ましい。
【0037】
さらに、第1および第2の光源は、2fの平均パルス周波数を有する有効パルス列が得られるよう、光パルスを交互に放出するように構成することができる。
本発明の他の態様によれば、光ラスタ素子のアレイを含む光インテグレータを備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置の照明システムが提供される。光ビームは各光ラスタ素子に結合される。照明システムが動作している間、照明すべきマスクが配置されるマスク平面と全く同じであるか、または光学的に共役である共通フィールド平面内の光ラスタ素子に結合された光ビームを重畳させるコンデンサが提供される。照明システムは、照明システムによってマスク平面内で照明される被照明フィールドにおける投影光の偏光の状態のフィールド依存性を修正するように構成される偏光変調器をさらに備える。
このような偏光変調器を使用することにより、異なる偏光の状態を有する投影光を使用して、所与の時間に被照明フィールドの異なる部分を照明することができる。これらの偏光の状態は、感光性表面に画像すべきフィーチャのサイズおよび配向に慎重に適合され、改良された結像品質が得られる。
【0038】
一実施形態では、偏光変調器は複数の変調器ユニットを備える。各変調器ユニットは、複数のラスタフィールド平面要素を含むラスタフィールド平面に配置される。各ラスタフィールド平面要素は、共通フィールド平面全体に結像され、光ラスタ素子の1つと1対1の対応で結合される。変調器ユニットは、制御信号に応答して、各ラスタフィールド平面要素の少なくとも2つの部分で別様に光ラスタ素子に結合される光ビームの偏光の状態を変更可能に調整するように構成される。
【0039】
一実施形態では、照明システムは、異なる偏光の状態が被照明フィールドに存在する方法で変調器ユニットを制御することができる制御ユニットを備える。
一実施形態では、各変調器ユニットは、照明システムの光軸に沿って厚さを有する2つの複屈折光学コンポーネントを備えており、この厚さは個々に変化させることができる。この場合、複屈折光学コンポーネントの光効果は、例えば4分の1波長板によって生成される光効果と2分の1波長板によって生成される光効果の間で変化させることができる。
各光学コンポーネントが、2つの複屈折くさび、および少なくとも1つのくさびを変位させるように構成される駆動装置を備える場合、複屈折くさびの相対位置を変化させることによって容易に光学コンポーネントの厚さを変えることができる。
【0040】
また、本発明の主題は、
a)マスクがスキャン方向に沿って移動している間、第1の偏光の状態を有する第1の投影光を使用して第1のマスクパターン領域を照明するステップと、
b)スキャン方向に対して直交する交差スキャン方向に沿って、第1のマスクパターン領域の隣のマスク上に配置される第2のマスクパターン領域を、第1の偏光の状態とは異なる第2の偏光の状態を有する第2の投影光を使用して照明するステップと
を含む、マイクロリソグラフィ投影露光装置内のマスクを照明する方法である。
第1の投影光は第1の角光分布を有することができ、また、第2の投影光は、第1の角光分布とは異なる第2の角光分布を有することができる。
第1の偏光の状態は、例えばスキャン方向に沿ったマスクの移動が終了した後に、第2の偏光の状態とは異なる第3の偏光の状態に変化させることができる。
定義
「光」という用語は、本明細書においては、任意の電磁放射、詳細には可視光、UV光、DUV光、VUV光およびEUV光ならびにX線を表すために使用されている。
「光線」という用語は、本明細書においては、その伝搬の経路を線によって記述することができる光を表すために使用されている。
「光束」という用語は、本明細書においては、フィールド平面内に共通の原点を有する複数の光線を表すために使用されている。
「光ビーム」という用語は、本明細書においては、特定のレンズまたは他の光学素子を通過する光を表すために使用されている。
【0041】
「位置」という用語は、本明細書においては、三次元空間における物体の基準点の位置を表すために使用されている。この位置は、通常、一組の3つの直交座標によって示される。したがって配向および位置は、三次元空間における物体の変位を完全に表している。
「表面」という用語は、本明細書においては、三次元空間における任意の平面または湾曲した表面を表すために使用されている。この表面は、物体の一部であっても、あるいはフィールドまたはひとみ平面の場合に一般的であるように、完全に独立したものであってもよい。
【0042】
「フィールド平面」という用語は、本明細書においては、マスク平面に対して光学的に共役である平面を表すために使用されている。
「ひとみ平面」という用語は、本明細書においては、マスク平面内の異なる点を通過する周辺光線が交わる平面を表すために使用されている。当分野においては一般的であるように、「ひとみ平面」という用語は、数学的な意味においては実際に平面ではなく、若干湾曲している場合にも使用され、したがって厳密な意味ではひとみ表面と呼ぶべきである。
「一様な」という用語は、本明細書においては、位置に依存しない性質を表すために使用されている。
【0043】
「光ラスタ素子」という用語は、本明細書においては、他の全く同じか、または同様の光ラスタ素子と共に配置される任意の光学素子、例えばレンズ、プリズムまたは回折型光学素子を表すために使用されており、したがって各光ラスタ素子は、複数の隣接する光チャネルの1つに結合される。
「光インテグレータ」という用語は、本明細書においては、積NA−aを大きくする光学系を表すために使用されており、NAは開口数であり、また、aは被照明フィールド面積である。
【0044】
「コンデンサ」という用語は、本明細書においては、2つの平面の間、例えばフィールド平面とひとみ平面の間のフーリエ関係を確立する(少なくとも近似的に)光学素子または光学系を表すために使用されている。
「共役平面」という用語は、本明細書においては、結像関係がそれらの間に確立される平面を表すために使用されている。共役平面の概念に関連するさらなる情報については、小論文E. Delano entitled: "First-order Design and the y, y Diagram", Applied Optics, 1963, vol. 2, no. 12, pages 1251-1256に記載されている。
「フィールド依存性」という用語は、本明細書においては、フィールド平面内の位置からの物理量の何らかの関数的依存性を表すために使用されている。
「空間放射照度分布」という用語は、本明細書においては、光が入射する実表面または仮想表面上で総放射照度がいかに変化するかを表すために使用されている。通常、空間放射照度分布は、関数I
s(x,y)によって記述することができ、x、yは表面内の一点の空間座標である。フィールド平面に適用される場合、空間放射照度分布は、複数の光束によって生成される放射照度を必然的に積分する。
「角放射照度分布」という用語は、本明細書においては、光束を構成している光線の角度に依存して光束の放射照度がいかに変化するかを表すために使用されている。通常、角放射照度分布は、関数I
a(α,β)によって記述することができ、α、βは、光線の方向を記述している角座標である。角放射照度分布がフィールド依存性を有する場合、I
aもまたフィールド座標の関数、つまりI
a=I
a(α,β,x,y)になる。
【0045】
「スキャンサイクル」という用語は、本明細書においては、マスク全体を1回で感光性表面に結像するプロセスを定義するために使用されている。
【0046】
本発明の様々な特徴および利点は、添付の図面に関連して行う以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0048】
I.投影露光装置の一般的な構造
図1は、本発明による投影露光装置10の高度に単純化された斜視図である。装置10は、投影光ビームを生成する照明システム12を備える。投影光ビームは、
図1には細い線として概略的に示されている複数の微小フィーチャ19によって形成されるパターン18を含むマスク16上のフィールド14を照明する。この実施形態では、被照明フィールド14は、スリット状の矩形の形を有しており、装置10の光軸OAをその中心としている。しかしながら、光軸OA外の被照明フィールド14のリングセグメントおよび配置のための他の形状の被照明フィールド14もまた企図されている。
【0049】
投影対物レンズ20は、被照明フィールド14内のパターン18を、基板24によって支持されている感光性層22、例えばフォトレジスト上に結像する。シリコンウェーハによって形成することができる基板24は、感光性層22の頂部表面が投影対物レンズ20の像平面内に正確に位置するよう、ウェーハステージ(図示せず)上に配置されている。マスク16は、投影対物レンズ20の物体平面内のマスクステージ(図示せず)によって位置決めされる。投影対物レンズ20は、|β|<1である倍率βを有するため、被照明フィールド14内のパターン18の縮小された画像18’が感光性層22の上に投影される。
【0050】
投影中、マスク16および基板24は、
図1に示されているY方向に対応するスキャン方向に沿って移動する。次に被照明フィールド14がマスク16上をスキャンし、したがって被照明フィールド14より広いパターン形成領域を連続的に結像することができる。基板24の速度とマスク16の速度の比率は、投影対物レンズ20の倍率βに等しい。投影対物レンズ20が画像を反転させる場合(β<0)、マスク16および基板24は、
図1に矢印A1およびA2で示されているように逆方向に移動する。しかしながら、本発明は、マスクを投影している間、マスク16および基板24が移動しないステッパツールに使用することも可能である。
II.二重露光−第1の実施形態
【0051】
図2はマスク16の拡大斜視図である。マスク16マスク上のパターン18は、この実施形態では、Y方向に沿って縦に並べて配置されている3つの第1の全く同じマスクパターン領域181を含む。簡潔にするために、第1のマスクパターン領域181のフィーチャ19は、Y方向に沿って延びる直線であることが仮定されている。
パターン18は、3つの全く同じ第2のマスクパターン領域182をさらに含み、これらの第2のマスクパターン領域182は、やはりY方向に沿って縦に並べて配置され、かつ、第1のマスクパターン領域181および第2のマスクパターン領域182が共通のX座標を有さないよう、第1のマスクパターン領域181から横方向に間隔を隔てている。第2のマスクパターン領域182は、X方向に沿って延びるフィーチャ19のみを含むことが仮定されている。
【0052】
マスク16の1つの完全なスキャニングサイクル内では、第1のマスクパターン領域181に関連する3つの第1の露光パターン領域、および第2のマスクパターン領域182に関連する3つの第2の露光パターン領域を生成することができる。次にスキャニング方向が逆転されるか、または照明を何ら伴うことなくマスク16がその元の位置に戻されて、他のスキャニングサイクルが実施される。
装置10によって生成されるダイは、露光パターン領域のうちの1つに対応するサイズを有することがさらに仮定されている。この方法によれば、2列のダイを基板24上に同時に露光することができる。
最大画像品質が望ましい場合、通常、異なるパターンには、マスクレベルにおける異なる角放射照度分布が必要である。この実施形態では、Y方向に沿って延びるフィーチャ19は、X双極子照明設定を使用して最も良好に感光性層22の上に結像されることが仮定されている。
図2では、第1のマスクパターン領域181のうちの1つに位置しているフィールド点に向かって収束する光束に関連するひとみ261は、破線の円で示されている。ひとみ261内では、X方向に沿って間隔を隔てた2つの極27は、フィールド点に向かって光が伝搬する方向を表している。パターンは、第1のマスクパターン領域181全体にわたって一様であることが仮定されているため、このX双極子照明設定は、第1のマスクパターン領域181内の各フィールド点に生成されることが必要である。
【0053】
第2のマスクパターン領域182は、X方向に沿って延びるフィーチャのみを含む。これらのフィーチャ19に対しては、Y双極子照明設定によって最も良好な画像品質が得られることが仮定されている。
図2では、第2のパターン領域182のうちの1つに位置しているフィールド点に向かって収束する光束に関連するひとみ262は、やはり破線の円で示されている。ひとみ262内では、Y方向に沿って間隔を隔てた2つの極28は、フィールド点に向かって光が伝搬する方向を表している。パターンは、第2のパターン領域182全体にわたって一様であることが仮定されているため、このY双極子照明設定は、第1のパターン領域182内の各フィールド点に生成されることが必要である。
これは、照明システム12は、被照明フィールド14内に2つの異なる照明設定を同時に、かつ、隣り合わせに生成することができなければならないことを暗に意味する。このタスクを実施することができる照明システム12の構造については、節Vで、
図8〜20を参照してより詳細に説明する。
【0054】
図2に示されているマスク16は、本発明の第1の実施形態による二重露光プロセスに使用されることが仮定されており、それについては
図3a〜3cを参照して以下で説明する。
【0055】
二重露光プロセスでは、エッチングなどの後続の製造ステップの実施に先立って、各ダイが2回露光される。通常、これには2つの異なるマスクの使用が必要である。第1のスキャニングプロセスで、第1のマスクに含まれているパターンが感光性表面22に転写される。次に第1のマスクが第2のマスクに置き換えられる。第2のスキャニングプロセスで、第2のマスクに含まれているパターンが感光性表面22に転写される。
二重露光は、第1および第2のマスクに含まれているパターンを最適照明設定を使用して個々に照明することができるため、有利である。すべての投影光が画像形成に寄与するため、これは、感光性表面のコントラストの改善を促進する。しかしながら2つの異なるマスクを二重露光プロセスに使用する場合、オーバレイ誤差を許容範囲まで小さくすることは困難である。マスクは異なるプロセスで製造され、かつ、試験されるため、2つのマスクに含まれているパターンが互いに完全に対応することを保証することには課題が多い。
【0056】
図3a〜3cは、マスク16のみを使用して二重露光が実施されるプロセスステップを示したものである。スキャン操作中の感光性表面22の略上面図である
図3aでは、参照数表示301は、スキャン方向Yに沿って縦に並べて配置されている第1の露光パターン領域を表している。各第1の露光パターン領域301は、第1のマスクパターン領域181のうちの1つの画像である。参照数表示302は、やはりスキャン方向Y沿って縦に並べて配置され、かつ、第1の露光パターン領域301の横に配置されている第2の露光パターン領域を表している。各第2の露光パターン領域302は、第2のマスクパターン領域182のうちの1つの画像である。
被照明フィールド14が第1のマスクパターン領域181および第2のマスクパターン領域182の上を同時にスキャンしている間、第1および第2の露光パターン領域301、302の新しい対が感光性層22の上に生成される。スキャン操作の間、
図3aの矢印で示されているように、感光性層22を支持している基板24がY方向に沿って移動する。
3つの第1および第2のマスクパターン領域181、182が感光性表面22に転写されると、第1および第2の露光パターン領域の新しい一連の3つの対を感光性表面22に生成することができるよう、マスク16の移動方向を逆転することができ、あるいはマスク16がその開始位置へ速やかに戻される。
基板24の第1のスキャニング移動が完了すると、
図3bに示されているように、第1の露光パターン領域301の第1の行R1および第2の露光パターン領域302の第2の行R2が感光性表面22に生成される。
【0057】
次に、感光性表面22を支持している基板24がX方向に沿って1行分だけ横方向に変位され、かつ、同じマスク16を使用してスキャニング操作が繰り返される。しかしながら1行分だけ横方向に変位しているため、第1のマスクパターン領域181の画像は、第2の行R2を形成している第2の露光パターン領域302の上に重畳される。したがって第2の行R2中のダイは、2回、つまり第2のマスクパターン領域182の画像を使用した1回目と、第1のマスクパターン領域181の画像を使用した2回目の2回にわたって露光される。
図3bの301+302は重畳した画像を示している。重畳した画像に寄与している各画像は、
図2に示されている最適照明設定、つまり第1のマスクパターン領域181のためのX双極子および第2のマスクパターン領域182のためのY双極子照明設定を使用して生成される。
【0058】
第2のマスクパターン領域182の画像は重畳されないが、第2の露光パターン領域302の次の行R3を形成する。
第2の露光パターン領域302の新しい行が完了する毎に基板24を1行分だけ変位させるこのプロセスは、利用可能な感光性表面全体が露光されるまで繰り返される。
図3cは、第2の露光パターン領域302の最後の行R7の完了を示す。
第1の行R1および最後の行R7は2回露光されない。したがってこれらの行R1、R7は、ダイを生成するために使用される感光性表面の部分の外側に置くことができる。
III.二重露光−第2の実施形態
【0059】
図4は、第2の実施形態によるマスク216の拡大斜視図である。マスク216上のパターン218は、X方向、つまり交差スキャン方向に沿って隣り合わせに配置されている2つの第1の全く同じマスクパターン領域2181を含む。簡潔にするために、第1のマスクパターン領域2181のフィーチャ19は、Y方向に沿って延びる直線であることが仮定されている。
パターン218は、2つの全く同じ第2のマスクパターン領域2182をさらに含み、これらの第2のマスクパターン領域2182は、やはりX方向に沿って隣り合わせに配置され、かつ、第1のマスクパターン領域2181および第2のマスクパターン領域2182が共通のY座標を有さないよう、スキャン方向Yに沿って第1のマスクパターン領域2181から間隔を隔てている。第2のマスクパターン領域2182は、X方向に沿って延びるフィーチャ19のみを含むことが仮定されている。
【0060】
マスク216の1つの完全なスキャニングサイクル内では、第1のマスクパターン領域2181に関連する2つの第1の露光パターン領域、および第2のマスクパターン領域2182に関連する2つの第2の露光パターン領域を露光することができる。次にスキャニング方向が逆転されるか、または照明を何ら伴うことなくマスク216がその元の位置に戻されて、他のスキャニングサイクルが実施される。
また、この実施形態でも、Y方向に沿って延びるフィーチャ19は、ひとみ261内の2つの極27によって
図4に示されているように、X双極子照明設定を使用して最も良好に感光性層22の上に結像されることが仮定されている。第2のマスクパターン領域2182のフィーチャ19はX方向に沿って延びており、したがってひとみ262内の2つの極28によって
図4に示されているように、Y双極子設定を使用して最も良好に画像される。
パターンは、第1および第2のパターン領域2181、2182全体にわたって一様であることが仮定されているため、XおよびY双極子照明設定は、それぞれ第1および第2のパターン領域2181、2182内の各フィールド点に生成されることが必要である。
これは、照明システム12は、2つの異なる照明設定の間で極端に速やかに変更することができなければならないことを暗に意味する。スキャン速度およびスキャン方向Yに沿ったダイ間の距離の典型的な値を仮定すると、照明設定を変更するために必要な時間は、5ミリ秒未満、好ましくは1ミリ秒未満でなければならない。このタスクを実施することができる照明システム12の構造については、節VIで、
図21〜38を参照してより詳細に説明する。
【0061】
図4に示されているマスク216は、第2の実施形態による二重露光プロセスに使用されることが仮定されており、それについては
図5a〜5cを参照して以下で説明する。
図5a〜5cは、マスク216のみを使用して二重露光が実施される一連のプロセスステップを示したものである。スキャン操作中の感光性表面22の略上面図である
図5aでは、参照数表示2301は、交差スキャン方向Xに沿って隣り合わせに配置されている第1の露光パターン領域を表している。第1の露光パターン領域2301の各対は、一対の第1のマスクパターン領域2181の画像である。
【0062】
参照数表示2302は、やはり交差スキャン方向Xに沿って隣り合わせに配置されている第2の露光パターン領域を表している。各第2の露光パターン領域2302は、第2のマスクパターン領域2182のうちの1つの画像である。
被照明フィールド14が最初に第1のマスクパターン領域2181の上を、次に第2のマスクパターン領域2182の上を同時にスキャンしている間、第1および第2の露光パターン領域2301、2302の新しい対が感光性層22の上に生成される。スキャン操作の間、
図5aの矢印で示されているように、感光性層22を支持している基板24がY方向に沿って移動する。マスク16上のパターン219が感光性表面22に完全に転写されると、この実施形態ではマスク16の移動方向が逆転される。そのため、各行中の第1の露光パターン領域および最後の露光パターン領域を無視する場合、2つの第1の露光パターン領域および2つの第2の露光パターン領域2301、2302は、スキャン方向Yに沿って縦に並べて配置される。別法としては、第1および第2の露光パターン領域2301、2302の新しい一連の2つの対を感光性表面22に生成することができるよう、マスク216をその開始位置へ速やかに戻すことができる。
【0063】
基板24の第1のスキャニング移動が完了すると、露光パターン領域2301、2302の2つの全く同じ行R1、R2が感光性表面22に生成される。各行R1、R2では、各行中の第1の領域および最後の領域を除き、2つの第1の露光パターン領域および2つの第2の露光パターン領域2301、2302がスキャン方向Yに沿って交互に配置される。
【0064】
次に、マスク216が1長さだけ縦方向に変位され、かつ、同じマスク216を使用してスキャニング操作が繰り返される。しかしながらマスク216の変位のため、第1のマスクパターン領域2181の画像は第2の露光パターン領域2302の上に重畳され、また、第2のマスクパターン領域2182の画像は第1の露光パターン領域2301の上に重畳される。
図5bでは、重畳した画像を有する領域は2301+2302によって示されている。したがって行Rl、R2中のダイは、2回、つまり第1のマスクパターン領域2181の画像を使用した1回目と、次に第2のマスクパターン領域2182の画像を使用した2回目の2回にわたって露光され、その逆についても同様である。各画像は、
図4に示されている最適照明設定、つまり第1のマスクパターン領域2181のためのX双極子および第2のマスクパターン領域2182のためのY双極子照明設定を使用して形成される。
2つの行R1、R2が完全に2回露光されると、基板26が交差スキャン方向Xに沿って2行分だけ横方向に変位され、同じプロセスが繰り返される。これらのステップは、利用可能な感光性表面22全体が露光されるまで実施される。
図5cは、最後の2つの行R5、R6の完了を示している。
IV.二重露光−第3の実施形態
【0065】
図6は、第3の実施形態によるマスク316の拡大斜視図である。マスク316上のパターン318は、Y方向に沿って延びるフィーチャ19のみを含む第1のマスクパターン領域3181、およびX方向に沿って延びるフィーチャ19のみを含む第2のマスクパターン領域3182を含む。第3のマスクパターン領域3183は、−XY対角線に対して平行に延びるフィーチャ19のみを含み、また、第4のマスクパターン領域3184は、XY対角線に対して平行に延びるフィーチャ19のみを含む。それぞれ極27、28、31および32を含むひとみ326は、各マスクパターン領域3181〜3184のフィーチャ19の最適な結像を保証する照明設定を表している。
4つのマスクパターン領域3181〜3184は、各マスクパターン領域がX方向およびY方向に直接隣接するよう、X方向およびY方向に沿って対をなして配置されている。
【0066】
図6に示されているマスク316は、実際、
図2および3に示されている第1の実施形態と
図4および5に示されている第2の実施形態の組合せである四重露光プロセスに使用されることが仮定されている。
【0067】
以下、この四重露光プロセスについて、マスク316のみを使用して四重露光が実施される一連のプロセスステップを示す
図7a〜7dを参照して説明する。スキャン操作中の感光性表面22の略上面図である
図7aでは、参照数表示3301は、第1のマスクパターン領域3181の画像である第1の露光パターン領域を表し、参照数表示3302は、第2のマスクパターン領域3182の画像である第2のパターン領域を表し、参照数表示3303は、第3のマスクパターン領域3183の画像である第3の露光パターン領域を表し、また、参照数表示3304は、第4のマスクパターン領域3184の画像である第4の露光パターン領域3304を表している。
図7aでは、複数のスキャンサイクルを繰り返すことにより、ダイの2つの行R1、R2に対応する4つの露光パターン領域3301〜3304のグループが感光性表面22に繰り返し生成されることが分かる。行R1では、第1の露光パターン領域3301および第3の露光パターン領域3303が交互に配置され、また、行R2では、第2の露光領域3302および第4の露光領域3034がスキャン方向Yに沿って交互に配置される。また、当然のこととしてこの実施形態でも、4つのマスクパターン領域3181〜3184の各々は、
図6に示されている最適照明設定を使用して照明される。これは、以下で説明する後続の露光にもまた適用される。
【0068】
図7bは、同じマスク316を使用して、
図5a〜5bに示されている第2の実施形態と同様の方法で第2の露光が実施される次のプロセスステップを示す。感光性表面22を支持している基板24がここでは逆方向に沿って移動している間、第3のマスクパターン領域3183の画像が第1の露光パターン領域3301の上に重畳され、また、それと同時に第4のマスクパターン領域3184の画像が第2の露光パターン領域3302の上に重畳される。同様に、第1のマスクパターン領域3181の画像が第3の露光パターン領域3303の上に重畳され、また、それと同時に第2のマスクパターン領域3182の画像が第4の露光パターン領域3304の上に重畳される。このスキャン操作が終了すると、第1のマスクパターン領域3181の画像と第3のマスクパターン領域3183の画像の重畳3301+3303を含む第1の行R1が得られ、また、第2のマスクパターン領域3182の画像と第4のマスクパターン領域3184の画像の重畳3302+3304を含む第2の行R2が得られる。
このプロセスのここまでは、
図4および5を参照して説明した第2の実施形態による二重露光プロセスと見なすことができる。次にこのプロセスと、
図2および3を参照して上で説明したプロセスが結合される。したがって次のスキャンサイクルの前に、
図7cに示されているように、感光性表面22を支持している基板24が交差スキャン方向Xに沿って1行分だけ変位される。後続のスキャンサイクルの間、第1および第3のマスクパターン領域3181、3183の画像が結合露光パターン領域3302+3304の上に交互に重畳される。これにより、一連の露光パターン領域3302+3304+3301および3302+3304+3303である行R2が得られる。さらに、第2の露光パターン領域3302および第4の露光パターン領域3304が交互に配置された第3の行R3が生成される。
【0069】
次に、感光性表面22を支持している基板24の移動方向がもう一度逆転され、第1のマスクパターン領域3181の画像が結合露光領域3302+3304+3303の上に重畳され、また、交互に第3のマスクパターン領域3183の画像が結合露光パターン領域3303+3304+3301の上に重畳される。いずれの場合においても、これにより、
図7dの行R2から分かるようにマスクパターン領域3181〜3184の4つのすべての画像の完全な重畳3303+3304+3301+3302が得られる。
V.第1の実施形態のための照明システム
【0070】
以下、2つの異なる角光分布をマスク16上に隣り合わせに同時に生成することができる照明システムについて説明する。
図2および3を参照して上で説明した二重露光スキームの第1の実施形態を実施するためには、このような照明システムが必要である。
1.一般構造
【0071】
図8は、
図1に示されている照明システム12の子午線断面図である。明確にするために、
図8の図解は著しく簡略化されており、また、スケール通りではない。これは、とりわけ、異なる光学ユニットが1つまたは極めて少数の光学素子のみによって表されていることを暗に意味する。実際には、これらのユニットは、極めて多くのレンズおよび他の光学素子を備えることができる。
照明システム12は、ハウジング29、および示されている実施形態ではエキシマレーザとして実現される光源33を含む。光源33は、約193nmの波長を有する投影光を放出する。他のタイプの光源33および他の波長、例えば248nmまたは157nmもまた企図されている。
示されている実施形態では、光源33によって放出される投影光は、拡大され、かつ、ほぼ平行化された光ビーム35を出力するビーム拡大ユニット34に入射する。そのために、ビーム拡大ユニット34は複数のレンズを備えることができ、あるいは例えばミラー構造として実現することができる。
【0072】
投影光ビーム35は、次に、後続のひとみ平面内に可変空間放射照度分布を生成するために使用されるひとみ画定ユニット36に入射する。そのために、ひとみ画定ユニット36は、アクチュエータの補助の下で2つの直交する軸周りで個々に傾斜させることができる、極めて多数の、極めて小さいミラー40を含むミラーアレイ38を備える。
図9はミラーアレイ38の斜視図であり、光ビーム42、44が入射するミラー40の傾斜角に応じて2つの平行光ビーム42、44がいかに異なる方向に反射するかが示されている。
図8および9では、ミラーアレイ38は6×6個のミラー40しか備えていないが、実際にはミラーアレイ38は、数百個、さらには数千個のミラー40を備えることができる。
ひとみ画定ユニット36は、いずれも照明システム12の光軸OAに対して傾斜した第1の平らな表面48aおよび第2の平らな表面48bを有するプリズム46をさらに備える。これらの傾斜した表面48a、48bに入射する光は、内部全反射によって反射する。第1の表面48aは、入射する光をミラーアレイ38のミラー40に向かって反射し、また、第2の表面48bは、ミラー40で反射した光をプリズム46の平らな出口表面49に向けて導く。したがって出口表面49から出現する光の角放射照度分布は、ミラーアレイ38のミラー40を傾斜させることによって個々に変化させることができる。ひとみ画定ユニット38に関するさらなる詳細については、米国特許出願公開第2009/0116093号明細書を参照されたい。
【0073】
ひとみ画定ユニット36によって生成される角放射照度分布は、第1のコンデンサ50の補助の下で空間放射照度分布に変換される。他の実施形態では省略することも可能であるコンデンサ50は、入射する光を光インテグレータ60に向かって導く。光インテグレータ60は、この実施形態では、光ラスタ素子74の第1のアレイ70および第2のアレイ72を備える。
図10は2つのアレイ70、72の斜視図である。各アレイ70、72は、支持板の両側に、それぞれX方向およびY方向に沿って延びる一組の円筒レンズ71、73を備える。円筒レンズ71および73の順序は、アレイ70、72の少なくとも一方の側で逆にすることができる。2つの直交円筒レンズ71、73の交点によって画定される各体積は、光ラスタ素子74を形成している。したがって各光ラスタ素子74は、円筒状の湾曲した表面を有するマイクロレンズと見なすことができる。円筒レンズの使用は、とりわけ光ラスタ素子74の屈折パワーがX方向およびY方向に沿って異なっていなければならない場合に有利である。
【0074】
図11および12は、それぞれ、代替実施形態による光ラスタ素子74’の第1のアレイ70’の上面図および線XII−XIIに沿った断面図を示したものである。ここでは、光ラスタ素子74’は、矩形の輪郭を有する平凸レンズによって形成されている。第2のアレイは、光ラスタ素子74’の凸表面の曲率の点でのみ第1のアレイ70’と異なっている。
もう一度
図8を参照すると、それぞれ第1および第2のアレイ70、72の光ラスタ素子74は、第1のアレイ70の1つの光ラスタ素子74が第2のアレイ72の1つの光ラスタ素子74と1対1で対応するように結合される方法で縦に並べて配置されている。互いに関連している2つの光ラスタ素子74は、共通軸に沿って位置合わせされ、光チャネルを画定している。光インテグレータ60内では、1つの光チャネル内を伝搬する光ビームは、他の光チャネル内を伝搬する光ビームとは交差または重畳しない。言い換えると、光ラスタ素子74に結合される光チャネルは、互いに光学的に隔離されている。
【0075】
コンデンサ78の前方焦点面は、照明システム12のひとみ平面76を形成している。この実施形態では、ひとみ平面76は第2のアレイ72の後方に位置しているが、第2のアレイ72の前方に配置することも等しく可能である。したがって第2のコンデンサ78は、ひとみ平面76と、調整可能フィールド停止82が配置されるフィールド停止平面80の間のフーリエ関係を確立している。
【0076】
フィールド停止平面80は、光インテグレータ60の第1のアレイ70内またはそのすぐ近くに位置しているラスタフィールド平面84に対して光学的に共役である。これは、各ラスタフィールド平面要素、つまり光チャネル内のラスタフィールド平面84の領域が、第2のアレイ72の関連する光ラスタ素子74および第2のコンデンサ78によってフィールド停止平面80全体に結像されることを意味する。ラスタフィールド平面要素内の放射照度分布の画像はフィールド停止平面80内で重畳し、これによりその極めて均質な照明が得られる。このプロセスは、フィールド停止平面80を共通に照明する二次光源を使用して光チャネル内の被照明領域を識別することによってしばしば記述される。
偏光変調器77は、2つのアレイ70、72の間、またはラスタフィールド平面84内の他の位置あるいはそのすぐ近くに配置される。偏光変調器77は、被照明フィールド14内における投影光の偏光の状態のフィールド依存性を修正するように構成される。そのために、偏光変調器77は、制御信号に応答して、各ラスタフィールド平面要素の少なくとも2つの部分で光ラスタ素子74に別様に結合される光ビームの偏光の状態を変更可能に修正するように構成される複数の個別の変調器ユニット79を備える。これについては、
図14および16〜18を参照して以下でさらに詳細に説明する。
フィールド停止平面80は、フィールド停止対物レンズ86によって、マスクステージ(図示せず)の補助の下でマスク16が配置されるマスク平面88に結像される。また、調整可能フィールド停止82もまたマスク平面88に結像され、スキャン方向Yに沿って延びる、被照明フィールド14の少なくとも短い横方向の辺を画定する。
【0077】
ひとみ画定ユニット36および偏光変調器77は制御ユニット90に接続されており、制御ユニット90は、パーソナルコンピュータとして示されている総合システム制御92に接続されている。制御ユニット90は、角放射照度分布の所望のフィールド依存性およびマスク平面88内の偏光の状態のやはりフィールド依存性が得られる方法で、ひとみ画定ユニット36のミラー40および偏光変調器77の変調器ユニット79を制御するように構成される。
【0078】
以下、これが達成される方法について、
図13〜18を参照して説明する。
2.照明システムの機能および制御
a.スポット形成
【0079】
図13は、ミラーアレイ38、第1のコンデンサ50および光インテグレータ60の第1のアレイ70のいくつかの光ラスタ素子74を示す、
図8からの略切抜き図である。この実施形態では、光ラスタ素子74は、簡潔にするために、矩形の境界線を有する回転対称両凸レンズとして示されている。
ミラーアレイ38の各ミラー40は、光ラスタ素子74のうちの1つの光入口ファセット100上の直径Dの微小スポット98を照明する光ビームを生成する。スポット98の位置はミラー40を傾斜させることによって変更することができる。スポット98の幾何構造は、とりわけミラーアレイ38のミラー40の光学特性で決まる。ビーム拡大ユニット34とひとみ画定ユニット36の間に、投影光がミラー40間のギャップで吸収されるのを回避する追加マイクロレンズアレイが存在する場合、このようなマイクロレンズアレイもまたスポット98の幾何構造に影響を及ぼすことになる。いくつかの実施形態では、スポット98の幾何構造は円形であり、他の実施形態では、幾何構造は概ね矩形にすることができ、とりわけ方形にすることができる。
図13から分かるように、スポット98の直径Dは、被照明光ラスタ素子74の光入口ファセット100の直径より小さい。通常、光ラスタ素子74の光入口ファセット100上で照明される各スポット98の総面積は、各光入口ファセット100の面積よりかなり小さくしなければならず、例えば少なくとも5分の1、好ましくは少なくとも10分の1、より好ましくは少なくとも20分の1にしなければならない。光入口ファセット100が異なる面積を有しており、また、各スポット98をこれらのファセットのうちの任意のファセット上に生成することができる場合、光入口ファセット100の最大面積を基準にすることができる。
光ラスタ素子74の光入口ファセット100と比較してスポット98が十分に小さい場合、異なる光パターンを光入口ファセット100上に生成することができる。光パターンは、制御ユニット90の補助の下でミラー素子40を適切に制御することによって容易に変更することができる。
b.光パターンを変更する効果
【0080】
光入口ファセット100は、ラスタフィールド平面84内またはそのすぐ近くに位置しているため、光入口ファセット100上の光パターンは、第2のアレイ72の光ラスタ素子74および第2のコンデンサ78を介して中間フィールド平面80に結像される。
以下、これについて、光インテグレータ60の一部、第2のコンデンサ78および中間フィールド平面80を示す、
図8の切抜きの拡大図であり、スケール通りではない
図14を参照して説明する。簡潔にするために、
図14には光インテグレータ60の光ラスタ素子74のうちの2つの対しか示されていない。単一の光チャネルに結合される2つの光ラスタ素子74は、以下では第1のマイクロレンズ101および第2のマイクロレンズ102で参照されている。上で言及したように、フィールドおよびひとみハニカムレンズとも呼ばれるマイクロレンズ101、102は、例えば、回転対称屈折表面および矩形の境界線を有する各マイクロレンズとして構成することができ、あるいは
図10に示されている交差円筒マイクロレンズとして構成することができる。必要なことは、マイクロレンズ101、102は、少なくとも照明システム12の光軸OAに対して直交する1つの方向に沿って非ゼロ屈折パワーを有することのみである。
【0081】
特定の光チャネルと結合したマイクロレンズ101、102の各対は、ひとみ平面76内に二次光源106を生成する。
図14の上半分では、それぞれ実線、点線および破線で示されている収束光束L1a、L2aおよびL3aは、第1のマイクロレンズ101の光入口ファセット100の異なる点に入射することが仮定されている。2つのマイクロレンズ101、102およびコンデンサ78を通過すると、各光束L1a、L2aおよびL3aは、それぞれ焦点F1、F2およびF3に収束する。したがって
図14の上半分から、光線が光入口ファセット100に入射する位置およびこれらの光線が中間フィールド平面80(または任意の他の共役フィールド平面)を通過する位置は、光学的に共役であることが明確になる。
【0082】
図14の下半分は、平行光束L1b、L2bおよびL3bが第1のマイクロレンズ101の光入口ファセット100の異なる領域に入射するケースを示している。光インテグレータ60に入射する光は、通常、実質的に真に平行化されるため、これはより現実的なケースである。光束L1b、L2bおよびL3bは、第2のマイクロレンズ102中に位置している共通焦点Fに集束し、次に、もう一度平行化されて中間フィールド平面80を通過する。ここでも、光学共役の結果として、光束L1b、L2bおよびL3が光入口ファセット100に入射する領域は、中間フィールド平面80内で照明される領域に対応することが分かる。
【0083】
したがって中間フィールド平面80内で照明されるフィールド(したがってマスク平面88内で照明されるフィールド14)の寸法は、第1のマイクロレンズ101の光入口ファセット100上で照明される領域を変更することによって変えることができる。この領域のサイズおよび幾何構造は、
図13を参照して上で説明したように、ひとみ画定ユニット36のミラーアレイ38の補助の下でスポット98を組み立て直すことによって極めて効果的に変更することができる。
【0084】
当然のこととして、これらの考察は、X方向およびY方向に対しても個別に適用される。したがって被照明フィールド14の幾何構造は、それぞれX方向およびY方向に対する光入口ファセット100の照明を個別に変化させることにより、X方向およびY方向に対して独立して変更することができる。言い換えると、第1のマイクロレンズ101の光入口ファセット100上で照明される領域が適切に決定される場合、中間フィールド平面80内で照明されるフィールドのほとんどすべての任意の幾何構造を得ることができる。
例えば、
図14の下半分に示されているように、第1のマイクロレンズ101の1つが光束L1bで照明され、また、他の第1のマイクロレンズ101が光束L2bで照明されると、2つの異なる第1のマイクロレンズ101に関連する二次光源は、中間フィールド平面80内の異なる部分を照明することになる。しかしながらこの点に関して極めて重要な点は、2つの異なる第1のマイクロレンズ101を異なる位置に配置することができ、したがって関連する二次光源は、中間フィールド平面80を異なる方向から照明することである。言い換えると、この場合、中間フィールド平面80内の異なる部分が異なる角光分布で照明される。
図15は、光インテグレータ60の複数の第1のマイクロレンズ101の光入口ファセット100の例示的上面図である。光入口ファセット100は、説明用として、スキャン方向Yに沿って拡大されたサイズで示されている。実際には光入口ファセットの幾何構造は、被照明フィールド14の幾何構造にほぼ対応している。
【0085】
光入口ファセット100のいくつかは、ひとみ画定ユニット36の補助の下で、第1の光パターン108を使用して照明される。各第1の光パターン108は、Y方向に沿って延び、かつ、光入口ファセット100の半分(X方向に沿って見た場合)を覆っている横方向の細長い線条110を含む。第1の光パターン108を使用して照明される光入口ファセット100は、それらがX方向に沿って間隔を隔てた2つのほぼ円形または楕円形の極PX1、PX2を形成するよう、光インテグレータ60の入口表面の上に配置されている。
他の光入口ファセット100は、Y方向に沿って延びる横方向の細長い線条116のみをも含む第2の光パターン114を使用して照明される。しかしながら第2の光パターン114の細長い線条116は、第1の光パターン108の細長い線条110と比較すると、光入口ファセット100の他の半分(X方向に沿って見た場合)の上に位置している。第2の光パターン114を使用して照明される光入口ファセット100は、それらがY方向に沿って間隔を隔てた2つのほぼ円形の極PY1、PY2を形成するように配置されている。
【0086】
その光入口ファセット100が第1の光パターン108を使用して照明される第1のマイクロレンズ101は、中間フィールド平面80内、したがってマスク平面88内の、第1の光パターン108の横方向の細長い線条110と同じ幾何構造を有する部分を共通に照明する。これらの光入口ファセット100は、2つの極PX1、PX2の形で光インテグレータ60の入口側に配置されているため、これらの光入口ファセット100に関連する二次光源は、それがX双極子照明設定の特性であるため、これらの部分(のみ)をX方向から斜めに照明する。したがってマスク16上の第1の部分181は、
図2に示されているようにX双極子照明設定を使用して照明される。
【0087】
第2の光パターン114を使用して照明される光入口ファセット100は、被照明フィールド14内の他の半分の細長い線条の照明に寄与する。これらの光入口ファセット100は、それらが2つの極PY1、PY2を形成するように光インテグレータ60の入口側に配置されているため、被照明フィールド14内の他の半分は、やはり
図2に示されているようにY双極子照明設定を使用して照明される。
したがって2つの異なる照明設定を被照明フィールド14の異なる部分に同時に生成することができる。
したがって、制御ユニット90の補助の下で、光インテグレータ60の光入口ファセット100上のスポット98を適切に配置し直すことにより、角光分布のほとんどすべての任意のフィールド依存性をマスク平面88内に生成することができる。角光分布のフィールド依存性を変更するのに必要な時間は、主として、ミラーアレイ38のミラー40を必要な傾斜角度だけどれだけ速く正確に傾斜させることができるかで決まる。
c.偏光制御
【0088】
既に言及したように、照明システム12は、異なる偏光の状態を有する投影光を使用して、一方ではマスクパターン領域181を照明し、また、他方ではマスクパターン領域182を照明することも可能である。角光分布だけでなく、マスクレベルにおける投影光の偏光の状態も、感光性表面22に形成される画像の品質に対する影響、とりわけコントラストに対する影響を有することは当分野で知られている。したがって異なる偏光の状態を有する投影光を使用して、マスク16上の異なる部分を照明することができることが望ましい。
これは、上で簡単に説明した偏光変調器77の補助の下で、照明システム12内で達成することができる。偏光変調器77は、ラスタフィールド平面84内またはそのすぐ近くに配置される複数の変調器ユニット79を備える。
【0089】
この変調器ユニット79について、2つの変調器ユニット79が示されている
図14を参照して最初に説明する。各変調器ユニット79は、ラスタフィールド平面84のすぐ近くに配置されている。典型的な寸法を仮定すると、これは、ラスタフィールド平面84からの距離が3mm未満であることを暗に示している。各変調器ユニット79は、単一の光チャネルに結合されており、言い換えると、ラスタフィールド平面84内の光チャネルの領域として定義される単一のラスタフィールド平面要素に結合されている。
各変調器ユニット79は、制御ユニット90によって提供される制御信号に応答して、各ラスタフィールド平面要素の少なくとも2つの部分で偏光の状態を別様に変更可能に修正することができる。各ラスタフィールド平面要素は、マスク上で照明されるフィールド14全体に対して光学的に共役であるため、変調器ユニット97は、被照明フィールド14の異なる部分に異なる偏光の状態を生成することができる。
【0090】
各ラスタフィールド平面要素の2つの部分で偏光の状態を別様に修正するために、各変調器ユニット79は、可変厚さを有する2つの複屈折コンポーネント79aおよび79bを備える。したがって複屈折材料の光学軸を適切に配置することにより、一方では第1のコンポーネント79aを通過し、また、他方では第2のコンポーネント79bを通過する投影光の偏光の状態を別様に修正することができる。
例えば複屈折コンポーネント79a、79bの厚さは、円偏光が第1の複屈折コンポーネント79aによってs−偏光に変換され、また、第2の複屈折コンポーネント79bによってp−偏光に変換されるように選択することができる。
図14の下の部分から最も良好に分かるように、第1の複屈折コンポーネント79aからs−偏光として出現する投影光は、被照明フィールドの半分を排他的に照明し、また、第2の複屈折コンポーネント79bから出現する光は、被照明フィールドの他の半分を排他的に照明する。この方法によれば、異なる偏光の状態を有する投影光を使用して被照明フィールド上の異なる部分を照明することができる。
【0091】
複屈折コンポーネント79a、79bの厚さを変更することができるようにするために、複屈折コンポーネントの各々は、駆動装置の補助の下で、照明システムの光軸に対して直交する方向に変位させることができる2つの複屈折くさびを含むことができる。これは、
図16〜18に概略的に示されている。
図16は、光インテグレータ60の2つのアレイ70、72の間に配置された2つのくさび81a、81bを子午線断面図で示し、
図17は、変調器ユニット79を形成している2対のくさびを斜視図で示し、また、
図18は、光源側から光軸に沿って見た場合の光インテグレータ60および複数の変調器ユニット91の上面図である。当然のこととして、くさび81a、81bは、アレイ70の前方に配置することも可能である。
【0092】
複屈折コンポーネント79a、79bに関連するくさび81は、二重矢印によって
図16に示されている方向に沿って変位され、光軸の方向に沿った厚さは、駆動装置83の補助の下で変更することができる。
図17および18から、4つのくさび81を備えた各変調器ユニット79は、スキャン方向Yに沿って、光インテグレータ60の長さ全体にわたって延びることが分かる。したがって複屈折コンポーネント97a、97bの厚さは、交差スキャン方向Xに沿ってのみ変化し、スキャン方向Yに沿っては変化しない。これは、
図17に破線で示されているすべての光チャネル内では、変調器ユニット79は偏光の状態に対して同じ影響を有することを保証する。
3.代替実施形態
【0093】
以下、照明システム12の2つの代替実施形態について、異なる角光分布を異なるマスクパターン領域に同時に生成するのに同様に適している
図19および20を参照して説明する。
a.回折型光学素子
【0094】
図8に示されている照明システム12では、第1および第2のマスクパターン領域181、182上の異なる角光分布は、ひとみ画定ユニット36の補助の下で光インテグレータ60の光入口ファセット100上に生成される異なる放射照度分布によるものである。これらの放射照度分布は、ミラーアレイ38のミラー40によって生成される光スポット98を配置し直すことによって修正される。
図19は、ひとみ画定ユニット36がミラーアレイ38ではなく、回折型光学素子96を含む一実施形態を示したものである。拡大切抜き98から分かるように、回折型光学素子96は、複数の微小回折構造100を備える。回折型光学素子96は、例えばそういうものとして当分野で知られているように、コンピュータ生成ホログラム(CGH)として実現することができる。
【0095】
示されている実施形態では、回折型光学素子96は、異なる回折特性を有する複数の部分96a、96bを備える。回折型光学素子96は、駆動装置104の補助の下で回折型光学素子96を回転軸周りで回転させるように構成されるタレットホルダ102内に受け取られている。したがって部分96a、96bのうちの1つは、所与の時間に投影光の光路中に挿入することができる。当然のこととして、他のタイプの交換ホルダをこの目的のために使用することも可能である。
光路中に挿入される部分96aまたは96bに応じて、
図14および15を参照して上で説明したように、光インテグレータ60の各光入口ファセット100上に異なる放射照度分布が生成される。したがってこの照明システム12も、マスクレベルにおける異なるフィールド依存性角光分布をも生成することができ、また、回折型光学素子96の他の部分を挿入することによってこれらの角光分布を変更することができる。
ミラーアレイ38の代わりに回折型光学素子96を含むひとみ画定ユニット36を使用すると、異なる角光分布をマスク16上に同時に生成することに関する柔軟性が乏しくなる。一方、ひとみ平面76内に放射照度分布を画定するための回折型光学素子96の使用は、ミラーアレイ38と比較すると、複雑な制御スキームをそれほどには必要としない確立した技術である。
b.ひとみ放射照度分布の結合
【0096】
図20は、2つの異なる角光分布を異なるマスクパターン領域に同時に生成するために使用することができる異なる手法を示したものである。
図20に示されている照明システム12は、それぞれ回折型光学素子96aおよび96bを個々に含む2つの従来のひとみ画定ユニット38a、38bと、それぞれレンズ50aおよび50bによって示されているズーム光学系と、それぞれ一対のアキシコン素子108a、110aおよび一対の108b、110bと、それぞれ光インテグレータ60aおよび60bと、それぞれ偏光マニピュレータ77aおよび77bとを備える。そういうものとして当分野で知られているように、アキシコン素子108a、108bおよび110a、110bは、相補円錐表面を有する。これらの表面の間の距離を変更することにより、円錐表面が互いに接触している場合の全くシフトしていない状態を含む可変程度だけ光を半径方向にシフトさせることができる。
2つのコンデンサレンズ78a、78bは、一方では2つのひとみ平面76a、76bの間にフーリエ関係を確立し、また、他方では共通中間フィールド平面80を確立している。平らな平行板によって形成されているか、あるいは偏菱形プリズムとして形成されているプリズム112a、112bは、2つのひとみ平面76a、76bによって照明されるフィールドが中間フィールド平面80内でほぼ継目なく結合するよう、光インテグレータ60a、60bから出現する投影光ビームを横方向にオフセットさせるために使用されている。したがって中間フィールド平面80内のフィールドの半分は第1のひとみ平面76aによって照明され、また、他の半分は第2のひとみ平面76bによって照明される。
【0097】
中間フィールド平面80は、既に説明した実施形態と同様、対物レンズ86を介してマスク16上に結像される。
ひとみ画定ユニット38a、38bは個々に制御することができるため、異なる放射照度分をひとみ平面76a、76b内に生成することができ、したがって、光線経路によって
図20に示されているように、マスク16上で照明されるフィールド14内の半分ずつの2つの部分に異なる角光分布が生成される。
【0098】
示されている実施形態では、回折型光学素子96a、96bは共通光源33によって照明される。光源33によって放出された光は、第1のビーム分割ミラー117aでビーム分割ミラー115に向かって反射する。ビーム分割ミラー115は、第1のひとみ画定ユニット36aの回折型光学素子96aを照明する第2の平板折りたたみミラー117bに向かって光強度の半分を導き、また、光強度の他の半分を直接第2のひとみ画定ユニット36bの回折型光学素子96bへ導く。しかしながら、各光源33が実際にマスク16上のフィールド14の半分のみを照明するよう、2つの光源33を使用することもまた想定することができる。これは、2倍の光エネルギーを利用して感光性表面22を露光することができ、したがって投影露光装置10の出力をも2倍にすることができる利点を有する。
VI.第2の実施形態のための照明システム
【0099】
以下、極めて速やかに変化する異なる角光分布をマスク16に生成することができる照明システムについて説明する。
図4および5を参照して上で説明した二重露光スキームの第2の実施形態を実施するためには、このような照明システムが必要である。
1.一般構造
【0100】
図21は、
図1に示されている投影露光装置10に使用するのにやはり適している照明システム12の子午線断面図である。照明システム12は、
図19に示されている照明システムと同様な構造を有する。
この実施形態では、光源33は、スキャンサイクルの間、連続する投影光パルスの列を放出するように構成されることが仮定されている。パルス列は、1kHzを超える平均パルス周波数f、好ましくは4kHzと8kHzの間の平均パルス周波数fを有する。「平均周波数」という用語は、パルス列全体を平均して得られる周波数を表している。光源33は、制御ユニット60が単一のパルス列内における各光パルスの放出時間を少なくとも1/2fの時間シフトだけ修正することができるように制御ユニット60に接続されている。言い換えると、完全に規則的にではなく、若干早く、あるいは若干遅く光パルスを放出することができるよう、各光パルスの放出時間を特定の限度内で短くし、あるいは遅延させることができる。
「時間シフト」という用語は、パルス列が完全に周期的である場合に得られる規則的な放出時間を意味する。例えば平均パルス周波数fが5kHzである場合、2つの連続する光パルスの間の平均時間間隔は200マイクロ秒である。したがって規則的な放出時間は、やはり200マイクロ秒によって分割される。この場合、1/2・5kHzの遅延は100マイクロ秒に相当する。これは、規則的な放出時間が経過した後、100マイクロ秒以内に特定の光パルスをトリガすることができることを意味する。したがって2つの連続する光パルスの間の可能時間間隔は、100マイクロ秒と300マイクロ秒の間の範囲内に存在する。
図19に示されている実施形態と同様、この実施形態のひとみ画定ユニット36も、タレットホルダ102の上に取り付けられる回折型光学素子96を備えており、タレット駆動装置104の補助の下で回転軸118周りで回転させることができる。回転軸118は、照明システム12の後続の光学コンポーネントの光軸OAに対して平行に位置合わせされる。
【0101】
しかしながら、
図19に示されている実施形態とは対照的に、タレット駆動装置104は、回折型光学素子96を回転軸118周りで極めて高速で回転させるように構成される。示されている実施形態では、角速度は一定であり、また、回転周波数は、光源33の平均パルス周波数fに等しいか、あるいはその整数倍である。平均パルス周波数fの範囲を数kHzと仮定し、また、回折型光学素子96の直径の範囲を数センチメートルと仮定すると、タレットホルダ102の円周の速度は、音速に近いか、さらには音速より速くなる。
回折型光学素子96は、異なる回折特性を有する第1の部分96aおよび第2の部分96bを備えており、したがって第1の部分96aは、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布をひとみ平面76内に生成する。第2の部分96bは、光パルスによって照明されると、回折型光学素子96とひとみ平面76の間の光学コンポーネントの配置が全く同じであっても、第1の放射照度分布とは全く別の第2の放射照度分布をひとみ平面76内に生成する。
【0102】
これらの光学素子は、単一のレンズ50によって表されているズーム光学系、および一対のアキシコン素子108、110を含み、アキシコン素子108、110の距離は、
図20を参照して上で説明したように変更することができる。これらの光学素子を使用することにより、回折型光学素子96の部分96a、96bのうちの1つによって生成されるひとみ平面76内の放射照度分布をさらに変更することができる。
【0103】
照明システム12は、一対のアキシコン素子108、110と後続の光インテグレータ60の間のビーム経路内に配置される偏光マニピュレータ77をさらに備える。偏光マニピュレータ77は、偏光の状態に別様に影響を及ぼす第1の部分126aおよび第2の部分126bを含む偏光操作素子126を備える。偏光操作素子126は、タレット駆動装置124の補助の下で回転軸128周りで回転させることができるタレットホルダ122の上に取り付けられており、回転軸128は、やはり照明システム12の光軸OAに対して平行に位置合わせされる。回折型光学素子96のために使用されるタレット駆動装置104と同様、偏光マニピュレータ77のタレット駆動装置124は、偏光操作素子を回転軸128周りで、光源33によって放出されるパルス列の平均パルス周波数fに等しいか、あるいはその整数倍の一定の角速度で、極めて高速で回転させるように構成される。
2.照明システムの機能および制御
【0104】
次に、
図21に示されている照明システム12の機能について、
図22a〜22dを参照して説明する。
これらの図の各々の左側は、被照明フィールド14が、
図4および5を参照して上で説明した方法で、第1および第2のマスクパターン領域2181、2182の上をスキャンするスキャニングサイクルの進行を示している。
図のその右隣の部分は、回転軸118に対して異なる回転位置における回折型光学素子96の上面図である。矩形のフィールド130は、投影光パルスが回転している回折型光学素子96に入射する位置を示している。一定の角速度での回転は矢印によって示されており、また、異なる回折特性を有する回折型光学素子96の2つの異なる部分96a、96bは、異なるハッチングで表されている。
回折型光学素子96の右隣の図解は、偏光の状態に対して異なる影響を有する部分126a、126bを含む、回転している偏光操作素子126の上面図である。ここでは、第1の部分126aは、入射する円偏光をY方向に沿って直線偏光される光に変換し、また、第2の部分126bは、入射する円偏光をX方向に沿って直線偏光される光に変換することが仮定されている。そのために部分126a、126bは、そういうものとして当分野で知られているように、異なる厚さを有し、かつ、適切に位置合わせされた光軸を有する複屈折光材料を備えることができる。円形の領域132は、投影光パルスが偏光操作素子126に入射する位置を示している。
各図の右側の部分は、ひとみ平面76内の放射照度分布を示している。ハッチングが施された領域は、スキャニング操作中、投影光パルスによって照明される極27を示している。二重矢印134は、ひとみ平面76内の被照明領域を通過する投影光の偏光の直線状態を表している。
【0105】
図22aは、第1のマスクパターン部分2181がマスク16上のフィールド14によって照明される場合に、ある段階で優勢である状態を示している。制御ユニット60は、光パルスが回折型光学素子96の回転と完全に同期するように光源33および駆動装置104を制御する。したがって光源33が光パルスを放出する毎に、回折型光学素子96は同じ回転位置に位置する。ここでは、この回転位置は、光パルスによって照明されるフィールド130が回折型光学素子96の第1の部分96aの円周中心にほぼ位置するように選択される。この第1の部分96aは、光パルスによって照明されると、
図22aの右側に示されているように、X方向に沿って間隔を隔てた2つの極27を含むひとみ平面76内に第1の放射照度分布を生成するように構成される。
【0106】
偏光操作素子126もまたパルス列の平均周波数fに等しい回転周波数で回転する。
図22aに示されている第1の回転位置では、光パルスによって照明される領域132は第1の部分126aに位置している。この部分は、この実施形態では、二重矢印134によって右側に示されているように、投影光がY方向に沿って直線偏光されるように構成される。これは、Y方向に沿ってやはり位置合わせされる構造を結像するための偏光の最適状態である。
【0107】
図22bは、光源33によって次の光パルスが放出されるまでの間に経過する時間期間の間のある段階における状態を示している。したがってそれぞれ回折型光学素子96および偏光操作素子126上で照明される領域130、132は存在しない。回折型光学素子96およびやはり偏光操作素子126は半回転だけ回転しており、したがってそれぞれ第1および第2の部分96a、96bおよび126a、126bは、それらの位置が取り替わっている。しかしながら光パルスが放出されないため、これはマスク14の照明に対する効果は有していない。
【0108】
図22cは、次の光パルスが光源33によって放出される際に優勢である状態を示している。マスク14はもう少し先まで移動し、回折型光学素子96は再び
図22aに示されている第1の回転位置に位置しており、偏光操作素子26も同様である。したがってひとみ平面76内における放射照度分布および偏光分布は、
図22aと同じである。
光源33と回折型光学素子96および偏光操作素子126のこの同期化は、第1のマスクパターン領域2181が照明されている限り維持される。
第2のマスクパターン領域2182を感光性層22の上に画像する場合、角光分布は、
図4に示されているY双極子照明設定に極めて速やかに変化しなければならない。この場合、2つの極28は、
図22dの右側に示されているように、Y方向に沿って間隔を隔てていなければならない。さらに、投影光は、二重矢印135によってこの図に示されているように、X方向に沿って直線偏光させなければならない。
照明設定のこの速やかな変化は、後続のすべての光パルスを半パルス周期、つまり1/2fだけ遅延させることによって達成される。これは、2つの連続する光パルスの間の放出時間が一度だけ1/2fだけ長くなることを暗に示している。残りのすべての光パルスは、再び平均周波数fで放出される。パルス周期が一度1/2fだけ長くなると、回折型光学素子96は、光パルスが放出される毎に、被照明領域130が回折型光学素子96の第2の部分96bの上に位置するその第2の回転位置に位置することになる。第2の部分は、極28がX方向ではなく、Y方向に沿って間隔を隔てる点で第1の放射照度分布とは全く異なる第2の放射照度分布をひとみ平面76内に生成するように構成される。
【0109】
放出時間の遅延は、偏光の状態に対する効果と同様の効果を有する。したがって偏光操作素子126は、光パルスが放出される毎にその第2の回転位置に位置することになる。したがって光パルスによって照明される領域132は、二重矢印134によって右側に示されているように、この部分から出現する投影光がX方向に沿って直線偏光されるように構成される第2の部分126aに位置する。これは、X方向に沿ってやはり位置合わせされる構造を結像するための偏光の最適状態である。
第2のマスクパターン領域2182の照明が終了し、照明設定を再びX双極子照明設定に変更し直す場合、光パルスはもはや遅延されない。これは、残りのすべての光パルスが再び平均周波数fで放出されることを暗に示している。
【0110】
回折型光学素子96および偏光操作素子126を異なる光学特性を有する素子に置き換えることにより、マスクレベルにおけるほとんどすべての任意の角光分布および偏光分布の間で極めて速やかに変更することができる。これは、スキャンサイクル中の2つの異なる段階を
図22a〜22dと同様の図で示す
図23および24に示されている。ここでは、回折型光学素子96の第1の部分96aは、ひとみ平面76内の被照明部分が円板136(
図23参照)の形を有する従来の照明設定を生成することが仮定されている。回折型光学素子96の第2の部分96bが光パルスによって照明されると生成される第2の放射照度分布は、環状領域137がひとみ平面76内で照明される環状照明設定に対応している(
図24)。したがってこのような回折型光学素子96を使用することにより、光源33によって放出される単一のパルス列の2つの連続するパルスの間に、
図23の右側に示されている従来の設定と、
図24の右側に示されている環状照明設定との間で極めて速やかに変更することができる。
【0111】
第1の部分96aの照明と第2の部分96bの照明の間の変更に必要な時間シフトは、この実施形態では、回折型光学素子96の第1および第2の回転位置を180°の代わりに60°だけ分離するように配置することにより、1/2fから1/6fに短縮される。
この実施形態では、偏光操作素子126は、入射する光パルスが所与の方向に沿って直線偏光されると円偏光(矢印139a参照)を生成するように構成される第1の部分126aを備える。この場合、第1の部分126aは、例えば4分の1波長板によって形成することができる。第2の部分196bは、
図24の右側に二重矢印示139bによって示されているように、接線偏光分布を生成するように構成される。このような接線偏光分布は、米国特許出願公開第2002/0176166号明細書に記載されているように、第2の部分126bが異なる方向に配向される複数の複屈折素子から組み立てられる場合に達成することができる。偏光操作素子126が回折型光学素子96と同じ角周波数で回転している場合、光パルスが1/6fだけ遅延されると、連続する光パルス間に、ひとみ平面76内の放射照度分布およびやはり偏光分布を同時に変更することができる。
3.代替実施形態
【0112】
図21〜24に示されている実施形態では、回折型光学素子96および偏光操作素子126の角周波数は、パルス周波数fに等しいか、あるいはその整数倍である。これは、ひとみ平面76内の放射照度分布および偏光分布を変更する場合、一方では回折型光学素子96および偏光操作素子126の速い角速度を必要とし、また、他方ではやはり比較的長い時間シフトが必要である。
a.交互部分
【0113】
図25は、複数の第1の部分96aおよび同じ数の第2の部分96bが回折型光学素子96の円周に沿って交互に配置される回折型光学素子96の一実施形態を示したものである。ここでも、各第1の部分96aは、
図25に示されているように、回折型光学素子96の上に示されているひとみ平面76内に、極27を有するX双極子照明設定を生成し、また、各第2の部分96bは、極28を有するY双極子照明設定を生成することが仮定されている。
n個の第1の部分96aおよびn個の第2の部分96bが存在する場合、回折型光学素子96の角周波数は、光源33の平均パルス周波数fに対して1/nまで低くすることができる。さらに、第1の部分96aのうちの1つが光パルスによって照明される第1の角位置、および第2の部分96bのうちの1つが光パルスによって照明される第2の回転位置は、ここでは180°ではなく、180°/nだけ分離される。したがって第1の回転位置と第2の回転位置の間の変更は、たったの1/2nfの時間シフトによって達成することができる。パルス周波数がf=5kHzであり、また、回折型光学素子96が16個の第1の部分96aおよび16個の第2の部分96bを有すると仮定すると、第1および第2の部分96a、96bに関連する2つの照明設定の間の変更に必要な時間シフトは、たったの6.25マイクロ秒にすぎず、これは、2つの連続する光パルスの間の規則的な周期である200マイクロ秒の約3%である。典型的な場合にそうであるように光源33がエキシマレーザによって形成される場合、各光パルスの放出時間のもっと短い時間シフトは、光源33の性能に対して有利な効果を有する。
b.多重照明設定
【0114】
図26は、他の実施形態による回折型光学素子96の上面図である。
図22〜24に示されている実施形態とは異なり、回折型光学素子96は、たったの2個ではなく、10個の異なる部分96a〜96jを備える。各部分は、光パルスによって照明されると異なる放射照度分布をひとみ平面76内に生成する。そのため、部分96a〜96jは、
図26には、各部分を照明することによってひとみ平面76内に生成される放射照度分布によって表されている。
【0115】
回折型光学素子96の回転周波数が光源33の平均パルス周波数f(またはその整数倍)に等しい場合、部分96a〜96jに関連する任意の放射照度分布をひとみ平面76内に生成することができる。この場合、必要なことは、回折型光学素子96が回転している間、各光パルスがその都度同じ所望の部分を照明するよう、各光パルスの放出時間を制御することのみである。例えば、
図27に示されている放射照度分布をひとみ平面76内に生成することが望ましい場合、この特定の放射照度分布、したがって灰色の陰影で
図26に示されている放射照度分布を生成するように構成される部分96hが照明システム12内の光パルスの経路と交差する毎に、光源33によって光パルスを放出しなければならない。
感光性表面22へのマスクパターン18の最適転写を可能にするためには、ひとみ平面76内の極28をもっと小さくするか、あるいはもっと大きくしなければならないことが分かると、回折型光学素子96が一定の角速度で回転している間、他の部分96d、96iまたは96jのうちの1つが光パルスによって照明されるよう、放出時間を修正することができる。
c.スキャン統合ひとみ充填
【0116】
回折型光学素子96上で利用することができる異なる部分の数は必然的に制限される。とりわけ、より複雑な放射照度分布をひとみ平面76内に生成する場合、異なる回折特性を有する多数の部分を個々に含む多数の異なる回折型光学素子を提供しなければならない場合がある。
広範囲にわたる様々な異なる放射照度分布をひとみ平面76内に生成することができる他の方法は、ひとみ平面76内における放射照度分布全体を各光パルスによって生成する必要はないことの考察に基づいている。その代わりに、マスク16上の特定の点が光パルスによって照明される全時間間隔の間に、ひとみ平面76内の所望の放射照度分布が生成されるだけで十分である。言い換えると、光パルスは、所望の放射照度分布の部分のみをひとみ平面76内に生成し、スキャンプロセスの間、これらの部分から放射照度分布全体が組み立てられる。これは、「スキャン統合ひとみ充填」とも呼ばれることがある。
【0117】
図28は、この場合も、示されているようにそれぞれ異なる放射照度分布をひとみ平面76内に生成する10個の部分96a〜96jが存在する一実施形態による回折型光学素子96の上面図である。この回折型光学素子96は、とりわけ、異なるCスカッド照明設定を生成するように構成される。このような照明設定は、
図29に例示的に示されているように、2つの極27を有するX双極子設定、2つの極28を有するY双極子設定、および中心極25を有する小さい従来の設定の組合せである。
回折型光学素子96が360°だけ1回転している間に(好ましくは一定の角速度で)、灰色の陰影が施された3つの部分96b、96fおよび96iが光パルスによって交互に照明されると、3つの部分96b、96f、96iの各々が異なる放射照度分布をひとみ平面76内に生成するため、
図29に示されているスキャン統合放射照度分布がひとみ平面76内に得られる。
【0118】
この放射照度分布内の領域のサイズを変更する場合、必要なことは、いくつかの光パルスの放出時間を修正することのみである。例えばX方向に沿って間隔を隔てた極27のサイズを小さくする場合、部分96bではなく、部分96cまたは96dが照明されるよう、光パルスの放出時間を修正しなければならない。
d.照明設定の連続修正
【0119】
図30は、異なる放射照度分布をひとみ平面76内に生成する部分が、回折型光学素子96の回転軸118に対して中心を有する連続円形リング140を形成する回折型光学素子96の一実施形態を示したものである。リング140によって生成される回折効果は、円周の少なくとも一部に沿って連続的に変化する。したがってリング140は、異なる放射照度分布がひとみ平面76内に生成される、事実上、無限数の回転位置を有する。
図30では、3つの部分96a、96bおよび96cはダッシュ線で示されている。第1の部分96aは、光パルスによって照明されると、
図30に示されているように、極27を有するY双極子照明設定を生成する。第2の部分96bは、光パルスによって照明されると、極28を有するX双極子照明設定を生成する。第1の部分96aと第2の部分96bの間に配置される第3の部分96cは、X双極子照明設定とY双極子照明設定の混合を生成し、4つの極27、28を有する四極子照明設定をもたらす。したがってひとみ平面内の被照射領域は、双極子照明設定と比較すると大きさが2倍であるため、各極27、28の強度は1/2になる。これは、第3の部分96cによって生成される極27、28の灰色の陰影によって
図30に示されている。
【0120】
第1の部分96aと第3の部分96cの間の部分、また、やはり第2の部分96bと第3の部分96cの間の部分は、ひとみ平面76内の放射照度分布Mによって示されているように、ひとみ平面76内の極の放射照度が極27から極28へ、また、その逆に極28から極27へ連続的にシフトする放射照度分布をひとみ平面76内に生成する。
したがって
図30に示されている回折型光学素子96は、ひとみ平面76内の被照射領域の異なる形状だけでなく、同じ形状を有する領域の放射照度に対してのみ異なる放射照度分布を生成することができる。これは、例えば照明設定のテレセントリシティおよび極平衡を調整するために使用することができる。
e.固定回折型光学素子との組合せ
【0121】
図26〜30に示されている実施形態では、高速で回転する回折型光学素子96は、異なる放射照度分布全体をひとみ平面76内に生成することができるだけでなく、例えば極27、28の形状および/または放射照度を変更することによって所与の放射照度分布を若干修正することができる。
また、高速で回転する回折型光学素子96を排他的に使用して、ひとみ平面内の基本放射照度分布を修正または補正することも可能である。この場合、基本放射照度分布は、従来のひとみ画定手段、例えばズーム光学系および一対のアキシコン素子と組み合わせた固定回折型光学素子によって生成することができる。
【0122】
図31は、
図21に示されている照明システム12と実質的に全く同じである照明システム12を、
図21と同様の子午線断面図で示したものである。異なっているのは、追加静止回折型光学素子96’が高速で回転する回折型光学素子96のすぐ近くに配置されていることのみである。別法としては、2つの回折型光学素子96、96’を光学的に共役である平面内に配置することも可能であり、例えば結像光学系の物体平面および像平面に配置することも可能である。このような構造を使用して、あるいは
図31に示されている構造を使用して、2つの回折型光学素子96、96’によってひとみ平面76内に生成される放射照度分布を、静止回折型光学素子96’によって個々に生成される放射照度分布と、高速で回転する回折型光学素子96の異なる部分によって生成される放射照度分布との畳込みとして数学的に記述することができる。
【0123】
これは、
図32および33に示されている。
図32aは、静止回折型光学素子96’によってひとみ平面76内に生成される単一の極Pを含む一例示的放射照度分布を示したものである。
図32bは、高速で回転する回折型光学素子96の部分96a〜96iによって生成することができる異なる放射照度分布を略図で示したものである。部分96a〜96iは、それらが、基本的に、Y方向に沿って異なる距離だけ間隔を隔てた、2つの異なる利用可能スポットサイズを有する2つの微小スポットのみからなる放射照度分布をひとみ平面76内に生成する点で互いに異なっている。
例えば、部分96dのみが光パルスによって照明されるように光パルスの放出時間が制御されると、
図32cに示されている放射照度分布がひとみ平面76内に得られる。この放射照度分布は、
図32aに示されている放射照度分布と、
図32bに示されている部分96dに関連する放射照度分布との畳込み(記号142によって示されている)で数学的に記述することができる。静止回折型光学素子96’によって生成される極Pは2倍になっており、したがって2つの極28dがひとみ平面76内の異なる位置に出現することが分かる。
【0124】
例えば、Y方向に沿って最大距離だけ間隔を隔てた2つのより大きいスポットを生成する部分96gを光パルスが照明するように光パルスの放出時間が制御されると、
図31aに示されている基本放射照度分布との畳込みにより、
図33cに示されている放射照度分布が得られる。
図32cと比較すると、2つの極28gは若干より大きく、かつ、Y方向に沿ってより長い距離を有する。
この手法を使用して、所与の照明設定のテレセントリシティ誤差または極平衡誤差を補正することも可能である。これらの用語は、ひとみ平面76内の空間エネルギー分布に関連している。ひとみ平面76内のエネルギー分布が特定の対称要求事項を満たさない場合、テレセントリシティ誤差または極平衡誤差が生じる。例えば四極子照明設定において、X方向に沿って間隔を隔てた極がY方向に沿って間隔を隔てた極より明るい場合、この非対称性は極平衡誤差と呼ばれる。ひとみ平面76内におけるこのような対称要求事項の違反は、様々な望ましくない影響の原因になることがある。例えば、全く同じ形状およびサイズを異なる配向で有するフィーチャ19の画像が異なるサイズを有することになる。
図34aの左側は、高速で回転する回折型光学素子96が存在しない場合に、静止回折型光学素子96’によってひとみ平面76内に生成される放射照度分布を示している。2つの極Pは、結像すべきフィーチャにとりわけ適合される形状を有する。
【0125】
高速で回転する回折型光学素子96が存在しない場合、あるいは通過する光の角分布を修正しない部分96aが照明される場合、
図34aに示されている放射照度分布がひとみ平面76内に得られることが期待される。しかしながら様々な理由のため、そのようにはならない。これらの理由には、静止回折型光学素子96’の不完全性、静止回折型光学素子96’に入射する投影光ビーム35の方向の変動、およびやはり静止回折型光学素子96’とひとみ平面76の間に配置される光学素子に関連する収差を含む。
ここでは、ひとみ平面76内に最終的に得られる放射照度分布は、
図34cに示されているような分布になるであろうことが仮定されている。極27aは所望の形状およびサイズを有するが、それらは+X方向に沿って若干変位していることが分かる。この場合、−X方向からよりも+X方向からより多くの光がマスク16上の点に入射するため、この変位はテレセントリシティ誤差の原因になる。
【0126】
このようなテレセントリシティ誤差は、例えばマスク平面88内の角光分布またはひとみ平面76内の空間放射照度分布を測定することによって検出することができる。次に、高速で回転する回折型光学素子96の部分96aではなく、部分96jが光パルスによって照明されるよう、光パルスの放出時間を修正することができる。部分96jは、投影光によって照明されると、−X方向に沿って若干変位している微小スポットからなる放射照度分布をひとみ平面76内に生成する。
図34aおよび35aに示されている基本放射照度分布とのこのような放射照度分布の畳込みは、
図35cに矢印によって示されているように、基本放射照度分布が−X方向に沿って若干シフトすることになる。この場合、極27iはY方向に沿って完全に位置合わせされ、したがって+X方向および−方向から同じ量の投影光がマスク14に入射する。
【0127】
高速で回転する回折型光学素子96は、極めて多数の部分96a〜96iを備えており、これらの部分は、放射照度分布を+X方向および−X方向ならびに+Y方向および−Y方向に沿って微小量だけシフトさせるために使用することができるため、回折型光学素子96が一定の角速度で回転している間、光パルスの放出時間を単純に修正することにより、テレセントリシティおよび極平衡を見込んで照明設定を最適化することができる。さらに、回折型光学素子96の高速回転のため、照明設定の調整は極端に速く実施することができることは明らかである。したがって異なるマスクパターン領域181、182が異なる量の調整を必要とする場合、速やかに照明設定を調整することができる。
f.パルス列の交互配置
【0128】
また、高速で回転する回折型光学素子96と静止回折型光学素子96’との組合せを使用して、有効パルスレートが2倍になるよう、2つの光パルス列を交互に配置することも可能である。
これは、1つの光源33だけでなく、2つの光源33a、33b、2つのビーム拡大ユニット34a、34b、2つの第1の平面折りたたみミラー117a、117bおよび2つの第2の平面折りたたみミラー121、121bが存在する点でのみ、
図31に示されている照明システムとは異なる照明システム12を示す
図36に示されている。第2の折りたたみミラー121a、121bは、投影光ビーム35a、35bを静止回折型光学素子96’に向けて導く。したがって斜め入射の結果、静止回折型光学素子96’によってひとみ平面76内に生成される放射照度分布は、光パルスが光源33aによって生成されたか、あるいは光源33bによって生成されたかどうかに応じて+X方向または−X方向へシフトすることになる。各光パルスは、その起源に無関係に同じ放射照度分布を生成するため、高速で回転する回折型光学素子96を使用して、斜め入射によってもたらされる放射照度分布のシフトが補償される。以下、これについて、
図37および38を参照して説明する。
図37aは、静止回折型光学素子96が第1の光源33aによって放出される光パルスによって照明され、かつ、高速で回転する回折型光学素子96が存在しない場合に、静止回折型光学素子96によってひとみ平面76内に生成されることになる放射照度分布を示したものである。放射照度分布は2つの極Pを含むが、これらの極Pは、斜め入射の結果、+X方向に向かってシフトしている。この横方向のオフセットは、高速で回転する回折型光学素子96によって補償される。光パルスが回折型光学素子96の部分96gに斜めから入射すると、この部分は、光ビーム35aを−X方向に向かって傾斜させ、また、これは、斜め入射によって生成される傾きをオフセットさせる。
【0129】
数学的に表現すると、
図37aに示されている放射照度分布と、高速で回転する回折型光学素子96の部分96fが第1の光源33aによって生成される光パルスによって照明された場合にひとみ平面76内に生成される放射照度分布との畳込みにより、
図37cに示されている放射照度分布が得られ、この分布中の2つの極28gは、X方向に対して中心を有する。
第2の光源33bによって放出される次の光パルスの放出時間は、光パルスが高速で回転する回折型光学素子96の部分96aを照明するよう、制御ユニット90によって制御される。部分96bは、放射照度分布を逆方向、つまり+X方向にシフトさせる。これは、
図38aに示されている、静止回折型光学素子96’への光パルスの斜め入射の結果である放射照度分布のシフトをオフセットさせる。
【0130】
高速で回転する回折型光学素子96は、入射する光を+X方向および−X方向に沿って異なる程度だけ傾斜させる部分を含むことができ、したがって
図34および35を参照して上で説明したように、やはりテレセントリシティ誤差および極平衡誤差を補正することができる。
VII.第3の実施形態のための照明システム
【0131】
以下では、一方では被照明フィールド14の異なる部分に2つの異なる照明設定を生成することができ、また、やはり、スキャン方向に沿って縦に並べて配置されるマスクパターン領域の露光と露光の間に、照明設定を極めて速やかに変更することができる照明システムについて簡単に説明する。
図6および7を参照して上で説明した二重露光スキームの第3の実施形態を実施するためには、このような照明システムが必要である。
このタスクを実施することができる照明システムは、
図21に示されている照明システムとほとんど全く同じである。唯一の変更は、
図21および
図15に示されている実施形態を参照して上で説明したように、より複雑な放射照度分布を光入口ファセット100上に生成することができるように、高速で回転する回折型光学素子96の部分96a、96bを設計しなければならないことである。これらの放射照度分布により、マスク上の異なる位置に異なる照明設定が得られ、その一方で、高速で回転する回折型光学素子96は、これらの照明設定の極めて速やかな変更を可能にしている。
VIII.重要な方法ステップ
【0132】
以下、本発明による重要な方法ステップについて、
図39に示されている流れ図を参照して説明する。
第1のステップS1で、第1および第2のマスクパターン領域を備えたマスクが提供される。
第2のステップS2で、第1の露光パターン領域が第1のマスクパターン領域の画像として露光され、また、第2の露光パターン領域が第2のマスクパターン領域の画像として生成される。
第3のステップS3で、第1のマスクパターン領域の画像が第2の露光パターン領域の上に重畳されるよう、同じマスクを使用してステップS2が繰り返される。第1のマスクパターン領域を照明する投影光は第1の角光分布を有しており、また、第2のマスクパターン領域を照明する投影光は、第1の角光分布とは異なる第2の角光分布を有する。
IX.本発明の重要な特徴
【0133】
以下の文は、本発明の重要な特徴を要約したものである。
1.多重露光プロセスで、リソグラフィによって感光性表面(22)にパターン(18)を転写する方法であって、前記方法は、
a)第1のマスクパターン領域(181、2181、3181)および第2のマスクパターン領域(182、2182、3182)を備えたマスク(16、216、316)を提供するステップと、
b)マスク上に投影光を導き、それにより第1のマスクパターン領域(181、2181、3181)の画像である第1の露光パターン領域(301、2301、3301)、および第2のマスクパターン領域(182、2182、3182)の画像である第2の露光パターン領域(302、232、3302)を感光性表面に生成するステップと、
c)第1のマスクパターン領域(181、2181、3181)の画像が第2の露光パターン領域(302、232、3302)の上に重畳されるよう、同じマスク(16、216、316)を使用してステップb)を繰り返すステップと
を含み、第1のマスクパターン領域(181、2181、3181)を照明する投影光は第1の角光分布を有し、また、第2のマスクパターン領域(182、2182、3182)を照明する投影光は、第1の角光分布とは異なる第2角光分布を有する。
【0134】
2.文1の方法であって、投影光は、ステップb)の間、第1のマスクパターン領域(181、3181)および第2のマスクパターン領域(182、3182)上に同時に導かれる。
3.文2の方法であって、マスク(16、316)は、被照明フィールド(14)が第1のマスクパターン領域(181、3181)および第2のマスクパターン領域(182、3182)上をスキャンするよう、ステップb)の間、スキャン方向(Y)に沿って移動し、また、第1のマスクパターン領域および第2のマスクパターン領域は、スキャン方向およびマスク(16、316)上の法線の両方に対して直交する交差スキャン方向(X)に沿って隣り合わせで配置される。
【0135】
4.文3の方法であって、ステップb)の間、第1のマスクパターン領域(181、3181)の画像のみが第2の露光パターン領域(302、3302)の上に重畳される。
5.文4の方法であって、感光性表面(22)は、ステップb)とステップc)の間に、交差スキャン方向(X)に沿って変位される。
【0136】
6.文1の方法であって、投影光は、ステップb)の間、最初に第1のマスクパターン領域(2181)上に導かれ、引き続いて第2のマスクパターン領域(2182)上に導かれる。
7.文6の方法であって、マスク(216)は、被照明フィールド(14)が第1のマスクパターン領域(2181)および第2のマスクパターン領域(2182)上をスキャンするよう、ステップb)の間、スキャン方向(Y)に沿って移動し、また、第1のマスクパターン領域(2181)および第2のマスクパターン領域(2182)は、スキャン方向(Y)に沿って縦に並べて配置される。
8.文7の方法であって、ステップc)の間、第2のマスクパターン領域(2182)の画像が第1の露光パターン領域(2301)の上に重畳される。
9.文8の方法であって、感光性表面(22)は、ステップb)とステップc)の間に、スキャン方向(Y)に沿って変位される。
【0137】
10.文1から9のいずれかの方法であって、
− マスク(316)は、補足的に第3のマスクパターン領域(3183)を備える。
− 第3のマスクパターン領域(3183)の画像は、第1の露光パターン領域(3301)および第2の露光パターン領域(3302)の両方の上に重畳される。
− 第3のマスクパターン領域(3183)を照明する投影光は、第1の角光分布および第2の角光分布とは異なる第3の角光分布を有する。
【0138】
11.文10の方法であって、
− マスク(316)は、補足的に第4のマスクパターン領域(3184)を備える。
− 第4のマスクパターン領域(3184)の画像は、第1の露光パターン領域(3301)の上、第2の露光パターン領域(3302)の上および第3の露光パターン領域(3303)の上に重畳される。
− 第4のマスクパターン領域(3304)を照明する投影光は、第1の角光分布、第2の角光分布および第3の角光分布とは異なる第4の角光分布を有する。
【0139】
12.文11の方法であって、
− ステップb)の間、第1の露光パターン領域(3301)の生成と同時に第2の露光パターン領域(3302)が感光性表面(22)に生成される。
− 第3のマスクパターン領域(3183)の画像である第3の露光パターン領域(3303)の生成と同時に、第4のマスクパターン領域(3184)の画像である第4の露光パターン領域(3304)が感光性表面(22)に生成される。
− ステップc)の間、第3のマスクパターン領域(3183)の画像を第1の露光パターン領域(3301)の上に重畳し、それにより第1のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域(3301+3303)の組合せを生成するのと同時に、第4のマスクパターン領域(3184)の画像を第2の露光パターン領域(3302)の上に重畳し、それにより第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3302+3304)の組合せが生成される。
この方法は、以下の追加ステップd)およびe)を含む。
d)第1のマスクパターン領域(3181)の画像を第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3302+3304)の組合せの上に交互に重畳させ、それにより第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3301+3302+3304)の組合せを生成し、かつ、第3のマスクパターン領域(3183)の画像を第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3302+3304)の組合せの上に重畳させ、それにより第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3302+3303+3304)の組合せを生成するステップ。
e)第1のマスクパターン領域(3181)の画像を第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3302+3303+3304)の組合せの上に交互に重畳させ、それにより第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3301+3302+3303+3304)の組合せを生成し、かつ、第3のマスクパターン領域(3183)の画像を第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3301+3302+3304)の組合せの上に重畳させ、それにより第1のマスクパターン領域プラス第2のマスクパターン領域プラス第3のマスクパターン領域プラス第4のマスクパターン領域(3301+3302+3303+3304)をさらに生成するステップ。
13.マイクロリソグラフィ投影露光装置の照明システムは、
a)連続する投影光パルスの列を放出するように構成される光源(33、33a、33b)であって、前記パルス列はf>1kHzの平均パルス周波数を有する光源と、
b)ひとみ平面(76)と、
c)第1の部分(96a)および第2の部分(96b)を備えた回折型光学素子(96)であって、第1の部分(96a)は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布をひとみ平面(76)内に生成し、また、第2の部分(96b)は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面(76)内に生成する回折型光学素子(96)と、
d)回折型光学素子(96)を回転軸(118)周りで回転させるように構成される駆動装置(104)であって、回折型光学素子(96)の第1の回転位置では、第1の部分(96a)は光パルスによって照明され、また、第1の回転位置とは異なる回折型光学素子の第2の回転位置では、第2の部分(96b)は光パルスによって照明される駆動装置(104)と、
e)第1の回転位置と第2の回転位置の間の変化が、パルス列の2つの光パルスの間、好ましくはパルス列の5つの連続する光パルスの間、より好ましくは2つの連続する光パルスの間に生じるように駆動装置(104)および/または光源(33)を制御するように構成される制御ユニット(90)と
を備える。
【0140】
14.文13の照明システムであって、駆動装置(104)は、回折型光学素子(96)を回転軸(118)周りで一定の角速度で回転させるように構成され、また、制御ユニット(90)は、回折型光学素子(96)が回転軸(118)の周りを一定の角速度で回転している間、時間シフトに応じて特定の光パルスが第1の部分(96a)または第2の部分(96b)のいずれかを照明するよう、単一のパルス列内の各光パルスの放出時間を少なくとも1/10・fの時間シフトによって修正するように構成される。
【0141】
15.文14の照明システムであって、回折型光学素子の回転周波数は平均パルス周波数fに等しい。
16.文13から15のいずれかの照明システムであって、駆動装置(104)は、回折型光学素子(96)の円周が10m/秒を超える接線速度で移動するように回折型光学素子(96)を回転させるように構成される。
【0142】
17.文13から16のいずれかの照明システムであって、回折型光学素子(96)は、複数の第1の部分(96a)および複数の第2の部分(96b)を備えており、各第1の部分(96a)は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布をひとみ平面(6)内に生成し、また、各第2の部分(96b)は、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面(76)内に生成し、第1の部分(96a)および第2の部分(96b)は、回折型光学素子(96)の円周に沿って交互に配置される。
【0143】
18.文13から17のいずれかの照明システムであって、制御ユニット(90)は、回折型光学素子(96)が360°だけ1回転している間、第1の部分(96a)および第2の部分(96b)が光パルスによって照明されるように駆動装置(104)および/または光源(33)を制御するように構成される。
19.文13から18のいずれかの照明システムであって、第1の部分(96a)および第2の部分(96b)は、回転軸(118)に対して中心を有する円形リング(140)内に含まれ、光パルスによって照明されるとリング(140)によって生成される回折効果は、回折型光学素子(96)が回転している間、連続的に変化する。
20.文13から19までのいずれかの照明システムであって、照明システム(12)は静止回折型光学素子(96’)を備えており、この静止回折型光学素子(96’)は、ひとみ平面(96)内の放射照度分布が少なくとも実質的に、静止回折型光学素子(96’)によって生成される放射照度分布と、それぞれ第1の部分(96a)および第2の部分(96b)によって生成される第1または第2の放射照度分布との畳込みであるよう、固定して配置される。
【0144】
21.文20の照明システムであって、照明システム(12)は、それぞれ連続する投影光パルスの列を放出するように構成されている第1の光源(33a)および第2の光源(33bを備えており、前記パルス列は、f>1kHzの平均パルス周波数を有し、第1および第2の光源によって生成される光パルスは、異なる方向から回折型光学素子(96’、96a、96b)のうちの1つに入射する。
22.文21の照明システムであって、その1つの回折型光学素子は静止回折型光学素子(96’)である。
【0145】
23.文21から22のいずれかの照明システムであって、第1の光源(33a)および第2の光源(33b)は、2・fの平均パルス周波数を有する有効パルス列が得られるよう、光パルスを交互に放出するように構成される。
24.マイクロリソグラフィ投影露光装置を動作させる方法は、
a)f>1kHzの平均パルス周波数を有する連続する投影光パルスの列を生成するステップと、
b)回折型光学素子(96)を回転軸(118)周りで同時に回転させるステップであって、前記回折型光学素子(96)が第1の部分(96a)および第2の部分(96b)を備え、第1の部分(96a)が、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布を照明システム(12)のひとみ平面(76)内に生成し、また、第2の部分(96b)が、光パルスによって照明されると、第1の放射照度分布とは異なる第2の放射照度分布をひとみ平面(76)内に生成するステップと、
c)1つの光パルスが第1の部分(96a)を照明し、また、他の光パルス、好ましくは同じパルス列のすぐ後に連続する光パルスが第2の部分(96b)を照明するよう、ステップa)における光パルスの放出および/またはステップb)における回折型光学素子(96)の回転を制御するステップと
を含む。
【0146】
25.文24の方法であって、回折型光学素子(96)は、一定の角速度で回転軸(118)の周りを回転し、また、光パルスの放出時間は、回折型光学素子(96)が回転軸(118)の周りを一定の角速度で回転している間、特定の光パルスが時間シフトに応じて第1の部分(96a)または第2の部分(96b)のいずれかを照明するよう、少なくとも1/10・fの時間シフトによって単一のパルス列内で修正される。
【0147】
26.文24または25の方法であって、回折型光学素子(96)の円周は、10m/秒を超える接線速度で移動する。
27.文24から26のいずれかの方法であって、放出時間は、単一のパルス列の間、第1の部分(96a)および第2の部分(96b)が交互に照明されるように制御される。
28.文24から27のいずれかの方法であって、光パルスは、ひとみ平面(74)内の放射照度分布が少なくとも実質的に、静止回折型光学素子(96’)によって生成される放射照度分布と、それぞれ第1の部分(96a)および第2の部分(96b)によって生成される第1または第2の放射照度分布との畳込みであるよう、固定して配置される静止回折型光学素子(96’)をも通過する。
29.文24から28のいずれかの方法であって、光パルスの列は、連続する投影光パルスの第1の列を放出する第1の光源(33a)、および連続する投影光パルスの第2の列を放出する第2の光源(33b)によって生成され、第1の列および第2の列は交互配置される。
30.文29の方法であって、第1の部分は第1のパルス列の光パルスによってのみ照明され、また、第2の部分は第2のパルス列の光パルスによってのみ照明される。
【0148】
31.文29または30の方法であって、第1の部分および第2の部分は、静止回折型光学素子(96’)によってひとみ平面(76)内に生成される放射照度分布を逆方向に沿って横方向にシフトさせる。
32.マイクロリソグラフィ投影露光装置(10)の照明システムは、
a)光ラスタ素子(74)のアレイ(70、72)を備えた光インテグレータ(60)であって、光ビームが各光ラスタ素子(74)に結合される光インテグレータ(60)と、
b)照明システム(12)が動作している間、照明すべきマスク(16)が配置されるマスク平面(88)と全く同じであるか、あるいは光学的に共役である共通フィールド平面(80)内の光ラスタ素子(74)に結合された光ビームを重畳するコンデンサ(78)と、
c)照明システム(12)によってマスク平面(88)内で照明される被照明フィールド(14)における投影光の偏光の状態のフィールド依存性を修正するように構成される偏光変調器(77)と
を備える。
【0149】
33.文32の照明システムであって、偏光変調器(77)は、
− 複数のラスタフィールド平面要素であって、各ラスタフィールド平面要素が
−− 共通フィールド平面(80)全体に画像され、かつ、
−− 光ラスタ素子(74)のうちの1つと1対1の対応で結合される
複数のラスタフィールド平面要素を含むラスタフィールド平面(84)内に配置され、
− 制御信号に応答して、各ラスタフィールド平面要素の少なくとも2つの部分で別様に光ラスタ素子(74)に結合される光ビームの偏光の状態を変更可能に調整するように構成される
複数の変調器ユニット(79)を備える。
【0150】
34.文33の照明システムであって、異なる偏光の状態が被照明フィールドに存在する方法で変調器ユニット(79)を制御することができる制御ユニット(90)を備える。
35.文33または34の照明システムであって、各変調器ユニット(79)は、照明システム(12)の光軸(OA)に沿って厚さを有する2つの複屈折光学コンポーネント(79a、79b)を備えており、この厚さは個々に変化させることができる。
【0151】
36.文35の照明システムであって、各光学コンポーネント(79a、79b)は、2つの複屈折くさび(84)、および少なくとも1つのくさび(84)を変位させるように構成される駆動装置(83)を備える。
37.マイクロリソグラフィ投影露光装置(10)内のマスクを照明する方法は、
a)マスク(16)がスキャン方向(Y)に沿って移動している間、第1の偏光の状態を有する第1の投影光を使用して第1のマスクパターン領域(181)を照明するステップと、
b)スキャン方向に対して直交する交差スキャン方向(X)に沿って、第1のマスクパターン(181)領域の隣のマスク上に配置される第2のマスクパターン領域(182)を、第1の偏光の状態とは異なる第2の偏光の状態を有する第2の投影光を使用して照明するステップと
を含む。
【0152】
38.文37の方法であって、第1の投影光は第1の角光分布を有し、また、第2の投影光は、第1の角光分布とは異なる第2の角光分布を有する。
【0153】
39.文37または38の方法であって、第1の偏光の状態は、第2の偏光の状態とは異なる第3の偏光の状態に変更される。
【0154】
40.文39の方法であって、第1の偏光の状態は、スキャン方向に沿ったマスクの移動が終了した後に第3の偏光の状態に変更される。